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特開2023-90513有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置
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  • 特開-有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置 図1
  • 特開-有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090513
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20230101AFI20230622BHJP
   C02F 9/00 20230101ALI20230622BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20230622BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230622BHJP
【FI】
C02F1/72 Z
C02F9/04
C02F9/08
C02F9/14
C02F1/70 Z
C02F1/52 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205496
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】矢出 乃大
【テーマコード(参考)】
4D015
4D050
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BB09
4D015BB12
4D015CA09
4D015DA04
4D015DA05
4D015DA16
4D015DA24
4D015DA36
4D015DB01
4D015DC06
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA32
4D015FA01
4D015FA02
4D015FA15
4D015FA16
4D015FA24
4D015FA26
4D050AA12
4D050AB03
4D050AB45
4D050BA06
4D050BA07
4D050BB04
4D050BB06
4D050BC06
4D050CA15
4D050CA16
4D050CA17
(57)【要約】
【課題】有機性排水中の色度を、より少ない薬液量で、より短時間で効率良く除去することが可能な有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置を提供する。
【解決手段】有機性排水に対し、生物処理S1と、凝集剤を加えて酸性域下で凝集沈殿処理を行う凝集沈殿処理S2と、ろ過処理S3と、をこの順で行う前処理を行い、前処理後の有機性排水に、脱色剤を加えて脱色処理S4を行うことを特徴とする有機性排水の色度除去方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水に対し、生物処理と、凝集剤を加えて酸性域下で凝集沈殿処理を行う凝集沈殿処理と、ろ過処理と、をこの順で行う前処理を行い、前記前処理後の前記有機性排水に脱色剤を加えて脱色処理を行うことを特徴とする有機性排水の色度除去方法。
【請求項2】
前記凝集沈殿処理は、pHが5.0~6.5となる酸性域で処理することを含む請求項1に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項3】
前記脱色処理は、前記前処理後の前記有機性排水と前記脱色剤とを3~10分間接触させることを含む請求項1又は2に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項4】
前記脱色剤が、塩素系酸化剤であることを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項5】
前記脱色処理後の処理水に還元剤を添加し、前記脱色処理後の処理水に残留する前記塩素系酸化剤を除去することを含む請求項4に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項6】
前記前処理後の前記有機性排水の色度を測定し、前記色度の測定結果に基づいて、前記脱色剤の添加量を調整することを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項7】
前記有機性排水が、色度100~1000度、CODMn100mg/L以上、BOD200mg/L以上であることを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項8】
有機性排水を生物処理し、前記有機性排水中の有機物を除去する生物処理槽と、
前記生物処理槽で得られる生物処理水を酸性域下で凝集沈殿処理し、前記生物処理で生じる浮遊固形物を除去する凝集沈殿槽と、
前記凝集沈殿槽で得られる凝集沈殿処理水をろ過処理するろ過装置と、
ろ過装置で得られるろ過処理水に脱色剤を加えて脱色処理を行うことにより、前記ろ過処理水の色度除去を行う脱色処理槽と
を備える有機性排水の色度除去装置。
【請求項9】
前記脱色処理槽に流入するろ過処理水の色度を測定する色度測定装置と、
前記ろ過処理水の色度測定結果に基づいて、前記脱色剤の添加量を制御する制御装置と
を更に備える請求項8に記載の有機性排水の色度除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、河川等の水環境保全や安全性の観点から放流水の色度に対する要求が高くなっている。例えば、食品排水、飲料排水、し尿、浄化槽汚泥等は色度成分を含有することが多いため、放流の際には色度成分を除去することが求められている。色度成分を対象とした高度処理では、無機凝集剤を用いた凝集沈殿処理が多く用いられている。しかしながら、凝集沈殿処理では色度成分を除去するために多量の凝集剤を添加することがある。そのため、薬品コスト及び汚泥発生量の増大を招き、高い処理コストの要因となっている。さらに、凝集沈殿処理において色度成分が十分に除去されない場合には、活性炭吸着またはオゾン処理を行うことがあり、処理コストの更なる増大を招いている。
【0003】
有色飲料排水に対し、塩素系酸化剤を用いて処理する脱色方法が知られている(例えば、特開2004-358421号公報、特開2008-43919号公報、特開2011-136296号公報)。
【0004】
また、汚泥熱処理による分離液を活性処理して得られる処理水を凝集沈殿させ、オゾン酸化処理又はニッケル過酸化物との共存下で次亜塩素酸塩処理する脱色処理方法が知られている(特開昭55-152600号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-358421号公報
【特許文献2】特開2008-43919号公報
【特許文献3】特開2011-136296号公報
【特許文献4】特開昭55-152600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に記載された発明では、処理対象水中に難分解性有機物及び浮遊物質(SS)等が多く存在する場合には、処理対象水中の難分解性有機物及びSSが、塩素系酸化剤と反応し、脱色効果が十分に得られないことがある。脱色効果を十分に得るために、塩素系酸化剤を大量に投入すると、薬液量が増大する上、有害な塩素系有機化合物が処理水中に多く生成されてしまう。
【0007】
特許文献4に記載された発明では、下水汚泥熱処理分離液の活性汚泥処理水に塩化第2鉄を添加し、水酸化ナトリウムによりpHを7.0に調整して凝集沈殿処理を行い、更に有効塩素12%の次亜塩素酸ソーダ水溶液を1000~10000ppm添加し、触媒として過酸化ニッケル粉末を添加して脱色処理することが記載されている。しかしながら、特許文献4に記載された方法では、凝集沈殿処理の凝集状態や沈降分離条件によっては、水酸化鉄を含有する微細な汚泥フロックが処理水に残留する。これが次亜塩素酸と反応すると鉄由来の色度が残留し、色度除去効果が十分に得られない場合がある。また、特許文献4では、消費される次亜塩素酸塩量も非常に多いため、薬品コストの増大を招く。さらに、特許文献4に記載される処理では、短い反応時間では色度が安定しないため、反応時間を長く取る必要があり、処理が煩雑である。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、有機性排水中の色度を、より少ない薬液量でより短時間に効率良く除去することが可能な有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、有機性排水の色度除去のための脱色処理を行う前に、前処理として、生物処理と、酸性域下での凝集沈殿処理と、ろ過処理との3つの処理を行うことが有効であるとの知見を得た。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は一側面において、有機性排水に対し、生物処理と、凝集剤を加えて酸性域下で凝集沈殿処理を行う凝集沈殿処理と、ろ過処理と、をこの順で行う前処理を行い、前処理後の有機性排水に脱色剤を加えて脱色処理を行う有機性排水の色度除去方法である。
【0011】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法は一実施態様において、凝集沈殿処理は、pHが5.0~6.5となる酸性域で処理することを含む。
【0012】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法は別の一実施態様において、脱色処理は、前処理後の有機性排水と脱色剤とを3~10分間接触させることを含む。
【0013】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法は更に別の一実施態様において、脱色剤が、塩素系酸化剤であることを含む。
【0014】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法は更に別の一実施態様において、脱色処理後の処理水に還元剤を添加し、脱色処理後の処理水に残留する塩素系酸化剤を除去することを含む。
【0015】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法は更に別の一実施態様において、前処理後の有機性排水の色度を測定し、色度の測定結果に基づいて、脱色剤の添加量を調整することを含む。
【0016】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法は更に別の一実施態様において、有機性排水が、色度100~1000度、CODMn100mg/L以上、BOD200mg/L以上であることを含む。
【0017】
本発明の実施の形態は別の一側面において、有機性排水を生物処理し、有機性排水中の有機物を除去する生物処理槽と、生物処理槽で得られる生物処理水を酸性域下で凝集沈殿処理し、生物処理で生じる浮遊固形物を除去する凝集沈殿槽と、凝集沈殿槽で得られる凝集沈殿処理水をろ過処理するろ過装置と、ろ過装置で得られるろ過処理水に脱色剤を加えて脱色処理を行うことにより、ろ過処理水の色度除去を行う脱色処理槽とを備える有機性排水の処理装置である。
【0018】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の処理装置は一実施態様において、脱色処理槽に流入するろ過処理水の色度を測定する色度測定装置と、ろ過処理水の色度測定結果に基づいて、脱色剤の添加量を制御する制御装置とを更に備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有機性排水中の色度を、より少ない薬液量でより短時間に効率良く除去することが可能な有機性排水の色度除去方法及び色度除去装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成要素の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0022】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法は、図1に示すように、有機性排水に対し、生物処理S1と、凝集剤を加えて酸性域下で凝集沈殿処理を行う凝集沈殿処理S2と、ろ過処理S3と、をこの順で行う前処理を行い、前処理後の有機性排水に脱色剤を加えて脱色処理S4を行うことを含む。
【0023】
処理対象とする有機性排水としては、有色の有機物を含有する排水であれば限定されない。例えば、食品工場又は飲料工場等で得られる排水、染色排水、或いは、有機性廃棄物、汚泥、し尿、浄化槽汚泥、生ごみ等を含む排水等が本実施形態に係る有機性排水として利用できる。中でも、飲料の製造工程で発生する飲料排水、またはし尿を含む有機性排水等を本実施形態に係る有機性排水として用いた場合に色度除去効果が高く得られるものであり、更には、飲料排水を処理対象とすることが好ましい。
【0024】
以下に限定されるものではないが、処理対象とする有機性排水の色度は、典型的には100~1000度程度であり、より典型的には200~1000度、更に典型的には200~500度である。有機性排水のSSは、典型的には50~1000mg/Lであり、より典型的には50~500mg/L、更に典型的には50~300mg/Lである。有機性排水のCODMnは、典型的には100~1000mg/Lであり、より典型的には200~1000mg/L、更に典型的には200~550mg/Lである。有機性排水のS-CODMnは、典型的には100~1000mg/Lであり、より典型的には200~1000mg/L、更に典型的には200~500mg/Lである。有機性排水のBODは、典型的には200~1500mg/Lであり、より典型的には200~1000mg/Lである。有機性排水のS-BODは、典型的には200~1500mg/Lであり、より典型的には200~600mg/Lである。本実施形態において、有機性排水の色度、SS、CODMn、S-CODMn、BOD、S-BODはそれぞれ公知の下水試験方法に準じて測定することができる。
【0025】
(生物処理S1)
有機性排水はまず生物処理に導入され、微生物を用いた生物処理S1が行われる。生物処理S1では、有機性排水中に含まれる微生物が捕食可能な物質、基本的にはBODが除去されるが、BODの一部としてCOD及び色度成分も除去される。SSはBOD成分となる有機性SSとそれ以外の無機性SSとに分類されるが、生物処理S1では主として有機性SSが除去できる。有機性排水に生物処理S1を行うことによって、有機性排水中に含まれる生物的に分解可能なBODを確実に除去することができ、これによりCOD及び色度成分も除去できる。この処理を脱色処理の前処理として行うことにより、後述する脱色処理における脱色剤の薬液量を低減でき、より短時間に効率良く色度除去を行うことが可能となる。さらに、この生物処理S1において、生物反応槽内の微生物濃度を高くし、微生物の活性を高くすれば、微生物に捕食されていなかったCODや色度除去成分も更に微生物により捕食させることが可能になるためCOD及び色度成分の除去率も向上する。
【0026】
生物処理S1としては、例えば、活性汚泥法、生物膜法、嫌気性処理法、生物的硝化脱窒法、膜分離活性汚泥法、流動担体法等が利用できるが、中でも、活性汚泥法を利用することが、メンテナンスコスト及び効率的な処理の観点から好ましい。活性汚泥法を利用することで、BODをはじめ、BODの一部として含まれるCOD及び色度成分を固液分離により沈降汚泥として分離できる。このため、脱色処理における色度除去の負担が小さくなり、色度除去効果も高まる。
【0027】
生物処理S1として活性汚泥法を利用する場合には、曝気槽のMLSS濃度を高く維持できる膜分離活性汚泥法(MBR方式)、及び安定した沈降分離が得られる多段式活性汚泥法が好ましい。MLSS濃度を高く維持し、BOD-SS負荷を低く出来れば、原水中の分解し難いCOD及び色度成分も、馴致された微生物の活性化により徐々に分解されることから、処理水のCOD及び色度が大きく低下する。例えば、BOD-SS負荷を0.05~0.20kg/kg/d、好ましくは0.05~0.10kg/kg/dとすれば、原水中の分解しにくいCOD及び色度も一部分解することが可能となる。
【0028】
生物処理S1としては、流動担体方式もしくは流動担体と活性汚泥を併用する流動担体+活性汚泥のハイブリッド方式を用いることにより、安定したCOD及び色度除去を行うことができる。流動担体のみの場合、曝気槽に投入する担体充填率を20V%以上、好ましくは30V%とする。担体充填率が高いと曝気槽内の微生物濃度を高く維持することができることから、原水中の分解しにくいCOD及び色度成分の一部も馴致された微生物の活性化により、徐々に分解できる。流動担体+活性汚泥のハイブリッド方式の場合、活性汚泥となるMLSSを1500~3000mg/Lとすれば、曝気槽内の微生物濃度を十分に維持することが可能である。この場合、沈殿池による固液分離で処理水SSが低くなるので後段の凝集沈殿処理が安定する。また、上記いずれの方式で、曝気槽のBOD容積負荷を1.5kg/m3/d以下好ましくは1.0kg/m3/d以下とすれば、原水中の分解しにくいCOD及び色度成分の一部が馴致された微生物により分解可能となる。
【0029】
(凝集沈殿処理S2)
生物処理で得られた生物処理水は、以下に限定されるものではないが、典型的には色度が50~800度、より典型的には50~500度、SSが10~500mg/L、より典型的には10~300mg/L、更に典型的には10~100mg/L、CODMnが50~500mg/L、より典型的には50~250mg/L、S-CODMnが10~250mg/L、より典型的には20~100mg/L、BODが5~50mg/L、より典型的には5~10mg/L、S-BODが、1~10mg/L、より典型的には1~5mg/L程度に低減される。生物処理水中のBOD、特にS-BODを確実に低減しておくことで、後段の凝集沈殿処理、脱色処理における薬品注入量の低減や低濃度までの色度除去が可能になる。
【0030】
凝集沈殿処理S2では、pHが5.0~6.5、より好ましくは5.5~6.4、更に好ましくは6.0~6.3となる酸性域で凝集沈殿処理を行うことが好ましい。そして、生物処理水よりも低いpHで凝集沈殿処理を行うことが好ましく、さらには有機性排水よりも低いpHで凝集沈殿処理を行うことがより好ましい。凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム化合物、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系化合物等で構成される酸性の無機凝集剤を1又は複数種組み合わせて利用できる。
【0031】
凝集沈殿処理S2において酸性の無機凝集剤を用いると、生物処理水に凝集剤を添加することによってpHが低下する。一般的には、アルカリ剤を添加することにより、pH6.5~7程度の中性域に調整することが行われる。これに対し、本実施形態では、アルカリ剤を添加せずにもしくは少ない添加量で、凝集剤の添加により、凝集沈殿処理をpH5.0~6.5程度の酸性域、更には5.0以上6.5未満の弱酸性域で行う。これにより、生物処理水中に残存する難分解性有機物、SS及び色度をより効率良く低減することができる。その結果、後述する脱色処理における脱色剤の添加量を低減しつつ高度な色度除去が実現できる。
【0032】
凝集沈殿処理S2をpH5.0~6.5程度の酸性域で処理することにより、後述する脱色処理S4における脱色剤の添加量を低減しながら、脱色処理水中に残留する塩素化合物量も低減でき、環境中に排出される塩素化合物量も減らすことができる。また、脱色処理水中に残留する脱色剤に還元剤を添加して除去する場合においても、還元剤の添加量が少なくて済む。したがって、酸性域下での凝集沈殿処理S2を行うことによって各処理工程中の薬品使用量が相乗的・連鎖的に低減されていくため、脱色処理S4及びその後の還元処理S5における薬品使用量を大幅に低減しつつ高度な色度除去が実現できる。
【0033】
無機凝集剤の添加量は、典型的には100~1000mg/Lとすることができ、より典型的には100~500mg/Lとすることができる。特に、生物処理S1で得られる生物処理水中の浮遊SSと色度を効率良く除去するためには、凝集剤を50~300mg/L、より好ましくは50~150mg/L添加することが好ましい。
【0034】
無機凝集剤として、例えば、PAC、塩化アルミニウム、塩化鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等を用いることができる。しかし、凝集pHを5.0~6.5と弱酸性域で行う場合、無機凝集剤として鉄系の無機凝集剤を用いることが好ましく、良好な凝集処理が行える。また、塩化鉄よりポリ硫酸第二鉄のほうが添加後のpH低下が少なく、pH調整に必要なアルカリ添加が不要もしくは少なくなる。凝集フロックを形成する凝集沈殿槽にはカチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、及びノニオン系高分子凝集剤等の高分子凝集剤を併用してもよい。また、フロック形成助剤、消石灰や水酸化ナトリウム、ソーダ灰などのアルカリ剤、及び凝集助剤等を併用することで、微生物を含む生物処理由来の浮遊SSをより確実に除去することができる。
【0035】
凝集沈殿槽から抜き出した凝集沈殿汚泥は、その一部を凝集沈殿槽へ返送してもよい。これにより凝集沈殿槽の汚泥フロックを安定して大きく得ることができ、良好な固液分離が可能となる。また、高分子凝集剤の添加量も少なくできる。
【0036】
(ろ過処理S3)
凝集沈殿処理S2で得られた凝集沈殿処理水は、以下に限定されるものではないが、典型的には、pHが5.0~6.5、色度が50~300度、より典型的には50~200度、SSが2~15mg/L、より典型的には2~10mg/L、CODMnが10~100mg/L、より典型的には10~50mg/L、BODが2~10mg/L、より典型的には2~5mg/Lに低減される。本実施形態では、凝集沈殿処理水に対してろ過処理S3を行うことにより、凝集沈殿処理水中の微細汚泥フロック及び無機凝集剤由来の金属水酸化物を更に高度に分離除去することができる。
【0037】
上述の凝集沈殿処理S2においては、弱酸性で処理することによって、フロックの沈降速度が低下したり、一部の微細なフロックが浮上したりして、凝集沈殿処理水中の浮遊物質量が増えることがある。本実施形態によれば、凝集沈殿で得られた凝集沈殿処理水をろ過処理S3でろ過処理することにより、浮遊物質をより確実に除去することができるため、後述する脱色処理においてより安定した処理が可能となる。
【0038】
ろ過処理S3としては、砂ろ過処理、膜ろ過処理、繊維や高分子素材からなるろ材を使用したろ過装置等が利用できるが、中でも砂ろ過処理がメンテナンス性等の観点から好ましい。砂ろ過処理に用いられるろ材としては、例えば、有効径0.2~0.7mm、より好ましくは有効径0.4~0.7mmの珪砂、有効径2.0~5.0mm、より好ましくは有効径2.0~3.0mmのアンスラサイト等を用いた好気性ろ過装置も利用できる。ろ過層厚さは、例えば2,000~5,000mm、より好ましくは2,000~4,000mmとすることにより、凝集沈殿処理水中の微細汚泥フロック及び無機凝集剤由来の金属水酸化物を有効に除去できる。ろ過速度は例えば5~50m/dとすることができる。
【0039】
(脱色処理S4)
ろ過処理S3で得られたろ過処理水は、以下に限定されるものではないが、典型的にはpHが5.0~6.5、色度が50~300度、より典型的には50~150度、SSが10mg/L以下、より典型的には5mg/L以下、CODMnが5~100mg/L、より典型的には5~50mg/L、一実施態様では15mg/L以下に低減される。前段の凝集沈殿処理S2とろ過処理S3でCODを確実に低減しておくことで、後段の脱色処理における薬品注入量の低減や低濃度までの色度除去が可能になる。そのため、本実施形態では、生物処理S1、凝集沈殿処理S2及びろ過処理S3を経ることによって、BOD、CODMn、SSを十分に低減したろ過処理水に対して脱色剤を用いた脱色処理S4が行われる。
【0040】
脱色剤としては、塩素系酸化剤が挙げられる。塩素系酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カリウム、固形塩素剤等を用いることが出来る。一般的に安価で扱いやすい次亜塩素酸ナトリウムを使うことが好ましい。脱色反応時間は、ろ過処理水の色度や有機物濃度等の性状で決めることが好ましい。本実施形態では、前処理後の有機性排水と脱色剤とを3~10分間程度、更には3~5分程度の短時間で有効な脱色効果が得られるため、処理が容易である。
【0041】
脱色処理S4における反応pHは特に限定されない。脱色剤として次亜塩素酸塩を使用する場合は、脱色原水となるろ過処理水が弱酸性であるため、次亜塩素酸塩との酸化反応が効率よく行われることから、pH調整は行わなくてよい。pH調整を行うとしても、凝集沈殿処理S2と同等のpH域に調整することが好ましい。これにより、pH調整剤等の薬剤の使用量を低減しながら、次亜塩素酸塩の添加量も少なくできる。
【0042】
脱色剤の添加量は、典型的には、塩素換算値で5~50mg/Lとすることができ、より典型的には5~30mg/L、更に典型的には5~20mg/Lである。本実施形態によれば、生物処理S1、酸性域下での凝集沈殿処理S2、ろ過処理S3を経た、BOD、CODMn、SSが十分低減された有機性排水が脱色処理S4へ供給されるため、これらの成分による色度除去反応の阻害や脱色剤の消費を低減できるため、脱色剤の添加量を少なくすることができる。また、脱色剤では脱色困難な成分が有機性排水に含まれている場合でも、それらが、生物処理S1、酸性域下での凝集沈殿処理S2、ろ過処理S3で除去可能な色度成分であれば、脱色処理後に残留することがなく、低濃度までの色度除去が可能となる。
【0043】
また、酸性域下での凝集沈殿処理S2、ろ過処理S3を経たろ過処理水は弱酸性を示すため、脱色処理S4においては、脱色反応のための触媒を添加しなくても高度な処理が可能となる。脱色処理のpHに制限はないが、生物処理水よりも低いpHで脱色処理を行うことが好ましい。また、凝集沈殿処理水よりも高いpHで脱色処理を行うことがより好ましい。触媒を使用しても良いが、触媒を使用しないことで、触媒コストが不要となるばかりでなく、触媒成分の分離工程も不要となるため、処理が簡略化できる。また、触媒成分、特に固体触媒を収容するための場所も必要がなくなるため、その分、反応槽をコンパクト化できる。さらに、触媒、特に微細な固体触媒や固体触媒からの溶出成分、液体触媒の漏出に起因する有害成分の漏出の懸念もないため、より安全に処理を行うことができる。
【0044】
脱色剤の添加量は、脱色処理S4に流入するろ過処理水の色度に基づいて調整されることが好ましい。本実施形態では、所定の色度を有するろ過処理水に対し、脱色処理S4によって目標とする処理水の色度とするために必要な脱色剤添加量の関係を、予め試験等により求めておき、その関係に基づいて、脱色剤の添加量を増減することが好ましい。例えば、脱色処理S4に流入するろ過処理水の色度を色度計等で測定し、その測定結果に基づいて、脱色剤の添加量を制御することで、脱色剤の使用量を低減することができ、効率の良い処理が行える。
【0045】
例えば、脱色剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、脱色処理S4へ流入する流入原水の色度と、脱色処理S4後の処理水の目標色度の差分を「必要除去色度」とした場合に、この必要除去色度の1/5~1/10倍となる濃度(mg/L)の次亜塩素酸ナトリウムを流入原水へ供給するように、脱色剤の供給量を調整することが好ましい。例えば、脱色処理S4へ流入するろ過処理水の色度が200度で、処理水の目標色度を30度とする場合、必要除去色度は170度となる。この場合の次亜塩素酸ナトリウムの供給量を、必要除去色度の1/5~1/10倍となる量、即ち、17~34mg/Lとなるように供給すれば、処理水の目標色度を十分に達成できる。
【0046】
(還元処理S5)
脱色処理S4を経た処理水に対し、還元剤を添加し、脱色処理後の処理水に残留する塩素系酸化剤を除去する還元処理S5を行っても良い。還元剤としては塩素系酸化剤を除去する目的で利用できるものであれば特に限定されないが、例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩を使用することが好ましい。本実施形態によれば、脱色処理S4の後に還元処理S5が設けられることにより、脱色処理S4の原水であるろ過処理水の水質変動などにより一時的に脱色処理後の処理水に次亜塩素酸ナトリウムが残留したとしても、還元処理S5で完全に除去することができるため、放流水質に対する塩素の影響を極力小さくすることができる。
【0047】
還元剤の添加量は、脱色処理S4に流入するろ過処理水の色度及び脱色剤の供給量に基づいて調整されることが好ましい。例えば、還元剤として亜硫酸水素ナトリウムを用いる場合、その供給量(mg/L)は、次亜塩素酸ナトリウムの0.2~0.5倍程度で十分である。一方、脱色処理S4に流入するろ過処理水の色度が300度以上と高い場合には、脱色処理水に次亜塩素酸ナトリウムが多く残留する場合がある。よって、亜硫酸水素ナトリウムの添加量は、次亜塩素酸ナトリウム添加量の0.5~1.5倍、好ましくは0.5~1.0倍とすることが好ましい。
【0048】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去方法によれば、生物処理S1、酸性域下での凝集沈殿処理S2、ろ過処理S3及び脱色処理S4の4段階の処理を行うことで、有機性排水の色度をより確実に目標値まで低減させることができる。有機性排水は難分解性有機物及びSSの少ない排水だけでなく、色度100~1000度、CODMn100mg/L以上、BOD200~1000mg/L、SS50mg/L以上の比較的有機物の多い排水に対しても色度除去を行うことができるため、従来のように、酸化剤と還元剤を用いた脱色処理だけでは色度を除去できない有機性排水に対しても有効に色度除去を行うことができる。
【0049】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の色度除去装置は、図2に示すように、有機性排水を生物処理し、有機性排水中の有機物を除去する生物処理槽1と、生物処理槽1で得られる生物処理水を酸性域下で凝集沈殿処理し、生物処理で生じる浮遊固形物を除去する凝集沈殿槽2と、凝集沈殿槽2で得られる凝集沈殿処理水をろ過処理するろ過装置3と、ろ過装置3で得られるろ過処理水に脱色剤を加えて脱色処理を行うことにより、ろ過処理水の色度除去を行う脱色処理槽4とを備える。
【0050】
生物処理槽1は、活性汚泥法、生物膜法、嫌気性処理法、生物的硝化脱窒法、膜分離活性汚泥法、多段式活性汚泥法、流動担体法等を行うための反応槽であり、必要に応じて曝気装置等が設けられても良い。生物処理槽1内では、微生物を用いた生物処理が行われる。典型的には、生物処理槽1は、活性汚泥を内部収容した活性汚泥槽が用いられる。
【0051】
凝集沈殿槽2は、生物処理槽1から供給される生物処理水に凝集剤を添加して凝集沈殿処理するための反応槽であり、種々の凝集沈殿装置が利用できる。凝集沈殿槽2には凝集剤添加手段12が接続されており、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化鉄、ポリ硫酸第二鉄等酸性の無機凝集剤が、凝集剤添加手段12を介して凝集沈殿槽2へ添加される。
【0052】
ろ過装置3は、凝集沈殿槽2で得られた凝集沈殿処理水をろ過処理することにより、凝集沈殿処理水中に残存する浮遊物質をより除去するための反応槽であり、砂ろ過装置、膜ろ過装置等の種々のろ過装置が利用できる。典型的には、砂ろ過装置が好適である。ろ過装置3で得られるろ過処理水は脱色処理槽4へ送られる。
【0053】
脱色処理槽4には、脱色剤を添加するための脱色剤添加手段14が接続されている。脱色剤添加手段14により、脱色処理槽4内に脱色剤が添加されて脱色処理が行われる。ろ過装置3と脱色処理槽4との間の配管または脱色処理槽4の入口には、ろ過処理水の色度を測定するための色度計13が設けられる。色度計13としては、例えば、可視光範囲波長380~780nmの吸光度を測定することが可能な色度計を用いることで、低い色度でも高い精度で色度を測定することが可能となる。図2の例では、色度計13が、ろ過装置3と脱色処理槽4との間の配管に設けられる例を示しているが、脱色処理槽4の出口及び後述する還元槽5に更に色度計13を設定し、処理水の色度を測定できるようにしてもよい。
【0054】
還元槽5には、還元剤を添加するための還元剤添加手段15が接続されている。還元剤添加手段15により、還元槽5内に還元剤が添加されて、脱色処理後の脱色処理水に残留する塩素系酸化剤が除去される。
【0055】
制御装置6は、凝集剤添加手段12、色度計13、脱色剤添加手段14及び還元剤添加手段15に接続されており、色度計13による色度測定結果に基づいて、凝集剤、脱色剤、還元剤の添加率を制御するように構成される。例えば、制御装置6は、色度計13によって測定されたろ過処理水の色度と、脱色処理槽4から流出する処理水の目標色度との差分で表される必要除去色度を算出し、この必要除去色度の値の1/5~1/10倍となる濃度(mg/L)の次亜塩素酸ナトリウムを脱色剤として脱色処理槽4内に添加するように、脱色剤添加手段14を制御することができる。制御装置6が、脱色剤添加手段14からの脱色剤の供給制御を行うことにより、脱色処理槽4内に供給される脱色剤の量を必要な分だけ供給することができるため、薬剤使用量を低減しながら安定的な色度除去処理を行うことができる。
【0056】
制御装置6により還元剤添加手段15を制御する場合には、例えば、色度計13の色度測定結果に基づいて、色度が300度以上である場合には、制御装置6が、還元剤として添加する亜硫酸水素ナトリウムの添加量を、脱色剤として添加する次亜塩素酸ナトリウム添加量の0.5~1.5倍、好ましくは0.5~1.0倍となるように、還元剤添加手段15による還元剤の供給制御を行うことができる。色度計13の色度測定結果が300度未満である場合には、制御装置6が、還元剤として添加する亜硫酸水素ナトリウムの添加量を、脱色剤として添加する次亜塩素酸ナトリウムの0.2~0.5倍となるように、還元剤添加手段15による還元剤の供給制御を行うことができる。さらに、色度計13による色度測定の結果、ろ過処理水の色度が所定の値を超える場合は、制御装置6は、凝集剤の添加量が多くなるように、凝集剤添加手段12を制御し、ろ過処理水の色度が予め定められた値よりも小さい場合には、制御装置6は、凝集剤の添加量を徐々に減少させるように、凝集剤添加手段12を制御することもできる。
【0057】
本発明の実施の形態に係る有機性排水の処理装置によれば、脱色処理槽4の前段に、生物処理槽1と、凝集沈殿槽2と、ろ過装置3とを備える。生物処理槽1と、凝集沈殿槽2と、ろ過装置3により、予め有機性排水中に含まれる難分解性有機物及びSS等を除去し、脱色処理槽4における色度除去に最適な色度に調整することができるため、脱色処理槽4においては、有機性排水中の色度を、より少ない薬液量で、より短時間で効率良く除去することが可能となる。
【0058】
また、色度計13により、脱色処理槽4内へ導入される前のろ過処理水の色度をモニターすることができるため、有機性排水の性状変動が生じた場合でも、脱色剤及び還元剤の添加量を早期に最適な量に制御することができる。なお、凝集剤添加手段12、脱色剤添加手段14及び還元剤添加手段15による薬剤の添加量の制御は、上述の態様に限定されるものではなく、例えば、色度計13の測定結果が、予め設定された基準値よりも高いときには、脱色剤の添加量を徐々に増やし、予め設定された基準値以下の場合は、脱色剤の添加量を徐々に減らすように制御することも可能である。このように制御を行うことで、処理水の色度を常に目標値以下に維持し、過剰な薬剤注入を回避しながら、有機塩素化合物等の有害物質を除去した放流に適した処理水を安定的に得ることができる
【0059】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【実施例0060】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0061】
(実施例1)
実施例1では、図1に示すフローに準じて有機性排水の色度除去処理を行った。表1に記載の性状を有する原水(有機性飲料排水)を使用し、この原水に対して流動担体方式による生物処理を行って生物処理水を得て、この生物処理水に対し、酸性域下での凝集沈殿処理を行い、得られた凝集沈殿処理水を砂ろ過してろ過処理水を得た。この砂ろ過水を脱色処理槽に導入して、脱色剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加して脱色処理することによって色度除去処理を行った。
【0062】
表1に示すように、原水S-BOD及び色度がそれぞれ550mg/Lと750度であったのに対し、生物処理水のS-BOD及び色度がそれぞれ10mg/Lと400度となり、BOD除去に伴って色度が低下した。この生物処理水に対し、凝集pH6.0、ポリ鉄注入率100mg/Lの条件での凝沈処理(酸性凝集沈殿処理)を行ったところ、処理水SS:5mg/L、CODMn:17.0mg/Lに低下した。しかし、色度が120度と依然高かった。この酸性凝沈処理水を砂ろ過しても色度が100度と高かった。
【0063】
砂ろ過により得られたろ過処理水に対し、脱色槽で次亜塩素酸ナトリウム15mg/Lを添加し、5分攪拌して反応させたところ、処理水色度が20度に低下した。この時、処理水の残留塩素が5mg/Lであり、還元槽で亜硫酸水素ナトリウムを5mg/Lの添加で放流水の残留塩素が0.5mg/L未満となった。
【0064】
【表1】
【0065】
(比較例1)
図1の脱色処理及び還元処理を行わず、凝集沈殿処理をpH7.0の中性域で行うことにより色度除去した結果を表2に示す。比較例1では、実施例1と同じ生物処理水を用いた凝集沈殿処理においてポリ硫酸第二鉄注入率500mg/Lと多くした場合においても凝集沈殿処理水の色度は40度に留まり、砂ろ過後のろ過処理水でも色度が30度であった。比較例1と比べると、実施例1では、凝集沈殿処理でのポリ硫酸第二鉄注入率を比較例1のほぼ1/5に低下させることができ、汚泥発生量もほぼ1/5に低減できていることから、実施例1によれば、処理コストの低下が実現できることが分かる。
【0066】
【表2】
【0067】
(比較例2)
実施例1と同じ処理装置を用いて表3に示す条件で色度除去処理を行った。比較例2では、実施例1と同じポリ硫酸第二鉄注入率100mg/L時の処理水色度が200度となり、実施例1より高くなった。脱色処理では、ろ過処理水の色度を実施例と同じ20度とするためには、次亜塩素酸ナトリウム添加量が50mg/Lとなり、実施例の約3倍となった。このため、還元槽において、残留塩素還元用の亜硫酸水素ナトリウム添加量が30mg/Lとなり、実施例の6倍となった。
【0068】
【表3】
【符号の説明】
【0069】
1…生物処理槽
2…凝集沈殿槽
3…ろ過装置
4…脱色処理槽
5…還元槽
6…制御装置
12…凝集剤添加手段
13…色度計
14…脱色剤添加手段
15…還元剤添加手段
図1
図2