(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090571
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20230622BHJP
B25J 15/12 20060101ALI20230622BHJP
B25J 19/00 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
F15B15/10 H
B25J15/12
B25J19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205599
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】糸井 大太
(72)【発明者】
【氏名】安井 仁
(72)【発明者】
【氏名】中北 行紀
【テーマコード(参考)】
3C707
3H081
【Fターム(参考)】
3C707CU01
3C707CU07
3C707DS01
3C707ES03
3C707EU11
3C707HS21
3H081AA18
3H081BB02
3H081BB03
3H081CC29
3H081DD07
3H081HH10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体圧アクチュエータの有用性を向上させる。
【解決手段】本開示に係る流体圧アクチュエータ1は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブ11と、前記チューブの外周面を覆うスリーブ12と、を備えるアクチュエータ部10と、前記チューブの軸方向の先端側で、前記アクチュエータ部に連なるアタッチメント部20と、前記アタッチメント部に振動を生じさせるバイブレータ30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、を備えるアクチュエータ部と、
前記チューブの軸方向の先端側で、前記アクチュエータ部に連なるアタッチメント部と、
前記アタッチメント部に振動を生じさせるバイブレータと、
を備える、流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記バイブレータは、前記アタッチメント部に保持されている、請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記バイブレータは、前記アクチュエータ部に保持されている、請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記チューブの軸方向の基端側で、前記アクチュエータ部を支持する支持部を更に備え、
前記バイブレータは、前記支持部に保持されている、請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記アタッチメント部は、前記アクチュエータ部に連なる基端側から先端側に向かって厚みが薄くなる、へら状である、請求項1から4のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項6】
前記アタッチメント部は、前記アクチュエータ部から着脱可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項7】
前記アクチュエータ部は、前記スリーブの径方向内側において、前記軸方向における基端側から先端側に亘って設けられる拘束部材を更に備え、
前記拘束部材は、前記軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸方向に直交する直交方向に曲げ変形可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項8】
前記アクチュエータ部を複数備え、
前記アタッチメント部は、複数の前記アクチュエータ部のそれぞれのチューブの軸方向の前記先端側に亘って、複数の前記アクチュエータ部に連なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体または液体を用いてチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータが知られている。例えば、特許文献1には、空気圧によって膨張、収縮するゴム製のチューブと、チューブの外周面を覆うスリーブとを有する構造を有する流体圧アクチュエータ(いわゆるマッキベン型の流体圧アクチュエータ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、流体圧アクチュエータのロボットアーム等への適用が進む中で、流体圧アクチュエータの有用性の更なる向上が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、流体圧アクチュエータの有用性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る流体圧アクチュエータは、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、前記チューブの外周面を覆うスリーブと、を備えるアクチュエータ部と、前記チューブの軸方向の先端側で、前記アクチュエータ部に連なるアタッチメント部と、前記アタッチメント部に振動を生じさせるバイブレータと、を備える。
本開示に係る流体圧アクチュエータによれば、流体圧アクチュエータの有用性を向上させることができる。
【0007】
本開示に係る流体圧アクチュエータでは、前記バイブレータは、前記アタッチメント部に保持されていることが好ましい。かかる構成を有する流体圧アクチュエータによれば、バイブレータの振動がチューブの軸方向の基端側に伝わりにくくなる。
【0008】
本開示に係る流体圧アクチュエータでは、前記バイブレータは、前記アクチュエータ部に保持されていることが好ましい。かかる構成を有する流体圧アクチュエータによれば、アタッチメント部を交換した際に、バイブレータを継続して利用することができる。
【0009】
本開示に係る流体圧アクチュエータは、前記チューブの軸方向の基端側で、前記アクチュエータ部を支持する支持部を更に備え、前記バイブレータは、前記支持部に保持されていることが好ましい。かかる構成を有する流体圧アクチュエータによれば、バイブレータが壊れにくくなる。
【0010】
本開示に係る流体圧アクチュエータでは、前記アタッチメント部は、前記アクチュエータ部に連なる基端側から先端側に向かって厚みが薄くなる、へら状であることが好ましい。かかる構成を有する流体圧アクチュエータによれば、流体圧アクチュエータを動作させて対象物を加圧又は把持等する際に、アタッチメント部が、作業台等の上に置かれた対象物と作業台との隙間に入り込みやすくなる。
【0011】
本開示に係る流体圧アクチュエータでは、前記アタッチメント部は、前記アクチュエータ部から着脱可能であることが好ましい。かかる構成を有する流体圧アクチュエータによれば、アタッチメント部を交換することができ、流体圧アクチュエータの有用性を更に向上させることができる。
【0012】
本開示に係る流体圧アクチュエータでは、前記アクチュエータ部は、前記スリーブの径方向内側において、前記軸方向における基端側から先端側に亘って設けられる拘束部材を更に備え、前記拘束部材は、前記軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸方向に直交する直交方向に曲げ変形可能であることが好ましい。かかる構成を有する流体圧アクチュエータによれば、流体圧アクチュエータのサイズの大型化を回避しつつ、より大きな撓み方向の力を発揮することができる。
【0013】
本開示に係る流体圧アクチュエータでは、前記アクチュエータ部は、前記チューブ及び前記スリーブのセットを複数備え、前記アタッチメント部は、複数の前記セットのそれぞれのチューブの軸方向の前記先端側に亘って、前記アクチュエータ部に連なることが好ましい。かかる構成を有する流体圧アクチュエータによれば、流体圧アクチュエータの用途に応じてアタッチメント部に加えられる力の大きさ及び方向を柔軟にデザインすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、流体圧アクチュエータの有用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態に係る流体圧アクチュエータの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される流体圧アクチュエータの一部分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される基端側封止部を含む流体圧アクチュエータの軸方向に沿った一部断面図である。
【
図4】
図4は、
図1におけるA-A’での流体圧アクチュエータの径方向に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示されるアタッチメント部の概略形状を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示される流体圧アクチュエータの動作を示す概略図である。
【
図7】
図7は、
図1に示される流体圧アクチュエータを用いたシステムの一構成例を示す概略側面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第2の実施形態に係る流体圧アクチュエータの斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1に示される流体圧アクチュエータにおけるバイブレータの配置位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る流体圧アクチュエータの実施形態について、図面を参照して説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0017】
(流体圧アクチュエータの概略構成)
はじめに、
図1、
図2、
図3及び
図4を参照して、本開示の第1の実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の概略構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の側面図である。
図2は、流体圧アクチュエータ1の一部分解斜視図である。
図3は、
図1に示される第1封止部13Aを含む流体圧アクチュエータ1の軸方向に沿った一部断面図である。
図4は、
図1におけるA-A’での流体圧アクチュエータの径方向に沿った断面図である。
【0018】
図1に示されるように、流体圧アクチュエータ1は、アクチュエータ部10、アタッチメント部20、バイブレータ30、及び支持部40を備える。アクチュエータ部10は、チューブ11、スリーブ12、第1封止部13A、第2封止部13B及び拘束部材17を備える。
【0019】
流体圧アクチュエータ1のチューブ11には、第1封止部13Aに設けられた接続口14Dを介して流体を流入させることができる。アクチュエータ部10は、チューブ11内への流体の流入によって、アクチュエータ部10の軸方向において収縮し、径方向において膨張する。一方で、アクチュエータ部10は、チューブ11からの流体の流出によって、アクチュエータ部10の軸方向において膨張し、径方向において収縮する。このようなアクチュエータ部10の形状変化によって、流体圧アクチュエータ1は、アクチュエータとしての機能を発揮することができる。
【0020】
このような流体圧アクチュエータ1は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉として適用可能であるとともに、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢、手又は指としても用いることができる。
【0021】
流体圧アクチュエータ1の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、または水、鉱物油などの液体のどちらでもよいが、特に、流体圧アクチュエータ1は、アクチュエータ部10に高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有し得る。
【0022】
以下、流体圧アクチュエータ1の構成要素について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
チューブ11は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ11は、流体による収縮及び膨張を繰り返すため、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成されている。ただし、チューブ11を構成する弾性部材は、流体圧アクチュエータ1を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とされてもよい。
【0024】
本開示において、チューブ11の延在する方向、即ち、チューブ11の中心軸と並行な方向を、チューブ11の軸方向という。チューブ11の軸方向と直交する方向を、チューブ11の径方向という。そして、チューブ11の中心軸の軸周り方向を、チューブ11の周方向という。以降において、チューブ11の軸方向、チューブ11の径方向及びチューブ11の周方向は、それぞれ単に「軸方向」、「径方向」及び「周方向」とも称される。また、図面において、「軸方向」はDAXと示され、「径方向」はDRと示される。また、本開示では、流体圧アクチュエータ1において、チューブ11の軸方向に沿って、アタッチメント部20が設けられている側を「先端側」と称し、先端側と反対側を「基端側」と称す。さらに、本開示では、チューブ11の径方向において、チューブ11の中心軸に近い側を「径方向内側」と称し、チューブ11の中心軸から遠い側を「径方向外側」と称する。
【0025】
スリーブ12は、円筒状であり、チューブ11の外周面を覆う。スリーブ12は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ12は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ11の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0026】
スリーブ12を構成する繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)又はポリエチレンテレフタラート(PET)等の繊維コードを用いることが好ましい。ただし、スリーブ12を構成する繊維コードは、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維コードであってもよい。
【0027】
第1封止部13A及び第2封止部13Bは、それぞれ軸方向におけるチューブ11の端部(先端及び基端)を封止している。本実施形態では、第1封止部13Aが、軸方向におけるチューブ11の基端を封止し、第2封止部13Bが、軸方向におけるチューブ11の先端を封止している。本開示において、第1封止部13A及び第2封止部13Bは、特に区別されない場合には、単に「封止部13」と総称される。
【0028】
図2に示されるように、封止部13(図示例は第1封止部13A)は、封止部材14、係止リング15及びかしめ部材16を含む。
【0029】
封止部材14は、チューブ11の軸方向の端部を封止する。封止部材14は、頭部14Aと、頭部14Aから軸方向に延びる胴部14Bとを有する。胴部14Bは、チューブ11の軸方向外側からチューブ11に挿入される。封止部材14は、頭部14A及び胴部14Bに加え、他の部材を連結させるための連結部14Cが設けられていてもよい。
【0030】
連結部14Cは、頭部14Aから軸方向において胴部14Bと反対側に突出している。連結部14Cには、他の部材を連結しやすくするために、径方向に延在する貫通孔が区画されていてもよい。
図1を参照すると、本実施形態では、第1封止部13Aの連結部14Cに、アクチュエータ部10を支持する支持部40が取り付けられており、第2封止部13Bの連結部14Cに、アタッチメント部20が取り付けられている。
【0031】
封止部材14は、ステンレス鋼などの金属を用いて構成されるが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いて構成されてもよい。
【0032】
再び
図2を参照すると、係止リング15は、封止部材14にスリーブ12を係止する、リング状の部材である。具体的には、
図3に示されるように、スリーブ12は、係止リング15を介して径方向外側に折り返されている。
【0033】
再び
図2を参照して、係止リング15には、封止部材14と係合できるように一部が切り欠かれた切欠き部15Aが形成されている。係止リング15は、封止部材14と同様の金属、硬質プラスチック材料などの材料、或いは、自然繊維(自然繊維の糸)、ゴム(例えばOリング)などの材料を用いて構成されてもよい。
【0034】
かしめ部材16は、チューブ11及びスリーブ12を封止部材14とともにかしめる。かしめ部材16は、封止部材14の胴部14Bの外径よりも大きい、筒状の部材である。かしめ部材16は、チューブ11及びスリーブ12の、封止部材14が挿入された部分の径方向外側を覆うように設けられ、治具によってかしめられることで、チューブ11及びスリーブ12を締め付け、封止部材14に密着固定させる。
【0035】
かしめ部材16は、アルミニウム合金、真鍮又は鉄などの金属を用いて構成されてもよい。
図1に示されるように、かしめ部材16の外周面には、治具によってかしめられた痕である圧痕16Aが形成されていてもよい。
【0036】
第1封止部13Aと第2封止部13Bとの相違点は、封止部材14に接続口14D及び通過孔14Eが設けられているか否かである。
図3に示されるように、本実施形態では、第1封止部13Aの封止部材14に、接続口14D及び通過孔14Eが設けられている。
【0037】
接続口14Dには、流体圧アクチュエータ1の駆動圧力源、具体的には、気体又は液体等のコンプレッサと接続されたホース(管路)が取り付けられる。接続口14Dを介して流入した流体は、封止部材14の内部に区画された通過孔14Eを通過して、チューブ11の内部に流入する。本実施形態では、接続口14Dは、封止部材14の頭部14Aの径方向外側に向けて開口するように設けられている。通過孔14Eは、頭部14A及び胴部14Bに亘って形成されている。接続口14Dとチューブ11内とは、通過孔14Eにより連通している。
【0038】
再び
図2を参照して、スリーブ12の径方向内側には、拘束部材17が設けられる。拘束部材17は、スリーブ12の径方向内側において、軸方向の基端側から先端側に亘って設けられている。
【0039】
拘束部材17は、軸方向には圧縮せず、径方向(撓み方向とも称される)に沿ってのみ変形可能である。つまり、拘束部材17は、軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向に直交する直交方向(径方向)に曲げ変形可能である。
【0040】
拘束部材17は、拘束部材17が設けられているチューブ11の周方向の位置において、径方向外側へのチューブ11(及びスリーブ12)の膨張を拘束(規制)する機能も有している。
【0041】
拘束部材17は、例えば、板バネ(leaf spring)を用いて形成されている。板バネの寸法は、アクチュエータ部10のサイズ、及び必要とされる発生力などに応じて選択されればよく、特に限定されない。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、曲げ易く、圧縮に強い材料であればよい。例えば、拘束部材17は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。CFRPは、金属に比べて塑性変形をし難いため、アクチュエータ部10が湾曲後、元の真っ直ぐな状態に戻りやすい。
【0042】
図4に示されるように、拘束部材17は、チューブ11とスリーブ12との間に設けられる。
図4は、
図1におけるA-A’での流体圧アクチュエータ1の径方向に沿った断面図である。拘束部材17は、チューブ11及びスリーブ12と密着していてもよいし、拘束部材17と、チューブ11及び/またはスリーブ12との間、及び拘束部材17の側方には、多少隙間が形成されていてもよい。ただし、拘束部材17は、チューブ11内に埋設されていてもよく、或いは、チューブ11の径方向内側に設けられていてもよい。
【0043】
拘束部材17は、チューブ11(及びスリーブ12)の周方向における一部に設けられる。すなわち、チューブ11は、周方向において拘束部材17に覆われている部分と覆われていない部分を有している。拘束部材17の幅は、特に限定されないが、チューブ11の外径を基準とすれば、概ね当該外径の半分程度とされてもよい。
【0044】
なお、本実施形態では、拘束部材17は、平板状であるが、撓み方に影響がない範囲において、チューブ11及びスリーブ12の断面形状に沿って多少湾曲していてもよい。
【0045】
拘束部材17は、チューブ11及びスリーブ12の軸方向における基端側から先端側に亘って設けられている。具体的には、拘束部材17は、第1封止部13Aから第2封止部13Bに亘って設けられていてもよい。本実施形態では、拘束部材17は、チューブ11と略等しい長さとされている。
【0046】
ただし、拘束部材17は、必ずしも完全に第1封止部13Aから第2封止部13Bに亘って設けられていなくてもよく、第1封止部13A及び第2封止部13Bの何れか一方(特に、湾曲時に自由端となる可能性が高い第2封止部13B側)には、拘束部材17が延在していなくてもよい。
【0047】
再び
図1を参照して、アタッチメント部20は、チューブ11の軸方向の先端側で、アクチュエータ部10に連なっている。アタッチメント部20は、流体圧アクチュエータ1が駆動して対象物を加圧又は把持等する際に、対象物と接触するハンド部である。本実施形態では、アタッチメント部20は、アクチュエータ部10の第2封止部13Bに含まれる封止部材14に軸方向先端側から取り付けられている。
【0048】
図5を参照して、アタッチメント部20の概略形状を説明する。
図5は、
図1に示されるアタッチメント部20の概略形状を示す斜視図である。本実施形態では、アタッチメント部20は、アクチュエータ部に連なる基端側から先端側に向かって厚みが薄くなる、へら状とされている。これにより、流体圧アクチュエータ1が駆動してワーク等の対象物を加圧、把持等する際に、アタッチメント部20の先端が、作業台等の上に置かれた対象物と作業台との隙間に入り込みやすくなる。ただし、アタッチメント部20の形状は、へら状に限られず、流体圧アクチュエータ1の用途に応じて、任意の形状とされてもよい。
【0049】
アタッチメント部20は、例えば、ゴム、プラスチック、金属等の材料を用いて構成されている。ただし、アタッチメント部20は、これらの材料に限られず、流体圧アクチュエータ1の用途に応じて、任意の材料を用いて構成されていてもよい。
【0050】
アタッチメント部20は、アクチュエータ部10から着脱可能とされてもよい。本実施形態では、アタッチメント部20は、第2封止部13Bに含まれる封止部材14の軸方向先端側に設けられた連結部14Cに着脱可能に取り付けられている。これにより、流体圧アクチュエータ1の用途に応じて、異なる形状のアタッチメント部20に交換することができる。また、アタッチメント部20に摩耗又は破損等が生じた場合に、アタッチメント部20のみを交換することができる。ただし、アタッチメント部20は、アクチュエータ部10から着脱不可能とされてもよい。例えば、アタッチメント部20は、第2封止部13Bに含まれる封止部材14と一体として形成されてもよい。
【0051】
再び
図1を参照して、流体圧アクチュエータ1は、更に、アタッチメント部20に振動を生じさせるバイブレータ30を備えている。バイブレータ30は、連続又は断続した一定の振動を発生させる電子部品である。バイブレータ30による振動の発生方法は、任意の手法により実現されていてもよい。例えば、バイブレータ30は、モータの軸に重心を偏らせた錘(偏心錘)を取り付けた構造を有し、モータを回転させることで振動を生じさせてもよい。或いは、バイブレータ30は、クランク及びばね等を用いた共振により振動を生じさせてもよく、電磁石に交流電源を与えることで振動を生じさせてもよい。これにより、流体圧アクチュエータ1が駆動してアタッチメント部20が対象物に接触した際に、バイブレータ30は、アタッチメント部20を介して、対象物に振動を与えることができる。或いは、バイブレータ30は、流体圧アクチュエータ1が駆動してアタッチメント部20を作業台等の上に置かれた対象物と作業台との隙間に入り込ませる際に、アタッチメント部20を振動させることで、アタッチメント部20が隙間に入り込みやすくすることができる。これにより、流体圧アクチュエータ1の有用性が向上する。
【0052】
バイブレータ30は、アタッチメント部20に保持されていてもよい。
図1に示される例では、バイブレータ30は、アタッチメント部20の内部に埋設されている。これにより、バイブレータ30がアタッチメント部20に効率的に振動を生じさせることができる一方で、バイブレータ30の振動をチューブ11が吸収することにより、振動が流体圧アクチュエータ1の軸方向の基端側に伝わりにくくなる。このため、流体圧アクチュエータ1の基端側に設けられた支持部40に取り付けられたボルト等が振動により緩みにくくなる。
【0053】
ただし、流体圧アクチュエータ1におけるバイブレータ30の配置位置は、アタッチメント部20に限られない。バイブレータ30は、流体圧アクチュエータ1における任意の位置に配置されてもよい。
図9を参照して、流体圧アクチュエータ1におけるバイブレータ30の配置位置について説明する。
図9は、
図1に示される流体圧アクチュエータ1におけるバイブレータ30の配置位置を示す概略図である。バイブレータ30は、アクチュエータ部10に保持されていてもよい。例えば、
図9においてバイブレータ30A及び30Bとして示されるように、バイブレータ30は、第1封止部13A又は第2封止部13B等に設置されていてもよい。これにより、流体圧アクチュエータ1の駆動に伴い外部から衝撃を受けやすいアタッチメント部20に埋設されている場合に比べて、バイブレータ30が破損しにくくなる。また、当該設置により、アタッチメント部20に摩耗又は破損等が生じた場合に、比較的高価なバイブレータ30を一緒に交換することなく、アタッチメント部20のみを交換することができる。
【0054】
また例えば、流体圧アクチュエータ1が、チューブ11の軸方向の基端側で、アクチュエータ部10を支持する支持部40を備えている場合、
図9においてバイブレータ30Cとして示されるように、バイブレータ30は、支持部40に保持されていてもよい。これにより、バイブレータ30は、支持部40に安定的に設置されることで破損しにくくなる。また、後述するように、支持部40に複数のアクチュエータ部10が取り付けられる構成の場合、複数のアクチュエータ部10を支持する支持部40にバイブレータ30を設けることで、1つのバイブレータ30により複数のアクチュエータ部10の先端側に連なるアタッチメント部20に効率的に振動を与えることができる。
【0055】
(流体圧アクチュエータの動作)
次に、
図6を参照して、本開示の一実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の概略構成を説明する。
図6は、
図1に示される流体圧アクチュエータ1の動作を示す概略図である。
図6において、流体圧アクチュエータ1は、アクチュエータ部10の基端側が支持部40により固定されており、先端側が自由に移動できる状態である。つまり、流体圧アクチュエータ1の基端側が固定端であり、先端側が自由端である。
【0056】
上述したように、流体圧アクチュエータ1のチューブ11の内部に流体が流入すると、チューブ11が軸方向に収縮しようとするが、チューブ11の周方向の一部に、軸方向に亘って拘束部材17が設けられているため、チューブ11の、拘束部材17が設けられている周方向の部分において、チューブ11の軸方向に沿った収縮が拘束(規制)される。一方で、チューブ11の、拘束部材17が設けられていない部分は収縮しようとするため、拘束部材17が背骨のような役割を果たし、拘束部材17が設けられているチューブ11の周方向の位置と反対側(
図6における右側)において、方向D1に向かって流体圧アクチュエータ1(具体的には、チューブ11及びスリーブ12)が撓む。方向D1は、撓み方向とも称される。
【0057】
一方で、流体圧アクチュエータ1の内部から流体が流出すると、流体圧アクチュエータ1は元の直線状の姿勢に戻る。これにより、流体圧アクチュエータ1を、例えば、ロボットアーム、又は、ロボットハンドの指、として利用することができる。例えば、
図6に示されるように、流体圧アクチュエータ1を駆動させて、作業台Tの上に置かれた対象物Oを持ち上げる際に、バイブレータ30によりアタッチメント部20を振動させることで、作業台Tと対象物Oとの隙間にアタッチメント部20が入り込みやすくなる。これにより、流体圧アクチュエータ1は、より少ない力で対象物Oを持ち上げることができ、流体圧アクチュエータ1の有用性が向上する。
【0058】
(流体圧アクチュエータを用いたシステム)
図7を参照して、流体圧アクチュエータ1を用いたシステムの一構成例を説明する。
図7は、流体圧アクチュエータ1を用いたシステムの一構成例を示す概略側面図である。具体的には、
図7に示されるシステムは、流体圧アクチュエータ1を駆動させることにより対象物を把持する把持システム50である。
【0059】
図7に示されるように、把持システム50は、台座部51、支柱部52、第1アクチュエータ接続部53、伸縮型アクチュエータ54、第2アクチュエータ接続部55、及び流体圧アクチュエータ1を備えている。
【0060】
台座部51の上面には、支柱部52が立設されている。支柱部52の上端部は、下方に向けて折り返されており、支柱部52の先端部分には、第1アクチュエータ接続部53が連結されている。
【0061】
第1アクチュエータ接続部53には、伸縮型アクチュエータ54が吊り下げられている。伸縮型アクチュエータ54は、流体圧アクチュエータ1の上下方向の位置を調整する。伸縮型アクチュエータ54は、上述した流体圧アクチュエータ1のような拘束部材17は備えられておらず、一般的なマッキベン型のアクチュエータであってよい。このため、伸縮型アクチュエータ54は、軸方向(図中の白抜き矢印方向)に沿って収縮及び膨張する。つまり、伸縮型アクチュエータ54は、単に軸方向の長さが変化するだけであり、上述した拘束部材17を有する流体圧アクチュエータ1のように湾曲することはできない。ただし、伸縮型アクチュエータ54は、拘束部材17を備え、湾曲することが可能であってもよい。また、伸縮型アクチュエータ54は、マッキベン型のアクチュエータに限られず、別の構成のアクチュエータであってもよい。
【0062】
伸縮型アクチュエータ54の下端には、第2アクチュエータ接続部55が連結されている。第2アクチュエータ接続部55には、流体圧アクチュエータ1が吊り下げられている。
【0063】
図示例では、流体圧アクチュエータ1は、4つのアクチュエータ部10と、4つのアクチュエータ部10を基端側で支持する1つの支持部40と、を備えている。4つのアクチュエータ部10のそれぞれには、チューブ11の軸方向に亘って拘束部材17が設けられている。また、4つのアクチュエータ部10のそれぞれには、チューブ11の先端側にアタッチメント部20が連なっている。
【0064】
これにより、把持システム50は、伸縮型アクチュエータ54及び流体圧アクチュエータ1が駆動することにより、対象物を把持して、持ち上げることができる。
【0065】
(流体圧アクチュエータの別の実施形態)
以下、流体圧アクチュエータ1の第2の実施形態について、
図8を参照して説明する。
図8は、第2の実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の斜視図である。
【0066】
図8に示されるように、第2の実施形態に係る流体圧アクチュエータ1では、複数のアクチュエータ部10を備え、アタッチメント部20が、複数のアクチュエータ部10のそれぞれのチューブ11の軸方向の先端側に亘って連なっている点で、
図1に示される第1の実施形態に係る流体圧アクチュエータ1とは異なっている。以下に、
図1に示される第1の実施形態と異なる点を中心に第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0067】
図8において、流体圧アクチュエータ1は、6つのアクチュエータ部10と、6つのアクチュエータ部10を基端側で支持する1つの支持部40と、を備えている。6つのアクチュエータ部10は、図中の上下にそれぞれ3つずつ並べて、支持部40に取り付けられている。3つの並んだアクチュエータ部10には、1つのアタッチメント部20が、それぞれのチューブ11の軸方向の先端側に亘って連なっている。それぞれのアクチュエータ部10には、チューブ11の軸方向に亘って拘束部材17(
図2~
図4参照)が設けられている。そして、流体圧アクチュエータ1は、アタッチメント部20に振動を生じさせるバイブレータ30を備えている。
図8では、バイブレータ30がアタッチメント部20に保持されている例が示されているが、本実施形態でも、バイブレータ30は、アクチュエータ部10に保持されてもよく、支持部40に保持されてもよい。このように、1つのアタッチメント部20が複数のアクチュエータ部10の先端側に亘って設けられていることにより、流体圧アクチュエータ1の用途に応じて、流体圧アクチュエータ1の駆動により、アタッチメント部20に加えられる力の大きさ及び方向を柔軟にデザインすることができる。
【0068】
以上述べたように、本開示の一実施形態に係る流体圧アクチュエータ1は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブ11と、チューブ11の外周面を覆うスリーブ12と、を備えるアクチュエータ部10と、チューブ11の軸方向の先端側で、アクチュエータ部10に連なるアタッチメント部20と、アタッチメント部20に振動を生じさせるバイブレータ30と、を備える。
【0069】
かかる構成を有する流体圧アクチュエータ1によれば、流体圧アクチュエータ1が駆動してアタッチメント部20が対象物に接触した際に、バイブレータ30による振動を、アタッチメント部20を介して、対象物に与えることができる。これにより、例えば、流体圧アクチュエータ1が駆動してアタッチメント部20を作業台等の上に置かれた対象物と作業台との隙間に入り込ませる際に、バイブレータ30によりアタッチメント部20を振動させることで、アタッチメント部20が隙間に入り込みやすくなる。したがって、本開示の流体圧アクチュエータ1によれば、流体圧アクチュエータ1の有用性が向上する。
【0070】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示は流体圧アクチュエータに関する。
【符号の説明】
【0072】
1:流体圧アクチュエータ、 10:アクチュエータ部、 11:チューブ、 12:スリーブ、 13:封止部(13A:第1封止部、 13B:第2封止部)、 14:封止部材、 14A:頭部、 14B:胴部、 14C:連結部、 14D:接続口、 14E:通過孔、 15:係止リング、 15A:切欠き部、 16:かしめ部材、 17:拘束部材、 20:アタッチメント部、 30(30A、30B、30C):バイブレータ、 40:支持部、 50:把持システム、 51:台座部、 52:支柱部、 53:アクチュエータ接続部、 O:対象物、 T:作業台、 D1:撓み方向、 A-A’:切断面