(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090395
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230622BHJP
B62D 12/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
E02F9/20 H
B62D12/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205333
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 裕貴
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA03
2D003AB01
2D003BA03
2D003BA07
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】リーニング可能な走行輪を備える作業機械において、走行安定性を向上させる。
【解決手段】作業機械は、車体と、走行輪と、ステアリングアクチュエータと、リーニングアクチュエータと、リーニング角センサと、コントローラとを備える。走行輪は、車体に支持される。ステアリングアクチュエータは、走行輪の操舵角を変更する。リーニングアクチュエータは、走行輪のリーニング角を変更する。リーニング角センサは、リーニング角を検出する。コントローラは、ステアリングアクチュエータを制御することで、走行輪を自動的に操舵するオートステアリング制御を実行する。コントローラは、リーニング角を取得する。コントローラは、リーニング角に応じて、車体の走行を制限する、或いは、オートステアリング制御を制限する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に支持される走行輪と、
前記走行輪の操舵角を変更するステアリングアクチュエータと、
前記走行輪のリーニング角を変更するリーニングアクチュエータと、
前記リーニング角を検出するリーニング角センサと、
前記ステアリングアクチュエータを制御することで、前記走行輪を自動的に操舵するオートステアリング制御を実行するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記リーニング角を取得し、
前記リーニング角に応じて、前記車体の走行を制限する、或いは、前記オートステアリング制御を制限する、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記リーニング角が所定範囲外であるときに、前記車体の走行を制限する、或いは、前記オートステアリング制御を制限する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記作業機械は、複数の速度段に切り換え可能な動力伝達装置をさらに有し、
前記コントローラは、前記リーニング角に応じて、前記複数の速度段の上限を制限する、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記リーニング角に応じて、前記作業機械の車速の上限を制限する、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、前記リーニング角に応じて、前記オートステアリング制御を無効とする、
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記オートステアリング制御のオン・オフを設定するために操作可能な入力装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記入力装置の操作に関わらず、前記リーニング角に応じて、前記オートステアリング制御を無効とする、
請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
作業機械を制御するための方法であって、前記作業機械は、車体と、前記車体に支持される走行輪と、前記走行輪の操舵角を変更するステアリングアクチュエータと、前記走行輪のリーニング角を変更するリーニングアクチュエータと、を有し、前記方法は、
前記ステアリングアクチュエータを制御することで、前記走行輪を自動的に操舵するオートステアリング制御を実行することと、
前記リーニング角を取得することと、
前記リーニング角に応じて、前記車体の走行を制限する、或いは、前記オートステアリング制御を制限すること、
を備える方法。
【請求項8】
前記リーニング角が所定範囲外であるときに、前記車体の走行を制限する、或いは、前記オートステアリング制御を制限することをさらに備える、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作業機械は、複数の速度段に切り換え可能な動力伝達装置をさらに有し、
前記リーニング角に応じて、前記複数の速度段の上限を制限することをさらに備える、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記リーニング角に応じて、前記作業機械の車速の上限を制限することをさらに備える、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記リーニング角に応じて、前記オートステアリング制御を無効とすることをさらに備える、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項12】
入力装置への操作に応じて、前記オートステアリング制御のオン・オフを設定することと、
前記入力装置の操作に関わらず、前記リーニング角に応じて、前記オートステアリング制御を無効とすること、
をさらに備える、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
作業機械を制御するためのシステムであって、前記作業機械は、車体と、前記車体に支持される走行輪と、前記走行輪の操舵角を変更するステアリングアクチュエータと、前記走行輪のリーニング角を変更するリーニングアクチュエータとを備え、
前記システムは、
前記リーニング角を検出するリーニング角センサと、
前記ステアリングアクチュエータを制御することで、前記走行輪を自動的に操舵するオートステアリング制御を実行するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記リーニング角を取得し、
前記リーニング角に応じて、前記車体の走行を制限する、或いは、前記オートステアリング制御を制限する、
システム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記リーニング角が所定範囲外であるときに、前記車体の走行を制限する、或いは、前記オートステアリング制御を制限する、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記作業機械は、複数の速度段に切り換え可能な動力伝達装置をさらに有し、
前記コントローラは、前記リーニング角に応じて、前記複数の速度段の上限を制限する、
請求項13又は14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、作業機械を制御するための方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械において、走行輪の操舵角を自動的に制御する技術(以下、「オートステアリング制御」と呼ぶ)が知られている。例えば、特許文献1では、制御システムが、作業機械の目標経路を生成し、作業機械が目標経路に従って移動するように、操舵角を制御する。
【0003】
特許文献2では、作業機械のコントローラが、作業機械の目標進行方向を決定し、作業機械が目標進行方向に向かって走行するように、操舵角を制御する。特許文献3では、作業機械のコントローラが、進行方向の目標変化率を決定する。作業機械のコントローラは、単位走行距離当たりの進行方向の変化率が、目標変化率に維持されるように、操舵角を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8060299号
【特許文献2】特開2021-54269号
【特許文献3】特開2021-54270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した作業機械は、走行輪を左右にリーニングさせるリーニング機構を備えている。走行輪が左右にリーニングした状態で、オートステアリング制御が実行される場合、リーニング角の大きさによっては、走行安定性が低下する可能性がある。本発明の目的は、リーニング可能な走行輪を備える作業機械において、走行安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る作業機械は、車体と、走行輪と、ステアリングアクチュエータと、リーニングアクチュエータと、リーニング角センサと、コントローラとを備える。走行輪は、車体に支持される。ステアリングアクチュエータは、走行輪の操舵角を変更する。リーニングアクチュエータは、走行輪のリーニング角を変更する。リーニング角センサは、リーニング角を検出する。コントローラは、ステアリングアクチュエータを制御することで、走行輪を自動的に操舵するオートステアリング制御を実行する。コントローラは、リーニング角を取得する。コントローラは、リーニング角に応じて、車体の走行を制限する、或いは、オートステアリング制御を制限する。
【0007】
本発明の第2の態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。作業機械は、車体と、走行輪と、ステアリングアクチュエータと、リーニングアクチュエータとを備える。走行輪は、車体に支持される。ステアリングアクチュエータは、走行輪の操舵角を変更する。リーニングアクチュエータは、走行輪のリーニング角を変更する。
【0008】
本態様に係る方法は、ステアリングアクチュエータを制御することで、走行輪を自動的に操舵するオートステアリング制御を実行することと、リーニング角を取得することと、リーニング角に応じて、車体の走行を制限する、或いは、オートステアリング制御を制限すること、を備える。
【0009】
本発明の第3の態様に係るシステムは、作業機械を制御するためのシステムである。作業機械は、車体と、走行輪と、ステアリングアクチュエータと、リーニングアクチュエータとを備える。走行輪は、車体に支持される。ステアリングアクチュエータは、走行輪の操舵角を変更する。リーニングアクチュエータは、走行輪のリーニング角を変更する。
【0010】
本態様に係るシステムは、リーニング角センサと、コントローラとを備える。リーニング角センサは、リーニング角を検出する。コントローラは、ステアリングアクチュエータを制御することで、走行輪を自動的に操舵するオートステアリング制御を実行する。コントローラは、リーニング角を取得する。コントローラは、リーニング角に応じて、車体の走行を制限する、或いは、オートステアリング制御を制限する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リーニング角に応じて、車体の走行を制限する、或いは、オートステアリング制御が制限される。そのため、リーニング角が、走行安定性が低下するような大きさである場合に、車体の走行を制限する、或いは、オートステアリング制御を制限することができる。それにより、走行安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】作業機械の制御システムの構成を示す模式図である。
【
図6】オートステアリング制御の一例である方向維持制御を示す図である。
【
図7】コントローラによって実行される制限制御の処理を示すフローチャートである。
【
図8】オートステアリング制御の他の例である自動経路追従制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る作業機械1の斜視図である。
図2は、作業機械1の側面図である。
図1に示すように、作業機械1は、車体2と、走行輪3A,3B,4A-4Dと、作業機5とを備える。車体2は、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、キャブ13と、動力室14とを含む。
【0014】
リアフレーム12は、フロントフレーム11に接続されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して回動可能にリアフレーム12に連結されている。後述するように、フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して、左右にアーティキュレート可能である。
【0015】
なお、以下の説明において、前後左右の各方向は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11のアーティキュレート角がゼロである状態、すなわち、フロントフレーム11とリアフレーム12とが真っすぐな状態で、車体2の前後左右の各方向が定義される。
【0016】
キャブ13と動力室14とは、リアフレーム12上に配置されている。キャブ13には、図示しない運転席が配置されている。動力室14は、キャブ13の後方に配置されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12から前方へ延びている。
【0017】
走行輪3A,3B,4A-4Dは、車体2に回転可能に支持されている。走行輪3A,3B,4A-4Dは、前輪3A,3Bと、後輪4A-4Dとを含む。前輪3A,3Bは、互いに左右方向に離れて配置されている。前輪3A,3Bは、フロントフレーム11に取り付けられている。後輪4A-4Dは、リアフレーム12に取り付けられている。
【0018】
作業機5は、車体2に対して可動的に接続されている。作業機5は、支持部材15とブレード16とを含む。支持部材15は、車体2に可動的に接続されている。支持部材15は、ブレード16を支持している。支持部材15は、ドローバ17とサークル18とを含む。ドローバ17は、フロントフレーム11の下方に配置される。
【0019】
ドローバ17は、フロントフレーム11の前部19に接続されている。ドローバ17は、フロントフレーム11の前部19から後方へ延びている。ドローバ17は、フロントフレーム11に対して、少なくとも車体2の上下方向と左右方向とに揺動可能に支持されている。例えば、前部19は、ボールジョイントを含む。ドローバ17は、ボールジョイントを介して、フロントフレーム11に対して回転可能に接続されている。
【0020】
サークル18は、ドローバ17の後部に接続されている。サークル18は、ドローバ17に対して回転可能に支持される。ブレード16は、サークル18に接続される。ブレード16は、サークル18を介して、ドローバ17に支持されている。
図2に示すように、ブレード16は、チルト軸21回りに回転可能にサークル18に支持されている。チルト軸21は、左右方向に延びている。
【0021】
図3は、作業機械1の前部の上面図である。
図3に示すように、作業機械1は、第1ステアリング軸43Aと第2ステアリング軸43Bとを備えている。第1ステアリング軸43Aと第2ステアリング軸43Bとは、フロントフレーム11に設けられる。第1ステアリング軸43Aと第2ステアリング軸43Bとは、上下方向に延びている。前輪3Aは、第1ステアリング軸43A回りに回転可能に支持される。前輪3Bは、第2ステアリング軸43B回りに回転可能に支持される。
【0022】
作業機械1は、前輪3A,3Bを操舵するための複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bを備えている。複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、前輪3A,3Bを操舵するために用いられる。例えば、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、油圧シリンダである。複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、前輪3A,3Bに、それぞれ接続されている。複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、油圧によって伸縮する。以下の説明では、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bの伸縮、例えば油圧シリンダの伸縮が、「ストローク動作」と記される。
【0023】
複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bは、左ステアリングシリンダ41Aと、右ステアリングシリンダ41Bと、を含む。左ステアリングシリンダ41Aと右ステアリングシリンダ41Bとは、左右方向に互いに離れて配置されている。
【0024】
左ステアリングシリンダ41Aは、フロントフレーム11と前輪3Aとに接続されている。右ステアリングシリンダ41Bは、フロントフレーム11と前輪3Bに接続されている。左ステアリングシリンダ41Aと右ステアリングシリンダ41Bとのストローク動作により、前輪3A,3Bが操舵される。
【0025】
作業機械1は、アーティキュレート軸44を含む。アーティキュレート軸44は、フロントフレーム11とリアフレーム12とに設けられる。アーティキュレート軸44は、上下方向に延びている。フロントフレーム11とリアフレーム12とは、アーティキュレート軸44回りに回動可能に互いに接続されている。
【0026】
作業機械1は、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28を備えている。複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、リアフレーム12に対してフロントフレーム11を回動させるために用いられる。例えば、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、油圧シリンダである。複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、フロントフレーム11とリアフレーム12とに接続されている。複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、油圧によって伸縮する。
【0027】
複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28は、左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28と、を含む。左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28とは、左右方向に互いに離れて配置されている。
【0028】
左アーティキュレートシリンダ27は、車体2の左側において、フロントフレーム11とリアフレーム12とに接続されている。右アーティキュレートシリンダ28とは、車体2の右側において、フロントフレーム11とリアフレーム12とに接続されている。左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28とのストローク動作により、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して左右に回動する。
【0029】
図4は、作業機械1の前部の正面図である。
図4に示すように、作業機械1は、リーン機構6を備えている。リーン機構6は、前輪3A,3Bを左右に傾倒させる。リーン機構6は、アクスルビーム56と、リーニングロッド57と、リーニングアクチュエータ61とを含む。アクスルビーム56は、フロントフレーム11から左右に延びている。アクスルビーム56は、ピボット軸58回りに回転可能にフロントフレーム11に支持されている。
【0030】
アクスルビーム56は、ホイールブラケット59Aを介して、前輪3Aに接続されている。アクスルビーム56は、前輪3Aをリーニング軸54A回りに回転可能に支持する。アクスルビーム56は、ホイールブラケット59Bを介して、前輪3Bに接続されている。アクスルビーム56は、前輪3Bをリーニング軸54B回りに回転可能に支持する。リーニング軸54A,54Bは、前後方向に延びている。
【0031】
リーニングロッド57は、フロントフレーム11を通って左右に延びている。リーニングロッド57は、前輪3A,3Bを互いに連結している。リーニングロッド57は、ホイールブラケット59Aを介して、前輪3Aに接続されている。リーニングロッド57は、ホイールブラケット59Bを介して、前輪3Bに接続されている。
【0032】
リーニングアクチュエータ61は、前輪3A,3Bを傾倒するために用いられる。例えば、リーニングアクチュエータ61は、油圧シリンダである。リーニングアクチュエータ61は、フロントフレーム11と前輪3A,3Bとに接続されている。リーニングアクチュエータ61は、油圧によって伸縮する。すなわち、リーニングアクチュエータ61を伸縮させることによって、前輪3A,3Bがリーニング軸54A,54B回りに回転する。それにより、前輪3A,3Bが左右に傾倒する。
【0033】
図2に示すように、作業機械1は、作業機5の姿勢を変更するための複数のアクチュエータ22-26を備えている。例えば、複数のアクチュエータ22-25は、油圧シリンダである。アクチュエータ26は、回転アクチュエータである。本実施形態では、アクチュエータ26は油圧モータである。アクチュエータ26は、電動モータであってもよい。
【0034】
複数のアクチュエータ22-25は、作業機5に接続されている。複数のアクチュエータ22-25は、油圧によって伸縮する。複数のアクチュエータ22-25は、伸縮することで、車体2に対する作業機5の姿勢を変更する。
【0035】
詳細には、複数のアクチュエータ22-25は、左リフトシリンダ22と、右リフトシリンダ23と、ドローバシフトシリンダ24と、ブレードチルトシリンダ25と、を含む。
【0036】
左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、左右方向に互いに離れて配置されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、ドローバ17に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、リフタブラケット29を介して、フロントフレーム11に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とのストローク動作により、ドローバ17は、上下に揺動する。それにより、ブレード16が上下に移動する。
【0037】
ドローバシフトシリンダ24は、ドローバ17とフロントフレーム11とに接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、リフタブラケット29を介してフロントフレーム11に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11からドローバ17に向かって、斜め下方に延びている。ドローバシフトシリンダ24のストローク動作により、ドローバ17は、左右に揺動する。
【0038】
ブレードチルトシリンダ25は、サークル18とブレード16とに接続されている。ブレードチルトシリンダ25のストローク動作により、ブレード16がチルト軸21回りに回転する。
【0039】
アクチュエータ26は、ドローバ17とサークル18とに接続されている。アクチュエータ26は、ドローバ17に対してサークル18を回転させる。それにより、ブレード16が、上下方向に延びる回転軸回りに回転する。
【0040】
図5は、作業機械1の制御システムの構成を示す模式図である。
図5に示すように、作業機械1は、駆動源31と、油圧ポンプ32と、動力伝達装置33とを含む。作業機械1は、ステアリングバルブ42Aと、アーティキュレートバルブ42Bと、リーニングバルブ42Cと、作業機バルブ34とを含む。駆動源31は、例えば内燃機関である。或いは、駆動源31は、電動モータ、或いは内燃機関と電動モータとのハイブリッドであってもよい。
【0041】
油圧ポンプ32は、駆動源31によって駆動されることで、作動油を吐出する。油圧ポンプ32は、ステアリングバルブ42Aと、アーティキュレートバルブ42Bと、リーニングバルブ42Cと、作業機バルブ34とに、作動油を供給する。これにより、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bと、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28と、リーニングアクチュエータ61と、複数のアクチュエータ22-26とが、作動する。なお、
図5では、1つの油圧ポンプ32のみが図示されているが、複数の油圧ポンプが備えられてもよい。
【0042】
ステアリングバルブ42Aは、油圧回路を介して、油圧ポンプ32と複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bとに接続されている。ステアリングバルブ42Aは、油圧ポンプ32から複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bに供給される作動油の流量を、制御する。油圧ポンプ32の作動油がステアリングバルブ42Aに供給されることによって、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bはストローク動作を行う。
【0043】
アーティキュレートバルブ42Bは、油圧回路を介して、油圧ポンプ32と複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28とに接続されている。アーティキュレートバルブ42Bは、油圧ポンプ32から複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28に供給される作動油の流量を制御する。油圧ポンプ32の作動油がアーティキュレートバルブ42Bに供給されることによって、複数のアーティキュレートアクチュエータ27,28はストローク動作を行う。
【0044】
リーニングバルブ42Cは、油圧回路を介して、油圧ポンプ32とリーニングアクチュエータ61とに接続されている。リーニングバルブ42Cは、油圧ポンプ32からリーニングアクチュエータ61に供給される作動油の流量を制御する。油圧ポンプ32の作動油がリーニングバルブ42Cに供給されることによって、リーニングアクチュエータ61はストローク動作を行う。
【0045】
作業機バルブ34は、油圧回路を介して、油圧ポンプ32と複数のアクチュエータ22-26とに接続されている。作業機バルブ34は、複数のアクチュエータ22-26それぞれに接続される複数の弁を、含む。作業機バルブ34は、油圧ポンプ32から複数のアクチュエータ22-26に供給される作動油の流量を、制御する。
【0046】
動力伝達装置33は、駆動源31からの駆動力を後輪4A-4Dに伝達する。動力伝達装置33は、トルクコンバータ、及び/又は、複数の変速ギアを含んでもよい。或いは、動力伝達装置33は、HST(Hydraulic Static Transmission)、或いは、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などのトランスミッションであってもよい。動力伝達装置33は、複数の速度段に切り換え可能である。複数の速度段は、例えば前進の第1速~第4速を含む。複数の速度段は、例えば後進の第1速~第4速を含む。ただし、速度段の数は、これらに限らず、変更されてもよい。
【0047】
作業機械1は、ステアリング操作部材45と、アーティキュレート操作部材46と、リーニング操作部材47と、作業機操作部材48と、シフト操作部材49と、アクセル操作部材50とを含む。
【0048】
ステアリング操作部材45は、前輪3A,3Bを操舵するためにオペレータによって操作可能である。ステアリング操作部材45は、ジョイスティックなどのレバーである。或いは、ステアリング操作部材45は、レバー以外の部材であってもよい。例えば、ステアリング操作部材45は、ステアリングホイールであってもよい。ステアリング操作部材45は、オペレータによるステアリング操作部材45への操作を示すステアリング操作信号を出力する。
【0049】
アーティキュレート操作部材46は、リアフレーム12に対してフロントフレーム11を回動させるためにオペレータによって操作可能である。アーティキュレート操作部材46は、ジョイスティックなどのレバーである。或いは、アーティキュレート操作部材46は、レバー以外の部材であってもよい。アーティキュレート操作部材46は、オペレータによるアーティキュレート操作部材46への操作を示すアーティキュレート操作信号を出力する。
【0050】
リーニング操作部材47は、前輪3A,3Bを傾倒させるためにオペレータによって操作可能である。リーニング操作部材47は、ジョイスティックなどのレバーである。或いは、リーニング操作部材47は、レバー以外の部材であってもよい。リーニング操作部材47は、オペレータによるリーニング操作部材47の操作を示すリーニング操作信号を出力する。
【0051】
作業機操作部材48は、作業機5の姿勢を変更するためにオペレータによって操作可能である。作業機操作部材48は、例えば複数の作業機レバーを含む。或いは、作業機操作部材48は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。作業機操作部材48は、オペレータによる作業機操作部材48への操作を示す信号を出力する。
【0052】
シフト操作部材49は、作業機械1の前進と後進とを切り換えるためのオペレータによって操作可能である。シフト操作部材49は、例えばシフトレバーを含む。或いは、シフト操作部材49は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。シフト操作部材49は、オペレータによるシフト操作部材49への操作を示す信号を出力する。
【0053】
アクセル操作部材50は、作業機械1を走行させるためにオペレータによって操作可能である。アクセル操作部材50は、例えばアクセルペダルを含む。或いは、アクセル操作部材50は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。アクセル操作部材50は、オペレータによるアクセル操作部材50への操作を示す信号を出力する。
【0054】
作業機械1は、操舵角センサ51と、アーティキュレート角センサ52と、リーニング角センサ53と、を備えている。操舵角センサ51は、前輪3A,3Bの操舵角θ1を検出するために用いられる。操舵角センサ51は、操舵角θ1を示す操舵角信号を出力する。操舵角信号は、例えば、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bのストローク量である。なお、操舵角センサ51は、操舵角θ1を直接的に検出してもよい。
【0055】
図3に示すように、操舵角θ1は、第1ステアリング軸43A及び第2ステアリング軸43Bを中心としてフロントフレーム11に対して前輪3A,3Bが回動する角度である。詳細には、操舵角θ1は、フロントフレーム11の第1中心線L1に対する前輪3A,3Bの回転角度である。第1中心線L1は、フロントフレーム11の前後方向に延びる。
【0056】
操舵角θ1は、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bのストローク動作によって中立位置から左右に変化する。中立位置の操舵角θ1は、ゼロ度である。前輪3A,3Bは、中立位置において、フロントフレーム11の第1中心線L1と平行に配置される。なお、
図3において、3A’及び3B’は、中立位置から右方へ操舵角θ1だけ操舵された状態の前輪を示している。
【0057】
アーティキュレート角センサ52は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11のアーティキュレート角を検出するために用いられる。アーティキュレート角センサ52は、アーティキュレート角θ2を示すアーティキュレート角信号を出力する。アーティキュレート角信号は、例えば、左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28とのストローク量である。なお、アーティキュレート角センサ52は、アーティキュレート角θ2を直接的に検出してもよい。
【0058】
図3に示すように、アーティキュレート角θ2は、アーティキュレート軸44を中心としてリアフレーム12に対してフロントフレーム11が回動する角度である。詳細には、アーティキュレート角θ2は、フロントフレーム11の第1中心線L1とリアフレーム12の第2中心線L2がなす角度である。
【0059】
第2中心線L2は、リアフレーム12の前後方向に延びる。第2中心線L2は、作業機械1の上面視でアーティキュレート軸44を通過する。アーティキュレート角θ2は、中立位置から左右に変化する。中立位置のアーティキュレート角θ2は、ゼロである。アーティキュレート角θ2がゼロである場合、第2中心線L2の方向は、第1中心線L1の方向と一致する。なお、
図3では、フロントフレーム11が、アーティキュレート軸44回りに、アーティキュレート角θ2だけ回動した状態が示されている。
【0060】
リーニング角センサ53は、前輪3A,3Bのリーニング角θ3を検出するために用いられる。リーニング角センサ53は、リーニング角θ3を示すリーニング角信号を出力する。リーニング角信号は、例えば、リーニングアクチュエータ61のストローク量である。なお、リーニング角センサ53は、リーニング角θ3を直接的に検出してもよい。
【0061】
図4に示すように、リーニング角θ3は、車体2を前方から見て、前輪3A、3Bの左右方向への傾倒角度である。例えば、リーニング角θ3は、車体2を前方から見て、前輪3A,3Bがリーニング軸54A,54Bまわりに傾倒する傾倒角度である。以下の説明において、前輪3A,3Bが水平面に対して直立した状態(実線で示す3A、3B)を、前輪3A,3Bの中立位置と呼ぶものとする。前輪3A,3Bが中立位置で、リーニング角θ3は、ゼロ度である。なお、
図4において、3A’,3B’は、中立位置から左方にリーニング角θ3だけ傾倒した前輪を示している。
【0062】
図5に示すように、作業機械1は、コントローラ37を含む。コントローラ37は、記憶装置38とプロセッサ39とを含む。プロセッサ39は、例えばCPUであり、作業機械1を制御するためのプログラムを実行する。記憶装置38は、RAM及びROMなどのメモリと、SSD或いはHDDなどの補助記憶装置を含む。記憶装置38は、作業機械1を制御するためのプログラムとデータとを記憶している。
【0063】
コントローラ37は、シフト操作部材49の操作に応じて、動力伝達装置33を制御する。これにより、作業機械1の進行方向が、前進と後進とに切り換えられる。また、動力伝達装置33の速度段が切り換えられる。或いは、シフト操作部材49は、機械的に動力伝達装置33に接続されてもよい。シフト操作部材49の動作を機械的に動力伝達装置33に伝達することで、動力伝達装置33の前進と後進のギア、或いは変速ギアが切り替えられてもよい。
【0064】
コントローラ37は、アクセル操作部材50の操作に応じて、駆動源31及び動力伝達装置33を制御する。これにより、作業機械1が走行する。また、コントローラ37は、作業機操作部材48の操作に応じて、油圧ポンプ32と作業機バルブ34とを制御する。これにより、作業機5が動作する。
【0065】
コントローラ37は、ステアリング操作部材45からのステアリング操作信号により、ステアリング操作部材45の操作量を取得する。コントローラ37は、ステアリング操作信号に応じてステアリングバルブ42Aを制御することで、複数のステアリングアクチュエータ41A,41Bを伸縮させる。これにより、コントローラ37は、前輪3A,3Bの操舵角θ1を変化させる。コントローラ37は、操舵角信号を操舵角センサ51から取得する。コントローラ37は、操舵角信号に基づいて前輪3A,3Bの操舵角θ1を算出する。
【0066】
コントローラ37は、アーティキュレート操作部材46からのアーティキュレート操作信号により、アーティキュレート操作部材46の操作量を取得する。コントローラ37は、アーティキュレートバルブ42Bを制御する。例えば、コントローラ37は、アーティキュレート操作信号に応じてアーティキュレートバルブ42Bを制御することによって、左アーティキュレートシリンダ27と右アーティキュレートシリンダ28を伸縮させる。これにより、コントローラ37は、アーティキュレート角を変化させる。コントローラ37は、アーティキュレート角信号をアーティキュレート角センサ52から取得する。コントローラ37は、アーティキュレート角信号に基づいてアーティキュレート角θ2を算出する。
【0067】
コントローラ37は、リーニング操作部材47からのリーニング操作信号により、リーニング操作部材47の操作量を取得する。コントローラ37は、リーニングバルブ42Cを制御する。例えば、コントローラ37は、リーニング操作信号に応じてリーニングバルブ42Cを制御することによって、リーニングアクチュエータ61を伸縮させる。これにより、コントローラ37は、オペレータによるリーニング操作部材47の操作に応じて、リーニング角θ3を変化させる。コントローラ37は、リーニング角信号をリーニング角センサ53から取得する。コントローラ37は、リーニング角信号に基づいてリーニング角θ3を算出する。
【0068】
作業機械1は、方向センサ62を備えている。方向センサ62は、車体2の進行方向を検出する。方向センサ62は、車体2の進行方向を示す方向信号を出力する。コントローラ37は、方向センサ62からの方向信号により、車体2の進行方向を取得する。車体2の進行方向は、例えば車体2のヨー角で示される。
【0069】
方向センサ62は、例えばIMU(慣性計測装置)である。コントローラ37は、車体2の加速度および角速度に基づいて、車体2の進行方向を算出する。或いは、方向センサ62は、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)の位置センサであってもよい。コントローラ37は、方向センサ62が検出した作業機械1の位置の変化から、車体2の進行方向を取得してもよい。
【0070】
作業機械1は、入力装置63を備えている。入力装置63は、オートステアリング制御のオン・オフを設定するために、オペレータによって操作可能である。オートステアリング制御では、コントローラ37が、ステアリングアクチュエータ41A,41Bを制御されることで、前輪3a,3Bを自動的に操舵する。入力装置63は、例えばスイッチである。或いは、入力装置63は、タッチスクリーンなどのオペレータによって操作可能な他の装置であってもよい。入力装置63によってオートステアリング制御がオンに設定されている場合には、コントローラ37は、オートステアリング制御を実行する。
【0071】
図6は、オートステアリング制御の一例である方向維持制御を示す図である。方向維持制御では、コントローラ37は、作業機械1の目標進行方向を決定し、作業機械1が目標進行方向に向かって走行するように、操舵角を制御する。例えば、
図6に示すように、作業機械1が位置P1で、ステアリング操作部材45は中立位置N1であり、操舵角θ1はゼロである。
【0072】
オペレータが、作業機械1を前進させながら、ステアリング操作部材45を手動で左方に操作すると、作業機械1は、左方へ旋回しながら、位置P1から、位置P2を経て、位置P3へ移動し、操舵角θ1は左方へθmaxに変更される。オペレータが、位置P4においてステアリング操作部材45を中立位置N1に戻す、或いは逆方向に操作すると、位置P5において操舵角θ1はゼロに戻り、作業機械1は直進を開始する。
【0073】
例えば、コントローラ37は、ステアリング操作部材45が中立位置N1から操作された後、操舵角θ1がゼロに戻ったことを、方向維持制御の開始条件として記憶している。なお、方向維持制御の開始条件は、操舵角θ1がゼロに戻ったことに限られない。方向維持制御の開始条件は、例えば、オペレータによって所定の操作ボタンが押されるなど、方向維持制御の開始の指令があったことであってもよい。コントローラ37は、開始条件が満たされたときの作業機械1の進行方向を、方向センサ62からの方向信号によって取得する。そして、コントローラ37は、開始条件が満たされたときの作業機械1の進行方向を、目標進行方向として設定する。すなわち、
図6に示すように、コントローラ37は、位置P5での作業機械1の進行方向H1を、目標進行方向として決定する。コントローラ37は、作業機械1の進行方向が目標進行方向H1に維持されるように、操舵角θ1を制御する。
【0074】
なお、オートステアリング制御では、作業機械1の走行速度の調整は、アクセル操作部材50による手動操作によって行われてもよく、或いはコントローラ37によって自動で行われてもよい。方向維持制御の開始条件は、位置P4においてステアリング操作部材45が中立位置N1に戻ったことであってもよい。
【0075】
フロントフレーム11がリアフレーム12に対して、中立位置から大きくアーティキュレートした状態で、上述したオートステアリング制御が実行されると、走行安定性が低下する可能性がある。また、前輪3A,3Bが中立位置から大きくリーニングした状態で、上述したオートステアリング制御が実行されると、走行安定性が低下する可能性がある。そのため、本実施形態に係る作業機械1の制御システムでは、コントローラ37は、アーティキュレート角θ2とリーニング角θ3とに応じて、オートステアリング制御を制限する制限制御を実行する。
【0076】
図7は、コントローラ37によって実行される制限制御の処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、ステップS1では、コントローラ37は、アーティキュレート角θ2を取得する。コントローラ37は、アーティキュレート角センサ52からのアーティキュレート角信号に基づいて、アーティキュレート角θ2を取得する。
【0077】
ステップS2では、コントローラ37は、リーニング角θ3を取得する。コントローラ37は、リーニング角センサ53からのリーニング角信号に基づいて、リーニング角θ3を取得する。
【0078】
ステップS3では、コントローラ37は、アーティキュレート角θ2が第1範囲内であるかを判定する。第1範囲は、良好な走行安定性を確保できるアーティキュレート角θ2の範囲を示す。第1範囲は、中立位置を含み、アーティキュレート角θ2の左方への上限値と右方への上限値との間の範囲である。アーティキュレート角θ2が第1範囲内である場合には、処理はステップS4に進む。
【0079】
ステップS4では、コントローラ37は、リーニング角θ3が第2範囲内であるかを判定する。第2範囲は、良好な走行安定性を確保できるリーニング角θ3の範囲を示す。第2範囲は、中立位置を含み、リーニング角θ3の左方への上限値と右方への上限値との間の範囲である。リーニング角θ3が第2範囲内である場合には、処理はステップS5に進む。ステップS5では、コントローラ37は、通常制御として、上述したオートステアリング制御を実行する。
【0080】
一方、ステップS3において、アーティキュレート角θ2が第1範囲外である場合には、処理はステップS6に進む。例えば、アーティキュレート角θ2が左方への上限値より大きいときには、処理はステップS6へ進む。或いは、アーティキュレート角θ2が右方への上限値より大きいときには、処理はステップS6へ進む。
【0081】
ステップS6では、コントローラ37は、制限制御を実行する。コントローラ37は、制限制御において、入力装置63の操作に関わらず、オートステアリング制御を無効とする。従って、アーティキュレート角θ2が第1範囲外である場合には、入力装置63によってオートステアリング制御がオンに設定されており、且つ、上述した開始条件が満たされても、コントローラ37は、オートステアリング制御を開始しない。また、制限制御中においては、オートステアリング制御が無効であることをオペレータに報知する。報知の手段としては、警告ランプの表示、警告音の発生など、既知の任意の手段を採用することができる。
【0082】
同様に、ステップS4において、リーニング角θ3が第2範囲外である場合にも、処理はステップS6に進み、コントローラ37は、制限制御を実行する。例えば、リーニング角θ3が左方への上限値よりも大きいときには、コントローラ37は、制限制御を実行する。リーニング角θ3が右方への上限値よりも大きいときには、コントローラ37は、制限制御を実行する。
【0083】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、アーティキュレート角θ2が第1範囲外である場合には、制限制御によって、オートステアリング制御が制限される。そのため、アーティキュレート角θ2が、走行安定性が低下するような大きさである場合に、オートステアリング制御が制限される。それにより、走行安定性が向上する。
【0084】
また、リーニング角θ3が第2範囲外である場合には、制限制御によって、オートステアリング制御が制限される。そのため、リーニング角θ3が、走行安定性が低下するような大きさである場合に、オートステアリング制御が制限される。それにより、走行安定性が向上する。
【0085】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0086】
作業機械1の構成は、上記のものに限らず、変更されてもよい。例えば、作業機5の構成が変更されてもよい。作業機械1の制御システムの一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、作業機械1の各種の操作部材と入力装置63とが作業機械1の外部に配置されてもよい。
【0087】
コントローラ37は、複数のコントローラによって構成されてもよい。上述した処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。複数のコントローラの一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。
【0088】
オートステアリング制御は、上述した方向維持制御に限らず、他の制御であってもよい。例えば、オートステアリング制御は、自動経路追従制御であってもよい。コントローラ37は、自動経路追従制御において、作業機械1が目標経路に従って移動するように、操舵角θ1を制御する。
【0089】
図8は、オートステアリング制御の一例である自動経路追従制御を示す図である。
図8に示すように、コントローラ37は、目標経路R1を取得する。コントローラ37は、外部のコンピュータから目標経路R1を取得してもよい。コントローラ37は、オペレータによって所定の操作ボタンが押されるなど、制御の開始の指令があったことを開始条件として自動経路追従制御(オートステアリング制御)を開始する。或いは、コントローラ37は、入力装置63の操作に応じて、目標経路R1を生成してもよい。コントローラ37は、自動経路追従制御において、作業機械1が目標経路R1に従って移動するように、操舵角θ1を制御する。オートステアリング制御における通常制御と制限制御については、
図7を用いて説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0090】
上記の実施形態では、コントローラ37は、制限制御において、オートステアリング制御を無効とする。しかし、制限制御は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0091】
例えば、コントローラ37は、制限制御において、車体2の走行を制限してもよい。コントローラ37は、制限制御において、動力伝達装置33の速度段の上限を制限してもよい。コントローラ37は、オートステアリング制御の通常制御において、動力伝達装置33の前進時の速度段の上限を第3速としてもよい。コントローラ37は、制限制御において、動力伝達装置33の前進時の速度段の上限を第2速としてもよい。コントローラ37は、オートステアリング制御の通常制御において、動力伝達装置33の後進時の速度段の上限を第3速としてもよい。コントローラ37は、制限制御において、動力伝達装置33の後進時の速度段の上限を第2速としてもよい。
【0092】
コントローラ37は、制限制御において、作業機械1の車速の上限を制限してもよい。例えば、コントローラ37は、オートステアリング制御の通常制御において、作業機械1の車速の上限を第1上限車速としてもよい。コントローラ37は、制限制御において、作業機械1の車速の上限を第1上限車速よりも小さい第2上限車速としてもよい。
【0093】
上記の実施形態では、コントローラ37は、アーティキュレート角θ2が第1範囲外であるときにも制限制御を実行する。しかし、アーティキュレート角θ2に応じた制限制御は省略されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、リーニング可能な走行輪を備える作業機械において、走行安定性が向上する。
【符号の説明】
【0095】
2:車体
3a,3B:前輪
33:動力伝達装置
37:コントローラ
41A,41B:ステアリングアクチュエータ
53:リーニング角センサ
61:リーニングアクチュエータ
63:入力装置
θ3:リーニング角