IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社指月電機製作所の特許一覧

<>
  • 特開-コンデンサ 図1
  • 特開-コンデンサ 図2
  • 特開-コンデンサ 図3
  • 特開-コンデンサ 図4
  • 特開-コンデンサ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090425
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20230622BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20230622BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G2/10 600
H01G2/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205378
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】大橋 光
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082BC25
5E082EE07
5E082HH03
5E082HH28
(57)【要約】
【課題】内部の熱を効率良く放熱することができるとともに、大型化を抑制することができるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ素子5にバスバー6を接続し、ケース2に収容し樹脂4を充填してなるコンデンサであって、ケース2には、ケース外表面2dと面一となるように放熱部材3がインサート成形されている。放熱部材3が、ケース2の内側に向かって突出する突出部3bを有している。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーを接続したコンデンサ素子を樹脂製のケースに収容し樹脂を充填してなるコンデンサであって、
ケースには、ケース外表面と面一となるように放熱部材がインサート成形されており、放熱部材が、ケースの内側に向かって突出する突出部を有している、コンデンサ。
【請求項2】
放熱部材が、ケースの複数の壁面に跨っている、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
放熱部材の突出部が、コンデンサ素子とコンデンサ素子の間、又は、コンデンサ素子とケースの壁面との間に位置している、請求項1又は2記載のコンデンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放熱部材を備えたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンデンサの放熱を図るために放熱部材を設置することが行われている。例えば、特許文献1には、ケース側面に放熱部材を接着剤で貼り付けることが記載されている。また、特許文献2には、ケースに放熱部材をインサート成形することが記載されている。また、特許文献3には、ケース内に放熱部材を収容することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-187206号公報
【特許文献2】特開2012-199350号公報
【特許文献3】特開2013-191805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2では、放熱部材がケース表面側にのみ設けられており、コンデンサの内部まで放熱させることが難しい。特許文献3では、放熱部材がケース外に大きく張り出しており、コンデンサがその分大きくなっている。
【0005】
本発明は、内部の熱を効率良く放熱することができるとともに、大型化を抑制することができるコンデンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンデンサは、バスバー6を接続したコンデンサ素子5を樹脂製のケース2に収容し樹脂4を充填してなるコンデンサであって、ケース2には、ケース外表面2dと面一となるように放熱部材3がインサート成形されており、放熱部材3が、ケース2の内側に向かって突出する突出部3bを有していることを特徴としている。
【0007】
また、放熱部材3が、ケース2の複数の壁面(2a、2b)に跨っていることが好ましい。
【0008】
また、放熱部材3の突出部3bが、コンデンサ素子5とコンデンサ素子5の間、又は、コンデンサ素子5とケース2の壁面(2a、2b)との間に位置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンデンサでは、放熱部材が、ケース外表面と面一となるようにインサート成形されているため、コンデンサの大型化を抑制することができる。また、放熱部材が、ケースの内側に向かって突出する突出部を有しているため、内部の熱を効率良く放熱することができる。
【0010】
放熱部材が、ケースの複数の壁面に跨っている場合、多方面からケース内の熱を効率良く放熱することができる。
【0011】
放熱部材の突出部が、コンデンサ素子とコンデンサ素子の間、又は、コンデンサ素子とケースの壁面との間に位置している場合、コンデンサ素子の熱を効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施形態に係るコンデンサを示す分解斜視図である。
図2図2Aがコンデンサの水平断面図、図2Bが垂直断面図である。
図3図3A~Cは放熱部材の変形例を示す水平断面図である。
図4】本発明の異なる実施形態のコンデンサを示す垂直断面図である。
図5】本発明のさらに別の実施形態のコンデンサを示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明のコンデンサの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。このコンデンサ1は、図1及び図2に示すように、ケース2と、ケース2にインサート成形された放熱部材3と、ケース2に収容されるコンデンサ素子5と、コンデンサ素子5に接続されるバスバー6と、ケース2内に充填される樹脂4とを備えている。以下、上記各部品について説明するが、「上下」の概念は、製造時、より具体的には樹脂充填時におけるものであって、必ずしも使用時の上下を規定するものではない。
【0014】
ケース2は樹脂製(例えば合成樹脂製)であって絶縁性である。ケース2は略中空直方体状とされており、複数の壁面で構成されている。ケース2の底を形成する下壁面2aと、ケース2の側面を形成する側壁面2bは、どちらも略矩形状である。ケース2の上端には開口部2cが設けられている。コンデンサ素子5や樹脂4は、この開口部2cから内部に収容される。このケース2には、ケース外表面2dと面一(同一面上)になるように放熱部材3がインサート成形されている。なお、「面一」には、設計過程において面一としたものの、製造過程や製造後の収縮変形(ヒケ、反り等)によってケース外表面2dと放熱部材3の間に意図しないずれ(製造誤差)を生じたものも含む。
【0015】
上記構成のケース2は、例えばケース成形用のインサート成形機(金型)に、放熱部材3をセットし、樹脂(例えば合成樹脂)を射出成形することにより製作される。具体的には、金型の外型内面であってケース外表面2d(下壁面2aと側壁面2bの外面)を成形する面に放熱部材3の表面(具体的には、後述する基部3aの表面)を当接させた状態で樹脂を射出成形する。出来上がったケース2は、ケース外表面2dと放熱部材3のつなぎ目が平らであるため、放熱部材3に幅広の冷却体を当接させると、ケース2にも冷却体が当接するようになる。
【0016】
放熱部材3は、ケース2の壁面にインサート成形される基部3aと、基部3aからケース2の内側に向かって突出する突出部3bとを有している。基部3aは、側壁面2bにインサート成形されている。基部3aと側壁面2bは厚さが同一である。そのため、基部3aが直接、充填樹脂4と当接している。この状態は、基部3aがケース2の壁面の一部を構成しているとも言える。基部3aの露出面、すなわち、外気に面している部分は平ら(平滑)である。この露出面は、冷却体を当接させるための当接部として利用される。露出面の反対側の面も平らであるが、凹凸があってもよい。突出部3bは、平面視、基部3aと直交するようにして突出しており、コンデンサ素子5とコンデンサ素子5の間に位置している。突出部3bの先端は、基部3aと対向する側壁面2bに埋没しているが、埋没していなくてもよい。この放熱部材3は、アルミニウムや銅等の金属板や、セラミックスやカーボンファイバ等を含む放熱性の高い素材を板状やシート状にしたもので形成されている。従って、基部3aも突出部3bも板状ないしシート状である。基部3aと突出部3bとは、1枚の素材を折り曲げて形成されていてもよいし、複数の素材を溶接や接着することで連結されていてもよい。
【0017】
ケース2に充填される樹脂4は、絶縁性の樹脂である。熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が好ましく、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂やシリコーン樹脂である。この樹脂4は、バスバー6を接続したコンデンサ素子5をケース2に収容した後、液面4aが放熱部材3よりも上になるまで充填される。ただ、必ずしも上になるまで充填する必要は無い。また、所望の耐湿性を確保できる量(厚さ)となるまで充填される。
【0018】
コンデンサ素子5は、例えば絶縁性のフィルム上に金属を蒸着した金属化フィルムを巻回したフィルムコンデンサであって、図1に示すように、軸方向の両端部に電極面5aが設けられている。そしてコンデンサ素子5は、電極面5aをケース2の側壁面2bに対向させるようにして、ケース2内に収容されている。
【0019】
バスバー6は、1つの正極バスバー61と、1つの負極バスバー62とで構成されている。ただ、複数の正極バスバー61や負極バスバー62で構成されていてもよい。このバスバー6は、銅などの導電性の金属板を適宜折曲加工することで構成されている。
【0020】
正極バスバー61は、ケース2の側壁面2bに沿って延在する垂直部61aと、この垂直部61aの上端から水平方向に向かって延設され、開口部2c側に位置する水平部61bと、この水平部61bから上方に向かって延設され、開口部2cからケース外方に突出し、図示しない外部機器との接続に用いられる外部接続部61cと、垂直部61aの下端から下方に向かって延設され、コンデンサ素子5の電極面5aと接続された接続片61dとを備えている。
【0021】
負極バスバー62は、側壁面2bに沿って延在する垂直部62aと、垂直部62aの上端から上方に向かって延設され、開口部2cからケース外方に突出し、図示しない外部機器との接続に用いられる外部接続部62cと、垂直部62aの下端から下方に向かって延設され、コンデンサ素子5の電極面5aと接続された接続片62dとを備えている。
【0022】
上記構成のコンデンサ1は、放熱部材3がケース2にインサート成形されているため、コンデンサ1の組立に際して別途、放熱部材3を組み付ける必要が無く、例えば放熱部材3の位置決めが不要で、工数の削減を図ることができる。また、ケース外表面2dと放熱部材3とが面一であるため、ケース外表面2dから放熱部材3が張り出しているものと比べてコンデンサ1の小型化を図ることができる。さらに、放熱部材3と充填樹脂4が直接、当接していると、膨張係数の違いによって剥離が発生する可能性があるが、放熱部材3が樹脂の液面4aよりも下に位置しているため、剥離を抑制することができる。
【0023】
なお、放熱部材3には、以下のような変更を加えてもよい。例えば図3Aは、突出部3bをコンデンサ素子5とケース2の壁面(具体的には側壁面2b)との間に位置させたコンデンサ1Aである。なお、コンデンサ素子5と下壁面2aとの間に位置させてもよい。また、図3Bは、コンデンサ素子5の電極面5aを上下方向に向けるともに、コンデンサ素子5の側面に設けられた曲面に沿って、突出部3bを湾曲させたコンデンサ1Bである。また、図3Cは、基部3aの部分において、放熱部材3とケース2の二重構造とし、突出部3bをケース2に貫通させたコンデンサ1Cである。例えば、ケース2の壁面が基部3aよりも厚い場合は自ずと二重構造となる。このように、突出部3bを直接、充填樹脂4に当接させないことで、仮に充填樹脂4の液面4aが基部3aよりも下に位置したとしても、膨張係数の違いによる剥離は生じない。また、ケース強度の向上を図ることができる。
【0024】
図4は本発明の別の実施形態である。このコンデンサ1Dは、図に示すように、基部3aが、底面部3cと、底面部3cの両端からそれぞれ上方に延出された側面部3dとを備えており、断面形状は、カーブ部分を直角にした略U字状とされている。そして、底面部3cはケース2の下壁面2aに、側面部3dはケース2の側壁面2bにそれぞれ面一になるようにインサート成形されている。なお、この状態は、放熱部材3が、ケース2の複数の壁面に跨っており、放熱部材3が跨るケース2の全ての面において、ケース外表面2dと面一となるようにインサート成形されていると言える。そのため、例えば下壁面2aや1つの側壁面2bにのみ、冷却体を当接させたとしても、複数の面からコンデンサ1D全体を効率良く冷却することができる。また、多方面から冷却体を当接させることができる。なお、冷却体としては、水や冷媒を通したパイプ、ヒートシンク、冷却ファン等を備える冷却装置が挙げられるが、比較的温度の低い機器も含まれる。
【0025】
図5は本発明のさらに別の実施形態である。このコンデンサ1Eは、図に示すように、断熱部材7をインサート成形している。このように断熱部材7を設けることで、コンデンサ1Eが、エンジンや電子部品等の発熱体に近接して配置される場合であっても、断熱部材7を発熱体に向けておくことで熱を遮断しつつ、放熱部材3から放熱することができ、コンデンサ1E全体での冷却効果を高めることができる。
【0026】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、図4のコンデンサ1Dでは、放熱部材3が、ケース2の下壁面2aと側壁面2bとに跨っていたが、下壁面2aを介することなく2つ以上の側壁面2bに跨っていてもよい。また、放熱部材3の底面部3cと2つの側面部3dの全てが、ケース外表面2dと面一とされていたが、いずれか1つだけが面一とされているだけでもよい。また、突出部3bは、底面部3cと側面部3dのどちらから突出させてもよい。また、放熱部材3を複数設ける場合、ある1つの放熱部材3は直接、充填樹脂4と当接し、他の1つの放熱部材3は、ケース2とで二重構造を形成していてもよい。
【0027】
また、放熱部材3の底面部3cや側面部3d、基部3aがそれぞれ略四角形とされていたが、丸みを帯びた形状や多角形等、他の形状でもよい。要は、効率良く放熱できる形状であればよい。また、略U字状に限らず、I字状、L字状、コ字状、十字状、ロ字状等の種々の形状を採用することができる。また、突出部3bの形状や大小(長短)や形状も適宜変更可能である。例えばL字状やU字状、カーブ部分を直角にしたU字状としてもよい。また、コンデンサ素子5の大きさに合わせて大きさを変更してもよい。
【0028】
また、角型のケース2であったが、例えば丸みを帯びた部分を備えたもの等、他の形状を採用してもよく、形状の変化は設計の範疇である。図1において、手前側のバスバーを正極バスバーとし、後ろ側のバスバーを負極バスバーとしていたが、正負を入れ替えてもよい。
【0029】
また、コンデンサ素子5としてはフィルムコンデンサを用いていたが、これに限らず、電解コンデンサやセラミックコンデンサなど種々のコンデンサ素子を用いても良い。形状についても円柱状や角柱状など種々の形状を採用し得る。大きさや用途も問わない。形状や大きさ、用途、種類の異なるコンデンサ素子を同一のケース2に収容してもよい。個数においても適宜変更可能である。コンデンサ素子5の向きについても、横方向に電極面5aを向ける他、上下方向に電極面5aを向けるようにしてもよい。すなわち、例えば図1のコンデンサ1では、コンデンサ素子5の電極面5aと放熱部材3の基部3aが対向し、コンデンサ素子5の側面と突出部3bとが対向していたが、電極面5aと突出部3bとが対向し、コンデンサ素子5の側面と基部3aとが対向するようにコンデンサ素子5を配置してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1、1A~E コンデンサ
2 ケース
2a 下壁面
2b 側壁面
2c 開口部
2d ケース外表面
3 放熱部材
3a 基部
3b 突出部
3c 底面部
3d 側面部
4 樹脂
4a 樹脂の液面
5 コンデンサ素子
5a 電極面
6 バスバー
61 正極バスバー
61a 垂直部
61b 水平部
61c 外部接続部
61d 接続片
62 負極バスバー
62a 垂直部
62c 外部接続部
62d 接続片
7 断熱部材

図1
図2
図3
図4
図5