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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090558
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】モータ及びファン装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20230622BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20230622BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H02K5/10
H02K11/33
H02K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205582
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永元 里司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信吾
(72)【発明者】
【氏名】細井 啓一
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB19
5H605DD07
5H605DD32
5H605DD34
5H607AA02
5H607AA05
5H607BB01
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB17
5H607DD02
5H607FF04
5H607GG01
5H607GG08
5H607JJ10
5H607KK08
5H611BB01
5H611BB07
5H611TT01
(57)【要約】
【課題】気密検査を簡素化しつつ、構成部品のレイアウト性を向上させたモータを提供する。
【解決手段】モータ(2)は、モータブラケット(203)と、モータブラケットに固定されたシャフト(21)と、モータブラケットの表面側にベアリング(22A、22B)を介してシャフトに回転自在に支持されたロータ(23)と、ロータの内部でモータブラケットの表面側に固定されて、ロータを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータ(24)と、コイルによる磁界の発生を制御するドライバ回路(202)と、接触面が気密状態になるようにモータブラケットの裏面側に固定されて、モータブラケットとの間にドライバ回路を収容する収容空間(206)を形成するドライバブラケット(204)とを備え、モータブラケットには、シャフトの軸方向の延長線上の位置を厚み方向に貫通して、収容空間を外気に連通させる呼吸孔(424)が形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータブラケットと、
前記モータブラケットに固定されたシャフトと、
前記モータブラケットの表面側にベアリングを介して前記シャフトに回転自在に支持されたロータと、
前記ロータの内部で前記モータブラケットの表面側に固定されて、前記ロータを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータと、
前記コイルによる磁界の発生を制御するドライバ回路と、
接触面が気密状態になるように前記モータブラケットの裏面側に固定されて、前記モータブラケットとの間に前記ドライバ回路を収容する収容空間を形成するドライバブラケットとを備えるモータにおいて、
前記モータブラケットには、前記シャフトの軸方向の延長線上の位置を厚み方向に貫通して、前記収容空間を外気に連通させる呼吸孔が形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記モータブラケットは、
前記シャフトが挿通されるシャフト挿通孔を囲む位置から前記モータブラケットの裏面側に突出して、内部でナットを保持するナット保持部を有するブラケットと、
前記ブラケットの裏面側に配置され、前記ナット保持部を収容し且つ底壁に前記呼吸孔が形成された収容凹部を有するブラケットカバーとで構成され、
前記シャフトは、前記シャフト挿通孔に挿通される側の端部に、前記ナット保持部に保持された前記ナットに螺合されるネジ部を有することを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記ブラケットは、前記シャフト挿通孔を囲む位置から前記モータブラケットの表面側に突出して、内部で前記シャフトを保持する筒状のシャフト保持筒を有し、
前記ベアリングに当接する前記シャフト保持筒の突出端面には、
内周面側の角部が周方向に連続して面取りされた面取り部と、
前記面取り部から径方向外向きに延びる径方向溝とが形成され、
前記シャフトの外周面には、前記ネジ部及び前記ナットの間の螺旋状の隙間と、前記面取り部とに連通するように、軸方向に延びる軸方向溝が形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のモータにおいて、
前記呼吸孔を覆うように前記収容凹部の前記底壁に取り付けられて、気体の流通を許容し且つ液体の流通を阻止するフィルタを備えることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ナット保持部及び前記収容凹部の間に配置されるOリングを備えることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のモータと、
前記モータにより回転駆動されて、冷却風を生成するファンとを備えることを特徴とするファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及びこれを搭載したファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物や不良品の削減などを目指す技術が知られている。
【0003】
モータは、ドライバ回路への塵埃や液滴の付着を防止するために、モータブラケット及びドライバブラケットを組み合わせて、ドライバ回路を収容する気密状態の収容空間を形成している。また、モータブラケットには、収容空間を大気圧に保つために、収容空間を外気に連通させる呼吸孔が設けられている。
【0004】
一例として、特許文献1に記載のモータには、シャフトから径方向にずれた位置において、ベースを貫通する呼吸孔が形成されている。そして、呼吸孔の一端は収容空間に連通し、他端はロータとベースとの間の隙間を通じてモータの外部に連通している。他の例として、呼吸孔の他端を直接モータの外部に開放したモータも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-142455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モータの製造過程において、収容空間が気密状態になっているか否かを確認するために、呼吸孔を通じて収容空間を加圧する気密検査が実施される。しかしながら、特許文献1に記載のモータでは、ロータとベースとの間の隙間を全周に亘って閉塞する必要があるので、検査治具に付属するゴムキャップが大型化すると共に、着脱作業が煩雑になるという課題がある。また、シャフトから径方向にずれた位置に呼吸孔が形成されているので、モータが径方向に大型化すると共に、他の構成部品のレイアウトが制限されるという課題もある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ドライバ回路を収容する気密状態の収容空間を有するモータにおいて、気密検査を簡素化しつつ、構成部品のレイアウト性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、モータブラケットと、前記モータブラケットに固定されたシャフトと、前記モータブラケットの表面側にベアリングを介して前記シャフトに回転自在に支持されたロータと、前記ロータの内部で前記モータブラケットの表面側に固定されて、前記ロータを回転させるための磁界を発生するコイルが巻装されたステータと、前記コイルによる磁界の発生を制御するドライバ回路と、接触面が気密状態になるように前記モータブラケットの裏面側に固定されて、前記モータブラケットとの間に前記ドライバ回路を収容する収容空間を形成するドライバブラケットとを備えるモータにおいて、前記モータブラケットには、前記シャフトの軸方向の延長線上の位置を厚み方向に貫通して、前記収容空間を外気に連通させる呼吸孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドライバ回路を収容する気密状態の収容空間を有するモータにおいて、気密検査を簡素化しつつ、構成部品のレイアウト性を向上させることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るファン装置の一構成例を示す外観斜視図である。
図2】モータとファンとを分解した場合の分解斜視図である。
図3】モータを表面側から見た外観斜視図である。
図4】モータを裏面側から見た外観斜視図である。
図5】ロータヨークを除いた状態のモータの構成を示す斜視図である。
図6図3におけるVI-VI線断面図である。
図7】ブラケットを表面側から見た斜視図である。
図8】ブラケットを裏面側から見た斜視図である。
図9】ブラケットカバーを表面側から見た斜視図である。
図10】ブラケットカバーを裏面側から見た斜視図である。
図11】シャフト周辺の構成部品の分解斜視図である。
図12】気密検査を実施する状態を示すモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るファン装置の一態様として、例えば自動車などの車両に搭載され、ラジエータ内を流れるエンジンの冷却水などを冷却するファン装置について説明する。
【0012】
(ファン装置1の全体構成)
まず、図1および図2を参照して、ファン装置1の全体構成を説明する。図1は、実施形態に係るファン装置1の一構成例を示す外観斜視図である。図2は、モータ2とファン3とを分解した場合の分解斜視図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、ファン装置1は、駆動源であるモータ2と、モータ2により回転駆動されて冷却風を生成するファン3とを備える。ファン装置1は、エンジンルーム内において、ラジエータと対向するように配設されている。
【0014】
ファン3は、複数のネジ10によってモータ2に締結される。複数のネジ10は、ファン3の表側(モータ2と対向する側とは反対側)から、ファン3の中心部となるボス部31に形成されたネジ孔を通って、モータ2のロータヨーク232に締結される。
【0015】
本実施形態では、ファン3の回転バランスを考慮して、3つのネジ10が、ファン3の回転中心を中心とする円周上において等間隔となるように取り付けられる。なお、ファン3をモータ2に締結する締結部材として必ずしも3つのネジ10を用いる必要はなく、ファン3がモータ2に締結可能であれば、ネジ10の数や締結部材の種類については特に制限はない。
【0016】
ファン3は、シャフト21の軸心上を回転中心としてロータ23と一体に回転するボス部31と、ボス部31の外周から放射状に張り出された複数(本実施形態では7枚)の羽根32と、隣り合う羽根32同士を先端部の側で連結する複数(本実施形態では7つ)の連結部材33と、を有する。
【0017】
ボス部31は、ロータヨーク232の連結壁232Cと対向して配置された円盤状の円盤部311と、円盤部311の外縁からロータ23の外周壁232Aの外側に延出して複数の羽根32が取り付けられた周壁部312と、を含む。
【0018】
(モータ2の構成)
次に、図3図6を参照して、モータ2の構成を説明する。図3は、モータ2を表面側から見た外観斜視図である。図4は、モータ2を裏面側から見た外観斜視図である。図5は、ロータヨーク232を除いた状態のモータ2の構成を示す斜視図である。図6は、図3におけるVI-VI線断面図である。
【0019】
図3図6に示すように、モータ2は、アウターロータ型のブラシレスモータ201と、ブラシレスモータ201(コイル243による磁界の発生)を制御するドライバ回路202とを含む電動モータである。
【0020】
図3に示すように、ブラシレスモータ201は、モータブラケット203に支持されている。ブラシレスモータ201は、モータブラケット203の厚み方向の一方側(表面側)に配置されている。
【0021】
図4及び図6に示すように、モータブラケット203の厚み方向の他方側(裏面側)には、複数のネジ205によって、ドライバブラケット204が締結されている。モータブラケット203とドライバブラケット204との接触面は、全周に亘って気密状態とされる。これにより、モータブラケット203及びドライバブラケット204の間には収容空間206が形成される。そして、ドライバ回路202は、この収容空間206に収容される。
【0022】
また、モータブラケット203の端部には、外部ハーネスが接続される2つのコネクタが一体になったコネクタユニット207が取り付けられている。ブラシレスモータ201、ドライバ回路202、及びコネクタユニット207は、モータブラケット203を介して互いに電気的に接続されている。
【0023】
図5及び図6に示すように、ブラシレスモータ201は、シャフト21と、シャフト21の外周に設けられたベアリング22A、22Bと、シャフト21の軸心周りにベアリング22A、22Bを介して回転自在に支持されたロータ23と、ロータ23を回転させるための磁界を発生するコイル243が巻装された環状のステータ24と、を有する。
【0024】
シャフト21は、モータブラケット203に固定された固定軸である。なお、以下、モータ2の構成要素に関する説明において、シャフト21の軸方向を単に「軸方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした径方向を単に「径方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした周方向を単に「周方向」とする。
【0025】
ロータ23は、ステータ24の外周を囲むように周方向に等間隔に並んで配置された複数(本実施形態では5つ)の磁石231と、ステータ24及び複数の磁石231を覆うロータヨーク232と、を有する。
【0026】
図6に示すように、ロータヨーク232は、シャフト21の軸心と同心になるようにモータブラケット203の表面側に配置されている。また、ロータヨーク232は、ベアリング22A、22Bを介してシャフト21に回転自在に支持されている。ロータヨーク232は、外周壁232Aと、内周壁232Bと、連結壁232Cとを備える。
【0027】
外周壁232Aは、複数の磁石231の外周を囲む円筒状の部分である。内周壁232Bは、外周壁232Aの内側に配置された円筒状の部分である。連結壁232Cは、軸方向におけるモータブラケット203とは反対側において、外周壁232Aと内周壁232Bとを連結する環状の部分である。
【0028】
複数の磁石231は、外周壁232A、内周壁232B、連結壁232C、及びモータブラケット203で囲まれた空間に収容されている。より詳細には、複数の磁石231は、周方向に離間した位置において、外周壁232Aの内面に固定されている。
【0029】
ステータ24は、外周壁232A、内周壁232B、連結壁232C、及びモータブラケット203で囲まれた空間に収容されている。また、ステータ24は、複数の磁石231より径方向の内側において、モータブラケット203の表面側に固定されている。さらに、ステータ24は、径方向に所定の隙間を隔てて複数の磁石231に対面している。
【0030】
図5及び図6に示すように、ステータ24は、円筒状のステータコア241と、ステータコア241の径方向の外側に突出された複数のティースに対して軸方向の両側に装着される絶縁性のインシュレータ242と、インシュレータ242上に巻回された導電性のコイル243と、を有する。
【0031】
ステータ24は、コイル243に電流が流れることにより磁界を発生する。そして、コイル243で発生した磁界と、複数の磁石231との間に生じる引力及び斥力によって、ロータヨーク232がシャフト21の軸心を中心として回転する。
【0032】
(モータブラケット203の構成)
次に、図7図10を参照して、モータブラケット203の構成を説明する。図7は、ブラケット41を表面側から見た斜視図である。図8は、ブラケット41を裏面側から見た斜視図である。図9は、ブラケットカバー42を表面側から見た斜視図である。図10は、ブラケットカバー42を裏面側から見た斜視図である。
【0033】
モータブラケット203は、図7及び図8に示すブラケット41と、図9及び図10に示すブラケットカバー42とで構成されている。ブラケット41は、ブラケットカバー42の表面側に配置されている。換言すれば、ブラケットカバー42は、ブラケット41の裏面側に配置されている。さらに換言すれば、ブラケット41はモータブラケット203の表面側を構成し、ブラケットカバー42はモータブラケット203の裏面側を構成する。
【0034】
図7及び図8に示すように、ブラケット41は、板状の部材である。ブラケット41には、厚み方向に貫通するシャフト挿通孔411が形成されている。また、ブラケット41は、表面側に設けられたシャフト保持筒412と、裏面側に設けられたナット保持部413とを有する。
【0035】
図7に示すように、シャフト保持筒412は、シャフト挿通孔411を囲むように周方向に連続し、且つモータブラケット203の表面側(ブラシレスモータ201側)に突出する円筒状の部分である。シャフト保持筒412の突出端は、開口している。また、シャフト保持筒412の内径寸法は、後述するシャフト21の第2軸部212の直径より僅かに大きく設定されている。すなわち、シャフト保持筒412には、シャフト21の第2軸部212及びネジ部214が挿入可能になっている。また、シャフト保持筒412の突出端面(ベアリング22Bの内輪が当接する端面)には、面取り部414と、径方向溝415とが形成されている。
【0036】
面取り部414は、突出端面の内周面側の角部が周方向に連続して面取りされた部分である。本実施形態に係る面取り部414は、C面取りされているが、R面取りであってもよい。すなわち、面取り部414の位置におけるシャフト保持筒412の内径寸法は、突出端面に向かって徐々に大きくなっている。
【0037】
径方向溝415は、シャフト保持筒412の突出端面上において、径方向に延びる凹溝である。そして、径方向溝415は、内周面側の端部が面取り部414に連通し、外周面側の端部が開放されている。すなわち、径方向溝415は、シャフト保持筒412の突出端面と、ベアリング22Bの内輪との間に設けられた隙間(空気通路)となる。
【0038】
図8に示すように、ナット保持部413は、シャフト挿通孔411を囲むように周方向に連続し、且つモータブラケット203の裏面側(ドライバブラケット204側)に突出する円筒状の部分である。ナット保持部413の突出端は、開口している。シャフト保持筒412の内周面は、後述するナット53の外周面に対応する六角形に形成されている。ナット保持部413の外形寸法は、後述する収容凹部421の周壁422の内径寸法より僅かに小さく設定されている。
【0039】
図9及び図10に示すように、ブラケットカバー42は、板状の部材である。ブラケットカバー42は、収容凹部421を有する。収容凹部421の内面は、モータブラケット203の表面側から裏面側に向かって凹んでいる。換言すれば、収容凹部421の外面は、モータブラケット203の裏面側に突出している。そして、収容凹部421は、周壁422と、底壁423とで構成されている。
【0040】
周壁422は、モータブラケット203の裏面側に突出し且つ周方向に連続する円筒状の部分である。周壁422の内径寸法は、ナット保持部413の外形寸法より僅かに大きく設定されている。すなわち、ブラケット41及びブラケットカバー42を結合すると、収容凹部421の内部にナット保持部413が収容される。
【0041】
底壁423は、周壁422の突出端(モータブラケット203の裏面側の端部)を閉塞する。また、底壁423には、厚み方向に貫通する呼吸孔424が形成されている。呼吸孔424は、シャフト保持筒412に保持されるシャフト21の軸方向の延長線上に形成されている。そして、呼吸孔424は、シャフト挿通孔411を通じて、収容空間206をブラシレスモータ201の内部空間に連通させる。
【0042】
(シャフト21周辺の構成要素)
次に、図11を参照して、シャフト21周辺に配置されるモータ2の構成部品を説明する。図11は、シャフト21周辺の構成部品の分解斜視図である。図11に示すように、モータ2は、シャフト21及びベアリング22A、22Bに加えて、シールリング51と、コイルバネ52と、ナット53と、Oリング54と、フィルタ55とをさらに備える。
【0043】
シャフト21は、概ね円柱状の外形を呈する。シャフト21は、第1軸部211と、第2軸部212と、フランジ部213と、ネジ部214とを主に備える。
【0044】
第1軸部211及び第2軸部212は、フランジ部213を挟んで互いに反対向きに延設された部分である。第1軸部211には、ベアリング22Aの内輪が接している。第2軸部212には、ベアリング22Bの内輪が固定される。
【0045】
フランジ部213は、第1軸部211及び第2軸部212の間において、径方向外向きに突出し且つ周方向に連続する円盤状の部分である。すなわち、フランジ部213の直径は、第1軸部211及び第2軸部212より大きく設定されている。そして、フランジ部213は、コイルバネ52の一端が当接されるばね座として機能する。
【0046】
ネジ部214は、第2軸部212の突出端(フランジ部213の接続端と反対側の端部)に設けられている。ネジ部214の直径は、第2軸部212より小さく設定されている。また、ネジ部214の外周面には、ナット53に螺合される螺旋状の雄ネジが形成されている。ネジ部214は、シャフト挿通孔411に挿通されて、ナット53に螺合される。これにより、シャフト21がモータブラケット203に固定される。
【0047】
さらに、第2軸部212には、軸方向溝215と、周方向溝216とが形成されている。軸方向溝215は、第2軸部212の周方向の一部を、第2軸部212の軸方向の全域に亘って凹ませた凹溝である。シャフト21がシャフト保持筒412に保持されたとき、軸方向溝215は、径方向において面取り部414に対面する。周方向溝216は、第2軸部212のフランジ部213との接続端を全周に亘って凹ませた凹溝である。
【0048】
ベアリング22A、22Bは、内輪と、外輪と、内輪及び外輪の間に配置される複数のボールと、複数のボールの周方向の間隔を保持する保持部とを備えるボールベアリングである。また、ベアリング22A、22Bは、ラジアル方向の荷重を支持するラジアル軸受である。ベアリング22Aは、内輪がシャフト21の外周面に接しており、外輪が内周壁232Bの内周面に固定される。ベアリング22Bは、内輪がシャフト21の外周面に固定され、外輪が内周壁232Bの内周面に接している。これにより、ベアリング22A、22Bは、シャフト21に対してロータヨーク232を回転自在に支持する。
【0049】
シールリング51は、ロータヨーク232の内周壁232Bの内側に圧入されて、ロータヨーク232と共に回転する。
【0050】
コイルバネ52は、ベアリング22Aとフランジ部213との間において、第1軸部211に外挿される。そして、コイルバネ52は、ベアリング22Aをファン3側に向けて付勢する。これにより、ベアリング22Bは、フランジ部213に押し付けられる。
【0051】
ナット53は、ナット保持部413に収容される。より詳細には、ブラケット41及びブラケットカバー42が組み立てられると、ナット53は、ナット保持部413及び収容凹部421で囲まれた空間に配置される。そして、ナット53の内周面には、シャフト挿通孔411を通過したネジ部214が螺合される螺旋状の雌ネジが形成されている。
【0052】
Oリング54は、収容凹部421に収容される。より詳細には、Oリング54は、周壁422及び底壁423の間の隅部に配置される。そして、ブラケット41及びブラケットカバー42が組み立てられると、Oリング54は、ナット保持部413及び収容凹部421の間を気密状態に閉塞する。
【0053】
フィルタ55は、ブラケットカバー42の裏面側において、呼吸孔424を覆うように収容凹部421の底壁423に熱溶着や接着などによって取り付けられる。フィルタ55は、気体の流通を許容し且つ液体の流通を阻止する素材(例えば、テミッシュ(登録商標))で構成される。
【0054】
(モータ2内部の空気通路の構成)
次に、図6を参照して、収容空間206を外気(モータ2の外部)に連通させる空気通路を説明する。
【0055】
まず、収容空間206は、呼吸孔424のみによって外部と連通し、その他の部分(例えば、モータブラケット203及びドライバブラケット204の接触面)は気密状態となっている。また、呼吸孔424は、螺合されたネジ部214及びナット53の間の螺旋状の隙間に連通している。さらに、ネジ部214及びナット53の間の螺旋状の隙間は、第2軸部212の軸方向溝215に連通している。
【0056】
そして、図6に破線で示す第1の経路として、軸方向溝215は、面取り部414、径方向溝415、ステータ24の間の隙間、及びモータブラケット203とロータヨーク233との間の隙間を通じて、モータ2の外部に連通している。また、第2の経路として、軸方向溝215は、周方向溝216、フランジ部213のベアリング22Bとの当接面に設けられた径方向溝(図示省略)、ステータ24の間の隙間、及びモータブラケット203とロータヨーク233との間の隙間を通じて、モータ2の外部に連通していてもよい。
【0057】
(気密検査の実施方法)
次に、図12を参照して、気密検査の実施方法を説明する。図12は、気密検査を実施する状態を示すモータ2の断面図である。気密検査とは、収容空間206が気密状態に保たれているか否かの検査である。気密検査は、モータ2の製造過程(モータ2の組立途中)において実施される。
【0058】
図12に示すように、まず、ナット保持部413にナット53を収容したブラケット41と、収容凹部421にOリング54を収容したブラケットカバー42とを組み立てる。また、底壁423の外面側にフィルタ55を取り付けたモータブラケット203と、ドライバ回路202を支持したドライバブラケット204とを、複数のネジ205によって締結する。一方、シャフト21は、未だシャフト保持筒412に挿通されていない。その他の構成要素については、気密検査前に取り付けられてもよいし、気密検査後に取り付けられてもよい。
【0059】
次に、シャフト保持筒412の突出端側から検査治具60を挿入する。検査治具60は、軸方向に貫通する空気通路を有する円筒形状の部材である。検査治具60の内径寸法は、呼吸孔424の直径より大きく設定されている。また、検査治具60の先端には、ゴムなどの弾性部材が取り付けられている。これにより、検査治具60の先端を底壁423に到達させると、検査治具60によって呼吸孔424が気密的に覆われる。
【0060】
次に、検査治具60を通じて収容空間206に圧縮空気を供給し、検査治具60内の圧力を計測する。そして、検査治具60内が所定の圧力に数秒間維持できれば、収容空間206の呼吸孔424以外の部分が気密状態になっていると判断できる。一方、検査治具60内が所定の圧力に達しなければ、モータブラケット203及びドライバブラケット204の接触面などから、供給した圧縮空気が漏れていると判断できる。
【0061】
そして、収容空間206が気密状態になっていることを確認した後に、検査治具60を抜去し、シャフト21を含む構成部品をモータ2に取り付ける。これにより、収容空間206の気密状態が確認されたモータ2が完成する。
【0062】
上記の実施形態によれば、径方向におけるモータ2の中央(すなわち、最奥部)に位置するシャフト21の延長線上に呼吸孔424を配置した。これにより、シャフト21から径方向にずれた位置に呼吸孔424を形成する場合と比較して、モータ2を径方向に小型化することができると共に、モータ2内における構成部品のレイアウト性が向上する。
【0063】
また、上記の実施形態によれば、シャフト21を取り付ける前に、シャフト保持筒412に挿入した検査治具60の先端で呼吸孔424を覆うだけで、収容空間206が気密状態か否かを確認することができる。これにより、気密検査を簡素化して、モータ2の製造工数を削減することができる。
【0064】
また、上記の実施形態によれば、モータ2の最奥部に呼吸孔424を設けると共に、モータブラケット203及びロータヨーク232の間の隙間と、ロータ23及びステータ24の間の隙間とを、塵埃や液滴の侵入を阻止するラビリンスシールとして利用する。これにより、収容空間206への塵埃や液滴の侵入を有効に防止することができる。
【0065】
また、上記の実施形態によれば、ネジ部214をナット53に螺合することによって、シャフト21をモータブラケット203に固定する。これにより、モータブラケット203に対するシャフト21の組付け作業が容易になると共に、雄ネジの先端と雌ねじの最奥部との間に形成される螺旋状の隙間を、空気通路として利用することができる。但し、モータブラケット203に対するシャフト21の固定方法は、前述の例に限定されず、圧入やネジによる締結でもよい。
【0066】
なお、ネジ部214をナット53に螺合する方法では、モータブラケット203に固定されたシャフト21の周方向の向きを制御するのは難しい。そこで上記の実施形態によれば、シャフト21の外周面に設けられた軸方向溝215を、周方向に連続する面取り部414に対面させた。これにより、シャフト21の周方向の向きに拘わらず、軸方向溝215と面取り部414とを連通させることができる。
【0067】
但し、シャフト21上の空気通路は、前述の例に限定されない。他の例として、シャフト21は、ネジ部214側の端面からシャフト21の内部を軸方向に延びる軸方向孔と、面取り部414に対面する位置において軸方向孔からシャフト21の外周面に延びる径方向孔とを有してもよい。
【0068】
また、上記の実施形態によれば、呼吸孔424をフィルタ55で覆うことによって、万一、モータ2が水没したとしても、収容空間206内に液滴が侵入するのを防止することができる。但し、水没の恐れがない環境でモータ2が使用される場合には、フィルタ55を省略することができる。
【0069】
さらに、上記の実施形態によれば、ナット保持部413及び収容凹部421の間にOリング54を配置することによって、収容空間206の気密度をさらに向上させることができる。但し、ブラケット41及びブラケットカバー42の間は、別の手段で気密状態にしてもよい。
【0070】
なお、上記の実施形態では、ファン装置1の用途として、ラジエータに冷却風を供給する例を説明したが、ファン装置1の用途はこれに限定されない。また、上記の実施形態では、モータ2の用途として、ファン3を回転駆動するファンモータの例を説明したが、モータ2の用途はこれに限定されない。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:ファン装置
2:モータ
3:ファン
10,205:ネジ
21:シャフト
22A,22B:ベアリング
23:ロータ
24:ステータ
31:ボス部
32:羽根
33:連結部材
41:ブラケット
42:ブラケットカバー
51:シールリング
52:コイルバネ
53:ナット
54:Oリング
55:フィルタ
60:検査治具
201:ブラシレスモータ
202:ドライバ回路
203:モータブラケット
204:ドライバブラケット
206:収容空間
207:コネクタユニット
211:第1軸部
212:第2軸部
213:フランジ部
214:ネジ部
215:軸方向溝
216:周方向溝
231:磁石
232:ロータヨーク
232A:外周壁
232B:内周壁
232C:連結壁
233:ロータヨーク
241:ステータコア
242:インシュレータ
243:コイル
311:円盤部
312:周壁部
313:筒部
411:シャフト挿通孔
412:シャフト保持筒
413:ナット保持部
414:面取り部
415:径方向溝
421:収容凹部
422:周壁
423:底壁
424:呼吸孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図12