(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090373
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】制動部を備えた魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/0155 20060101AFI20230622BHJP
A01K 89/015 20060101ALI20230622BHJP
A01K 89/02 20060101ALI20230622BHJP
H02P 3/22 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A01K89/0155
A01K89/015 A
A01K89/02 Z
H02P3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205304
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
(72)【発明者】
【氏名】三屋 幸久
(72)【発明者】
【氏名】石原 和政
【テーマコード(参考)】
2B108
5H530
【Fターム(参考)】
2B108EA14
2B108EE01
2B108HE25
2B108HE38
2B108HF05
5H530AA19
5H530BB40
5H530CD21
5H530CE15
5H530CE16
5H530CF02
5H530CF05
5H530CF12
5H530DD14
5H530EE05
5H530EE07
5H530EE08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スプールに制動力を付与する制動部を有する魚釣用リールにおいて、電池を用いることなくリール状態のログ保存やデータの外部への取出しを行うことが可能な魚釣用リールを提供する。
【解決手段】釣用リール1であって、釣用リールのリール本体2に回転可能に軸支されたスプール3と、スプールに取り付けられた永久磁石41とリール本体に取り付けられたコイル42との相互作用によりスプールに制動力を付与する制動部4と、制動部を制御する制御部5と、魚釣用リールの状態を検知する検出部6と、検出部により取得された情報を保存する保存部11と、保存部に保存された情報を送信する通信部12と、外部からの電力を受信可能な外部電力受信部15と、を備えるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールのリール本体に回転可能に軸支されたスプールと、
該スプールに取り付けられた永久磁石と該リール本体に取り付けられたコイルとの相互作用により該スプールに制動力を付与する制動部と、
該制動部を制御する制御部と、
該魚釣用リールの状態を検知する検出部と、
該検出部により取得された情報を保存する保存部と、
該保存部に保存された情報を送信する通信部と、
外部からの電力を受信可能な外部電力受信部と、
を備えることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記制御部は、前記スプールが放出方向に回転した場合は、前記魚釣用リールのリール状態に応じて該制動部の制動・非制動状態を間歇的に切替え、
前記スプールが巻取り方向に回転した場合は、該制動部を常時制動状態に切替える、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記制動部の制動に伴って発電可能な発電部を備え、該制御部は、
前記魚釣用リールのリール状態を保存するログ保存モードと、保存した情報を外部に通信する外部通信モードと、を有し、
該保存モードでは、前記発電部が発電した電力で前記制御部を作動・駆動させ、
該通信モードでは、前記外部電力受信部が受信した電力で前記制御部を作動・駆動する、請求項1又は2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記発電部は、前記コイルと前記スプールの相互作用によって発電する、請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
魚釣用リールのリール本体に回転可能に軸支されたスプールと、
該スプールに取り付けられた永久磁石と該リール本体に取り付けられたコイルとの相互作用により該スプールに制動力を付与する制動部と、
該制動部を制御する制御部と、
前記魚釣用リールの状態を検知する検出部と、
前記魚釣用リールから取外し可能にされ、該検出部により取得された情報を保存する保存部と、
を備えることを特徴とする魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体に回転自在に装着されたスプールを制動する制動部を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、両軸受リール、特に、釣り糸の先端にルアー等の仕掛けを装着して投擲(キャスティング)するベイトキャスティングリールには、投擲(キャスティング)時のバックラッシュを防止するためにスプールを制動する制動手段が設けられている。
【0003】
このような制動手段を備える魚釣用リールとして、特許文献1では、キャスト時のバックラッシュ発生を抑えるために、電気的に制御可能な制動手段を有する魚釣用リールが開示されている。特許文献1の魚釣用リールでは、スプールに設けた永久磁石と、ステータに備えたコイルとによって、スプール高速回転時に電力を発電し、そこで発生した誘導起電力を整流回路によって直流変換および電圧の安定化を行うと共に、その電力を蓄電素子に供給し、制御基板を駆動し、コイルの導通状態を適宜制御することで、スプールに適切な制動力を付与することを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1を含む従来の魚釣り用リールには、スプールの回転検出センサ等検知部を設けることで、糸長や巻取りスピード等のリール状態を検知することができる。検知されたリール状態は、ログを保存したり、スマートフォン等の外部機器と通信することで、ユーザの利便性を向上させることができる。しかしながら、特許文献1の魚釣用リールでは、スプールの回転数が所定値以下の場合(停止時や低速時)には、制御基板に電力を供給することができなかった。したがって、スプール低速回転時には、リール状態の保存や外部との通信を行うのが難しいという問題があった。また、これらを実現するために、電池により制御基板に給電を行う方法を採用すると、電池切れの際に機能を実現させることができなくなってしまう問題もあった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スプールに制動力を付与する制動部を有する魚釣用リールにおいて、電池を用いることなくリール状態のログ保存や外部への取出しを行うことが可能な魚釣用リールを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、魚釣用リールのリール本体に回転可能に軸支されたスプールと、該スプールに取り付けられた永久磁石と該リール本体に取り付けられたコイルとの相互作用により該スプールに制動力を付与する制動部と、該制動部を制御する制御部と、該魚釣用リールの状態を検知する検出部と、該検出部により取得された情報を保存する保存部と、該保存部に保存された情報を送信する通信部と、外部からの電力を受信可能な外部電力受信部と、を備えるように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記制御部は、前記スプールが放出方向に回転した場合は、前記魚釣用リールのリール状態に応じて該制動部の制動・非制動状態を間歇的に切替え、前記スプールが巻取り方向に回転した場合は、該制動部を常時制動状態に切替えるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、前記制動部の制動に伴って発電可能な発電部を備え、該制御部は、前記魚釣用リールのリール状態を保存するログ保存モードと、保存した情報を外部に通信する外部通信モードと、を有し、該保存モードでは、前記発電部が発電した電力で前記制御部を作動・駆動させ、該通信モードでは、前記外部電力受信部が受信した電力で前記制御部を作動・駆動するように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記発電部は、前記コイルと前記スプールの相互作用によって発電するように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、魚釣用リールのリール本体に回転可能に軸支されたスプールと、該スプールに取り付けられた永久磁石と該リール本体に取り付けられたコイルとの相互作用により該スプールに制動力を付与する制動部と、該制動部を制御する制御部と、前記魚釣用リールの状態を検知する検出部と、前記魚釣用リールから取外し可能にされ、該検出部により取得された情報を保存する保存部と、を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
上記実施形態によれば、スプールに制動力を付与する制動部を有する魚釣用リールにおいて、内部に電池を保持することなくリール状態のログ保存やデータの外部への取出しを行うことができる魚釣用リールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1におけるログ保存モードを説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1における外部通信モードを説明する図である。
【
図4】本発明のその他の実施形態に係る魚釣用リール1を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0015】
図1から3を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールについて説明する。
図1(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の電気的な機能構成を示すシステム図である。
【0016】
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の部品構成について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、フレーム(リール本体)2と、スプール3と、制動部(制動手段)4、制御部(制御手段)5と、検出部(検出手段ないしセンサ部)6と、外部電力受信部15とを含むように構成されるが、発電部8、電源選択部9、これら以外の構成部材を含むようにしてもよい。
【0017】
フレーム(リール本体)2は、釣竿(図示しない)に取付け可能に形成されている。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、従来の魚釣用リールと同様、図示しない操作部ないし操作手段(例えば、ハンドル)を有し、ユーザの操作によってスプール3を正方向に回転させ、釣糸を巻き取ることができる。操作部ないし操作手段(以下、操作部という)の回転は、図示しないギヤ等の伝達手段によってスプール3に伝達される。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、図示しないクラッチ部(クラッチ手段)を有し、ユーザはクラッチ部(クラッチ手段)を操作することで、スプール3への動力伝達の接続・解放を選択することができる。スプール3への動力伝達の接続状態では、操作部による巻き取りが可能にされる。他方、スプール3への動力伝達の開放状態では、スプールを正逆方向に自由に回転させることができ、釣糸が放出可能にされる。
【0019】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、所定値以上のトルクが発生した際にスプール3を空転させることで釣糸の破断を防止するドラグ部ないしドラグ手段(図示しない)や、操作部の逆回転を防止する逆回転防止部ないし逆回転防止手段(図示しない)を備えるようにしてもよい。さらに、スプール3の回転に応じて釣糸を案内する釣糸案内部の位置を往復運動させることで、釣糸を均等に巻き取るオシレータ装置(図示しない)を設けてもよい。
【0020】
スプール3は、リール本体2に対して回転可能にリール本体2に支持され、スプール3が正方向に回転することにより、スプール3の外周領域に釣糸を巻き取ることができる。他方、ルアー等を投擲する際は、スプール3が逆方向に回転し、巻回された釣糸を放出することができる。この際、釣糸の放出量がルアー等の移動量よりも多すぎると、余分な釣糸によりバックラッシュと呼ばれる糸絡みが発生し、魚釣用リール1の正常な使用を妨げる場合がある。このため、スプール3に対して後述する制動部4による適切な制動力を付与することにより、このようなバックラッシュを防止するようにしている。
【0021】
次に、制動部4について説明する。制動部4は、スプール3に設けられた永久磁石41と、フレーム2と一体に保持されるコイル42と、制御部5に設けられたスイッチ素子43と、から構成される。
【0022】
永久磁石41は、スプール3の回転軸と同軸の概略円筒形状に形成され、外周部がn等分されてN極とS極が交互に着磁される。コイル42は、巻回された芯線が、永久磁石41に対向して磁石41の磁場内に配置されるように略矩形に巻回されている。コイル42を複数配置する場合、それぞれのコイルは直列または並列に電気的に接続されており、その両端がスイッチ素子43に接続される。
【0023】
スイッチ素子43は、例えば、高速でオンオフ制御できる並列接続された2つのFET(電界効果トランジスタ)で構成され、コイル42の電気的な接続/切断を選択することができる。
【0024】
このような構成により、スプール3に対していわゆる発電ブレーキによる制動をかけることが可能となる。すなわち、スプール3の高速回転に伴い、永久磁石41の作る磁場はコイル42に対して相対移動をする。このときにスイッチ素子43によりコイル42を電気的に接続すると、コイル42には起電力が生じ、この起電力がコイル42の作る回路内で電流を作ることにより、永久磁石41には回転方向と逆方向に働く磁力が生じる。これにより、スプール3には、回転数の二乗に比例する制動トルクが生じる。また、スイッチ素子43によりコイル42を電気的に切断した場合は、この制動トルクの発生を停止することができる。
【0025】
スイッチ素子43の接続と切断を適宜切り替えることにより、スプール3に所定の制動トルクを発生させることができる。スプール3に制動トルクを発生させている間、スプール3の機械的エネルギーが、コイル42が形成する回路内において電気的エネルギーに変換される。
【0026】
このような変換手段を、本明細書では、発電部(発電手段若しくは発電機構)8又はスプール発電部8と呼ぶ。ここで、当該発電部8は、永久磁石41と、コイル42と、スイッチ素子43と、整流回路と、蓄電素子とで構成されるが、これらの構成部材以外のものを含むようにしてもよい。当該発電部8により、電気的エネルギーを生成し、生成された電気的エネルギーを制御部5に供給することで、制御部5を作動・駆動させることができる。本明細書においては、当該発電部8で生み出される発電をスプール発電と呼ぶこととする。なお、コイル42の外周には、鉄などの強磁性材料によるヨークを配置することで、永久磁石41による磁場を効率的にコイル42に発生させるようにしてもよい。
【0027】
次に、制御部5は、制動部4を制御することで、スプール3に対して適切な制動を行う。制御部5は、所定のプログラムを格納したROM、プログラム処理中に検出情報等を一時的に記憶する記憶部(RAM)、これらを制御するCPU、電源切断後もデータを保存可能なフラッシュROM等の保存部(ストレージ部又はストレージ手段)11、無線通信ネットワーク技術を用いた無線通信やUSBコネクタ等を介する有線通信などの外部との通信を行う通信部(通信手段)12等を有し、それぞれの構成要素は、一つの半導体部品内に配置されたり、電気回路が印刷された基板上に配置される。また、制御部5は、LEDやLCD、ブザーなどの表示・出力部(表示・出力手段)を有するよう構成することができる。
【0028】
制御部5のCPU(図示しない)は、魚釣用リールの状態を検出する検出部6の検出情報を取得するように構成される。検出部6には、例えば、スプールの回転状態を検出するスプール回転検出部ないし手段61、ハンドルの回転状態を検出するハンドル回転検出部ないし手段62、クラッチの接続/切断状態を検出するクラッチ検出部ないし手段63、釣糸の張力を検出する張力検出部ないし手段64、設定ドラグ力の検出を行う設定ドラグ力検出部ないし手段65、魚釣用リール及び釣竿の動きを検出するモーションセンサ66、制動部4における制動力を検出する制動力検出部67等が考えられるが、これらの一部または全部を備えるように構成することができる。
【0029】
スプール回転検出部61は、スプールに設けた磁石などの被検出部が、リール本体(フレーム)に設けたコイルなどの検出部に近接した際に生じる電気信号によって、スプールの回転の有無を検出するこができる。検出手段としては、フォトセンサや磁気センサなど、従来公知の方法を用いることができ、検出手段に応じて適宜スプールには適切な被検出部を設けるようにすればよい。
【0030】
また、ハンドル回転検出部62は、ハンドルまたはそれに連動して回転するギヤ等に回転センサを取付けることで実現可能である。フォトインタラプタや磁気センサを利用したインクリメンタル式の回転センサなど、公知の手段で実現可能である。ハンドルのスムーズな回転を実現するため、非接触式の回転センサが望ましい。ハンドル回転検出部62と、スプール回転検出部61との差分を取ることにより、ドラグ装置によって空転した回転量を算出することができる。
【0031】
また、クラッチ検出手段63は、クラッチの作動する部材の一部に、リミットスイッチ又はその他のセンサ等を取付けることで、釣糸がスプールから放出可能か否かを検出するこができる。張力検出部64は、釣糸を案内するプーリーの回転軸に働く力をひずみセンサで検出するなど、従来公知の様々な技術により実現可能である。
【0032】
また、設定ドラグ力検出部65は、スプールが空転する閾値となる設定張力を検出する。ドラグ装置内の摩擦部材に働くチャージ力を、圧力センサ等により検出することにより実現可能である。
【0033】
また、モーションセンサ66は、釣竿やリールの動作を検出することができる。振動させた圧電素子の周波数変化を検知する方式など、従来公知の技術であるジャイロセンサを利用することにより実現可能である。なお、直交する3軸それぞれの方位、加速度、角速度を検出する9軸モーションセンサと呼ばれるセンサを利用することで、方位検出部、加速度検出部、角速度検出部とすることができる。また、設定制動力検出部67は、バックラッシュ抑制のための制動力の設定値を検出することができる。
【0034】
制御部5は、上述した検出部6の検出結果に応じて、公知の切り替えタイミングによって適宜スイッチ素子43の接続と切断を切り替えることにより、スプール3に所定の制動トルクを発生させることができる。これにより、バックラッシュの発生を避けつつ、ルアー等の飛距離を増やすことができる。
【0035】
このように、制御部5により制動部4を適宜制御するシーケンスを、キャスト制動モードと呼ぶことにする。キャスト制動モードにおける制動方法には、種々の公知の手段を用いることが可能であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0036】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、魚釣用リール1のリール本体2に回転可能に軸支されたスプール3と、該スプール3に取り付けられた永久磁石41と該リール本体2に取り付けられたコイル42との相互作用により該スプール3に制動力を付与する制動部4と、該制動部4を制御する制御部5と、該魚釣用リール1の状態を検知する検出部6と、該検出部6により取得された情報を保存する保存部11と、該保存部11に保存された情報を送信する通信部12と、外部からの電力を受信可能な外部電力受信部15と、を備えるように構成される。
【0037】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、スプール3に制動力を付与する制動部4を有する魚釣用リール1において、内部に電池を保持することなくリール状態のログ保存やデータの外部への取出しを行うことができる魚釣用リール1を提供することが可能となる。具体的には、例えば、釣りをしている間の糸長変化を保存し、スマートフォン等の外部機器でその情報を確認することが可能となる。
【0038】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、当該制御部5は、当該スプール3が放出方向に回転した場合は、魚釣用リール1のリール状態に応じて該制動部4の制動・非制動状態を間歇的に切替え、該スプール3が巻取り方向に回転した場合は、該制動部4を常時制動状態に切替えるように構成される。このようにして、投擲時には制動部に適切な制動力を働かせることでバックラッシュの発生を避けつつ、ルアー等の飛距離を増やすことができる。また、巻取り時には発電部8による発電量を確保することが可能となる。
【0039】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、当該制動部3の制動に伴って発電可能な発電部8を備え、該制御部5は、該魚釣用リール1のリール状態を保存するログ保存モードと、保存した情報を外部に通信する外部通信モードと、を有し、該保存モードでは、該発電部8が発電した電力で該制御部5を作動・駆動させ、該通信モードでは、該外部電力受信部15が受信した電力で該制御部5を作動・駆動するように構成される。このようにして、魚釣用リールの構成要素として電池を使用することなく、スプールの回転数が所定値以上の場合にログ保存モードによってリール状態を保存することができる。また、外部電力によってリール内に保存したーデータを読み取ることが可能となる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、当該発電部8は、当該コイル42と当該スプール3の相互作用によって発電するように構成される。このようにして、スプール3の回転時の運動エネルギーによって、制御部を駆動するための電力を発電することが可能となる。
【0041】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、魚釣用リール1のリール本体2に回転可能に軸支されたスプール3と、該スプール3に取り付けられた永久磁石41と該リール本体2に取り付けられたコイル42との相互作用により該スプール3に制動力を付与する制動部4と、該制動部4を制御する制御部5と、該魚釣用リール1の状態を検知する検出部6と、該魚釣用リール1から取外し可能にされ、該検出部6により取得された情報を保存する保存部21と、を備えるように構成される。
【0042】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、スプール3に制動力を付与する制動部4を有する魚釣用リール1において、内部に電池を保持することなくリール状態のログ保存やデータの外部への取出しを行うことができる魚釣用リール1を提供することが可能となる。具体的には、例えば、釣りをしている間の糸長変化を保存し、スマートフォン等の外部機器でその情報を確認することが可能となる。
【0043】
次に、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1におけるリール状態のログ保存モードについて説明する。上述のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、制動部4がスプール3に制動力を生成している間、スプール3の運動エネルギーを、コイル41の作る回路内の電気的エネルギーに変換することができる。この電気的エネルギーにより、制御部5や検出部6を駆動することができる。投擲時やハンドル高速回転時など、スプール3の回転数が所定値以上を越え、発電部(スプール発電部)8による発電量が所定値を越えると、制御部5や検出部6を作動ないし駆動可能となる。
【0044】
なお、制御部5を間歇作動・駆動させたり、スプール3の回転数が変動したりすると、発電部8による発電力も変動し得るが、蓄電素子によりその変動を平滑化することにより、制御部5や検出部6を安定して駆動することができる。なお、発電部8による発電量が、制御部5や検出部6を作動ないし駆動可能とする閾値は、発電部8の発電効率によって決まる。発電効率を上げるには、永久磁石41の体積を大きくすること、磁束密度の高い材質を用いること、コイル42の巻き数を増やすこと、巻き線の径を大きくすること等の手段が考えられる。また、制御部5や検出部6の消費電力を小さくすることで、上記閾値を小さくすることができる。
【0045】
この発電又は蓄積された電力が所定値以上になると、制御部5を起動させ、ログ保存モードを開始する(ステップA1)。開始処理として、検出部の起動や、メモリの初期化等も含まれる。制御部5は、所定のタイミング(例えば、一定期間経過毎やスプール3の回転数変化が所定値以上になったとき等)の場合(ステップA2)、魚釣用リール1のリール状態検出部により、スプール3の回転数などのリール状態を取得する(ステップA3)。必要に応じてその取得情報を演算したり、タイムスタンプを同時に取得するようにしてもよい。その結果を必要に応じてRAMに一時保存後、保存部(ストレージ部又はストレージ手段)11に保存する。保存部11への保存は、逐次行なってもよいし、後述する終了処理においてまとめて行ってもよい。
【0046】
次に、発電部8による発電電力が所定値以上であるか判断される(ステップA4)。投擲終了や、ハンドル回転一時停止時など、スプール3の回転数が所定値以下となると、発電部8による発電量が、制御部5や検出部6が駆動するための必要電力を下回る。その後、蓄電素子に蓄えられた電力も尽きると、制御部5や検出部6は駆動不能になる。したがって、制御部5は、作動ないし駆動不能に陥る前に、必要に応じて終了処理を行うとよい(ステップA5)。終了処理には、例えば、未保存のデータや終了時のタイムスタンプを保存部11に保存することや、魚釣用リール1のリール状態検出部の切断処理、通信部12により外部機器への終了イベント送信、演算等に使用した一時メモリの開放などがある。
【0047】
これにより、リール状態の時間変化を保存することができる。すなわち、投擲(キャスト)中のスプール3の回転数の時間変化を詳細に把握したり、ルアー回収の際の糸長変化や巻き取りスピードを記録することができる。
【0048】
また、釣糸を巻き取る際には、スイッチ素子43を接続し、制動部4を常時制動状態に切替えることで、発電部8による発電量を大きくすることができる。これにより、ユーザがハンドルを操作する際の操作トルクが増えてしまうものの、蓄電素子に蓄える電力を増やし、制御部5や検出部6を駆動する時間を長くすることができる。リール状態を検出する検出部6によって、スプール3の回転方向を検知し、放出方向に所定値以上の回転数になった場合はバックラッシュ防止のための制動シーケンスを実行し、必要に応じてスイッチ素子43を間歇駆動するとよい。スプール3の回転方向が巻取り方向だった場合、制動部4を常時制動状態にして、発電部8による発電量を確保することができる。また、ログ保存モードは、ルアー等を投擲する際、キャスト制動モードと同時に実行するようにしてもよい。また、スプール3の回転数が巻取り方向の場合はバックラッシュ発生のリスクが低く、キャスト制動モードを実行する必要が少ないため、ログ保存モードのみを実行するようにしてもよい。
【0049】
次に、
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1における保存データの外部送信モードについて説明する。具体的には、保存部に保存されたリール状態の保存データを外部に送信する外部送信モードに係るものである。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1における制御部5は、外部電源受信部15を介して、外部より電源供給を受けることができる。外部電源受信部15は、電波を介する無線給電によって電力を受信可能な受電用コイルや、有線給電によって電力を受信可能なUSBコネクタなどの有線接続コネクタ等が考えられるが、これらに限られない。
【0050】
外部電源受信部15が、外部より電源供給を受けると、スプール3の回転数に関わらずに制御部を作動ないし駆動させることができる。これをトリガーにすると、あるいは外部電源供給後に所定のコマンドを受信すると、制御手段は外部送信モードを開始する(ステップB1)。その開始処理として、送信先とのペアリング処理や、メモリの初期化等がある。外部送信モードでは、保存部11(図示の例では、ストレージ)に保存したリール状態のログデータ(データ)を取得し(ステップB2)、通信部12を介して外部機器にログデータ(データ)を送信する(ステップB3)。例えば、1キャスト毎など、1区切り分のデータを送信後、必要に応じて次のデータを送信する(ステップB4)。送信するデータが無くなれば、外部送信モードの処理を終了する(ステップB5)。
【0051】
外部機器としては、PC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォン等の情報通信端末、クラウド装置又はシステム、通信手段を備えた他のリールや魚群探知機等が考えられるが、これらに限られない。これにより、リール状態の時間変化を外部機器と共有することで、ユーザの利便性を向上することができる。通信部12による通信の態様は、外部機器の種類や通信するタイミングによって、使い分けることができる。例えば、釣りをしている間に、ユーザが携帯しているスマートフォンと通信する場合は、無線通信(無線給電も含みうる)を行うことで、コネクタ部に水滴や異物が混入することを避けることができる。
【0052】
これを実現するものとして、例えば、NFC等の近距離無線通信が挙げられる。近距離無線通信では、外部より電源供給を受信する外部電源受信部15と、外部にデータを送信するための通信部12(例えば、コイル)を共通化することができる。また、データ送信先の機器が近接した際の外部電源供給開始をモード開始のトリガーとすることで、ペアリングの操作や外部送信モード開始のコマンドを省略することができ、ユーザの利便性を向上することができる。
【0053】
釣行後に自宅でPCと通信するときや、工場出荷時に組立て装置と通信する際は、有線給電手段や有線通信手段を用いることで、通信可能な機器を増やしたり、通信対象とペアリングする際に生じ得る、混線等の問題発生を避けることができる 。
【0054】
なお、携帯可能な無線給電手段を手元における場合等、釣りをしながら外部給電が可能な状態では、外部電源給電中にログ保存モードを行なってもよい。その場合、ログ保存モードと外部送信モードとの切り替えは、コマンド送信によって行なうとよい。
【0055】
また、外部送信モードに要する消費電力が小さく、発電部8による発電電力が大きいとき、かつ蓄電素子に十分な電力が蓄えられるときは、外部給電を行わない状態で外部送信モードを用いてもよい。これにより、蓄電素子は大型化してしまうものの、外部からの電源供給を受ける必要が無くなり、外部電源受信部15の省略や小型化が実現できる 。
【0056】
ここで、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1による技術的効果について述べる。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、魚釣用リールの構成要素として電池を使用することなく、発電部による電力により魚釣り中のリール状態のログを記録することができる。これにより、ユーザは電池交換や充電、電源投入/切断などの作業をする必要がなくなり、利便性が向上する。さらに、電池を不要とすることで、魚釣用リール全体の小型化、軽量化、低コスト化、防水構造の簡易化、及び機器の長寿命化を実現することができる。また、電池切れが発生しない構成となり、スプールの回転数が所定値以上となった際は常にログデータの記録が可能となる。これによりログデータの保存の信頼性を向上させることができる。
【0057】
保存したリール状態のログデータは、外部から電源を供給されている場合に外部機器に送信することができる。これにより、外部機器にログ情報を送信する際にも、魚釣用リール自体に電池を用いる必要がないという点が挙げられる。
【0058】
次に、本発明の別の実施形態に係る魚釣用リール1について、
図4を参照して説明する。なお、
図1を参照して説明した本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1と同様の部分については説明を省略する。
【0059】
制御部15は、前述の実施系と同様、所定のプログラムを格納したROM、プログラム処理中に検出情報等を一時的に記憶する記憶部(RAM)、これらを制御するCPUを有するよう構成することができる。また、電源切断後もデータを保存可能なフラッシュROM等の保存部(ストレージ部又はストレージ手段)21を有するが、本実施形態における保存部21は、メモリーカード等の取り外し可能な保存手段(リムーバブルメディア)であり、当該保存部21を外部機器に差替えることで、外部機器からの給電及び外部機器へのデータ読み出しが可能となる。また、本実施形態における制御部15において、外部との通信を行う通信部、及び外部電源受信部は必須の構成ではなく、省略してもよい。
【0060】
次に、本実施形態において、リール状態のログを取得するログ保存モードについて説明する。本実施形態においても、前述の実施形態と同様、発電部8による発電電力を用いて、リール状態の経時変化のログを、保存部21に保存することができる。すなわち、前述の実施形態におけるログ保存モードを実施するこができ、同様の効果を実現することができる。
【0061】
次に、本実施形態実施例において、保存部21に保存したリール状態のログデータの外部機器への読み出し方法について説明する。本実施形態における保存部21は、前述の通り、外部機器に差替えることで、外部機器から保存部21への給電及び外部機器へのログデータの読み出しが可能となる。これにより、リール状態の時間変化の情報(データ)を外部機器にて保持することが可能となり、ユーザの利便性を向上することができる。すなわち、本実施形態において、保存部21の外部機器への差替え及び外部機器へのログデータの読み出しを行うことで、前述の実施形態における外部送信モードと同様の効果を実現することができる。
【0062】
本実施形態における方法では、前述の実施形態における方法と比較すると、データを保存後、保存部を外部機器に差替えるという手間が生じてしまうものの、制御部から外部電源受信部、電源選択部、通信部を省略することが可能となり、より単純な構成とすることができるため、リール全体の小型化や軽量化、低コスト化が実現することが可能となる。
【0063】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 魚釣用リール
2 フレーム(リール本体)
3 スプール
4 制動部
5 制御部
6 検出部
8 発電部
9 電源選択部
10 環境発電部
11 保存部
12 通信部
13 充電回路
14 外部電源
15 外部電力受信部
61 スプール回転検出部(スプール回転検出手段)
62 ハンドル回転検出部(ハンドル回転検出手段)
63 クラッチ検出部(クラッチ検出手段)
64 張力検出部(張力検出手段)
65 設定ドラグ力検出部(設定ドラグ検出手段)
66 モーションセンサ
67 制動力検出部(制動力検出手段)