(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090366
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】靴底及び該靴底を備えた靴
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20230622BHJP
A43B 13/18 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A43B13/14 D
A43B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205297
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】594066545
【氏名又は名称】アシックス商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大
(72)【発明者】
【氏名】川口 道生
(72)【発明者】
【氏名】村田 伸
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA31
4F050HA53
4F050HA58
4F050HA73
4F050JA20
4F050LA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】着用者の歩行スピードを高めることができる靴底及び靴を提供する。
【解決手段】靴底は、接地面側の後端部に配置される荷重案内部11を備え、荷重案内部11は、少なくとも、靴底全体の幅方向の一端側に偏って、後方に延出するように設けられ、接地した際に荷重を受ける荷重受け部17を備え、荷重受け部17は、該荷重受け部17の幅方向における中心線C2が、靴底3全体の幅方向における中心線C1に対して、後側ほど離れるように構成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面側の後端部に配置される荷重案内部を備え、
前記荷重案内部は、少なくとも、靴底全体の幅方向の一端側に偏って、後方に延出するように設けられ、接地した際に荷重を受ける荷重受け部を備え、
前記荷重受け部は、該荷重受け部の幅方向における中心線が、靴底全体の幅方向における中心線に対して、後側ほど離れるように構成される靴底。
【請求項2】
前記荷重受け部は、少なくとも靴底全体の幅方向の一端部及び他端部に設けられ、
前記荷重受け部同士は、接地した際に受ける荷重の幅方向での伝達が絶縁させるように構成されている請求項1に記載の靴底。
【請求項3】
他の部位と比べて厚み方向での圧縮に対する剛性が相対的に低く構成される低剛性部を備え、
前記低剛性部は、靴底全体の幅方向の中途部分に、後端部から前方に延伸するように配置される請求項1又は2に記載の靴底。
【請求項4】
前記低剛性部には、底面から上方に窪む凹部が形成される請求項3に記載の靴底。
【請求項5】
前記凹部は、前記凹部の後端部における靴底全体の幅方向における長さが、前記荷重案内部の幅方向の最大長さの15%以上30%以下であるように構成される請求項4に記載の靴底。
【請求項6】
前記凹部は、後端側が前端側よりも深くなるよう形成される請求項4又は5に記載の靴底。
【請求項7】
前記低剛性部には、底面から上方に離間した位置で、後端部から前方に向かって窪む空洞部が形成される請求項3乃至6のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項8】
接地面側の着用者の前足部の下方に対応した位置に、前端側が上方に位置するように湾曲した形状の湾曲部が形成され、
前記湾曲部の後端部は、前後方向で着用者の第一中足骨の骨頭から中央の範囲内の下方に対応した位置に位置するよう構成される請求項1乃至7のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項9】
接地面側の後端部には、後端側が上方に位置するような傾斜面が形成され、
前記傾斜面の傾斜角度は、接地面のうち前記傾斜面よりも前方の部分を水平な地面に接地させた際に、地面に対して0度以上15度以下の範囲となるように構成される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項10】
前記荷重案内部は、少なくとも着用者の踵部分の下方に対応した位置が、他の部分よりも反発弾性率が高い高弾性体を有するように構成されている請求項1乃至9のいずれか1項に記載の靴底。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の靴底を備えた靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底及び該靴底を備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴底として、特許文献1に記載の靴の靴底が知られている。靴底は、接地面側の後足部に対応する位置のうち、足の横幅方向で内側に配置され、靴底の厚み方向で圧縮変形可能な変形部を備え、変形部は、後足部の後端部に配置される易変形部と、易変形部に対して前後方向で隣り合って配置され、易変形部よりも靴底の厚み方向での圧縮変形に対する剛性が高い難変形部と、を備える。
【0003】
上記のような靴底によれば、足裏全体で靴底が踏まれている際には、荷重が靴底全体にかかるため荷重を難変形部で支えることができ、足を自然な状態で支えることができるとされている。一方で、歩行動作の際に、踵から設置したときには、易変形部が弾性変形し、靴底の内側が圧縮変形することで、靴底の後足部が足の横幅方向で内側に傾くので、踵にかかる荷重が内側に案内される。よって、膝の外側への移動を抑えることができ、いわゆるO脚による膝への負担を抑えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、歩行スピードを高めるためには、靴底の踵骨の下方に対応した部分の接地(イニシャルコンタクト)から爪先部分の離地(トーオフ)の時間を短縮することが重要である。しかしながら、特許文献1に記載のような靴底は、膝にかかる負担を抑えることはできるが、イニシャルコンタクトからトーオフの時間を短縮して歩行スピードを高めるということには着目されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、着用者の歩行スピードを高めることができる靴底及び靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の靴底は、接地面側の後端部に配置される荷重案内部を備え、前記荷重案内部は、少なくとも、靴底の幅方向の一端側に偏って、後方に延出するように設けられ、接地した際に荷重を受ける荷重受け部を備え、前記荷重受け部は、該荷重受け部の幅方向における中心線が、靴底全体の幅方向における中心線に対して、後側ほど離れるように構成される。
【0008】
かかる構成によれば、荷重受け部が幅方向の一端側に偏って配置され、荷重受け部の中心線が靴底全体の中心線に対して後側ほど離れるように構成されているので、幅方向の一端側に荷重が偏った状態で踵側から接地した際に、荷重受け部が接地するため、荷重受け部に荷重が集中し、該荷重の反力によって、幅方向他端側に向かう力がかかる。よって、接地時に荷重を靴底の中央寄りに誘導することができるので、荷重が靴底の中央を通り抜けて前方に移動することを補助でき、イニシャルコンタクトからトーオフの時間を短縮可能な靴底を提供できる。
【0009】
また、本発明の靴は、上記靴底を備えた靴である。
【0010】
かかる構成によれば、荷重受け部が幅方向の一端側に偏って配置され、荷重受け部の中心線が靴底全体の中心線に対して後側ほど離れるように構成されているので、幅方向の一端側に荷重が偏った状態で踵側から接地した際に、荷重受け部が接地するため、荷重受け部に荷重が集中し、該荷重の反力によって、幅方向他端側に向かう力がかかる。よって、接地時に荷重を靴底の中央寄りに誘導することができるので、荷重が靴底の中央を通り抜けて前方に移動することを補助でき、イニシャルコンタクトからトーオフの時間を短縮可能な靴を提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、着用者の歩行スピードを高めることができる靴底及び靴を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の靴底及び該靴底を備えた靴の左側面図である。
【
図4】
図3に示す靴底の幅方向中心で切断した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態の靴1及び靴底3について、
図1乃至
図7を参照して説明する。本実施形態において、足とは、下肢のうち足首から下方側の部分のことを指す。また、足の骨格は、着用者の人種、性別における標準的な体格の人物が有する骨格として説明する。また、前後左右及び上下の方向は図に示した方向を基準に説明する。具体的に、前後左右及び上下は、着用者を基準にした前後左右及び上下を指すものとして説明する。また、以下の説明で、「荷重」とは、荷重中心点、即ち重心にかかる着用者の重さに起因する力を意味する。
【0014】
図1に示すように、靴1は、着用者の足を覆う着用部2(アッパー)と、着用部2の下方に連結される靴底3と、を備える。また、靴底3は、下端面が接地面3aとして構成されるアウトソール4と、着用部2及びアウトソール4の間に設けられるミッドソール5と、を備える。また、本実施形態の靴1は、歩行動作を補助するウォーキングシューズである。なお、歩行動作とは、足による前後方向への移動のための動作のうち、踵骨部分の接地(イニシャルコンタクト)して爪先で蹴り出す(トーオフ)一連の動作を含むものを指す。
【0015】
着用部2は、着用者の足を覆い、かつ着用者の足を出し入れするため履き口2aが形成された袋状の部位である。着用部2は、全体として足の外形に即した形状に構成されている。具体的に、着用部2の底面は、着用者の足の裏面(底面)の形状に即した形状である。また、着用部2の底面は、ミッドソール5に接着される。
【0016】
図2に示すように、靴底3は、着用部2の下方に設けられる部位である。また、靴底3は、着用部2と連結される着用連結部6と、地面に接する接地面3aと、を有する。本実施形態の着用連結部6はミッドソール5の上面に設けられる。また、着用連結部6は、着用部2の底面の形状に即した形状である。即ち、着用連結部6の内縁は、着用者の足の裏面(底面)の形状に即した形状である(
図6参照)。
【0017】
ミッドソール5は、少なくとも上下方向に圧縮可能な部位である。また、ミッドソール5は、靴底3の前端部から後端部にまで亘って延びる部位である。このようなミッドソール5は、アウトソール4が地面などから受けた衝撃を吸収して、衝撃が足に到達することを抑制する。また、ミッドソール5は、反発弾性率の異なる複数の材質で構成されている。具体的に、ミッドソール5は、反発弾性率の高い高弾性体によって構成された高弾性部7と、高弾性体よりも反発弾性率の低い材質で構成された中間層部8と、を備える。本実施形態の高弾性部7は、軟質発泡材料で構成され、例えば、EVAや、TPU、TPE、TPAE、PO、発泡ラバーなどの樹脂で構成される。本実施形態で、ミッドソール5の後端部は、高弾性部7と中間層部8とを積層した2層構造で構成されている。具体的に、ミッドソール5の後端部は、高弾性体の上方に中間層部8が配置されることで2層構造として構成されている。また、本実施形態で高弾性部7と中間層部8は接着により接合されている。
【0018】
図2及び
図3に示すように、アウトソール4は、底面等が地面に接する接地面3aとして構成された部位である。また、アウトソール4には、地面等に対して係合し、靴底3が地面に対して滑ることを抑制するための凹凸部9が設けられている。凹凸部9は、例えば、靴底3全体の幅方向の中心線C1と交差する方向に延びる複数の突起及び窪みを有する。なお、靴底3全体の幅方向の中心線C1とは、着用連結部6の横幅方向の中心線を指す。即ち、靴底3全体の幅方向の中心線C1は、着用者の足の幅方向の中心線に即した位置に位置する。
【0019】
このような靴底3は、荷重案内部11と、中途案内部12と、湾曲部13と、備える。荷重案内部11、中途案内部12、及び湾曲部13は、前後方向に並んで配置される。また、靴底3は、幅方向の中途部分に前後方向に延びるように配置される低剛性部14を備える。
【0020】
図3及び
図4に示すように、低剛性部14は、靴底3の他の部位と比べて、厚み方向(上下方向)での圧縮に対する剛性が相対的に低く構成された部位である。即ち、低剛性部14は、靴底3の他の部位と比べて、厚み方向に圧縮するような力を受けた際に沈み込むように変形しやすい部位である。具体的に、低剛性部14は、靴底3の幅方向の中途部分に前後方向に延びる、幅方向一端側及び他端側よりも厚み方向での圧縮に対する剛性が低く構成された部位である。また、低剛性部14は、靴底3の後端部から前方に向かって延びるように設けられる。具体的に、低剛性部14は、荷重案内部11の後端部から、中途案内部12を介して、湾曲部13の前後方向中途部分までに亘って延びるように設けられる。即ち、低剛性部14は、靴底3の後端から靴底3の前端よりも後端側の位置まで延びる。このように構成されることで、衝撃を受けやすい先端部の剛性が低下することを抑制できる。さらに、低剛性部14は、後端側が前端側よりも厚み方向の圧縮に対する剛性が小さくなるように構成されている。また、本実施形態で、低剛性部14は、靴底3の他の部位と比べて、厚みが小さく構成された部位である。即ち、低剛性部14は、厚みが他の部位と比べて小さいので、厚み方向での圧縮に対する剛性が小さくなる。さらに、本実施形態の低剛性部14は、後端側が前端側に比べて靴底3全体の幅方向における長さ(幅)が長く(大きく)なるように設けられている。即ち、低剛性部14は、先細形状に構成されている。また、本実施形態の低剛性部14は、靴底3全体の幅方向の中心線C1に沿って延びるように配置されている。即ち、本実施形態の低剛性部14は、着用者の足の幅方向の中心線の位置に即して延びるように配置されている。
【0021】
低剛性部14には、底面から上方に窪む凹部15と、底面から上方に離間した位置で、後端部から前方に向かって窪む空洞部16と、が形成される。即ち、低剛性部14は、凹部15及び空洞部16によって、厚み(靴底3の肉厚)が小さくなるように構成されている。また、本実施形態の低剛性部14の靴底3の幅方向における長さは、靴底3全体の幅方向長さの15%以上、50%以下の範囲に設定される。このような範囲内であれば、低剛性部14が確実に圧縮により変形することができ、かつ、当該変形が後方から前方に移動していくことで、荷重を幅方向における意図した範囲に誘導できる。また、本実施形態の低剛性部14は、靴底3の前後方向に連続的に延びるように構成されている。なお、低剛性部14を靴底3の前後方向に断続的に設けることもできる。
【0022】
凹部15は、靴底3の底面から上方に窪むように形成された窪みである。即ち、凹部15は、接地面3aのうち、靴底3が接地した際に、地面から上方に離れて位置する(地面から浮いた状態になる)部位である。また、凹部15は、靴底3全体の幅方向の中心線C1に沿って延びるように形成された溝状の窪みである。さらに、凹部15は、後端側が前端側よりも上方に大きく窪むように形成されている。具体的に、凹部15は、後方から前方に向かうにつれて、徐々に浅くなるように形成されている。また、凹部15の横幅(靴底3全体の幅方向に沿った長さ)は、後端側が前端側よりも大きくなるように形成されている。即ち、凹部15は、先細形状に形成されている。具体的に、凹部15の後端部における横幅(靴底3全体の幅方向における長さ)は、後述する荷重案内部11の横幅(靴底3全体の幅方向における長さ)の最大長さの15%以上30%以下に構成されている。また、凹部15の前端部における横幅は、後端部における横幅の半分以下になるように構成されている。
【0023】
図4及び
図5に示すように、空洞部16は、底面から上方に離間した位置で、後端部から前方に向かって延びるように形成された空洞である。また、空洞部16は、高弾性部7と中間層部8の間に形成された空洞である。本実施形態で、空洞部16は、靴底3の後端部から、着用者の踵骨の下方に対応した位置よりも後端側の位置まで延びる空洞である。さらに、空洞部16は、後端から前方に向かって、靴底3全体の幅方向の中心線C1に沿って延びるように形成されている。即ち、空洞部16は、靴底3の幅方向一端側及び他端側の外縁とは連通しないように形成されている。また、本実施形態で、空洞部16の厚み方向の長さ(上下方向長さ)は、後端部における凹部15が上方に窪む深さよりも小さく構成されている。
【0024】
本実施形態の低剛性部14の後端部には、凹部15及び空洞部16の両方が形成されている。具体的に、低剛性部14には、靴底3の着用者の踵骨の下方に対応した位置よりも後側の範囲に、凹部15及び空洞部16の両方が形成されている。また、凹部15と空洞部16は、幅方向の同じ位置に形成されている。即ち、空洞部16は、凹部15の上方に形成されている。
【0025】
図3及び
図6に示すように、荷重案内部11は、靴底3の後端部を構成する部位である。本実施形態で、荷重案内部11は、靴底3の後端部から、着用者の中足骨の下方に対応した位置の後側までの範囲(足根骨の前端までの範囲)に設けられる。即ち、荷重案内部11は、歩行時に靴底3が最初に接地する部分に設けられている。また、荷重案内部11は、幅方向で低剛性部14の一方側及び他方側にそれぞれ配置される荷重受け部17を備える。さらに、荷重案内部11の後端部には、靴底3全体の幅方向で両荷重受け部17の間の位置に、後方から前方に窪むように形成された縁切り窪み22が形成される。本実施形態のミッドソール5には、前後方向で荷重案内部11が位置する範囲内に、高弾性部7が配置されている。即ち、本実施形態の荷重案内部11は、他の部分よりも反発弾性率が高く構成されている。具体的に、本実施形態の荷重案内部11は、他の部分と比較して3%以上反発弾性率が高く構成される(測定方法は、JIS K 6400-3準拠とする)。また、荷重案内部11は、後端部が着用連結部6よりも後側に突出するように構成されている。本実施形態で、荷重案内部11のうち、靴底3全体の幅方向で最も一端側の位置又は他端側の位置に位置する幅端部位置Aは、着用連結部6の後端部よりも後方に位置する。具体的に、幅端部位置Aは、荷重案内部11において、靴底3全体の幅方向の中心から幅方向の一端側に最も離れた位置及び幅方向の他端側に最も離れた位置である。さらに、荷重案内部11において、幅端部位置Aよりも前方は、先細り形状に構成されている。
【0026】
荷重案内部11は、上方よりも下方が靴底3の外側に位置するように構成されている。具体的に、荷重案内部11は、靴底3全体の幅方向において、底面が上面よりも外方まで延びるように構成されている。また、荷重案内部11は、底面が上面よりも後方まで延びるように構成されている。このように、荷重案内部11は、上方よりも下方が靴底3の外側に位置するように構成されているので、幅方向の一端側に荷重が偏った状態で踵側から接地して荷重案内部11の底面の外縁部分に集中的に負荷がかかった場合に、荷重を幅方向の中央寄りに案内させるための変形をしやすい。具体的に、荷重案内部11の底面の外縁部分に集中的に負荷がかかった場合には、幅方向一端側の外縁部分が地面と接するように変形する。この変形によって、外縁部分にかかった負荷を外縁中心に靴底3全体が接地する方向へ回動する力に変換でき、外縁部分よりも中央寄りの部分が接地するように案内できるため、荷重を幅方向の中央寄りに案内できる。
【0027】
荷重受け部17は、荷重案内部11の幅方向において一端部及び他端部に設けられる部位である。また、荷重受け部17は、荷重案内部11の後端に設けられる部位である。さらに、荷重受け部17は、荷重受け部17の幅方向における中心線C2が、靴底全体の幅方向における中心線C1に対して、後側ほど離れるように構成される。本実施形態の荷重受け部17は、荷重案内部11の両幅端部位置Aのうち、いずれか一方を含むように設けられる。即ち、荷重受け部17は、荷重案内部11のうち、幅方向で最も一端側又は他端側に位置する部分を含むように構成されている。また、荷重受け部17の最も後端側の位置(後端位置B)は、幅端部位置Aよりも内方に位置している。具体的に、荷重受け部17のうち、幅端部位置Aよりも後方は、後側ほど幅が小さくなる先細りの形状に構成されており、後端部は幅端部位置Aよりも幅方向で内方に位置している。また、
図2に示すように、荷重受け部17の外縁部分には、上下方向に延びる蛇腹部18が形成されている。蛇腹部18は、靴底3の外方突出する部分及び内方に窪む部分が上下に連続して配置された部位である。このような蛇腹部18が外縁部分に形成されるので、荷重受け部17の外縁部分に荷重がかかった際に変形しやすくなる。さらに、本実施形態の荷重受け部17は、幅方向で、着用部2の両端部よりも外方まで延出し、前後方向で、着用部2の後端部よりも後方まで延出するように構成されている。
【0028】
また、
図3及び
図6に示すように、本実施形態の荷重受け部17は、靴底3の幅方向の外側部分に沿って延びる辺である外縁辺19と、靴底3の後端部分に沿って延びる辺である後端辺20と、靴底3の幅方向の内側部分に沿って延びる辺である内縁辺21と、を備える。本実施形態の外縁辺19及び内縁辺21は、略直線状に延びる辺である。また、本実施形態の後端辺20は、外縁辺19から内縁辺21に向かって延び、かつ、内縁辺21に近づくにつれて後側に位置するように延びる略直線状に延びる辺である。さらに、本実施形態の荷重受け部17は、内縁辺21と後端辺20の接続部分及び外縁辺19と後端辺20の接続部分には、角が形成されている。具体的に、内縁辺21と後端辺20の接続部分に形成される角は、靴底3の後端部分である後端位置Bであり、外縁辺19と後端辺20の接続部分に形成される角は、幅端部位置Aである。即ち、本実施形態の荷重受け部17で、後端位置B及び幅端部位置Aは角として構成されている。なお、本実施形態の角(後端位置B及び幅端部位置A)は面取りがされている。また、本実施形態で、幅端部位置Aは鈍角であり、後端位置Bは鋭角である。
【0029】
本実施形態の一対の荷重受け部17は、靴底3全体の幅方向の中心線C1基準で、幅方向に対称となるように設けられている。即ち、荷重が靴底3全体の幅方向の中心線C1に近い位置にかかっている場合には、一対の荷重受け部17の両方に略均等に負荷がかかるように構成されている。このような構成により、荷重が靴底3全体の幅方向の中心線C1に近い位置にかかっている場合には、荷重が幅方向一方側又は他方側に案内されることを抑制しつつ、より中心線C1側に案内できるので、確実に、荷重が幅方向で中央寄りにかかるようにすることができる。さらに、荷重受け部17の内縁部分は、凹部15の幅方向の一端に接するように構成されている。即ち、本実施形態の荷重受け部17は、幅方向で、靴底3の一端部又は他端部から凹部15までに亘って延びる部位である。
【0030】
縁切り窪み22は、一対の荷重受け部17の間に形成された、後方から前方に向かって窪む、窪み部分である。本実施形態の縁切り窪み22は、一対の荷重受け部17の後端部同士の間に空間を形成するように設けられている。また、縁切り窪み22は、一方の荷重受け部17が受けた荷重が、他方の荷重受け部17に伝達することを抑制する部位である。即ち、荷重受け部17は、縁切り窪み22によって、接地した際に受ける幅方向での荷重の伝達が絶縁される。また、本実施形態の縁切り窪み22は、幅方向で一対の荷重受け部17の間、かつ、前後方向で荷重案内部11の後端部から低剛性部14までの範囲に空間を形成する。本実施形態で、縁切り窪み22によって形成される窪みと凹部15とは、前後方向で連続するように形成される。このように窪みと低剛性部14が連続して形成されるので、一方の荷重受け部17にかかった負荷の他方の荷重受け部17への伝達を絶縁しつつ、低剛性部14が沈み込むように変形できるので、確実に荷重を幅方向で中央寄りに案内し、荷重が幅方向の中途部分にかかった状態を維持できる。
【0031】
図2に示すように、荷重案内部11における後端部には、後側が上方に位置し、前側が下方に位置するような傾斜面23が形成されている。傾斜面23は、靴底3の接地面3aのうち傾斜面23よりも前方の部分(本実施形態では中途案内部12)を水平な地面に接地させた際に、地面に対して0度以上15度以下の範囲となるように構成される。また、傾斜面23は、着用者の踵骨の下方に対応した位置よりも後側に配置される。即ち、傾斜面23は、踵部分から接地しようとしたときに、最初に接地する部分に形成されている。
【0032】
ここで、傾斜面23の地面に対する角度は、小さいほど接地が早まる。具体的に、靴底3が接地する際には、靴底3全体が、前方が上方に位置するように傾いた状態で、地面に対して接近し、靴底3の後端部が地面に接する。このように、靴底3全体が、前方が上方に位置するよう傾いた状態では、傾斜面23の地面に対する角度が小さいほど、靴底3の後端部と地面の距離が小さくなり、傾斜面23の地面に対する角度が大きいほど、靴底3の後端部と地面の距離が大きくなる。
【0033】
湾曲部13は、靴底3の前端部分に設けられた部位である。また、湾曲部13は、前端部が上方に位置するように湾曲した部位である。さらに、湾曲部13は、前後方向で、第一中足骨の骨頭(前端)から中央の範囲から前方に向かって延びるように設けられている。即ち、湾曲部13の後端部は、前後方向で、第一中足骨の骨頭(前端)から中央の範囲に位置している。また、湾曲部13の後端部は、着用連結部6の前後方向長さにおいて、着用部2の後端部から55%以上70%以下の範囲内に位置している。本実施形態の湾曲部13は、靴底3の前端までに亘って延びるように設けられている。
【0034】
中途案内部12は、荷重案内部11から湾曲部13までの間に延びる部位である。また、中途案内部12は、踵部分の接地が完了し、靴底3全体が地面に接地した際に荷重を受ける部位である。さらに、中途案内部12は、立位時(歩行動作をせずに立っている時)に、地面に接して、荷重を受ける部分である。本実施形態の中途案内部12は、靴底3を水平な地面に載置した際に、底面が地面と平行に延びるように構成されている。このように、中途案内部12が靴底3を水平な地面に載置した際に、底面が地面と平行に延びるように構成されているので、踵部分の接地が完了した後に、中途案内部12全体が接地することができるので、接地面積を確保することができ、歩行の安定性を高めることができる。
【0035】
以上のような靴底3を備えた靴1を着用して歩行する場合について
図7を参照して説明する。本実施形態では、歩行において、一方の足が接地する直前の状態から、一方の足が離地するまでの間の動作について説明する。
【0036】
図7(a)に示すように、一方の足が接地する直前から接地するときにかけて、靴底3は、後方が下側に位置するように傾いた状態となる。具体的に、接地する直前の段階で、靴底3は、踵側が地面に近く、つま先側が地面から遠い状態となる。そして、靴底3が接地する際には、まず踵側が接地する。
【0037】
ここで、靴底3の後端部に形成される傾斜面23の地面に対する角度は、0度以上15度以下の範囲であるので、一般的なウォーキングシューズ(対応する角度が大きい)に比べて、靴底3の後端部の接地のタイミングを早めることができる。具体的に、傾斜面23の地面に対する角度が小さいので、靴底3の後端部と地面との距離が傾斜面23の地面に対する角度が大きい場合と比べて小さくなる。よって、接地のタイミングを早めることができる。なお、接地のタイミングが早いとは、靴底3の先端部(爪先部分)が地面から遠い状態で接地できることを指す。
【0038】
靴底3の後端部の最初に接地する位置は、(1)荷重が足の内方に偏っている場合、(2)荷重が足の外方に偏っている場合、(3)荷重が足の内方及び外方に略均等にかかっている場合、でそれぞれ異なる。それぞれの場合について靴1が左足に着用されている場合を例に挙げて説明する。
【0039】
(1)荷重が足の内方に偏っている場合には、靴1の右側に荷重が偏った状態となる。例えば、爪先が足の内方に向いた状態で歩行する、いわゆる内股歩行の状態のとき等に荷重が足の内方に偏ることがある。荷重が右側に偏っている時には、靴1の右側が最初に接地する。具体的には、一対の荷重受け部17のうち、右側に位置する荷重受け部17が先に接地する。さらに、荷重が足の内方に偏っている場合には、右側の荷重受け部17の外縁辺19が最初に接地する。本実施形態では、右側の荷重受け部17の幅端部位置Aが最初に接地する。即ち、荷重が足の内方に偏っている場合には、一対の荷重受け部17のうち、幅方向で足の内方に対応した側に設けられる荷重受け部17の、幅方向で足の内方に対応した側の端部が最初に接地する。
【0040】
右側の荷重受け部17が最初に接地すると、靴底3の後端部の右側に荷重が集中する。また、右側に荷重が集中すると、荷重受け部17により生じる荷重の反力により、靴底3に右側から左側に向かう力(接地点から左前方に向かう力)がかかる。この荷重受け部17により生じる荷重の反力により、右側に偏っていた荷重が左側に移動する。ここで、一対の荷重受け部17同士は、縁切り窪み22により、荷重の幅方向での伝達が絶縁されているので、荷重受け部17により生じる荷重の反力は、左側の荷重受け部17に移ってしまうことがなく、右側の荷重受け部17に集中的にかかる。さらに、右側の荷重受け部17の外縁辺19の一部が接地し、外縁辺19が接地した状態で右側から左側に向かう力がかかるので、外縁辺19のうち接地した部分を軸心として、靴底3の幅方向の全域が接地する方向へと回動するように力がかかる。よって、右側に集中した荷重受け部17により生じる荷重の反力により、荷重案内部11の幅方向の一端部及び他端部の両方が接地できる。また、本実施形態では、幅方向端部が角として構成されているので、幅方向端部が最初に接地した際には、靴底3全体が地面に対して不安定な状態となる。よって、不安定な状態の靴底3に右側から左側へと向かうように誘導する力がかかるので、荷重案内部11の幅方向の一端部及び他端部の両方が確実に接地できる。
【0041】
よって、(1)荷重が足の内方に偏っている場合には、右側に偏った荷重受け部17により生じる荷重の反力により、右側に偏った荷重が左側に移動する。また、荷重の移動により、荷重案内部11の幅方向の一端部及び他端部の両方が接地する。
【0042】
(2)荷重が足の外方に偏っている場合には、靴1の左側に荷重が偏った状態となる。例えば爪先が足の外方に向いた状態で歩行する、いわゆる外股歩行の状態のとき等に荷重が足の外方に偏ることがある。荷重が外方に偏っている場合には、上述の(1)荷重が足の内方に偏っている場合と左右対称の動きをする。具体的に、靴1の左側、具体的には、一対の荷重受け部17のうち、左側に位置する荷重受け部17が最初に接地する。よって、(2)荷重が足の外方に偏っている場合には、左側に偏った荷重受け部17により生じる荷重の反力により、左側に偏った荷重が右側に移動する。また、荷重の移動により、荷重案内部11の幅方向の他端部及び一端部の両方が接地する。
【0043】
(3)荷重が足の内方及び外方に略均等にかかっている場合には、荷重が足の右側又は左側に偏っておらず、足の幅方向の中央部分に荷重がかかっている状態となる。例えば、爪先が進行方向に向いた状態で歩行している時などに荷重が足の内方及び外方に略均等にかかっている状態となる。荷重が足の内方及び外方に略均等にかかっている状態では、靴底3の後側が最初に接地する。具体的に、一対の荷重受け部17の両方の後端部(後端位置B)が略同時に接地する。また、荷重が足の内方及び外方に略均等にかかっている場合には、両荷重受け部17の後端辺20が最初に接地する。また、本実施形態の後端位置Bは、幅端部位置Aよりも幅方向で内方に位置するので、荷重が足の内方及び外方に略均等にかかっている場合に、確実に後端位置Bが最初に接地できる。
【0044】
一対の荷重受け部17がほぼ同時に接地すると、靴底3の後端部の幅方向の両方に略均等に荷重がかかる。よって、荷重受け部17により生じる荷重の反力は、靴底3の右側及び左側に略均等にかかり、靴底3を幅方向の一方側から他方側に向かう力及び他方側から一方側に向かう力が打ち消しあう。一方で、荷重受け部17により生じる荷重の反力により、靴底3の後側から前側に向かう方向に力がかかる。よって後端辺20が接地し、かつ、後側から前側に向かう力がかかるので、後端辺20のうち接地した部分を軸心として、靴底3の前後方向の全域が接地する方向へと回動するように力がかかる。よって、荷重受け部17により生じる荷重の反力により、靴底3全体が接地するように促される。また、本実施形態では後端位置Bが角として構成されているので、後端位置Bが最初に接地した際には、靴底3全体が地面に対して接地面積が少なく、不安定な状態となる。よって、不安定な状態の靴底3に後側から前側へと向かう力がかかるので、靴底3全体が接地するように確実に促すことができる。また、後端位置Bは鋭角であるので、後端位置Bが接地した際に荷重によって変形しやすい。
【0045】
以上のように、本実施形態の靴底3の後端部が接地する際には、(1)荷重が足の内方に偏っている場合、(2)荷重が足の外方に偏っている場合、(3)荷重が足の内方及び外方に略均等にかかっている場合のいずれの場合であっても、荷重が靴底3の幅方向の中央寄りにかかるようになる。即ち、歩行者の足の重心が靴底3の幅方向の中央寄りに位置している状態となる。また、低剛性部14が靴底3の軸線方向で荷重案内部11が位置する範囲内に設けられるので、靴底3の中央寄りに位置した荷重が幅方向でずれることを抑制できる。
【0046】
図7(b)に示すように、靴底3の踵骨に対応した部分が接地(イニシャルコンタクト)してから、爪先部分で蹴りだして離地(トーオフ)するまでの中途段階では、中途案内部12全体が接地する。
【0047】
ここで、荷重案内部11により、荷重が靴底3の幅方向の中途部分に案内されると、低剛性部14に靴底3の厚み方向に圧縮する方向の力がかかる。低剛性部14に圧縮する方向の力がかかることにより、低剛性部14は、下方に沈み込むように変形する。具体的に、低剛性部14に圧縮する方向の力がかかることにより、凹部15及び空洞部16によって形成される空間がつぶされ、結果として、低剛性部14が下方に沈み込む。低剛性部14が下方に沈み込むと、荷重が低剛性部14に集中するように案内される。即ち、荷重案内部11によって靴底3の幅方向の中途部分に案内された荷重が、低剛性部14によって維持され、荷重が靴底3の幅方向の一方側又は他方側に移動することが抑制される。
【0048】
本実施形態の低剛性部14は、前後方向で荷重案内部11から少なくとも中途案内部12までに亘って延びているので、荷重案内部11が荷重を靴底3の幅方向の中途部分に案内した状態を維持できる。即ち、本実施形態の中途案内部12でも荷重が靴底3の幅方向の中途部分にかかる状態とすることができる。また、低剛性部14は、靴底3の後端部から前方に連続して延びるように設けられているので、荷重の後方から前方への移動をスムーズにすることができる。
【0049】
なお、
図7(a)に示す接地の段階で、荷重の移動が十分にされておらず、荷重が右側又は左側に偏っている場合には、低剛性部14の靴底3の厚み方向に圧縮する変形により、靴底3の幅方向の中央部分が下方に沈み込み、荷重が幅方向の中途部分にかかるように誘導される。即ち、荷重の幅方向中途部分への誘導は、靴底3の荷重案内部11及び中途案内部12が接地する間にされるように構成することもできる。
【0050】
図7(c)に示すように、爪先部分で地面を蹴りだして離地する直前の状態では、湾曲部13が接地する。具体的に、爪先部分で地面を蹴りだして離地する直前では、荷重が靴底3の前後方向で前方に荷重がかかる。荷重が前方にかかると、上方に湾曲している湾曲部13が接地し、荷重案内部11及び中途案内部12が地面から浮いた状態となる。また、荷重が前方に移動する際には、湾曲部13の底面が後側から前側に向かって地面の上を転がるように移動する。具体的に、湾曲部13は、爪先で地面を蹴りだすために前端側に荷重がかかった際に、前端部分が地面に近づくように移動する。湾曲部13は、この前端部分の下方への移動のエネルギーを転がりの力に変換する。湾曲部13は、後方から前方に転がるように移動することで、足の前方への移動を補助する。具体的に、爪先部分で地面を蹴りだす際に、湾曲部13の転がりによる前方への勢いが足にかかった状態となるので、爪先部分で地面を蹴りだした後、足が前方に移動する際に、湾曲部13の転がりの勢いが足にかかり、歩行速度が向上する。
【0051】
本実施形態の靴底3では、少なくとも中途案内部12の前端部分まで低剛性部14が設けられているので、爪先部分で地面を蹴りだす動作に入る直前の段階まで、荷重が靴底3の軸線方向中途部分にかかった状態を維持できる。また、本実施形態の靴底3では、低剛性部14が湾曲部13の中途部分にまで設けられているので、湾曲部13が地面の上を転がる際にも、低剛性部14が下方に沈み込むように変形できるため、幅方向における荷重の位置が、一端側又は他端側に偏る(荷重が揺らぐ)ことを抑制できる。よって、着用者の歩行速度を向上させることができる。さらに、荷重が靴底3の幅方向の中央付近に沿って移動する状態で着用者が歩行動作を反復することで、靴底3における荷重の後方から前方への移動に伴って、爪先部分が進行方向を向くように誘導できるため、着用者の歩行速度をさらに向上させることができる。
【0052】
以上のような靴底3によれば、荷重受け部17が幅方向の一端側に偏って配置され、荷重受け部17の中心線C2が靴底3全体の中心線C1に対して後側ほど離れるように構成されているので、幅方向の一端側に荷重が偏った状態で踵側から接地した際に、荷重受け部17が接地するため、荷重受け部17に荷重が集中し、該荷重の反力によって、幅方向他端側に向かう力がかかる。よって、接地時に荷重を靴底3の中央寄りに誘導することができるので、荷重が靴底3の中央を通り抜けて前方へ向かうことを補助でき、荷重が後方から前方に向かう際に靴底3の幅方向に揺れ動くことを抑制できるため、イニシャルコンタクトからトーオフの時間を短縮できる。また、荷重受け部17の中心線C2が靴底3全体の中心線C1に対して後側ほど離れるように構成されているので、荷重が荷重受け部17に沿って後方から前方に移動することにより、荷重を確実に靴底3全体の中心線C1に近づくように誘導できる。
【0053】
また、荷重受け部17は、少なくとも靴底3全体の幅方向の一端部及び他端部に設けられ、荷重受け部同士は、接地した際に受ける荷重の幅方向での伝達が絶縁させるように構成される。かかる構成によれば、荷重受け部17は幅方向の両端部に設けられ、荷重受け部17同士は荷重の伝達が絶縁させるように構成されているので、幅方向の一端側及び他端側のどちら側に荷重が偏っていたとしても、絶縁によって靴底3全体の幅方向中心に荷重がかかりにくくでき、その結果、荷重受け部17に荷重が集中し、該荷重の反力によって、幅方向で接地した側と反対側に向かう力がかかる。よって、荷重受け部17にかかった荷重の反力によって、荷重を確実に靴底3の中央寄りに誘導できる。
【0054】
さらに、他の部位と比べて厚み方向での圧縮に対する剛性が相対的に低く構成される低剛性部14を備え、低剛性部14は、靴底3全体の幅方向の中途部分に、後端部から前方に延伸するように配置されるよう構成される。かかる構成によれば、低剛性部14に対して厚み方向での圧縮する力がかかった場合に、低剛性部14が他の部位に比べて沈み込むように変形できる。よって、幅方向の中途部分に荷重がかかる状態を維持できるため、荷重が低剛性部14に沿って揺らぎなく通り抜けることを補助でき、イニシャルコンタクトからトーオフの時間を短縮できる。
【0055】
また、低剛性部14には、底面から上方に窪む凹部15が形成される。かかる構成によれば、底面から上方に窪む空間を有する凹部15が形成されるので、接地面3aが接地した際に、低剛性部14の変形が促されやすくなる。
【0056】
さらに、凹部15は、凹部15の後端部における靴底3全体の幅方向における長さが、荷重案内部11の幅方向の最大長さの15%以上30%以下であるように構成される。かかる構成によれば、凹部15の幅方向の長さが荷重案内部11の幅方向の最大長さの15%以上30%以下であるので、厚み方向に荷重がかかった際に、確実に変形することができ、かつ、接地した際の接地面3aの地面に対する接地面積を確保できる。
【0057】
また、凹部15は、後端側が前端側よりも深くなるよう形成されるよう構成される。かかる構成によれば、凹部15は、後端側が深く、前端側が浅く構成されているので、後側が大きく変形し、前側が小さく変形できる。よって、踵側から接地した際に、確実に変形して荷重を靴底3の中央寄りの位置に誘導でき、かつ、前端側で安定性を確保することができる。
【0058】
さらに、低剛性部14には、底面から上方に離間した位置で、後端部から前方に向かって窪む空洞部16が形成されるよう構成される。かかる構成によれば、底面から上方に離間した位置に空洞部16が形成されるので、地面に対する接地面積の減少を抑制しつつ、低剛性部14の剛性を小さくできる。よって、厚み方向に荷重がかかった際に、確実に変形することができ、かつ、接地した際の接地面3aの地面に対する接地面積を確保できる。
【0059】
また、接地面3a側の着用者の前足部の下方に対応した位置に、前端側が上方に位置するように湾曲した形状の湾曲部13が形成され、湾曲部13の後端部は、前後方向で着用者の第一中足骨の骨頭から中央の範囲内の下方に対応した位置に位置するよう構成される。かかる構成によれば、着用者の前足部の下方に対応した位置が湾曲部13として構成され、湾曲部13の後端部は着用者の第一中足骨の骨頭から中央の範囲内の下方に対応した位置に位置しているので、歩行時に前足部で地面を蹴る動作を湾曲部13によって早い段階から誘導できる。よって、歩行スピードを向上させることができる。
【0060】
さらに、接地面3a側の後端部には、後端側が上方に位置するような傾斜面23が形成され、傾斜面23の傾斜角度は、接地面3aのうち傾斜面23よりも前方の部分を水平な地面に接地させた際に、地面に対して0度以上15度以下の範囲となるように構成される。かかる構成によれば、傾斜面23の傾斜角度は、地面に対して0度以上15度以下の範囲内であるので、歩行時において、早いタイミングで後端部が接地する。よって、荷重案内部11による荷重の誘導を早い段階ですることができ、イニシャルコンタクトからトーオフの時間を短縮できる。
【0061】
また、荷重案内部11は、少なくとも着用者の踵部分の下方に対応した位置が、他の部分よりも反発弾性率が高い高弾性体を有するように構成される。かかる構成によれば、かかと部分が着地した際の衝撃を反発力に変えることができるので、反発力によって、地面を蹴る動作に誘導できるため、歩行スピードを高めることができる。
【0062】
さらに、靴底3は、後端部の反発弾性率が他の部位よりも高く構成され、かつ、底面に接地面3aを有するアウトソール4と、アウトソール4の上方に設けられるミッドソール5と、を備え、ミッドソール5は、反発弾性率の高い高弾性体によって構成された高弾性部7と、高弾性体よりも反発弾性率の低い材質で構成された中間層部8と、を備え、ミッドソール5の後端部は、高弾性部7と中間層部8とを積層した2層構造で構成される。かかる構成によれば、後端部を高弾性部7と中間層部8の2層構造とすることでミッドソール5の後端部の反発弾性率を高めることができる。よって、容易に後端部の反発弾性率を高めることができる。なお、靴底3の反発弾性率が前後方向で異なるように構成される場合に限らず、幅方向で異なるように構成することもできる。
【0063】
また、荷重受け部17は、荷重案内部11のうち、靴底3全体の幅方向で最も一端側の位置又は他端側の位置に位置する幅端部位置Aを有し、幅端部位置Aは、着用者の足を覆う着用部2が連結される着用連結部6の後端部よりも後側に配置されるよう構成される。かかる構成によれば、幅端部位置Aが着用連結部6の後端部よりも後側に配置されるので、荷重が幅方向の一方側又は他方側に偏っている場合に、早い段階で幅端部位置Aが接地できるので、荷重案内部11による足先の向きの誘導を早い段階ででき、イニシャルコンタクトの際に、荷重を靴底3の中央寄りの位置にかかるように誘導できる。
【0064】
さらに、荷重受け部17は、荷重案内部11の幅方向の最も一端側又は他端側の位置に位置する幅端部位置Aを有し、幅端部位置Aは、着用者の踵骨の下方に対応した位置よりも後側に設けられるので、踵骨より後側で荷重受け部17が確実に接地できるため、反力によって、イニシャルコンタクトの際に、確実に荷重を靴底3の中央寄りの位置にかかるように誘導できる。
【0065】
また、荷重受け部17は、靴底3の最も後端側の位置に位置する後端位置Bを有し、後端位置Bは、幅端部位置Aよりも幅方向で内方に位置するので、荷重が靴底3の幅方向で左右略均等にかかっている状態で接地したときに、後端位置Bから接地できるので、幅方向中央寄りの荷重を幅方向一端側又は他端側に移動してしまうことを抑制できる。さらに、後端位置Bが、幅端部位置よりも後方かつ内方に位置し、幅端部位置Aと後端位置Bの間は、直線状に延びる後端辺20で構成されているので、足角が進行方向に対して傾いた状態(爪先が外側や内側を向いた状態)で踵接地した際に、後端辺20部分で接地できるため、幅端部位置Aや後端位置Bのような、角が偏摩耗することを抑制できる。
【0066】
また、上記のような靴1によれば、荷重受け部17が幅方向の一端側に偏って配置され、荷重受け部17の中心線C2が靴底3全体の中心線C1に対して後側ほど離れるように構成されているので、幅方向の一端側に荷重が偏った状態で踵側から接地した際に、荷重受け部17が接地するため、荷重受け部17に荷重が集中し、該荷重の反力によって、幅方向他端側に向かう力がかかる。よって、接地時に荷重を靴底3の中央寄りに誘導することができるので、荷重が靴底3の中央を通り抜けることを補助でき、イニシャルコンタクトからトーオフの時間を短縮できる。また、荷重受け部17の中心線C2が靴底3全体の中心線C1に対して後側ほど離れるように構成されているので、荷重を確実に靴底3全体の中心線C1に近づくように誘導できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0068】
例えば、ミッドソール5は二層構造である場合について説明したが、このような構成に限らず、単層構造とすることもできるし、3層以上で構成することもできる。また、靴底3は、アウトソール4とミッドソール5を備える場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、アウトソール4を備えない、いわゆるユニソールとして構成することもできる。靴底3がユニソールとして構成される場合には、ミッドソール5の底面が接地面となる。
【0069】
また、荷重受け部17は、一対の荷重案内部11を左右対称に備える場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、内足側又は外足側のいずれかに荷重が集中することに特化した対策として、幅方向の一方側に偏って配置される1つの荷重案内部11のみを備える構成とすることもできるし、一対の荷重案内部11が左右非対称に設けられるように構成することもできる。また、荷重案内部11の数を3以上とすることもできる。
【0070】
さらに、荷重案内部11は、複数の辺と角を有する角張った形状である場合について説明したが、例えば、弧状に延びる丸い形状に構成することもできるし、後端位置Bが本実施形態よりも後方に鋭利な角度で突出するように構成することもできる。後端位置Bを鋭利な角度で後方に突出するように構成した場合には、荷重案内部11の後方への延出量を多くすることができるので、接地のタイミングを早めることができる。
【0071】
また、荷重受け部17は、着用部2の後端よりも後方まで延出する場合について説明したが、このような構成に限らず、着用部2の後端よりも前方の範囲にのみ設けられるように構成することもできる。
【0072】
さらに、低剛性部14には、凹部15及び空洞部16が形成される場合について説明したが、このような構成に限らず、凹部15又は空洞部16のいずれかのみが形成されるように構成することもできる。また、凹部15及び空洞部16が形成される数も任意に設定できる。
【0073】
また、低剛性部14は、厚みが薄く構成されることで、他の部位と比較して圧縮対する剛性が小さくなる場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、他の部位と材質を変えることで、他の部位と比べて圧縮に対する剛性が小さくなるように構成することもできる。また、靴底3が発泡体で構成される場合には、低剛性部14に相当する部位の発泡率を他の部位の発泡率よりも高めることで、低剛性部14の剛性を他の部位よりも小さく構成することもできる。
【0074】
さらに、低剛性部14は、靴底3の後端から湾曲部13の中途部分までに亘って設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、低剛性部14を荷重案内部11にのみ配置することもできるし、靴底3の前端から後端までにわたって延びるように配置することもできる。
【0075】
また、低剛性部14は、靴底3の幅方向の中心線C1に沿って延びるように設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、幅方向において荷重がかかるようにしたい位置に任意に配置することができる。
【0076】
さらに、一対の荷重受け部17は、縁切り窪み22によって幅方向の荷重の伝達が絶縁される場合について説明したが、このような場合に限らず、例えば、一対の荷重受け部17の間に幅方向での圧縮に対する剛性が小さい部位を設け、一対の荷重受け部17の間の荷重の伝達を絶縁するように構成することもできる。また、縁切り窪み22を設ける場合に、縁切り窪み22の幅方向の長さは、荷重受け部17間の荷重の伝達を絶縁できる程度であれば任意に設定できる。
【0077】
また、靴1及び靴底3を構成する材料は、本実施形態で例示した材料に限らない。例えば、荷重案内部11は、軟質発泡材料で構成される場合について説明したが、軟質発泡材料以外の材料で構成することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1…靴、2…着用部、3…靴底、3a…接地面、4…アウトソール、5…ミッドソール、6…着用連結部、7…高弾性部、8…中間層部、9…凹凸部、11…荷重案内部、12…中途案内部、13…湾曲部、14…低剛性部、15…凹部、16…空洞部、17…荷重受け部、18…蛇腹部、19…外縁辺、20…後端辺、21…内縁辺、22…縁切り窪み、23…傾斜面、A…幅端部位置、B…後端位置