(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090536
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205530
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊吾
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081CC24
3H081DD22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体圧上昇時の過度な湾曲を防止可能であり且つ高い繰り返し耐久性を備えた流体圧アクチュエータを提供する。
【解決手段】流体圧アクチュエータ1は、膨張収縮可能なチューブ10と、チューブ10の外周面を覆うスリーブ20と、チューブ10の両端部11を封止する一対の封止部材30と、チューブ10内に配置された複数の中駒40,50を備える。複数の中駒のうち軸方向XAの両端の中駒40が一対の封止部材30に固定される。複数の中駒40,50は、流体の圧力で加圧されていない状態のチューブ10内で、隣接する中駒が互いに当接する拘束側57と、拘束側57に対向する位置で隣接する中駒が互いに揺動可能になる隙間61が生じる揺動側59を備える。複数の中駒40,50が、流体の圧力で加圧されている状態のチューブ10内においても拘束側57で互いに隣接する中駒同士を当接した状態に保持する拘束機構を更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって膨張および収縮するチューブと、
所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、
前記チューブの軸方向における両端部を封止する一対の封止部材と、
前記チューブの内側に、前記軸方向に隣接して配置された複数の中駒と、を備え、
前記複数の中駒は、前記流体の圧力で加圧されていない状態の前記チューブ内で、隣接する中駒が互いに当接する拘束側と、前記拘束側に対向する位置において前記隣接する中駒が互いに揺動可能になる隙間が生じる揺動側と、を備える構成にされており、
前記複数の中駒が、前記流体の圧力で加圧されている状態の前記チューブ内においても前記拘束側で互いに隣接する中駒同士を当接した状態に保持する拘束機構をさらに備える、流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記拘束機構は、互いに隣接する中駒の前記拘束側で連通するように各中駒に形成された第1貫通孔と、前記複数の中駒の前記軸方向における一端側から他端側に亘ってそれぞれの前記第1貫通孔に挿通されて前記拘束側における中駒同士を当接した状態に保持する拘束用繊維コードと、を備える請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記拘束機構の前記第1貫通孔は各中駒に複数形成されており、複数の前記第1貫通孔に複数の前記拘束用繊維コードが挿通される、請求項2に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記複数の中駒の前記軸方向における一端側から他端側に亘って互いに隣接する中駒の前記揺動側に形成された第2貫通孔と、前記複数の中駒の前記軸方向における一端側から他端側に亘ってそれぞれの前記第2貫通孔に挿通されて前記揺動側の前記隙間が、前記流体の圧力で加圧されていない状態よりも広がることを制限する逆反り防止コードをさらに備える、請求項1~3の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
互いに隣接する中駒の前記揺動側に形成された前記隙間にクッション部材が配置され、
前記クッション部材が、前記複数の中駒の姿勢を、前記チューブ内が前記流体の圧力で加圧されていない状態に復元させる、請求項1~4の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータに関し、具体的に、いわゆるマッキベン型の流体アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体または液体を用いてチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータとして、空気圧によって膨張、収縮するゴム製のチューブと、チューブの外周面を覆うスリーブとを有する構造(いわゆるマッキベン型)が広く用いられている。
【0003】
また、収縮時に、チューブ及びスリーブの軸方向に延びた状態から湾曲するマッキベン型の流体圧アクチュエータも知られている(特許文献1参照)。具体的には、流体圧アクチュエータのスリーブの内側に、軸方向の一端側から他端側に亘って設けられた板バネを備え、該板バネの作用によって湾曲可能な流体圧アクチュエータが知られている。このような湾曲するマッキベン型の流体圧アクチュエータでは、流体圧上昇時の過度な流体圧アクチュエータの湾曲が、スリーブの編角でチューブの湾曲を制限することによって抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の湾曲型流体圧アクチュエータでは、流体圧アクチュエータを湾曲させる板バネが、繰り返し湾曲させることにより徐々に塑性変形して復元力が低下する恐れがあった。
【0006】
本発明では、流体圧上昇時の過度な湾曲を防止可能であり、且つ繰り返し湾曲させた場合でも湾曲する前の状態への復元力が低下しにくい、即ち、高い繰り返し耐久性を備えた湾曲可能な流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る流体圧アクチュエータは、流体の圧力によって膨張および収縮するチューブと、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、前記チューブの軸方向における両端部を封止する一対の封止部材と、前記チューブの内側に、前記軸方向に隣接して配置された複数の中駒と、を備える。前記複数の中駒のうち前記軸方向の両端に配置された中駒が前記一対の封止部材に固定されている。前記複数の中駒は、前記流体の圧力で加圧されていない状態の前記チューブ内で、隣接する中駒が互いに当接する拘束側と、前記拘束側に対向する位置において前記隣接する中駒が互いに揺動可能になる隙間が生じる揺動側と、を備える構成にされている。前記複数の中駒が、前記流体の圧力で加圧されている状態の前記チューブ内においても前記拘束側で互いに隣接する中駒同士が当接した状態を保持する拘束機構をさらに備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、流体圧上昇時の過度な湾曲を防止可能であり、且つ繰り返し湾曲させた場合でも湾曲する前の状態への復元力が低下しにくい、即ち、高い繰り返し耐久性を備えた湾曲可能な流体圧アクチュエータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る流体圧アクチュエータの収縮前の状態を模式的に示す、軸方向に沿った断面図である。
【
図2】
図2は、前記流体圧アクチュエータの収縮・湾曲した状態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、前記流体圧アクチュエータの内部に配置される複数の中駒が互いに当接した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、湾曲前の前記複数の中駒を示す側面図である。
【
図5】
図5は、湾曲中の前記複数の中駒を示す側面図である。
【
図6】
図6は、前記複数の中駒のうち、封止部材に直接固定されない中駒の斜視図であり、
図6(a)が主に左側面を看取できる斜視図であり、
図6(b)が主に右側面を看取できる斜視図である。
【
図7】
図7は、前記複数の中駒のうち、封止部材に直接固定されない中駒を示す六面図と、側面図の上下方向に延びる中心線位置における断面図であり、
図7(a)が正面図、
図7(b)が背面図、
図7(c)が平面図、
図7(d)が底面図、
図7(e)が左側面図、
図7(f)が右側面図、
図7(g)が
図7(f)にVIIg-VIIg線で示された前記断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータの、収縮・湾曲した状態の断面図に、拘束側で中駒同士が当接した状態を保持する拘束用繊維コードと揺動側に配置された逆反り防止コードとを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0011】
(1)流体圧アクチュエータの全体概略構成
図1は、一実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の収縮する前の状態を模式的に示す、軸方向XAに沿った断面図である。
図2は、流体圧アクチュエータ1の収縮・湾曲した状態を模式的に示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、流体圧アクチュエータ1は、流体の圧力によって収縮および膨張するチューブ10と、所定方向(所定の編角)に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体でありチューブ10の外周面を覆うスリーブ20と、チューブ10の軸方向XAにおける両端部11を封止する一対の封止部材30と、を備える。
【0013】
実施形態の流体圧アクチュエータ1は、基本的な特性として、チューブ10内の流体圧を上昇させると、スリーブ20を形成する繊維コードの張力で拘束されつつ径方向で膨張し、流体圧アクチュエータ1の軸方向XAにおいて収縮する。そして、チューブ10内の流体圧を低下させると、軸方向XA及び径方向の寸法が復元する。このような形状変化によって、流体圧アクチュエータ1は、アクチュエータとしての機能を発揮する。
【0014】
このような流体圧アクチュエータ1は、いわゆるマッキベン(McKibben)型の流体圧アクチュエータであり、人工筋肉用として適用できることは勿論のこと、より高い能力( 収縮力) が要求されるロボットの体肢(上肢や下肢など)用としても好適に用い得る。一対の封止部材30には、連結対象となる部材などに連結される連結部(不図示)等が設けられてもよい。
【0015】
本実施形態では、このような基本的な特性を有するマッキベン型の流体圧アクチュエータを用いつつ、軸方向XAの圧縮を拘束し(規制または制限すると呼んでもよい、以下同)流体圧アクチュエータを湾曲変形させる部材として、チューブ10の内側で軸方向XAに隣接するように配置された複数の中駒40,50を備える。
【0016】
図1に示すように、複数の中駒40,50のうち軸方向XAの両端に配置された中駒40が一対の封止部材30に固定されている。また、
図1に示すように、複数の中駒40,50は、流体の圧力で加圧されていない状態のチューブ10内で、隣接する中駒40,50が互いに当接する拘束側57と、拘束側57に対向する位置において隣接する中駒40,50が互いに揺動可能になる隙間61が生じる揺動側59と、を備える構成にされている。
【0017】
チューブ10内が流体の圧力で加圧された状態では、一対の封止部材30間に配置された複数の中駒40,50の拘束側57では、隣接する中駒40,50同士が互いに当接しており複数の中駒40,50が封止部材30間に掛かるチューブ10による圧縮に抵抗するため、軸方向XAに沿ったチューブ10の収縮が阻害される。このとき、揺動側59では、隣接する中駒40,50同士が当接して隙間61がなくなる状態(隙間61が狭くなる状態)までは軸方向XAでチューブ10が収縮可能である。このため、揺動側59におけるチューブ10の長さが、拘束側57におけるチューブ10の長さよりも相対的に短くなって、
図2に示されるように、本実施形態の流体圧アクチュエータ1は、
図1に示した加圧前の軸方向XAに沿った状態から、揺動側59に湾曲した湾曲状態に変形可能である。
【0018】
流体圧アクチュエータ1の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、または水、鉱物油などの液体のどちらでもよい。流体圧アクチュエータ1は、チューブ10およびスリーブ20に高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有し得る。
【0019】
一対の封止部材30は、軸方向XAにおけるチューブ10の両端部11を封止する。具体的に、各封止部材30は、封止部材本体31及びかしめ部材33を含む。封止部材本体31は、チューブ10の軸方向XAの端部11を封止する。また、かしめ部材33は、チューブ10およびスリーブ20を封止部材本体31とともにかしめる。かしめ部材33の外周面には、治具によってかしめ部材33がかしめられた痕である圧痕が形成されてもよい。
【0020】
一対の封止部材30の少なくとも一方には、流体圧アクチュエータ1の駆動圧力源、具体的には、気体や液体のコンプレッサと接続されたホース(管路)を取り付けられる接続口が設けられている。この接続口に連通する流体通路を介して流体圧アクチュエータ1に流入、排出される流体によって、チューブ10内部の流体圧が制御され、流体圧アクチュエータ1のチューブ10が膨張、収縮する。
【0021】
(2)流体圧アクチュエータ1の構成
図1に示すように、流体圧アクチュエータ1は、上述したように、チューブ10、スリーブ20、一対の封止部材30、及び複数の中駒40,50によって構成される。
【0022】
チューブ10は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ10は、流体による膨張及び収縮を繰り返すため、ブチルゴムなど弾性材料によって構成される。また、流体圧アクチュエータ1を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0023】
スリーブ20は、円筒状であり、流体圧アクチュエータ1において、チューブ10の外周面を覆う。スリーブ20は、内部の流体圧を上昇させる前のチューブ10の軸方向(流体圧アクチュエータ1の軸方向)XAに対する所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体である。配向された繊維コードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ20は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ10の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0024】
なお、マッキベン型の流体圧アクチュエータ1は、スリーブ20に編み込まれた繊維コードの編角が54.7deg.に収束するように駆動するため、編角が54.7deg.より小さい場合は軸方向に収縮し、編角が54.7deg.より大きい場合は伸長する。
【0025】
本実施形態に用いられているスリーブ20は、伸縮前のスリーブ20の繊維コードの配向が、加圧前の流体圧アクチュエータ1の軸方向XAに対して54.7deg. よりも小さい所定の編角をなすように編み込まれている。即ち、内部の流体圧の変化に伴うチューブ10の変形を規制する繊維コードの配向は、チューブ10が膨張すると流体圧アクチュエータ1が収縮する所定方向(所定の編角)となるように配向されている。具体的に、繊維コードは、編角が15deg.~40deg.となるようにスリーブ20に編み込まれている。
【0026】
このスリーブ20を用いた流体圧アクチュエータ1は、駆動時のスリーブ20の編角が収縮前の編角よりも大きくなることで(54.7deg.に近づくことで)、チューブ10内の流体圧を上昇させた場合に収縮駆動する。
【0027】
スリーブ20を構成する繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維のコードでもよい。
【0028】
また、本実施形態では、
図1に示すように、複数の中駒40,50が、チューブ10の内側で軸方向XAに隣接するように配置されている。複数の中駒40,50のうち軸方向XAの両端に配置された中駒40が、一対の封止部材30に固定されている。そして、複数の中駒40,50は、加圧前のチューブ10内で、隣接する中駒40,50が軸方向XAに垂直な一側(拘束側57)で互いに当接しており、前記一側に対向する位置(揺動側59)で、隣接する中駒40,50が互いに揺動可能になる隙間61が形成されるように構成されている。
【0029】
複数の中駒40,50は、流体圧アクチュエータ1の加圧前の状態で、一方の封止部材30から他方の封止部材30まで拘束側57における隣接する中駒の当接が確保されるように、流体圧アクチュエータ1の軸方向XAの長さに合わせた数の中駒40,50がチューブ10内側に配置される。なお、チューブ10の軸方向XAの長さが短い場合、一対の封止部材30に固定される一対の中駒40の一方のみに隣接する、或いは一対の中駒40のいずれにも隣接しない中駒50を省略して、複数の中駒を二つの中駒40のみで形成してもよい。また、チューブ10の軸方向XAの長さが長い場合、中駒40間に配置する中駒50の数を増やす、或いは中駒50の長さを変更することで、中駒同士が拘束側57で当接した状態を確保してもよい。
【0030】
複数の中駒40,50の材料は、流体圧アクチュエータ1を加圧してチューブ10が軸方向XAに収縮駆動した場合に、特に拘束側57における圧縮応力に対して変形しない圧縮剛性を備える材料から選択されればよい。複数の中駒40,50の材質は、熱可塑性の合成樹脂等の樹脂製や硬質プラスチック製、或いは硬質発泡合成樹脂等の硬質発泡材料であってよく、ステンレス鋼などの金属製であってもよい。なお、流体圧アクチュエータ1を軽量化することが好ましい場合、樹脂製や硬質プラスチック製、或いは硬質発泡材料とすることが好ましい。
【0031】
本実施形態における複数の中駒40,50の具体的な形状について、
図3~7を参照して説明する。
【0032】
図3は、流体圧アクチュエータ1の内部に配置される複数の中駒40,50が互いに当接した状態を示す斜視図である。
図4は、湾曲前の複数の中駒40,50を示す側面図である。
図5は、湾曲後の複数の中駒40,50を示す側面図である。
図6は、複数の中駒40,50のうち、封止部材30に直接固定されない中駒50の斜視図であり、
図6(a)が主に左側面を看取できる斜視図である。
図6(b)は、主に右側面を看取できる斜視図である。
図7(a)~7(f)は、複数の中駒40,50のうち、封止部材30に直接固定されない中駒50を示す六面図である。
図7(g)は、
図7(f)にVIIg-VIIg線で示された前記断面図である。なお、
図7(a)~7(f)の六面図は、
図7(a)が正面図、
図7(b)が背面図、
図7(c)が平面図、
図7(d)が底面図、
図7(e)が左側面図、
図7(f)が右側面図である。
【0033】
図3,4は、チューブ10内を加圧する前の状態(流体圧アクチュエータ1が湾曲する前の状態、
図1の模式図で表された状態)で、流体圧アクチュエータ1のチューブ10内に配置された複数の中駒40,50を示している。各中駒40,50は、隣接する中駒同士が拘束側57で当接し、揺動側59に隙間61が生じた状態で配置されている。そして、
図4に示すように、複数の中駒40,50は、互いに隣接した状態で、チューブ10内側の空間の形状に合わせて軸方向XAを軸にした略円柱状になっている。
【0034】
図5は、チューブ10内を加圧した後の状態(流体圧アクチュエータ1が湾曲した後の状態、
図2の模式図で表された状態)で、流体圧アクチュエータ1のチューブ10内に配置された複数の中駒40,50を示している。この状態で、複数の中駒40,50は、拘束側57の当接状態を保持したまま揺動側59の隙間61がない状態、或いは隙間61が狭くなる状態まで複数の中駒40,50が湾曲している。
【0035】
次に、
図6(a)~6(b),
図7(a)~7(g)を参照して、封止部材30に直接固定されない中駒50(両端に配置された一対の中駒40以外の中駒)の具体的な構造について説明する。
【0036】
図6(a),7(g)に示すように、
図7(a)の正面図に対する中駒50の左側面には、拘束側57(
図7(a)の下側)に第1凸部63が設けられ、揺動側59(
図7(a)の上側)に第1凹部65が設けられる。そして、
図6(b),7(g)に示すように、中駒50の右側面には、揺動側59に第2凸部67が設けられ、拘束側57に第2凹部69が設けられる。
【0037】
複数の中駒50を互いに隣接して配置させた場合、拘束側57では、一方の中駒50の第1凸部63が他方の中駒50の第2凹部69に進入して第2凹部69に当接する。これに対して、揺動側59では、一方の中駒50の第1凹部65に他方の中駒50の第2凸部67が進入するが、第1凹部65には当接せず、隙間61が形成される。言い換えると、中駒50では、第1凸部63の軸方向XAにおける突出量が第2凹部69の凹み量以上の突出量となっていることにより、拘束側57で隣接する中駒50同士が当接する。そして、第2凸部67の軸方向XAにおける突出量が第1凹部65の凹み量未満の突出量となっていることにより、揺動側59で隣接する中駒50同士の間には隙間61が生じる。
【0038】
図7(b),7(c),7(g)等に示されるように、拘束側57、揺動側59において、第1凸部63,第1凹部65、第2凸部67,第2凹部69が形成される中央部の両側には、第1凹部65、第2凹部69が形成された部位の両側部から軸方向XAに突出する側壁71が設けられている。なお、側壁71の突出方向は、
図7(g)に示されるように、第1凹部65の側部に形成された側壁71は第1凸部63側、第2凹部69の側部に形成された側壁71は第2凸部67側にそれぞれ突出している。
【0039】
側壁71は、チューブ10内での各中駒40,50同士の軸方向XAを軸とする回転などの相対運動を拘束する。また、側壁71は、流体圧アクチュエータ1に、軸方向XAに垂直な応力が掛かった場合でも、隣接する第1凸部63或いは第2凸部67と当接することで流体圧アクチュエータ1の湾曲方向以外への屈曲を防止する部位である。なお、側壁71は、
図7(g)に示すように、中駒50の揺動あるいは流体圧アクチュエータ1の湾曲を阻害しない突出量に形成される。
【0040】
図7(e)、7(f)に示されるように、中駒50には、外周の円形状の中心位置に通気孔51が貫通形成されている。さらに、拘束側57に2つの第1貫通孔53が形成されており、揺動側59に第2貫通孔55が形成されている。
【0041】
第1貫通孔53は、
図6(a),7(a),7(b),7(d)に示されるように、一端が第1凸部63に開口しており、他端が、
図6(b)に示されるように、第2凹部69内に開口している。そして、第2貫通孔55は、
図6(a),7(g)に示されるように、一端が第1凹部65に開口しており、他端が、
図6(b),7(c),7(g)に示されるように、第2凸部67に開口している。
【0042】
図8は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の、収縮・湾曲した状態の断面図に、拘束側57で中駒40,50同士が当接した状態を保持する拘束用繊維コード80と、揺動側59に配置された逆反り防止コード90とを示した説明図である。
【0043】
図1,8に示すように、軸方向XAの両端に配置されて一対の封止部材30に固定されるように構成された中駒40には、封止部材30から流体を流入・流出可能な通気孔41が貫通形成されている。また、
図6(a)~6(b),
図7(a)~7(g)に示した中駒50と同様に、拘束側57に2つの第1貫通孔43が形成され、揺動側59に1つの第2貫通孔45が形成されている。
【0044】
本実施形態では、第2貫通孔45の封止部材30側の端部は、中駒40の揺動側59且つ封止部材30側の位置に形成された切欠き(位置決め部)47に開口している。なお、切り欠き47は、中駒40,50が湾曲可能な揺動側59を明示するアイマークとしても機能する。
【0045】
本実施形態では、
図1に示すように、互いに隣接する中駒40,50の揺動側に形成された隙間61には、ゴム製のクッション部材100が配置されている。クッション部材100は、流体圧アクチュエータ1の湾曲変形時に、中駒40,50の揺動を大幅に制限しないように圧縮可能であり、かつ流体圧アクチュエータ1のチューブ10内が除圧されると中駒40,50を
図1に示すような加圧前の姿勢まで復元する部材である。
【0046】
クッション部材100の材料は、ゴム製、発泡ウレタン製など、流体圧アクチュエータ1の湾曲変形時における中駒40,50の揺動を大幅に制限しない所望の圧縮性と、繰り返しの圧縮変形に対して中駒40,50を加圧前の状態まで復元可能な優れた復元性を示す材料が好適に用いられる。
【0047】
なお、クッション部材100が配置される隙間61には、クッション部材100が変形した状態で中駒40,50の湾曲変形が阻害されないように、圧縮変形したクッション部材100の形状を考慮したクリアランスを設けてもよい。
【0048】
中駒40を封止部材30に対して固定する構成は、通気孔41が封止部材30からの流体の流入・排出を阻害しないように連通する状態で封止部材30に対して固定されていればよい。
【0049】
例えば、
図8に示すように、封止部材30の外周に嵌合可能な軸方向XAの凹部を中駒40の軸方向端部に設けてもよいし、封止部材30の流体通路を流体の流路として必要な径よりも拡径した状態に形成し、中駒40に軸方向XAに突出する部位を形成して封止部材30の流体通路の内周面に嵌合するようにしてもよい。なお、中駒40の通気孔41は、封止部材30から流体を流入・排出させるために必須であるが、中駒50の通気孔51は、中駒40と中駒50とが隣接する位置からチューブ10内に流体が流入・排出可能であるため、中駒50に形成しなくてもよい。
【0050】
封止部材30は、流体圧アクチュエータ1の軸方向XAにおいて、チューブ10の端部11を封止する。封止部材30は、封止部材本体31及びかしめ部材33によって構成される。
【0051】
封止部材本体31は、管状のチューブ10に挿通される。具体的には、封止部材本体31は、チューブ10の内径よりも寸法が大きい頭部とチューブ10の内径に対して挿通可能な外径を備える胴体部とを有する。胴体部は、チューブ10に挿通される。
【0052】
封止部材本体31としては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0053】
かしめ部材33は、封止部材本体31に挿通されたチューブ10、チューブ10の外周面を覆うスリーブ20を、封止部材本体31とともにかしめる。具体的には、かしめ部材33は、チューブ10、及びスリーブ20の封止部材本体31が挿通された部分の外周面に設けられ、これらの部材を封止部材本体31にかしめる。
【0054】
かしめ部材33としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。かしめ用の治具によってかしめ部材33がかしめられると、かしめ部材33には、圧痕が形成され得る。
【0055】
なお、封止部材30は、封止部材本体31にスリーブ20を係止する係止リングを備えてもよい(不図示)。具体的に、スリーブ20は、係止リングを介して径方向外側に折り返されてもよい。
【0056】
係止リングの形状は、封止部材本体31と係合可能な形状であってよい。また、係止リングの材料としては、封止部材本体31と同様の金属、硬質プラスチック材料などの材料や、自然繊維(自然繊維の糸)、ゴム(例えばOリング)などの材料を用いることができる。
【0057】
(3)拘束機構43,53,80の構成
本実施形態の流体圧アクチュエータ1は、複数の中駒40,50が、流体の圧力で加圧されている状態のチューブ10内において、拘束側57で互いに隣接する中駒40,50同士が当接した状態に保持される拘束機構43,53,80をさらに備える。
【0058】
中駒40の第1貫通孔43,中駒50の第1貫通孔53は、隣接させた状態で互いに連通するように形成されている。中駒40の第2貫通孔45,中駒50の第2貫通孔55も同様に、隣接させた状態で互いに連通するように形成されている。
【0059】
拘束機構43,53,80は、このような、互いに隣接する中駒40,50の拘束側57で連通するように各中駒40,50に形成された第1貫通孔43,53と、複数の中駒40,50の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘ってそれぞれの第1貫通孔43,53に挿通されて、拘束側57における中駒40,50同士を当接した状態に保持する拘束用繊維コード80を備える。
【0060】
拘束機構の第1貫通孔43,53は各中駒40,50に複数形成されていてもよい。本実施形態では、
図6(a),6(b)等に示されるように、2つの第1貫通孔43,53がそれぞれの中駒40,50に形成されている。
【0061】
このような複数の第1貫通孔43,53それぞれが複数の中駒40,50の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って連通しており、各第1貫通孔43,53に拘束用繊維コード80が挿通される。
【0062】
本実施形態では、2本の拘束用繊維コード80が、複数の中駒40,50の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って挿通されている。拘束用繊維コード80の端部は、第1貫通孔43,53に挿通された状態で、第1貫通孔43の内部に進入しない構造にされている。拘束用繊維コード80は、第1貫通孔43,53に挿通された状態で、隣接する中駒40,50同士の相対的な運動を拘束する。さらに、2本の拘束用繊維コード80によって拘束されているため、チューブ10内での各中駒40,50同士の回転などの相対運動を拘束することができる。
【0063】
なお、拘束用繊維コード80の材料は、スリーブ20に用いられる繊維コードに使用し得る繊維コードの中から所望の引張り強度などを考慮して選択されればよい。
【0064】
複数の中駒40,50の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って互いに隣接する中駒40,50の揺動側59では、第2貫通孔45,55が複数の中駒40,50の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って連通している。そして、第2貫通孔45,55には、揺動側59の隙間61が、流体の圧力で加圧されていない状態よりも広がることを制限する逆反り防止コード90が挿通されている。
【0065】
逆反り防止コード90は、
図3,4等に示す湾曲していない状態で、両端に配置された中駒40に設けられた揺動側59の切り欠き47における第2貫通孔45の開口部間の距離と同等の長さを有し、
図8に示すように、端部が第2貫通孔45の内部に進入しない構造にされている。
【0066】
なお、
図8に示すように、流体アクチュエータ1が湾曲した状態では、逆反り防止コード90の端部が切り欠き47における第2貫通孔45の開口部から離れた状態、即ち逆反り防止コード90に引張り張力が発生しない状態になっている。そして、流体アクチュエータ1が延びた状態から、揺動側59の隙間61が流体の圧力で加圧されていない状態よりも広がるような方向に湾曲しようとした場合、逆反り防止コード90の端部が切り欠き47における第2貫通孔45の開口部に当接して逆反り防止コード90に引張り張力が発生し、流体アクチュエータ1の逆反りを防止する構成になっている。
【0067】
また、逆反り防止コード90の材料は、スリーブ20に用いられる繊維コードに使用し得る繊維コードの中から所望の引張り強度などを考慮して選択されればよい。
【0068】
(4)封止機構の構成
図1,2,8に示すように、チューブ10は、封止部材30の封止部材本体31の胴体部に挿通される。また、チューブ10およびチューブ10の外周面を覆うスリーブ20は、かしめ部材33によって、封止部材本体31にかしめられている。
【0069】
かしめ部材33は、封止部材本体31の胴体部の外径よりも大きく、胴体部に挿通された上で治具によってかしめられる。かしめ部材33は、チューブ10及びスリーブ20を封止部材本体31とともにかしめる。
【0070】
(5)作用・効果
流体圧アクチュエータ1は、以下のような特徴を有している。
【0071】
・湾曲角度が大きい(180度以上曲がる)
・発生力が大きい(40N程度)
・力の制御が容易(圧力に発生力が比例)
・構造がシンプル
・表面をコートすることによって、操作対象に直接触れることも可能
また、本実施形態の流体圧アクチュエータ1は、チューブ10の伸縮を拘束する中駒40,50の構造に基づく所定の湾曲形状に湾曲させることができる。このため、流体圧アクチュエータ1では、過度にチューブ10内の圧力が上昇した場合などでも、所定の湾曲形状を超えて流体圧アクチュエータ1が湾曲しすぎることがない。
【0072】
また、流体圧アクチュエータ1は繰り返し湾曲させた場合でも、圧縮剛性を備えた材料で形成された中駒40,50に拘束側57,揺動側59を設けることで流体圧アクチュエータ1を湾曲させるため、中駒40,50に変形が生じることがない。このため、流体圧アクチュエータ1は、繰り返し湾曲させた場合でも湾曲する前の状態への復元力が低下しにくくなっており、高い繰り返し耐久性を有する。
【0073】
また、拘束機構43,53,80によって、隣接する中駒40,50同士の相対運動が拘束されるため、例えば、過度にチューブ10内の圧力が上昇して封止部材30間に引張り応力が掛かった場合などでも、流体圧アクチュエータ1の湾曲構造が維持される。
【0074】
また、流体圧アクチュエータ1では、チューブ10内に中駒40,50が配置された状態で封止部材30によって封止されるため、チューブ10内の容積が、中駒40,50が配置されない場合のチューブ10内の容積よりも小さくなる。このため、本実施形態の流体圧アクチュエータ1では、中駒40,50を用いない場合よりもチューブ内の圧力を容易に上昇させることができ、流体圧アクチュエータ1の応答速度を向上させることができる。
【0075】
(6)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0076】
本実施形態では、
図3,4に示した、体圧アクチュエータ1の内部に配置される複数の中駒40,50が互いに当接した状態において、軸方向XAを軸にした略円柱状となっており、隣接する中駒40,50が互いに当接する拘束側57がチューブ10に対して常に同じ周方向の第1側に配置されており、揺動側59が前記第1側に対向する第2側に配置されていた。しかし、体圧アクチュエータ1の内部に配置される複数の中駒40,50における拘束側57および揺動側59のチューブ10に対する配置はこれに限定されるものでない。
【0077】
複数の中駒40,50における拘束側57および揺動側59は、チューブ10に対して常に同じ側にある必要はなく、拘束側57と揺動側59のチューブ10に対する位置が途中で入れ替わる構成であってもよい。
【0078】
具体的に、チューブ10の軸方向XAにおける一端から所定の位置までが第1側に拘束側57、第2側に揺動側59が配置され、前記所定の位置から他端まで第2側に拘束側57、第1側に揺動側59が配置されることで、チューブ10の湾曲時における変形がS字型になってもよい。
【0079】
このとき、中駒50は、例えば左側面の第1凸部63と第1凹部65との配置をそのままに、右側面の第2凹部69が形成された部位に第2凸部67が形成され、第2凸部67が形成されていた位置に第2凹部69を形成した中駒を配置し、さらに、該中駒内で第1貫通孔53が第1凸部63と第2凹部69とを繋ぐように貫通形成され、第2貫通孔55が第1凹部65と第2凸部67とを繋ぐように貫通形成される構成であってよい。
【0080】
また、本実施形態では、クッション部材100としてゴム製、発泡ウレタン製などのものが用いられているが、クッション部材100は、これに限定されるものではない。クッション部材100としては、チューブ10内部が加圧された状態で容易に圧縮変形可能であることで流体圧アクチュエータ1の湾曲性を確保し得る部材であり、かつチューブ10内部が除圧された状態で中駒40,50の姿勢を加圧前の状態に復元可能な部材が選択されればよい。例えば、クッション部材100としては、上記条件を満たす弾性率を備えたスプリングをクッション部材100として隙間61に配置してもよい。また、可能な限り大きな湾曲量が必要である場合、クッション部材100を省略した構成にしてもよい。
【0081】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0082】
1 流体圧アクチュエータ
10 チューブ
11 チューブの端部
20 スリーブ
30 封止部材
31 封止部材本体
33 かしめ部材
40 両端の中駒
41 通気孔
43 第1貫通孔
45 第2貫通孔
47 切り欠き(位置決め部)
50 中駒
51 通気孔
53 第1貫通孔
55 第2貫通孔
57 拘束側
59 揺動側
61 隙間
63 第1凸部
65 第1凹部
67 第2凸部
69 第2凹部
71 側壁
43,53,80 拘束機構
80 拘束用繊維コード
90 逆反り防止コード
100 クッション部材
XA 軸方向