(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090569
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20230622BHJP
B60C 11/24 20060101ALI20230622BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C11/24 B
B60C11/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205597
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】大沢 徹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BB04
3D131EB01U
3D131EB72Y
3D131EC16Y
3D131EC24Y
3D131GA04
(57)【要約】
【課題】残トレッドゲージを容易に把握することができる、スムースパターンを有するタイヤを、提供する。
【解決手段】本発明のタイヤ10は、トレッドゴム1aを含むトレッド部1のトレッド踏面11に実質上溝を有さない、スムースパターンを有するタイヤ10であって、タイヤ10のサイド部外表面21に、サイド部外表面21から突出してタイヤ周方向に延び、トレッドゴム1aが摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを確認するための、複数本のリッヂ30が、タイヤ径方向に互いに離隔して設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドゴムを含むトレッド部のトレッド踏面に実質上溝を有さない、スムースパターンを有するタイヤであって、
前記タイヤのサイド部外表面に、当該サイド部外表面から突出してタイヤ周方向に延び、前記トレッドゴムが摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを確認するための、複数本のリッヂが、タイヤ径方向に互いに離隔して設けられていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記サイド部外表面における前記複数本のリッヂのそれぞれに対応する位置に、前記残トレッドゲージに対応する数値が表示されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記複数本のリッヂのうち、タイヤ径方向最も内側に位置する前記リッヂは、トレッドゴムの摩耗限界である摩耗限界位置に相当するタイヤ径方向位置に設けられている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記複数本のリッヂは、タイヤ径方向に隣接する前記リッヂ間のタイヤ径方向間隔が、前記タイヤの新品時における残トレッドゲージの25%である、3本の前記リッヂから構成されている、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド踏面から前記サイド部外表面にわたって延び、前記トレッド踏面からデプスゲージを挿入して深さを測定することにより前記残トレッドゲージを確認するための、スリットが、さらに設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、地下鉱山やトンネル工事現場等で使用される、ロードホールダンプ用タイヤ等の建設・鉱山車両用タイヤにおいて、主として摩耗ライフの向上等のために、トレッドパターンとして、トレッド踏面に溝のない、いわゆるスムースパターンを有するタイヤが使用される場合がある。
このようなスムースパターンのタイヤは、溝を有する一般的なタイヤのように、溝底に設けたウェアインジケータや溝深さをデプスゲージで測定することによって、残り溝深さを知ることができないため、トレッドゴムの摩耗量(ひいては、トレッドゴムが摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージ)を知るための手段が種々検討され、用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、スムースパターンのタイヤの摩耗限界までの残トレッドゲージを知る手段として、タイヤ周上数か所のトレッド端部にサイド部外表面まで延びる幅の狭いスリットを設け、当該スリットにトレッド踏面からデプスゲージを差し入れ当該スリットの残り深さを測定することにより、摩耗限界までの残トレッドゲージを知ることも行われている。
しかし、例えば上記のロードホールダンプ用タイヤ等の場合、主な作業現場である地下坑道内は暗いこと、また、スリットが設けられたタイヤのショルダー部近傍にもげや欠けが発生するとスリットと混同しやすいこと、等の理由から、デプスゲージを差し入れるべきスリットの位置を視認しにくく、ひいては、摩耗限界までの残トレッドゲージが容易に把握できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、残トレッドゲージを容易に把握することができる、スムースパターンを有するタイヤを、提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤは、
トレッドゴムを含むトレッド部のトレッド踏面に実質上溝を有さない、スムースパターンを有するタイヤであって、
前記タイヤのサイド部外表面に、当該サイド部外表面から突出してタイヤ周方向に延び、前記トレッドゴムが摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを確認するための、複数本のリッヂが、タイヤ径方向に互いに離隔して設けられていることを特徴とする。
本発明のタイヤによれば、残トレッドゲージを容易に把握することができる、スムースパターンを有するタイヤとなる。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、
前記サイド部外表面における前記複数本のリッヂのそれぞれに対応する位置に、前記残トレッドゲージに対応する数値が表示されていることが、好ましい。
この場合、残トレッドゲージをより容易に把握することができる。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、
前記複数本のリッヂのうち、タイヤ径方向最も内側に位置する前記リッヂは、トレッドゴムの摩耗限界である摩耗限界位置に相当するタイヤ径方向位置に設けられていることが、好ましい。
この場合、摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを、より正確に把握することができる。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、
前記複数本のリッヂは、タイヤ径方向に隣接する前記リッヂ間のタイヤ径方向間隔が、前記タイヤの新品時における残トレッドゲージの25%である、3本の前記リッヂから構成されていることが、好ましい。
この場合、摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを、段階的により正確に把握することができる。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、
前記トレッド踏面から前記サイド部外表面にわたって延び、前記トレッド踏面からデプスゲージを挿入して深さを測定することにより前記残トレッドゲージを確認するための、スリットが、さらに設けられていてもよい。
この場合、残トレッドゲージをより正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、残トレッドゲージを容易に把握することができる、スムースパターンを有するタイヤを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤを左斜め上方から視た様子を概略的に示す、一部斜視図である。
【
図2】
図1のタイヤの一部をタイヤの側面側から視た様子を示す、一部側面図である。
【
図3】基準状態における
図1のタイヤの一部を、
図2のX-X線に沿う断面により示す、タイヤ幅方向一部断面図である。
【
図4】
図2のリッヂを、
図2のY-Y線に沿う断面により示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るタイヤは、スムースパターンを有する任意の種類のタイヤに好適に利用でき、スムースパターンを有する、例えば、地下鉱山やトンネル工事現場等で岩石・鉱物の掘削・運搬・積込み等のために使用されるロードホールダンプ用タイヤや、鉱山の地上のオープンピット等で使用されるホイールローダ用タイヤ等の、建設・鉱山車両用タイヤ、港湾や貨物の積替え拠点等で輸送コンテナの移動・積上げ等のために使用されるリーチスタッカー・コンテナハンドラー用タイヤ等の、産業車両用タイヤ、さらには、地下鉄・モノレール・新交通システム等に使用される軌道走行車両用タイヤ等に、好適に利用できる。
【0014】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。但し、図面は模式的なものであり、各寸法及び各寸法どうしの比率等は、現実のものとは異なる場合がある。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。一部の図面では、タイヤ幅方向を符号「WD」で示し、タイヤ径方向を符号「RD」で示し、タイヤ周方向を符号「CD」で示している。
【0015】
図1~
図3は、本発明の一実施形態に係るタイヤ10を説明するための図面である。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤを左斜め上方から視た様子を概略的に示す、一部斜視図であり、
図2は、
図1のタイヤの一部をタイヤの側面側から視た様子を示す、一部側面図であり、
図3は、基準状態における
図1のタイヤの一部を、
図2のX-X線に沿う断面により示す、タイヤ幅方向一部断面図である。
なお、本実施形態のタイヤ10は、任意の種類のタイヤとして構成されてよい。
【0016】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係や寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。
本明細書において、「トレッド踏面」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接触することになる、タイヤの全周にわたる外周面を意味し、「トレッド端」とは、トレッド踏面のタイヤ幅方向の端縁を指す。また、本明細書において、タイヤ内腔に近い側をタイヤの「内側」といい、タイヤ内腔から遠い側をタイヤの「外側」という。
【0017】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている又は将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0018】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0019】
また、本明細書において、「摩耗限界」とは、これ以上タイヤを使用することはできないとタイヤ生産者が定めた、トレッドゴムの摩耗の限界の状態を指し、「摩耗限界位置」とは、タイヤが摩耗限界にある際のトレッド踏面のタイヤ径方向位置を指す。摩耗限界は、必ずしも、現実の摩耗限界となり得る、例えばトレッド部のベルトが露出してしまうような状態でなくてもよく、例えばより安全に、当該状態にある際のトレッド踏面位置よりも若干タイヤ径方向外側にトレッド踏面がある状態が、摩耗限界と定められてもよい。
さらに、本明細書において、「残トレッドゲージ」とは、摩耗限界に達するまでに残っているトレッドゴムのタイヤ径方向最大厚さを指す。残トレッドゲージは、換言すれば、新品タイヤのトレッドゴムのタイヤ径方向最大厚さから、タイヤ径方向摩耗量を減じた値である。
【0020】
図1及び
図3に示すように、本実施形態のタイヤ10は、タイヤ10のタイヤ径方向外側部を構成しているトレッド部1と、タイヤ10のタイヤ幅方向両外側部を構成しているサイド部2と、を有している。トレッド部1とサイド部2とは、トレッド部1のタイヤ幅方向両外側部分及びサイド部2のタイヤ径方向外側部分において、両者が一部重複している。従って、後述するサイド部外表面21は、トレッド部1のタイヤ幅方向両外側部分のタイヤ幅方向外側の外表面も含む。タイヤ10は、
図3に示すように、両ビード部(図示せず)間にわたって延在する、1層以上のカーカス層からなるカーカス5と、カーカス5のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された、1層以上(図示の例では、符号6a~6eで示される5層)のベルト層からなるベルト6と、を有している。タイヤ10のトレッド部1におけるベルト6のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム1aが設けられている。
本実施形態において、タイヤ10の内部構成は、上述のように、一般的なタイヤの内部構成と同様である。但し、タイヤ10の内部構成は、特にこれに限定されない。タイヤ10の内部構成は、任意であってよい。
【0021】
図1及び
図3に示すように、本実施形態のタイヤ10は、トレッドゴム1aを含むトレッド部1のトレッド踏面11に実質上溝を有さない、いわゆるスムースパターンを有するタイヤである。即ち、タイヤ10は、トレッド踏面11に、後述する残トレッドゲージ確認用のスリット40以外に、排水用等の溝を実質上有していない。タイヤ10のトレッドパターンがスムースパターンであることにより、十分なトレッドゴム1aのボリューム及びトレッド剛性が確保できるため、十分な摩耗ライフ等が得られる。
【0022】
図1~
図3に示すように、本実施形態において、タイヤ10には、当該タイヤ10のサイド部2における外表面(以下、「サイド部外表面」という。)21に、当該サイド部外表面21からタイヤ幅方向外側に突出してタイヤ周方向に延びる、複数本(本実施形態では、3本)のリッヂ30(31~33)が、タイヤ径方向に互いに離隔して設けられている。
ここで、リッヂ30が「タイヤ周方向に延びる」とは、リッヂ30が必ずしもタイヤ周方向の全周にわたって連続して延びていなくてもよく、タイヤ周方向の少なくとも一部にわたって延びていればよいことを指す。例えば、リッヂ30は、本実施形態(
図1~
図3)のように、スリット40が設けられたタイヤ周上の1か所でタイヤ周方向に不連続となるほかはタイヤ周方向に連続するように、延びていてもよいし、タイヤ周上の複数個所(例えば、2か所)で不連続となるように、タイヤ周上複数個(例えば、2個)に分断されて延びていてもよい。しかし、タイヤ10のユーザーがリッヂ30を十分視認でき残トレッドゲージを確認しやすいようにする観点からは、複数のリッヂ30のそれぞれは、タイヤ周方向の総長さで、それぞれのサイド部外表面21のタイヤ径方向位置における周長の50%以上の範囲にわたって延びていることが好ましく、75%以上の範囲にわたって延びていることがより好ましく、90%以上の範囲にわたって延びていることがさらに好ましく、全周にわたって連続して延びていることが最も好ましい。
本実施形態において、リッヂ30(31~33)は、タイヤ周方向に沿って(即ち、タイヤ周方向と平行な方向に)延びている。
【0023】
本実施形態において、リッヂ30(31~33)は、トレッドゴム1aが前述の摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを確認するためのものである。より具体的に、本実施形態において、複数のリッヂ30(31~33)のそれぞれは、残トレッドゲージを確認するため、サイド部外表面21におけるタイヤ径方向の比較的外側の位置、即ち、サイド部外表面21における、少なくともトレッド部1の存在するタイヤ径方向範囲(即ち、トレッド部1における、タイヤ外表面のうち最もタイヤ径方向外側の位置とタイヤ内表面のうち最もタイヤ径方向外側の位置との間のタイヤ径方向範囲)と同等のタイヤ径方向範囲内に設けられている。さらに具体的に、本実施形態において、複数のリッヂ30(31~33)のそれぞれは、残トレッドゲージ(後述するとおり、例えば、
図2に示すように、タイヤ10の新品時の残トレッドゲージDnに対して、それぞれ0%、25%及び50%、等)を示すべきタイヤ径方向位置に設けられている。
【0024】
なお、
図1~
図3では、タイヤ幅方向一方側のタイヤ半部におけるサイド部2(ひいては、サイド部外表面21)に設けられた複数のリッヂ30のみを示しているが、タイヤ幅方向他方側のタイヤ半部におけるサイド部2(ひいては、サイド部外表面21)には、同様に複数のリッヂ30が設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。但し、タイヤ10の使用途中で、タイヤ10をホイールから取り外して摩耗状況を確認する場合や、タイヤ幅方向一方側と他方側の車両への取付け方向を逆にして(換言すれば、タイヤ10の表裏(セリアル側と反セリアル側)を逆にして)、車両に取り付け使用される場合があることを考慮すると、タイヤ幅方向他方側のタイヤ半部におけるサイド部2(ひいては、サイド部外表面21)にも、同様に複数のリッヂ30が設けられていることが、好ましい。その場合、複数のリッヂ30は、タイヤ幅方向一方側と他方側との間で互いに同様の構成(形状、配置等)であってもよいし、互いに異なった構成であってもよい。
【0025】
上述のとおり、本実施形態によれば、タイヤ10はスムースパターンを有するタイヤであって、タイヤ10のサイド部外表面21に、当該サイド部外表面21から突出してタイヤ周方向に延び、トレッドゴム1aが摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを確認するための、複数本のリッヂ30(31~33)が、タイヤ径方向に互いに離隔して設けられている。従って、本実施形態によれば、複数本のリッヂ30がいわば摩耗状況を確認できるインジケータとして機能し、使用中のタイヤ10のトレッド踏面11の位置が、タイヤ径方向に離隔して配置された複数本のリッヂ30のうちのどのリッヂの位置に達し又は超えているかを、例えば目視により容易に把握することができ、ひいては、残トレッドゲージの概略を容易に確認することができる。
また、本実施形態によれば、残トレッドゲージを確認するための複数本のリッヂ30は、タイヤ周方向に延びているので、例えば、タイヤ周上数か所のトレッド端部にデプスゲージ挿入用のスリットを設けて残トレッドゲージを測定する場合に比べ、当該トレッド端部にもげや欠けが発生したとしても、タイヤ周上の他の位置におけるリッヂ30により、残トレッドゲージを確認することができる。
以上より、本実施形態のタイヤによれば、残トレッドゲージを容易に把握することができる、スムースパターンを有するタイヤとなる。
また、本実施形態によれば、残トレッドゲージを確認するための複数本のリッヂ30は、サイド部外表面21から突出してタイヤ周方向に延びているので、例えば、サイド部外表面に残トレッドゲージを確認するためのタイヤ周方向に延びる溝を設けた場合に比べ、溝底クラックひいては当該溝底クラックの進展に起因するトレッドゴム~ベルト間のセパレーション故障の発生のおそれ等もなく、タイヤの耐久性を維持できる。
【0026】
本実施形態において、
図2に示すように、サイド部外表面21における複数本のリッヂ30(31~33)のそれぞれに対応する位置に、残トレッドゲージに対応する数値(数字)が表示されていることが、好ましい。
より具体的に、本実施形態では、
図2に示すように、残トレッドゲージに対応する数値、即ち、図示の例では、タイヤ10の新品時の残トレッドゲージに対する摩耗状態を把握しようとするタイヤ10の使用中の時点での残トレッドゲージの割合を、100分率で示した数値(図示の例では、50%を示す「50」、25%を示す「25」及び0%を示す「0」)が、複数本のリッヂ30(31~33)のそれぞれに対応する位置、即ち、図示の例では、複数本のリッヂ30(31~33)のそれぞれのタイヤ径方向位置と同じタイヤ径方向位置に(より具体的に、複数本のリッヂ30(31~33)それぞれの占めるタイヤ径方向領域に、少なくとも一部が重なるタイヤ径方向位置に)表示されている。但し、上記「残トレッドゲージに対応する数値」は、上記の例のとおりでなくてもよい。例えば、残トレッドゲージに対応する数値として、タイヤの新品時の残トレッドゲージから摩耗状態把握時の残トレッドゲージを減じた、摩耗限界を100%としたタイヤ径方向摩耗量の割合(例えば、残トレッドゲージが0%なら100%と、残トレッドゲージが25%なら75%となる。)を100分率で示した数値を用いてもよい。また、上記「複数本のリッヂのそれぞれに対応する位置」も、上記の例の通りでなくてもよく、例えば、複数本のリッヂ30(31~33)のそれぞれのタイヤ径方向近傍の位置であって、対応するリッヂが認識できる位置であってもよい。
当該数値は、タイヤ10のサイド部2に通常表示されるロゴマーク等と同様に、例えば、タイヤ製造用モールドを用いてサイド部外表面21から突出するように形成して表示させてもよく、サイド部外表面21上への印刷により表示させてもよい。
また、当該数値(数字)は、視認性向上のため、黒色以外の色(例えば、赤色)に着色されて表示されていてもよい。
サイド部外表面21における複数本のリッヂ30(31~33)のそれぞれに対応する位置に、残トレッドゲージに対応する数値が表示されていることにより、タイヤ10の摩耗状態ひいては残トレッドゲージの概略を目視で一目で確認することができ、ひいては、残トレッドゲージをより容易に把握することができる。
【0027】
本実施形態において、
図3に示すように、複数本のリッヂ30(31~33)のうち、タイヤ径方向最も内側に位置するリッヂ33は、トレッドゴム1aの摩耗限界である摩耗限界位置に相当するタイヤ径方向位置に設けられていることが好ましい。
より具体的に、本実施形態では、
図3に示すように、トレッドゴム1aの摩耗限界である摩耗限界位置WL(
図3では、タイヤ幅方向に沿って延びる仮想線で示している)を、複数のベルト層のうちタイヤ径方向最外側のベルト層6e(より正確には、ベルト層6eの厚さ方向中心線のうち最もタイヤ径方向外側にある部位)のタイヤ径方向位置とし、当該摩耗限界位置に相当するタイヤ径方向位置に、複数本のリッヂ30(31~33)のうち、タイヤ径方向最も内側に位置するリッヂ33が、設けられている。本実施形態では、より詳細には、タイヤ径方向最内側のリッヂ33(より正確には、リッヂ33の頂面33ts(
図4参照))のタイヤ径方向外側端33eoが、摩耗限界位置WLに一致するように、リッヂ33が配置されているが、リッヂ33(より正確には、リッヂ33の頂面33ts)のタイヤ径方向中心33c及びタイヤ径方向内側端33ei等を含むリッヂ33の頂面33tsのいずれかの部位が、摩耗限界位置WLに一致するように、リッヂ33が配置されていてもよい。
タイヤ径方向最も内側に位置するリッヂ33が、摩耗限界位置WLに相当するタイヤ径方向位置に設けられていることにより、例えば、最内側のリッヂ33の全体が摩耗限界位置WLと離隔した摩耗限界位置WLの下側又は上側に配置されている場合に比べ、摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを、より正確に把握することができる。
【0028】
本実施形態において、
図1~
図3に示すように、複数本のリッヂ30は、当該複数本のリッヂ30のうち、摩耗限界位置WLに相当するタイヤ径方向位置に設けられているタイヤ径方向最も内側に位置するリッヂ33も含め、タイヤ径方向に隣接するリッヂ間のタイヤ径方向間隔が、タイヤ10の新品時における残トレッドゲージの25%である、3本のリッヂから構成されていることが好ましい。即ち、本実施形態では、複数本のリッヂ30は、
図2に示すように、3本のリッヂ31、32及び33のみを有している。また、タイヤ径方向最も外側に位置するリッヂ31とリッヂ31のタイヤ径方向内側に隣接するリッヂ32との間のタイヤ径方向間隔D12と、リッヂ32とリッヂ32のタイヤ径方向内側に隣接するタイヤ径方向最も内側に位置するリッヂ33との間のタイヤ径方向間隔D23と、は同一であり、ともに、タイヤ10の新品時における残トレッドゲージDnの25%である。なお、各リッヂ間の間隔は、各リッヂ30(31~33)(より正確には、各リッヂ31~33の頂面)の幅方向中心(ひいては、タイヤ径方向中心)30c(31c~33c)を基準として計測されるものとする。
複数本のリッヂ30が、上記のような3本のリッヂ31~33から構成されていることにより、例えば、タイヤ10の使用中に、タイヤ10の少なくともサイド部外表面21におけるトレッド踏面11のタイヤ径方向位置が、タイヤ径方向最も外側のリッヂ31に到達した場合は、残トレッドゲージがタイヤ10の新品時の50%に減じており、上記トレッド踏面11のタイヤ径方向位置が、リッヂ31のタイヤ径方向内側に隣接するリッヂ32に到達した場合は、残トレッドゲージがタイヤ10の新品時の25%に減じている等と、タイヤ10のユーザーが知ることができる。即ち、複数本のリッヂ30が、上記のような3本のリッヂ31~33から構成されていることにより、摩耗限界に達するまでの残トレッドゲージを、段階的により正確に把握することができ、ひいては、例えば、タイヤ10の摩耗状態の管理に有効に活用することができる。
加えて、
図2を参照して前述したとおり、本実施形態では、複数本のリッヂ31~33のそれぞれに対応する位置に、順にそれぞれ、タイヤ10の新品時の残トレッドゲージDnに対する残トレッドゲージの割合である、50%を示す「50」、25%を示す「25」及び0%を示す「0」の数値(数字)が表示されている。従って、本実施形態によれば、残トレッドゲージを、段階的により正確にかつ一目でより容易に把握することができる。
【0029】
本実施形態において、
図1~
図3に示すように、タイヤ10には、トレッド踏面11からサイド部外表面21にわたって延び(即ち、トレッド端TEも含み、トレッド踏面11及びサイド部外表面21に開口し)、トレッド踏面11からデプスゲージを挿入して深さを測定することにより残トレッドゲージを確認するための、スリット40が、さらに設けられていてもよい。この場合、タイヤ10の摩耗途中での、スリット40の具体的な残り深さ、ひいては、具体的な残トレッドゲージを測定することが可能となるので、より概略的な残トレッドゲージを確認できる複数のリッヂ30との併用により、残トレッドゲージをより正確に把握することができる。
【0030】
スリット40の、サイド部外表面21におけるスリット底(即ち、タイヤ径方向内側端)40eiのタイヤ径方向位置は、特に制限されないが、残トレッドゲージをよりわかりやすく把握できるようにする観点からは、摩耗限界位置WLに相当するタイヤ径方向位置とすることが好ましい。
また、
図1~
図3では、タイヤ10の周上1か所に設けられたスリット40のみを示しているが、スリット40は、タイヤ周上複数か所(例えば、2か所)に設けられていてもよい。例えば、スリット40がタイヤ周上2か所に(即ち、タイヤ周上で2個)設けられる場合、残トレッドゲージの把握のしやすさ等の観点から、それらのスリット40は、例えば、周上互いに対向する位置(即ち、中心角で互いに180°離隔した位置)に設けられてよい。
さらに、
図1~
図3では、タイヤ幅方向一方側のタイヤ半部に設けられたスリット40のみを示しているが、タイヤ幅方向他方側のタイヤ半部には、同様にスリット40が設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。但し、タイヤ10の使用途中で、タイヤ10をホイールから取り外して摩耗状況を確認する場合や、タイヤ幅方向一方側と他方側の車両への取付け方向を逆にして(換言すれば、タイヤ10の表裏(セリアル側と反セリアル側)を逆にして)、車両に取り付け使用される場合があることを考慮すると、タイヤ幅方向他方側のタイヤ半部にも、同様にスリット40が設けられていることが、好ましい。その場合、スリット40は、タイヤ幅方向一方側と他方側との間で互いに同様の構成(形状、配置等)であってもよいし、互いに異なった構成であってもよい。また、例えば、タイヤ幅方向一方側のタイヤ半部と他方側のタイヤ半部とのそれぞれ周上2か所に(即ち、両半部にそれぞれ2個の)スリット40が設けられる場合、残トレッドゲージの把握のしやすさ及び両側のトレッド端近傍の剛性バランス等の観点から、それらのスリット40は、例えば、それぞれの半部では、2個のスリット40が中心角で互いに180°離隔した位置に設けられるとともに、それぞれの半部の間では、スリット40どうしが中心角で互いに90°離隔した位置になるように位相をずらして設けられてよい。
【0031】
次に、
図4を参照しつつ、リッヂ30の好ましい構成等について、説明する。
図4は、
図2のリッヂを、
図2のY-Y線に沿う断面により示す、断面図である。
図4は、複数のリッヂ31~33のうちの典型例として、タイヤ径方向最内側のリッヂ33の断面形状を示しており、以下では当該リッヂ33の断面形状等について説明するが、他のリッヂ31及び32の断面形状等も、以下に述べるところと同様である。リッヂ31及び32の断面形状は、リッヂ33の断面形状と同じであっても違っていてもよい。本実施形態では、複数のリッヂ31~33の断面形状は、互いに同じである。
【0032】
サイド部外表面21からのリッヂ33の高さHは、特に制限されないが、リッヂの視認性(即ち、目視によるリッヂの存在及び位置等の確認のしやすさ)及びゴムボリューム増大の抑制等の観点から、0.8~1.2mmであることが好ましい。
また、リッヂ33の頂面33tsの幅Wも、特に制限されないが、リッヂの視認性及びリッヂのインジケータとしての機能性等の観点から、2~6mmであることが好ましく、3~5mmであることがより好ましい。
さらに、
図4の例では、断面上、リッヂ33のタイヤ径方向外側側面33soとサイド部外表面21との接続部及びリッヂ33のタイヤ径方向内側側面33siとサイド部外表面21との接続部は、それぞれ、曲率半径R1及び曲率半径R2の円弧状に形成されており、それにより、リッヂの根元部への応力集中を抑制し、ひいては、リッヂのもげや欠けを抑制することができる。曲率半径R1及びR2は、リッヂのもげや欠けを効果的に抑制する観点から、0.3mmより大きいことが好ましい。
また、
図4の例では、断面上、リッヂ33の頂面33tsのタイヤ径方向外側端33eo及びタイヤ径方向内側端33eiは、角張って形成されており、それにより、当該両端がくっきりと目立ち、リッヂの視認性及びインジケータとしての機能性を高めることができる。但し、当該両端は、丸みを帯びて形成されていてもよい。
図4の例では、
図4に示すように、断面上、リッヂ33の頂面33tsのタイヤ径方向外側端33eoにおける、頂面33tsとタイヤ径方向外側側面33soとがなすリッヂ33の内部側の角度、及び、リッヂ33の頂面33tsのタイヤ径方向内側端33eiにおける、頂面33tsとタイヤ径方向内側側面33siとがなすリッヂ33の内部側の角度、はともに90°より大きく形成されており、それにより、リッヂのもげや欠けを抑制することができる。但し、両角度は、90°以下に形成されていてもよい。
【0033】
リッヂ30(31~33)は、タイヤ10のサイド部2に通常表示されるロゴマーク等と同様に、例えば、タイヤ製造用モールドを用いてサイド部外表面21から突出するように形成させることができる。
また、リッヂ30(31~33)は、視認性向上のため、少なくともその頂面又は外表面全体が、黒色以外の色(例えば、赤色)に着色されていてもよい。
【0034】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るタイヤは、スムースパターンを有する任意の種類のタイヤに好適に利用でき、スムースパターンを有する、例えば、ロードホールダンプ用タイヤや、ホイールローダ用タイヤ等の、建設・鉱山車両用タイヤ、リーチスタッカー・コンテナハンドラー用タイヤ等の、産業車両用タイヤ、さらには、軌道走行車両用タイヤ等に、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1:トレッド部、 1a:トレッドゴム、 2:サイド部、 5:カーカス、 6:ベルト、 6a~6e:ベルト層、
10:タイヤ、 11:トレッド踏面、 21:サイド部外表面、
30、31~33:リッヂ、 30c、31c~33c:リッヂの頂面の中心、 33ei:リッヂの頂面のタイヤ径方向内側端、 33eo:リッヂの頂面のタイヤ径方向外側端、 33si:リッヂのタイヤ径方向内側側面、 33so:リッヂのタイヤ径方向外側側面、 33ts:リッヂの頂面、
40:スリット、 40ei:スリットのタイヤ径方向内側端、
CD:タイヤ周方向、 D12、D23:タイヤ径方向間隔、 Dn:タイヤの新品時における残トレッドゲージ、 H:リッヂの高さ、 R1、R2:曲率半径、 RD:タイヤ径方向、 TE:トレッド端、 W:リッヂの頂面の幅、 WD:タイヤ幅方向、 WL:摩耗限界位置