IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NejiLawの特許一覧

特開2023-9056固化体の製造方法及び該方法を用いて製造される固化体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009056
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】固化体の製造方法及び該方法を用いて製造される固化体
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20230112BHJP
   B28B 1/087 20060101ALI20230112BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
E04G21/06
B28B1/087
B01D19/00 102
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166610
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2022148740の分割
【原出願日】2017-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】511025411
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
2E172
4D011
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172FA00
4D011AA04
4D011AC06
4D011AD03
(57)【要約】
【課題】流動体の表面及び内部の気泡を微細化若しくは消泡することができ、美観が良く、均質で高品質の固化体を製造する固化体の製造方法及び該方法を用いて製造される固化体を提供する。
【解決手段】 流動体を受容部に供給する工程と、受容部に供給される流動体に対して変動的慣性力を付与する工程と、変動的慣性力の付与を停止して受容部内で成形する工程と、受容部内の流動体を固化する工程と、を備え、変動的慣性力を、流動体の物理的及び/又は化学的属性及び/又は気泡の物理的及び/又は化学的属性に応じて、上記変動的な慣性力の変動幅、単位時間当たりの変動数、繰り返し変動させる時間又は変動回数、加速度から選択される一つ以上の条件により制御することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動体を受容部に供給する工程と、
上記受容部に供給される流動体に対して変動的慣性力を付与する工程と、
上記変動的慣性力の付与を停止して上記受容部内で成形する工程と、
上記受容部内の流動体を固化する工程と、
を備え、
上記変動的慣性力を、上記流動体の物理的及び/又は化学的属性及び/又は気泡の物理的及び/又は化学的属性に応じて、上記変動的な慣性力の変動幅、単位時間当たりの変動数、繰り返し変動させる時間又は変動回数、加速度から選択される一つ以上の条件により制御することを特徴とする固化体の製造方法。
【請求項2】
流動体を受容部に供給する工程と、
上記受容部に供給される流動体に対して変動的慣性力を付与する工程と、
上記変動的慣性力によって上記受容部からの流動体の排出を促して、該流動体を型枠に充填する工程と、
上記型枠内の流動体を固化する工程と、
を備えることを特徴とする固化体の製造方法。
【請求項3】
前記流動体は、前記受容部の上流側から供給されて下流側から排出されるように、前記受容部内を流動し、該受容部内を流動する際に前記変動的慣性力が付与されることを特徴とする請求項2に記載の固化体の製造方法。
【請求項4】
前記流動体は、前記受容部の底面部の周囲の少なくとも一部から排出されることを特徴とする請求項2に記載の固体化の製造方法。
【請求項5】
前記変動的慣性力を前記流動体の全体に対して同時に一様に与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の固化体の製造方法。
【請求項6】
鉛直方向及び/又は水平方向に前記変動的な慣性力を与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の固化体の製造方法。
【請求項7】
前記流動体の粘性、比重、前記気泡の大きさから選択される一つ以上の条件に応じて前記変動的な慣性力を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の固化体の製造方法。
【請求項8】
前記繰り返し変動させる時間又は変動回数の経過に応じて前記変動幅と前記変動数を同時に制御することにより前記変動的な慣性力を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の固化体の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の固化体の製造方法を用いて製造された固化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動体に付与する変動的慣性力によって、流動体中の気泡を微細化及び/又は消泡し、該流動体を固化させる固化体の製造方法及び該方法を用いて製造される固化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動体を用いて製品等を製造する場合に、品質や外観上の観点から流動体中に含まれる気泡の処理が必要となる場合があった。例えば、流動体を固化させる際に、流動体中に気泡が存在すると、固化体の内部や表面に空洞や窪みが生じ、その解消のための処理には手間やコストがかかっていた。
【0003】
このような問題に関して、例えば、特許文献1には、電動機を連結又は内蔵する振動体と、鋤板と、この振動体と鋤板を連結する連結部とを有するコンクリートの気泡低減振動機が開示され、この気泡低減振動機を未硬化のコンクリートの型枠近傍に挿入し、振動させることでコンクリートの気泡を低減する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような振動機では、コンクリートの粘性やセメントペーストと細骨材や粗骨材といった性状や形状或いは大小、比重が様々な混合形態による振動の散乱や乱反射による減衰等から振動が全体に行き渡らず、局所的にしか振動を与えることができないという問題があった。また、振動機を型枠近傍に挿入する作業には、労力や費用が過大に生じる。更に、そもそもとして、与えている振動条件では、被振体の消泡条件に合っておらず消泡することが出来ないという問題が有った。
【0005】
また、特許文献2には、コンクリート成型品型枠を載置する型枠載置テーブルを形鋼等の枠組みによって構成し、同じく形鋼等の枠組みによって基台を構成し、この基台上に型枠載置テーブルをゴム等の緩衝部材を介在させて取り付け、型枠載置テーブルにコンクリート成型品型枠を載置固定する型枠固定装置を設け、この型枠固定装置から離れた型枠載置テーブルの部位に振動モータを装着してあるセメントコンクリート製品の成型用テーブルバイブレータが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されているテーブルバイブレータは、消泡条件に適合しない単なる固定化された所定の振動しか与えることしかできず、コンクリート表面及び/又はコンクリート内部の気泡、所謂エントラップトエアを微細化させたり、消失させたり出来るものではなく、外観上消失できるまで微細化することはできないという問題があった。即ち、与えている振動条件では、被振体の消泡条件に合っておらず消泡することが出来ないという問題が有った。
【0007】
また、特許文献3には、各種塗工機や印刷機で使用される、塗工材料やインキ等に含まれる気泡を除去するために用いられる脱泡装置であって、脱泡処理槽と該脱泡処理槽に接続された超音波振動子を備えた脱泡装置が記載されている。
【0008】
しかしながら、音波、特に超音波を用いて消泡する技術にあっては、流動体が粘性流動体或いは比重や硬さ大きさや形状の異なる複数の物体を含有して成る混成流動体であって体積が十分に大きい場合、音波を入力している付近では予め設定した条件の波動を印加できるものの、音波入力源から離れるとこれに伴って音波が著しく減衰し、減衰波が設定条件から外れてしまい、不均一で、全体に満遍なく行き渡らず、結果として許容程度まで消泡し切れないという問題が有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-16868号公報
【特許文献2】特開平5-318422号公報
【特許文献3】特開2010-167386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、固化体の表面及び内部の気泡を微細化することができ、美観が良く、高品質の製品を低コストで効率良く製造することができる固化体の製造方法及び該方法を用いて製造される固化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の固化体の製造方法に係る一態様は、流動体を受容部に供給する工程と、受容部に供給される流動体に対して変動的慣性力を付与する工程と、変動的慣性力の付与を停止して受容部内で成形する工程と、受容部内の流動体を固化する工程と、を備え、変動的慣性力を、流動体の物理的及び/又は化学的属性及び/又は気泡の物理的及び/又は化学的属性に応じて、変動的な慣性力の変動幅、単位時間当たりの変動数、繰り返し変動させる時間又は変動回数、加速度から選択される一つ以上の条件により制御する。
また、本発明の固化体の製造方法に係る一態様は、流動体を受容部に供給する工程と、受容部に供給される流動体に対して変動的慣性力を付与する工程と、変動的慣性力によって受容部からの流動体の排出を促して、流動体を型枠に充填する工程と、型枠内の流動体を固化する工程と、を備える。
【0012】
さらに、本発明の一態様は、上述した固化体の製造方法を用いて製造された固化体である。
【0013】
粘性流体の場合、粘性抵抗が高いため、特許文献1に記載の発明のように、局所的に振動を加えても流動体全体に振動が伝搬しないが、本発明の一態様では、変動的な慣性力(例えば、揺動)を外部からの強制力として流動体に対してほぼ均一に与えることができる。この場合、流動体に対する外部からの強制力は、流動体の体積を成す全体に対してほぼ一様に慣性力を与えるものとして作用するのであり、流動体は振動の媒質ではないので、流動体の内部において外部からの強制力が局所的に減衰するというようなメカニズムは殆ど生じない。変動的な慣性力は、鉛直方向及び/又は水平方向、或いはこれらの合成方向として与えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流動体の表面及び内部の気泡を微細化若しくは消泡することができ、美観が良く、均質で高品質の固化体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、変動的な慣性力を与える方向を説明するための概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、気泡微細化の第一のメカニズムを模式的に表した概略図である。
図3】(A)、(B)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、気泡微細化の第二のメカニズムを模式的に表した概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、気泡微細化の第三のメカニズムを模式的に表した概略図である。
図5A】(A)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の一例を示す模式図であり、(B)は、変動的慣性力を与える方向を説明する模式図である。
図5B】(C)は、変動的慣性力を与える方向の他の例を説明する模式図であり、(D)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の一例を示す模式図である。
図6】(A)、(B)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の他の例を示す模式図である。
図7A】(A)~(F)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部のいくつかの態様を説明する断面図である。
図7B】(G)、(H)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部のいくつかの態様を説明する断面図であり、(I)、(J)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置における、供給部と受容部とのいくつかの接続態様を説明する断面図であり、(K)、(L)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部のいくつかの態様を説明する断面図である。
図7C】(M)~(R)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部のいくつかの態様を説明する断面図である。
図7D】(S)~(X)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部のいくつかの態様を説明する断面図である。
図8A】(A)~(F)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部のいくつかの態様を説明する断面図である。
図8B】(G)~(K)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部のいくつかの態様を説明する断面図である。
図8C】(L)~(P)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部のいくつかの態様を説明する斜視図である。
図8D】(Q)~(S)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部に関し、流動体が詰まらないようにする構成を説明するための断面図である。
図9】(A)~(C)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の支持部のいくつかの態様を説明する断面図である。
図10A】本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置において回避部を有する例を示す模式図である。
図10B】本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の他の変形例を示す模式図である。
図11A】本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置において、流動体に変動的な慣性力を加えるプロセスの一例を示した概略断面図である。
図11B】局所的に振動及び/又は衝撃を付与する装置の一例を示した断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置において、流動体に変動的な慣性力を加えるプロセスの他の例を示した概略図である。
図13】実施例において条件を変えたときのコンクリートの気泡の状態を表した図である。
図14】実施例において条件を変えたときのコンクリートの気泡の状態を表した図である。
図15】実施例において条件を変えたときのコンクリートの気泡の状態を表した図である。
図16】実施例において条件を変えたときのコンクリートの気泡の状態を表した図である。
図17】実施例において条件を変えたときのコンクリートの気泡の状態を表した図である。
図18】実施例の他の態様において条件を変えたときのコンクリートの気泡の状態を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した気泡の微細化消泡装置について、図面を参照しながら以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
1.変動的な慣性力の意義
2.気泡の微細化消泡装置
【0017】
<1.変動的な慣性力の意義>
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置について説明する前に、本装置を用いて変動的な慣性力を付与する意義について説明する。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、流動体に対して変動的な慣性力を与え、流動体の物理的及び/又は化学的属性及び/又は微細化対象とする気泡の微細化前の物理的及び/又は化学的属性に応じて、少なくとも変動的な慣性力の変動幅、単位時間当たりの変動数、変動させる回数若しくは時間或いは変動時の加速度から選択される一つ以上の条件により変動的な慣性力を制御することを特徴とする。流動体全体に変動的な慣性力を与えることにより、流動体内部及び表面に存在する気泡を外観上、及び品質上問題ない大きさにまで微細化及び/又は消泡することができる。流動体に対して与える変動的な慣性力としては、特に限定されるものではないが、例えば、流動体を不規則に或いはランダムに変位させ、変位の際の正の加速や負の加速(減速)、或いは、向きを変更する過程等において発生させ、流動体に作用させることが出来る。
【0018】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置では、流動体自体に慣性力を付与すること、特に繰り返し慣性力を付与することが重要なのであり、例えば、特許文献3に記載されているような音源装置によって(超)音波を入射(照射)することが有効な訳ではない。音波の場合は、流動体を振動させる際、流動体自体が波動を伝搬する媒体となっているため、流動体を構成する物体の比重や粘性等の性状により、波動が減衰し、媒体が振動しなくなるので、結果として流動体も振動しないというメカニズムが生じてしまう。また、流動体を構成するのが複数の物体である場合、それらの大きさの差や比重差、質量差等から音波の諸条件によって振動する物体としない物体とが出てしまい、流動体全体に亘って均等な作用を与えられず、流動体全体に亘って気泡を崩壊させる作用を印加できないという問題が有る。特に、被振体である流動体が、複数の多様な形状や質量、比重の固形物を含有する場合、それぞれの表面や境界面において、入力音波が散乱され、及び/又は粘性抵抗等によって減衰してしまい、流動体の体積全体に波動が行き渡らないという問題が有る。
【0019】
これに対して、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置では、流動体の体積を成す全体に対してほぼ一様に慣性を作用させて、流動体を構成する物体全てに慣性力を与え、流動体の物理的及び/又は化学的属性及び/又は微細化対象とする気泡の物理的及び/又は化学的属性に応じて、変動的な慣性力の変動幅、単位時間当たりの変動数、繰り返し変動させる時間又は変動回数、加速度から選択される一つ以上の条件により変動的な慣性力を制御することにより、気泡を小細化するのに適した慣性力を気泡周辺に加え、気泡自体に生じる慣性力との差から流動体の表面及び内部の気泡を微細化することができ、これにより、美観が良く、高品質の製品を効率良く製造することができる。勿論、被揺動体である流動体に印加する慣性力としては、必ずしも往復的なものでなければならないというものではなく、規則的な慣性力の他、不規則的なものであっても規則性と不規則性の中間的なものであってもよい。
【0020】
変動的な慣性力を与える手段は、特に限定されないが、例えば、回転方向を繰り返し交番させる回転系における遠心力によって変動する慣性力を得るように構成されるものであってもよく、或いは、揺動や振動によることもできる。尚、揺動や振動による場合には、変動的な慣性力の変動幅は振幅に、単位時間当たりの変動数は振動数に、繰り返し変動させる時間は振動時間にそれぞれ相当する。
【0021】
尚、本発明において流動体とは、内部に気泡が保持される程度の粘性を有する、液体、粉体や粒体若しくは粉粒体等を有する流動性を示す固体、又は液体と固体の混合物を言う。流動体は、例えば、シャーベット状、ゼリー状、ペースト状、ゲル状、スラリー状、粘性流体、複数の物体が混合されて成るものやこれらの混合物等である。複数の物体が混合されて成るものにおいては、複数の物体は、それぞれ性状、形状、大小、比重、硬度、存在比等が多様な形態で混合されて成るものであってもよく、或いは均整の取れたものであってもよい。また、ペースト状を成す流動体としては、液体と気体との混合系が粉体乃至顆粒状或いは顆粒状より大きな固形物等の形態の固体によって囲繞された形態を成す所謂ペンデュラー状、及び/又は、内部に気泡が存在して成る液体を粉体乃至顆粒状等の形態の固体が囲繞した形態を成す所謂フェニキュラー状、及び/又は、気泡を含有しない液体が粉体乃至顆粒状等の形態の固体に囲繞された形態を成す所謂キャピラリー状の要素体を含有して成る混成状態のもの、不規則状態のものであってもよい。本発明の一実施形態では、気泡が内部に保持されてしまうような高粘性の流動体や混合物として成る流動体が好適である。
【0022】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、流動体が自身における反応により固化するものに対して適用することができる。気泡が含まれている状態で流動体を固化すると、固化体内部の気泡がそのまま空洞や窪みとして残存してしまうため、本発明に係る気泡の微細化消泡装置を適用することにより、流動体中の気泡を外観上、及び品質上問題ない大きさにまで微細化することにより、固化された場合であっても、固化体内部に大きな空洞として残存したり、表面に窪みが生じることを解消することができる。尚、ここで品質とは、気泡の微細化後或いは消泡後の流動体若しくは固化体の性状を規定する強度や剛性、弾性、質量分布、稠密性、均質性等のうち、要求される特性であって、特に、要求される特性が要求水準を満たすように、気泡の微細化或いは消泡がなされることが好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置では、変動的な慣性力は流動体の全体に対してほぼ均一に行き渡るように与えることが好ましい。均一に変動的な慣性力を与える方法としては、例えば、流動体を保持する気泡の微細化消泡装置全体を振動させる方法が挙げられる。上述したような、特許文献1に記載の振動機では、局所的にしか振動を与えることができず、また、流動体が粘性体のような場合には、全体にまで振動を与えたり、揺動させることができず、十分に気泡を消失させることができないため、振動や揺動は対象とする流動体全体に対して均一に与えることが好ましい。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、変動的な慣性力を与える方向を説明するための概略図である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置においては、変動的な慣性力は、流動体11に対しての鉛直方向、即ち図1のz軸方向に対して与えることが好ましい。鉛直方向に対しては、重力がかかっているため、重力と同方向に対して変動的な慣性力を与えることにより、より効率的に気泡12を微細化して消失させることができる他、気泡を鉛直方向上方に移動させて外部に追いやることも可能である。但し、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関しては、水平方向の変動的な慣性力の付与を除外するものではなく、図1のx軸方向又はy軸方向、或いはx軸とy軸を組み合わせた方向への慣性力を与えるものであってもよい。更には、鉛直方向の慣性力に加えて、上記水平方向への慣性力を与えるものであってもよい。更に、鉛直方向及び/又は水平方向の変動的慣性力の印加に加えて、被加振体を鉛直面内回転、又は、水平面内回転をさせてもよい。この場合、流動体を構成する複数の成分や物体の分離を低減することができる。また、流動体に対する慣性力の印加方法としては、一軸方向に沿った加速の変動によるもののみ成らず、流動体全体を規則的又は不規則的に回転方向を変動させながら回転させることで変動する遠心力を作用させるように構成してもよい。
【0025】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、気泡が微細化されるメカニズムを図2~4を用いて以下に説明する。尚、図2~4中、変動的慣性力方向は、図1のz軸と一致し、また、上下方向も図1の上下方向と一致している。また、本説明では、一例として流動体を単調的且つ往復的な運動によって変動的な慣性力を印加させたものとして説明しているが、運動は単調的且つ往復的な運動に限らない。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、気泡微細化の第一のメカニズムを模式的に表した概略図である。流動体中の気泡20は、流動体と気泡との界面に作用する張力Fs(以下、「界面張力」と称する)等が加わって形成されている。従って、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置では、気泡及び気泡を取り巻く流動体に変動的な慣性力を加えることにより、変動的な慣性力の向きが変わるときに、気泡を取り巻く流動体を構成する要素体の質量に比例して作用する慣性力Fi(特に、界面周辺に存在する流動体を構成する要素体に作用する慣性力をここでは界面慣性力と称すことがある。)によって気泡に圧力を与える。詳細に説明すると、単調的且つ往復的な運動に合わせた流動体の上下運動は、上方向への加速移動、上方向への減速移動、下方向への移動方向変更、下方向への加速移動、下方向への減速移動、上方向への移動方向変更を繰り返し行うことになるが、このような加速と減速を繰り返す移動の中で気泡20に慣性力Fiが加えられる(図2(A))。この際、慣性力Fiの大きさが界面張力Fs若しくは後述の崩壊抵抗力よりも大きくなるような振動を加えることにより、気泡20を変形させることができ(図2(B))、最終的には、流動体中に存在する或る一つの気泡20を複数の気泡20A、20Bに分断させ、小細化させることができる(図2(C))。この小細化を繰り返すことによって、流動体中の気泡が外観上及び品質上問題ない大きさにまで微細化されることで、流動体中の気泡を肉眼で見えない状態として消失させることができる。
【0027】
このように、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置では、変動的な慣性力の印加により、気泡と流動体との質量差からもたらされる慣性力差によって気泡を崩壊させ、更に二次の気泡分裂、三次の気泡分裂、・・・のように高次の気泡分裂へと分裂を促進し、これに伴って、気泡を微細化させて行き、所望レベルのサイズまで到達させることで消失効果を得る。このとき、気泡の総体積は、高次気泡分裂化の前後でそれほど変化せず、気泡は流動体中に微細化して残存していても良い。従って、所定レベル以下に高次気泡分裂化を進行させた結果生じる微細気泡は、例えば、直径約25~250μm程度のエントレインドエア化させることが可能であると考えられる。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、気泡微細化の第二のメカニズムを模式的に表した概略図である。気泡微細化の第二のメカニズムは、流動体が粉体乃至顆粒状等の形態の固体を含有する場合に、主に機能する。例えば、コンクリートの製造のようにセメントペースト、細骨材及び粗骨材等を含む場合である。便宜的に、コンクリートに対する気泡の微細化消泡装置の使用を例に説明するが、勿論、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、これに限定されるわけではない。
【0029】
変動的慣性力の印加により、流動体30は、印加する単調的且つ往復的な運動のピークとピークの中間位置において、具体的には、流動体30が上方向の移動から下方向への移動へと移動方向を変えて下方向への加速を開始して流動体30の自由落下の速度と一致した時に、瞬間的に無重力に近い状態となる。このとき、流動体30を構成する大径の粗骨材31a及び小径の粗骨材31b(粗骨材31)と、粗骨材31間に存在する細骨材32と、これら粗骨材31と細骨材32の間に介在するセメントペースト33との間に作用していた重力による摩擦力がほぼゼロになる(図3(A))。次の瞬間、振動のピーク(流動体30の運動方向が下方向から上方向に移動方向を変更する位置)に達すると、これら粗骨材31、細骨材32、セメントペースト33は、互いが接触した分布としての再配置が成される。この過程で、互いの間に作用する摩擦力は、徐々に最大値に向かって変動するため、途中経過では緩い摩擦力、即ち、固相的ではなく、液相的な流動状態で、より位置エネルギー状態の低い安定状態に向かって流下する(図3(B))。この流下は、気泡34周辺では流動体30から気泡34内へのセメントペースト33や細骨材32を中心とした流れ込みとして生じることになり、流れ込まれる気泡34は埋まる方向にシフトし、流れ込まれる流動体30側では気泡34内に在った気体との入れ替わりが生じることになる。このような流動体/気体交換流動は、一つの気泡34に対して一カ所で起これば、元々の気泡は崩壊すると共に、気体はより上方へと変位することになり、結果として気泡34が上方に移動したようになる。また、一つの気泡34に対する流動体/気体交換流動が複数カ所で生じると、元々一つの気泡34は、より小さな複数の気泡に分裂したように、各々上方に変位する。このように連鎖的に流動崩壊を繰り返すことで、気泡は微細化されるか、又は、最上部まで到達して、流動体30を抜け切るかする。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置に関して、気泡微細化の第三のメカニズムを模式的に表した概略図である。上述した流動体40中の気泡微細化の第一のメカニズム及び第二のメカニズムでは消失されない気泡41が存在し得る。しかしながら、このような気泡41は、粗骨材を含まないモルタルの場合には殆ど存在しない。従って、気泡41生成の主因は、粗骨材42の存在によって生成されると考えられる。つまり、気泡41は粗骨材42に近接されて存在し得、幾つかの粗骨材42に囲まれた空隙が存在して、それら粗骨材42に空気がトラップされることで構成されると考えられる。このような構成の気泡41は、密度が比較的近い粗骨材42同士が寄り集まって且つそれら粗骨材42と密度の近いモルタル(細骨材43とセメントペースト44)をバインダー材として集合体を成している。このことから気泡41は、第一のメカニズム及び第二のメカニズムでは崩壊しない、或いは著しく崩壊し難いものと考えられる。このような構成の気泡41が消失するメカニズムとしては、気泡41を構成する粗骨材42に対して、固有振動数の共振振動を印加することが有効である。
【0031】
現実的には、第一メカニズム、第二メカニズム、第三メカニズムを複合した形態として気泡は微細化して行くと考えられるが、ここで、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置における、変動的慣性力を付与する条件の設定について更に詳しく説明する。以下では、主に上記第一のメカニズムを念頭に説明するが、第二、第三のメカニズムにも適用可能な部分については適宜置き換えて理解しても良い。上述したように、気泡を微細化するためには、気泡に働く気泡の状態を維持しようとする力(以下、「気泡の崩壊抵抗力」と称する)よりも、大きな力、即ち慣性力を振動や衝撃、遠心力(但し、定常的な遠心力のような慣性力を印加しても気泡を崩壊させることが出来ないことが少なくない。そこで、角速度を加速度的に変化させるなどして非定常状態とすることが好ましい。)等により気泡に与える必要がある。
【0032】
気泡の崩壊抵抗力は、流動体の粘性、比重、構成要素の質量、気泡のサイズ、気泡の界面張力、気泡の内圧、骨材様の固体を含んだ固液混合の流動体の場合にあっては固体間の係合によってトラップされる気体の存在性と固体による気体の囲繞度合い等をパラメータとするものである。従って、対象とする流動体の種類及び/又は気泡のサイズ、形状、形態等により、適宜設定又は推測することが可能である。本発明の一実施形態に係る変動的慣性力では、気泡の崩壊抵抗力を超える力が気泡に加わるように変動的慣性力を制御する。
【0033】
与える変動的慣性力については特に限定されないが、一例として、単振動を例に挙げて説明する。
【0034】
振幅は、特に限定されるものではないが、例えば、気泡の直径の10分の1程度以上であって、好ましくは気泡の直径と略同一程度以下の幅とすることができる。振幅がこの範囲より小さ過ぎたり又は大き過ぎたりすると、流動体に加わる慣性力が不十分となって気泡を崩壊させる力が弱くなり、気泡を微小化する力が十分に加わらなくなったり、或いは、過剰な加振エネルギーを加えることになり、エネルギー的にも非効率であって、流動体の構成要素を分離させてしまう可能性が生じるなど不合理となる。尚、流動体が、比重の異なる複数の材料の混合体である場合、過剰な振動を加えると、成分が分離する恐れがある。振動を加えることによって、気泡は次第に分裂し、微小化して行くため、時間の経過に沿って振幅を次第に小さくして行ってもよい。
【0035】
ところで、被振体である流動体全体の系に対する慣性力が一定であれば、系内の至る所に作用する単位面積当たりの力、即ち面圧は概ね一定とみなせる。従って、大径の気泡は、表面積が大きく、気泡全表面として受ける力は比較的大きくなる一方、小径の気泡では、表面積が小さく、気泡全表面積として受ける力は比較的小さくなる。つまり、小径気泡は、大径気泡に比して崩壊し難くなる。よって、流動体に慣性力を作用させて気泡が細分化して行く過程で、慣性力のもととなる加速度を上昇させ、結果として慣性力を増大させて行くことが好ましいといえる。この際、振幅をターゲットとする気泡サイズに合わせて、漸次低下させるとすれば、その分、振動数を増大させることで加速度を増加させることも出来る。
【0036】
また、本発明の一態様では、振動数(周波数)により振動を制御することができる。周波数は特に限定されないが、例えば、10~90Hz程度の振動を与えてもよい。周波数が大き過ぎると、流動体が比重の異なる複数の成分から構成されている場合に、各成分が分離する恐れがあるため好ましくない。また、上述したように、振動を与えると気泡は次第に小さくなって行くため、それに合わせて振動数を次第に大きくして行くように設定してもよい。
【0037】
また、本発明の一態様では、振動時間又は振動回数により振動を制御することができる。振動時間も特に限定されるものではないが、例えば、10秒から10分程度の範囲とすることができる。流動体が固化する場合には、固化反応が終了するまでの間に気泡の微細化が完了するように振動条件を設定する必要がある。また、一定時間を超えて振動させても条件によっては、消泡せず残存し続ける気泡が有り得て、その場合、投入するエネルギーのロスに繋がることになるため、所要の時間程度で停止することが好ましい。
【0038】
このように、流動体の種類及び/又は気泡の大きさに応じて、振幅、振動数、振動時間から選択される一つ以上の条件により振動を制御する。気泡が振動により分裂して一定以上、サイズが小さな気泡となった場合、それまでの振幅、振動数では小さくなった気泡を更に微小化することはできないことがある。従って、振動時間の経過に応じて振幅と振動数を同時に制御し、小さなサイズの気泡に対しても、気泡の崩壊抵抗力を十分に超えるような加速度Gが加わるようにしても良い。
【0039】
ここまでコンクリートの加工成型体を製造する場合を例に述べたが、勿論、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、コンクリートの製造以外にも適用することができる。本発明は、流動体の種類、配合割合、製造量等によって何ら限定されるものではなく、流動体はその種類に応じて用いる装置、器具に対して適宜変動的な慣性力を与えることができるような構成を加えれば良い。
【0040】
上述したコンクリートは、セメントに水や充填剤(充填材)や通常の骨材等を加えて硬化させ得るコンクリートの他にも、ローマンコンクート、繊維補強コンクリートやポリマーコンクリート等のコンクリートをも含む。また、細骨材のみを使用したモルタルや、骨材を使用しないセメントペーストをも含む。骨材としては、コンクリートに通常用いられる物や従来公知の物であればどのようなものでもよく、砂、砂利、砕石、破砕ガラス、がれき、人工材等や廃棄物等を用いることが可能である。更にセメントも、特に限定されるものではなく、例えば、ポルトランドセメント、ローマンセメント、レジンセメント等を使用することができる。
【0041】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、所謂コンクリート二次製品に対して好適に利用可能である。例えば、杭、管、平板、擁壁、床版、床板、壁高欄、コンクリートブロック、ボックスカルバート、アーチカルバート、カルバート、ヒューム管(鉄筋コンクリートを用いた管)、フリューム、ケーブルトラフ、共同溝、カーテンウォール(幕壁、帳壁)、外壁、コンクリート橋、橋げた、トンネルセグメント(シールドトンネル)、配水管、排水管、貯蔵槽、水槽、排水桝、街渠桝、放射性廃棄物の容器、核シェルター、電柱、舗装(道路)、側溝、側溝蓋、マンホール、組立マンホール、マンホール蓋、ボックスマンホール、境界ブロック、縁石、車止めブロック、根固ブロック、インターロッキングブロック、植生ブロック、防護柵、矢板、防音材、消波ブロック、護岸ブロック、マクラギ、オブジェ(像)に適用可能である。また、上述の例の他にも様々な製品、例えば、型枠を用いて成型する製品(プレキャスト製品)等に対して好適に適用可能である。例えば、人造石や人工大理石、タイル、陶器、磁器、側溝部材、蓋、便器、墓石、鳥居、銅像、仏像、石膏像や石膏製品、ガラス製品、鉄系やアルミニウム系、銅系等の各種金属の鋳物等やダイキャスト製品等、流動体を固化成型して製造するもの等あらゆるものに適用可能である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化方法を適用して気泡を除去することで、外観を良くするだけでなく、空洞の発生による強度の低下を防止し、品質の高い製品を提供することができる。
【0042】
更に、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、例えば、エポキシ樹脂のような二液混合系の樹脂、シリコーン、ゴム、口紅やマスカラ等の化粧品、石鹸、色鉛筆、ペンキ等の塗料、シーリング剤、潤滑剤、導電剤といった化学製品にも適用可能である。即ち、必ずしも固化するもののみに限られず、気泡が内部に保持される程度の粘性を有するものに対しても適用可能である。
【0043】
更に、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、工業製品だけではなく、食品の製造工程に対して適用することも可能である。例えば、豆乳ににがりを添加して豆腐を製造する場合のように、材料を混合して固化させるものなど、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置を適用することが可能であり、固化した際に混入した気泡による窪みや空洞が無く、表面がきめ細かく外観上優れた豆腐等の食品を提供することができる。豆腐の他にも、かまぼこ等の練り物、こんにゃく、飴、はちみつ等の食品の製造にも適用可能である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置を適用して気泡を除去することで、外観を良くするだけでなく、体積と質量の分布の均等化の向上を図ることが出来、また気泡の混入による酸化劣化を防止するなど、品質の高い製品を提供することができる。
【0044】
このように、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、上述したような様々な流動体加工製品の製造において適用可能である。
【0045】
<2.気泡の微細化消泡装置>
次に、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置について説明する。図5A(A)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の一例を示す模式図である。本発明の一態様は、流動体に変動的な慣性力を付与する気泡の微細化消泡装置50aであって、少なくとも、流動体を受容する型枠としての受容部53aと、受容される流動体に対して変動的な慣性力を付与する変動的慣性力付与機構54aを備え、変動的慣性力付与機構54aは、流動体の種類及び/又は気泡の大きさに応じて、変動的な慣性力の変動幅、単位時間当たりの変動数、繰り返し変動させる時間又は変動回数から選択される一つ以上の条件により前記変動的な慣性力を制御することを特徴とする。
【0046】
変動的な慣性力は、後述する実施例のように流動体に対しての鉛直方向(上下方向)、即ち図5A(A)のz軸方向に対して与えることができるが、水平方向の変動的慣性力を除外するものではなく、図5A(B)に示すように、x軸方向又はy軸方向、或いはx軸とy軸を組み合わせた方向への変動的慣性力を与えるものであっても良い。更には、これらの変動的慣性力の合成方向としては、前後(x軸方向)、左右(y軸方向)、上下(z軸方向)を組み合わせた方向でも良く、これらは、往復運動でなくても良い。或いは、図5B(C)に示すように、鉛直方向及び/又は水平方向の変動的慣性力の印加に加えて、又は別途単独で、受容部を鉛直面内回転、又は、水平面内回転をさせても良い。回転運動は、楕円運動でも良く、正面から見たときに同様な回転運動を行うようにしても良い。いずれの運動も受容部の姿勢は維持したまま移動、所謂、並進運動として説明しているが、並進運動でなくても良い。
【0047】
このような、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置50aを用いて受容体53aを駆動して、受容体53a内の流動体全体に対してほぼ一様に且つほぼ均一に変動的な慣性を作用させて流動体を構成する物体全体に慣性力を付与することにより、流動体の表面及び内部の気泡を微細化、若しくは、消泡することができ、美観が良く、高品質の製品を効率よく製造することができる。一方で、型枠で形成される大型コンクリート製品にあっては、20t近くもあるような質量の大きなものも少なくない。このような質量の大きなものを上述の気泡の微細化消泡装置50aにより型枠を用いて生コンクリート全体を揺動させようとすると、巨大な装置が必要になる上、その装置からの振動が、周辺に伝播して周辺地域に振害を発生させてしまう恐れがある。
【0048】
そこで、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置50は、図5B(D)に示すように、流動体が供給される供給部51及び/又は流動体が排出される排出部52を有することができる。例えば、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置50が、上方が開放した有底形状のように型枠としての機能を有するものであれば、供給部51のみを有する(上述した気泡の微細化消泡装置50a)。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置50が、貯留器のように流動体を貯留する機能を有するものであれば、排出部52のみを有する。或いは、発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置50は、供給部51と排出部52の両方を有する。以下、供給部51と排出部52の両方を有する場合、即ち、主に流動体の送液時及び/又は型枠等に流動体を流し込む際に変動的な慣性力を付与する場合に用いる気泡の微細化消泡装置50を例に説明する。勿論、例えば、供給部51のみを有する発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置50の場合には、型枠としての気泡の微細化消泡装置50に流動体が流し込まれた後に変動的慣性力を付与することとなる。
【0049】
流動体は、例えば、気泡の微細化消泡装置50の供給部51に投入され、供給部51から排出部52までの間の受容部53を通過し、排出部52から排出されるまでの間の一定時間に変動的慣性力付与機構54によって変動的な慣性力が付与される。上述したように、流動体に変動的な慣性力を付与することで、流動体中の気泡を微細化することができる。
【0050】
変動的慣性力付与機構54は、例えば、駆動部と、駆動部と受容部53とを接続する接続部と、駆動部の動きを制御する制御部とを備えることができる。駆動部については、特に限定はされないが、例えば、電磁式駆動源によるものとすることができる。電磁式駆動源によるものであれば、変動的な慣性力の変動幅、単位時間当たりの変動数、繰り返し変動させる時間又は変動回数の制御も比較的容易に制御することができる。制御部は、流動体に含まれる気泡の状態や経過時間に応じて適宜これらのパラメータを変更可能としても良い。勿論、本発明の一実施形態に係る駆動部は、電磁式駆動源による物のみに限定されず、バネやモーター、油圧式、空圧式、液圧式、或いはこれらを組み合わせる構成等により機械的に変動的な慣性力を付与する構成としても良い。
【0051】
流動体に変動的な慣性力を付与するための受容部53の駆動動作は、駆動部によって作り出される動作がそのまま受容部53に伝えられるものであっても良いし、また、駆動部の動作が接続部で所定の動作に変換されて受容部53に伝えられてもよい。例えば、受容部53に揺動がもたらされるとして、駆動部が直線的な往復動作を出力するものである場合、接続部は駆動部と受容部53を直接接続してもよいし、また、駆動部が回転的な動作を出力するものである場合、接続部は回転運動を直線運動に変換する変換機構を含んで構成されて受容部に接続してもよい。さらに、揺動の揺動幅を変更する場合、駆動部の動作を制御的に変更するようにしても良いし、また、接続部で、機構的に変更するように構成してもよい。
【0052】
受容部は伸縮可能な構造としても良く、或いは、可撓性を有する部材から構成されていても良い。図6(A)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の他の一例を示す模式図である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置60aは、同様に、流動体を受容する受容部63aと、受容される流動体に対して変動的な慣性力を付与する変動的慣性力付与機構64aを備える。受容部63aは、流動体が供給される供給部61aと、流動体が排出される排出部62aとを備えることができる。そして、受容部63aは、伸縮可能な素材及び/又は可撓性を有する素材で形成することができる。このような構成とすることにより、流動体を目的とする排出箇所により誘導し易くなり、且つ、誘導中に流動体に変動的な慣性力を付与することで流動体中の気泡を微細化することができるため、効率的である。
【0053】
図6(B)には、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の他の例を示す。受容部63bは、例えば、伸縮可能な可動通路65、66を介して固定通路67、68にそれぞれ接続可能な構成を有しても良い。受容部63bは、例えば、所望の剛性を有している。受容部63bは、流動体が供給される供給部61bと、流動体が排出される排出部62bとを備え、供給部61b及び/又は排出部62bはそれぞれ、例えば蛇腹等で形成される可動通路65、66を介して固定通路67、68に接続されている。
【0054】
図7A図7Bは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部のいくつかの態様を説明する断面図である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71aは、例えば図7A(A)に示すように、供給口710aを有し、流動体は供給部71aから気泡の微細化消泡装置の内部へと導入される。そして、流動体が気泡の微細化消泡装置の排出部から排出されるまでの一定時間に変動的慣性力付与機構により、流動体には変動的な慣性力が付与される。
【0055】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71bは、図7A(B)に示すように、面状の底状部711bを有し、その周囲から鉛直方向に立設される側面部712bと、底状部711bの中央付近で上下に貫通する供給口713bと、供給口713bの周囲から受容部内に向かって鉛直に延びる流入口710bを備えていても良い。このような構成にすることにより、供給部71bで流動体を広く受け入れることができると共に、受容部への流動体の流入量を調整することができ、流動体が外部に飛散するのを防止することができる。側面部712b及び/又は流入口710bは必須の構成ではなく、或いは、側面部712b及び/又は流入口710bは鉛直方向に対して傾斜していても良い。
【0056】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71cは、図7A(C)に示すように、供給口712cの周囲から上方に向かって且つ外側に拡径するように傾斜して広がった面状の開口部710cを有していてもよい。供給部71cは、流入口711cを有していても良い。このような構成とすることにより、供給された流動体は、受容部内部に誘導され易くなる。開口部710cの角度は特に限定されず、傾斜が大きなものであっても良い。
【0057】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71dは、図7A(D)に示すように、供給口712dの周囲から上方に向かって且つ外側に広がるように湾曲した略お椀型の面状の開口部710dを有していてもよい。供給部71dは、その端部に立設される側面部及び/又は流入口711dを有していても良い。このような構成とすることにより、供給された流動体は、略お椀型の開口部710dに沿って受容部内部に誘導され易くなる。なお、この湾曲ラインとして最速降下線を選択して、より速い流れを促してもよい。
【0058】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71eは、図7A(E)に示すように、供給口711eの周囲から上方に向かって且つ外側に広がるように湾曲した略ラッパ型の面状の開口部710eを有していてもよい。供給部71eは、その端部に立設される側面部及び/又は流入口を有していても良い。或いは、流入口は開口部710eに沿って湾曲させて構成しても良い。このような構成とすることにより、供給された流動体は、略ラッパ型の開口部710eに沿って受容部内部に誘導され易くなる。
【0059】
或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71fは、図7A(F)に示すように、供給口712fの周囲から上方に向かって流入口711fと略同径に狭まった開口部710fを有していても良い。このような開口部710fは、例えば、更に液送管等(配管やホース等)と接続可能な接続機構を有していても良い。このような構成にすることにより、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、例えば、流動体を貯留している貯留器等から直接流動体を導入することができ、流動体の流下量を制御することができる。流入口711fは、無くても良い。
【0060】
また、供給口は必ずしも一つである必要はなく、例えば、図7B(G)に示すように、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71gは、二箇所以上の供給口710g1、710g2を有していても良い。このような構成は、例えば、複数の流動体を混合して供給する必要がある場合などに有効である。或いは不適当な大きさの要素を除外することができる。その他の構成としては、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の供給部71hは、図7B(H)に示すように、分割部711hを備えることで、一の開口を複数の開口部710h1、710h2に分割して、各開口がそれぞれの供給口712h1、712h2に接続するような構成としても良い。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置における、供給部と受容部との接続態様について説明する。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、図7B(I)に示すように、供給部71iの側面部711iと、受容部73iの側面部731iが略同幅で供給部71iと受容部73iが隙間無く連結される構成とすることができる。或いは、受容部73iの側面部731iの幅は、供給部71iの側面部711iの幅よりも狭くても良い。流動体は、供給部71iの供給口710iから流入するため、受容部73iの開口部側は、必ずしも供給口710i以上の幅を有する必要はないからである。従って、受容部73iの供給部側の側面部731iの幅は、供給部71iの供給口710iの幅と略同一でも良い。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、図7B(J)に示すように、受容部73jの供給部側の側面部731jの幅が供給部71jの側面部711jの幅より広く形成されていても良い。この場合には、供給部71jと受容部73jの間には隙間が形成される。このような構成は、例えば、受容部73jの側面部731jの幅が広く、供給部71jがそれほど広い幅を有する必要がない場合等に適用することができる。供給部71jと受容部73jの間に隙間が形成されることによって、隙間等から空気等を流入させることができる。さらに、受容部内において揺動される流動体から抜け出して来る気体を隙間等から排出することもできる。このような隙間は、例えば、受容部73jの側面部731jの幅が、供給部71jの側面部711jの幅よりも狭い場合や、受容部73jの供給部側の側面部731jの幅が供給部71jの供給口710jの幅と略同一の場合に、供給部と受容部の間に形成しても良い。また、図7B(I)、(J)に示すように供給口710i、710jを受容部73i、73j上面の略中央付近に、その幅が受容部73i、73jの側面部731i、731jの幅よりも狭くなるように設ける構成とすることで、供給口710i、710jから供給された流動体が受容部73i、73jの側面部731i、731j内面に付着することを低減したり無くすことが出来、このため流動体が排出され難くなるという弊害を防止することができ、短時間で滞りなく流動体に変動的慣性力を付与できるという利点も生じる。この時、供給部71i、71jの側面部711i、711jの形状は、図7A(C)~(E)に示したような傾斜した形状や、湾曲した形状でも良い。
【0062】
次に、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置における、受容部の態様について説明する。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73kは、流動体が通過し得るように中空形状を成し、例えば、図7B(K)に示すように、略同一の幅の側面部731kにより形成される。そして、例えば、受容部73kにおいて、変動的慣性力付与機構により、流動体には変動的な慣性力が付与される。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73lは、図7B(L)に示すように、受容部73lを排出部に向かって幅が拡くなる錐形にしてもよい。この時、受容部73lの側面部731lは、下端開口の水平方向における断面積が上端開口の水平方向における断面積よりも大きくなる。或いは、上端よりも下端の開口の断面積の方が小さくても良いが、この場合は、後述するように流動体が排出部で詰まらなくなるようにする必要がある。
【0063】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73mは、図7C(M)に示すように、受容部73mの排出部側の側面部731mが幅広くなるように拡張されていても良い。このようにすれば、排出部における流動体の詰まりをより防止することができる。勿論、供給部側を幅広くする構成とすることも除外されない。
【0064】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73nは、図7C(N)に示すように、側面部731nが縮径と拡径を繰り返すように、略ジグザグ状の側面を形成していても良い。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73oは、図7B(O)に示すように、側面部731oが縮径と拡径を繰り返すように、略波状の側面を形成していても良い。このような構成とすれば、流動体が受容部内を緩やかに通過するため、変動的な慣性力を比較的長時間に亘って付加することができる。側面部の形状はその他にも、略樽型であっても良いし、略鼓型であっても良いし、略蛇腹型であっても良い。又、それぞれ、上端開口と下端開口の大きさを変えても良い。
【0065】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73pは、図7C(P)に示すように、側面部731pが鉛直面に対して傾斜して形成されていても良い。またこの時、垂直断面において上側の側面部732pと下側の側面部731pとが垂直方向において、少なくとも一部重なっている(垂線P1-P2間)ように形成することができる。このような構成とすると、供給された流動体が直接排出口から排出されず、側面部に沿って誘導されて、受容部の上端開口から下端開口までの高さを変えることなく、上端開口から下端開口までの経路長を長くすることができるため、変動的な慣性力を比較的長時間に亘って付加することができる。
【0066】
更に、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73qは、図7C(Q)に示すように、側面部731qが階段状に形成されていても良い。この時、水平な平坦部732qは傾斜していても良い。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73rは、図7C(R)に示すように、両側の側面部731r、732rの幅が次第に広くなるように形成されていても良い。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73sは、図7D(S)に示すように、全体を湾曲させて、両側の側面部731s、732sの幅が一方から他方に向かって次第に広くなるように形成されていても良い。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73tは、図7D(T)に示すように、受容部73tの一部を、水平方向に湾曲させても良い。これらのような構成とすることで、流動体の流れを迂回させることで変動的な慣性力を比較的長時間に亘って付加することができる。
【0067】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73uは、図7D(U)に示すように、受容部73uを円筒状に形成し、その内部にらせん状のスロープ733uを形成するようにしても良い。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73vは、図7D(V)に示すように、受容部73vの内周から中央側に向かって傾斜する庇733v、734vを左右から交互に突出させるようにしても良い。左右の庇733v、734vの先端は中央を越えないようにしても良いし、越えるようにしても良い。即ち、鉛直方向からみて左右の庇733v、734vが重ならないようにしても良いし、重なるようにしてもよい。
【0068】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73wは、図7D(W)に示すように、受容部73wの下方を二つに分岐するように構成しても良い。勿論、分岐は二つ以上の複数であっても良い。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の受容部73xは、図7D(X)に示すように、受容部73xの両側面部731x、732xの中間に隔壁733xを設け、流動体の経路を二つに分けるような構成にしても良い。この時、隔壁733xの下方は、側面部731x、732xよりも短くしても良く、長くしても良い。
【0069】
図8A図8Bは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部のいくつかの態様を説明する断面図である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82aは、例えば図8A(A)に示すように、側面部821aの下端に排出口820aを有する底面部822aを水平に形成することができる。この時、底面部822aは下方に傾斜させても良いし、更にその傾斜角度が大きくなるようにしても良い。また、このような排出部82aは、例えば、更に液送管(配管やホース等)と接続可能な接続機構を有していても良い。或いは、底面部を上方、即ち受容部内部に向かって傾斜させても良いし、底面部を設けない構成としても良い。例えば、排出部82aからの流動体の排出量(体積流量)は、供給部からの導入量(体積流量)よりも少なくなるように排出口820aの大きさを設定することにより流動体を受容部に十分に充填した状態で必要な所定時間、気泡の微細化消泡装置内に滞留させることができ、この間に変動的な慣性力を付与することができる。
【0070】
本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82bは、図8A(B)に示すように、排出部82bの端部が外側に拡張するように拡がった構成を有していてもよい。このように側面部821bの下端に底面部を形成せずに拡張部分822bを有することにより、流動体が排出部で詰まることを防止することができる。この時、拡張部分822bは、外側に水平となるように形成されていてもよいし、拡張部分822bを上側に反り返るように傾斜させてもよい。
【0071】
或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82cは、図8A(C)に示すように、側面部821cの下端から下方に向かって且つ外側に広がるように湾曲した略逆お椀型の面状の開口部822cを有していてもよい。開口部822cは、例えば、流動体の排出先が突出した口部を有するような場合に、その口部の形状に適合するように設計することもできる。
【0072】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82dは、図8A(D)に示すように、側面部821dの下端に面状の底状部822dを有する構成とすることができる。面状の底状部822dを有することにより、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82dは、例えば、自立可能とすることもでき、或いは、開口部820dを排出先の底面付近で安定的に保持することができる。
【0073】
なお、図8A(A)において底面部822aを設けない場合や、図8A(B)~(D)のような底面部を設けない構成においては、流動体の粘性と受容部側面部の内面への粘着性等を考慮して受容部の断面積と断面形状等を所望の大きさ、形状に設定することによって、受容部に流入した流動体を受容部側面部の内面に付着させて落下速度を抑制し排出口付近に滞留することで、受容部の揺動に応じて滞留した流動体全体に対してほぼ一様に且つほぼ均一に変動的な慣性力を付与することが可能になる。
【0074】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82eは、図8A(E)に示すように、底面部822eに複数の排出口820e1、820e2を形成しても良い。勿論、排出口820e1、820e2の位置及び数量はこの態様に限定されない。このような構成とすることで、流動体を複数の排出口から分散して排出することができるため、流動体が一箇所に集中することを防止することができる。底面部822eは、中央が上方(受容部内部方向)に突出した略へ字状となっていても良いし、突出は上側に凸の湾曲状でも良い。このような形状とすることにより、底面部822eに流動体が滞留するのを防止することができる。勿論、底面部822eが下に凸の湾曲状となることも除外される訳ではない。
【0075】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82fは、図8A(F)に示すように、側面部821fの下方に排出口820fを形成しても良い。また、底面部822fは、中央部が上方に突出し、外側に向かって徐々に傾斜がゆるくなるように湾曲している形状とすることができる。また、底面部822fの両側にも排出口823fが形成されている。このような構成とすることにより、流動体は、底面部822fで左右若しくは周囲に分配され、左右に形成された側面部側排出口820f及び底面部側排出口823fからそれぞれ排出される。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82gは、図8B(G)に示すように、底面部822gの両端が側面部821g側の排出口820gまで延びており、底面には排出口が形成されない構成としても良い。更には、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82hは、図8B(H)に示すように、底面部822hの両端が側面部821h側の排出口820hを越えて延びており、底面には排出口が形成されない構成としても良い。この時、底面部822f、822g、822hは、水平方向に略平らな形状であっても良い。これらのような構造とすることにより、例えば、型枠の底面付近で流動体を排出する場合に、受容部内に流動体を滞留させることが可能となり、所定以上の揺動を流動体に与えることが可能となる上、側面側から流動体を排出するため、落下によるエントラップトエアの混入をより防止することができる。変動的な慣性力を例えば水平方向に付与しても良い。
【0076】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82iは、例えば、図8B(I)に示すように、二つの排出口820i1、820i2を有していても良い。このような構成とすれば、例えば、複数の方向に均等に流動体を排出することができる。二つに分かれた排出口820i1、820i2の水平方向におけるそれぞれの断面積は、分かれる前の断面積と同じか、又は大きくすることができる。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82jは、例えば、図8B(J)に示すように、分岐部822jの底面を水平にし、且つ上部を中央部が上方に突出して外側に向かって徐々に傾斜がゆるくなるように湾曲している形状にし、分岐部822j周辺の側面部821jが、分岐部822jに沿って外側に膨らむように湾曲していても良い。また、分岐部の形状によっては逆に内側に湾曲していても良い。また、勿論、それぞれの形態において排出口の数は三つ以上或いは、周回全体に亘って形成されるものであっても良い。
【0077】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82kは、図8B(K)に示すように、例えば、受容部を筒状に形成し、底面部822kを底面を水平に形成し且つ中央部が上方に突出するように形成し、側面部821kの下方の左右または全周に亘って排出口820kが形成されるように構成しても良い。この時、底面部822k側にも左右又は全周に亘って排出口823kが形成されていても良い。
【0078】
このような排出部の具体例を図8C(L)~(O)に示す。例えば、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82lは、図8C(L)に示すように、受容部83lを円筒状とし、底面部822lを略三角柱を横にした形状とすることで、底部両側面に排出口820lを形成することができる。このような構成とすることにより、流動体は、底面部822lで左右に分配され、左右に形成された底部両側面側排出口820lからそれぞれ排出される。底面部822lの左右を受容部83lの両側面よりも短くして排出口823lが形成されてもよい。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82mは、図8C(M)に示すように、受容部83mを角筒状とし、底面部822mを略三角柱を横にしたような形状としても良い。
【0079】
或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82nは、図8C(N)に示すように、受容部83nが円筒状の場合、底面部822nを円錐状とすることで、受容部83nの底部の周方向の全方位に排出口820nを形成することもできる。このような構成とすることにより、流動体は、底面部822nで周方向の全方位に分配され、全周方向に形成された排出口820nから排出される。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の排出部82oは、図8C(O)に示すように、受容部83oが角筒状を成す場合、底面部822oを角錐状とすることで、受容部83oの底部の周方向の全方位に排出口820oを形成することもできる。このような構成とすることにより、流動体は、底面部822oで周方向の全方位に分配され、全周方向に形成された排出口820oから排出される。勿論、受容部を円筒状、底面部を角錐状とすることや、この逆の構成とすることも可能である。それぞれの底面部は、底部を頂点から外側に向かって傾斜が緩くなるように形成しても良いし、頂点から外周に向かって周方向に螺旋状や徐々に幅が広がるように複数の溝が伸びているような構成としても良い。また、底面部は、図8C(P)に示すように、各面が内側も湾曲した形状でも良く、或いは、外側に湾曲した形状でも良い。受容部における筒状部分の断面形状と、底面部の底面形状は、同一形状でも良いし、相似形でも良い。また、筒状部分の断面形状と底面部の底面形状が多角形である場合、それぞれの角数は必ずしも同じでなくても良いし、また、それぞれの角の周方向の位置は、対応していても良いし、ずれていても良い。
【0080】
なお、図8C(O)において、受容部は、底面部822oが側面部等からなる受容部本体821oから分離しているような断面図となっているが、底面部822oは、受容部本体821oの中心部から吊り上げて受容部本体821oに固定しても良いし、底面部822oの下端のそれぞれの頂部から受容部本体821oの下端のそれぞれの頂部に向かって支持片を延設して支持しても良いし、底面部822oの底面における各辺のそれぞれの中央から受容部本体821oの下端の各片のそれぞれの中央に向かって支持片を延設して支持しても良いし、支持片を下方に弛むように延設しても良い。底面部822oを受容部本体821oに対して固定できるものであれば特に限定されない。或いは、底面部822oを受容部本体821oとは接続せずに、別々に駆動するようにしても良い。底面部822oを動かさずに受容部本体821o(受容部+供給部、又は、受容部のみ)を駆動しても良いし、底面部822oと受容部本体821oとを別々に駆動しても良いし、底面部822oのみを駆動しても良い。
【0081】
ここまで、排出部の態様について幾つか例を挙げて説明してきたが、排出部を設計するに際しては、流動体を滞留させてもよいが詰まらないような構造にすることが重要である。上述の通り、流動体は、細骨材乃至粗骨材等の形態の固体を含有する場合があり、受容部の供給側の開口の大きさに比べて、排出側の開口の大きさが小さいと、供給側の開口付近で余裕のあった固体同士の間隔が、排出側の開口付近では無くなって、固体同士が互いに接触して詰まることになる。従って、例えば、図8D(Q)~(S)に示すように、受容部の供給側の開口の大きさに比べて、排出側の開口の大きさが同じか又は大きいと、供給側の開口付近での固体同士の間隔が、排出側の開口付近でも同じか又は大きくなって、固体同士の間隔が保たれて詰まることがない。また、側面側にも開口を設けると側面側からも流動体が排出されるようになるため、より流動体が詰まらないようになる。尚、受容部の供給側の開口の大きさに比べて、排出側の開口の大きさが小さい場合でも、供給側の開口付近で固体同士の間隔に十分な余裕があれば、排出側の開口付近で、固体同士の間隔が保たれて詰まることがない。なお、以上の受容部の内側表面や外側表面には、コーティングや微細凹凸等を設けることで撥水性又は親水性或いは親油性等の性状を与えることによって流動体の付着時の流動性を改善してもよい。
【0082】
また、本発明の一態様は、気泡の微細化消泡装置を支持する支持部を有していても良い。支持部は、例えば、気泡の微細化消泡装置を備える充填装置を型枠等の内部に挿入して使用する場合に用いられる。図9(A)~(C)は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の支持部のいくつかの態様を説明する断面図である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置90aの支持部91aは、例えば、図9(A)に示すように天井Cから吊り下げ可能な構成とすることができる。或いは、コンクリート製造時のバケットのような投入装置から吊り下げる構成としても良いし、例えば、クレーンのような吊り下げ機から吊り下げるような構成としても良い。又は、発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置90bの支持部91bは、例えば、図9(B)に示すように型枠92b上で支持する構成としても良いし、発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置90cの支持部91cは、例えば、図9(C)に示すように地面Gに対して支持されるような構成としても良い。
【0083】
支持部を有することにより、気泡の微細化消泡装置の位置の調整が容易となる。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、その排出部が型枠等の底面付近に近づけて支持されることが好ましい。排出部から排出される流動体の落下距離を限りなく短くすることができ、エントラップトエアの混入をより防止することができるからである。また、流動体の排出中であれば、排出部を型枠内の流動体に接触するように配置することで、排出部から排出される流動体が型枠内に落下することなく排出することができる。このとき、型枠内の流動体の液面の上昇に合わせて排出部も同様に上昇させても良い。勿論、排出部にチューブ等の送液管が接続されている場合には、同様に送液管の先端部を型枠内の流動体に接触させるようにしても良い。
【0084】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、型枠内の構造物との接触を回避する回避部を有していても良い。図10Aは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置において回避部を有する例を示す模式図である。例えば、コンクリートの製造の場合において、型枠内に鉄筋等の構造物が配設されている場合がある。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置100では、このような構造物を回避するような回避部105を有していても良い。このような構成とすることにより、鉄筋や配管等の構造物を避けて気泡の微細化消泡装置100をより型枠の底面付近にまで挿入することが可能となるため、各排出部1021、1022、1023から排出される流動体の落下距離を限りなく短くすることができ、エントラップトエアの混入をより防止することができる。
【0085】
図10Bには、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の他の変形例を示す。これまで、受容部は主に側面部を有するものとして説明してきたが、必ずしも受容部に側面部が必要であるとは限らない。例えば、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置100aは、図10B(A)に示すように、底面部101aと軸部102aを有するものであっても良く、軸部102aを揺動させることにより変動的慣性力を与えることができる。このような気泡の微細化消泡装置100aは、例えば、流動体の粘性が大きく、側面部がなくても容易に外側に流れ出ないような流動体を対象とする場合等に適用することができ、側面部によって粘性の大きな流動体の移動が妨げられない。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置100bは、図10B(B)に示すように、底面部101b付近のみに側面部103bを有していても良く、この場合に、側面部103bに一以上の孔部104bを設けることによって変動的慣性力が付与された流動体が外部に排出されるようにしても良い。
【0086】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置100cは、図10B(C)に示すように、底面部101c及び軸部102cに加えて、屋根部103cを備えていても良い。屋根部103cは例えば、流動体を通す貫通孔を有し、底面部101cの上方を覆うように配置される。このような構成は、例えば、流動体を上下方向に揺動させて変動的慣性力を付与する場合に、流動体が上部に飛散するのを防止するのに効果的であると共に屋根部103cと底面部101cとの間の空間内において、流動体に変動的な慣性力を印加することが出来る。
【0087】
また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置100dは、図10B(D)に示すように、底面部101d及び軸部102dに加えて、底面部101dから上方に向かって軸部102dの周囲を旋廻するように形成される旋廻部103dを有していても良い。或いは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置100eは、図10B(E)に示すように、底面部101e及び軸部102eに加えて、底面部101eの上方に複数の中空円板103e、105eをそれぞれ複数のスポーク104e、106eによって軸部102eに取り付ける構成としても良い。又は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置100fは、図10B(F)に示すように、底面部101f及び軸部102fに加えて、軸部102fの少なくとも一部を覆うような筒状部103fを備えていても良い。これらの構成は、例えば、上下方向の揺動に加えて、又は単独で回転方向の変動的慣性力を付与する場合にガイド機能及び/又は流動体の過度の飛散防止機能としての役割を果たすこともできる。
【0088】
更に、本発明の一態様では、上述した以外の条件を変動的慣性力付与機構に更に設定して変動的慣性力を制御してもよい。例えば、流動体を加熱或いは冷却することにより、内部の気泡の界面張力や気泡内圧を変化させ、微小化し易いように変動的慣性力を制御することもできる。或いは、変動的慣性力付与時に加圧又は減圧しても良い。また、変動的慣性力付与時において、流動体に対してインパルス及び/又はインパクトを印加することで衝撃を加えてもよい。流動体に対して衝撃を加えた場合には、流動体中の気泡は、撃力的な圧力を受けるため、より崩壊し易くなる。インパルスについては、流動体に加える振動を、矩形波や鋸波のような波形の振動とすることで発生させることが可能である。この他、衝撃波を印加するようにしてもよい。インパクトについては、流動体と共に振動する物が、被振状態の流動体と相対変位する物との間において衝突を起こすようにシステムを構成することでも実現可能である。
【0089】
ここで、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置の使用態様について説明する。図11Aは、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置において、流動体に変動的な慣性力を加えるプロセスの一例を示した概略断面図である。ここでは、一例として、生コンクリートを型枠内で固化してコンクリートを製造する場合を例に挙げる。尚、図11Aは使用態様を説明をするための図であり、各構成の大きさ、形状、構成間の縮尺は図11Aの内容に必ずしも限定されるものではない。
【0090】
調製された流動体111は例えば型枠113内に注入される。すなわち、バケット112から金型113内に生コンクリート111が投入される。従来は、所定の高さから投入するため、型枠113内に流動体(生コンクリート)111が落下した際にエントラップトエアが生じていた。
【0091】
そこで、流動体111の型枠113への注入時に、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置114を用いて流動体111を型枠113内に導入しながら変動的な慣性力Fを与えるようにする。即ち、気泡の微細化消泡装置114は、バケット112の投入口115から金型113内部の底面116付近まで流動体(生コンクリート)111を導入し、流動体111が気泡の微細化消泡装置114から排出されるまでの間に、流動体111に変動的な慣性力Fを付与する。気泡の微細化消泡装置114は上述した条件に基づいて、流動体111に含まれる気泡に対して最も適した変動的な慣性力が付与されるように設計されることが好ましい。また、気泡の微細化消泡装置114は、流動体111の型枠113内への充填の度合に応じて適宜変動させても良い。これにより、流動体の表面及び内部の気泡を微細化することができ、且つ、エントラップトエアの混入も防止することができるため、結果として、美観が良く、高品質の製品を効率良く製造することができる。また、このような本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、特に、プレキャストコンクリートの製造のように、型枠の容量や重量が大きく、型枠自体に変動的な慣性力を付与することが困難な場合に好適に適用することができる。更に、変動的慣性力に加えて、受容体に対して局所的に振動を与えることによって、受容体の内周面と流動体111との間の摺動抵抗を低減して、受容体に対する流動体111の流動性を向上することができる。受容体に対して局所的に振動及び/又は衝撃を与える構成としては、受容体の外周面の一箇所又は複数個所に局所的振動及び/又は衝撃付与装置を設ける構成が考えられる。例えば、外周面に振動モータ等を設けることができる。或いは、図11Bに示すように、局所的振動及び/又は衝撃付与装置110bは、中空有底の筒部111bとその中空部112bに収容される可動体113bとから成る構成とすることができる。筒部111bは例えば円筒状であり、可動体113bは例えば球体状である。筒部111bは底部114bとは反対側が受容部の外周面115bに取り付けられ、その際、底部114b側が取付部116bよりも上方に位置するように筒部111bの長手方向が受容部の外周面115bに対して傾いて取り付けられる。中空部112bの取付部116b側には底部114bと平行な壁部117bが形成される。可動体113bは中空部112bよりも若干小径に形成され、底部114bと壁部117bとの間で中空部112b内を筒部111bの長手方向に移動可能とされている。このような局所的振動及び/又は衝撃付与装置110bを備えることで、例えば、受容部を上下及び/又は左右等に揺動することで筒部111b内の可動体113bが動き、局所的な振動及び/又は衝撃を与えることができる。局所的振動及び/又は衝撃付与装置の配置位置は、受容部の上方、下方、中央の何れでも良いし、また、配置数は、一つでも複数でも良いし、更に、複数である場合には受容部の外周面の周囲を囲むように配置しても良い。
【0092】
勿論、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、プレキャストコンクリートの製造のみに限定されるものではなく、例えば、現場打ちの場合であっても上述したような変動的な慣性力を付与する手段を介して流動体(生コンクリート)を導入することにより、気泡が微細化され、美観が良く、高品質のコンクリート製品を製造することができる。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、上述したコンクリート以外の型枠を用いて成型する製品等に対しても適用可能である。気泡の微細化消泡装置は、流動体の種類や性状によっては、例えば、流動体を型枠に導入する際に、脱気したり、流動体を圧送する機構を備えていても良い。
【0093】
図12は、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置において、流動体に変動的な慣性力を加えるプロセスの他の例を示した概略図である。本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置では、流動体121が貯留部122から送液機構124により導入管125を通じて型枠123に流し込まれる際に、導入管125に変動的な慣性力Fを与えるようにすることができる。例えば、貯留部122はミキサー車であり、送液機構124はポンプ車であり、導入管125は圧送管である。送液機構124は必ずしも必要ではなく、場合によっては高低差等に基づく重力の作用によって流動体121を送るものであっても良い。気泡の微細化消泡装置による変動的な慣性力Fは外部から導入管125内の流動体61に付与されても良いし、導入管125自体が作動することにより内部の流動体121に変動的な慣性力Fが付与されても良い。内部の流動体121に変動的な慣性力Fを付与できるものであれば、導入管125の素材は特に限定されず、可撓性のあるチューブ状の物でも、鋼管状又はプラスチック管状の物でも良い。また、本発明の一実施形態に係る気泡の微細化消泡装置は、図12に示すようなコンクリートの床打ちに限定されず、壁打ちや天井打ちにも適用可能である。
【実施例0094】
以下、本発明について、実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0095】
流動体として生コンクリートを選択した場合の供試体の製作手順と加振手順及び記録撮影まとめ手順を以下に説明する。勿論、先に述べた通り、本発明は、実施例における流動体の種類、配合割合、製造量等によって何ら限定されるものではなく、流動体はその種類等に応じてISO、JIS等の規格、作業手順書、プロトコル、レシピ等に従って適宜作製すればよい。また、加振手順及び記録手順についてもあくまで一例である。なお、本実施例においては、気泡の微細化消泡装置を型枠に置き換えて実施を行っている。
【0096】
[手順1]
セメント、細骨材、粗骨材、水を、表1に示す重量比でよく混練し、生コンクリートとした。
【表1】
[手順2]
直径100mm、高さ100mmの円筒状のコンクリート供試体成形型枠を、専用の型枠ホルダに入れた。
[手順3]
型枠の中に、事前によく混練した生コンクリートを所要重量の約2kgだけ注入した。
[手順4]
注入した生コンクリートを突き棒によってよく均すというのが従来の手順であるが、突き棒でかき混ぜて均すという工程を適用すると、混ぜ方によって気泡が残ったり、残らなかったりする上、残った気泡の大きさの相違に対しても影響を及ぼして定量化を困難にすると共に、気泡の微小化を計測する上で、かき混ぜによって元々の気泡が消泡化され過ぎる場合、気泡の微細化効果や消泡効果を測るという目的を果たせなくなるので、突き棒によるかき混ぜ工程は非実施とした。そこで、手順4としては、型枠内に注入された流動体である生コンクリートに対して、発泡スチロール片を、型枠と専用の型枠ホルダとの間に挟み込んで、専用の型枠ホルダの外側面を木槌を用いて叩くことで間接的に微小な衝撃振動を加え型枠内に生コンクリートが概ね行き渡るようにした。
[手順5]
この未硬化状態で供試体とした。振動等を印加する際には、加振機の振動ステージ上に供試体を型枠ごと配設して振動ステージに対して固定した。
[手順6]
この状態で、予め設定された振動条件に沿って供試体に対して鉛直方向の単振動を印加した。
[手順7]
加振後は、速やかに振動ステージから流動体を型枠ごと取り外して、非振動系にて必要十分な養生期間だけ静置した。
[手順8]
脱型の際には、モールドを台の上に置いて、型枠のハーフカットに沿って、型枠を割きつつ、供試体を型枠から脱型した。
[手順9]
脱型された供試体は、回転ステージの中心上に配置され、水平面内において回転ステージを所定の回転角度毎に回転させながら都度、供試体の周面を正面からの定点から写真撮影し、全周相当分以上に亘って写真を撮って記録した。
[手順10]
各試験体毎に全周分撮影された画像の内、最も大きな気泡がより多く残存している位相からの周面画像を各振動条件毎に表に整理した。
【0097】
時間一定とし、振動数10、20、30Hzの各振動数条件に対して、全振幅を1.0~5.0mmまで0.5mm刻みで加振した。その結果を図13にまとめた。図13から解る通り、1[G]以下或いは1[G]に近い加振条件では、気泡は殆ど微細化されず、元のまま残存する。また、所定以上の加速度を印加している場合には、元々存在していた筈の大きなサイズの気泡が無く、他方、細分化された比較的小さな気泡が残存している。尚、ここでの振幅は、全振幅(peak to peak)を意味し、所謂通常の意味の振幅の二倍に相当する。
【0098】
次に、図13において比較的綺麗に気泡が微細化された条件である振動数20Hzと30Hzにおける全振幅3.5mmの振動条件に対して、それぞれ加振時間を30秒から60秒まで30秒間隔で、60秒から300秒までを60秒刻みで加振した。その結果を図14にまとめた。図14から解る通り、20Hzのものでは、30秒時点で残存しているサイズの気泡は、その後の60秒から300秒までほぼ均等に残存していることが解る。つまり、或る一定の振幅、一定の加速度で、これに対応した一定の振動数の振動を印加し続けても元々存在していたより大きな(加振前にターゲットとされた比較的大きな)サイズの気泡は一様に消泡しているものの、より小さな或るサイズ以下の気泡は残存し得ることが解る。
【0099】
次いで、図13において比較的綺麗に気泡が微細化された条件である振動数30Hzにおける全振幅3.5mmの振動条件を30秒間加振した前行程のものに対して、更に続けて全振幅を0.4mmに低下させつつ、振動数は30Hzから262Hzまで適宜の値での設定とした後工程でも30秒間加振した。その結果を図15にまとめた。図15から解る通り、部分的に幾分か微細化若しくは消泡化されているようにも見受けられるものの実際には、前工程において残存していたサイズの気泡が後工程の後にも残存していると考えられる。つまり、加振する際の振幅が、気泡サイズに比して過小な場合には、著しく大きな振動数若しくは加速度の振動を印加しても微細化されたり、消泡されたりしないということが解る。
【0100】
更に、図13において比較的綺麗に気泡が微細化された条件である振動数20Hzにおける全振幅3.5mm、即ち加速度2.8[G]の振動条件であって、図14において十分な加振時間、即ち180秒間に亘って加振した振動条件を前行程としたものに対して、更に続けて加速度が2.8[G]で一定となる振動条件で、全振幅を1.8mmから1.0mmまで0.2mm刻みで低下させて後工程として追加120秒間加振した。その結果を図16にまとめた。図16から解る通り、前工程と後工程とでは加速度は何れも1[G]よりも適度に大きな2.8[G]と設定され、後工程の振幅としては前行程の半分程度に設定され、その結果として、前工程で残存していたであろう無加振状態に存在していた最大サイズの気泡より細分化されはしたが、細分化された気泡として残存していたサイズの気泡が、後工程の後には、ほぼ一様に更なる細分化が進行し、微細化されたことが解る。他方、他と工程を経た何れの供試体にも共通して、更なる微細な気泡が残存していることが解る。つまり、振幅が1.0mm~1.8mmの間程度の振動条件では反応しない程、小さなサイズの気泡が残存しているといえる。これらの微細な気泡を更に微細化するためには、更に振幅が小さく、加速度は一定以上となる振動を印加すればよい。
【0101】
尚、図16において、後工程における振幅1.8mmの供試体における比較的大きなサイズの気泡は、当該前工程と後工程の後にも残存している気泡であって残存性気泡であり、このような微細化されずに残存し得る気泡の類は、特に、被振体である流動体が、ペースト状の流動体中に細骨材や粗骨材を含んで成る場合において希に見受けられるものである。この種の残存性気泡を崩壊させるには、残存性気泡を囲繞する骨材、特に粗骨材が形成する気泡捕捉構造の破壊が効果的であり、そのためには、気泡捕捉構造の要素たる粗骨材の固有振動数の振動を印加して、共振させることが好ましい。
【0102】
次いで、図13において比較的綺麗に気泡が微細化された条件である振動数30Hzにおける全振幅3.5mm、即ち加速度6.3[G]の振動条件を180秒間加振した前行程のものに対して、更に続けて全振幅を前行程における振幅の半分程度である1.8mmに低下させつつ、加速度を6.3[G]を保持する条件として振動数は42Hzと設定した後工程にて120秒間加振した。その結果を図17にまとめた。図17から解る通り、前工程と後工程とでは加速度は何れも1[G]よりも十分に大きな6.3[G]と設定され、後工程の振幅としては前行程の半分程度に設定され、その結果として、前工程で残存していたであろう無加振状態に存在していた最大サイズの気泡より細分化されはしたが、細分化された気泡として残存していたサイズの気泡が、後工程の後には、ほぼ一様に更なる細分化が進行し、微細化されたことが解る。勿論、つぶさに表面を観れば、十分に微細化が進行した結果として残された微細化気泡が見て取れる。この残存している微細化気泡のサイズは0.7mm未満であり、コンクリート製品としては十分に許容されるものである。また、図16図17の結果からも判る通り、適正な振動条件であるということを前提として、加振時間の経過に伴って振動条件、即ち、振幅をターゲット気泡サイズに合わせて縮小して行きつつ、加速度を一定以上に保持するように振動数を遷移させて行くことが効果的であると言える。
【0103】
また、別の実施例として、セメントと細骨材と水のみから成り、粗骨材を含まない流動体を直方体状の型枠に注入し、その直後に全振幅2.0mm、振動数30Hzの鉛直方向の振動を型枠毎入力して加振した結果を図18にまとめた。本実施例においては、流動体中に粗骨材が無いことから所定時間以上加振し続けると、殆ど見えない程度にまで気泡が微細化されて消泡化されることが解る。
【符号の説明】
【0104】
11 流動体、12 気泡、13 型枠、20(20A,20B) 気泡、30 流動体、31 粗骨材、32 細骨材、33 モルタル、34 気泡、40 流動体、41 気泡、42 粗骨材、43 モルタル、50,60a,60b,100 気泡の微細化消泡装置、51,61a,61b,101 供給部、52,62a,62b,1021,1022,1023 排出部、53,63a,63b,103 誘導部、54,64a,64b,104 変動的慣性力付与機構、65,66 可動通路、67,68 固定通路、71a~d 供給部、82a~d 排出部、90a~c 気泡の微細化消泡装置、91a~c 支持部、92a~c 型枠、105 回避部、111 流動体(生コンクリート)、112 バケット、113 型枠(金型)、114 変動的な慣性力を付与する手段、115 投入口、116 底面、121 流動体、122 貯留部、123 型枠、124 送液機構、125 導入管
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18