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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090512
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ヌクレオシドホスホロアミダイト
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20230622BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C07H19/10 CSP
C07H21/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205492
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】519432923
【氏名又は名称】リ―ドファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100109542
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 英治
(72)【発明者】
【氏名】張 功幸
(72)【発明者】
【氏名】渕 靖史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山本 一輝
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057AA11
4C057AA18
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL11
4C057LL18
4C057LL19
4C057MM01
4C057MM02
4C057MM04
4C057MM09
(57)【要約】
【課題】1サイクルのオリゴヌクレオチドの固相合成から、2本以上のオリゴヌクレオチドを得ることができるオリゴヌクレオチドの固相合成方法の提供。
【解決手段】式(I):

(式中、各記号は明細書に記載の通りである。)
で表されるヌクレオチド誘導体、およびこれを用いるオリゴヌクレオチドの固相合成方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、X~Xは、それぞれ独立して、水素原子、鎖状または環状の置換基を示すか、または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよい環を形成する;
Yは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
Zは、CHまたはOを示し;
およびZは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC-Cアルキル基を示すか、または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい複素環を形成する;
Pgは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し、および
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、または置換されていてもよいアルキルチオ基を示すか、または、
およびRは、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成する;および
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を示す。]
で表されるヌクレオチド誘導体。
【請求項2】
オリゴヌクレオチドの固相合成方法におけるヌクレオチド伸長反応により合成された固相合成用支持体に担持されたオリゴヌクレオチドであって、そのオリゴヌクレオチド配列中に、1または2以上の部分構造式(Ia):
【化2】

[式中、*は、固相合成用支持体、ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドへの結合位置を示し;
**は、水素原子、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドへの結合位置を示し;
は、OまたはSを示し;
Pgは、水酸基の保護基を示し;
~Xは、それぞれ独立して、水素原子、鎖状または環状の置換基を示すか、または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよい環を形成する;
Zは、CHまたはOを示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し、および
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、または置換されていてもよいアルキルチオ基を示すか、または、
およびRは、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成する;および
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を示す。]
で表されるヌクレオチド誘導体からなる基を核酸残基として有するオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程、
を含むオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【請求項3】
その配列中の3’末端の核酸残基として、部分構造式(Ia)で表されるヌクレオチド誘導体からなる基を有するオリゴヌクレオチドであって、固相合成用支持体に担持されているオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程を含む、
請求項2に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【請求項4】
その配列中の3’末端以外の核酸残基として、部分構造式(Ia)で表されるヌクレオチド誘導体からなる基を有し、その配列中の3’末端の核酸残基が部分構造式(Ia)で表されるヌクレオチド誘導体からなる基ではないオリゴヌクレオチドであって、ユニバーサルリンカーを介することなく、または、ユニバーサルリンカーを介して、固相合成用支持体に担持されているオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程を含む、
請求項2に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【請求項5】
(1)核酸モノマーを固相合成用支持体に担持させる工程であって、
1)式(I):
【化3】

[式中、X~Xは、それぞれ独立して、水素原子、鎖状または環状の置換基を示すか、または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよい環を形成する;
Yは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
Zは、CHまたはOを示し;
およびZは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC-Cアルキル基を示すか、または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい複素環を形成する;
Pgは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し、および
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、または置換されていてもよいアルキルチオ基を示すか、または、
およびRは、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成する;および
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を示す。]
で表されるヌクレオチド誘導体を、目的とするオリゴヌクレオチド配列の3’末端の核酸残基として、固相合成用支持体に担持させる工程、または、
2)式(I)で表されるヌクレオチド誘導体ではない核酸モノマーを、目的とするオリゴヌクレオチド配列の3’末端の核酸残基として、ユニバーサルリンカーを介することなく、または、ユニバーサルリンカーを介して、固相合成用支持体に担持させる工程、
を含む工程、
(2)工程(1)に続けて、目的とするオリゴヌクレオチド配列に応じて、核酸モノマーを順次カップリングさせて、オリゴヌクレオチドを伸長させる工程(ここにおいて、核酸モノマーとして、1または2以上の上記式(I)で表されるヌクレオチド誘導体を用いてもよい)、
(3)得られた目的とする配列を有するオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程、
を含むオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【請求項6】
固相合成用支持体からの切り出し反応が、当該オリゴヌクレオチドが担持された固相合成用支持体に、
1)炭酸カリウムのアルコール溶液を室温下~加温下で接触させること、または、
2)濃アンモニア水を室温下~加温下で接触させること、
により行われる、請求項2~5に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【請求項7】
固相合成用支持体からの切り出し反応が、当該オリゴヌクレオチドが担持された固相担体に、
1)50mM炭酸カリウムのメタノール溶液を室温下で接触させること、または、
2)28%アンモニア水を室温下で接触させること、
により行われる、請求項6に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチド(核酸)の固相合成におけるヌクレオチド伸長のための核酸モノマーとしての機能を有し、かつ当該核酸モノマーの部位においてヌクレオチド鎖を切断する機能をも併せ持つヌクレオチド誘導体と、それを用いたオリゴヌクレオチド(核酸)の固相合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやRNA等のオリゴヌクレオチド(核酸)の化学合成には、ホスホロアミダイト法を用いた固相合成方法が広く用いられているが、合成サイクルの最初の段階で、合成予定のオリゴヌクレオチド(核酸)配列の3'末端のヌクレオシドを固相担体上に担持させる必要性から、現在では、任意のヌクレオシドを結合し得るユニバーサルリンカー(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)を用いる合成方法が広く用いられている。
具体的には、当該ユニバーサルリンカーは、固相担体に連結されたスクシニル基などの開裂性リンカー(スペーサー)を介して固相担体上に予め担持され、これを起点として目的とする核酸配列に応じて最初に3’末端のヌクレオシドがユニバーサルリンカーに連結された後、順次目的配列に対応するホスホロアミダイトがカップリングされてオリゴヌクレオチド鎖が伸長する。得られたオリゴヌクレオチド鎖は、最終段階でその3’末端のヌクレオチドとユニバーサルリンカーとの間で切断されて、目的とするオリゴヌクレオチドが切出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8541599号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開等2004/0152905号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の通り、ユニバーサルリンカーを用いて、ホスホロアミダイトを順次カップリングさせてヌクレオチド鎖を伸長させる方法は、多様なオリゴヌクレオチドの固相合成に広く用いられているが、その合成スキームから、1サイクルの固相合成プロセスからは、1本のオリゴヌクレオチドしか合成することはできないという課題があった。
従って、1サイクルの固相合成プロセスから、2本以上のオリゴヌクレオチドが効率良く得られる固相合成方法の開発が待たれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
現在、固相ホスホロアミダイト法でオリゴヌクレオチド配列の伸長のために汎用されているヌクレオシドホスホロアミダイト(以下、「核酸モノマー」とも表記する)は、以下の式(M):
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、Bは、修飾されていてもよい核酸塩基を示し、DMTrは、4,4’-ジメトキシトリチル基を示す。)
で表される化合物により代表されるヌクレオシドホスホロアミダイトである。ここでは、リン原子上の水酸基が「シアノエチル基」により保護されている点が、特徴である。
本発明者らは、従来汎用されているヌクレオシドホスホロアミダイトのリン原子上に特定構造の基を導入した、式(I):
【0008】
【化2】
【0009】
[式中、X~Xは、それぞれ独立して、水素原子、鎖状または環状の置換基を示すか、または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよい環を形成する;
Yは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
Zは、CHまたはOを示し;
およびZは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC-Cアルキル基を示すか、または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい複素環を形成する;
Pgは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し、および
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、または置換されていてもよいアルキルチオ基を示すか、または、
およびRは、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成する;および
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を示す。]
で表されるヌクレオチド誘導体を核酸モノマーとして用いてオリゴヌクレオチドを合成した場合には、固相担体からの切り出し条件下で、当該ヌクレオチド誘導体が導入された部位で、以下のようにヌクレオチド鎖が開裂することを見出した。
【0010】
【化3】
【0011】
(上記式中、Rは、固相合成用支持体、ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドを示し;
は、水素原子、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを示し;
は、OまたはSを示し;
Pgは、水酸基の保護基を示し;
~X、Z、R~RおよびBaseは、それぞれ前記の通りである。)
【0012】
当該新規な知見に基づいて、本発明者らは、オリゴヌクレオチドの固相合成において、
(1)オリゴヌクレオチド鎖を伸長させるプロセスにおいて、式(I)で表される任意のヌクレオチド誘導体を、目的とするオリゴヌクレオチド配列の末端以外の核酸残基を導入するための核酸モノマーとして用いることにより、3’末端に加えて、合成されたオリゴヌクレオチド鎖を当該核酸残基の部位においても切断することができ、1サイクルの固相合成プロセスから2本以上のオリゴヌクレオチドが得られること、
(2)式(I)で表されるヌクレオチド誘導体を、最初に「固相合成用支持体」に担持させることにより、3’末端の核酸残基を導入するための核酸モノマーとしてのみでなく、合成されたオリゴヌクレオチドを「固相合成用支持体」から切断するためのユニバーサルリンカーとしても使用できること、
を見出し本発明を完成した。具体的には、本発明は、以下の通りである。
なお、本明細書中では、オリゴヌクレオチドの伸長に関する文脈において、本発明の式(I)で表されるヌクレオチド誘導体、並びに従来から当技術分野で汎用されているヌクレオシドホスホロアミダイトをともに「核酸モノマー」と表記するが、区別が必要な場合には、例えば、「式(I)で表されるヌクレオチド誘導体」、「式(I)で表されるヌクレオチド誘導体ではない核酸モノマー」のように記載する。
【0013】
[1]式(I):
【0014】
【化4】
【0015】
[式中、X~Xは、それぞれ独立して、水素原子、鎖状または環状の置換基を示すか、または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよい環を形成する;
Yは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
Zは、CHまたはOを示し;
およびZは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC-Cアルキル基を示すか、または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい複素環を形成する;
Pgは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し、および
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、または置換されていてもよいアルキルチオ基を示すか、または、
およびRは、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成する;および
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を示す。]
で表されるヌクレオチド誘導体(以下、「ヌクレオチド誘導体(I)」とも表記する。)。
【0016】
[2]オリゴヌクレオチドの固相合成方法におけるヌクレオチド伸長反応により合成された固相合成用支持体に担持されたオリゴヌクレオチドであって、そのオリゴヌクレオチド配列中に、1または2以上の部分構造式(Ia):
【0017】
【化5】
【0018】
[式中、*は、固相合成用支持体、ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドへの結合位置を示し;
**は、水素原子、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドへの結合位置を示し;
は、OまたはSを示し;
Pgは、水酸基の保護基を示し;
~Xは、それぞれ独立して、水素原子、鎖状または環状の置換基を示すか、または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよい環を形成する;
Zは、CHまたはOを示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し、および
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、または置換されていてもよいアルキルチオ基を示すか、または、
およびRは、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成する;および
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を示す。]
で表されるヌクレオチド誘導体からなる基(以下、「ヌクレオチド誘導体残基(Ia)」とも表記する)を核酸残基として有するオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程、
を含むオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
[3]その配列中の3’末端の核酸残基として、部分構造式(Ia)で表されるヌクレオチド誘導体からなる基を有するオリゴヌクレオチドであって、固相合成用支持体に担持されているオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程を含む、
上記[2]に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
[4]その配列中の3’末端以外の核酸残基として、部分構造式(Ia)で表されるヌクレオチド誘導体からなる基を有し、その配列中の3’末端の核酸残基が部分構造式(Ia)で表されるヌクレオチド誘導体からなる基ではないオリゴヌクレオチドであって、ユニバーサルリンカーを介することなく、または、ユニバーサルリンカーを介して、固相合成用支持体に担持されているオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程を含む、
上記[2]に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【0019】
[5](1)核酸モノマーを固相合成用支持体に担持させる工程であって、
1)式(I):
【0020】
【化6】
【0021】
[式中、X~Xは、それぞれ独立して、水素原子、鎖状または環状の置換基を示すか、または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよい環を形成する;
Yは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
Zは、CHまたはOを示し;
およびZは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC-Cアルキル基を示すか、または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい複素環を形成する;
Pgは、水素原子または水酸基の保護基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し;
は、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいアルキル基、または置換されていてもよいアルコキシ基を示し、および
は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、または置換されていてもよいアルキルチオ基を示すか、または、
およびRは、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成する;および
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を示す。]
で表されるヌクレオチド誘導体を、目的とするオリゴヌクレオチド配列の3’末端の核酸残基として、固相合成用支持体に担持させる工程、または、
2)式(I)で表されるヌクレオチド誘導体ではない核酸モノマーを、目的とするオリゴヌクレオチド配列の3’末端の核酸残基として、ユニバーサルリンカーを介することなく、または、ユニバーサルリンカーを介して、固相合成用支持体に担持させる工程、
を含む工程、
(2)工程(1)に続けて、目的とするオリゴヌクレオチド配列に応じて、核酸モノマーを順次カップリングさせて、オリゴヌクレオチドを伸長させる工程(ここにおいて、核酸モノマーとして、1または2以上の上記式(I)で表されるヌクレオチド誘導体を用いてもよい)、
(3)得られた目的とする配列を有するオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程、
を含むオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【0022】
ここで、工程(2)で得られた「目的とする配列を有するオリゴヌクレオチド」は、上記の[2]における「そのオリゴヌクレオチド配列中に、1または2以上の部分構造式(Ia):
【0023】
【化7】
【0024】
(式中、各記号はそれぞれ前記と同義である。)
で表されるヌクレオチド誘導体からなる基(「ヌクレオチド誘導体残基(Ia)」)を核酸残基として有するオリゴヌクレオチド」に該当するから、上記[5]は、
[5-1] そのオリゴヌクレオチド配列中に、1または2以上の部分構造式(Ia):
【0025】
【化8】
【0026】
(式中、各記号はそれぞれ前記と同義である。)
で表されるヌクレオチド誘導体からなる基(「ヌクレオチド誘導体残基(Ia)」)を核酸残基として有するオリゴヌクレオチドが、
(1)核酸モノマーを固相合成用支持体に担持させる工程であって、
1)式(I):
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、各記号はそれぞれ前記と同義である。)
で表されるヌクレオチド誘導体を、目的とするオリゴヌクレオチド配列の3’末端の核酸残基として、固相合成用支持体に担持させる工程、または、
2)式(I)で表されるヌクレオチド誘導体ではない核酸モノマーを、目的とするオリゴヌクレオチド配列の3’末端の核酸残基として、ユニバーサルリンカーを介することなく、または、ユニバーサルリンカーを介して、固相合成用支持体に担持させる工程、
を含む工程、および、
(2)工程(1)に続けて、目的とするオリゴヌクレオチド配列に応じて、核酸モノマーを順次カップリングさせて、オリゴヌクレオチドを伸長させる工程(ここにおいて、核酸モノマーとして、1または2以上の上記式(I)で表されるヌクレオチド誘導体を用いてもよい)
を含む工程により得られたものである、上記[2]に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法ということもできる。
【0029】
[6]固相合成用支持体からの切り出し反応が、当該オリゴヌクレオチドが担持された固相合成用支持体に、
1)炭酸カリウムのアルコール溶液を室温下~加温下で接触させること、または、
2)濃アンモニア水を室温下~加温下で接触させること、
により行われる、上記[2]~[5]に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
[7]固相合成用支持体からの切り出し反応が、当該オリゴヌクレオチドが担持された固相担体に、
1)50mM炭酸カリウムのメタノール溶液を室温下で接触させること、または、
2)28%アンモニア水を室温下で接触させること、
により行われる、上記[6]に記載のオリゴヌクレオチドの固相合成方法。
【発明の効果】
【0030】
ヌクレオチド誘導体(I)を、オリゴヌクレオチドの固相合成において、オリゴヌクレオチド配列の3’末端以外の核酸残基として導入することにより、3’末端に加えて当該核酸残基の部位においてもオリゴヌクレオチド鎖を切断することができるため、1サイクルのオリゴヌクレオチドの固相合成から、2本以上のオリゴヌクレオチドを得ることができる。本発明により、かかる優れた機能を有するヌクレオチド誘導体(I)、および当該ヌクレオチド誘導体(I)を用いる効率的なオリゴヌクレオチドの合成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1-1】図1は、後記の実施例C1におけるオリゴヌクレオチドの切り出しの結果を示すHPLCチャートである。
図1-2】図1は、後記の実施例C1におけるオリゴヌクレオチドの切り出しの結果を示すHPLCチャートである。
図2図2は、後記の実施例C2におけるオリゴヌクレオチドの切り出しの結果を示すHPLCチャートである。
図3図3は、後記の実施例C3におけるオリゴヌクレオチドの切り出しの結果を示すHPLCチャートである。
図4図4は、後記の実施例C4におけるオリゴヌクレオチドの切り出しの結果を示すHPLCチャートである。
図5図5は、後記の実施例C5におけるオリゴヌクレオチドの切り出しの結果を示すHPLCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上記の通り、本発明は、式(I):
【0033】
【化10】
【0034】
(式中、X~X、Y、Z、Z、Z、Pg、R~RおよびBaseは、それぞれ前記の通りである。)
で表されるヌクレオチド誘導体(I)、およびヌクレオチド誘導体(I)を用いるオリゴヌクレオチドの効率的な固相合成方法に関する。
【0035】
以下、本明細書中で使用される用語について説明する。特記しない限り各用語は以下の意味を有する。
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0036】
本明細書中、「アルキル基」(基を構成する「アルキル部分」である場合を含む)とは、直鎖状または分岐鎖状の飽和の炭化水素基をいい、炭素数1~6のものが好ましい。係る「C1-6アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチルが挙げられる。
【0037】
本明細書中、「アルケニル基」(基を構成する「アルケニル部分」である場合を含む)とは、直鎖状または分岐鎖状の一つ以上の二重結合を分子内に有する炭化水素基をいい、炭素数2~6のものが好ましい。係る「C2-6アルケニル基」としては、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニルが挙げられる。
【0038】
本明細書中、「アルキニル基」(基を構成する「アルキニル部分」である場合を含む)とは、直鎖状または分岐鎖状の一つ以上の三重結合を分子内に有する炭化水素基をいい、炭素数2~6のものが好ましい。係る「C2-6アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、4-メチル-2-ペンチニルが挙げられる。
【0039】
本明細書中、「アルコキシ基」(基を構成する「アルコキシ部分」である場合を含む)とは、ヒドロキシ基の水素原子が前記「アルキル基」により置換された構造を有する基をいい、炭素数1~6のものが好ましい。係る「C1-6アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0040】
本明細書中、「アルキルチオ基」(基を構成する「アルキルチオ部分」である場合を含む)とは、チオール基の水素原子が前記「アルキル基」により置換された構造を有する基をいい、炭素数1~6のものが好ましい。係る「C1-6アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、1-エチルプロピルチオ、ヘキシルチオ、イソヘキシルチオ、1,1-ジメチルブチルチオ、2,2-ジメチルブチルチオ、3,3-ジメチルブチルチオ、2-エチルブチルチオが挙げられる。
【0041】
本明細書中、「環状基」(基を構成する「環状基部分」である場合を含む)とは、「炭化水素環基」および「複素環基」をいう。
【0042】
本明細書中、「炭化水素環基」としては、例えば、芳香族炭化水素環基(好ましくは、炭素数6~14のC6-14芳香族炭化水素環基)、シクロアルキル(好ましくは、炭素数3~10のC3-10シクロアルキル)、シクロアルケニル(好ましくは、炭素数3~10のC3-10シクロアルケニル)が挙げられる。
【0043】
本明細書中、「アリール基」(基を構成する「アリール部分」である場合を含む)とは「芳香族炭化水素環基」をいい、炭素数が6~14のものが好ましい。
係る「C6-14芳香族炭化水素環基」としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0044】
本明細書中、「C3-10シクロアルキル」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルケニル」としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニルが挙げられる。
【0045】
本明細書中、「複素環基」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子をそれぞれ含有する、(i)芳香族複素環基、(ii)非芳香族複素環基および(iii)7ないし10員複素架橋環基が挙げられる。
【0046】
本明細書中、「芳香族複素環基」(「5ないし14員芳香族複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環基が挙げられる。
該「芳香族複素環基」の好適な例としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルなどの5ないし6員単環式芳香族複素環基;
ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、ナフト[2,3-b]チエニル、フェノキサチイニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環基が挙げられる。
【0047】
本明細書中、「非芳香族複素環基」(「3ないし14員非芳香族複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する3ないし14員(好ましくは4ないし10員)の非芳香族複素環基が挙げられる。
該「非芳香族複素環基」の好適な例としては、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロイソチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロイソオキサゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニル、アゼピニル、オキセパニル、アゾカニル、ジアゾカニルなどの3ないし8員単環式非芳香族複素環基;
ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソチアゾリル、ジヒドロナフト[2,3-b]チエニル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、4H-キノリジニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジニル、テトラヒドロベンゾアゼピニル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロフェナントリジニル、ヘキサヒドロフェノチアジニル、ヘキサヒドロフェノキサジニル、テトラヒドロフタラジニル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラヒドロキナゾリニル、テトラヒドロシンノリニル、テトラヒドロカルバゾリル、テトラヒドロ-β-カルボリニル、テトラヒドロアクリジニル、テトラヒドロフェナジニル、テトラヒドロチオキサンテニル、オクタヒドロイソキノリルなどの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)非芳香族複素環基が挙げられる。
【0048】
本明細書中、「7ないし10員複素架橋環基」の好適な例としては、キヌクリジニル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニルが挙げられる。
【0049】
本明細書中、「環」とは、「炭化水素環」および「複素環」をいう。
【0050】
本明細書中、「炭化水素環」としては、例えば、C6-14芳香族炭化水素環、C3-10シクロアルカン、C3-10シクロアルケンが挙げられる。
本明細書中、「C6-14芳香族炭化水素環」としては、例えば、ベンゼン、ナフタレンが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルカン」としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルケン」としては、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。
【0051】
本明細書中、「複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子をそれぞれ含有する、芳香族複素環および非芳香族複素環が挙げられる。
【0052】
本明細書中、「芳香族複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環が挙げられる。該「芳香族複素環」の好適な例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジンなどの5ないし6員単環式芳香族複素環;
ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾピリジン、チエノピリジン、フロピリジン、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、オキサゾロピリジン、チアゾロピリジン、イミダゾピラジン、イミダゾピリミジン、チエノピリミジン、フロピリミジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、オキサゾロピリミジン、チアゾロピリミジン、ピラゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、ナフト[2,3-b]チオフェン、フェノキサチイン、インド-ル、イソインドール、1H-インダゾール、プリン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、カルバゾール、β-カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジンなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環が挙げられる。
【0053】
本明細書中、「非芳香族複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する3ないし14員(好ましくは4ないし10員)の非芳香族複素環が挙げられる。該「非芳香族複素環」の好適な例としては、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、チアゾリン、チアゾリジン、テトラヒドロイソチアゾール、テトラヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロピリミジン、テトラヒドロピリダジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、モルホリン、チオモルホリン、アゼパン、ジアゼパン、アゼピン、アゾカン、ジアゾカン、オキセパンなどの3ないし8員単環式非芳香族複素環;
ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイソチアゾール、ジヒドロナフト[2,3-b]チオフェン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン、4H-キノリジン、インドリン、イソインドリン、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジン、テトラヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロキノキサリン、テトラヒドロフェナントリジン、ヘキサヒドロフェノチアジン、ヘキサヒドロフェノキサジン、テトラヒドロフタラジン、テトラヒドロナフチリジン、テトラヒドロキナゾリン、テトラヒドロシンノリン、テトラヒドロカルバゾール、テトラヒドロ-β-カルボリン、テトラヒドロアクリジン、テトラヒドロフェナジン、テトラヒドロチオキサンテン、オクタヒドロイソキノリンなどの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)非芳香族複素環が挙げられる(ここで、当該環は、酸素原子を介して形成される架橋構造を分子内に有していてもよい(例、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-エポキシナフタレン))。
本明細書中、「含窒素複素環」としては、「複素環」のうち、環構成原子として少なくとも1個以上の窒素原子を含有するものが挙げられる。
【0054】
およびZが、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい複素環を形成する場合の「複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に1ないし4個の窒素原子を含有し、さらに硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子をそれぞれ含有していてもよい、当該窒素含有芳香族複素環および窒素含有非芳香族複素環が挙げられる。
【0055】
本明細書中、「窒素含有芳香族複素環」の好適な例としては、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジンなどの5ないし6員単環式窒素含有芳香族複素環;
ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾピリジン、チエノピリジン、フロピリジン、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、オキサゾロピリジン、チアゾロピリジン、イミダゾピラジン、イミダゾピリミジン、チエノピリミジン、フロピリミジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、オキサゾロピリミジン、チアゾロピリミジン、ピラゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、インド-ル、イソインドール、1H-インダゾール、プリン、イソキノリン、キノリンなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)窒素含有芳香族複素環が挙げられる。
【0056】
本明細書中、「窒素含有非芳香族複素環」の好適な例としては、アジリジン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、チアゾリン、チアゾリジン、テトラヒドロイソチアゾール、テトラヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリミジン、テトラヒドロピリダジン、モルホリン、チオモルホリンなどの3ないし8員(より好ましくは、5または6員)単環式窒素含有非芳香族複素環;
ジヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイソチアゾール、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン、4H-キノリジン、インドリン、イソインドリン、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジン、テトラヒドロベンゾアゼピン、などの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)窒素含有非芳香族複素環が挙げられる。
【0057】
本明細書中、Yにおける「水酸基の保護基」としては、オリゴヌクレオチド(核酸)固相合成において5’-水酸基の保護のために通常使用されるものを用いることができ、特に限定はされない。例えば、トリチル系保護基、シリル系保護基、およびアシル系保護基が挙げられる。
当該「トリチル系保護基」としては、例えば、任意の置換基(例えば、Cアルコキシ基、Cアルキル基、ハロゲン原子等から選ばれる置換基(2個以上の置換基が一緒になって環を形成していてもよい))で置換されていてもよいトリチル基が挙げられ、具体的には、トリチル基(Tr)、モノアルコキシメトキシトリチル基(例えば、4-メトキシトリチル基(MMTr))、ジメトキシトリチル基(例えば、4,4’-ジメトキシトリチル基(DMTr))、9-フェニルキサンテン-9-イル基(ピクシル基)等が挙げられ、好ましくは、4,4’-ジメトキシトリチル基(DMTr)が挙げられる。
当該「シリル系保護基」としては、例えば、任意の置換基(例えば、Cアルコキシ基、Cアルキル基、フェニル基等から選ばれる置換基)でトリ置換されたシリル基が挙げられ、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等が挙げられ、好ましくは、トリメチルシリル基が挙げられる。
当該「アシル系保護基」としては、例えば、C1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル基)、C1-6アルコキシ-カルボニル基(例、t-ブトキシカルボニル基)、C6-14アリール-カルボニル基(例、ベンゾイル基)、レブリノイル基等が挙げられる。
【0058】
上記の水酸基の保護基においては、酸により脱離するヒドロキシ基の保護基は、酸による脱保護が容易であることから、トリチル系保護基が好ましく、4,4’-ジメトキシトリチル基(DMTr)がより好ましい。
【0059】
本明細書中、Pgにおける「水酸基の保護基」としては、前記した「シリル系保護基」および「アシル系保護基」が挙げられる。
【0060】
本明細書中、「保護されていてもよい水酸基」としては、例えば、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、C1-6アルキルスルホニル基およびC6-14アリールスルホニル基から選ばれる置換基」を有していてもよい水酸基が挙げられる。
置換されていてもよい水酸基の好適な例としては、ヒドロキシ基、C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、ピバロイルオキシ)、C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ)、C7-16アラルキル-カルボニルオキシ基(例、ベンジルカルボニルオキシ)、5ないし14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ニコチノイルオキシ)、3ないし14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ピペリジニルカルボニルオキシ)、C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例、tert-ブトキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基、C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ)、C7-16アラルキル-カルバモイルオキシ基(例、ベンジルカルバモイルオキシ)、C1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ)、C6-14アリールスルホニルオキシ基(例、フェニルスルホニルオキシ)が挙げられる。
【0061】
本明細書中、「鎖状または環状の置換基」としては、前記した「アルキル基」、「アルケニル基」、「アルキニル基」および「アルコキシ基」が「鎖状の置換基」として挙げられ、また前記した「環状基」が「環状の置換基」として挙げられる。ここで、各基は、置換されていてもよい。
【0062】
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、無置換または1~3個の置換基で置換可能な位置で置換されている態様を意味する。2または3置換の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
本明細書中、「置換された」とは、1~3個の置換基で置換可能な位置で置換されている態様を意味する。2または3置換の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
本明細書中、「置換されていてもよい環」、「置換されていてもよいC-Cアルキル基」、等のヌクレオチド誘導体(I)の各基が置換され得る置換基としては、例えば、
ハロゲン原子(例えば、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素);
アルキル基(例えば、C1-6アルキル基);
アルコキシ基(例えば、C1-6アルコキシ基);
アルコキシ-アルコキシ基(例えば、C1-6アルコキシ-C1-6アルコキシ基(例、メトキシ-メトキシ、メトキシ-エトキシ、エトキシ-エトキシ等));
アラルキルオキシ基(例えば、C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ));
保護された水酸基(例えば、C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例、アセトキシ、プロパノイルオキシ)、C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ)、C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ)、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ)、C6-14アリール-カルバモイルオキシ基(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ)等);
アリール基(例えば、C6-14アリール基);
等が挙げられる。
【0064】
本明細書中、「オリゴヌクレオチド(核酸)」とは、ヌクレオシドがホスホジエステル結合により連結された鎖状の化合物を意味し、DNAおよびRNA等が含まれる。オリゴヌクレオチド(核酸)は、1本鎖、2本鎖のいずれであってもよいが、オリゴヌクレオチド(核酸)合成機による効率的な合成が可能であることから、好ましくは1本鎖である。また、「オリゴヌクレオチド(核酸)」には、アデニン(A)、グアニン(G)等のプリン塩基およびチミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U)等のピリミジン塩基を含有するオリゴヌクレオチドのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基を含有する修飾オリゴヌクレオチド(核酸)も含まれる。ヌクレオシドが、ホスホロチオエート結合により連結される場合も、本発明においては「修飾オリゴヌクレオチド(核酸)」に含まれる。また、ヌクレオシドの糖部分を構成する原子の間で架橋構造を形成している場合(架橋型ヌクレオチド、BNA/LNA)も「修飾オリゴヌクレオチド(核酸)」に含まれる。
【0065】
本明細書中、「修飾されていてもよい核酸塩基」とは、オリゴヌクレオチド(核酸)の合成に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、シトシル基、ウラシル基、チミニル基、アデニル基、グアニル基や、これらの修飾核酸塩基である、8-ブロモアデニル基、8-ブロモグアニル基、5-ブロモシトシル基、5-ヨードシトシル基、5-ブロモウラシル基、5-ヨードウラシル基、5-フルオロウラシル基、5-メチルシトシル基、8-オキソグアニル基、ヒポキサンチニル基等が挙げられる。
ここで、「核酸塩基」は、例えば、アデニル基、グアニル基およびシトシル基または修飾核酸塩基のアミノ基が保護されていてもよく、アミノ基の保護基としては、核酸の保護基として使用されるものであれば特に制限されず、具体的には、例えば、ベンゾイル、4-メトキシベンゾイル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、フェニルアセチル、フェノキシアセチル、4-tert-ブチルフェノキシアセチル、4-イソプロピルフェノキシアセチル等により保護されていてもよい。
【0066】
本明細書中、「固相担体」(「SM」とも表記する)は、過剰に用いた試薬を洗浄によって簡単に除去できる固相合成において通常使用される担体であれば特に限定されないが、例えば、ガラス系多孔質担体、またはポリスチレン系多孔質担体、アクリルアミド系多孔質担体などの多孔質ポリマー担体等が挙げられ、好ましくは、ポリスチレン系多孔質担体、ガラス系多孔質担体である。
【0067】
本明細書中、「ガラス系多孔質担体」とは、ガラスを構成成分として含む多孔質担体をいい、例えば、粒子形状の多孔質ガラス粒子(CPG)等が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、前記CPGとしては、長鎖のアミノアルキルスペーサーを有するCPG固相担体(LCAA-CPG固相担体)が好適に用いられ、更には、長鎖ヌクレオチドの合成の場合においては、CPGの孔が20~400nm、より好ましくは50~200nm、更に好ましくは100nmのものが用いられる。
【0068】
本明細書中、「ポリスチレン系多孔質担体」とは、主にスチレンまたはその誘導体の構造単位から構成される樹脂からなる多孔質担体であり、中でも、アミノ基および/またはヒドロキシ基を有するポリスチレン系多孔質担体が好ましい。
【0069】
ポリスチレン系多孔質担体としては、例えば、スチレン-ヒドロキシスチレン-ジビニルベンゼン系共重合体粒子からなる多孔質担体(特開2005-097545号公報、特開2005-325272号公報および特開2006-342245号公報を参照)、またはスチレン-(メタ)アクリロニトリル-ヒドロキシスチレン-ジビニルベンゼン系共重合体からなる多孔質担体(特開2008-074979号公報を参照)等が挙げられる。
【0070】
本明細書中、「アクリルアミド系多孔質担体」とは、主にアクリルアミドまたはその誘導体の構造単位から構成される樹脂からなる多孔質担体であり、中でも、アミノ基および/またはヒドロキシ基を有するアクリルアミド系多孔質担体が好ましく、ヒドロキシ基を有するアクリルアミド系多孔質担体が好ましい。
【0071】
アクリルアミド系多孔質担体としては、例えば、芳香族モノビニル化合物-ジビニル化合物-(メタ)アクリルアミド誘導体系共重合体からなる多孔質担体等が挙げられる。支持体が、アクリルアミド系固相担体である場合において、(メタ)アクリルアミド誘導体モノマー由来の構造単位の含有量は、少なすぎると核酸の合成量の減少および合成純度の低下を回避し得るという効果が得られず、他方、多すぎると多孔質樹脂ビーズを形成し難い。従って好ましくは0.3~4mmol/g、より好ましくは0.4~3.5mmol/g、更に好ましくは0.6~3mmol/gである。
【0072】
上記固相担体は、スペーサー(開裂性リンカー)、ヌクレオチド誘導体(I)、ユニバーサルリンカー等との間に共有結合を形成できる官能基を有する固相担体であればよい。なかでも、アミノ基および/または水酸基を有する固相担体であることが好ましい。この場合において、固相担体(SM)とスペーサー(L)等との結合は、例えば、アミド結合またはエステル結合である。
【0073】
本発明において、固相担体中の、当該官能基の含有量は、特に限定されるものではないが、当該官能基の含有量が少なすぎるとオリゴヌクレオチド(核酸)の収量が低下し、他方、当該官能基の含有量が多すぎると、得られるオリゴヌクレオチド(核酸)の純度が低下する。当業者であれば、好適な含有量を、適宜選択することができる。
【0074】
本明細書中、「スペーサー(L)」は、共有結合を介して、固相担体、ユニバーサルリンカー、ヌクレオチド誘導体(I)、その他の基(例えば、ヌクレオシド)等との間に共有結合を形成できる官能基を有するものであればよい。固相合成の最終段階において生成物を固相担体から効率的に切り出すことができるよう、スペーサーは開裂性であることが好ましく、特にアンモニア水やメチルアミン溶液等のアルカリ溶液によって加水分解できるものであることがより好ましい。当技術分野でオリゴヌクレオチドの固相合成のために使用されている公知のスペーサーを本発明の実施においても使用することができる。
【0075】
「スペーサー」は、前記で定義した通りであるが、好ましくは、式(III):
【0076】
【化11】
【0077】
[式中、Laは、不活性な二価基を示し;および
【0078】
【化12】
【0079】
は、各々結合部位を示す。]
で表される二価基である。
ここで、スペーサーの構造が非対称構造である場合は、左右の結合部位のいずれが、本発明のヌクレオチド誘導体(I)と結合していてもよい。
【0080】
当該「不活性な二価基」の「不活性な」とは、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルファニル基、スルホ基等の固相合成反応を阻害する官能基を有さないことを示す。
【0081】
当該「不活性な二価基」であるLaは、より好ましくは、主鎖が、炭素原子、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれる原子(例えば1~200個、好ましくは、1~150個、より好ましくは、1~100個、さらに好ましくは1~50個、さらにより好ましくは、1~10個、特に好ましくは1~5個)からなる不活性な二価基である。
【0082】
Laは、好ましくは、-CHOCOCH-、-CHCH-、または-CHCHCH-であり、より好ましくは、-CHOCOCH-または-CHCH-である。
【0083】
なお、本発明において、スペーサーの長さは、特に限定されず、目的とするオリゴヌクレオチド(核酸)配列の鎖長に合わせて適宜設定できる。
【0084】
本発明に用いられるユニバーサルリンカーとしては、特に限定されず、特開2011-088843号公報に開示若しくは引用されているユニバーサルリンカー、または特開2016-204316号公報に開示されているユニバーサルリンカー等であってよい。または、市販品としての、ユニバーサルリンカーが固相担体に連結されたユニバーサルサポートであってもよい。より具体的には、例えばChem Genes社のオリゴヌクレオチド合成用のユニリンカー(商標名)ユニバーサルサポート、Bioserch Technologies社のユニバーサル Syn Base(商標名)およびユニバーサル Q Syn Base(商標名)、並びにGlen Research社の Glen UnySupport、ユニバーサルサポートIII等が用いられる。
【0085】
(固相合成用支持体)
本発明における「固相合成用支持体」は、ヌクレオチド誘導体(I)またはユニバーサルリンカーを連結できる官能基を有する固相担体またはその誘導体である。
固相担体自体が、当該官能基を有する場合には、それ自体を「固相合成用支持体」として用いることができる。また、例えば、固相担体に「末端にCOOH基を有するスペーサー」、または「スペーサーとOH基を有する基(例えば、ヌクレオシド残基)の連結体」を結合させた固相担体の誘導体を「固相合成用支持体」として用いることもできる。
固相合成用支持体は、以上に限定されるものではなく、当業者であれば、用いるヌクレオチド誘導体(I)やユニバーサルリンカーに応じて、適宜「固相
合成用支持体」をデザインし、調製することにより、本発明を実施することができる。「固相合成用支持体」は、そのデザインに応じて、当業者であれば、当技術分野で公知の方法を用いて、または適宜変更して用いて、調製することができる。なお、「固相合成用支持体」が市販されている場合は、市販品を用いてもよい。例えば、後記の実施例において使用されるCPG-Tが挙げられる。
かかる「固相合成用支持体」としては、例えば以下のものが挙げられる。
1)固相担体表面にOH基を有する固相担体(SM-OHとも表記する)
2)固相担体-(スペーサー)-(ヌクレオシド残基のOH基)(SM-L-NU―OHとも表記する)
3)固相担体-(COOH基を有するスペーサー)(SM-L-COOHとも表記する)
【0086】
[本発明におけるヌクレオチド誘導体(I)について]
以下、ヌクレオチド誘導体(I)の各記号の好ましい実施態様について、説明する。
【0087】
~Xは、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
~Xは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換されていてもよいアルキル基、
置換されていてもよいアルケニル基、
置換されていてもよいアルキニル基、または
置換されていてもよいアルコキシ基、
であるか、
または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、
置換されていてもよいC6-14芳香族炭化水素環、または
置換されていてもよい、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する、3ないし14員の非芳香族複素環を形成し;
より好ましくは、
~Xは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換されていてもよいC1-6アルキル基、
置換されていてもよいC2-6アルケニル基、
置換されていてもよいC2-6アルキニル基、または
置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、
であるか、
または
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、
置換されていてもよいC6-14芳香族炭化水素環、または
置換されていてもよい、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子を1ないし3個含有する、3ないし8員の非芳香族複素環を形成し;
最も好ましくは、
~Xは、それぞれ独立して、
水素原子、または、C1-6アルキル基(例、メチル)であるか、
または、
~Xの任意の2つの基は、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、
6-14芳香族炭化水素環(例、ベンゼン)、
環構成原子として炭素原子以外に酸素原子を1ないし3個含有する、5または6員単環式非芳香族複素環(例、テトラヒドロフラン)、または、
縮環置換された、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子を1ないし3個含有する、5または6員単環式非芳香族複素環(例、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-エポキシナフタレン、1,4-エポキシシクロヘキサン)
を形成する。
【0088】
Yは、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
水素原子、または、
置換されていてもよいトリチル系保護基であり;
より好ましくは、
水素原子、
トリチル基、
モノCアルコキシ-トリチル基、または、
ジCアルコキシ-トリチル基であり;
最も好ましくは、
ジメトキシトリチル基である。
【0089】
Zは、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
Zは、Oである。
【0090】
およびZは、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
およびZは、それぞれ独立して、
置換されていてもよいC1-6アルキル基であるか、または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい窒素含有非芳香族複素環を形成し;
より好ましくは、
およびZは、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であるか、または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、3ないし8員単環式窒素含有非芳香族複素環を形成する。
【0091】
Pgは、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
水素原子、または
アシル系保護基であり;
より好ましくは、
水素原子、
1-6アルキル-カルボニル基、または
6-14アリール-カルボニル基である。
【0092】
は、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
水素原子、
ハロゲン原子、
保護されていてもよい水酸基、
置換されていてもよいC1-6アルキル基、または、
置換されていてもよいC1-6アルコキシ基であり;
より好ましくは、
水素原子、
ハロゲン原子、
水酸基、
1-6アルキル基、または、
1-6アルコキシ基である。
【0093】
は、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
水素原子、
ハロゲン原子、
保護されていてもよい水酸基、
置換されていてもよいC1-6アルキル基、または、
置換されていてもよいC1-6アルコキシ基であり;
より好ましくは、
水素原子、
ハロゲン原子、
水酸基、
1-6アルキル基、または、
1-6アルコキシ基である。
【0094】
は、前記で定義した通りであるが、好ましくは、
水素原子、
置換されていてもよいC1-6アルキル基、
置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、または、
置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基であり;
より好ましくは、
水素原子、
1-6アルキル基、
1-6アルコキシ基、または、
1-6アルキルチオ基である。
【0095】
およびRは、前記で定義した通り、互いに結合して、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基を形成するが、より好ましくは、
以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)
で表される基を形成し;
最も好ましくは、
以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基を示す。)
で表される基を形成する。
【0096】
Baseは、前記で定義した通り、修飾されていてもよい核酸塩基である。
【0097】
以下、好ましいヌクレオチド誘導体(I)について説明する。
[ヌクレオチド誘導体(I-A)]
~Xが、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、
置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、または置換されていてもよいアルコキシ基であるか、
または、
~Xの任意の2つの基が、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよいC6-14芳香族炭化水素環、または、置換されていてもよい、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する、3ないし14員の非芳香族複素環を形成し;
Yは、水素原子、または、置換されていてもよいトリチル系保護基であり;
Zは、CHまたはOであり;
およびZが、それぞれ独立して、置換されていてもよいC1-6アルキル基であるか、
または、
およびZは、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、置換されていてもよい窒素含有非芳香族複素環を形成し;
Pgが、水素原子、またはアシル系保護基であり;
が、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいC1-6アルキル基、または、置換されていてもよいC1-6アルコキシ基であり;
が、水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよいC1-6アルキル基、または、置換されていてもよいC1-6アルコキシ基であり、およびRが、水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、または、置換されていてもよいC1-6アルキルチオ基であるか、
または
およびRが、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子または置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す。)
で表される基を形成し;および
Baseが、修飾されていてもよい核酸塩基である、ヌクレオチド誘導体(I)。
【0098】
[ヌクレオチド誘導体(I-B)]
~Xが、それぞれ独立して、
水素原子、置換されていてもよいC1-6アルキル基、置換されていてもよいC2-6アルケニル基、置換されていてもよいC2-6アルキニル基、または置換されていてもよいC1-6アルコキシ基であるか、
または、
~Xの任意の2つの基が、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、置換されていてもよいC6-14芳香族炭化水素環、または、置換されていてもよい、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子を1ないし3個含有する、3ないし8員の非芳香族複素環を形成し;
Yが、水素原子、トリチル基、モノCアルコキシ-トリチル基、または、ジCアルコキシ-トリチル基であり;
Zが、CHまたはO(好ましくは、O)であり;
およびZが、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であるか、
または、
およびZが、互いに結合して、それらが結合する窒素原子とともに、3ないし8員単環式窒素含有非芳香族複素環を形成し;
Pgが、水素原子、C1-6アルキル-カルボニル基、またはC6-14アリール-カルボニル基であり;
が、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基、または、C1-6アルコキシ基であり;
が、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C1-6アルキル基、または、C1-6アルコキシ基であり、およびRが、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、または、C1-6アルキルチオ基であるか、
または、
およびRが、以下の式(-R-R-の順で示す):
-O-C(Ra)-、-O-C(Rb)-C(Rc)-、-O-C(Rd)-О-、-N(Re)-C(Rf)-、-N(Rg)-CО-、-S-C(Rh)-、または-C(Ri)-C(Rj)
(上記式中、Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基を示す。)
で表される基を形成し;および、
Baseが、修飾されていてもよい核酸塩基である、ヌクレオチド誘導体(I)。
【0099】
[ヌクレオチド誘導体(I-C)]
~Xが、それぞれ独立して、水素原子、または、C1-6アルキル基(例、メチル)であるか、
または、
~Xの任意の2つの基が、結合可能な位置で互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに、C6-14芳香族炭化水素環(例、ベンゼン)、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子を1ないし3個含有する、5または6員単環式非芳香族複素環(例、テトラヒドロフラン)、または縮環置換された、構成原子として炭素原子以外に酸素原子を1ないし3個含有する、5または6員単環式非芳香族複素環(例、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-エポキシナフタレン、1,4-エポキシシクロヘキサン)を形成し;
Yが、ジメトキシトリチル基であり;および、
Zが、Oである、ヌクレオチド誘導体(I-B)。
【0100】
[ヌクレオチド誘導体(I)の製造方法について]
ヌクレオチド誘導体(I)は、例えば、以下の合成スキームにより製造することができる。
【0101】
【化13】


【0102】
(上記式中、YおよびPgは、それぞれ独立して、水酸基の保護基を示し、
Zaは、Oを示し、
およびZは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC-Cアルキル基を示し、
~X、Y、Z、Z、Z、Pg、R、R、R、およびBaseは、それぞれ前記の通りである。)
【0103】
上記の通り、ヌクレオチド誘導体(I)は、化合物(II)と化合物(III)とを反応させて、両者をリン原子上で連結した後(工程1)、必要によりYおよび/またはPgの水酸基の保護基を脱保護反応により除去することにより(工程2)、製造することができる。
工程1で用いられる原料化合物である化合物(II)および(III)は、後記の製造例/実施例に記載の方法や当技術分野で公知の方法を用いて当業者であれば製造して入手することができる。また、市販されている場合には市販品を用いることもできる。
工程1の反応は、後記の製造例/実施例に記載の方法や当技術分野で公知の方法に準じて、当業者であれば実施することができる。
工程2の脱保護反応は、当業者であれば、保護基の種類に応じて、当技術分野で公知の方法に準じて適宜反応条件を選択して、実施することができる。
【0104】
[ヌクレオチド誘導体(I)を用いるオリゴヌクレオチドの固相合成方法について]
本発明のオリゴヌクレオチドの固相合成方法は、
A.オリゴヌクレオチドの固相合成方法におけるヌクレオチド伸長反応により合成された固相合成用支持体に担持されたオリゴヌクレオチドであって、そのオリゴヌクレオチド配列中に、1または2以上のヌクレオチド誘導体残基(Ia)を核酸残基として有するオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程、
を含むオリゴヌクレオチドの固相合成方法である。より具体的には、
B.(1)核酸モノマーを固相合成用支持体に担持させる工程であって、
1)ヌクレオチド誘導体(I)を、目的とするオリゴヌクレオチドの3’末端の核酸残基として、固相合成用支持体に担持させる工程、または、
2)ヌクレオチド誘導体(I)ではない核酸モノマーを、目的とするオリゴヌクレオチドの3’末端の核酸残基として、ユニバーサルリンカーを介することなく、または、ユニバーサルリンカーを介して、固相合成用支持体に担持させる工程、
を含む工程(工程(1))、
(2)工程(1)に続けて、目的とするオリゴヌクレオチド配列に応じて、核酸モノマーを順次カップリングさせて、オリゴヌクレオチドを伸長させる工程(ここにおいて、核酸モノマーとして、1または2以上のヌクレオチド誘導体(I)を用いてもよい)(工程(2))、
(3)工程(2)で得られた、配列中に1または2以上のヌクレオチド誘導体残基(Ia)を有するオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程(工程(3))、
を含むオリゴヌクレオチドの固相合成方法である。
【0105】
以下、ヌクレオチド誘導体(I)を用いるオリゴヌクレオチドの固相合成方法について説明する。
[本発明における工程(1)について]
工程(1-1)
「(1)核酸モノマーを固相合成用支持体に担持させる工程であって、
1)ヌクレオチド誘導体(I)を、目的とするオリゴヌクレオチドの3’末端の核酸残基として、固相合成用支持体に担持させる工程」
で用いられる「固相合成用支持体」は、前記の1)型(SM-OH)または2)型(SM-L-NU―OH)に代表される官能基としてOH基を有する固相合成用支持体を用いることが好ましい。
工程(1-2)
「(1)核酸モノマーを固相担体に担持させる工程であって、
2)ヌクレオチド誘導体(I)ではない核酸モノマーを、目的とするオリゴヌクレオチドの3’末端の核酸残基として、ユニバーサルリンカーを介することなく、または、ユニバーサルリンカーを介して、固相合成用支持体に担持させる工程」
で用いられる「固相合成用支持体」は、前記の2)型(SM-L-NU―OH)または3)型(SM-L-COOH)に代表される固相合成用支持体を用いることが好ましい。
ユニバーサルリンカーを介することなく工程(1-2)を実施する場合には、前記の2)型に代表される官能基としてOH基を有するヌクレオシドを含む固相合成用支持体を用いることが好ましく、ユニバーサルリンカーを介して工程(1-2)を実施する場合には、前記の3)型に代表される官能基としてCOOH基を有する固相合成用支持体を用いることが好ましい。
ここで、2)型のSM-L-NU―OH型の固相合成用支持体を用いて工程(1-2)を実施し、その後の工程によりオリゴヌクレオチドの合成を行った場合には、固相合成用支持体に由来するヌクレオチド残基が、合成されたオリゴヌクレオチドに付加したヌクレオチド残基が目的配列よりも一つ長いオリゴヌクレオチドが得られる場合があるが、この場合も本発明の範囲に包含される。
当該「固相合成用支持体」への、ヌクレオチド誘導体(I)、ユニバーサルリンカーまたはヌクレオチド誘導体(I)ではない核酸モノマーのカップリング反応は、後記の実施例/製造例に記載された具体的な方法や、当技術分野で公知の方法を適宜適用して、当業者であれば行うことができる。
なお、ユニバーサルリンカーが固相合成用支持体に担持されたものが市販されている場合には、市販品を購入して用いてもよい。
【0106】
[本発明における工程(2)について]
工程(2)は、工程(1)での第一の核酸モノマーの「固相合成用支持体」へのカップリングに続けて、目的とするオリゴヌクレオチド配列に応じた核酸モノマーを順次カップリングさせて、オリゴヌクレオチドを伸長させる工程である。
ここで、「核酸モノマー」は、目的とするオリゴヌクレオチド配列に応じて適宜選択されるヌクレオシドホスホロアミダイトであり、後記の実施例/製造例に記載された具体的な方法や、当技術分野で公知の方法を適宜適用して、製造することができる。また、当該「核酸モノマー」が市販されている場合には、市販品を用いてもよい。
本発明のオリゴヌクレオチド伸長反応においては、核酸モノマーとして、1または2以上の本発明の「ヌクレオチド誘導体(I)」を用いることができる。
【0107】
工程(2)におけるオリゴヌクレオチドの伸長反応は、工程A:核酸残基の5’ヒドロキシ基の脱保護工程-工程B:核酸モノマーとのカップリング工程-工程C:ヌクレオチド連結部位の酸化/硫化工程を、目的とするオリゴヌクレオチド配列に応じて、1回または2回以上順次繰り返し、目的配列を有するオリゴヌクレオチドを得ることができる。各工程A~Cは、後記の実施例/製造例に記載された具体的な方法や、当技術分野で公知の方法を適宜適用して、当業者であれば実施することができる。
【0108】
[本発明における工程(3)について]
工程(3)は、得られた目的配列を有するオリゴヌクレオチドを、固相合成用支持体からの切り出し反応に付す工程である。
本工程での切り出し反応は、後記の実施例/製造例に記載された具体的な方法や、当技術分野で公知の方法を適宜適用して、当業者であれば、実施することができる。例えば、オリゴヌクレオチドが結合している固相合成用支持体を、アンモニア、アミン類および/または塩基で処理して、目的配列のオリゴヌクレオチドを回収することにより行うことができる。
アンモニアとしては、濃アンモニア水が挙げられる。アミン類としては、例えば、アルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等)が挙げられる。塩基としては、炭酸カリウム等の金属炭酸塩が挙げられる。アンモニア、アミン類、および/または塩基は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
アンモニア、アミン類、および/または塩基は、溶媒と混合して用いるのが望ましい。溶媒としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
工程(3)は、より具体的には、アンモニア、アミン類、および/または塩基の溶液を、オリゴヌクレオチドが結合している固相合成用支持体が投入されたカラム中に流し込むことにより、オリゴヌクレオチドが結合している固相合成用支持体と接触させることにより行われる。
工程(3)での切り出し反応では、その反応温度は反応条件に従って適宜選択され特に限定はされないが、通常室温下~加温下の範囲で行われる。また、反応時間は反応条件に従って適宜選択され特に限定はされないが、通常1分~24時間の範囲内で行われる。
【0109】
工程(3)での切り出し反応は、好ましくは、オリゴヌクレオチドが担持された固相合成用支持体に、
1)炭酸カリウムのアルコール溶液を室温下~加温下で接触させること、または
2)濃アンモニア水を室温下~加温下で接触させること、
により行うことができる。
さらに好ましくは、オリゴヌクレオチドが担持された固相合成用支持体に、
1)50mM炭酸カリウムのメタノール溶液を室温下で接触させること、または
2)28%アンモニア水を加温下で接触させること、
により行うことができる。
【実施例0110】
以下、具体的な実施例を用いて本発明を詳述する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
A.ヌクレオチド誘導体(I)の調製
ヌクレオチド誘導体の合成スキームは以下の通りである。
【0112】
【化14】
【0113】
(上記式中、DMTrは、4,4’-ジメトキシトリチル基、iPrは、イソプロピル基、DIPEAは、ジイソプロピルエチルアミン、およびETTは、エチルチオテトラゾールをそれぞれ示す。)
以下では、上記式3a~3dで表されるホスホロアミダイトを、ヌクレオチド誘導体3a~3dとも表記する。
【0114】
ヌクレオチド誘導体3a~3dは、以下の方法により合成した。
【0115】
製造例A1:化合物2の合成
報告されている文献(Bioconjugate Chem.,2008,19,1696-1706)に従って合成した。アルゴン気流下、市販の化合物1(3.00g、5.51mmol)の無水ジクロロメタン(20mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(2.40mL、13.2mmol)を加えた。0℃でビス(ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィン(1.56g、6.61mmol)を加えて、室温で1.5時間撹拌した。反応終了後、反応液を減圧留去し、粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物2(2.62g、収率61%)を白色固体として得た。
【0116】
製造例A2:化合物2OMeの合成
アルゴン気流下、市販の化合物1OMe(1.0g、1.88mmol)の無水ジクロロメタン(10mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.788mL、4.51mmol)を加えた。0℃でビス(ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィン(534mg、2.26mmol)を加えて、室温で1.5時間撹拌した。反応終了後、反応液を減圧留去し、粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物2OMe(1.09g、収率73%)を白色固体として得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl)δ8.34(brs,1H),8.01(d,2H,J=8.0Hz),7.40(d,2H,J=7.5Hz),7.30-7.22(m,7H),6.84-6.82(m,4H),6.02(d,J=8.0Hz,1H),5.25(d,J=8.0Hz,1H),4.37-4.33(m,1H),4.26-4.25(m,1H),3.88(dd,J=4.0,3.5Hz,1H),3.79(s,6H),3.59-3.42(m,6H),3.56(s,3H),1.17(d,J=2Hz,6H),1.16(d,J=2Hz,6H),1.14(d,J=7.0Hz,6H),1.04(d,J=6.5Hz,6H).
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ162.9,158.7,149.9,144.3,140.2,135.3,135.1,130.3,128.3,127.9,127.1,113.2,101.9,87.4,87.2,84.0,83.9,82.9,82.8,70.4,70.3,62.1,58.6,55.2,44.7,44.6,24.6,24.5,24.4,24.2,24.1,24.0.
31P-NMR(202MHz,CDCl)δ118.3.
IR(ATR)cm-1:2968,1684,1508.
HRMS(FAB):calcd for C4360
[M+H],791.4149, found 791.4147.
【0117】
実施例A1:ヌクレオチド誘導体3aの合成
アルゴン気流下、化合物2(300mg、0.387mmol)の無水アセトニトリル(4mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(81.0μL、0.465mmol)と文献(J.Am.Chem.Soc.,2005,127,5540-5551)に従って合成したエチレングリコールベンゾエート(77.3mg、0.465mmol)を加えた。エチルチオテトラゾール(40.4mg、0.310mmol)を加えて、室温で1.5時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧蒸留した。粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で精製し、ヌクレオチド誘導体3a(220mg、収率68%)を白色固体として得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl)δ8.08-7.94(m,3H),7.64-7.51(m,2H),7.41-7.36(m,4H)7.30-7.21(m,6H),6.83-6.81(m,4H),6.41-6.37(m,1H),4.68-4.61(m,1H),4.51-4.43(m,1H),4.33(t,1H,J=5.0Hz),4.20-4.11(m,1H),3.99-3.83(m,1H),3.79(m,6H),3.76-3.73(m,1H),3.62-3.51(m,2H),3.49-3.44(m,1H),3.33-3.28(m,1H),2.57-2.45(m,1H),2.30-2.22(m,1H),1.41-1.40(m,3H),1.16-1.04(m,12H)
31P-NMR(202MHz,CDCl)δ152.6,152.6,152.4,152.4
IR(ATR)cm-1:2962,1685,1605,1507
HRMS(ESI-TOF):calcd.for C4654NaO10
[M+Na] 862.3445, found 862.3448
【0118】
実施例A2:ヌクレオチド誘導体3bの合成
アルゴン気流下、化合物2(150mg、0.194mmol)の無水アセトニトリル(2mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(40.5μL、0.232mmol)と文献(Nucleic Acids Res. 1994,22,2998-3004)に従って合成した1,4-アンヒドロエリスリトールモノベンゾエート(48.3mg、0.232mmol)を加えた。エチルチオテトラゾール(30.2mg、0.232mmol)を加えて、室温で2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧蒸留した。粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3:1)で精製し、ヌクレオチド誘導体3b(69.0mg、40%)を白色固体として得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl)δ8.06-7.96(m,3H),7.62-7.34(m,6H),7.31-7.24(m,6H),6.83-6.81(m,4H),6.37-6.24(m,1H),5.55-5.30(m,2H),4.61-4.29(m,2H),4.21-3.82(m,5H),3.79(m,6H),3.52-3.36(m,3H),3.27-3.19(m,1H),2.44-2.19(m,1H),1.43-1.39(m,3H),1.10-1.05(m,6H),0.97-0.93(m,6H)
31P-NMR(202MHz,CDCl)δ150.0,149.6,149.3,148.3
IR(ATR)cm-1:2965,2931,1713,1686,1606,1508
HRMS(ESI-TOF):calcd. for C4856NaO11
[M+Na] 904.3550, found 904.3544
【0119】
実施例A3:ヌクレオチド誘導体3cの合成
アルゴン気流下、化合物2(150mg、0.194mmol)の無水アセトニトリル(2mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(40.5μL、0.232mmol)と文献(J.Org.Chem., 2019,84,9313-9321)に従って合成したカテコールモノベンゾエート(49.9mg、0.232mmol)を加えた。エチルチオテトラゾール(30.2mg、0.232mmol)を加えて、室温で2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧蒸留した。粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で精製し、ヌクレオチド誘導体3c(124mg、収率72%)を白色固体として得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl)δ8.19-8.12(m,2H),7.97,7.96(brs×2,1H),7.60-7.57(m,1H),7.47-7.42(m,3H),7.38-7.34(m,2H)7.29-7.18(m,8H),7.13-7.00(m,2H),6.81-6.79(m,4H),6.35-6.25(m,1H),4.66-4.59(m,1H),4.04-3.96(m,1H),3.78(s,6H),3.59-3.51(m,2H),3.41-3.14(m,2H),2.41-2.37(m,1H),2.21-2.16(m,1H),2.05-1.98(m,1H),1.43-1.40(m,3H),1.16-0.98(m,12H)
31P-NMR(202MHz,CDCl)δ147.6,147.5
IR(ATR)cm-1:2968,1686,1605,1508
HRMS(ESI-TOF):calcd. for C5054NaO10
[M+Na] 910.3445, found 910.3444
【0120】
実施例A4:ヌクレオチド誘導体3dの合成
(1)化合物5の合成
【0121】
【化15】
【0122】
合成原料となる化合物5は上記スキームに従って合成した。
1)化合物4:
文献(Synthesis,2021,53,4440-4448)に従って合成した。アルゴン気流下、1,4-ジヒドロ-1,4-エポキシナフタレン(3g,21mmol)のアセトニトリル溶液(40mL)に、50%N-メチルモルホリンオキシド水溶液(12.1mL、52mmol)と四酸化オスミウムの0.1M tert-ブタノール溶液(0.21mL、21μmol)を加えて、2時間加熱還流した。反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1mL)を加えてクエンチし、クロロホルムで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧蒸留した。残渣を真空乾燥することで化合物4(2.74g、収率74%)を白色固体として得た。
H-NMR(500MHz,DMSO-d)δ7.34-7.31(m,2H),7.18-7.15(m,2H),5.01(s,2H),5.03(s,2H),5.02(d,2H,J=4.5Hz),3.69(d,2H,J=4.0Hz)
13C-NMR(125MHz,DMSO-d)δ143.1,127.0,120.3,84.3,69.5
IR(ATR)cm-1:3374,3333,3007,2964,2929
HRMS(ESI-TOF):calcd for C1010NaO
[M+Na] 201.0528, found 201.0527
【0123】
2)化合物5:
アルゴン気流下、化合物4(356mg、2mmol)の無水ピリジン溶液(5mL)に、無水酢酸(0.2mL、2mmol)を加えて、室温で2日間撹拌した。反応液を溶媒蒸留し、粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で精製することで化合物5(249mg、収率57%)を白色固体として得た。
H-NMR(500MHz,CDCl)δ7.32-7.31(m,2H),7.24-7.22(m,2H),5.28(s,1H),5.20(s,1H),4.81(d,1H,J=5.5Hz),4.11(dd,1H,J=5.5,10.0Hz),2.36(d,1H,J=10.0Hz),2.20(s,3H)
13C-NMR(125MHz,CDCl)δ170.4,142.0,141.5,128.1,128.0,120.8,120.7,85.6,82.6,73.42,71.54,20.89
IR(ATR)cm-1:3419,1732,1462,1421,1376
HRMS(ESI-TOF):calcd for C1212NaO
[M+Na] 243.0633, found 243.0636
【0124】
(2)ヌクレオチド誘導体3dの合成
アルゴン気流下、化合物2(215mg、0.277mmol)の無水アセトニトリル(5mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(95μL、0.545mmol)と化合物5(100mg、0.454mmol)を加えた。エチルチオテトラゾール(71mg、0.545mmol)を加えて、室温で1.5時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧蒸留した。粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で精製し、ヌクレオチド誘導体3d(172mg、収率69%)を白色固体として得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl)δ7.99-7.96(m,1H),7.72-7.62(m,1H),7.41-7.36(m,2H),7.32-7.17(m,11H),6.85-6.78(m,4H),6.52-6.41(m,1H),5.37-5.20(m,2H),4.90-4.74(m,1H),4.65(m,1H),4.27-4.03(m,2H),3.78-3.76(m,6H),3.70-3.46(m,3H),3.35-3.29(m,1H),2.56-2.31(m,2H),2.13(s,1.5H),2.09,2.06,2.05(s×3,1.5H),1.42-1.34(m,3H),1.26-1.02(m,11H)
31P-NMR(202MHz,CDCl)δ148.4,149.6,150.1,150.3
IR(ATR)cm-1:2966,1740,1686,1607,1508
HRMS(ESI-TOF):calcd. for C495611
[M+Na] 916.3550, found 916.3552
【0125】
実施例A5:ヌクレオチド誘導体3dOMeの合成
アルゴン気流下、化合物2OMe(200mg、0.25mmol)の無水アセトニトリル(5mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(65μL、0.38mmol)と化合物5(83mg、0.38mmol)を加えた。エチルチオテトラゾール(49mg、0.38mmol)を加えて、室温で2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧蒸留した。粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1)で精製し、化合物3dOMe(102mg、収率45%)を白色固体として得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl)δ8.14(d,J=8.0Hz,0.25H),8.01(d,J=8.0Hz,0.25H),7.97-7.91(m,1.5H),7.39-7.15(m,12H),7.06-7.04(m,0.25H),6.85-6.79(m,4H),6.76(d,J=9.0Hz,0.5H),6.72(d,J=9.0Hz,0.5H),6.21(d,J=4.5Hz,0.25H),6.06(d,J=3.0Hz,0.25H),5.98(d,J=3.0Hz,0.25H),5.95(d,J=3.0Hz,0.25H),5.38(s,0.25H),5.34(s,0.25H),5.28(d,J=6.0Hz,0.5H),5.25-5.15(m,2H),4.90(d,J=6.0Hz,0.25H),4.81(d,J=6.0Hz,0.25H),4.78(d,J=6.0Hz,0.25H),4.67(d,J=6.0Hz,0.25H),4.61-4.56(m,0.25H),4.48-4.35(m,1H),4.27-4.17(m,1.5H),4.11-4.07(m,0.25H),4.02(t,J=3.5Hz,0.25H),3.89-3.88(m,0.25H),3.86-3.84(m,0.25H),3.80-3.75(m,6H),3.72(s,1H),3.70-3.60(m,3H),3.51-3.46(m,2H),3.44-3.38(m,1H),2.13,2.07,2.05,1.97(s×4,3H),1.29-1.16(m,8H),1.07-1.02(m,4H).
31P-NMR(202MHz,CDCl)δ152.7,152.2,151.6,149.4.
IR(ATR)cm-1:2967,1740,1686,1607,1508.
HRMS(ESI-TOF):calcd. for C495612NaP
[M+Na] 932.3499, found 932.3503.
【0126】
B.オリゴヌクレオチドの合成
オリゴヌクレオチドの合成は、GeneDesign nS-8II Oligonucleotides Synthesizer(ジーンデザイン社製)を用いて通常のホスホロアミダイト法に従って行った。合成スケールは0.2μmolとし、トリチルOFF条件で行った。ヌクレオチド誘導体3a-3d、3dОMe 市販のTのホスホロアミダイトは0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調製して用いた。活性化剤としては5-エチルチオ-1H-テトラゾール(0.25M無水アセトニトリル溶液)を用い、縮合時間はヌクレオチド誘導体3a-3d、3dОMeで10分間、市販のTのホスホロアミダイトでは25秒間とした。
【0127】
上記と同様にして、GiBu、ABz、CBz、CAc、2’-OMe-U、2’-OMe-GiPrPac、2’-OMe-APac、2’-OMe-CAcの各ホスホロアミダイト(いずれも市販品)を用いてオリゴヌクレオチドを合成した。各ホスホロアミダイトは、0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調製して用いた。また、各ホスホロアミダイトの縮合時間は、GiBu、ABz、CBz、CAcの各ホスホロアミダイトについては、25秒間、2’-OMe-U、2’-OMe-GiPrPac、2’-OMe-APac、2’-OMe-CAcの各ホスホロアミダイトについては、5分間とした。
本明細書中、Tはチミニル基、Uはウラシル基、GiBuはN-イソブチリルグアニル基、ABzはN-ベンゾイルアデニル基、CBzはN-イソブチリルシトシル基、CAcはN-アセチルシトシル基、APacはN-フェノキシアセチルアデニル基、およびGiPrPacはN-(4-イソプロピルフェノキシアセチル)グアニル基をそれぞれ示す(ここで、チミニル基、ウラシル基、シトシル基、アデニル基、およびグアニル基は、チミン一価基、ウラシル一価基、シトシン一価基、アデニン一価基、およびグアニン一価基をそれぞれ示す。また、2’-OMeは、リボースの2’位がOMe基であるヌクレオチドの修飾体であることを示す。
本明細書中、T、U、GiBu、ABz、CBz、CAc、APac、およびGiPrPacが、オリゴヌクレオチド配列を構成する核酸モノマーとして記載されている場合は、それぞれの当該核酸塩基がリボースに結合したヌクレオチドを意味する。
【0128】
実施例B1:CPG6a-dの合成
市販のCPG-T(Link Technologies製)を固相合成用支持体として用い、DNA自動合成装置によって、ヌクレオチド誘導体3a-dを3’末端の隣に導入したT-11merオリゴヌクレオチド(CPG6a-d)を合成した。
以下に、合成スキームの概要と合成したオリゴヌクレオチドの構造を示す。
【0129】
【化16】
【0130】
(上記式中、DMTrは前記と同義であり、CEは2-シアノエチル基、およびTはチミニル基を、それぞれ示す。)
【0131】
実施例B2:CPG7a-dの合成
市販のCPG-Tを固相合成用支持体として用い、DNA自動合成装置によって、化合物3a-dを3’末端から7番目に導入したT-16merオリゴヌクレオチド(CPG7a-d、CPG7dOMe)を合成した。
以下に、合成スキームの概要と合成したオリゴヌクレオチドの構造を示す。
【0132】
【化17】
【0133】
実施例B3:CPG8dの合成
市販のCPG-CAcを固相合成用支持体として用い、DNA自動合成装置によって、ヌクレオチド誘導体3dを3’末端から7番目に導入した18merオリゴヌクレオチド(CPG8d)を合成した。
以下に、合成スキームの概要と合成したオリゴヌクレオチドの構造を示す。
【0134】
【化18】
実施例B4:CPG9dの合成
市販のCPG-CAcを固相合成用支持体として用い、DNA自動合成装置によって、ヌクレオチド誘導体3dを3’末端から22番目に導入した42merオリゴヌクレオチド(CPG9d)を合成した。
以下に、合成スキームの概要と合成したオリゴヌクレオチドの構造を示す。
【0135】
【化19】
【0136】
実施例B5:CPG10dOMeの合成
市販のCPG-CAc(2’-OMe修飾体)を固相合成用支持体として用い、DNA自動合成装置によって、ヌクレオチド誘導体3dОMeを3’末端から22番目に導入した42merの2’-OMe修飾オリゴヌクレオチド(CPG10dОMe)を合成した。
以下に、合成スキームの概要と合成したオリゴヌクレオチドの構造を示す(式中、全てのヌクレオチドは2’-OMe修飾体である。)
【0137】
【化20】
【0138】
C.固相合成用支持体(CPG-T)からのオリゴヌクレオチド切り出し効率の評価
実施例C1:CPG6a-dからの切り出し
オリゴヌクレオチドの切り出しの概要を、以下に示す。
【0139】
【化21】
【0140】
(上記式中、CEおよびTは、それぞれ前記と同義であり、
10は、T-10merオリゴヌクレオチド(配列番号1)、および
は、チミジンをそれぞれ示す。)
【0141】
合成されたオリゴヌクレオチドの固相合成用支持体からの切り出しと、ヌクレオチド誘導体3a-dと3’末端側に隣接するチミジン残基とのリン酸エステル結合の切断(以下、「鎖切断」とも表記する)を、50mM炭酸カリウムのメタノール溶液による室温下4時間の処理(条件A)、または28%アンモニア水溶液による55℃における16時間の処理(条件B)により行った後に、溶液を逆相HPLCにより分析した。HPLC分析条件を、以下の表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
CPG6a-dからの切り出しの結果を示すHPLCチャートを図1に示す。
CPG6a-dからの条件Bでの切り出しでは、目的とするオリゴヌクレオチドに加えて、中間体や副生成物のピークが観測された。それらの構造はESI-MSにより同定したので、以下の表2に示した。
【0144】
【表2】
【0145】
実施例C2:CPG7a-d、CPG7dOMeからの切り出し
オリゴヌクレオチドの切り出しの概要を、以下に示す。
【0146】
【化22】
【0147】
合成されたオリゴヌクレオチドの固相合成用支持体からの切り出しと、ヌクレオチド誘導体3a-dと3’末端側に隣接するチミジン残基とのリン酸エステル結合の切断(以下、「鎖切断」とも表記する)を50mM炭酸カリウムのメタノール溶液による室温下4時間の処理(条件A)、または28%アンモニア水溶液による55℃における16時間の処理(条件B)により行った後に、溶液を逆相HPLCにより分析した。HPLC分析条件を以下の表3に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
CPG7a-d、CPG7dOMeからの切り出しの結果を示すHPLCチャートを図2に示す。
CPG7a-dからの条件Bでの切り出しでは、目的とするオリゴヌクレオチド(T10およびT)に加えて、中間体や副生成物のピークが観測された。それらの構造はESI-MSにより同定したので、以下の表4に示した。
【0150】
【表4】
【0151】
実施例C3:CPG8dからの切り出し
オリゴヌクレオチドの切り出しの概要を、以下に示す。
【0152】
【化23】
【0153】
合成されたオリゴヌクレオチドの固相合成用支持体からの切り出しと、ヌクレオチド誘導体3dと3’末端側に隣接するヌクレオチド残基とのリン酸エステル結合の切断(「鎖切断」)を、28%アンモニア水溶液による55℃における16時間の処理(条件B)により行った後に、溶液を逆相HPLCにより分析した。HPLC分析条件は、前記の表1に記載の通りである。
上記切り出しの結果を示すHPLCチャートを図3に示す。ほぼ目的のオリゴヌクレオチド(6mer(ON-6mer)と12mer(ON-12mer))(配列番号2)のみが観測された。
【0154】
実施例C4:CPG9dからの切り出し
オリゴヌクレオチドの切り出しの概要を、以下に示す。
【0155】
【化24】
【0156】
合成されたオリゴヌクレオチドの固相合成用支持体からの切り出しと、ヌクレオチド誘導体3dと3’末端側に隣接するヌクレオチド残基とのリン酸エステル結合の切断(「鎖切断」)を、28%アンモニア水溶液による55℃における24時間の処理(条件B’)により行った後に、溶液を逆相HPLCにより分析した。HPLC分析条件は、前記の表1に記載の通りである。
上記切り出しの結果を示すHPLCチャートを図4に示す。低温(20℃)下では二重鎖核酸、高温(60℃)下では、ON1(配列番号3)とON2(配列番号4)のそれぞれが観測された。
【0157】
実施例C5:CPG10dOMeからの切り出し
オリゴヌクレオチドの切り出しの概要を、以下に示す。
【0158】
【化25】
【0159】
合成されたオリゴヌクレオチドの固相合成用支持体からの切り出しと、ヌクレオチド誘導体3dと3’末端側に隣接するヌクレオチド残基とのリン酸エステル結合の切断(「鎖切断」)を、28%アンモニア水溶液による55℃における16時間の処理(条件B)により行った後に、溶液を逆相HPLCにより分析した。HPLC分析条件は、グラジエントが「B液:8―18%(30min)」である点を除いては前記の表1に記載の通りである。
上記切り出しの結果を示すHPLCチャートを図5に示す。低温(20℃)下では二重鎖核酸、高温(60℃)下では、ON1OMeとON2OMeのそれぞれが観測された(式中、全てのヌクレオチドは、2’-OMe修飾体である)。
【0160】
以上の結果から、リン酸部に安定な置換基として1,2-ジオール構造等を持つヌクレオチド誘導体(I)を利用することにより、ユニバーサルリンカーなどを利用せずにオリゴヌクレオチドを固相担体から切り出すことができることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0161】
以上詳述した通り、ヌクレオチド誘導体(I)を、オリゴヌクレオチドの固相合成において、オリゴヌクレオチド配列の3’末端以外の核酸残基として導入することにより、3’末端に加えて当該核酸残基の部位においてもオリゴヌクレオチド鎖を切断することができるため、1サイクルのオリゴヌクレオチドの固相合成から、2本以上のオリゴヌクレオチドを得ることができる。本発明により、かかる優れた機能を有するヌクレオチド誘導体(I)、および当該ヌクレオチド誘導体(I)を用いる効率的なオリゴヌクレオチドの合成方法が提供される。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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