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特開2023-90416電力変換装置、制御方法およびプログラム
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  • 特開-電力変換装置、制御方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090416
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電力変換装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205364
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】広田 崇
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 功治
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730BB27
5H730BB85
5H730BB88
5H730DD03
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD41
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】燃料電池に接続されるDC-DCコンバータの小型化を実現する電力変換装置、制御方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】電力変換装置は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、1次側コイルに印加された前記インバータの出力する交流電圧を2次側コイルの交流電圧に変換するトランス、および前記2次側コイルの交流電圧を整流する整流回路を有する2以上の整数n個のDC-DCコンバータと、前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータのスイッチング素子を制御する制御信号であって、360度を前記DC-DCコンバータの個数nで除算した角度ずつずらした位相を有する制御信号を生成し、生成した制御信号を用いて前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータを制御する制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、1次側コイルに印加された前記インバータの出力する交流電圧を2次側コイルの交流電圧に変換するトランス、および前記2次側コイルの交流電圧を整流する整流回路を有する2以上の整数n個のDC-DCコンバータと、
前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータのスイッチング素子を制御する制御信号であって、360度を前記DC-DCコンバータの個数nで除算した角度ずつずらした位相を有する制御信号を生成し、生成した制御信号を用いて前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータを制御する制御装置と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記DC-DCコンバータは、
リップルを低減させる目的のリアクトルを備えない、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、1次側コイルに印加された前記インバータの出力する交流電圧を2次側コイルの交流電圧に変換するトランス、および前記2次側コイルの交流電圧を整流する整流回路を有する2以上の整数n個のDC-DCコンバータを備える電力変換装置が実行する制御方法であって、
前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータのスイッチング素子を制御する制御信号であって、360度を前記DC-DCコンバータの個数nで除算した角度ずつずらした位相を有する制御信号を生成することと、
生成した制御信号を用いて前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータを制御することと、
を含む制御方法。
【請求項4】
直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、1次側コイルに印加された前記インバータの出力する交流電圧を2次側コイルの交流電圧に変換するトランス、および前記2次側コイルの交流電圧を整流する整流回路を有する2以上の整数n個のDC-DCコンバータを備える電力変換装置のコンピュータに、
前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータのスイッチング素子を制御する制御信号であって、360度を前記DC-DCコンバータの個数nで除算した角度ずつずらした位相を有する制御信号を生成することと、
生成した制御信号を用いて前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータを制御することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電システムにおいて直流電力の電圧を昇圧する機能を有する電力変換装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-011964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池を用いる応用分野において、燃料電池に接続されるDC-DCコンバータの小型化が望まれている。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池に接続されるDC-DCコンバータの小型化を実現する電力変換装置、制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ、1次側コイルに印加された前記インバータの出力する交流電圧を2次側コイルの交流電圧に変換するトランス、および前記2次側コイルの交流電圧を整流する整流回路を有する2以上の整数n個のDC-DCコンバータと、前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータのスイッチング素子を制御する制御信号であって、360度を前記DC-DCコンバータの個数nで除算した角度ずつずらした位相を有する制御信号を生成し、生成した制御信号を用いて前記n個のDC-DCコンバータそれぞれが有するインバータを制御する制御装置と、を備える電力変換装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電力変換装置、制御方法およびプログラムによれば、燃料電池に接続されるDC-DCコンバータの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る各コンバータの構成の一例を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る制御装置の構成の一例を示す図である。
図4】本開示の実施形態による制御装置の処理フローの一例を示す図である。
図5】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0010】
(電力変換装置の構成)
図1は、本開示の実施形態に係る電力変換装置1の構成の一例を示す図である。電力変換装置1は、図1に示すように、コンバータ10a1、10a2、・・・、10an、電流検出装置20、電圧検出装置30a1、30a2、・・・、30an、および制御装置40を備える。以下、コンバータ10a1、10a2、・・・、10anを総称してコンバータ10aという。また、電圧検出装置30a1、30a2、・・・、30anを総称して電圧検出装置30aという。電力変換装置1は、各コンバータ10aを制御する制御信号の位相を360度/n(すなわち、コンバータ10aの総数)ずつずらし、コンバータ10a全体の入力電流および各コンバータ10aの出力電圧に基づいて、各コンバータ10aの出力電圧が同等になるように制御する装置である。なお、各コンバータ10aは、下記で示すように、整流回路103とキャパシタ105との間にリアクトルを有していない。
【0011】
各コンバータ10aは、入力端子IN、入力端子INにおける電位の基準となる端子GND1、出力端子OUT、出力端子OUTにおける電位の基準となる端子GND2、および、制御装置40からの制御信号を受ける端子CTRLを備える。端子CTRLは、実際には後述するスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dそれぞれの制御信号が入力される端子(スイッチング素子が後述するIGBTである場合には、各IGBTのゲート)の総称である。なお、スイッチング素子101a、101b、101cおよび101dそれぞれの制御信号Vctrlが入力される端子をまとめて端子CTRLとして説明した場合であっても、スイッチング素子101a、101b、101cおよび101dのそれぞれに入力される制御信号は、適切な信号である。電力変換装置1において、コンバータ10a、電流検出装置20、電圧検出装置30a、および制御装置40のそれぞれは、次のように接続される。
【0012】
コンバータ10a1の端子GND1は、コンバータ10a2、10a3、・・・、10anそれぞれの端子GND1に接続される。コンバータ10a1の入力端子INは、コンバータ10a2、10a3、・・・、10anそれぞれの入力端子IN、および電流検出装置20の第1端子に接続される。コンバータ10a1の端子GND2は、電圧検出装置30a1の第1端子に接続される。コンバータ10a1の出力端子OUTは、コンバータ10a2の端子GND2、電圧検出装置30a1の第2端子、および電圧検出装置30a2の第1端子に接続される。コンバータ10a2の出力端子OUTは、コンバータ10a3の端子GND2、電圧検出装置30a2の第2端子、および電圧検出装置30a3の第1端子に接続される。同様に、コンバータ10a(n―1)の出力端子OUTは、コンバータ10anの端子GND2、電圧検出装置30a(n-1)の第2端子、および電圧検出装置30anの第1端子に接続される。コンバータ10anの出力端子OUTは、電圧検出装置30anの第2端子に接続される。電圧検出装置30a1の第3端子は、制御装置40の第1端子に接続される。電圧検出装置30a2の第3端子は、制御装置40の第2端子に接続される。電圧検出装置30anの第3端子は、制御装置40の第n端子に接続される。コンバータ10a1の端子CTRLは、制御装置40の第(n+1)端子に接続される。コンバータ10a2の端子CTRLは、制御装置40の第(n+2)端子に接続される。コンバータ10anの端子CTRLは、制御装置40の第2n端子に接続される。電流検出装置20の第2端子は、制御装置40の第(2n+1)端子に接続される。
【0013】
なお、電流検出装置20の第3端子は、電力変換装置1全体の入力端子INallである。コンバータ10a1の端子GND1は、電力変換装置1全体の入力端子INallにおける電位の基準となる端子GNDinである。コンバータ10anの出力端子OUTは、電力変換装置1全体の出力端子OUTallである。コンバータ10a1の端子GND2は、電力変換装置1全体の出力端子OUTallにおける電位の基準となる端子GNDoutである。
【0014】
図2は、本開示の実施形態に係る各コンバータ10aの構成の一例を示す図である。各コンバータ10aは、例えば、フルブリッジコンバータと呼ばれる絶縁型スイッチングレギュレータである。各コンバータ10aは、図2に示すように、インバータ101、トランス102、整流回路103、キャパシタ104および105を備える。
【0015】
インバータ101は、スイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを備える。スイッチング素子101a、101b、101cおよび101dのそれぞれは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのパワー半導体である。スイッチング素子101a、101b、101cおよび101dのそれぞれは、制御装置40による制御の下、トランス102の1次側(入力側)コイルに所望の電圧が印加されるように、オン状態またはオフ状態となる。インバータ101から出力された電圧は、トランス102の1次側コイルに印加される。
【0016】
トランス102は、1次側コイルに印加された電圧を、1次側コイルと2次側コイルとの巻数比に応じた電圧に変換して、2次側(出力側)コイルから出力する。2次側コイルから出力された電圧は、整流回路103の入力に印加される。
【0017】
整流回路103は、ダイオード103a、103b、103cおよび103dを備える。整流回路103は、ダイオードブリッジによる全波整流回路である。整流回路103は、トランス102の2次側コイルから出力された交流電圧を整流することにより、直流電圧に変換する。
【0018】
キャパシタ104は、インバータ101の入力に印加される直流電圧を一定の電圧に安定させる。キャパシタ105は、整流回路103が出力する直流電圧を一定の電圧に安定させる。
【0019】
スイッチング素子101a、101b、101cおよび101dのそれぞれがIGBTである場合、各コンバータ10aにおいて、インバータ101、トランス102、整流回路103、キャパシタ104および105のそれぞれは、次のように接続される。
【0020】
スイッチング素子101aのエミッタは、スイッチング素子101bのコレクタ、およびトランス102の第1端子に接続される。スイッチング素子101aのコレクタは、スイッチング素子101cのコレクタ、およびキャパシタ104の第1端子に接続される。スイッチング素子101bのエミッタは、スイッチング素子101dのエミッタ、およびキャパシタ104の第2端子に接続される。スイッチング素子101cのエミッタは、スイッチング素子101dのコレクタ、およびトランス102の第2端子に接続される。トランス102の第3端子は、ダイオード103cのアノード、およびダイオード103dのカソードに接続される。トランス102の第4端子は、ダイオード103aのアノード、およびダイオード103bのカソードに接続される。ダイオード103aのカソードは、ダイオード103cのカソード、およびキャパシタ105の第1端子に接続される。ダイオード103bのアノードは、ダイオード103dのアノード、およびキャパシタ105の第2端子に接続される。
【0021】
スイッチング素子101aのコレクタは、各コンバータ10aの入力端子INである。スイッチング素子101bのエミッタは、各コンバータ10aの入力端子INにおける電位の基準となる端子GND1である。ダイオード103aのカソードは、各コンバータ10aの出力端子OUTである。ダイオード103bのアノードは、各コンバータ10aの出力端子OUTにおける電位の基準となる端子GND2である。
【0022】
なお、スイッチング素子101a、101b、101cおよび101dのそれぞれがMOSFETである場合には、IGBTのエミッタをソースに置き換え、IGBTのコレクタをドレインに置き換えることにより、上述のスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dのそれぞれがIGBTの場合と同様に接続を考えることができる。
【0023】
電流検出装置20は、すべてのコンバータ10aに供給される電流の総和を検出する。そして、電流検出装置20は、検出した電流値Iinを制御装置40に出力する。
【0024】
電圧検出装置30aのそれぞれは、接続されている対応するコンバータ10aの出力電圧を検出する。具体的には、例えば、電圧検出装置30a1は、コンバータ10a1の出力電圧Vout1を検出する。電圧検出装置30a2は、コンバータ10a2の出力電圧Vout2を検出する。また、電圧検出装置30anは、コンバータ10anの出力電圧Voutnを検出する。そして、電圧検出装置30aのそれぞれは、検出した電圧値を制御装置40に出力する。
【0025】
図3は、本開示の実施形態に係る制御装置40の構成の一例を示す図である。制御装置40は、第1処理部F1、第2処理部F2、第3処理部F3、第4処理部F4、第5処理部F5、第6処理部F6、第7処理部F7、第8処理部F8、第9処理部F9、第10処理部F10、および第11処理部F11を備える。
【0026】
第1処理部F1は、電流指令Iin*と、電流検出装置20が検出した電流値Iinとの差分(Iin*-Iin)を算出する。第1処理部F1は、差分(Iin*-Iin)を第2処理部F2に出力する。
【0027】
第2処理部F2は、差分(Iin*-Iin)に対して、PI制御を実行する。第2処理部F2によるこの処理により、電力変換装置1が備えるコンバータ10a全体の目標となる変調率m*が生成されたことになる。第2処理部F2は、目標となる変調率m*を、目標となる変調率m*と、後述する各コンバータ10aについての変量率の補正量Δm1*~Δmn*との差分を算出する処理部(図3に示す例はn=3の場合の例であり、この場合、第7処理部F7、第8処理部F8および第9処理部F9)に出力する。
【0028】
第3処理部F3は、電圧検出装置30aのそれぞれが検出した電圧と、電圧検出装置30aのそれぞれが検出した電圧の平均値との差分を算出する。例えば、電圧検出装置30a1が検出した電圧がVout1、電圧検出装置30a2が検出した電圧がVout2、・・・、電圧検出装置30anが検出した電圧がVoutnであり、それらの平均値がVout_aveであるとすると、第3処理部F3は、差分ΔV1=(Vout1-Vout_ave)、差分ΔV2=(Vout2-Vout_ave)、・・・、差分ΔVn=(Voutn-Vout_ave)と算出する。そして、第3処理部F3は、算出した差分に対してPI制御を実行する処理部(図3に示す例はn=3の場合の例であり、この場合、第4処理部F4、第5処理部F5および第6処理部F6)に出力する。具体的には、n=3の場合、第3処理部F3は、差分ΔV1を第4機能部F4に出力する。また、第3処理部F3は、差分ΔV2を第5機能部F5に出力する。また、第3処理部F3は、差分ΔVnを第6機能部F6に出力する。
【0029】
第3処理部F3が算出した差分に対してPI制御を実行する処理部は、目標となる変調率m*と、各コンバータ10aについての補正量Δm1*~Δmn*との差分を算出する処理部に実行結果を出力する。具体的には、n=3の場合、第4処理部F4は、差分ΔV1に対してPI制御を実行する。なお、第4処理部F4によるこの処理により、電圧検出装置30a1が検出した電圧Vout1を出力したコンバータ10a1について、変調率m*からの補正量Δm1*が生成されたことになる。第4処理部F4は、補正量Δm1*を第7処理部F7に出力する。また、第5処理部F5は、差分ΔV2に対してPI制御を実行する。なお、第5処理部F5によるこの処理により、電圧検出装置30a2が検出した電圧Vout2を出力したコンバータ10a2について、変調率m*からの補正量Δm2*が生成されたことになる。第5処理部F5は、補正量Δm2*を第8処理部F8に出力する。また、第6処理部F6は、差分ΔV3に対してPI制御を実行する。なお、第6処理部F6によるこの処理により、電圧検出装置30anが検出した電圧Voutnを出力したコンバータ10anについて、変調率m*からの補正量Δmn*が生成されたことになる。第6処理部F6は、補正量Δmn*を第9処理部F9に出力する。
【0030】
第7処理部F7、第8処理部F8および第9処理部F9のそれぞれは、目標となる変調率m*と、各コンバータ10aについての補正量Δm1*~Δmn*との差分を算出する。具体的には、第7処理部F7は、変調率m*から補正量Δm1*を減算して、コンバータ10a1に対する変調率m1=(m*-Δm1*)を算出する。また、第8処理部F8は、変調率m*から補正量Δm2*を減算して、コンバータ10a2に対する変調率m2=(m*-Δm2*)を算出する。また、第9処理部F9は、変調率m*から補正量Δmn*を減算して、コンバータ10anに対する変調率mn=(m*-Δmn*)を算出する。そして、第7処理部F7は、変調率m1を第10処理部F10に出力する。また、第8処理部F8は、変調率m2を第10処理部F10に出力する。また、第9処理部F9は、変調率mnを第10処理部F10に出力する。
【0031】
第10処理部F10は、第7処理部F7が出力した変調率m1、第8処理部F8が出力した変調率m2、第9処理部F9が出力した変調率mnのそれぞれをサンプリングし、ホールド(保持)する。そして、第10処理部F10は、変調率m1、m2、mnを同時に第11処理部F11に出力する。第10処理部F10によるこの処理は、第7処理部F7、第8処理部F8および第9処理部F9それぞれの処理が完了するタイミングが異なった場合であっても、制御に用いる変量率m1、m2、mnの組み合わせが正しいものであることを保証するための処理である。
【0032】
第11処理部F11は、変調率m1、m2、mnに応じた制御信号Vctrlを生成する。具体的には、第11処理部F11は、変調率m1に応じたコンバータ10a1のスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号を生成する。また、第11処理部F11は、変調率m2に応じたコンバータ10a2のスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号を生成する。また、第11処理部F11は、変調率mnに応じたコンバータ10anのスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号を生成する。すなわち、制御信号Vctrlには、コンバータ10a1~10anそれぞれのスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号が含まれている。なお、第11処理部F11は、生成する各コンバータ10aの制御信号の位相を360度/n(すなわち、コンバータ10aの総数)ずつずらした信号としている。第11処理部F11によるこの処理により、コンバータ10aそれぞれが出力するリップルがピークとなるタイミングがずれるため、電力変換装置1全体の出力VOUTのリップルを小さくすることができる。第11処理部F11は、制御信号Vctrlを各コンバータ10aに出力する。上述したように、制御信号Vctrlは、第11処理部F11から各コンバータ10aそれぞれに適切に出力される。その結果、各コンバータ10aのスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dに対して、所望の制御が行われ、各コンバータ10aの出力電圧がほぼ等しくなるバランス制御が実現される。
【0033】
(制御装置が行う処理)
図4は、本開示の実施形態による制御装置40の処理フローの一例を示す図である。次に、制御装置40が制御信号Vctrlを生成する処理について、図4を参照して説明する。
【0034】
第1処理部F1は、電流指令Iin*と、電流検出装置20が検出した電流値Iinとの差分(Iin*-Iin)を算出する(ステップS1)。第1処理部F1は、差分(Iin*-Iin)を第2処理部F2に出力する。
【0035】
第2処理部F2は、差分(Iin*-Iin)に対して、PI制御を実行する(ステップS2)。第2処理部F2は、目標となる変調率m*を、目標となる変調率m*と、後述する各コンバータ10aについての補正量Δm1*~Δmn*との差分を算出する処理部に出力する。
【0036】
第3処理部F3は、電圧検出装置30aのそれぞれが検出した電圧と、電圧検出装置30aのそれぞれが検出した電圧の平均値との差分を算出する(ステップS3)。例えば、電圧検出装置30a1が検出した電圧がVout1、電圧検出装置30a2が検出した電圧がVout2、・・・、電圧検出装置30anが検出した電圧がVoutnであり、それらの平均値がVout_aveであるとすると、第3処理部F3は、差分ΔV1=(Vout1-Vout_ave)、差分ΔV2=(Vout2-Vout_ave)、・・・、差分ΔVn=(Voutn-Vout_ave)と算出する。そして、第3処理部F3は、算出した差分に対してPI制御を実行する処理部に出力する。具体的には、n=3の場合、第3処理部F3は、差分ΔV1を第4機能部F4に出力する。また、第3処理部F3は、差分ΔV2を第5機能部F5に出力する。また、第3処理部F3は、差分ΔVnを第6機能部F6に出力する。
【0037】
第3処理部F3が算出した差分に対してPI制御を実行する処理部は、目標となる変調率m*と、各コンバータ10aについての補正量Δm1*~Δmn*との差分を算出する処理部に実行結果を出力する。具体的には、n=3の場合、第4処理部F4は、差分ΔV1に対してPI制御を実行する。第4処理部F4によるこの処理により、電圧検出装置30a1が検出した電圧Vout1を出力したコンバータ10a1について、変調率m*からの補正量Δm1*が生成されたことになる。第4処理部F4は、補正量Δm1*を第7処理部F7に出力する。また、第5処理部F5は、差分ΔV2に対してPI制御を実行する。第5処理部F5によるこの処理により、電圧検出装置30a2が検出した電圧Vout2を出力したコンバータ10a2について、変調率m*からの補正量Δm2*が生成されたことになる。第5処理部F5は、補正量Δm2*を第8処理部F8に出力する。また、第6処理部F6は、差分ΔV3に対してPI制御を実行する。第6処理部F6によるこの処理により、電圧検出装置30anが検出した電圧Voutnを出力したコンバータ10anについて、変調率m*からの補正量Δmn*が生成されたことになる(ステップS4)。第6処理部F6は、補正量Δmn*を第9処理部F9に出力する。
【0038】
第7処理部F7、第8処理部F8および第9処理部F9のそれぞれは、目標となる変調率m*と、各コンバータ10aについての補正量Δm1*~Δmn*との差分を算出する(ステップS5)。具体的には、第7処理部F7は、変調率m*から補正量Δm1*を減算して、コンバータ10a1に対する変調率m1=(m*-Δm1*)を算出する。また、第8処理部F8は、変調率m*から補正量Δm2*を減算して、コンバータ10a2に対する変調率m2=(m*-Δm2*)を算出する。また、第9処理部F9は、変調率m*から補正量Δmn*を減算して、コンバータ10anに対する変調率mn=(m*-Δmn*)を算出する。そして、第7処理部F7は、変調率m1を第10処理部F10に出力する。また、第8処理部F8は、変調率m2を第10処理部F10に出力する。また、第9処理部F9は、変調率mnを第10処理部F10に出力する。
【0039】
第10処理部F10は、第7処理部F7が出力した変調率m1、第8処理部F8が出力した変調率m2、第9処理部F9が出力した変調率mnのそれぞれをサンプリングし、ホールド(保持)する(ステップS6)。そして、第10処理部F10は、変調率m1、m2、mnを同時に第11処理部F11に出力する。
【0040】
第11処理部F11は、変調率m1、m2、mnに応じた制御信号Vctrlを生成する(ステップS7)。具体的には、第11処理部F11は、変調率m1に応じたコンバータ10a1のスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号を生成する。また、第11処理部F11は、変調率m2に応じたコンバータ10a2のスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号を生成する。また、第11処理部F11は、変調率mnに応じたコンバータ10anのスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号を生成する。すなわち、制御信号Vctrlには、コンバータ10a1~10anそれぞれのスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dを制御する制御信号が含まれている。なお、第11処理部F11は、生成する各コンバータ10aの制御信号の位相を360度/n(すなわち、コンバータ10aの総数)ずつずらした信号としている。第11処理部F11によるこの処理により、コンバータ10aそれぞれが出力するリップルがピークとなるタイミングがずれるため、電力変換装置1全体の出力VOUTのリップルを小さくすることができる。第11処理部F11は、制御信号Vctrlを各コンバータ10aに出力する。
【0041】
(作用効果)
以上、本開示の実施形態による電力変換装置1について説明した。電力変換装置1において、電力変換装置1は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ101、1次側コイルに印加された前記インバータの出力する交流電圧を2次側コイルの交流電圧に変換するトランス102、および前記2次側コイルの交流電圧を整流する整流回路103を有する2以上の整数n個のDC-DCコンバータ10aと、前記n個のDC-DCコンバータ10aそれぞれが有するインバータ101のスイッチング素子を制御する制御信号であって、360度を前記DC-DCコンバータ10aの個数nで除算した角度ずつずらした位相を有する制御信号を生成し、生成した制御信号を用いて前記n個のDC-DCコンバータ10aそれぞれが有するインバータ101を制御する制御装置と、を備える。
【0042】
一般的に、フルブリッジコンバータの絶縁型スイッチングレギュレータでは、出力電圧のリップルを低減させるために、整流回路(整流回路103に相当)とキャパシタ(キャパシタ105に相当)との間にリアクトルを設け、キャパシタとリアクトルとでリップルを低減させるフィルタが形成される。しかしながら、その場合、整流回路に電流を流すためには、リアクトルに電圧が印加されている必要があり、整流回路を構成するダイオードの印加電圧が上昇する。その結果、入力電圧を上昇させると共によりインバータを構成するスイッチング素子として耐圧の高いスイッチング素子を用いるか、トランス(トランス102に相当)としてはより大きな巻数比の大型のトランスを用いる必要があり、電力変換装置が大きくなってしまう。
【0043】
本開示の実施形態によるDC-DCコンバータ10aは、整流回路103とキャパシタ105との間にリアクトルを有していないため、上述の一般的なリアクトルを用いてリップルを低減させるDC-DCコンバータに比べて、整流回路103を構成するダイオードの印加電圧を低くすることができる。その結果、インバータ101を構成するスイッチング素子101a、101b、101cおよび101dの耐圧を低くすること、またはトランス102として、リアクトルを用いたDC-DCコンバータに比べて、巻数比の小さい小型のトランスを用いることができる。
【0044】
つまり、燃料電池に接続されるDC-DCコンバータの小型化を実現する電力変換装置、制御方法およびプログラムを提供することが可能となる。
【0045】
なお、各DC-DCコンバータ10aのリップルは、上述の一般的なDC-DCコンバータのリップルに比べて大きくなる。そのリップルが許容できない場合には、本開示の実施形態による電力変換装置1では、DC-DCコンバータ10aそれぞれが有するインバータ101のスイッチング素子を、360度をDC-DCコンバータ10aの個数nで除算した角度ずつ位相をずらした制御信号を用いて制御する。これにより、リアクトルを用いないDC-DCコンバータを備える本開示の実施形態による電力変換装置1により、リップルを低減させるとともに、小型の電力変換装置1を実現することができる。
【0046】
なお、本開示の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0047】
本開示の実施形態における記憶部や記憶装置(レジスタ、ラッチを含む)のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部や記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0048】
本開示の実施形態について説明したが、上述の制御装置40、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
【0049】
図5は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ5は、図5に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。例えば、上述の制御装置40、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0050】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0051】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、開示の範囲を限定しない。これらの実施形態は、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、種々の省略、種々の置き換え、種々の変更を行ってよい。
【符号の説明】
【0053】
1…電力変換装置 5…コンピュータ 6…CPU 7…メインメモリ 8…ストレージ 9…インターフェース 10a(10a1、10a2、・・・、10an)…コンバータ 20…電流検出装置 30a(30a1、30a2、・・・、30an)…電圧検出装置 40…制御装置 101…インバータ 101a、101b、101c、101d…スイッチング素子 102…トランス 103…整流回路 103a、103b、103c、103d…ダイオード 104、105…キャパシタ F1…第1処理部 F2…第2処理部 F3…第3処理部 F4…第4処理部 F5…第5処理部 F6…第6処理部 F7…第7処理部 F8…第8処理部 F9…第9処理部 F10…第10処理部 F11…第11処理部
図1
図2
図3
図4
図5