(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090419
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】取付金具及び折板屋根材の取付方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20230622BHJP
E04D 3/367 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
E04D3/36 A
E04D3/367 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205369
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】593162095
【氏名又は名称】株式会社長谷川工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 周藏
(72)【発明者】
【氏名】今 貴志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 伸雄
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AZ01
2E108BN06
2E108CC01
2E108CC02
2E108DF07
2E108ER03
2E108FF04
2E108FF05
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】折板屋根材を直接嵌合でき、折板屋根材のハゼ部をハゼ締めできる構成を吊子を用いることなく実現可能な取付金具を提供する。
【解決手段】頂部1と脚部2a・2bとを有する山状板部を有する折板屋根用の取付金具であって、前記頂部1には立ち上がり片6が設けられ、前記立ち上がり片6は前記頂部1の一部を切り起こして形成され、一方の前記脚部2aには、前記一の折板屋根材3の第一凹部8aに係止する第一係止凸部9aが前記一方の脚部2aの一部を切り起こして形成され、他方の前記脚部2bには、前記他の折板屋根材3の第二凹部8bに係止する第二係止凸部9bが前記他方の脚部2bの一部を切り起こして形成され、前記立ち上がり片6に前記下ハゼ部4と前記上ハゼ部5とを順次被嵌してハゼ締めした際、前記下ハゼ部4及び前記上ハゼ部5が前記立ち上がり片6に係止されるように構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部と該頂部を支持する二本の脚部とを有する金属製の山状板部を有し、前記山状板部に折板屋根材が取り付けられる折板屋根用の取付金具であって、
前記頂部には、一の折板屋根材の下ハゼ部と、前記一の折板屋根材と隣接する他の折板屋根材の上ハゼ部とが被嵌される立ち上がり片が設けられ、
前記立ち上がり片は前記頂部の一部を切り起こして形成され、
一方の前記脚部には、前記一の折板屋根材の前記山状板部と対向する面に設けられた第一凹部に係止する第一係止凸部が前記一方の脚部の一部を切り起こして形成され、
他方の前記脚部には、前記他の折板屋根材の前記山状板部と対向する面に設けられた第二凹部に係止する第二係止凸部が前記他方の脚部の一部を切り起こして形成され、
前記立ち上がり片に前記下ハゼ部と前記上ハゼ部とを順次被嵌してハゼ締めした際、前記下ハゼ部及び前記上ハゼ部が前記立ち上がり片に係止されるように構成されていることを特徴とする取付金具。
【請求項2】
請求項1記載の取付金具において、前記立ち上がり片には、この立ち上がり片に対して交差方向に突出する突出片が設けられ、この突出片は前記立ち上がり片の一部を切り起こして形成されていることを特徴とする取付金具。
【請求項3】
請求項2記載の取付金具において、前記ハゼ締めした際に、前記下ハゼ部若しくは前記上ハゼ部が前記突出片に係止するように構成されていることを特徴とする取付金具。
【請求項4】
請求項1,2いずれか1項に記載の取付金具において、厚さ2.3mm以上の一枚の金属板で構成されていることを特徴とする取付金具。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の取付金具に折板屋根材を取り付ける折板屋根材の取付方法であって、
前記立ち上がり片に一の折板屋根材の下ハゼ部を被嵌させると共に、前記脚部の前記第一係止凸部に一の折板屋根材の前記第一凹部を嵌合させ、
続いて、他の折板屋根材の上ハゼ部を前記下ハゼ部に被嵌させると共に、前記脚部の前記第二係止凸部に他の折板屋根材の前記第二凹部を嵌合させ、
続いて、前記上ハゼ部及び前記下ハゼ部をハゼ締めして立ち上がり片に係止させることを特徴とする折板屋根材の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付金具及び折板屋根材の取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、折板屋根の取付構造としては、折板屋根材を取付金具(タイトフレーム)に直接嵌合させて取り付ける嵌合形(特許文献1参照)や、取付金具山部の頂部に取付金具とは別体の吊子を取り付け、吊子と折板屋根材のハゼ部とをハゼ締めして取り付けるハゼ締め形(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-11101号公報
【特許文献2】特開2020-97878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、嵌合形と同様に折板屋根材を取付金具に直接嵌合でき、且つ、取付金具山部の頂部と折板屋根材のハゼ部とをハゼ締めできる構成を、吊子(別体の取付部材)を用いることなく実現可能なこれまでにない折板屋根用の取付金具及び折板屋根材の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0006】
頂部1と該頂部1を支持する二本の脚部2a・2bとを有する金属製の山状板部を有し、前記山状板部に折板屋根材3が取り付けられる折板屋根用の取付金具であって、
前記頂部1には、一の折板屋根材3の下ハゼ部4と、前記一の折板屋根材3と隣接する他の折板屋根材3の上ハゼ部5とが被嵌される立ち上がり片6が設けられ、
前記立ち上がり片6は前記頂部1の一部を切り起こして形成され、
一方の前記脚部2aには、前記一の折板屋根材3の前記山状板部と対向する面に設けられた第一凹部8aに係止する第一係止凸部9aが前記一方の脚部2aの一部を切り起こして形成され、
他方の前記脚部2bには、前記他の折板屋根材3の前記山状板部と対向する面に設けられた第二凹部8bに係止する第二係止凸部9bが前記他方の脚部2bの一部を切り起こして形成され、
前記立ち上がり片6に前記下ハゼ部4と前記上ハゼ部5とを順次被嵌してハゼ締めした際、前記下ハゼ部4及び前記上ハゼ部5が前記立ち上がり片6に係止されるように構成されていることを特徴とする取付金具に係るものである。
【0007】
また、請求項1記載の取付金具において、前記立ち上がり片6には、この立ち上がり片6に対して交差方向に突出する突出片7が設けられ、この突出片7は前記立ち上がり片6の一部を切り起こして形成されていることを特徴とする取付金具に係るものである。
【0008】
また、請求項2記載の取付金具において、前記ハゼ締めした際に、前記下ハゼ部4若しくは前記上ハゼ部5が前記突出片7に係止するように構成されていることを特徴とする取付金具に係るものである。
【0009】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の取付金具において、厚さ2.3mm以上の一枚の金属板で構成されていることを特徴とする取付金具に係るものである。
【0010】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の取付金具に折板屋根材を取り付ける折板屋根材の取付方法であって、
前記立ち上がり片6に一の折板屋根材3の下ハゼ部4を被嵌させると共に、前記脚部2aの前記第一係止凸部9aに一の折板屋根材3の前記第一凹部8aを嵌合させ、
続いて、他の折板屋根材3の上ハゼ部5を前記下ハゼ部4に被嵌させると共に、前記脚部2bの前記第二係止凸部9bに他の折板屋根材3の前記第二凹部8bを嵌合させ、
続いて、前記上ハゼ部5及び前記下ハゼ部4をハゼ締めして立ち上がり片6に係止させることを特徴とする折板屋根材の取付方法に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、嵌合形と同様に折板屋根材を取付金具に直接嵌合でき、且つ、取付金具山部の頂部と折板屋根材のハゼ部とをハゼ締めできる構成を、吊子を用いることなく実現可能なこれまでにない取付金具及び折板屋根材の取付方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】本実施例の要部の拡大概略説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
本発明には、底部30と該底部30から斜め上方に突出する一対の側部31a・31bとからなり、一端部に下ハゼ部4、他端部に上ハゼ部5が設けられた断面略U字状の折板屋根材3が取り付けられる。
【0015】
具体的には、立ち上がり片6に一の折板屋根材3の下ハゼ部4を被嵌させると共に、脚部2aの第一係止凸部9aに一の折板屋根材3の(側部31aの)第一凹部8aを嵌合させた後、他の折板屋根材3の上ハゼ部5を前記下ハゼ部4に被嵌させると共に、脚部2bの第二係止凸部9bに他の折板屋根材3の(側部31bの)第二凹部8bを嵌合させる。
【0016】
そして、上ハゼ部5及び下ハゼ部4をハゼ締めして立ち上がり片6に係止させることで、両折板屋根材3は本発明に強固に固定される。すなわち、山状板部の脚部2a・2bに折板屋根材3の側部31a・31b(の凹部8a・8b)が嵌合係止され、頂部1(立ち上がり片6)に折板屋根材3の端部のハゼ部4・5が締め付け係止される。
【0017】
また、立ち上がり片6及び係止凸部9は山状板部を切り起こして形成されているから、従来の吊子のような別体の固定部材が不要であり、施工性・コスト性に優れたものとなる。
【実施例0018】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施例の取付部材(タイトフレーム)は、
図1,2に図示したように、頂部1と該頂部1を支持する二本の脚部2a・2bとを有する金属製の山状板部を有し、前記山状板部に折板屋根材3が取り付けられる。
【0020】
また、脚部2a・2bの下端部には、屋根下地20(梁材(鉄骨)等)に敷設固定される敷設板部10が連設されている。本実施例は、2つの山状板部を有し、各山状板部間と、山状板部の外側に夫々敷設板部10が設けられた構成であり、厚さ2.3mm~4.5mm程度(本実施例は厚さ2.3mm)の一枚の金属板で構成されている。山状板部は両端を下向きに折り込んだ形状としている。なお、山状板部の数は1つでも3つ以上でも良い。また、本実施例の並設数は屋根下地20に取り付けられる範囲で適宜設定する。
【0021】
本実施例で使用する折板屋根材について説明すると、塗装鋼板や亜鉛メッキ鋼板などの金属板が折り曲げ加工されて形成されているものであって、
図3に示すように、底部30と、その両方の側端部から斜め上方に向かって突出する一対の側部31a・31bとを備えている。本実施例では、中央の水平板の左右に段差部を介して左右の水平板を有する底部30の両側部に、斜め上方に向かって急傾斜板と緩傾斜板とが交互に4つ連設された側部(傾斜辺部)31a・31bを有する形状に形成されている。
【0022】
また、各側部31a・31bの上部(急傾斜板と緩傾斜板の上側)には内方に向かって段状に屈曲した後に改めて外方へ斜め上方に向かって突出する形状の第一凹部8a若しくは第二凹部8bが設けられている。また、第一凹部8a及び第二凹部8bの上端には下ハゼ部4若しくは上ハゼ部5が設けられている。各側部31a・31bの第一凹部8a及び第二凹部8bより下部位は、底部30に対して異なる傾斜角度で傾斜する平坦な板部が複数段連設されて構成されている。
【0023】
そして、隣接させる折板屋根材の前記下ハゼ部4と前記上ハゼ部5とを上下に重ねてハゼ締めすることで隣り合う折板屋根材同士を山状板部に接合し得るように構成されていると共に、ハゼ締めにより接合された折板屋根材の側部31a・31bとが、脚部2a・2bに嵌合係止されるように構成されている。
【0024】
各部を具体的に説明する。
【0025】
頂部1には、一の折板屋根材3の下ハゼ部4と前記一の折板屋根材3と隣接する他の折板屋根材3の上ハゼ部5とが被嵌される立ち上がり片6が設けられている。立ち上がり片6は前記頂部1の一部を切り起こして形成されている。具体的には、立ち上がり片6は、頂部1にコ字状の切り込みを入れた後、残余部を鉛直方向に立ち上がるように折り曲げて形成されている。
【0026】
また、一方の前記脚部2aには、前記一の折板屋根材3の前記山状板部と対向する面に設けられた第一凹部8aに係止する第一係止凸部9aが前記一方の脚部2aの一部を切り起こして形成され、他方の前記脚部2bには、前記他の折板屋根材3の前記山状板部と対向する面に設けられた第二凹部8bに係止する第二係止凸部9bが前記他方の脚部2bの一部を切り起こして形成されている。具体的には、脚部2a・2bの上端寄り位置に穴抜き加工により上向きコ字状の孔11を形成し、孔11の上側を脚部2a・2bの表面から外方に膨らむように曲げ起こして第一・第二係止凸部9a・9bを形成している。第一・第二係止凸部9a・9bの下端部が第一・第二凹部8a・8bの上向き面に係止する。
【0027】
また、前記立ち上がり片6に前記下ハゼ部4と前記上ハゼ部5とを順次被嵌してハゼ締めした際、前記下ハゼ部4及び前記上ハゼ部5が前記立ち上がり片6に係止されるように構成されている。
【0028】
立ち上がり片6が存在することで、下ハゼ部4を立ち上がり片6に引っ掛けておけば、上ハゼ部5を被嵌する際に下ハゼ部4が逃げることがなく、確実に立ち上がり片6に下ハゼ部4と上ハゼ部5とを被嵌することができ、確実に適切な位置に屋根材を配置可能となる。
【0029】
また、前記立ち上がり片6には、この立ち上がり片6に対して交差方向に突出する突出片7が設けられ、この突出片7は前記立ち上がり片6の一部を切り起こして形成されている。具体的には、立ち上がり片6の前後二か所に上向きコ字状の切り込みを入れた後、残余部が立ち上がり片6と交差するように折り曲げて形成されている。突出片7の一方は右側に、他方は左側に突出するように設けられている。本実施例では、突出片7は水平ではなくやや斜め下方に突出するように設けている。
【0030】
そして、前記ハゼ締めした際に、前記下ハゼ部4若しくは前記上ハゼ部5が前記突出片7に係止するように構成されている。下ハゼ部4及び上ハゼ部5の双方が突出片7に係止する構成でも良いし、
図4に図示したように下ハゼ部4が突出片7に係止し、上ハゼ部5は下ハゼ部4に係止する構成としても良い。
【0031】
また、立ち上がり片6、突出片7及び第一・第二係止凸部9a・9bは、前記ハゼ締めした際に側部31a・31bが引き上げられた際、前記第一・第二係止凸部9a・9bと第一・第二凹部8a・8bとの嵌合(第一・第二係止凸部9a・9bの下端部と第一・第二凹部8a・8bの上向き面との当接)がより強固に行われ、嵌合強度が向上するように構成されている。
【0032】
したがって、
図3に示すように、立ち上がり片6に左側の一の折板屋根材3の下ハゼ部4を被嵌させると共に、脚部2aの第一係止凸部9aに一の折板屋根材3の(側部31aの)第一凹部8aを嵌合させた後、右側の他の折板屋根材3の上ハゼ部5を前記下ハゼ部4に被嵌させると共に、脚部2bの第二係止凸部9bに他の折板屋根材3の(側部31bの)第二凹部8bを嵌合させ、上ハゼ部5及び下ハゼ部4をハゼ締めして立ち上がり片6に係止させることで、両折板屋根材3を強固に固定することができる。
【0033】
そして、同様に、他の折板屋根材3の右側に新たな折板屋根材3を取り付けていくことで、本実施例を多数並設した所定範囲に折板屋根材3を敷設することができる(
図5参照)。
【0034】
本実施例は上述のように構成したから、山状板部の脚部2a・2bに折板屋根材3の側部31a・31b(の凹部8a・8b)が嵌合係止され、頂部1(立ち上がり片6)に折板屋根材3の端部のハゼ部4・5が締め付け係止される。
【0035】
また、立ち上がり片6、係止凸部9及び突出片7は山状板部を切り起こして形成されているから、従来の吊子のような別体の固定部材が不要であり、施工性・コスト性に優れたものとなる。
【0036】
よって、本実施例は、嵌合形と同様に折板屋根材を取付金具に直接嵌合でき、且つ、取付金具山部の頂部と折板屋根材のハゼ部とをハゼ締めできる構成を、吊子を用いることなく実現可能な今までにないものとなる。