(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090570
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】アクチュエータカバー付き保持部材及びアクチュエータカバー
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205598
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】安井 仁
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081CC24
(57)【要約】
【課題】流体圧アクチュエータの耐久性を向上させる。
【解決手段】本開示に係るアクチュエータカバー付き保持部材100は、流体の圧力によって駆動する流体圧アクチュエータ1に装着され対象物Oを保持する保持部101と、保持部101が流体圧アクチュエータ1に装着されている状態で流体圧アクチュエータ1を覆うアクチュエータカバー102と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって駆動する流体圧アクチュエータに装着され対象物を保持する保持部と、
前記保持部が前記流体圧アクチュエータに装着されている状態で前記流体圧アクチュエータを覆うアクチュエータカバーと、を備える、アクチュエータカバー付き保持部材。
【請求項2】
前記保持部は、前記流体圧アクチュエータの膨張及び収縮する円筒状のチューブの軸方向の先端側に装着可能であり、
前記アクチュエータカバーは、前記流体圧アクチュエータの前記チューブの径方向外側を覆う、請求項1に記載のアクチュエータカバー付き保持部材。
【請求項3】
前記アクチュエータカバーは、前記保持部と一体成形されている、請求項1又は2に記載のアクチュエータカバー付き保持部材。
【請求項4】
前記保持部は、前記流体圧アクチュエータの装着突部が嵌合可能な装着凹部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のアクチュエータカバー付き保持部材。
【請求項5】
前記保持部は、対象物を保持するための爪部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のアクチュエータカバー付き保持部材。
【請求項6】
前記保持部は、対象物を保持するための保持凹所を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のアクチュエータカバー付き保持部材。
【請求項7】
前記流体圧アクチュエータは、所定方向に曲げ変形可能であり、
前記保持部は、対象物の保持面を前記所定方向に方向づけして前記流体圧アクチュエータに装着するための位置決め部を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のアクチュエータカバー付き保持部材。
【請求項8】
流体圧アクチュエータを覆うカバー本体と、
前記流体圧アクチュエータの軸方向の先端側に装着され対象物を保持する保持部
を覆う保持カバー部と、を備えるアクチュエータカバー。
【請求項9】
前記保持カバー部は、前記カバー本体よりも肉厚が薄い、請求項8に記載のアクチュエータカバー。
【請求項10】
前記保持カバー部を構成する材料は、前記カバー本体を構成する材料よりも縦弾性係数が小さい、請求項8又は9に記載のアクチュエータカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体圧アクチュエータを保護するアクチュエータカバー付き保持部材及びアクチュエータカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体又は液体を用いてチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータが知られている。例えば、特許文献1には、空気圧によって膨張、収縮するゴム製のチューブと、チューブの外周面を覆うスリーブとを有する流体圧アクチュエータ(いわゆるマッキベン型の流体圧アクチュエータ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の従来の流体圧アクチュエータでは、スリーブ等が物体に接触して擦れたり、保持する対象物からの汚れや水分がスリーブ等に付着して流体圧アクチュエータの耐久性に悪影響を与える場合があり、この点において改善の余地があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、流体圧アクチュエータの耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示のアクチュエータカバー付き保持部材は、流体の圧力によって駆動する流体圧アクチュエータに装着され対象物を保持する保持部と、前記保持部が前記流体圧アクチュエータに装着されている状態で前記流体圧アクチュエータを覆うアクチュエータカバーと、を備えている。
本開示のアクチュエータカバー付き保持部材によれば、流体圧アクチュエータが物体に接触して擦れたり、水分や汚れが付着することを抑制し、流体圧アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
【0007】
本開示のアクチュエータカバー付き保持部材では、前記保持部は、前記流体圧アクチュエータの膨張及び収縮する円筒状のチューブの軸方向の先端側に装着可能であり、前記アクチュエータカバーは、前記流体圧アクチュエータの前記チューブの径方向外側を覆うことが好ましい。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータの径方向外側をアクチュエータカバーで覆うとともに先端部に保持部を装着することで流体圧アクチュエータが物体に接触して擦れたり、水分や汚れが付着することを効果的に抑制し、流体圧アクチュエータの耐久性を更に向上させることができる。
【0008】
本開示のアクチュエータカバー付き保持部材では、前記アクチュエータカバーは、前記保持部と一体成形されていることが好ましい。このような構成の採用によって、保持部とアクチュエータカバーとの間の隙間を無くすことができるので、保持部とアクチュエータカバーの隙間から水分や汚れ等が侵入してスリーブ等に付着することを抑制することができる。
【0009】
また、本開示のアクチュエータカバー付き保持部材では、前記保持部は、前記流体圧アクチュエータの装着突部が嵌合可能な装着凹部を有することが好ましい。このような構成の採用によって、保持部を流体圧アクチュエータに対して容易に着脱可能として、保持する対象物の種類の変更等のタイミングで容易にメンテナンスを行うことができる。
【0010】
また、本開示のアクチュエータカバー付き保持部材では、前記保持部は、対象物を保持するための爪部を有することが好ましい。このような構成の採用によって、爪部を他の部位よりも対象物に強く当接させて、対象物との静止摩擦力を高めてより確実に対象物を保持することができる。
【0011】
また、本開示のアクチュエータカバー付き保持部材では、前記保持部は、対象物を保持するための保持凹所を有することが好ましい。このような構成の採用によって、対象物から遠ざかる方向に凹む保持凹所を設けることで、手のひらで対象物を包み込むように保持することができる。
【0012】
また、本開示のアクチュエータカバーは、流体圧アクチュエータを覆うカバー本体と、前記流体圧アクチュエータの軸方向の先端側に装着され対象物を保持する保持部を覆う保持カバー部と、を備えている。
本開示のアクチュエータカバーによれば、流体圧アクチュエータと流体圧アクチュエータの軸方向の先端側に装着される保持部とを隙間無く覆うことができるので、流体圧アクチュエータ1が物体に接触して擦れたり、保持カバー部とカバー本体の隙間から水分や汚れ等が侵入して、スリーブ等に付着することを抑制することができる。
【0013】
また、本開示のアクチュエータカバーでは、前記保持カバー部は、前記カバー本体よりも肉厚が薄いことが好ましい。このような構成の採用によって、正面視で流体圧アクチュエータよりも幅が大きい保持部の外形に、肉厚が薄く伸縮性に優れる保持カバー部の形を容易にフィットさせることができる。
【0014】
また、本開示のアクチュエータカバーでは、前記保持カバー部を構成する材料は、前記カバー本体を構成する材料よりも縦弾性係数が小さいことが好ましい。このような構成の採用によって、正面視で流体圧アクチュエータよりも幅が大きい保持部の外形に縦弾性係数が小さく伸縮性に優れる保持カバー部の形を容易にフィットさせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、流体圧アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材の正面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材における保持部部分の斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材によって覆われる流体圧アクチュエータの正面図である。
【
図4】
図3に示される流体圧アクチュエータの一部分解斜視図である。
【
図5】
図3に示される基端側封止部を含む流体圧アクチュエータの軸方向に沿った一部断面図である。
【
図6】
図3におけるA-A’断面による流体圧アクチュエータの径方向に沿った断面図である。
【
図7】流体圧アクチュエータに流体圧力を加えて曲げ変形させ、対象物を保持している状態を示す図である。
【
図8】
図1に示されるアクチュエータカバー付き保持部材を装着した流体圧アクチュエータを用いたシステムの一構成例を示す概略図である。
【
図9A】保持部の装着凹部の変形例を示す図である。
【
図9B】流体圧アクチュエータの装着突部の変形例を示す図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係るアクチュエータカバー付き保持部材100の実施形態について、図面を参照して説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0018】
(アクチュエータカバー付き保持部材100の構成)
図1は、流体圧アクチュエータ1に装着された本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材100を示している。アクチュエータカバー付き保持部材100は、
図1の左右方向に延びる長尺状の流体圧アクチュエータ1の先端側に装着され対象物Oを保持する保持部101と、保持部101が流体圧アクチュエータ1に装着されている状態で流体圧アクチュエータ1を径方向外側から覆うアクチュエータカバー102とを備えている。
【0019】
本実施形態では、流体圧アクチュエータ1、及びアクチュエータカバー付き保持部材100は、それぞれの中心軸線が共通の軸線C上に配置されている。本実施形態では、この軸線Cに沿う保持部101側(
図1における右側)を先端側、支持部40側(
図1における左側)を基端側とする。また、軸線Cに直交する方向を径方向といい、軸線Cに直交する直線に沿って軸線Cから離れる方向を径方向外側、軸線Cに直交する直線に沿って軸線Cに近づく方向を径方向内側とする。また、図面において、「軸方向」はD
AXと示され、「径方向」はD
Rと示される。
【0020】
本実施形態において、保持部101は、
図1に示す正面視で略三角形形状を有しており、三角形の各頂点位置が僅かに保持する対象物Oの方向(
図1における紙面に垂直方向手前側)に方向づけられた爪部101bを構成している。
図1において3つの爪部101bで囲まれる領域は、
図1の紙面に垂直方向奥側に向かって凹む保持凹所101cを構成している(保持部101の立体形状は、
図2参照)。
【0021】
このように、保持する対象物Oに向かって方向づけられた爪部101bを備えることによって、爪部101bが他の部位よりも対象物Oに強く当接し、対象物Oとの静止摩擦力を高めてより確実に対象物Oを保持することができる。また、対象物Oから遠ざかる方向に凹む保持凹所101cを設けることで、手のひらで対象物Oを包み込むように保持することができる。
【0022】
なお、爪部101bの構成は、
図1及び
図2に示す態様に限定されず、例えば対象物Oに向かって突出する鋭利な爪部101bを採用して、対象物Oに爪部101bを食い込ませることでより確実に対象物Oを保持するようにしてもよい。爪部101b及び/又は保持凹所101cを設けない構成としてもよい。
【0023】
本実施形態において、アクチュエータカバー102は、略円筒形状を有しており、後述する流体圧アクチュエータ1のスリーブ12(
図3等参照)の外周面を覆っている。アクチュエータカバー102は、流体圧アクチュエータ1を保護している。
【0024】
具体的には、アクチュエータカバー102は、流体圧アクチュエータ1、特にスリーブ12が他の物体と接触することによって擦れることから保護している。
【0025】
また、アクチュエータカバー102は、このような擦れによるスリーブ12の損傷だけでなく、スリーブ12が水分などによって濡れることから保護できることが好ましい。つまり、アクチュエータカバー102は、防水、つまり、水を通さない素材であることが好ましい。さらに、アクチュエータカバー102は、疎水性又は撥水性を備えることによって、防水効果を一段と高めることができる。
【0026】
より具体的には、アクチュエータカバー102は、スリーブ12を保護するため、耐擦傷性、防水性、耐候性及び耐熱性を有する材料によって形成されることが好ましい。
【0027】
さらに、流体圧アクチュエータ1の形状変化を妨げないように、アクチュエータカバー102は、十分に弾性率(縦弾性係数)が小さいことが好ましい。具体的には、アクチュエータカバー102の弾性率は、スリーブ12の弾性率よりも小さいことが好ましい。
【0028】
本実施形態において、アクチュエータカバー付き保持部材100は、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどの弾性材料によって形成することができる。これらの材料を用いることによって、保持部101が保持対象物を傷つけることなく保持できるとともに、アクチュエータカバー102が流体圧アクチュエータ1の変形を妨げにくくすることができる。
【0029】
アクチュエータカバー付き保持部材100の形成は、例えば圧縮成形、射出成形又は押出成形などによって一体成形することができる。また、二色成形やインサート成形などを用いることによって、保持部101とアクチュエータカバー102とを同時に一体成形しつつ、保持部101とアクチュエータカバー102の材料を異ならせて最適化することができる。また、保持部101の一部にのみ異なる材料を用いてもよい。例えば保持部101と比べてアクチュエータカバー102により伸縮性の高い材料を用いて流体圧アクチュエータ1への追従性を高めてもよい。また、保持部101における対象物Oに当接する部位に上述のいずれかのゴム材料を用いるとともに、他の部位にプラスチック又は金属等の材料を用いて剛性を高めてもよい。
【0030】
本明細書、特許請求の範囲及び要約書において、「一体成形」とは、金型内において一体品として成形されるものを指し、インサート成形や二色成形等により一体品として成形されたものを含むが、別個の金型内で成形された別部材を接着等の樹脂成型を伴わない後工程により一体化したものは含まない。
【0031】
なお、保持部101とアクチュエータカバー102は必ずしも同時に一体成形する必要はなく、例えば別体で形成された保持部101とアクチュエータカバー102を接着や溶着等によって一体化するようにしてもよい。
【0032】
保持部101の基端側とアクチュエータカバー102の先端側とは隙間なく連結されていることが好ましい。このような構成によって、保持部101とアクチュエータカバー102の隙間から水分や汚れ等が侵入して、スリーブ12等に付着することを抑制することができる。
【0033】
(流体圧アクチュエータの概略構成)
次に、
図3から
図6を参照して、本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材100を装着する流体圧アクチュエータ1の概略構成を説明する。
【0034】
図3及び
図4に示されるように、流体圧アクチュエータ1は、チューブ11、スリーブ12、第1封止部13A、第2封止部13B、装着突部14G及び拘束部材17を備えている。
【0035】
流体圧アクチュエータ1のチューブ11には、第1封止部13Aに設けられた接続口14Dを介して流体を流入させることができる。流体圧アクチュエータ1は、チューブ11内への流体の流入によって、流体圧アクチュエータ1の軸方向において収縮し、径方向において膨張する。一方で、流体圧アクチュエータ1は、チューブ11からの流体の流出によって、流体圧アクチュエータ1の軸方向において膨張し、径方向において収縮する。このように、流体圧アクチュエータ1は、その形状変化によって、アクチュエータとしての機能を発揮することができる。
【0036】
このような流体圧アクチュエータ1は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉として適用可能であるとともに、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢、手又は指としても用いることができる。
【0037】
流体圧アクチュエータ1の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、又は水、鉱物油などの液体のどちらでもよいが、特に、流体圧アクチュエータ1は、高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有し得る。
【0038】
以下、流体圧アクチュエータ1の構成要素について、図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
チューブ11は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ11は、流体による収縮及び膨張を繰り返すため、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成されている。ただし、チューブ11を構成する弾性部材は、流体圧アクチュエータ1を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、又は水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とされてもよい。
【0040】
スリーブ12は、円筒状であり、チューブ11の外周面を覆う。スリーブ12は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ12は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ11の軸方向の膨張を規制すると共に径方向の膨張を許容し、チューブ11の変形に追従する。
【0041】
スリーブ12を構成する繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)又はポリエチレンテレフタラート(PET)等の繊維コードを用いることが好ましい。ただし、スリーブ12を構成する繊維コードは、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維コードであってもよい。
【0042】
第1封止部13A及び第2封止部13Bは、それぞれ軸方向におけるチューブ11の端部(先端側及び基端側)を封止している。本実施形態では、第1封止部13Aが、軸方向におけるチューブ11の基端側(
図3における左側)を封止し、第2封止部13Bが、軸方向におけるチューブ11の先端側(
図3における右側)を封止している。本開示において、第1封止部13A及び第2封止部13Bは、特に区別されない場合には、単に「封止部13」と総称される。
【0043】
図4に示されるように、封止部13(図示例は第1封止部13A)は、封止部材14、係止リング15及びかしめ部材16を含む。
【0044】
封止部材14は、チューブ11の軸方向の端部を封止する。封止部材14は、
図4に示すように、頭部14Aと、頭部14Aから軸方向に延びる胴部14Bとを有する。胴部14Bは、チューブ11の軸方向外側からチューブ11に挿入される。封止部材14は、頭部14A及び胴部14Bに加え、他の部材を連結させるための連結部14Cが設けられていてもよい。
【0045】
連結部14Cは、頭部14Aから軸方向において胴部14Bと反対側に突出している。連結部14Cには、他の部材を連結しやすくするために、径方向に延在する貫通孔が区画されていてもよい。
図3を参照すると、本実施形態では、第1封止部13Aの連結部14Cに、流体圧アクチュエータ1を支持する支持部40が取り付けられている。また、第2封止部13Bには、
図3等に示すように、連結部14Cに代えて装着突部14Gが設けられており、装着突部14Gが保持部101の装着凹部101aに嵌合することによって保持部101は流体圧アクチュエータ1に着脱可能な状態で取り付けられている。
【0046】
封止部材14は、ステンレス鋼などの金属を用いて構成されるが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いて構成されてもよい。
【0047】
図4及び
図5に示すように、係止リング15は、封止部材14にスリーブ12を係止する、リング状の部材である。具体的には、
図5に示されるように、スリーブ12は、係止リング15を介して径方向外側に折り返されている。
【0048】
図4に示すように、係止リング15には、封止部材14と係合できるように一部が切り欠かれた切欠き部15Aが形成されている。係止リング15は、封止部材14と同様の金属、硬質プラスチック材料などの材料、或いは、自然繊維(自然繊維の糸)、ゴム(例えばOリング)などの材料を用いて構成されてもよい。
【0049】
かしめ部材16は、チューブ11及びスリーブ12を封止部材14とともにかしめる。かしめ部材16は、封止部材14の胴部14Bの外径よりも大きい、筒状の部材である。かしめ部材16は、チューブ11及びスリーブ12の、封止部材14が挿入された部分の径方向外側を覆うように設けられ、治具によってかしめられることで、チューブ11及びスリーブ12を締め付け、封止部材14に密着固定させる。
【0050】
かしめ部材16は、アルミニウム合金、真鍮又は鉄などの金属を用いて構成されてもよい。
図3に示されるように、かしめ部材16の外周面には、治具によってかしめられた痕である圧痕16Aが形成されていてもよい。
【0051】
第1封止部13Aと第2封止部13Bとの相違点は、封止部材14に接続口14D及び通過孔14Eが設けられているか否かである。
図5に示されるように、本実施形態では、第1封止部13Aの封止部材14に、接続口14D及び通過孔14Eが設けられている。
【0052】
接続口14Dは、流体圧アクチュエータ1の駆動圧力源、具体的には、気体又は液体等のコンプレッサと接続されたホース(管路)が取り付けられる。接続口14Dを介して流入した流体は、封止部材14の内部に区画された通過孔14Eを通過して、チューブ11の内部に流入する。本実施形態では、接続口14Dは、封止部材14の頭部14Aの径方向外側に向けて開口するように設けられている。通過孔14Eは、頭部14A及び胴部14Bに亘って形成されている。接続口14Dとチューブ11内とは、通過孔14Eにより連通している。
【0053】
図4から
図6に示すように、スリーブ12の径方向内側には、拘束部材17が設けられる。拘束部材17は、スリーブ12の径方向内側において、軸方向の基端側から先端側に亘って設けられている。
【0054】
拘束部材17は、軸方向には圧縮せず、径方向(撓み方向とも称される)に沿ってのみ変形可能である。つまり、拘束部材17は、チューブ11の周方向の所定位置において、軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向に直交する直交方向(径方向)に曲げ変形可能である。
【0055】
拘束部材17は、また拘束部材17が設けられているチューブ11の周方向の所定位置において、径方向外側へのチューブ11(及びスリーブ12)の膨張を拘束(規制)する機能も有している。
【0056】
拘束部材17は、例えば、板バネ(leaf spring)を用いて形成されている。板バネの寸法は、流体圧アクチュエータ1のサイズ、及び必要とされる発生力などに応じて選択されればよく、特に限定されない。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼等の金属など、曲げ易く、圧縮に強い材料であればよい。例えば、拘束部材17は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。CFRPは、金属に比べて塑性変形をし難いため、流体圧アクチュエータ1が湾曲後、元の真っ直ぐな状態に戻りやすい。
【0057】
図6に示されるように、拘束部材17は、チューブ11とスリーブ12との間に設けられる。
図6は、
図3におけるA-A’断面での流体圧アクチュエータ1の径方向に沿った断面図である。拘束部材17は、チューブ11及びスリーブ12と密着していてもよいし、拘束部材17と、チューブ11及び/又はスリーブ12との間、及び拘束部材17の側方には、多少隙間が形成されていてもよい。ただし、拘束部材17は、チューブ11内に埋設されていてもよく、或いは、チューブ11の径方向内側に設けられていてもよい。
【0058】
拘束部材17は、チューブ11(及びスリーブ12)の周方向における一部に設けられる。すなわち、チューブ11は、周方向において拘束部材17に覆われている部分と覆われていない部分を有している。拘束部材17の幅は、特に限定されないが、チューブ11の外径を基準とすれば、概ね当該外径の半分程度とされてもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、拘束部材17は、平板状であるが、撓み方に影響がない範囲において、チューブ11及びスリーブ12の断面形状に沿って多少湾曲していてもよい。
【0060】
拘束部材17は、チューブ11及びスリーブ12の軸方向における基端側から先端側に亘って設けられている。具体的には、拘束部材17は、第1封止部13Aから第2封止部13Bに亘って設けられていてもよい。本実施形態では、拘束部材17は、チューブ11と略等しい長さとされている。
【0061】
ただし、拘束部材17は、必ずしも完全に第1封止部13Aから第2封止部13Bに亘って設けられていなくてもよく、第1封止部13A及び第2封止部13Bの何れか一方(特に、湾曲時に自由端となる可能性が高い第2封止部13B側)には、拘束部材17が延在していなくてもよい。
【0062】
(流体圧アクチュエータの動作)
次に、
図7を参照して、本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材100を流体圧アクチュエータ1に装着した状態での動作について説明する。
図7において、流体圧アクチュエータ1は、基端側が支持部40により固定されており、先端側が自由に移動できる状態である。つまり、流体圧アクチュエータ1の基端側が固定端であり、先端側が自由端である。
【0063】
図1と同様に、流体圧アクチュエータ1の先端側(
図7の下側)の装着突部14Gが保持部101の装着凹部101a内に嵌合することで保持部101が装着されている。保持部101の基端側にはアクチュエータカバー102が流体圧アクチュエータ1に沿って基端側に向けて延在し、第1封止部13Aの一部を覆っている。
【0064】
図7には、1つの流体圧アクチュエータ1及びこれを覆う1つのアクチュエータカバー付き保持部材100のみを図示している。しかし、例えば
図2に示すように、複数の流体圧アクチュエータ1及びアクチュエータカバー付き保持部材100を、保持凹所101cが内向きに方向づけられるように配置してもよい。
【0065】
上述したように、流体圧アクチュエータ1のチューブ11の内部に流体が流入すると、チューブ11が軸方向に収縮しようとするが、チューブ11の周方向の一部に、軸方向に亘って拘束部材17が設けられているため、チューブ11の、拘束部材17が設けられている周方向の部分(
図7における軸線Cより左側部分)において、チューブ11の軸方向に沿った収縮が拘束(規制)される。一方で、チューブ11の、拘束部材17が設けられていない部分(
図7における軸線Cより右側部分)は収縮しようとするため、拘束部材17が背骨のような役割を果たし、拘束部材17が設けられているチューブ11の周方向位置と反対側(
図7における右側)において、方向D1に向かって流体圧アクチュエータ1(具体的には、チューブ11及びスリーブ12)が撓む。方向D1は、撓み方向とも称される。
【0066】
一方で、流体圧アクチュエータ1の内部から流体が流出すると、流体圧アクチュエータ1は元の直線状の姿勢に戻る。これにより、流体圧アクチュエータ1を、例えば、ロボットアーム、又は、ロボットハンドの指として利用することができる。
【0067】
例えば、
図7に示されるように、流体圧アクチュエータ1を駆動させて方向D1に向かって保持部101を変位させると、
図7に図示されていない他の流体圧アクチュエータ1と協働して、作業台Tの上に置かれた対象物Oを持ち上げることができる。すなわち、保持部101に設けられ対象物Oの向きに僅かに突出するように方向づけられた爪部101bが他の部位よりも対象物Oに強く当接して対象物Oをより確実に保持して持ち上げることができる。また、対象物Oから遠ざかる方向に凹む保持凹所101cを設けることで、手のひらで対象物Oを包み込むように保持することができる。この構成によって、例えば鶏卵のように柔らかくて壊れやすい対象物Oを損傷させることなく保持することができる。
【0068】
本実施形態では、保持部101の基端部から支持部40に向けて(
図7の上方に向けて)アクチュエータカバー102が流体圧アクチュエータ1に沿って延在し、流体圧アクチュエータ1を径方向外側から覆っている。また、アクチュエータカバー102は、保持部101の基端側と隙間なく連結されている。この構成によって、
図7に示す対象物Oを保持する際に、対象物Oからの水分や汚れ等が保持部101とアクチュエータカバー102の隙間から入り込んでスリーブ12やチューブ11に付着することを抑制することができる。
【0069】
流体圧アクチュエータ1の利用者は、対象物Oの大きさ、重量、表面状態又は載置場所などに応じてアクチュエータカバー付き保持部材100を適宜最適なものに容易に交換することができる。例えば、対象物Oの重量が大きい場合に保持部101を剛性の高い材料のものに変えたり、対象物Oの大きさが大きい場合により保持面積が大きい保持部101に交換することができる。
【0070】
流体圧アクチュエータ1の使用時において、対象物Oに起因する汚れ等が保持部101やアクチュエータカバー102に付着することがある。したがって、対象物Oの種類を変えた場合には、保持部101及びアクチュエータカバー102の双方を新しいものに交換することが望ましい。本実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材100は、保持部101及びアクチュエータカバー102を一体成形しているので、保持部101及びアクチュエータカバー102を同時に容易に交換することができる。また、アクチュエータカバー付き保持部材100の使用時において、保持部101とアクチュエータカバー102の隙間に汚れや水分等が入り込むことを抑制できるため、流体圧アクチュエータ1の耐久性を高めることができる。
【0071】
(流体圧アクチュエータを用いたシステム)
図8を参照して、アクチュエータカバー付き保持部材100を装着した流体圧アクチュエータ1を用いたシステムの一構成例を説明する。具体的には、
図8に示されるシステムは、流体圧アクチュエータ1を駆動させることにより対象物Oを把持する把持システム50である。なお、
図8では、アクチュエータカバー付き保持部材100に対応する部分を太線で描いている。
【0072】
図8に示されるように、把持システム50は、台座部51、支柱部52、第1アクチュエータ接続部53、伸縮型アクチュエータ54、第2アクチュエータ接続部55、及びアクチュエータカバー付き保持部材100を装着した流体圧アクチュエータ1を備えている。
【0073】
台座部51の上面には、支柱部52が立設されている。支柱部52の上端部は、下方に向けて折り返されており、支柱部52の先端部分には、第1アクチュエータ接続部53が連結されている。
【0074】
第1アクチュエータ接続部53には、伸縮型アクチュエータ54が吊り下げられている。伸縮型アクチュエータ54は、流体圧アクチュエータ1の上下方向の位置を調整する。伸縮型アクチュエータ54は、上述した流体圧アクチュエータ1のような拘束部材17は備えられておらず、一般的なマッキベン型のアクチュエータであってよい。このため、伸縮型アクチュエータ54は、軸方向(図中の白抜き矢印方向)に沿って収縮及び膨張する。つまり、伸縮型アクチュエータ54は、単に軸方向の長さが変化するだけであり、上述した拘束部材17を有する流体圧アクチュエータ1のように湾曲することはできない。ただし、伸縮型アクチュエータ54は、拘束部材17を備え、湾曲することが可能であってもよい。また、伸縮型アクチュエータ54は、マッキベン型のアクチュエータに限られず、別の構成のアクチュエータであってもよい。
【0075】
伸縮型アクチュエータ54の下端には、第2アクチュエータ接続部55が連結されている。第2アクチュエータ接続部55には、支持部40を介して流体圧アクチュエータ1が吊り下げられている。
【0076】
図示する例では、4つの流体圧アクチュエータ1と、4つの流体圧アクチュエータ1を基端側で支持する1つの支持部40と、を備えている。4つの流体圧アクチュエータ1のそれぞれには、チューブ11の軸方向に亘って拘束部材17が設けられている。4つの流体圧アクチュエータ1のそれぞれには、チューブ11の先端側にアクチュエータカバー付き保持部材100が装着されている。
【0077】
図示する例では、4つの流体圧アクチュエータ1は、それぞれに対向する流体圧アクチュエータ1とは反対側に拘束部材17が備えられている。この構成によって、4つの各流体圧アクチュエータ1は、対向する流体圧アクチュエータ1の方向に向かって曲げ変形可能である。
【0078】
これにより、把持システム50は、伸縮型アクチュエータ54及び流体圧アクチュエータ1が駆動することにより、対象物Oを把持して、持ち上げることができる。
【0079】
すなわち、把持システム50を制御する制御部は、4つの流体圧アクチュエータ1内の圧力を制御して、各流体圧アクチュエータ1の先端部に装着された保持部101が互いに近づく方向に曲げ変形させて、対象物Oを保持することができる。
【0080】
制御部は、保持する対象物Oの大きさ、重量などに応じて、駆動する流体圧アクチュエータ1の本数を変えたり、流体圧アクチュエータ1の駆動圧力や基端部の高さ位置などを適宜調整するようにしてもよい。また、複数の流体圧アクチュエータ1同士の間隔を更に調整可能とすることによって、対象物Oの大きさ等に応じて最適な位置で保持できるようにしてもよい。
【0081】
なお、本実施形態では、
図1等に示すように、先端部が略半球形状の装着突部14Gが保持部101の略円柱形状の装着凹部101aに嵌合することにより保持部101が流体圧アクチュエータ1に装着されているが、この態様には限定されない。例えば、
図9A(保持部101を装着凹部101a側から見た図)に示すように装着凹部101aの周方向の一部から径方向内側に突出する位置決め突起101a1が、
図9B(装着突部14Gを先端側から見た図)に示すように、装着突部14Gの周方向の一部に形成された位置決め凹部14G1に嵌合することによって流体圧アクチュエータ1に対する保持部101の軸線C周りの回転位置が定まるようにしてもよい。
【0082】
このような構成によって、拘束部材17と逆方向に曲げ変形可能な流体圧アクチュエータ1において、拘束部材17の周方向位置とは反対側の周方向位置に保持部101の対象物Oが当接する面(保持凹所101cなど)が方向づけられるようにして装着することができる。したがって、流体圧アクチュエータ1の曲げ方向と保持部101における対象物Oに当接する面との周方向の位置合わせを容易化することができる。この場合、拘束部材17の周方向位置と装着突部14Gの回転位置を合わせる手段をさらに備えていてもよい。なお、保持部101側が位置決め凹部を備えるとともに装着突部14Gが位置決め突起を備えていてもよく、装着突部14Gに対する保持部101の軸線C周りの回転位置が所定方向に定まればよい。
【0083】
以上述べたように、本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材100は、流体の圧力によって駆動する流体圧アクチュエータ1に装着され対象物Oを保持する保持部101と、保持部101が流体圧アクチュエータ1に装着されている状態で流体圧アクチュエータ1を覆うアクチュエータカバー102と、を備えるように構成した。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータ1が物体に接触して擦れたり、水分や汚れが付着することを抑制して、流体圧アクチュエータ1の耐久性を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、保持部101は、流体圧アクチュエータ1の膨張及び収縮する円筒状のチューブ11の軸方向の先端側に装着可能であり、アクチュエータカバー102は、流体圧アクチュエータ1のチューブ11の径方向外側を覆うように構成した。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータ1の径方向外側をアクチュエータカバー102で覆うとともに先端部に保持部101を装着することで、流体圧アクチュエータ1が物体に接触して擦れたり、水分や汚れが付着することを効果的に抑制して、流体圧アクチュエータ1の耐久性を更に向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態では、アクチュエータカバー102は、保持部101と一体成形されるように構成した。このような構成の採用によって、保持部101とアクチュエータカバー102との間の隙間を無くすことができるので、保持部101とアクチュエータカバー102の隙間から水分や汚れ等が侵入してスリーブ12等に付着することを抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態では、保持部101は、流体圧アクチュエータ1の装着突部14Gが嵌合可能な装着凹部101aを有するように構成した。このような構成の採用によって、保持部101を流体圧アクチュエータ1に対して容易に着脱可能として、保持する対象物Oの種類の変更等のタイミングで容易にメンテナンスを行うことができる。
【0087】
また、本実施形態では、保持部101は、対象物Oを保持するための爪部101bを有するように構成した。このような構成の採用によって、爪部101bを他の部位よりも対象物Oに強く当接させて、対象物Oとの静止摩擦力を高めてより確実に対象物Oを保持することができる。
【0088】
また、本実施形態では、保持部101は、対象物Oを保持するための保持凹所101cを有するように構成した。このような構成の採用によって、対象物Oから遠ざかる方向に凹む保持凹所101cを設けることで、手のひらで対象物Oを包み込むように保持することができる。
【0089】
また、本実施形態では、流体圧アクチュエータ1は、所定方向に曲げ変形可能であり、保持部101は、対象物Oの保持面を所定方向に方向づけして流体圧アクチュエータ1に装着するための位置決め部(位置決め突起101a1)を有するように構成した。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータ1の曲げ方向と保持部101における対象物Oに当接する面との周方向の位置合わせを容易化することができる。
【0090】
(アクチュエータカバー200の構成)
次に、
図10を参照しつつ、流体圧アクチュエータ1に装着する本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー200について説明する。
【0091】
アクチュエータカバー200は、
図10の左右方向に延びる長尺状の流体圧アクチュエータ1と、流体圧アクチュエータ1の先端側(
図10の右側)に装着され対象物Oを保持する保持部101とを外側から覆うカバー部材である。
【0092】
本実施形態において、流体圧アクチュエータ1及びアクチュエータカバー200は、それぞれの中心軸線が共通の軸線C上に配置されている。本実施形態では、この軸線Cに沿う保持部101側(
図10における右側)を先端側、支持部40側(
図10における左側)を基端側とする。また、軸線Cに直交する方向を径方向といい、軸線Cに直交する直線に沿って軸線Cから離れる方向を径方向外側、軸線Cに直交する直線に沿って軸線Cに近づく方向を径方向内側とする。また、図面において、「軸方向」はD
AXと示され、「径方向」はD
Rと示される。
【0093】
本実施形態において、保持部101は、
図10に示す正面視で略三角形形状を有しており、三角形の各頂点位置が僅かに保持する対象物Oの方向(
図10における紙面に垂直方向手前側)に方向づけられた爪部101bを構成している。
図10において3つの爪部101bで囲まれる領域は、
図10の紙面に垂直方向奥側に向かって凹む保持凹所101cを構成している(保持凹所101cの立体形状は、
図2参照)。
【0094】
このように、保持する対象物Oに向かって方向づけられた爪部101bを備えることによって、他の部位よりも対象物Oに強く当接し、対象物Oとの静止摩擦力を高めてより確実に対象物Oを保持することができる。また、対象物Oから遠ざかる方向に凹む保持凹所101cを設けることで、手のひらで対象物Oを包み込むように保持することができる。
【0095】
本実施形態では、
図1に示すアクチュエータカバー付き保持部材100とは異なり、保持部101はアクチュエータカバー200と連結されていない。そして、アクチュエータカバー200は、流体圧アクチュエータ1と保持部101の双方を外側から覆うように構成されている。
【0096】
本実施形態において、アクチュエータカバー200は、
図10に示すように、流体圧アクチュエータ1を覆うカバー本体202と、対象物Oを保持する保持部101を覆う保持カバー部201とを備えている。
【0097】
カバー本体202は、略円筒形状を有しており、流体圧アクチュエータ1のスリーブ12の外周面を覆っている。カバー本体202は、流体圧アクチュエータ1を保護している。
【0098】
具体的には、カバー本体202は、流体圧アクチュエータ1、特にスリーブ12が他の物体と接触することによって擦れることから保護している。
【0099】
また、カバー本体202は、このような擦れによるスリーブ12の損傷だけでなく、スリーブ12が水分などによって濡れることから保護できることが好ましい。つまり、カバー本体202は、防水、つまり、水を通さない素材であることが好ましい。さらに、カバー本体202は、疎水性又は撥水性を備えることによって、防水効果を一段と高めることができる。
【0100】
より具体的には、カバー本体202は、スリーブ12を保護するため、耐擦傷性、防水性、耐候性及び耐熱性を有する材料によって形成されることが好ましい。
【0101】
さらに、流体圧アクチュエータ1の形状変化を妨げないように、カバー本体202は、十分に弾性率(縦弾性係数)が小さいことが好ましい。具体的には、カバー本体202の弾性率は、スリーブ12の弾性率よりも小さいことが好ましい。
【0102】
保持カバー部201は、保持部101に装着された状態において、保持部101の外形に沿った形状を備えており、
図10に示す正面視で略三角形形状を有している。保持カバー部201は、保持部101の外周面を覆っている。保持カバー部201は保持部101を保護している。
【0103】
また、保持カバー部201は、保持部101を保護するだけでなく、流体圧アクチュエータ1とカバー本体202との間に水分などが侵入しないように保護することができる。つまり、本実施形態では、
図10に示すように、アクチュエータカバー200を構成する保持カバー部201とカバー本体202は隙間なく連結されており、保持カバー部201は、カバー本体202の先端側を完全に閉塞している。この構成によって、対象物Oを保持する際に、対象物Oに起因する水分や汚れなどが流体圧アクチュエータ1の先端側(
図10の右側)から入り込むことを抑制することができる。そして、アクチュエータカバー200を交換することによって、先端側の水分や汚れ等を除去することができる。
【0104】
したがって、保持カバー部201についても、防水、つまり、水を通さない素材であることが好ましい。さらに、保持カバー部201は、疎水性又は撥水性を備えることによって、防水効果を一段と高めることができる。なお、保持カバー部201とカバー本体202との間に隙間があってもよい。
【0105】
本実施形態では、
図10に示すように、保持カバー部201の肉厚をカバー本体202と比べて薄くすることによって伸縮性を持たせている。この構成によって、
図10に示す正面視において流体圧アクチュエータ1よりも幅が大きい保持部101の外形に保持カバー部201の形を容易にフィットさせることができる。
【0106】
本実施形態において、アクチュエータカバー200は、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどの弾性材料によって形成することができる。これらの材料を用いることによって、対象物Oと保持部101との間にゴム系部材である保持カバー部201が介在することで対象物Oをグリップする力が向上する。また、カバー本体202が伸縮性の高い弾性部材であるため、流体圧アクチュエータ1の変形を妨げにくくすることができる。
【0107】
アクチュエータカバー200の形成は、例えば圧縮成形、射出成形又は押出成形などによって一体成形することができる。また、二色成形やインサート成形などを用いることによって、保持カバー部201とカバー本体202とを同時に一体成形しつつ、保持カバー部201とカバー本体202の材料を異ならせて最適化することができる。例えばカバー本体202と比べて保持カバー部201により縦弾性係数が小さく伸縮性の高い材料を用いることによって、
図10に示す正面視において流体圧アクチュエータ1よりも幅が大きい保持部101の外形に保持カバー部201の形を容易にフィットさせることができる。
【0108】
また、アクチュエータカバー200の成形時の形状を、流体圧アクチュエータ1及び保持部101の外形形状に概ね合わせるようにしてもよい。この構成によって、保持カバー部201の肉厚をカバー本体202よりも薄くしたり、保持カバー部201の材料をカバー本体202よりも伸縮性が高い材料とすることなく、保持部101の外形に保持カバー部201の形を容易にフィットさせることができる。
【0109】
保持カバー部201とカバー本体202は必ずしも同時に一体成形する必要はなく、例えば別体で形成された保持カバー部201とカバー本体202を接着や溶着等によって一体化してもよい。
【0110】
保持カバー部201の基端側とカバー本体202の先端側は隙間なく連結されていることが好ましい。このような構成によって、保持カバー部201とカバー本体202の隙間から水分や汚れ等が侵入して、スリーブ12等に付着することを抑制することができる。
【0111】
以上述べたように、本開示の一実施形態に係るアクチュエータカバー200は、流体圧アクチュエータ1を覆うカバー本体202と、流体圧アクチュエータ1の軸方向の先端側に装着され対象物Oを保持する保持部101を覆う保持カバー部201と、を備えるように構成した。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータ1と流体圧アクチュエータ1の軸方向の先端側に装着される保持部101とを隙間無く覆うことができるので、流体圧アクチュエータ1が物体に接触して擦れたり、保持カバー部201とカバー本体202の隙間から水分や汚れ等が侵入して、スリーブ12等に付着することを抑制することができる。
【0112】
また、本実施形態では、保持カバー部201は、カバー本体202よりも肉厚が薄くなるように構成した。このような構成の採用によって、正面視で流体圧アクチュエータ1よりも幅が大きい保持部101の外形に対して、肉厚が薄く伸縮性に優れる保持カバー部201の形を容易にフィットさせることができる。
【0113】
また、本実施形態では、保持カバー部201を構成する材料は、カバー本体202を構成する材料よりも縦弾性係数が小さくなるように構成した。このような構成の採用によって、正面視で流体圧アクチュエータ1よりも幅が大きい保持部101の外形に対して、縦弾性係数が小さく伸縮性に優れる保持カバー部201の形を容易にフィットさせることができる。
【0114】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0115】
例えば、本実施形態に係るアクチュエータカバー付き保持部材100では、正面視で略三角形形状の保持部101を備えるように構成したが、この態様には限定されない。保持部101の形状は、保持しようとする対象物Oの形状、大きさ、重量、表面の状態等に応じて種々の形状を採用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示は流体圧アクチュエータ1に装着するアクチュエータカバー付き保持部材100及びアクチュエータカバー200に関する。
【符号の説明】
【0117】
1:流体圧アクチュエータ、 11:チューブ、 12:スリーブ、 13:封止部、 13A:第1封止部、 13B:第2封止部、 14:封止部材、 14A:頭部、 14B:胴部、 14C:連結部、 14D:接続口、 14E:通過孔、 14G:装着突部、 14G1:位置決め凹部、 15:係止リング、 15A:切欠き部、 16:かしめ部材、 16A:圧痕、 17:拘束部材、 40:支持部、 50:把持システム、 51:台座部、 52:支柱部、 53:第1アクチュエータ接続部、 54:伸縮型アクチュエータ、 55:第2アクチュエータ接続部 100:アクチュエータカバー付き保持部材、 101:保持部、 101a:装着凹部、 101a1:位置決め突起、 101b:爪部、 101c:保持凹所、 102:アクチュエータカバー、200:アクチュエータカバー、 201:保持カバー部、 202:カバー本体、 C:軸線、 O:対象物、 T:作業台、 D1:撓み方向