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2023-90424フォージャサイト型ゼオライト、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090424
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】フォージャサイト型ゼオライト、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/24 20060101AFI20230622BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C01B39/24
B01J29/08 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205377
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲木 千津
(72)【発明者】
【氏名】北野 健夫
(72)【発明者】
【氏名】三津井 知宏
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4G073BA63
4G073BB17
4G073BB41
4G073BD01
4G073CZ05
4G073FA11
4G073FB30
4G073FE01
4G073FE03
4G073FE04
4G073FE05
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA12
4G073UA01
4G073UA04
4G073UA05
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA42C
4G169BC02B
4G169CC01
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC04X
4G169EC04Y
4G169EC05X
4G169EC14X
4G169EC15X
4G169EC16X
4G169EC17X
4G169FA01
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC09
4G169ZA03A
4G169ZA05B
4G169ZC03
4G169ZC04
4G169ZC07
4G169ZC08
4G169ZD03
4G169ZD04
4G169ZE04
4G169ZF01A
4G169ZF01B
(57)【要約】
【課題】細孔直径が7~200nmの比表面積が大きいものでありながら、固体酸量における強酸の割合が少なく、結晶性を高く保持したフォージャサイト型ゼオライトを提供する。
【解決手段】(a)SiO/Alのモル比が10~100、(b)細孔直径が7~200nmの比表面積が25m/g以上、(c)アンモニア昇温脱離法において、100~550℃における酸量に対する400~550℃における酸量の割合である強酸比率が23%以下であるフォージャサイト型ゼオライト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SiO/Alのモル比が10~100、
(b)細孔直径が7~200nmの比表面積が25m/g以上、
(c)アンモニア昇温脱離法において、100~550℃における酸量に対する400~550℃における酸量の割合である強酸比率が23%以下、
である、フォージャサイト型ゼオライト。
【請求項2】
格子定数が24.30~24.40Åである、請求項1に記載のフォージャサイト型ゼオライト。
【請求項3】
フォージャサイト型ゼオライトをスチーム処理することによって、該ゼオライトの骨格からアルミニウムを引き抜いた酸処理用ゼオライトを得る第一工程と、
前記酸処理用ゼオライトを、アンモニウム塩を含み、pHが3.5~5.0の範囲にある水溶液で処理した後、スチーム処理する第二工程と、
前記第二工程で得られたゼオライトを、酸処理する第三工程と、を含むフォージャサイト型ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記第二工程において、
後続の酸処理の処理条件は、その温度が50~95℃の範囲である、請求項3に記載のフォージャサイト型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔直径が7~200nmの比表面積が大きいものでありながら、結晶崩壊を抑制することで、結晶性を高く保持したフォージャサイト型ゼオライトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトという物質名は、結晶性の多孔質アルミノシリケートの総称である。ゼオライトの中でも、強い固体酸を有する多孔性材料であるフォージャサイト型ゼオライトが古くから使用されてきた。また、フォージャサイト型ゼオライトは、石油精製や石油化学分野に用いる触媒の構成成分としてや吸着剤としても、古くから使用されている。
【0003】
フォージャサイト型ゼオライトの特性は、SiとAlとの比率によって大きく影響を受けることが知られている。この比率は、一般的にケイバン比(SAR)とも呼ばれ、SiO/Alのモル比で表される。例えば、このケイバン比を高くすると、ゼオライトの骨格内のAlが減少するので、骨格内Alに由来する固体酸が減少し、疎水性(水との親和性が低い)を示すことが知られている。逆に、このケイバン比を低くすると、骨格内Alに由来する固体酸が増加し、親水性を示す。
【0004】
フォージャサイト型ゼオライトの骨格ケイバン比を高める方法が広く知られている(特許文献1~7)。これらの特許文献には、例えば、1)水蒸気による熱処理により脱アルミニウム処理する方法、2)酸のみあるいは酸/アンモニウム塩の混合物による酸処理により脱アルミニウム処理する方法、または3)このような処理を2つ組み合わせることで非常に高いケイバン比を有するゼオライトが得られることも報告され、酸処理におけるpHについて記載されたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-46916号公報
【特許文献2】特開昭60-46917号公報
【特許文献3】国際公開第2021/1210674号
【特許文献4】中国特許公開第104230633号明細書
【特許文献5】米国特許第5013699号明細書
【特許文献6】米国特許第3383169号明細書
【特許文献7】米国特許第5601798号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような製造方法を用いて、フォージャサイト型ゼオライトのケイバン比を高くすることは可能であるが、その骨格内からアルミニウムが除去されるので、メソ孔領域にて大きい細孔容積を有しながら、ゼオライト結晶が崩壊することで、結晶性が低くなるという課題があった。
【0007】
このような状況を踏まえ、本発明は、メソ孔領域の比表面積が大きいものでありながら、結晶崩壊を抑制することで、固体酸量における強酸の割合が少なく、結晶性を高く保持したフォージャサイト型ゼオライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、メソ孔領域の比表面積が大きいものでありながら、結晶崩壊を抑制することで、固体酸量における強酸の割合が少なく、結晶性を高く保持したフォージャサイト型ゼオライトが得られることを見出した。
【0009】
上記課題を有利に解決する本発明に係るフォージャサイト型ゼオライトは、
[1](a)SiO/Alのモル比が10~100、
(b)細孔直径が7~200nmの比表面積が25m/g以上、
(c)アンモニア昇温脱離法において、100~550℃における酸量に対する400~550℃における酸量の割合である強酸比率が23%以下である。
なお、本発明に係るフォージャサイト型ゼオライトは、
[2](d)格子定数が24.30~24.40Åであること、等がより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0010】
さらに、上記課題を有利に解決する本発明に係るフォージャサイト型ゼオライトの製造方法は、
[3]フォージャサイト型ゼオライトをスチーム処理することによって、該ゼオライトの骨格からアルミニウムを引き抜いた酸処理用ゼオライトを得る第一工程と、
前記酸処理用ゼオライトを、アンモニウム塩を含み、pHが3.5~5.0の範囲にある水溶液で処理した後、スチーム処理する第二工程と、
前記第二工程で得られたゼオライトを、酸処理する第三工程と、を含む。
なお、本発明に係るフォージャサイト型ゼオライトの製造方法は、
[4]前記第二工程において、後続の酸処理の処理条件は、その温度が50~95℃の範囲であること、等がより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、細孔直径が7~200nmの比表面積が大きいものでありながら、固体酸量における強酸の割合が少なく、結晶性を高く保持したフォージャサイト型ゼオライトの製造方法が得られる。しかも、本発明のフォージャサイト型ゼオライトの製造方法により得られたフォージャサイト型ゼオライトは結晶性も高く、優れた細孔分布および固体酸を有するので、石油精製やペトロケミカル、環境浄化に用いる触媒の構成成分や吸着材として利用等としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のフォージャサイト型ゼオライトについて、詳述する。
【0013】
本発明のフォージャサイト型ゼオライト(以下、単に「ゼオライト」ともいう。)はゼオライトの結晶化度を保ったまま、細孔直径が7~200nmの比表面積を高めたものである。
【0014】
本発明のゼオライトは、(a)SiO/Alのモル比が10~100であることを特徴とする。ここで、上記ゼオライトのケイバン比は、10~100にあることが好ましい。このケイバン比は、ゼオライトの組成比から算出したものである。ケイバン比が上記の範囲内であれば、適度な固体酸量を有し、結晶性が高いまま保持されるため好ましい。
【0015】
さらに、本発明のゼオライトの比表面積は、600m/g以上であることが好ま
しい。ゼオライトは、一般的に、その骨格に由来する細孔構造によって極めて広い比表面積を有する。ゼオライトの比表面積が600m/gより低い場合、ゼオライトが有する骨格に由来する細孔構造が十分に発達していないおそれがあり、その固体酸量が低くなってしまうことがある。フォージャサイト型ゼオライトの比表面積は、高ければ高いほど好ましいが、結晶性が高いまま保持する観点からその上限は、800m/g以下であってもよい。
【0016】
本発明のゼオライトは、(b)細孔直径が7~200nmの比表面積が25m/g以上であることを特徴とする。すなわち、本発明のゼオライトを形成する細孔直径が7~200nmの比表面積は、25m/g以上であることが好ましく、さらには28m/g以上であることが好ましい。メソ孔領域の比表面積は、25m/g以上であれば、結晶崩壊を抑制することができ、ゼオライトの吸着能が向上するため好ましい。一方、本発明のゼオライトの細孔直径が7~200nmの比表面積は、高いほうが好ましいが、結晶崩壊を抑制する観点から100m/g以下であることが好ましい。中でも直径7~50nmの比表面積が高いほうが好ましい。なお、メソ孔領域(細孔直径が7~200nm)の比表面積は、吸着質である窒素がメソ孔から脱離するときの相対圧と窒素の吸着量との関係を示す窒素吸着等温線を使ってBJH法により解析することができる。
【0017】
本発明のゼオライトの結晶性は、高いほうが好ましい。ゼオライトの結晶性は、ゼオライトの耐久性や固体酸性質に影響を与える。ゼオライトの結晶性を表す指標として、X線回折測定により得られるフォージャサイト構造に由来する回折ピークの強度を用いた(JIS K0131 X線回折分析通則)。具体的には、特定の方法で得られたフォージャサイト型ゼオライトを基準物質とし、X線回折測定により得られるフォージャサイト構造に由来するピークの強度比を、ゼオライトの結晶性の指標とした。ゼオライトのX線回折強度比が、1.0以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。結晶性が高ければ高いほど好ましいが、その上限が1.5以下であってもよい。
【0018】
本発明のゼオライトは、(c)アンモニア昇温脱離法において、100~550℃における酸量に対する400~550℃における酸量の割合である強酸比率が23%以下であることを特徴とする。本発明のゼオライトの酸量は、アンモニア昇温脱離法(以下「NH-TPD」ともいう。)において、100~550℃でのNH脱離量として100~1200μmol/gであることが好ましい。NH脱離量が100μmol/gより少ない場合、ゼオライト構造が十分に発達していないおそれがあり、NH脱離量が1200μmol/gより多い場合、ゼオライトのケイバン比が低く、格子定数が高くなり、メソ孔領域の比表面積も小さくなるおそれがある。
【0019】
本発明のゼオライトの強酸点比率は、低いほうが好ましい。特に、NH-TPDにおいて、400℃以上で脱離するような強酸点の割合は低いほうが好ましい。NH-TPDにおいて、100~550℃でのNH脱離量から算出される酸量に対する400~550℃でのNH脱離量から算出される酸量の割合である強酸点比率は、23%以下であることが好ましい。強酸点比率が23%より大きい場合、ゼオライトの骨格外アルミニウムの溶出や移動等が起こっておらず、メソ孔領域の表面積も小さくなり、本発明のゼオライトが得られないおそれがある。一方、強酸点比率が1%より小さい場合、ゼオライトの結晶化が十分に進行していないおそれがある。
【0020】
本発明のゼオライトの格子定数は、24.30~24.40Åにあることが好ましい。この格子定数は、ゼオライトのケイバン比を示す指標である。骨格内のアルミニウムが増える(骨格のケイバン比が小さくなる)と格子定数は大きくなり、骨格内のアルミニウムが減る(骨格のケイバン比が大きくなる)と格子定数は小さくなる。ゼオライトの格子定数が低過ぎると、骨格内のアルミニウムが少ないので、その固体酸量が低下しやすくなってしまう。また、その格子定数が大き過ぎても、固体酸量が多くなり過ぎる。
【0021】
本発明のゼオライトのアルカリ金属含有量は低いことが好ましい。アルカリ金属は、ゼオライトに含まれる固体酸を被毒することがある。したがって、ゼオライトのアルカリ金属含有量は、アルカリ金属をMとしたとき、MO換算で1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。本発明のゼオライトは、アルカリ金属の中でも特にNaによって被毒されやすいので、その含有量が少ないことが好ましい。
【0022】
本発明のゼオライトは、例えば、石油精製や石油化学分野に用いる触媒の構成成分として、また吸着剤として用いることができる。
【0023】
以下、本発明のフォージャサイト型ゼオライトの製造方法について、詳述する。
【0024】
本発明のフォージャサイト型ゼオライトの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、フォージャサイト型ゼオライトをスチーム処理することによって、該ゼオライトの骨格からアルミニウムを引き抜いた酸処理用ゼオライトを得る第一工程と、前記酸処理用ゼオライトを、アンモニウム塩を含み、pHが3.5~5.0の範囲にある水溶液で処理した後、スチーム処理する第二工程と、前記第二工程で得られたゼオライトを、酸処理する第三工程とを含む。
【0025】
(第一工程:スチーム処理)
本発明の製造方法は、フォージャサイト型ゼオライトをスチーム処理し、該ゼオライトの骨格からアルミニウムを引き抜いた酸処理用ゼオライトを得る工程を含む。この工程では、酸処理用ゼオライトを効率よく得るために、フォージャサイト型ゼオライトをスチーム処理する前にアンモニウム塩を含む水溶液で酸処理してもよい。すなわち、この工程では、上記水溶液に含まれるアンモニウム塩を使って、フォージャサイト型ゼオライトを構成するナトリウムイオンをアンモニウムイオンに交換し、後続のスチーム処理における脱アルミニウムを促進することによって、ゼオライトの骨格からアルミニウムを引き抜いた酸処理用ゼオライトを得る。
【0026】
この工程で用いるフォージャサイト型ゼオライトは、市販されているものを購入してもよく、また従来公知の方法で合成してもよい。例えば、Si原料、Al原料を加え、さらにNa原料および水を加えた後、80~120℃の温度で水熱処理することで、該ゼオライトが得られる。原料として用いる該ゼオライトのケイバン比は、3~7の範囲にあることが好ましい。ケイバン比がこの範囲にある該ゼオライトは、工業的に量産しやすい。
【0027】
この工程では、原料であるフォージャサイト型ゼオライトを50~95℃の温度でアンモニウム塩を含む水溶液で処理することが好ましい。この温度域で処理を行うと、効率よくゼオライトを構成するナトリウムイオンをアンモニウムイオンに交換することができる。なお、この工程で使用されるアンモニウム塩を含む水溶液のpHは、6.0~7.0の範囲にあることが好ましい。
【0028】
次に、この工程は、アンモニウム塩を含む水溶液で処理したフォージャサイト型ゼオライトをスチーム処理して該ゼオライト骨格からアルミニウムを引き抜く、脱アルミニウム工程を含む。なお、このとき、引き抜かれたアルミニウムは、ゼオライト結晶内部もしくは表面にアルミニウム化合物として残留する。これはゼオライト骨格外アルミニウムとも呼ばれる。また、ゼオライト骨格からアルミニウムが脱離する際に、ゼオライトの一部が崩壊して空孔を生じる。
【0029】
この工程では、フォージャサイト型ゼオライトを600~800℃の温度でスチーム処理することが好ましい。この温度域でスチーム処理を行うと、ゼオライト結晶構造の崩壊を抑制しつつ、効率よくゼオライトの骨格からアルミニウムを引き抜くことができるため好ましい。
【0030】
この工程では、スチーム処理時間が、概ね1~24時間にあることが好ましい。前述のスチーム処理温度にもよるが、処理時間が1時間より短過ぎる場合には、スチーム処理によって、ゼオライトの骨格からアルミニウムを充分に引き抜けないことがあるので、好ましくない。また、スチーム処理時間を24時間より長くしても、生産性の観点から好ましくない。
【0031】
この工程におけるスチーム濃度は、飽和水蒸気量の50%以上であり、90%以上であることが好ましい。スチーム濃度を飽和水蒸気量の50%よりも低い状態に設定して、スチーム処理をすると、ゼオライトの骨格が壊れやすくなる傾向にある。この理由は、ゼオライト骨格外アルミニウムが生成する際にできる欠陥によって、ゼオライトの骨格が不安定となる状態になるためと考えられる。したがって、このような状態では、熱によってゼオライトの骨格が壊れやすくなる。一方、スチーム濃度を前述の飽和水蒸気量の範囲に設定すれば、ゼオライトの骨格は壊れにくくなる傾向にあるため好ましい。
【0032】
この工程で得られる酸処理用ゼオライトは、その格子定数が24.50~24.60Åにあることが好ましい。
【0033】
(第二工程:アンモニウム塩を含む水溶液での処理)
本工程では、第一工程で得られたゼオライトである脱アルミニウムしたフォージャサイト型ゼオライトを、アンモニウム塩を含む水溶液で処理した後、スチーム処理する工程を含む。この工程では、アンモニウム塩を含み、pHが3.5~5.0の範囲にある水溶液を用い、第一工程で得られたゼオライトを処理することによって、ゼオライト結晶内部に存在するゼオライト骨格外アルミニウムを溶出させるとともに、ゼオライトの外表面へと移動させることができる。これにより、第二工程において、後続のスチーム処理におけるゼオライト結晶内部でのゼオライト骨格外アルミニウムの成長が抑制され、酸処理後におけるゼオライトが有するメソ孔の直径が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。その結果、細孔直径が7~200nmのメソ孔領域の比表面積を大きくすることができる。
【0034】
この工程では、第一工程で得られた脱アルミニウムしたフォージャサイト型ゼオライトをpHが3.5~5.0の範囲にあるアンモニウム塩を含む水溶液で処理することが好ましい。pHがこの範囲にあるアンモニウム塩を含む水溶液で上記酸処理を行うと、当該ゼオライト結晶内部に存在するゼオライト骨格外アルミニウムを溶出させ、後工程処理によって形成されるメソ孔領域の比表面積を増大させることができる。アンモニウム塩を含む水溶液のpHが高すぎると、ゼオライト骨格外アルミニウムの溶出や移動が起こらないため好ましくない。一方、アンモニウム塩を含む水溶液のpHが低すぎると、ゼオライト骨格外アルミニウムに加えて、ゼオライト骨格内アルミニウムの溶出も起こるため、ゼオライト結晶性の低下や酸量の減少につながるため好ましくない。
【0035】
この工程で用いるアンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどが挙げられる。アンモニウム塩と上記ゼオライトの割合としては、ゼオライト中に含まれるアルミニウム原子のモル数に対するアンモニウム塩のモル数の比率が1~10の範囲にあることが好ましい。この比率が低すぎると、ゼオライト中のナトリウムイオンが効率的に交換されない。高すぎると、排水中のアンモニウム塩濃度が高くなり、工業的に好ましくない。
【0036】
アンモニウム塩を含む水溶液のpHを調整するために、アンモニウム塩以外に適切な量の酸を加える。酸として、従来公知の酸を用いることができる。例えば酸としては、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸を用いることができる。
【0037】
この工程では、第一工程で得られた脱アルミニウムしたフォージャサイト型ゼオライトを50~95℃の温度でアンモニウム塩を含む水溶液で酸処理することが好ましい。この温度域で処理を行うと、効率よくフォージャサイト型ゼオライトを構成するナトリウムイオンをアンモニウムイオンに交換することができる。
【0038】
この工程では、処理時間が、概ね5分~4時間にあることが好ましい。処理時間が短すぎると、ゼオライト骨格外アルミニウムの溶出や移動が十分に起こらないため好ましくない。また、処理時間を長くしても、生産性の観点から好ましくない。
【0039】
(第二工程:スチーム処理)
第二工程は、フォージャサイト型ゼオライトを500~700℃の温度でスチーム処理して該ゼオライトの骨格からアルミニウムを引き抜く脱アルミニウム工程を含む。なお、このとき、ゼオライト骨格から引き抜かれたアルミニウムは、ゼオライト結晶内部もしくはその表面にゼオライト骨格外アルミニウムとして残留する。また、ゼオライトからアルミニウムが脱離する際に、ゼオライトの一部が崩壊してメソ孔を生じる。
【0040】
この工程では、フォージャサイト型ゼオライトを500~700℃の温度でスチーム処理することが好ましい。この温度域でスチーム処理を行うと、効率よくゼオライト骨格からアルミニウムを引き抜くことができる上に、ゼオライト骨格外アルミニウムの粒子サイズが大きくなり過ぎず、酸処理後にメソ孔領域の比表面積を大きくすることができるため好ましい。
【0041】
この工程では、スチーム処理時間が、概ね1~24時間にあることが好ましい。前述のスチーム処理温度にもよるが、処理時間が短すぎてもスチーム処理によってゼオライト骨格からアルミニウムを充分に引き抜けないことがあるので好ましくない。また、スチーム処理時間を長くしても、生産性の観点から好ましくない。
【0042】
この工程におけるスチーム濃度は、飽和水蒸気量の50%以上であり、90%以上であることが好ましい。飽和水蒸気量が低い状態でスチーム処理をすると、ゼオライト骨格が壊れやすくなる傾向にある。この理由は、骨格外アルミニウムが生成する際にできる欠陥によって骨格が不安定になるためと考えられる。このような状態では、熱によってゼオライトの骨格が壊れやすくなる。一方、前述の飽和水蒸気量の範囲であれば、ゼオライトの骨格は壊れにくくなる傾向にある。
【0043】
この工程で得られる酸処理用ゼオライトは、その格子定数が24.32~24.45Åにあることが好ましい。
【0044】
(第三工程:酸処理工程)
本発明の製造方法は、第二工程で得られたゼオライトを酸処理する工程を含む。すなわち、本発明の製造方法は、ゼオライトを酸処理して、ゼオライト骨格外アルミニウムを除去する酸処理工程を備える。この工程では、酸を用いてスチーム処理後のゼオライト結晶内部および外表面に残留したゼオライト骨格外アルミニウムを除去する。ゼオライト結晶内部に残留しているゼオライト骨格外アルミニウムを除去することにより、所定の細孔直径を有するメソ孔が当該ゼオライトに生じる。メソ孔の細孔直径(サイズ)は、ゼオライト骨格外アルミニウムの粒子サイズに影響される。
【0045】
この工程では、酸として、従来公知の酸を用いることができる。例えば酸としては、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸を用いることができる。
【0046】
この工程における酸処理の温度は特に限定されるものではないが、30~98℃の範囲にあることが好ましい。
【0047】
この工程における酸処理の時間は、酸処理の温度、または酸の量にもよるが、概ね0.5~24時間であることが好ましい。酸処理の時間が概ねこの範囲内であれば、酸処理工程の目的を十分に達成することができる。酸処理の時間は長くても問題ないが、生産性の観点からいえば、好ましくない。
【0048】
酸処理後の酸溶液とゼオライトは、ろ過などの方法で固液分離することができる。また、この時に分離したゼオライトには酸溶液に由来する成分が残留することがある。そのため、分離したゼオライトを再度イオン交換水に懸濁させ、濾布上で75℃未満の温水を掛けるなどの洗浄処理を行うことが好ましい。
【0049】
酸処理後に分離したゼオライトを再度イオン交換水に懸濁させて酸を加えることにより、2回以上繰り返して酸処理工程を実施することができる。
【0050】
酸処理後に分離したゼオライトを、650℃以下の温度で乾燥もしくはスチーム処理して、超安定化Y型ゼオライト(以下「USYゼオライト」ともいう。)である本発明のフォージャサイト型ゼオライトを得ることができる。
【実施例0051】
以下、本発明のゼオライトおよびその製造方法について、実施例を示し、本例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、本発明の実施例における測定およびその評価は次の方法で行った。
【0052】
<組成分析>
ゼオライトの組成分析は、蛍光X線測定装置(リガク社製「RIX-3000」)を使用した。SiおよびAl含有量は、それぞれSiO、Alに換算して、ケイバン比(SiO/Alモル比)を算出した。
【0053】
<X線回折強度比測定>
ゼオライトの結晶構造は、X線回折装置(リガク社製「RINT-Ultima」、線源:CuKα)を用いて、2θ=5~50°におけるX線回折パターンを測定した。測定結果より、フォージャサイト構造(FAU)に帰属される回折面にピークが確認できたものは、フォージャサイト構造を有していると判断した。具体的には、(331)、(511)、(440)、(533)、(642)、および(555)面に帰属される回折ピークの有無を確認した。なお、これらの回折面に帰属されるピークの位置は、技術文献(M. M. J. Treacy, J. B. Higgins, COLLECTION OF SIMULATED XRD
POWDERPATTERNS FOR ZEOLITES, Fifth Revised Edition, Elsevier)から確認することができる。なお、ピークの位置は測定条件などによって多少変動することがあるので、上記文献に記載されたピーク位置から±0.5°の範囲にあれば、フォージャサイト構造に由来するピークを有しているものとみなせる。
このようにして得られたX線回折パターンから、フォージャサイト構造(FAU)の(331)、(511)、(440)、(533)、(642)、および(555)面に帰属される回折ピークの強度を合計し、同様にして測定した触媒学会参照触媒のフォージャサイト型ゼオライト(JRC-Z-Y5.3)のピーク強度の合計に対する割合を算出してX線回折強度比とした。
【0054】
<格子定数測定>
ゼオライトの格子定数は、X線回折装置(リガク社製「RINT-Ultima」)を使用した。ゼオライト粉末と内部標準としてTiOアナターゼ型の粉末(関東化学株式会社製、酸化チタン(IV)(アナターゼ型))を2:1(重量比)で乳鉢にて混合したものを測定試料とした。CuKα線を用いて、2θ=23~33°におけるX線回折パターンを測定し、TiOアナターゼ型、フォージャサイト型ゼオライトの(533)面、(642)面のそれぞれのピーク半価幅の中心を示す2θを用いて、以下の数式(1)~(3)から格子定数を算出した。
【0055】
【数1】
A:(533)面を示すピーク半価幅の中心(2θ)[°]
B:(642)面を示すピーク半価幅の中心(2θ)[°]
C:TiOアナターゼ型が示すピーク半価幅の中心(2θ)[°]
【0056】
<比表面積測定>
ゼオライトの比表面積は、日本ベル社製「MR-6」を用いて測定した。不活性ガス雰囲気下にて500℃で1時間の前処理を実施したゼオライト粉末について、測定用試料セル内で-196℃雰囲気下にて窒素ガス濃度30vol%、ヘリウムガス濃度70vol%の混合ガスを充分流通させて、試料粉末に窒素を吸着させた。その後、雰囲気温度を25℃に上昇し、試料粉末に吸着した窒素を脱離させて、その脱離量をTCD(熱伝導度)検出器にて検出した。検出された窒素の脱離量を窒素分子の断面積を用いて比表面積に換算することによって、試料粉末1g当たりの比表面積を求めた。
【0057】
<メソ孔比表面積測定>
メソ孔比表面積は、マイクロトラック・ベル社製「BEL SORP-miniII」を用いて測定した。不活性ガス雰囲気下にて500℃で1時間の前処理を実施したゼオライト粉末について、相対圧範囲0~1.0で窒素吸着法による細孔分布測定を行った。得られた窒素吸着等温線からBJH法で細孔直径7~200nmの範囲における細孔群の細孔比表面積を算出し、メソ孔比表面積とした。
【0058】
<NH-TPD測定(固体酸量評価)>
酸量としてのアンモニア脱離量は、アンモニア昇温脱離法(NH-TPD法)により測定した。即ち、マイクロトラック・ベル社製「BELCAT II」を使用し、測定セル中に試料0.05gを入れ、500℃で1時間排気処理を行い、その後温度を100℃にし、100℃にて0.5時間アンモニアガスを導入して吸着した。次いで、100℃にて0.5時間再度排気処理を行った後、毎分50mlのHeガス流通下、100℃から毎分10℃で550℃まで昇温しながら温度上昇にともなって脱離するアンモニア量を計測した。ここで、強酸比率(%)は、全領域である100~550℃における酸量に対する400~550℃における酸量の割合と定義する。すなわち、強酸比率(%)は、以下の関係式により算出される。
強酸比率(%)=酸量(400-550℃)/酸量(100-550℃)×100
【0059】
[実施例1]
(フォージャサイト型ゼオライト(ゼオライトA)の調製)
NaY型ゼオライトとして、SiO/Al(モル比)が5.1、格子定数が24.66Å、比表面積が720m/g、Naの含有量がNaO換算で13.0質量%のものを用いた。NaY型ゼオライト50kgを60℃の温水500Lに加え、さらに硫酸アンモニウム14kgを加えて懸濁液を得た。この懸濁液を70℃で1時間撹拌し、濾過した。濾過により得られた固体を60℃の温水で洗浄した。次いで、この固体を60℃の温水500Lに硫酸アンモニウム14kgを溶解した硫酸アンモニウム溶液で洗浄し、さらに、60℃の水500Lで洗浄し、洗浄ケーキを得た。得られた洗浄ケーキを130℃で20時間乾燥して、NaY型ゼオライトに含まれるNaの約65質量%がアンモニウムイオン(NH )でイオン交換したY型ゼオライト(NHY)を得た。このNHY型ゼオライトのNa含有量はNaO換算で4.5質量%であった。
【0060】
このNHY型ゼオライト40kgを、飽和水蒸気雰囲気中にて625℃で1時間スチーム処理し、脱アルミニウムされたフォージャサイト型ゼオライト(ゼオライトA)を得た。得られたゼオライトAのNa含有量はNaO換算で4.5質量%、SiO/Al比は5.1、格子定数は24.57Åであった。
【0061】
(酸処理用ゼオライト(1)の調製)
40kgのゼオライトAを60℃の温水400Lに全量加え、次いで硫酸アンモニウム49kgを加え、懸濁液を得た。この懸濁液に25質量%硫酸1.0kgを加えてpHを5.0に調整した。次いで、懸濁液を90℃に昇温し、90℃で1時間攪拌し、濾過した。濾過により得られた固体を60℃の温水で洗浄した。次いで、この固体を130℃で20時間乾燥し、NaO含有量が0.9質量%、格子定数が24.58Åのゼオライト乾燥粉末(1)を得た。得られたゼオライト乾燥粉末(1)を飽和水蒸気雰囲気中にて670℃で2時間スチーム処理し、酸処理用ゼオライト(1)を得た。
【0062】
(USYゼオライト(1)の調製)
酸処理用ゼオライト(1)2.0kgを、室温の水16Lに懸濁し、75℃に昇温した。次いで、25質量%硫酸4.6kgを徐々に加え、4時間撹拌した後、濾過した。濾過により得られた固体を60℃の温水で洗浄し、さらに110℃で20時間乾燥し、USYゼオライト(1)を得た。USYゼオライト(1)の性状(物性値)を表1に示す。
【0063】
[実施例2]
(酸処理用ゼオライト(2)の調製)
25質量%硫酸23.0kgを加えてpHを3.5に調整した以外は、実施例1と同様にして、NaO含有量が0.8質量%、格子定数が24.56Åのゼオライト乾燥粉末(2)、酸処理用ゼオライト(2)を得た。
【0064】
(USYゼオライト(2)の調製)
酸処理用ゼオライトとして、酸処理用ゼオライト(2)を使用した以外は、実施例1と同様にしてUSYゼオライト(2)を得た。USYゼオライト(2)の性状(物性値)を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
(USYゼオライト(3)の調製)
酸処理用ゼオライト(1)2.0kgを、室温の水16Lに懸濁し、40℃に昇温した後、25質量%硫酸1.6kgを加えた以外は、実施例1と同様にして、USYゼオライト(3)を得た。USYゼオライト(3)の性状(物性値)を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
(USYゼオライト(4)の調製)
酸処理用ゼオライト(1)2.0kgを、室温の水16Lに懸濁し、90℃に昇温した後、25質量%硫酸8.0kgを加えた以外は、実施例1と同様にして、USYゼオライト(4)を得た。USYゼオライト(4)の性状(物性値)を表1に示す。
【0067】
[比較例1]
(酸処理用ゼオライト(3)の調製)
25質量%硫酸を添加せず、pHを6.0に調整した以外は、実施例1と同様にして、NaO含有量が1.0質量%、格子定数が24.58Åのゼオライト乾燥粉末(3)、酸処理用ゼオライト(3)を得た。
【0068】
(USYゼオライト(5)の調製)
酸処理用ゼオライトとして、酸処理用ゼオライト(3)を使用した以外は実施例1と同様にして、USYゼオライト(5)を得た。USYゼオライト(5)の性状(物性値)を表1に示す。
【0069】
[比較例2]
(酸処理用ゼオライト(4)の調製)
25質量%硫酸55.8kgを加えてpHを2.4に調整した以外は、実施例1と同様にして、NaO含有量が0.8質量%、格子定数が24.51Åのゼオライト乾燥粉末(4)、酸処理用ゼオライト(4)を得た。
【0070】
(USYゼオライト(6)の調製)
酸処理用ゼオライトとして、酸処理用ゼオライト(4)を使用した以外は実施例1と
同様にしてUSYゼオライト(6)を得た。USYゼオライト(6)の性状(物性値)を表1に示す。
【0071】
[比較例3]
(酸処理用ゼオライト(5)の調製)
ゼオライトAを室温の水に懸濁し、硫酸アンモニウムと25質量%硫酸23.0kgを加えてpHを3.5に調整した後、40℃に昇温し、40℃で1時間攪拌した以外は、実施例2と同様にして、NaO含有量が0.8質量%、格子定数が24.56Åのゼオライト乾燥粉末(5)、酸処理用ゼオライト(5)を得た。
【0072】
(USYゼオライト(7)の調製)
酸処理用ゼオライトとして、酸処理用ゼオライト(5)を使用した以外は実施例1と同様にしてUSYゼオライト(7)を得た。USYゼオライト(7)の性状(物性値)を表1に示す。
【0073】
[比較例4]
(フォージャサイト型ゼオライト(ゼオライトB)の調製)
実施例1と同様の方法で調製したNHY型ゼオライト40kgを、飽和水蒸気雰囲気中にて500℃で1時間スチーム処理し、脱アルミニウムされたフォージャサイト型ゼオライト(ゼオライトB)を得た。得られたゼオライトBのNa含有量はNaO換算で4.5質量%、SiO/Al比は5.1、格子定数は24.61Åであった。
【0074】
(酸処理用ゼオライト(6)の調製)
ゼオライトとしてゼオライトBを用いた以外は、実施例1と同様にして、NaO含有量が0.8質量%、格子定数が24.62Åのゼオライト乾燥粉末(6)、酸処理用ゼオライト(6)を得た。
【0075】
(USYゼオライト(8)の調製)
酸処理用ゼオライトとして、酸処理用ゼオライト(6)を使用した以外は実施例1と
同様にして、USYゼオライト(8)を得た。USYゼオライト(8)の性状(物性値)
を表1に示す。
【0076】
[比較例5]
(フォージャサイト型ゼオライト(ゼオライトC)の調製)
実施例1と同様の方法で調製したNHY型ゼオライト40kgを、空気流通下600℃で1時間熱処理し、脱アルミニウムされたフォージャサイト型ゼオライト(ゼオライトC)を得た。得られたゼオライトCのNa含有量はNaO換算で4.5質量%、SiO/Al比は5.1、格子定数は24.65Åであった。
【0077】
(酸処理用ゼオライト(7)の調製)
ゼオライトとしてゼオライトCを用いた以外は、実施例1と同様にして、NaO含有量が0.8質量%、格子定数が24.66Åのゼオライト乾燥粉末(7)、酸処理用ゼオライト(7)を得た。
【0078】
(USYゼオライト(9)の調製)
酸処理用ゼオライト(7)2.0kgを、室温の水16Lに懸濁し、40℃に昇温した後、25質量%硫酸1.0kgを加えた以外は、実施例1と同様にして、USYゼオライト(9)を得た。USYゼオライト(9)の性状(物性値)を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1によれば、USYゼオライト(1)~(4)は、USYゼオライト(5)~(9)と比較して、ゼオライトの結晶性を示すX線回折強度比や結晶の格子定数がある程度の大きさをもち、さらに細孔直径7~200nmの比表面積が大きいことが明らかとなった。