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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090537
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205532
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
(57)【要約】
【課題】
軽量化、柔軟化し得る構成を備えた湾曲可能な流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【解決手段】
流体圧アクチュエータ10は、流体の圧力によって膨張および収縮するチューブ20と、所定方向θ1に配向された繊維コード31を編み込んだ伸縮性を有する構造体でありチューブ20の外周面を覆うスリーブ30と、チューブ20の軸方向XAにおける端部21を封止する封止部材40と、チューブ20の周方向の一部に軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って設けられチューブ20の周方向の一部における軸方向に沿った伸長を拘束する拘束部材50と、を備える。軸方向XAにチューブ20が延びた状態で、スリーブ30の繊維コード31が配向する所定方向θ1が、チューブ20が膨張すると伸長する配向にされている。拘束部材50は、スリーブ30に編み込まれて一体化される、又はスリーブ30とチューブ20との間に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって膨張および収縮するチューブと、
所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、
前記チューブの軸方向における端部を封止する封止部材と、
を備え、
前記スリーブの前記繊維コードが配向する前記所定方向が、前記チューブが膨張すると伸長する配向にされており、
前記チューブの周方向の一部に前記軸方向における一端側から他端側に亘って設けられ、前記チューブの前記周方向の一部における前記軸方向に沿った伸長を拘束する拘束部材をさらに備える流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
記拘束部材は、前記スリーブに編み込まれて一体化された請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
記拘束部材は、前記スリーブと前記チューブとの間に配置された請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記拘束部材が拘束用繊維コードを含む、請求項2または3に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記拘束部材が互いに交差する複数の前記拘束用繊維コードを含む請求項4に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータに関し、具体的に、いわゆるマッキベン型の流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体または液体を用いてチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータとして、空気圧によって膨張、収縮するゴム製のチューブと、チューブの外周面を覆うスリーブとを有する構造(いわゆるマッキベン型)が広く用いられている。
【0003】
また、チューブ及びスリーブの軸方向ではなく、収縮時に湾曲するマッキベン型の流体圧アクチュエータも知られている(特許文献1参照)。具体的には、流体圧アクチュエータのスリーブの内側に、収縮時の圧縮に対して抵抗してチューブの軸方向から変形可能な拘束部材を備え、該拘束部材の作用によって湾曲する流体圧アクチュエータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-88999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の湾曲する流体圧アクチュエータでは、拘束部材として、収縮時の圧縮に対して抵抗可能な剛性を備えた部材が用いられる。このため、拘束部材の柔軟性をさらに高めて、湾曲する流体圧アクチュエータをロボットハンド(グリッパ)等に用いた場合に軟らかい、或いは軽くて変形しやすい操作対象を破壊、変形させることなく優しく掴み得る柔軟性を湾曲状態で確保することは容易でなかった。
【0006】
本発明では、ロボットハンド(グリッパ)等に用いた場合に、軟らかい或いは軽くて変形しやすい操作対象を優しく掴む作業に用い得る柔軟性を湾曲状態で確保できる構成を備えた湾曲する流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る流体圧アクチュエータは、流体の圧力によって膨張および収縮するチューブと、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、前記チューブの軸方向における端部を封止する封止部材と、前記チューブの周方向の一部に前記軸方向における一端側から他端側に亘って設けられ、前記チューブの前記周方向の一部における前記軸方向に沿った伸長を拘束する拘束部材と、を備える。前記スリーブの前記繊維コードが配向する前記所定方向が、前記チューブが膨張すると伸長する配向にされている。前記拘束部材は、前記スリーブに編み込まれて一体化されている。又は、前記拘束部材は、前記スリーブと前記チューブとの間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、ロボットハンド(グリッパ)等に用いた場合に、軟らかい或いは軽くて変形しやすい操作対象を優しく掴む作業に用い得る柔軟性を湾曲状態で確保できる構成を備えた湾曲可能な流体圧アクチュエータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、一実施形態に係る流体圧アクチュエータの分解斜視図であり、図1(b)は、スリーブにおける拘束部材を編み込んで一体化した部分を拡大した拡大斜視図である。
図2図2は、流体圧アクチュエータに用いるスリーブの展開図であり、図2(a)は流体圧アクチュエータが伸長する前の状態を示す図であり、図2(b)は流体圧アクチュエータが伸長した状態を示す図である。
図3図3は、流体圧アクチュエータの軸方向に沿った断面図であり、図3(a)は、流体圧アクチュエータが流体圧によって湾曲する前の状態を示す断面図であり、図3(b)は、流体圧アクチュエータに流体圧をかけて湾曲させた後の状態を示す断面図である。
図4図4は、変更例に係る流体圧アクチュエータの封止部材近傍のかしめ前の状態を拡大した分解断面図である。
図5図5は、変更例に係る流体圧アクチュエータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0011】
(1)流体圧アクチュエータの全体概略構成
図1(a)は、一実施形態に係る流体圧アクチュエータの分解斜視図である。図1(b)は、スリーブにおける拘束部材を編み込んで一体化した部分を拡大した拡大斜視図である。
【0012】
図1(a)に示すように、流体圧アクチュエータ10は、流体の圧力によって膨張および収縮するチューブ20と、所定方向(所定の編角)θ1に配向された繊維コード31を編み込んだ伸縮性を有する構造体でありチューブ20の外周面を覆うスリーブ30と、チューブ20の軸方向XAにおける両端部21を封止する一対の封止部材40と、を備える。
【0013】
実施形態の流体圧アクチュエータ10は、基本的な特性として、チューブ20内の流体圧を上昇させると、スリーブ30を形成する繊維コード31の張力で径方向の膨張を制限しつつ流体圧アクチュエータ10の軸方向XAに伸長する。そして、チューブ20内の流体圧を低下させると、軸方向XAの寸法が復元される。このような形状変化によって、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータとしての機能を発揮する。
【0014】
このような流体圧アクチュエータ10は、いわゆるマッキベン(McKibben)型の流体圧アクチュエータであり、人工筋肉用などとして好適に用い得る。一対の封止部材40には、連結対象となる部材などに連結される連結部(不図示)等が設けられてもよい。
【0015】
本実施形態では、図1(a)、1(b)に示すように、このような基本的な特性を有するマッキベン型の流体圧アクチュエータを用いつつ、軸方向XAに沿った伸長を拘束する(規制または制限すると呼んでもよい、以下同)拘束部材50を、流体圧アクチュエータ10の周方向の一部に設けている。この構成により、流体圧アクチュエータ10は、軸方向XAに直交する直交方向、つまり、軸方向XAから湾曲(カール)することができる。
【0016】
流体圧アクチュエータ10の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、または水、鉱物油などの液体のどちらでもよい。流体圧アクチュエータ10は、チューブ20およびスリーブ30に高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有し得る。また、流体圧アクチュエータ10を、空気などの気体等による低い圧力で駆動可能な肉厚或いは材質のチューブ20を用いた場合、流体圧アクチュエータ10の柔軟性が確保され、軟らかい或いは軽くて変形しやすい操作対象を優しく掴む作業に好適に用い得る。
【0017】
一対の封止部材40は、軸方向XAにおけるチューブ20の両端部21を封止する。具体的に、各封止部材40は、封止部材本体41及びかしめ部材43を含む。封止部材本体41は、チューブ20の軸方向XAの端部21を封止する。また、かしめ部材43は、チューブ20およびスリーブ30を封止部材本体41とともにかしめる。かしめ部材43の外周面には、治具によってかしめ部材43がかしめられた痕である圧痕が形成されてもよい。
【0018】
一対の封止部材40の少なくとも一方には、流体圧アクチュエータ10の駆動圧力源、具体的には、気体や液体のコンプレッサと接続されたホース(管路)を取り付けられる接続口が、封止部材本体41に設けられている。この接続口に連通する流体通路45を介して流体圧アクチュエータ10に流入、排出される流体によって、チューブ20内部の流体圧が制御され、流体圧アクチュエータ10のチューブ20が膨張、収縮する。
【0019】
(2)流体圧アクチュエータ10の構成
図1(a)に示すように、流体圧アクチュエータ10は、上述したように、チューブ20、スリーブ30、一対の封止部材40、及び拘束部材50によって構成される。
【0020】
チューブ20は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ20は、流体による膨張及び収縮を繰り返すため、ブチルゴムなど弾性材料によって構成される。また、流体圧アクチュエータ10を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0021】
図2は、流体圧アクチュエータ10に用いるスリーブ30の展開図であり、図2(a)は、流体圧アクチュエータ10が伸長する前の状態を示す展開図である。図2(b)は、流体圧アクチュエータ10が伸長した状態を示す展開図である。
【0022】
図1(a)に示すように、スリーブ30は、円筒状であり、流体圧アクチュエータ10において、チューブ20の外周面を覆う。図2(a)に示すように、スリーブ30は、内部の流体圧を上昇させる前のチューブ20の軸方向(流体圧アクチュエータ10の軸方向)XAに対する所定方向(所定の編角)θ1に配向された繊維コード31を編み込んだ伸縮性を有する構造体である。配向された繊維コード31が交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ30は、このような形状を有することによって、図2(a),2(b)に示されるようにパンタグラフ変形し、チューブ20の膨張及び収縮を規制しつつ追従する。
【0023】
なお、マッキベン型の流体圧アクチュエータ10は、スリーブ30に編み込まれた繊維コード31の編角が54.7deg.に収束するように駆動するため、編角が54.7deg.より小さい場合は軸方向に収縮し、編角が54.7deg.より大きい場合は軸方向に伸長する。
【0024】
本実施形態に用いられているスリーブ30は、図2(a)に示すように、伸縮前のスリーブ30の繊維コード31の配向が、加圧前の流体圧アクチュエータ10の軸方向XAに対して54.7deg. よりも大きな所定の編角θ1をなすように編まれている。つまり、内部の流体圧の変化に伴うチューブ20の変形を規制する繊維コード31の配向は、チューブ20が膨張すると流体圧アクチュエータ10が伸長する所定方向(所定の編角)θ1となるように配向されている。具体的に、繊維コード31は、編角θ1が60deg.~80deg. となるようにスリーブ30に編まれている。
【0025】
図2(b)に示すように、このスリーブ30を用いた流体圧アクチュエータ10は、駆動時のスリーブ30の編角θ2が伸長前の編角θ1よりも小さくなることで(54.7deg.に近づくことで)、チューブ20内の流体圧を上昇させた場合に伸長駆動する。
【0026】
スリーブ30を構成する繊維コード31としては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維のコードでもよい。
【0027】
また、本実施形態では、図1(a)に示すように、拘束部材50が、チューブ20の周方向の一部に、軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って設けられている。拘束部材50は、チューブ20、スリーブ30とともに両端が封止部材40にかしめられている。
【0028】
拘束部材50は、流体圧アクチュエータ10の伸長駆動に対して抵抗し得る引張り強度を備えた部材である。
【0029】
チューブ20内の流体圧を高めて流体圧アクチュエータ10を伸長駆動した場合、拘束部材50は両端が封止部材40にかしめられているため、拘束部材50が、一対の封止部材40間の距離が伸びる方向に働くチューブ20が発生させた力に対して抵抗する。この作用により、チューブ20の外周上の、拘束部材50が配置された一部の周方向位置ではチューブ20の膨張が妨げられ、流体圧アクチュエータ10の伸長が拘束される。この結果、流体圧アクチュエータ10は、軸方向XAに沿って伸長せずに軸方向XAから湾曲(カール)する。
【0030】
本実施形態において、拘束部材50は、図1(b)に示すように、スリーブ30に編み込まれて一体化された拘束用繊維コード51で構成されている。そして、拘束部材50に含まれる拘束用繊維コード51は、スリーブ30に一体化された状態で封止部材40にかしめられている。なお、スリーブ30と一体化された状態で、拘束用繊維コード51は、スリーブ30の繊維コード31同士が交差する位置で繊維コード31と交差するように、スリーブ30に編み込まれている。
【0031】
拘束用繊維コード51は、流体圧アクチュエータ10のサイズ、及び必要とされる発生力(流体圧アクチュエータ10の伸長駆動に対して抵抗し得る引張り強度)などに応じて選択されればよく、特に限定されない。また、拘束用繊維コード51の材料についても特に限定されない。典型的には、スリーブ30を構成する繊維コード31に使用し得る繊維コードの中から所望の引張り強度などを考慮して、拘束用繊維コード51の材料が選択されればよい。つまり、拘束用繊維コード51は、繊維コード31と同じ材料の繊維コードであってよく、繊維コード31と異なる繊維コードが選択されてもよい。
【0032】
封止部材40は、流体圧アクチュエータ10の軸方向XAにおいて、チューブ20の端部21を封止する。封止部材40は、封止部材本体41及びかしめ部材43によって構成される。
【0033】
封止部材本体41は、管状のチューブ20に挿通される。具体的には、封止部材本体41は、チューブ20の内径よりも寸法が大きい頭部とチューブ20の内径に対して挿通可能な外径を備える胴体部とを有する。胴体部は、チューブ20に挿通される。
【0034】
封止部材本体41としては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0035】
かしめ部材43は、封止部材本体41に挿通されたチューブ20、チューブ20の外周面を覆うスリーブ30、及びスリーブに編み込まれて一体化された拘束部材50を、封止部材本体41とともにかしめる。具体的には、かしめ部材43は、チューブ20、スリーブ30、及び拘束部材50の封止部材本体41が挿通された部分の外周面に設けられ、これらの部材を封止部材本体41にかしめる。
【0036】
かしめ部材43としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。かしめ用の治具によってかしめ部材43がかしめられると、かしめ部材43には、圧痕が形成され得る。
【0037】
なお、封止部材40は、封止部材本体41にスリーブ30および拘束部材50を係止する係止リングを備えてもよい(不図示)。具体的に、スリーブ30および拘束部材50は、係止リングを介して径方向外側に折り返されてもよい。
【0038】
係止リングの形状は、封止部材本体41と係合可能な形状であってよい。また、係止リングの材料としては、封止部材本体41と同様の金属、硬質プラスチック材料などの材料や、自然繊維( 自然繊維の糸)、ゴム(例えばOリング)などの材料を用いることができる。
【0039】
(3)封止機構の構成
図3は、流体圧アクチュエータの軸方向に沿った断面図である。具体的に、図3(a)は、流体圧アクチュエータが流体圧によって湾曲する前の状態を示す断面図である。図3(b)は、流体圧アクチュエータに流体圧をかけて湾曲させた後の状態を示す断面図である。
【0040】
図3(a)に示すように、チューブ20は、封止部材本体41の胴体部に挿通される。また、チューブ20、チューブ20の外周面を覆うスリーブ30、およびスリーブ30に編み込まれた拘束部材50は、かしめ部材43によって、封止部材本体41にかしめられている。
【0041】
また、拘束部材50は、チューブ20の周方向における一部のみに設けられる。
【0042】
拘束部材50は、チューブ20及びスリーブ30の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って設けられる。具体的には、拘束部材50は、チューブ20の軸方向XAの一端側の封止部材40から他端側の封止部材40に亘って設けられてもよい。
【0043】
但し、拘束部材50は、必ずしも完全に一端側の封止部材40から他端側の封止部材40に亘って設けられていなくてもよい。封止部材40の何れか一方(特に、湾曲時に自由端となる可能性が高い封止部材40側)には、拘束部材50が延在していなくてもよい。例えば、拘束部材50の、封止部材40まで延在しない側の端部は、例えば他端側のチューブ20やスリーブ30の一部などに固定されてもよい。
【0044】
かしめ部材43は、封止部材本体41の胴体部の外径よりも大きく、胴体部に挿通された上で治具によってかしめられる。かしめ部材43は、チューブ20及びスリーブ30を封止部材本体41とともにかしめる。
【0045】
(4)流体圧アクチュエータ10の湾曲挙動
図3(a)、3(b)は、流体圧アクチュエータ10の挙動の説明図である。図3(a)、3(b)に示されている流体圧アクチュエータ10は、図中左側に配置された一端側の封止部材40側が固定された固定端であり、図中右側に配置された他端側の封止部材40が自由に移動できる状態にある自由端である。
【0046】
上述したように、流体圧アクチュエータ10の内部に流体が流入するとチューブ20内の流体圧が上がり、スリーブ30によって軸方向XAに垂直な方向への膨張が拘束(規制)されることで、流体圧アクチュエータ10は軸方向XAに伸長する。
【0047】
このとき、スリーブ30で外周面が覆われたチューブ20の、拘束部材50が配置されている周方向の一部(図3(a),3(b)中の上側)ではチューブ20の伸長が阻害される。これに対して、チューブ20の周方向の一部に対向する部位(図3(a),3(b)中の下側)では、チューブ20が伸長する。このことにより、膨張収縮可能なチューブ20では、拘束部材50が配置された図3(a),3(b)の上側位置における長さが、これに対向する位置(図3(a),3(b)の下側)の長さよりも相対的に短くなって、図3(b)に示されるように、自由端側(図3(b)の右側)は、拘束部材50が配置された側(図3(b)の上側)に湾曲する。
【0048】
(5)作用・効果
流体圧アクチュエータ10は、以下のような特徴を有している。
【0049】
・湾曲角度が大きい(180度以上曲がる)
・力の制御が容易(圧力に発生力が比例)
・構造がシンプル
・表面をコートすることによって、操作対象に直接触れることも可能
また、流体圧アクチュエータ10では、チューブ20の伸縮を拘束する拘束部材50が湾曲状態の内側に位置している。このため、湾曲過程で、湾曲内側のスリーブ30およびチューブ20が伸縮しない。これにより、ロボットハンド等に本実施形態の流体圧アクチュエータ10を用いた場合、湾曲過程で操作対象と流体圧アクチュエータ10との接触点がチューブ20の伸縮によって滑ることがなくなり、軟らかい或いは軽くて変形しやすい操作対象を破壊、変形させることなく優しく掴み得る。
【0050】
また、本実施形態の流体圧アクチュエータ10のように拘束部材50が拘束用繊維コード51で構成された場合、チューブ20,スリーブ30、拘束部材50という流体圧アクチュエータ10が変形する部位が塑性変形し難い部材で構成されるため、流体圧アクチュエータ10は、動作中などに他の剛体に接触した場合でも塑性変形しない柔軟性を有する。さらに、チューブ20,スリーブ30、拘束部材50という流体圧アクチュエータ10が変形する部位に剛性が高い部材が用いられていないため、軟らかい或いは軽くて変形しやすい操作対象を破壊、変形させることなく優しく掴む機能がさらに向上する。
【0051】
また、本実施形態の流体圧アクチュエータ10のように、軸方向に配向する拘束部材50がスリーブ30に編み込まれて一体化されている場合、スリーブ30と拘束部材50とが一体的な挙動を示すようになり、流体圧アクチュエータ10の湾曲状態の制御が容易になる。
【0052】
(6)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0053】
本実施形態では、拘束部材50がスリーブ30に編み込まれて一体化されていたが、拘束部材はこの構成に限定されるものでない。具体的に、拘束部材とスリーブとは別体であってもよい。ただし、拘束部材150とスリーブ130とを別体にする場合、図4に示されるように、拘束部材150はスリーブ130とチューブ120との間に配置される。
【0054】
図4は、拘束部材150とスリーブ130とが別体で構成される変更例に係る流体圧アクチュエータの封止部材140近傍のかしめ前の状態を拡大した分解断面図である。図4に示すように、変更例では、流体通路145が形成された封止部材本体141及びかしめ部材143を備える封止部材140の胴体部にチューブ120が挿通される。そして、拘束部材150がスリーブ130とチューブ120との間に配置された状態で、かしめ部材143がチューブ120、スリーブ130、拘束部材150を封止部材本体141とともにかしめる。
【0055】
拘束部材とスリーブとを別体とする構成として、例えば拘束用繊維コード151と熱可塑性樹脂テープ等とを一体化した複合テープ材を、拘束部材150としてもよい。
【0056】
この場合、拘束部材150はチューブ120の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って設けられており、拘束用繊維コード151も、チューブ120の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って設けられている。拘束用繊維コード151は、熱可塑性樹脂テープ間に挟み込まれて一体化されていてよく、拘束用繊維コード151の一部が熱可塑性樹脂テープに接触または埋没していてもよい。
【0057】
ここで、拘束用繊維コード151は、拘束用繊維コード51と同様に、繊維コード31に使用し得る繊維コードの中から所望の引張り強度などを考慮して、拘束用繊維コード151の材料が選択されればよい。
【0058】
また、熱可塑性樹脂テープを構成する材料については特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリブチレンテレフタレート(PBTP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミド6(PA6)、又はポリアミド66(PA66)等が挙げられる。
【0059】
また、拘束用繊維コード151と熱可塑性樹脂テープ等とを一体化した複合テープ材を、拘束部材150とする場合、図5に示されるように、複数の拘束用繊維コード151が、チューブ120の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って設けられ、互いに交差するように配置されていてもよい。
【0060】
また、拘束部材に、互いに交差する複数の拘束用繊維コードを含む構成として、複数の拘束用繊維コード51を互いに交差するようにスリーブ30に編み込んでもよい。
【0061】
互いに交差する複数の拘束用繊維コード51,151を拘束部材50,150に含む場合、拘束部材50,150が配置されるチューブ20、120の周方向の一部とは、周方向における周長の1/3以下の範囲であってよい。
【0062】
拘束部材が、互いに交差する複数の拘束用繊維コード51を含む場合、一部の拘束用繊維コード51の張力のみが高まるように曲がる流体圧アクチュエータ10の変形が抑制され、流体圧アクチュエータ10を拘束部材50が延びる所定の方向に沿って湾曲させることができる。
【0063】
また、上記のような拘束部材150をスリーブ130と別体とする構成で、より高い剛性が求められる用途で流体圧アクチュエータ10が使用される場合、スリーブ130とは別体である拘束部材150として、平板状或いはチューブ120の断面形状に倣うように湾曲した板バネ(leaf spring)を用いてもよい。拘束部材150として板バネを用いる場合でも、拘束部材150はチューブ120の周方向における一部に設けられる。そして、拘束部材150として板バネを用いる場合、拘束部材150をスリーブ130とチューブ120との間に配置することで、剛性を高めた湾曲する流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0064】
板バネの寸法は、流体圧アクチュエータのサイズ、及び必要とされる発生力などに応じて選択されればよく、特に限定されない。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、曲げ易く、圧縮に強い材料であればよい。例えば、拘束部材150は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。CFRPは、金属に比べて塑性変形をし難いため、拘束部材150として使用した場合でも、流体圧アクチュエータが湾曲後、元の真っ直ぐな状態に戻りやすい。
【0065】
拘束部材150としての板バネの幅は、特に限定されないが、チューブ120の外径と基準とすれば、概ね当該外径の半分程度としてよい。一例としては、チューブ120の外径11mm、伸長前のチューブ120の長さ185mm、拘束部材150(板バネ)の幅6mm、厚さ0.5mm程度とすることができる。
【0066】
また、上述した変更例では、拘束部材50、150が、チューブ20,120の周方向における一部(周長の1/3以下)に設けられていたが、拘束部材は、チューブ20、120の周方向における半分(半周分)程度の範囲に、設けられていても構わない。
【0067】
さらに、上述した実施形態および変更例では、拘束部材50,150が、チューブ20,120及びスリーブ30,130の軸方向XAにおける一端側から他端側に亘って設けられていたが、軸方向XAにおける略全体の領域に亘って設けられていれば、必ずしも、軸方向XAにおける一端から他端に亘って設けられていなくても構わない。
【0068】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0069】
10 流体圧アクチュエータ
20,120 チューブ
21,121 チューブの端部
30,130 スリーブ
31 繊維コード
40,140 封止部材
41,141 封止部材本体
43,143 かしめ部材
50,150 拘束部材
51 拘束用繊維コード
XA 軸方向
θ1 所定方向(所定の編角)
図1
図2
図3
図4
図5