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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090479
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】シート状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20230622BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230622BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230622BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230622BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61K8/86
A61K8/39
A61K8/25
A61Q19/10
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205448
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】曽我 誠之
(72)【発明者】
【氏名】金 勉希
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB432
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC482
4C083AD152
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB25
4C083CC17
4C083CC24
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE10
(57)【要約】
【課題】粉体の凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、清涼感の持続性、及び肌のさらさら感に優れ、かつ肌のべたつきがなく、液の乾きが速いと感じることができるシート状化粧料の提供。
【解決手段】液体化粧料組成物を含浸させたシート状化粧料であって、(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかと、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(C)金属酸化物が被覆されてなるパール顔料と、を含有し、前記(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかの含有量が、0.5質量%以上であるシート状化粧料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体化粧料組成物をシート状基材に含浸させたシート状化粧料であって、
前記液体化粧料組成物が、
(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかと、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(C)基材に金属酸化物が被覆されてなるパール顔料と、
を含有し、
前記(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかの含有量が、0.5質量%以上であることを特徴とするシート状化粧料。
【請求項2】
(B)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比[(C)/(B)]が、0.7~13である請求項1に記載のシート状化粧料。
【請求項3】
(A)成分の含有量が、0.7質量%~1.2質量%であり、(B)成分の含有量が、0.3質量%~0.7質量%であり、(C)成分の含有量が、1.0質量%~2.0質量%である請求項1から2のいずれかに記載のシート状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートタイプの化粧料(シート状化粧料)は広く用いられており、汗や皮脂、メイク汚れなどを除去し、身体の清拭に用いることが知られている。このようなシート状化粧料には、肌のさらさら感を付与し、その効果を持続させるために親水性粉体を配合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方、近年の猛暑により高い清涼感を有する制汗用のシート状化粧料も求められている。しかし、メントール系清涼剤を0.5質量%以上配合したシート状化粧料では親水性粉体が凝集してしまうという課題があった。
【0003】
これに対して、親水性無機粉体及び0.5質量%以上のメントール系清涼剤に、更に界面活性剤として特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含侵させることで、親水性無機粉体の凝集を抑制したシート状化粧料が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、前記提案のシート状化粧料は、含浸液が乾く際に肌にべたつきが生じ、使用感が低下してしまうという課題があった。
【0004】
したがって、粉体の凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、清涼感の持続性、及び肌のさらさら感に優れ、かつ肌のべたつきがなく、液の乾きが速いと感じることができるシート状化粧料の提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-121922号公報
【特許文献2】特開2020-158429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、粉体の凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、清涼感の持続性、及び肌のさらさら感に優れ、かつ肌のべたつきがなく、液の乾きが速いと感じることができるシート状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、液体化粧料組成物をシート状基材に含浸させたシート状化粧料において、前記液体化粧料組成物に、(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかと、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(C)基材に金属酸化物が被覆されてなるパール顔料と、を含有さることにより、前記(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかの含有量が0.5質量%以上であっても、粉体の凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、清涼感の持続性、及び肌のさらさら感に優れ、かつ肌のべたつきがなく、液の乾きが速いと感じることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 液体化粧料組成物をシート状基材に含浸させたシート状化粧料であって、
前記液体化粧料組成物が、
(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかと、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(C)基材に金属酸化物が被覆されてなるパール顔料と、
を含有し、
前記(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかの含有量が、0.5質量%以上であることを特徴とするシート状化粧料である。
<2> (B)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比[(C)/(B)]が、0.7~13である前記<1>に記載のシート状化粧料である。
<3> (A)成分の含有量が、0.7質量%~1.2質量%であり、(B)成分の含有量が、0.3質量%~0.7質量%であり、(C)成分の含有量が、1.0質量%~2.0質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載のシート状化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、粉体の凝集を抑制でき、肌への刺激がなく、清涼感、清涼感の持続性、及び肌のさらさら感に優れ、かつ肌のべたつきがなく、液の乾きが速いと感じることができるシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(シート状化粧料)
本発明は、液体化粧料組成物をシート状基材に含浸させたシート状化粧料であって、前記液体化粧料組成物は、(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかと、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(C)基材に金属酸化物が被覆されてなるパール顔料と、を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかの含有量は、0.5質量%以上である。
【0011】
<液体化粧料組成物>
<<(A)L-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれか>>
前記(A)成分としてのL-メントール及びメントール誘導体の少なくともいずれかは、主に、清涼感を付与するために含有される。
【0012】
前記メントールとしては、例えば、L-メントール、DL-メントールなどが挙げられる。
前記メントール誘導体としては、例えば、メンチルグリセリルエーテル、メンチルアセテート、乳酸メンチル、メンチルピロリドンカルボン酸、シュウ酸メンチルエチルアミド、メントキシプロパンジオールメントールなどが挙げられる。
また、前記(A)成分としては、前記メントール及び前記メントール誘導体の少なくともいずれかを含有するハッカ、ペパーミント、スペアミント等の植物;ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等の精油を用いてもよい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記(A)成分としては、清涼感の点で、L-メントールが好ましい。
【0013】
前記(A)成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(A)成分の市販品としては、例えば、商品名で、l-メントール(高砂香料工業株式会社製)、Frescolat(登録商標) ML(乳酸メンチル)、Frescolat(登録商標) X-cool(シュウ酸メンチルエチルアミド)(以上、Symrise AG製)などが挙げられる。
【0014】
前記(A)成分の含有量としては、前記液体化粧料組成物の全量に対して0.5質量%以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体化粧料組成物の全量に対して、0.7質量%以上が好ましい。前記(A)成分の含有量の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1.2質量%以下などが挙げられる。前記(A)成分の含有量の下限値と上限値とは、適宜組み合わせることができ、清涼感及び肌への刺激のなさの点から、前記液体化粧料組成物の全量に対して、0.5質量%~1.2質量%が好ましく、0.7質量%~1.2質量%がより好ましい。前記(A)成分の含有量が0.5質量%未満であると、清涼感及び清涼感の持続性が不十分となる。一方、前記(A)成分の含有量が0.5質量%以上であると、清涼感及び清涼感の持続性が良好である。また、前記(A)成分の含有量が、1.2質量%以下であると、肌への刺激のなさが良好である。
【0015】
<<(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が65未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油>>
前記(B)成分としてのエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が65未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、主に、粉体の凝集を抑制するために配合される。
【0016】
前記(B)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数としては、65未満である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、清涼感、清涼感の持続性、及び液の乾きの速さの点で、5~60が好ましく、40~60がより好ましい。前記(B)成分のエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が65以上であると、清涼感の持続性が悪くなり、また液の乾きが遅く感じるようになる。一方、前記(B)成分のエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が65未満であると、清涼感の持続性が良好であり、また液の乾きが速いと感じるようになる。また、前記(B)成分のエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が5以上であると、清涼感が良好であり、また液の乾きが速いと感じることがある。
【0017】
前記(B)成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(B)成分の市販品としては、例えば、商品名で、NIKKOL HCO-5(E.O.平均モル付加数5)、NIKKOL HCO-10(E.O.平均モル付加数10)、NIKKOL HCO-20(E.O.平均モル付加数20)、NIKKOL HCO-30(E.O.平均モル付加数30)、NIKKOL HCO-40(E.O.平均モル付加数40)、NIKKOL HCO-50(E.O.平均モル付加数50)、NIKKOL HCO-60(E.O.平均モル付加数60)(以上、日光ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
【0018】
前記(B)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記液体化粧料組成物の全量に対して、その下限値としては、0.05質量%以上、0.3質量%以上などが挙げられ、またその上限値としては、1.0質量%以下、0.7質量%以下などが挙げられる。前記(B)成分の含有量の下限値と上限値とは、適宜組み合わせることができ、肌のべたつきのなさ及び粉体の凝集の抑制の点から、前記液体化粧料組成物の全量に対して、0.05質量%~1.0質量%が好ましく、0.3質量%~0.7質量%がより好ましい。前記(B)成分の含有量が、0.05質量%以上であると、粉体の凝集を好適に抑制することができ、1.0質量%以下であると、肌のべたつきのなさが良好である。
【0019】
<<(C)基材に金属酸化物が被覆されてなるパール顔料>>
前記(C)成分としての基材に金属酸化物が被覆されてなるパール顔料は、主に、肌にさらさら感を付与するために配合される。
【0020】
前記(C)成分における前記基材としては、化粧料に使用し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、雲母(白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母等)、セリサイト、タルク、カオリン、スメクタイト属粘土鉱物、合成セリサイト、板状酸化チタン、板状シリカ、板状酸化アルミニウム、窒化硼素、硫酸バリウム、板状チタニア・シリカ複合酸化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記(C)成分における前記基材は、肌へのさらさら感の付与の点で、雲母が好ましい。
【0021】
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、棒状、針状、板状、薄片状、不定形状、鱗片状、紡錘状などが挙げられる。これらの中でも、前記(C)成分における前記基材の形状は、肌へのさらさら感の付与の点で、薄片状が好ましい。
【0022】
前記(C)成分における前記基材を被覆する金属酸化物としては、化粧料に使用し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄(黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記(C)成分における前記基材を被覆する金属酸化物は、酸化チタンが好ましい。
【0023】
前記(C)成分における前記金属酸化物による被覆層は、一層であってもよく、二層以上であってもよい。例えば、酸化鉄層の上に、酸化チタン層が積層したものであってもよい。また、前記(C)成分における前記金属酸化物による被覆は、一層中に複数の金属酸化物を含んでいてもよい。
【0024】
これらの中でも、前記(C)成分は、肌へのさらさら感の付与の点で、前記基材が酸化チタンにより被覆されてなるものであることが好ましく、薄片状の基材が酸化チタンにより被覆されてなるものであることがより好ましく、雲母が酸化チタンにより被覆されてなるもの(「雲母チタン」とも称する)であることが特に好ましい。
【0025】
前記被覆層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、本明細書において、「被覆」とは、全体が連続する場合に限られず、一部に非被覆領域を有するものであってもよい。
【0026】
前記(C)成分の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、肌へのさらさら感の付与の点で、0.1μm~100μmが好ましく、1μm~50μmがより好ましい。
【0027】
前記(C)成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(C)成分の市販品としては、例えば、商品名で、Timica(登録商標) Soft Luster White 6500(雲母チタン、体積平均粒径:2μm~11μm)、Timica(登録商標)Extra Bright 1500(雲母チタン、体積平均粒径:8μm~42μm)、Timica(登録商標) Rouge 450FR(酸化鉄被膜マイカ、体積平均粒径:8μm~40μm)(以上、BASF株式会社製)などが挙げられる。
【0028】
前記(C)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記液体化粧料組成物の全量に対して、その下限値としては、0.3質量%以上、1.0質量%以上などが挙げられ、またその上限値としては、3.0質量%以下、2.0質量%以下などが挙げられる。前記(C)成分の含有量の下限値と上限値とは、適宜組み合わせることができ、肌のさらさら感及び粉体の凝集性の点から、前記液体化粧料組成物の全量に対して、0.3質量%~3.0質量%が好ましく、1.0質量%~2.0質量%がより好ましい。前記(C)成分の含有量が、0.3質量%以上であると、肌のさらさら感が良好であり、3.0質量%以下であると、粉体の凝集を好適に抑制することができる。
【0029】
-質量比[(C)/(B)]-
前記(B)成分の含有量(質量%)に対する前記(C)成分の含有量(質量%)の質量比[(C)/(B)]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、清涼感の持続性の点から、0.7~13が好ましく、3~6.5がより好ましい。前記質量比[(C)/(B)]が、0.7以上又は13以下であると、清涼感の持続性が良好である。
【0030】
<<その他の成分>>
前記液体化粧料組成物は、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油脂類、ワックス類、低級アルコール、多価アルコール、シリコーン類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、前記(B)成分以外の界面活性剤、高分子化合物、酸化防止剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤、抗炎症剤、アミノ酸、ビタミン剤、各種植物抽出エキス、殺菌剤、制汗剤、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記その他の成分は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
前記液体化粧料組成物における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
-低級アルコール-
前記低級アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エタノールが好ましい。
【0033】
前記低級アルコールは、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。前記低級アルコールの市販品としては、例えば、商品名で、トレーサブル 95 1級(発酵エタノール、日本アルコール産業株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
前記低級アルコールの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液の乾きの速さ及び粉体分散性の向上による安定的な清涼感の持続性の点から、前記液体化粧料組成物の全量に対して、5質量%~55質量%が好ましく、18質量%以上35質量%がより好ましい。
【0035】
-多価アルコール-
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1,3-ブチレングリコールが好ましい。
【0036】
前記多価アルコールの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体化粧料組成物の全量に対して、0.1質量%~1.0質量%が好ましく、0.3質量%~0.6質量%がより好ましい。
【0037】
-水-
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液体化粧料組成物の全量に対して、55質量%~77質量%が好ましく、60質量%~77質量%がより好ましい。
【0038】
--粘度--
前記液体化粧料組成物の25℃における粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体化粧料組成物のシート状基材への含浸性が良好である点で、0.5mPa・s~10mPa・sの範囲内が好ましい。
前記粘度の測定方法としては、公知の測定方法を適宜選択することができ、例えば、BM型粘度計を用い、No.1ローターを使用し、60rpmで1分間の条件で測定することができる。
【0039】
--液体化粧料組成物の製造方法--
前記液体化粧料組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の各成分と、必要に応じて前記その他の成分と、水とを混合し、製造する方法などが挙げられる。
【0040】
前記液体化粧料組成物を製造する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、剪断力と全体混合できる複数の攪拌羽根(例えば、プロペラ、タービン、ディスパー等)を備えた攪拌装置などが好ましい。
【0041】
<シート状基材>
前記シート状基材としては、特に制限はなく、公知のシート状化粧料に用いられているものを適宜選択することができ、例えば、紙、厚織り、糸織り、ガーゼ、コール天、ネル等の織布、平編み、ゴム編み、タック編み、二目編み等の製法による編布;スパンレース、スパンボンド、サーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ等の製法による不織布などを用いることができる。
【0042】
前記シート状基材の材質としては、特に制限はなく、公知のシート状化粧料に用いられているものを適宜選択することができ、例えば、親水性繊維及び疎水性繊維の少なくともいずれかからなるものなどが挙げられる。
【0043】
前記親水性繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、綿、パルプ、麻、レーヨンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記親水性繊維としては、レーヨンが好ましい。
【0044】
前記疎水性繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維;ナイロン等のポリアミド系繊維;ポリアクリロニトリル系繊維;ポリビニルアルコール系繊維;あるいはこれらの繊維の混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記疎水性繊維としては、ポリエステル系繊維が好ましく、その中でも扁平多葉型ポリエステル繊維が好ましい。
【0045】
前記親水性繊維と、前記疎水性繊維との質量比(親水性繊維/疎水性繊維)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50/50~90/10が好ましく、60/40~75/25がより好ましい。
【0046】
前記シート状基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単一繊維種又は複数種の繊維を混合した混紡繊維による単層構造、同一目付けの単一繊維、異なる目付けの単一繊維、複数種の繊維を混合した混紡繊維から選択される2種以上を積層した積層構造などが挙げられる。
【0047】
--シート状基材の製造方法--
前記シート状基材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
単層構造のシート状基材は、例えば、親水性繊維及び疎水性繊維の各ウェブを作製し、ウォータージェットで繊維を交絡させることにより得ることができる。
積層構造のシート状基材は、例えば、例えば、PE・PP芯鞘繊維(例えば、ダイワボウポリテック株式会社製のNBF(H)など)を熱融着によりシート状(不織布)にし、レーヨンのウェブで前記シートを挟みこみ、ウォータージェットで繊維を交絡させることにより得ることができる。
【0048】
前記シート状基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01mm~5mmが好ましく、0.05mm~2mmがより好ましい。
なお、前記シート状基材の厚みは、厚さ測定器(例えば、FS-60DS(特型)、株式会社大栄科学精器製作所製)を用いて、荷重0.3kPaにて測定した値である。
【0049】
前記シート状基材の坪量(一層当たり)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10g/m~100g/mが好ましく、20g/m~80g/mがより好ましい。
【0050】
前記シート状基材は、市販品を使用することもできる。
前記シート状基材の市販品の具体例としては、ペンタス含有不織布(横断面形状が、円周上に8個の凸部を有する多葉扁平断面ポリエステル繊維(ペンタス)/レーヨン=(35g/m)/(35g/m):(70g/m))(親水性繊維/疎水性繊維=50/50、質量比)(東レ株式会社製)、ペンタス含有不織布(横断面形状が、円周上に8個の凸部を有する多葉扁平断面ポリエステル繊維(ペンタス)/細レーヨン=(34g/m)/(34g/m):(68g/m))(親水性繊維/疎水性繊維=50/50、質量比)(大和紡績株式会社製)、レーヨン/PP・PE芯鞘型繊維/レーヨン=(20g/m)/(20g/m)/(20g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=67/33、質量比)(大和紡績株式会社製)などが挙げられる。
【0051】
<<シート状化粧料の製造方法>>
前記シート状化粧料は、前記液体化粧料組成物を前記シート状基材に含浸させることにより製造することができる。
【0052】
前記液体化粧料組成物の含浸倍率(質量比)(液体化粧料組成物/シート状基材)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、肌のさらさら感、及び拭き取りやすさの点で、3.0~6.0の範囲が好ましく、3.5~5.0の範囲がより好ましい。
【0053】
前記液体化粧料組成物を前記シート状基材に含浸させる方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記液体化粧料組成物を前記シート状基材に滴下乃至スプレーする方法、前記液体化粧料組成物を前記シート状基材に塗工する方法、前記シート状基材を前記液体化粧料組成物に浸漬する方法などが挙げられる。
【0054】
<<包装体>>
本発明のシート状化粧料は、包装体に収容された状態で使用されることが好ましい。前記包装体としては、特に制限はなく、シート状化粧料に通常用いられるものを適宜選択して使用することができる。
【0055】
<<用途>>
本発明のシート状化粧料の用途としては、肌を拭き取るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粉体の凝集を抑制できるためシート状基材への含浸性が良好であり、かつ、清涼感、清涼感の持続性、肌のさらさら感、液の乾きの速さ、肌のべたつきのなさ、及び肌への刺激のなさのいずれもが良好であることから、例えば、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシート、足用拭き取りシート、介護用清拭シート、皮脂拭き取り用シート、眠気覚まし用シートなどに好適に用いることができ、特に、液の乾きの速さに優れる観点から、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシートに好ましく用いることができる。
【実施例0056】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
実施例及び比較例に記載の各成分の含有量は質量%で示し、全て純分換算した値である。また、(B)成分の含有量(質量%)に対する(C)成分の含有量(質量%)の質量比[(C)/(B)]は、小数点以下第2位を四捨五入し、小数点以下第1位まで求め、記載した。また、共通成分のエタノールは、トレーサブル95 1級(95度、発酵アルコール)(日本アルコール産業株式会社製)を使用し、無水エタノール換算値(無水エタノールに換算した含有量(質量%))を記載した。
【0058】
(実施例1~16及び比較例1~6)
<液体化粧料組成物の製造>
下記表1~表3に示す組成及び含有量で、エタノールに、(A)成分、(B)成分又は(B)成分の比較成分、並びに共通成分である1,3-ブチレングリコール、エチルパラベン、プロピルパラベン、及び香料を分散又は溶解させた後、水(精製水)を添加し、共通成分である高重合メチルポリシロキサンエマルジョンを添加後、最後に(C)成分又は(C)成分の比較成分を加えて分散させ、各液体化粧料組成物を得た。
前記各液体化粧料組成物の25℃における粘度は、0.5mPa・s~10mPa・sの範囲内であった。なお、前記粘度は、BM型粘度計を用い、No.1ローターを使用し、60rpmで1分間の条件で測定した。
【0059】
<シート状化粧料の製造>
前記液体化粧料組成物を含浸した後の質量が、液体化粧料組成物を含浸する前の質量の5倍(質量比(液体化粧料組成物/シート状基材):4)となるように、下記シート状基材に得られた各液体化粧料組成物を含浸させて、実施例1~16及び比較例1~6の各シート状化粧料(身体用汗拭きシート)を作製した。
-シート状基材-
・ レーヨン/PP・PE芯鞘型繊維/レーヨン=(20g/m)/(20g/m)/(20g/m):(60g/m)(親水性繊維/疎水性繊維=67/33、質量比)(大和紡績株式会社製)
【0060】
(評価)
実施例1~16及び比較例1~6の各シート状化粧料について、以下に記載の評価方法で、「粉体の凝集性」、「清涼感」、「清涼感の持続性」、「肌のさらさら感」、「液の乾きの速さ」、「べたつきのなさ」、及び「肌への刺激のなさ」を評価した。結果を下記表1~表3に示した。
なお、比較例1及び4~6の液体化粧料組成物は、粉体が凝集してしまい、シート状基材に含浸させることができなかったため、「粉体の凝集性」以外の評価を行うことができなかった。比較例1及び4~6の「粉体の凝集性」以外の評価は「N.D.」として示した。
【0061】
<粉体の凝集性>
実施例1~16及び比較例1~6のシート状化粧料の製造において、シート状基材に含浸させる前の各液体化粧料組成物300gを、目開き75μmのJIS篩で全量を篩過したときの篩上に残った凝集物の質量を測定し、「粉体の凝集性」を下記評価基準に基づいて評価した。
-「粉体の凝集性」の評価基準-
◎:篩上に凝集物がない(凝集物が0.5g以下)
○:篩上に僅かに凝集物がある(凝集物が0.5g超1.5g以下)
△:篩上に凝集物がある(凝集物が1.5g超2.5g以下)
×:篩上に凝集物がかなりある(凝集物が2.5g超)
【0062】
<清涼感>
20代~30代の10名の女性の専門評価者が、実施例1~16、並びに、比較例2及び3のシート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭き、使用してから30分間後の「清涼感」を下記評価基準に基づいて評価した。結果は、専門評価者10名の平均評価点を求め、下記判定基準に基づき判定した。
-「清涼感」の評価基準-
5点:清涼感を非常に感じる
4点:清涼感をかなり感じる
3点:清涼感を感じる
2点:清涼感をやや感じる
1点:清涼感を感じない
-「清涼感」の判定基準-
◎:平均評価点が、4点以上
○:平均評価点が、3点以上4点未満
△:平均評価点が、2点以上3点未満
×:平均評価点が、2点未満
【0063】
<清涼感の持続性>
20代~30代の10名の女性の専門評価者が、実施例1~16、並びに、比較例2及び3のシート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭き、使用してから60分間後の清涼感から、「清涼感の持続性」を下記評価基準に基づいて評価した。結果は、専門評価者10名の平均評価点を求め、下記判定基準に基づき判定した。
-「清涼感の持続性」の評価基準-
◎:「清涼感を感じる」と回答した人が、6名以上
○:「清涼感を感じる」と回答した人が、4名以上5名以下
△:「清涼感を感じる」と回答した人が、2名以上3名以下
×:「清涼感を感じる」と回答した人が、1名以下
【0064】
<肌のさらさら感>
20代~30代の10名の女性の専門評価者が、実施例1~16、並びに、比較例2及び3のシート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭き、液体化粧料組成物の無塗布部と塗布部とを比較して、使用直後の「肌のさらさら感」を以下の評価基準により評価した。
-「清涼感の持続性」の評価基準-
◎:「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答した人が、9名以上
○:「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答した人が、7名以上8名以下
△:「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答した人が、5名以上6名以下
×:「塗布部が無塗布部よりもさらさら感がある」と回答した人が、4名以下
【0065】
<液の乾きの速さ>
20代~30代の10名の女性の専門評価者が、実施例1~16、並びに、比較例2及び3のシート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭き、使用から1分間後の「液の乾きの速さ」を以下の評価基準により評価した。
-「液の乾きの速さ」の評価基準-
◎:「1分間以内に液が乾いたと感じた」と回答した人が、9名以上
○:「1分間以内に液が乾いたと感じた」と回答した人が、7名以上8名以下
△:「1分間以内に液が乾いたと感じた」と回答した人が、5名以上6名以下
×:「1分間以内に液が乾いたと感じた」と回答した人が、4名以下
【0066】
<肌のべたつきのなさ>
20代~30代の10名の女性の専門評価者が、実施例1~16、並びに、比較例2及び3のシート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭き、使用直後の「肌(シート状化粧料を持っていた手指及び塗布部の上腕内側)のべたつきのなさ」を下記評価基準に基づいて評価した。結果は、専門パネラー10名の平均評価点を求め、下記判定基準に基づき判定した。
-「肌のべたつきのなさ」の評価基準-
5点:肌にべたつきを感じない
4点:肌にややべたつきを感じる
3点:肌に少しべたつきを感じる
2点:肌にかなりべたつきを感じる
1点:肌に非常にべたつきを感じる
-「べたつきのなさ」の判定基準-
◎:平均評価点が、4点以上
○:平均評価点が、3点以上4点未満
△:平均評価点が、1.5点以上3点未満
×:平均評価点が、1.5点未満
【0067】
<肌への刺激のなさ>
20代~30代の10名の女性の専門評価者が、実施例1~16、並びに、比較例2及び3のシート状化粧料で上腕内側10cmの長さを3往復拭き、使用後の「肌への刺激のなさ」を下記評価基準に基づいて評価した。
-「肌への刺激のなさ」の評価基準-
◎ : 「肌への刺激を感じない」と回答した人が、8名以上
○ : 「肌への刺激を感じない」と回答した人が、6名以上7名以下
△ : 「肌への刺激を感じない」と回答した人が、3名以上5名以下
× : 「肌への刺激を感じない」と回答した人が、2名以下
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
前記実施例1~16及び比較例1~6で使用した各成分の詳細について、下記表4に示す。
【0072】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のシート状化粧料の用途としては、肌を拭き取るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粉体の凝集を抑制できるためシート状基材への含浸性が良好であり、かつ、清涼感、清涼感の持続性、肌のさらさら感、液の乾きの速さ、肌のべたつきのなさ、及び肌への刺激のなさのいずれもが良好であることから、例えば、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシート、足用拭き取りシート、介護用清拭シート、皮脂拭き取り用シート、眠気覚まし用シートなどに好適に用いることができ、特に、液の乾きの速さに優れる観点から、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシートに好ましく用いることができる。