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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090376
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20230622BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205307
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】石川 朗
(72)【発明者】
【氏名】行時 竜彦
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087DB03
3B087DE06
(57)【要約】
【課題】溶接量の増大を避けつつ、レッグの溶接部分の損傷を抑制できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【解決手段】本開示の一態様は、クッションフレームとスライド装置とを連結するレッグを備える乗物用シートである。レッグは、第1連結ブラケットと、第2連結ブラケットと、第1連結ブラケット及び第2連結ブラケットをシート前後方向に連結する第3連結ブラケットとを有する。第3連結ブラケットは、板状の補強板部と、補強板部の下端部から上方に延伸するスリットとを有する。補強板部のうちスリットの後方の縁を構成する第1端部は、第1連結ブラケットに溶接される。補強板部のうちスリットの前方の縁を構成する第2端部は、第1連結ブラケットに固定されない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションを支持するクッションフレームと、
前記シートバックを支持するバックフレームと、
前記クッションフレームをスライド可能に支持するスライド装置と、
前記クッションフレームと前記スライド装置とを連結するレッグと、
シートベルトと、
前記バックフレームに固定されると共に、前記シートベルトを巻き取るリトラクタと、
前記クッションフレームに固定されると共に、前記シートベルトの金具が脱着可能なバックルと、
を備え、
前記レッグは、
シート幅方向において前記リトラクタと前記バックルとの間に配置されると共に、前記クッションフレームに固定された上部と前記スライド装置に固定された下部とを有する第1連結ブラケットと、
前記第1連結ブラケットのシート前方に配置されると共に、前記クッションフレームに固定された上部と前記スライド装置に固定された下部とを有する第2連結ブラケットと、
前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットをシート前後方向に連結する第3連結ブラケットと、
を有し、
前記第3連結ブラケットは、
前記第1連結ブラケット及び前記第2連結ブラケットに対しシート幅方向に重ね合わされる板状の補強板部と、
前記補強板部の下端部から上方に延伸するスリットと、
を有し、
前記補強板部のうち前記スリットのシート後方の縁を構成する第1端部は、前記第1連結ブラケットに溶接され、
前記補強板部のうち前記スリットのシート前方の縁を構成する第2端部は、前記第1連結ブラケットに固定されない、乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記スリットは、
前記補強板部の下端部から連続する延伸部と、
前記延伸部よりも幅が大きく、かつ、円弧状の縁を有する先端部と、
を有する、乗物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記先端部の前記延伸部に対するシート前方への突出量は、前記先端部の前記延伸部に対するシート後方への突出量よりも大きい、乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、スライド装置と、乗物用シート内に収納されたシートベルトとを備えた構成が公知である(特許文献1参照)。この構成では、クッションフレームとスライド装置とがレッグによって連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6822317号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗物用シートの形態によっては、シート幅方向において、シートベルトを巻き取るリトラクタと、シートベルトの使用時にシートベルトの金具が装着されるバックルとの間にレッグが配置されることがある。
【0005】
このような配置では、バックルを持ち上げる荷重がシートベルトを介してバックルに入力されると、レッグがシート幅方向に引っ張られる。その結果、レッグの溶接部分に亀裂が発生する。
【0006】
この亀裂を防ぐために、溶接長又は溶接点数を増やしてレッグを補強すると、乗物用シートの質量及び加工点数が増加する。また、レッグが変形しにくくなることで、スライド装置へ伝達される荷重が大きくなり、スライド装置が変形しやすくなる。
【0007】
本開示の一局面は、溶接量の増大を避けつつ、レッグの溶接部分の損傷を抑制できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、シートクッション(2)及びシートバック(3)と、シートクッション(2)を支持するクッションフレーム(4)と、シートバック(3)を支持するバックフレーム(5)と、クッションフレーム(4)をスライド可能に支持するスライド装置(6A)と、クッションフレーム(4)とスライド装置(6A)とを連結するレッグ(7A)と、シートベルト(10)と、バックフレーム(5)に固定されると共に、シートベルト(10)を巻き取るリトラクタ(11)と、クッションフレーム(4)に固定されると共に、シートベルト(10)の金具が脱着可能なバックル(12)と、を備える乗物用シート(1)である。
【0009】
レッグ(7A)は、シート幅方向においてリトラクタ(11)とバックル(12)との間に配置されると共に、クッションフレーム(4)に固定された上部とスライド装置(6A)に固定された下部とを有する第1連結ブラケット(71)と、第1連結ブラケット(71)のシート前方に配置されると共に、クッションフレーム(4)に固定された上部とスライド装置(6A)に固定された下部とを有する第2連結ブラケット(72)と、第1連結ブラケット(71)及び第2連結ブラケット(72)をシート前後方向に連結する第3連結ブラケット(73)と、を有する。
【0010】
第3連結ブラケット(73)は、第1連結ブラケット(71)及び第2連結ブラケット(72)に対しシート幅方向に重ね合わされる板状の補強板部(731)と、補強板部(731)の下端部から上方に延伸するスリット(735)と、を有する。補強板部(731)のうちスリット(735)のシート後方の縁を構成する第1端部(731A)は、第1連結ブラケット(71)に溶接される。補強板部(731)のうちスリット(735)のシート前方の縁を構成する第2端部(731B)は、第1連結ブラケット(71)に固定されない。
【0011】
このような構成によれば、スリット(735)を介してシート前後方向に分割された第1端部(731A)及び第2端部(731B)によって、バックル(12)を持ち上げる入力によって発生する応力が吸収される。
【0012】
すなわち、第1連結ブラケット(71)に溶接された第1端部(731A)がリトラクタ(11)側に変形すると共に、第1連結ブラケット(71)と切り離された第2端部(731B)がバックル(12)側に変形することで、応力が吸収される。その結果、溶接長又は溶接点数の増加によるレッグ(7A)の補強を避けつつ、レッグ(7A)の溶接部分の損傷を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、スリット(735)は、補強板部(731)の下端部から連続する延伸部(735A)と、延伸部(735A)よりも幅が大きく、かつ、円弧状の縁を有する先端部(735B)と、を有してもよい。このような構成によれば、先端部(735B)によって応力が分散されるため、第3連結ブラケット(73)における亀裂の発生が抑制できる。
【0014】
本開示の一態様では、先端部(735B)の延伸部(735A)に対するシート前方への突出量は、先端部(735B)の延伸部(735A)に対するシート後方への突出量よりも大きくてもよい。このような構成によれば、スリット(735)のシート後方の縁における第1端部(731A)と第1連結ブラケット(71)との溶接長を大きくすることができる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態の乗物用シートを示す模式的な斜視図である。
図2図2は、図1の乗物用シートにおけるクッションフレーム、スライド装置及びレッグの模式的な斜視図である。
図3図3A及び図3Bは、図2のレッグの模式的な斜視図である。
図4図4は、図3Aのレッグの模式的な分解斜視図である。
図5図5は、図3Aのレッグにおけるスリット近傍の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、クッションフレーム4と、バックフレーム5と、第1スライド装置6Aと、第2スライド装置6Bと、第1レッグ7Aと、第2レッグ7Bと、シートベルト10と、リトラクタ11と、バックル12とを備える。
【0018】
乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。具体的には、乗物用シート1は、例えば、乗用車の2列目以降に配置される右側シートとセンターシートとを構成する。
【0019】
なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0020】
シートクッション2は、着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位である。クッションフレーム4は、シートクッション2を支持する。バックフレーム5は、シートバック3を支持する。
【0021】
シートベルト10は、バックフレーム5の中央部に固定されたリトラクタ11から排出される。シートベルト10は、シートバック3のうち左側の着席部分(つまりセンターシート)をシート幅方向に横断しながら、シートクッション2の左側部に設けられたバックル12に向かって架け渡されるように構成されている。
【0022】
なお、図示しないが、乗物用シート1は、センターシートの着席者が使用するシートベルト10に加えて、シートバック3のうち右側の着席部分(つまり右側シート)の着席者が使用するためのシートベルトも備えている。
【0023】
リトラクタ11は、シートベルト10を巻き取ると共に、シートベルト10を内部に収納するように構成されている。リトラクタ11は、クッションフレーム4の第1サイドフレーム41及び第2サイドフレーム42よりも右側に配置されている。
【0024】
バックル12は、シートベルト10の金具が脱着可能な器具である。バックル12は、クッションフレーム4の第1サイドフレーム41に固定されている。バックル12にシートベルト10に取り付けられた金具が挿入されることで、シートベルト10が着席者に装着される。
【0025】
<クッションフレーム>
図2に示すように、クッションフレーム4は、第1サイドフレーム41と、第2サイドフレーム42と、第3サイドフレーム43と、第1連結ロッド44と、第2連結ロッド45と、可動部46と、固定ブラケット47とを有する。
【0026】
第1サイドフレーム41、第2サイドフレーム42及び第3サイドフレーム43は、それぞれシート前後方向に延伸しており、シート幅方向において互いに離れて配置されている。
【0027】
具体的には、第1サイドフレーム41は、3つのサイドフレームの中で最も左側に配置されている。第2サイドフレーム42は、第1サイドフレーム41の右側に配置されている。第3サイドフレーム43は、第2サイドフレーム42の右側に配置されている。
【0028】
第1連結ロッド44及び第2連結ロッド45は、それぞれ、第1サイドフレーム41、第2サイドフレーム42及び第3サイドフレーム43をシート幅方向に連結するパイプ状の部材である。
【0029】
第1連結ロッド44及び第2連結ロッド45の中心軸は、シート幅方向と平行である。第1連結ロッド44は、サイドフレーム41,42,43の後端部(つまりバックフレーム5との連結部分)に溶接によって固定されている。第2連結ロッド45は、第1連結ロッド44よりもシート前方において、サイドフレーム41,42,43に溶接によって固定されている。
【0030】
可動部46は、第1サイドフレーム41及び第3サイドフレーム43に対し、上下方向に揺動可能に連結されている。可動部46の上方への揺動によって、シートクッション2がシートバック3に重なるように折りたたまれる。
【0031】
固定ブラケット47は、バックル12をクッションフレーム4に固定する板状の部材である。固定ブラケット47は、第1サイドフレーム41よりもシート幅方向外側(つまり左側)において、第1連結ロッド44に溶接によって固定されている。
【0032】
<スライド装置>
第1スライド装置6A及び第2スライド装置6Bは、それぞれ、クッションフレーム4をシート前後方向にスライド可能に支持している。
【0033】
第1スライド装置6Aは、第1レッグ7Aを介して、クッションフレーム4(具体的には第1連結ロッド44及び第2連結ロッド45)に連結されている。第1スライド装置6Aは、クッションフレーム4と共にスライドする可動レール61(つまりアッパレール)と、可動レール61をスライド可能に支持する固定レール62(つまりロアレール)とを有する。
【0034】
第2スライド装置6Bは、第1スライド装置6Aと同様の可動レール及び固定レールを有する。第2スライド装置6Bは、第1スライド装置6Aよりも右側において、第2レッグ7Bを介して、クッションフレーム4(具体的には第1連結ロッド44及び第2連結ロッド45)に連結されている。
【0035】
<レッグ>
第1レッグ7Aは、クッションフレーム4と、第1スライド装置6Aとを上下方向に連結している。図3A及び図3Bに示すように、第1レッグ7Aは、第1連結ブラケット71と、第2連結ブラケット72と、第3連結ブラケット73と、補強パッチ74とを有する。
【0036】
<第1連結ブラケット及び第2連結ブラケット>
第1連結ブラケット71及び第2連結ブラケット72は、シート幅方向においてリトラクタ11とバックル12との間に配置されている。
【0037】
具体的には、第1連結ブラケット71及び第2連結ブラケット72は、シート幅方向において、第1サイドフレーム41(又は固定ブラケット47)と第2サイドフレーム42との間に配置されている。
【0038】
第1連結ブラケット71は、折り曲げ加工された板状の部材である。図4に示すように、第1連結ブラケット71は、第1後壁711と、第1前壁712と、第1側壁713と、第1後方フランジ714と、第1前方フランジ715とを有する。
【0039】
第1後壁711は、シート上下方向に延伸している。第1後壁711の厚み方向は、シート幅方向と交差する。第1後壁711の上部は、第1連結ロッド44に溶接により固定されている。また、第1後壁711の下部は、ボルト及びナットにより、可動レール61に固定されている。
【0040】
第1前壁712は、第1後壁711のシート前方において上下方向に延伸している。第1前壁712は、第1後壁711と対向している。第1前壁712の上部は、第1連結ロッド44に溶接により固定されている。
【0041】
第1側壁713は、第1後壁711と第1前壁712とをシート前後方向に連結している。第1側壁713の厚み方向は、上下方向と交差する。第1側壁713の上部は、第1連結ロッド44に溶接により固定されている。
【0042】
第1後方フランジ714は、第1後壁711の左端部からシート後方に向かって延伸した板状の部位である。第1後方フランジ714は、第3連結ブラケット73に溶接によって固定されている。
【0043】
第1前方フランジ715は、第1前壁712の左端部からシート前方に向かって延伸した板状の部位である。第1前方フランジ715は、第3連結ブラケット73に溶接によって固定されている。
【0044】
第2連結ブラケット72は、折り曲げ加工された板状の部材である。第2連結ブラケット72は、第1連結ブラケット71のシート前方に配置されている。第2連結ブラケット72は、第2後壁721と、第2前壁722と、第2側壁723と、第2後方フランジ724とを有する。
【0045】
第2後壁721は、シート上下方向に延伸している。第2後壁721の厚み方向は、シート幅方向と交差する。
【0046】
第2前壁722は、第2後壁721のシート前方において上下方向に延伸している。第2前壁722は、第2後壁721と対向している。第2前壁722の下部は、ボルト及びナットにより、可動レール61に固定されている。また、第2前壁722は、第3連結ブラケット73に溶接によって固定されている。
【0047】
第2側壁723は、第2後壁721と第2前壁722とをシート前後方向に連結している。第2側壁723の厚み方向は、上下方向と交差する。第2側壁723の上部は、第2連結ロッド45に溶接により固定されている。
【0048】
第2後方フランジ724は、第2後壁721の左端部からシート後方に向かって延伸した板状の部位である。第2後方フランジ724は、第3連結ブラケット73に溶接によって固定されている。
【0049】
<第3連結ブラケット>
第3連結ブラケット73は、第1連結ブラケット71及び第2連結ブラケット72をシート前後方向に連結している。第3連結ブラケット73は、補強板部731と、第1フランジ732と、第2フランジ733と、第3フランジ734と、スリット735とを有する。
【0050】
補強板部731は、第1連結ブラケット71及び第2連結ブラケット72に対しシート幅方向に重ね合わされる板状の部位である。具体的には、補強板部731は、シート幅方向において、第1連結ブラケット71の第1側壁713と、第2連結ブラケット72の第2側壁723とに対向するように配置されている。
【0051】
補強板部731は、第1連結ブラケット71の第1後方フランジ714及び第1前方フランジ715、並びに第2連結ブラケット72の第2後方フランジ724に対し、シート幅方向外側(つまり左側)から接触している。
【0052】
補強板部731は、第1後方フランジ714に対し、スリット735を介してシート幅方向外側から溶接されている。また、補強板部731は、第1前方フランジ715及び第2後方フランジ724に対し、それぞれ開口を介して、シート幅方向外側から溶接されている。
【0053】
補強板部731の上端部は、第1連結ロッド44及び第2連結ロッド45にそれぞれ溶接によって固定されている。
【0054】
補強板部731のシート後方の端部は、第1連結ブラケット71の第1後方フランジ714よりもシート後方に位置する。補強板部731のシート前方の端部は、第2連結ブラケット72の第2前壁722よりもシート前方に位置する。
【0055】
第1フランジ732は、補強板部731のシート後方の端部から、右側に延伸する板状の部位である。第1フランジ732は、第1連結ブラケット71の第1後壁711に対し、シート後方から重なっている。
【0056】
第2フランジ733は、補強板部731のシート前方の端部から、右側に延伸する板状の部位である。第2フランジ733は、第2連結ブラケット72の第2前壁722に対し、シート前方から重なっている。第2フランジ733は、第1連結ロッド44及び第2前壁722に溶接によって固定されている。また、第2フランジ733は、ボルト及びナットによって、第2前壁722と共に、可動レール61に固定されている(図3A参照)。
【0057】
第3フランジ734は、補強板部731の上端部のうち、第1連結ロッド44と第2連結ロッド45との間の部分から右側に延伸する板状の部位である。第3フランジ734のシート前方の端部は、溶接によって第2連結ロッド45に固定されている。
【0058】
図5に示すように、スリット735は、補強板部731の下端部から上方に延伸する帯状の開口である。スリット735は、上下方向において、第1連結ロッド44と重なる位置に設けられている。また、スリット735の少なくとも一部は、シート幅方向において、第1連結ブラケット71の第1後方フランジ714と重なっている。
【0059】
補強板部731には、スリット735のシート後方の縁を構成する第1端部731Aと、スリット735のシート前方の縁を構成する第2端部731Bとが形成されている。第1端部731Aと第2端部731Bとは、スリット735を挟んでシート前後方向に対向している。
【0060】
第1端部731Aは、第1溶接ビードW1によって、スリット735において露出した第1連結ブラケット71の第1後方フランジ714に接合されている。第1溶接ビードW1は、スリット735のシート後方の縁に沿って上下方向に延伸している。第1溶接ビードW1は、第1後方フランジ714と第1端部731Aとに跨って形成されている。
【0061】
第2端部731Bは、溶接及びその他の手段によって第1連結ブラケット71に固定されていない。したがって、第1連結ブラケット71が右側に変位しても、第2端部731Bは、第1連結ブラケット71と共に右側に変位しない。
【0062】
なお、本実施形態では、第2端部731Bは、シート幅方向において第1後方フランジ714と重なっているが、第1後方フランジ714とは接触していない。ただし、第2端部731Bは、第1後方フランジ714と接触していてもよい。
【0063】
第2端部731Bは、第2溶接ビードW2よもシート後方に位置する。第2溶接ビードW2は、補強板部731と第1連結ブラケット71の第1前方フランジ715とを接合している。第2端部731Bは、シート前後方向において、第2溶接ビードW2よりも第1端部731Aの近くに位置する。
【0064】
スリット735は、延伸部735Aと、先端部735Bとを有する。延伸部735Aは、補強板部731の下端部から連続する部位である。延伸部735Aの幅は、上下方向に沿って一定である。また、延伸部735Aは、上下方向と平行な縁を有する。第1溶接ビードW1は、延伸部735Aのシート後方の縁上に設けられている。
【0065】
先端部735Bは、延伸部735Aの上方に設けられた部位であり、スリット735の先端を構成する部位である。先端部735Bは、延伸部735Aよりも幅(つまりシート前後方向の長さ)が大きく、かつ、円弧状の縁を有する。したがって、先端部735Bの縁の半径(つまり先端部735Bの曲率半径)は、延伸部735Aの幅の1/2よりも大きい。
【0066】
また、先端部735Bの延伸部735Aに対するシート前方への突出量は、先端部735Bの延伸部735Aに対するシート後方への突出量よりも大きい。つまり、先端部735Bの縁の中心は、延伸部735Aの幅方向中央線よりもシート前方に位置する。
【0067】
本実施形態では、先端部735Bの後端は、第1溶接ビードW1の後端よりもシート前方に位置する。つまり、先端部735Bは、第1溶接ビードW1よりもシート後方に膨出していない。
【0068】
これにより、先端部735Bの円弧部分で応力が分散されるため、円弧部分から外れた位置にある延伸部735Aの後縁と第1連結ブラケット71とに跨る第1溶接ビードW1にかかる応力がより小さくなり、第1溶接ビードW1における亀裂の発生が抑制される。
【0069】
<補強パッチ>
図4に示す補強パッチ74は、補強板部731に対し、シート幅方向外側から重ね合わされた板状の部材である。補強パッチ74は、補強板部731に溶接によって固定されている。補強パッチ74は、スリット735の先端部735Bと部分的に重なっている。
【0070】
<レッグの作用>
バックル12にシートベルト10を介して上方に引っ張る荷重が入力されると、第1レッグ7Aにおいて、第1連結ブラケット71が右側に、第3連結ブラケット73が左側に引っ張られる。
【0071】
このとき、第3連結ブラケット73のうち、第1端部731Aが右側に引っ張られ、第2端部731Bが左側に引っ張られることで、第3連結ブラケット73が撓む。その結果、スリット735の前後で応力が分散され、溶接部分の亀裂の発生が抑制される。
【0072】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)スリット735を介してシート前後方向に分割された第1端部731A及び第2端部731Bによって、バックル12を持ち上げる入力によって発生する応力が吸収される。
【0073】
すなわち、第1連結ブラケット71に溶接された第1端部731Aがリトラクタ11側に変形すると共に、第1連結ブラケット71と切り離された第2端部731Bがバックル12側に変形することで、応力が吸収される。その結果、溶接長又は溶接点数の増加による第1レッグ7Aの補強を避けつつ、第1レッグ7Aの溶接部分の損傷を抑制できる。
【0074】
(1b)延伸部735Aよりも幅が大きく、かつ、円弧状の縁を有する先端部735Bによって応力が分散される。そのため、第3連結ブラケット73における亀裂の発生が抑制できる。
【0075】
(1c)先端部735Bが延伸部735Aに対しシート前方へ突出していることで、スリット735のシート後方の縁における第1端部731Aと第1連結ブラケット71との溶接長を大きくすることができる。
【0076】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0077】
(2a)上記実施形態の乗物用シートにおいて、スリットの形状は一例である。したがって、スリットは、必ずしも延伸部よりも幅が大きく、かつ、円弧状の縁を有する先端部を有しなくてもよい。
【0078】
(2b)上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。
【0079】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0080】
1…乗物用シート、2…シートクッション、3…シートバック、
4…クッションフレーム、5…バックフレーム、6A,6B…スライド装置、
7A,7B…レッグ、10…シートベルト、11…リトラクタ、12…バックル、
41,42,43…サイドフレーム、44,45…連結ロッド、46…可動部、
47…固定ブラケット、61…可動レール、62…固定レール、
71…第1連結ブラケット、72…第2連結ブラケット、73…第3連結ブラケット、
74…補強パッチ、711…第1後壁、714…第1後方フランジ、
731…補強板部、731A…第1端部、731B…第2端部、
732…第1フランジ、733…第2フランジ、734…第3フランジ、
735…スリット、735A…延伸部、735B…先端部。
図1
図2
図3
図4
図5