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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090574
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータおよびロボット
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20230622BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F15B15/10 H
B25J19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205602
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】安井 仁
【テーマコード(参考)】
3C707
3H081
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES05
3C707EU11
3C707EV12
3C707EV14
3C707HS21
3H081AA18
3H081BB02
3H081BB03
3H081CC29
3H081DD07
3H081HH10
(57)【要約】
【課題】ねじれが生じ難い流体圧アクチュエータおよびロボットを提供することである。
【解決手段】流体圧アクチュエータ1Aは、流体の圧力の変化に応じて伸縮するチューブ2と、チューブ2を覆うスリーブ3と、チューブ2の圧縮に対して抵抗し、曲げ変形可能な拘束部材4と、チューブ2の一方側端部にスリーブ3の一方側端部とともに固定される第1固定部5Aと、チューブ2の他方側端部にスリーブ3の他方側端部とともに固定される第2固定部5Bと、第1固定部54Aと第2固定部5Bとのチューブ2の軸線周りの周方向での相対回転に抗する張力または圧縮力を生じさせる補正部材6と、を備えている。ロボットは、流体圧アクチュエータ1Aを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力の変化に応じて伸縮するチューブと、
前記チューブを覆うスリーブと、
前記スリーブよりも径方向内側において、前記チューブの軸線方向に沿って延在しているとともに前記軸線方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸線方向に直交する直交方向に曲げ変形可能な拘束部材と、
前記チューブの一方側端部に前記スリーブの一方側端部とともに固定される第1固定部と、
前記チューブの他方側端部に前記スリーブの他方側端部とともに固定される第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部との前記チューブの軸線周りの周方向での相対回転に抗する張力または圧縮力を生じさせる補正部材と、
を備えている、流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記補正部材は、前記周方向の位置において、前記拘束部材と重なり合っている、請求項1に記載された流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記補正部材は、前記周方向に対して前記軸線方向の一方側に傾斜する第1補正部材と、前記周方向に対して前記軸線方向の他方側に傾斜する第2補正部材と、を含んでいる、請求項1または2に記載された流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1補正部材と前記第2補正部材とは、前記流体圧アクチュエータを前記チューブの径方向外側から内側に向かって見た平面視において、前記チューブの軸線に対して線対称になるように交差している、請求項3に記載された流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記補正部材は、前記第1固定部と前記第2固定部とに固定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載された流体圧アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1固定部と前記第2固定部とを覆う被覆部材をさらに備えており、
前記補正部材は、前記被覆部材によって、前記第1固定部と前記第2固定部とに固定されている、請求項5に記載された流体圧アクチュエータ。
【請求項7】
前記補正部材は、前記第1固定部と前記第2固定部とによって、前記スリーブに固定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載された流体圧アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載された流体圧アクチュエータを備えている、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の圧力によって伸縮可能なチューブをスリーブで覆った流体圧アクチュエータ(「マッキベン型の流体圧アクチュエータ」とも呼ばれる。)において、前記スリーブの径方向内側に、チューブの軸線方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸直方向に曲げ変形可能な拘束部材を設けることによって、チューブ及びスリーブを曲げ変形させることは既知である(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、流体圧アクチュエータは、物品を持ち上げるためのリフト部(ロボットアーム)としてだけでなく、人の指の挙動を実現させるための把持部(指ロボットハンド)としても用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-88999号公報
【0004】
しかしながら、上記流体圧アクチュエータは、曲げ変形を生じるとともに、チューブの軸線の周りに、予期せぬねじれを生じることがある。このため、従来の流体圧アクチュエータには、前記ねじれによって生じた曲げ方向のずれを調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ねじれが生じ難い流体圧アクチュエータおよびロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、流体圧アクチュエータは、流体の圧力の変化に応じて伸縮するチューブと、前記チューブを覆うスリーブと、前記スリーブよりも径方向内側において、前記チューブの軸線方向に沿って延在しているとともに前記軸線方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸線方向に直交する直交方向に曲げ変形可能な拘束部材と、前記チューブの一方側端部に前記スリーブの一方側端部とともに固定される第1固定部と、前記チューブの他方側端部に前記スリーブの他方側端部とともに固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部との前記チューブの軸線周りの周方向での相対回転に抗する張力または圧縮力を生じさせる補正部材と、を備えている。本発明に係る、流体圧アクチュエータによれば、ねじれが生じ難くなる。
【0007】
本発明に係る、流体圧アクチュエータにおいて、前記補正部材は、前記周方向の位置において、前記拘束部材と重なり合っていることが好ましい。この場合、ねじれがさらに生じ難くなる。
【0008】
本発明に係る、流体圧アクチュエータにおいて、前記補正部材は、前記周方向に対して前記軸線方向の一方側に傾斜する第1補正部材と、前記周方向に対して前記軸線方向の他方側に傾斜する第2補正部材と、を含んでいることが好ましい。この場合、ねじれがさらに生じ難くなる。
【0009】
本発明に係る、流体圧アクチュエータにおいて、前記第1補正部材と前記第2補正部材とは、前記流体圧アクチュエータを前記チューブの径方向外側から内側に向かって見た平面視において、前記チューブの軸線に対して線対称になるように交差していることが好ましい。この場合、ねじれを抑制するための制御が容易になる。
【0010】
本発明に係る、流体圧アクチュエータにおいて、前記補正部材は、前記第1固定部と前記第2固定部とに固定されているものとすることができる。この場合、第1固定部よりも内側のスペースと、第2固定部よりも内側のスペースとのそれぞれを有効に利用することができる。
【0011】
本発明に係る、流体圧アクチュエータは、前記第1固定部と前記第2固定部とを覆う被覆部材をさらに備えており、前記補正部材は、前記被覆部材によって、前記第1固定部と前記第2固定部とに固定されているものとすることができる。この場合、前記補正部材を第1固定部と第2固定部とのそれぞれに容易に固定することができる。
【0012】
本発明に係る、流体圧アクチュエータにおいて、前記補正部材は、前記第1固定部と前記第2固定部とによって、前記スリーブに固定されているものとすることができる。この場合、前記補正部材を容易に固定することができる。
【0013】
本発明に係る、ロボットは、上記のいずれかに記載された流体圧アクチュエータを備えている。本発明に係る、ロボットによれば、ねじれが生じ難くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ねじれが生じ難い流体圧アクチュエータおよびロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る、流体圧アクチュエータを概略的に示す側面図である。
図2図1の流体圧アクチュエータの各構成要素を分解した状態で概略的に示す分解斜視図である。
図3図1の流体圧アクチュエータの先端部側の領域を、当該領域の一部を、軸線О1を含む断面で概略的に示す断面図である。
図4図1の流体圧アクチュエータを、軸線О1を含む断面で概略的に示す断面図である。
図5図1の流体圧アクチュエータを、軸線О1に対して直交する断面で概略的に示す断面図である。
図6図1の流体圧アクチュエータの、固定部と被覆部材との関係を補正部材とともに軸線О1に対して直交する断面で概略的に示す要部断面図である。
図7図1の流体圧アクチュエータの一部を切り取って展開した状態で示す斜視断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る、流体圧アクチュエータを概略的に示す側面図である。
図9図8の流体圧アクチュエータを、軸線О1に対して直交する断面で概略的に示す断面図である。
図10】本発明に係る流体圧アクチュエータを用いたシステムの一例を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の、一実施形態に係る、流体圧アクチュエータおよびロボットについて説明をする。
【0017】
以下の説明において、軸線方向とは、任意の軸線(例えば、中心軸線)に沿った方向をいう。また、以下の説明において、軸線方向に対して直交する方向を軸直方向ともいう。特に、前記軸直方向は、前記軸線がチューブ、スリーブまたは開口部の中心軸線であるときは、径方向ともいう。さらに、径方向のうち、中心軸線に近い側を「径方向内側」ともいい、また、中心軸線から遠い側を「径方向外側」ともいう。また、以下の説明において、前記軸線の中心として周回する方向を周方向ともいう。
【0018】
さらに、以下の説明において、符号О1は、流体圧アクチュエータの中心軸線である。また、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータにおいて、エンドエフェクタが設けられている側を「先端側」といい、当該先端側と反対側を「基端側」という。さらに、本実施形態において、チューブおよびスリーブの中心軸線はそれぞれ、流体圧アクチュエータの中心軸線と同一の軸線であるものとする。
【0019】
図1中、符号1Aは、本発明の、一実施形態に係る、流体圧アクチュエータである。流体圧アクチュエータ1Aは、流体の圧力の変化によって伸縮可能なチューブ2と、チューブ2を覆うスリーブ3と、スリーブ3よりも径方向内側において、チューブ2の軸線方向に沿って延在しているとともに前記軸線方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸線方向に直交する直交方向に曲げ変形可能な拘束部材4と、チューブ2の一方側端部にスリーブ3の一方側端部とともに固定される第1固定部5Aと、チューブ2の他方側端部にスリーブ3の他方側端部とともに固定される第2固定部5Bと、第1固定部5Aと第2固定部5Bとのチューブ2の軸線周りの周方向での相対回転に抗する張力または圧縮力を生じさせる補正部材6と、を備えている。
【0020】
本実施形態において、流体圧アクチュエータ1Aは、封止部Cをさらに備えている。封止部Cは、第1封止部C1と、第2封止部C2との、2つの封止部を含んでいる。さらに、本実施形態において、流体圧アクチュエータ1Aは、スリーブ3を覆う被覆部材7をさらに備えている。
【0021】
図2には、流体圧アクチュエータ1Aの各構成要素が分解された状態で概略的に示されている。
【0022】
本実施形態において、チューブ2は、流体の圧力の変化に応じて膨張及び収縮する円筒状の部材である。流体の圧力は、チューブ2の内部空間S2(図4参照。)に供給されることによって上昇し、チューブ2の内部空間S2から排出されることによって減少する。これによって、チューブ2は流体の圧力の変化に応じて軸線О1に沿って伸縮させることができる。チューブ2は、流体の圧力の変化によって収縮及び膨張を繰り返すため、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成されている。ただし、チューブ2を構成する弾性部材は、流体圧アクチュエータ1Aを油圧によって駆動させる場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、または水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とすることができる。
【0023】
また、本実施形態において、スリーブ3は、円筒状の部材である。スリーブ3は、チューブ2の外周面を覆っている。図2を参照すれば、スリーブ3は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体、即ち、繊維スリーブである。具体的には、スリーブ3は、後述するように、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返された構造を有している。スリーブ3は、前記構造を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ2の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0024】
スリーブ3を構成する繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)又はポリエチレンテレフタラート(PET)等の繊維コードを用いることが好ましい。ただし、スリーブ3を構成する繊維コードは、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維コードであってもよい。
【0025】
また、封止部Cは、チューブ2の端部に形成された開口部A2を封止する。開口部A2は、内部空間S2を外界に通じさせる。本実施形態において、第1封止部C1は、チューブ2の先端を封止し、そして、第2封止部C2は、チューブ2の基端を封止している。図2を参照すれば、封止部C(図示例は、第1封止部C1)は、封止部材51、係止リング52及びかしめ部材53を含んでいる。図1に示すように、本実施形態において、かしめ部材53は、先端側をかしめる第1かしめ部材53と、基端側をかしめる第2かしめ部材53と、の2つのかしめ部材を含んでいる。
【0026】
本実施形態において、第1かしめ部材53は、第1固定部5Aに相当し、第2かしめ部材53Bは、第2固定部5Bに相当する。
【0027】
図2を参照すれば、本実施形態において、封止部材51は、チューブ2の開口部A2を封止する。本実施形態において、封止部材51は、チューブ2の開口部A2に挿入される胴部51aと、スリーブ3の折返し部とかしめ部材53の端面を閉じるフランジ51bと、を備えている。本実施形態において、胴部51aの外周面は、基端側に配置される基端部51a1と、基端部51a1よりも先端側に配置される先端部51a2とによって構成されている。本実施形態において、基端部51a1には、凹凸部51dが形成されている。図3に示すように、凹凸部51dは、胴部51aがチューブ2の開口部A2に挿入されたとき、当該チューブ2の内周面に接触することによって、チューブ2の滑りを抑制する機能を発揮する。また、先端部51a2は、フランジ51bに隣接する位置に配置されており、係止リング52を収容させることができる。封止部材51は、ステンレス鋼などの金属によって形成することができる。ただし、封止部材51は、金属によって形成されたものに限定されない。例えば。封止部材51は、硬質プラスチック材料などによって形成することができる。
【0028】
さらに、図2を参照すれば、本実施形態において、第1封止部C1の封止部材51は、他の部材を取り付けるための連結部51cを備えている。本実施形態において、連結部51cは、フランジ51bから軸線方向に沿って先端側(胴部51aと反対側)に突出している。連結部51cは、例えば、エンドエフェクタを連結させるために用いられる。本実施形態では、第1封止部C1に係る、封止部材51の連結部51cは、先端が半球状の円柱体である。ただし、連結部51cの形状は様々な形状とすることができる。
【0029】
他方、本実施形態に係る、第2封止部C2もまた、封止部材51、係止リング52及びかしめ部材53を含んでいる。ただし、図1に示すように、本実施形態に係る、第2封止部C2の封止部材51には、チューブ2の内部空間S2と外界を通じさせる内部流路r1が形成されている。これによって、チューブ2の内部空間S2に流体を供給させることができる。
【0030】
図1に示すように、本実施形態において、第1封止部C1と第2封止部C2との具体的な相違点は、封止部材51に設けられた連結部51cの構成と、当該封止部材51に、配管接続部51e及び内部流路r1が設けられているか否かである。
【0031】
図1に示すように、第2封止部C2には、第1封止部C1と同様、連結部51cが設けられている。ただし、本実施形態において、第2封止部C2の連結部51cは、プレート状に構成されている。また、連結部51cには、他の部材(図示省略)を取り付けることができるように、連結部51cに形成された2つのプレート面を貫通する、締結用のピン孔A51が形成されている。
【0032】
配管接続部51eには、外部からの配管(図示省略。)が接続される。内部流路r1は、配管接続部51eからチューブ2の内部空間S2に通じている。本実施形態において、内部流路r1は、配管接続部51eとチューブ2の内部空間S2とを連通させている。本実施形態において、配管接続部51eには、気体又は液体等を供給する配管(図示省略。)が取り付けられる。前記配管は、流体圧アクチュエータ1の駆動圧力源(具体例としては、コンプレッサ)に接続されている。これによって、前記駆動圧力源からの流体は、配管接続部51eから、封止部材51の内部に区画された内部流路r1に流入する。内部流路r1を通過した流体は、チューブ2の内部空間S2に流入する。これによって、チューブ2は、流体の圧力によって拡張させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、第2封止部C2の封止部材51はさらに、フランジ51bに連なるヘッド51hを備えている。本実施形態において、配管接続部51eの接続口は、ヘッド51hの径方向外側に向けて開口するように設けられている。本実施形態において、内部流路r1は、ヘッド51hと胴部51aとに亘って形成されている。
【0034】
図3は、図2の領域Aを一部断面で示している。係止リング52は、封止部材51にスリーブ3を係止する。図3を参照すれば、スリーブ3は、係止リング52を介して径方向外側に折り返されている。本実施形態において、係止リング52は、スリーブ3を介して胴部51aの先端部51a2の位置に配置されている。本実施形態において、係止リング52は、先端部51a2に引っ掛かけて係止される。このため、本実施形態において、係止リング52は、図2に示すように、二分割の形状としている。ただし、係止リング52は、3つ以上に分割させることができる。また、一部の分割部分が回動可能に連結されていてもよい。さらに、係止リング52には、封止部材51と係合できるように一部が切り欠かれたC字状のリング部材とすることができる。係止リング52は、封止部材51と同様の金属、硬質プラスチック材料などの材料、或いは、自然繊維(自然繊維の糸)、ゴム(例えばOリング)などの材料によって形成することができる。
【0035】
図2に示すように、かしめ部材53は、筒状の部材である。かしめ部材53は、図3に示すように、チューブ2、スリーブ3および拘束部材4を封止部材51とともに径方向内側に向かってかしめている。かしめ部材53は、封止部材51の胴部51aの外径よりも大きい。かしめ部材53は、チューブ2、スリーブ3および拘束部材4の、封止部材51の胴部51aが挿入された部分の径方向外側を覆うように配置されている。かしめ部材53は、治具によってかしめられることで、チューブ2、スリーブ3および拘束部材4を封止部材51の胴部51aに締め付ける。これによって、チューブ2、スリーブ3および拘束部材4の端部は、かしめ部材53とともに封止部材51の胴部51aに密着させた状態に固定される。
【0036】
かしめ部材53は、アルミニウム合金、真鍮又は鉄などの金属によって形成することができる。図1に示すように、かしめ部材53の外周面には、治具によってかしめられた痕である圧痕53Aが形成されていてもよい。
【0037】
図4には、流体圧アクチュエータ1Aが、軸線О1を含む断面で概略的に示されている。図4を参照すれば、流体圧アクチュエータ1Aは、スリーブ3の径方向内側において、チューブ2の軸線方向に沿って延在する拘束部材4をさらに備えている。拘束部材4は、チューブ2の軸線方向に沿った圧縮に対して抵抗し、前記軸線方向に直交する直交方向に曲げ変形可能である。
【0038】
本実施形態において、拘束部材4は、スリーブ3の径方向内側において、軸方向の基端側から先端側に亘って設けられている。
【0039】
拘束部材4は、軸線方向には圧縮せず、径方向(撓み方向ともいう)に沿ってのみ変形可能である。つまり、拘束部材4は、軸線方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向に直交する直交方向(径方向)に曲げ変形可能である。
【0040】
拘束部材4は、チューブ2の周方向の、当該拘束部材4が配置された位置において、チューブ2(及びスリーブ3)が径方向外側に膨張しようとするときの、当該膨張を拘束(規制)する機能も有している。
【0041】
拘束部材4は、例えば、図2に示すように、板バネ(leaf spring)を用いて形成されている。板バネの寸法は、流体圧アクチュエータ1のサイズ、及び必要とされる発生力などに応じて選択されればよく、特に限定されない。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼などの金属など、曲げ易く、圧縮に強い材料であればよい。例えば、拘束部材4は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。CFRPは、金属に比べて塑性変形をし難いため、流体圧アクチュエータ1が湾曲後、元の真っ直ぐな状態に戻りやすい。
【0042】
ただし、 拘束部材4は、板バネのような板部材に代えて、複数の線材(例えば、ピアノ線、樹脂線)を束ねた板状部材とすることができる。こうした拘束部材4の具体例としては、複数のピアノ線が当該ピアノ線の径方向に沿って複数並べられることによって形成されたものがある。ピアノ線の材料としては、炭素鋼など、一般的な材料で構わないが、CFRPなど、金属以外の材料がもちいられても構わない。
【0043】
図5に示すように、本実施形態に係る、拘束部材4は、チューブ2とスリーブ3との間に設けられる。本実施形態において、拘束部材4は、チューブ2とスリーブ3との両方に密着させている。ただし、拘束部材4は、当該拘束部材4とチューブ2またはスリーブ3との間に多少の隙間が形成されていてもよい。また、拘束部材4は、当該拘束部材4の側方(周方向側)に、多少隙間が形成されていてもよい。さらに、拘束部材4は、チューブ2内に埋設されていてもよく、或いは、チューブ2の径方向内側(例えば、チューブ2の内周面)に設けられていてもよい。
【0044】
拘束部材4は、図5に示すように、チューブ2(及びスリーブ3)の周方向における一部に設けられる。すなわち、チューブ2は、当該チューブ2の周方向において拘束部材4に覆われている部分と覆われていない部分を有している。拘束部材4の幅は、特に限定されないが、チューブ2の外径を基準とすれば、概ね当該外径の半分程度とすることができる。なお、本実施形態では、拘束部材4は、平板状であるが、撓み方に影響がない範囲において、チューブ2及びスリーブ3の断面形状に沿って多少湾曲していてもよい。
【0045】
図4に示すように、拘束部材4は、チューブ2及びスリーブ3の軸方向における基端側から先端側に亘って設けられている。具体的には、拘束部材4は、第1封止部C1から第2封止部C2に亘って設けられていてもよい。本実施形態では、拘束部材4は、チューブ2と略等しい長さとされている。ただし、拘束部材4は、必ずしも完全に第1封止部C1から第2封止部C2に亘って設けられていなくてもよい。例えば、第1封止部C1及び第2封止部C2のいずれか一方(特に、湾曲時に自由端となる可能性が高い第1封止部C1側)には、拘束部材4が延在していなくてもよい。具体的には、拘束部材4は、第1固定部5Aおよび第2固定部5Bの少なくともいずれか一方に固定されていればよい。
【0046】
補正部材6は、第1固定部5Aと第2固定部5Bとのチューブ2の軸線周りの周方向での相対回転に抗する張力または圧縮力を生じさせる。具体例としては、第1固定部5Aが第2固定部5Bに対して軸線О1の周りの周方向に相対回転しようとするとき、補正部材6は、前記相対回転に抗する張力を生じさせる。或いは、補正部材6は、第1固定部5Aが第2固定部5Bに対して軸線О1の周りの周方向に相対回転しようとするとき、前記相対回転に抗する圧縮力を生じさせる。即ち、補正部材6は、流体圧アクチュエータ1Aの軸線周りの周方向に生じ得るねじれを抑制する。これによって、流体圧アクチュエータ1Aは、その軸線周りの周方向にねじれることがない。ただし、補正部材6は、例えば、第1固定部5Aが第2固定部5Bに対して軸線О1の周りの周方向に相対回転するとき、相対回転に抗する張力を生じさせる張力部材とすることができる。或いは、補正部材6としては、例えば、第1固定部5Aが第2固定部5Bに対して軸線О1の周りの周方向に相対回転するとき、相対回転に抗する圧縮力を生じさせる圧縮力部材とすることができる。
【0047】
補正部材6としては、流体圧アクチュエータ1A全体の、当該流体圧アクチュエータ1Aの軸線О1の周りの周方向において、ねじれを生じさせないような、高い張力または圧縮力を生じさせるものが挙げられる。こうした補正部材6としては、例えば、外力を付加されたときにも延びにくい、高張力部材が挙げられる。具体的には、金属板もしくは樹脂板などの板バネのような薄板部材、または、金属ワイヤ等の金属線、樹脂線などの線状部材が挙げられる。金属線としては、例えば、スチールコード、ピアノ線が挙げられる。樹脂線としては、例えば、アラミド樹脂(例えば、ケブラー(登録商標))などの有機繊維が挙げられる。線状部材は、単線からなるモノフィラメントであってもよく、例えば撚り線などの複数の単線からなるマルチフィラメントであってもよい。また、補正部材6は、扁平な帯状の板状部材とすることができる。板状部材には、帯状に形成されたソリッドタイプの他に、複数の線状部材を並べて帯状に形成されたものが含まれる。なお、本実施形態において、補正部材6は、張力部材である。
【0048】
本実施形態において、補正部材6は、図1に示すように、平面視において、軸線О1に対して交差するように当該軸線О1の軸線方向に沿って延在している。また、本実施形態では、補正部材6は、後述するように、前記周方向の位置において、拘束部材4と重なり合っている。
【0049】
本実施形態において、補正部材6は、第1固定部5Aと第2固定部5Bとに固定されている。本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aは、第1固定部5Aと第2固定部5Bとを覆う被覆部材7をさらに備えている。補正部材6は、被覆部材7によって、第1固定部5Aと第2固定部5Bとに固定されている。
【0050】
図6は、流体圧アクチュエータ1Aの、第1固定部5A(第2固定部5B)と被覆部材7との関係を補正部材6とともに軸線О1に対して直交する断面で概略的に示す。被覆部材7は、例えば、温度変化によって収縮する、熱収縮性を有した部材(以下、「熱収縮性部材」ともいう。)を用いることができる。この場合、被覆部材7は、当該被覆部材7が収縮することによって固定部5の外表面に密着する。これによって、補正部材6は、被覆部材7とともに第1固定部5Aおよび第2固定部5Bに固定することができる。
【0051】
本実施形態において、被覆部材7は、図1に示すように、流体圧アクチュエータ1Aを保護する。具体的には、被覆部材7は、流体圧アクチュエータ1A、特に、スリーブ3が他の物体と接触することによって生じ得る摩耗から当該スリーブ3を保護する。したがって、本実施形態において、被覆部材7は、スリーブ3の外周面を被覆する。また、本実施形態では、被覆部材7は、封止部C、具体的には、第1固定部5Aおよび第2固定部5Bの外周面も被覆する。本実施形態において、被覆部材7は、図2に示すように、円筒状の部材である。
【0052】
被覆部材7は、擦れなどの摩耗に対する耐摩耗性能だけでなく、水分などに付着に対する防水性能も発揮できるものであることが好ましい。即ち、被覆部材7は、防水性を有する素材、具体的には、水を通さない素材あることが好ましい。さらに、被覆部材7は、疎水性または撥水性を備えることによって、防水効果を一段と高めることができる。
【0053】
より具体的には、被覆部材7は、スリーブ3を保護するため、耐擦傷性、防水性、耐候性及び耐熱性を有する材料によって形成されることが好ましい。さらに、流体圧アクチュエータ1Aの形状変化を妨げないように、被覆部材7は、十分に弾性率が低いことが好ましい。具体的には、被覆部材7の弾性は、スリーブ3の弾性よりも低いことが好ましい。被覆部材7の材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどが挙げられる。
【0054】
図7には、流体圧アクチュエータ1Aの一部を切り取って展開した状態が示されている。図7に示すように、チューブ2の外周面は、スリーブ3によって覆われている。チューブ2は、上述したように、ブチルゴムなど弾性材料によって構成された筒状体(管状体)である。スリーブ3は、互いに交差するように配向された複数のコード31を編み込むことによって形成されている。
【0055】
図7を参照すれば、本実施形態において、スリーブ3は、2本のコード31をペアとして、互いに交差するように、当該コード31のペアが配向されている。ただし、ペアとするコード31の本数は、2本以外(モノフィラメントまたはマルチフィラメント)でも構わない。また、2本以上の場合は、コード31を撚ったものでも構わない。また、コード31の直径は、流体圧アクチュエータ1の動作を妨げないものであれば、特に限定されない。
【0056】
また、コード31の表面は、被覆層(不図示)によって被覆されていてもよい。当該被覆層は、熱硬化性樹脂と、ラテックスとの混合物によって形成されることが好ましい。例えば、当該被覆層は、熱硬化性樹脂と、ラテックスとの混合物水溶液をコード31に塗布した後、乾燥させて熱硬化させることによって形成できる。
【0057】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、及びウレタン樹脂のいずれかを用いることが好ましい。或いは、これらの樹脂が複数配合されたものとすることができる。
【0058】
ラテックスとしては、VP(スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体)ラテックス、SBR(低スチレン・ブタジエン共重合体)ラテックス、及びNBR(ブタジエン・アクリロニトリル共重合体)ラテックスの何れか、または複数配合されたものを用いることが好ましい。
【0059】
図7において、被覆部材7は、仮想線で示されている。スリーブ3を構成するコード31と、被覆部材7の内周面とは、接触していてもよいが、流体圧アクチュエータ1Aの形状変化に伴って、互いに摺動させることができる。これにより、被覆部材7が流体圧アクチュエータ1Aの形状変化を妨げることはない。また、被覆部材7は、透明または不透明を問わないが、スリーブ3の状態を容易に視認できる観点からは、スリーブ3を構成するコード31の状態が視認できる程度の透明性を有していることが好ましい。
【0060】
ここで、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aの基本的な動作について説明する。流体圧アクチュエータ1Aは、チューブ2内への流体の流入によって、軸線О1を挟んで拘束部材4と対向する側に向かって曲げ変形を生じさせることができる。
【0061】
図4を参照すれば、チューブ2は、当該チューブ2内への流体の流入によって軸線方向において収縮し、径方向において膨張する。一方で、チューブ2は、当該チューブ2からの流体の流出によって軸線方向において膨張(復元)し、径方向において収縮する。
【0062】
これに対し、拘束部材4は、チューブ2内への流体の流入によって、当該チューブ2の軸線О1を挟んで拘束部材4と対向する側に向かって曲げ変形を生じさせる。
【0063】
図4を参照すれば、チューブ2の内部空間S2に流体が流入すると、当該チューブ2が軸線方向に収縮しようとする。しかしながら、流体圧アクチュエータ1Aにおいて、チューブ2の周方向の一部には、軸線方向に亘って拘束部材4が設けられている。このため、チューブ2の周方向の、拘束部材4が配置されている部分において、チューブ2の軸線方向に沿った収縮が拘束(規制)される。一方で、チューブ2の周方向の、拘束部材4が設けられていない部分は収縮しようとするため、拘束部材4が背骨のような役割を果たし、チューブ2の周方向の、拘束部材4が設けられている位置と反対側(図4の図面下側)において、方向D1に向かってチューブ2(具体的には、チューブ2及びスリーブ3)が撓む。方向D1は、撓み方向ともいう。これによって、流体圧アクチュエータ1Aは、二点鎖線で示すように、曲げ変形を生じる。一方で、チューブ2の内部空間S2から流体が流出すると、当該チューブ2は、流体が供給される前の、元の直線状の姿勢に戻ることができる(図4の実線で示す状態)。流体圧アクチュエータ1Aは、こうした拘束部材4の拘束を伴う、チューブ2の形状変化によって、曲げ変形を生じさせることができるとともに、当該曲げ変形からの復元によって初期状態(例えば、直線状の状態)に復帰させることができる。したがって、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aは、当該流体圧アクチュエータ1Aの曲げ変形および当該曲げ変形からの復元という、アクチュエータとしての機能を発揮することができる。
【0064】
加えて、本実施形態において、拘束部材4は、チューブ2の内側に設けられている。このため、流体圧アクチュエータ1Aのサイズが大型化することもない。さらに、流体圧アクチュエータ1Aによれば、拘束部材4によって、効率的に湾曲方向への力を発生させることができる。これによって、流体圧アクチュエータ1Aによれば、より大きな湾曲方向の力を発揮し得る。したがって、流体圧アクチュエータ1Aによれば、サイズの大型化を回避しつつ、当該流体圧アクチュエータ1Aを軸線О1に対して直交する方向に容易に撓ませることができる。
【0065】
ここで、チューブ2がスリーブ3によって覆われた流体圧アクチュエータは、マッキベン型とも呼ばれ、例えば、人工筋肉として適用させることが可能である。また、こうした流体圧アクチュエータは、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢、手又は指としても用いることができる。
【0066】
その一方、拘束部材4を備えた従来の流体圧アクチュエータは、当該流体圧アクチュエータに径方向外側に向かう曲げ変形を生じさせるとき、当該流体圧アクチュエータの周方向にねじれを生じさせることがある。このねじれは主として、スリーブ3が軸線О1の周りの周方向にねじれを生じることに起因すると考えられる。例えば、本実施形態のように、スリーブ3が繊維スリーブである場合、従来の流体圧アクチュエータは、径方向外側に向かって曲がっていくのに伴って周方向にねじれ易い。したがって、従来の流体圧アクチュエータは、当該流体圧アクチュエータを径方向外側に向かって曲げるときに、この曲げと併せて、軸線О1の周りの周方向におけるねじれを考慮する必要がある。しかしながら、こうしたねじれを、流体圧アクチュエータの曲げ動作に合わせて時系列に制御することが困難である。
【0067】
これに対し、図1を参照すれば、例えば、第1固定部5Aが第2固定部5Bに対して、軸線О1の周りの周方向に、図面手前側から図面上側を回って図面裏側に相対回転しようとするとき(以下、「右側相対回転」ともいう。)も、第1補正部材6Aおよび第2補正部材6Bの少なくともいずれか一方の張力が第1固定部5Aの右側相対回転を阻止するように働く。反対の場合も同様に、第1固定部5Aが第2固定部5Bに対して、軸線О1の周りの周方向に、図面手前側から図面下側を回って図面裏側に相対回転しようとするとき(以下、「左側相対回転」ともいう。)も、第1補正部材6Aおよび第2補正部材6Bの少なくともいずれか一方の張力が第1固定部5Aの右側相対回転を阻止するように働く。即ち、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aによれば、補正部材6を所望の位置に適宜配置することによって、流体圧アクチュエータ1Aの動作時に生じ得るねじれが抑制される。これによって、流体圧アクチュエータ1Aを径方向外側に曲げるときの、軸線О1の周りの周方向に沿ったねじれが生じ難くなる。したがって、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aによれば、軸線О1の周りの周方向で曲げの方向性を、流体圧アクチュエータ1Aの曲げ動作に合わせて時系列に制御する必要がなく、当該流体圧アクチュエータ1Aの曲げ変形に対する制御が容易になる。このため、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aは、微妙な動作が求められる、例えば、指の動きを模したロボットハンドのアクチュエータとして有効である。
【0068】
補正部材6は、流体圧アクチュエータ1Aを径方向外側に向けて曲げたときに生じ得るねじれを考慮して、第1固定部5Aと第2固定部5Bとのそれぞれの、軸線О1の周りの周方向の、任意の位置に固定することができる。図1を参照すれば、本実施形態において、補正部材6は、平面視において、軸線О1に対して交差するように当該軸線О1の軸線方向に沿って延在している。この場合、補正部材6は、ねじれに対する抗する張力または圧縮力をより大きく生じさせることができる。ただし、補正部材6は、平面視において、軸線О1に対して交差させることなく、軸線О1に沿って平行に延在させることができる。
【0069】
また、図2を参照すれば、本実施形態において、補正部材6は、流体圧アクチュエータ1Aの周方向の位置において、拘束部材4と重なり合っている。この場合、拘束部材4を基点とした軸線О1の周りの周方向に生じ得るねじれが、軸線О1に沿って平行に延在させる場合に比べて効果的に抑制される。これによって、流体圧アクチュエータ1Aを径方向外側に向かって曲げるときに生じ得るねじれがさらに生じ難くなる。したがって、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1によれば、当該流体圧アクチュエータ1の曲げ変形に対する制御がさらに容易になる。
【0070】
また、図1を参照すれば、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aにおいて、補正部材6は、軸線О1の周りの周方向に対して当該流体圧アクチュエータ1Aの軸線方向の一方側に傾斜する第1補正部材6Aと、流体圧アクチュエータ1の周方向に対して当該流体圧アクチュエータ1の軸線方向の他方側に傾斜する第2補正部材6Bと、を含んでいる。この場合、流体圧アクチュエータ1Aの動作時に生じ得るねじれが、補正部材6が1つだけの場合に比べてさらに生じ難くなる。第1補正部材6A及び第2補正部材6Bは、互いにクロスさせて配置されていなくてもよいが、クロスさせて配置することが好ましい。例えば、1つの補正部材6のみを、図1に示すように、平面視において、軸線О1に対して角度を付けて配置したときには、当該1つの補正部材6は、軸線О1の周りの周方向一方側のねじれに抗する張力を生じ、この周方向一方側のねじれのみに有効である。これに対し、本実施形態のように、第1補正部材6Aと第2補正部材6Bとをクロスさせて配置した場合(即ち、クロス配置した場合)、第1補正部材6Aと第2補正部材6Bとの2つの補正部材6は、軸線О1の周りの周方向両側のねじれ抗する張力を生じ、周方向両側のねじれに対して有効である。したがって、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aによれば、当該流体圧アクチュエータ1Aの曲げ変形に対する制御がさらに容易になる。特に、本実施形態において、第1補正部材6Aと第2補正部材6Bとの交点と拘束部材4とは、軸線О1の周りの周方向の位置において、重なり合っている。この場合、流体圧アクチュエータ1Aの動作時に生じ得るねじれが、最も生じ難くなる。
【0071】
また、図1に示すように、本実施形態において、第1補正部材6Aと第2補正部材6Bは、平面視において、軸線О1に対して線対称になるように交差している。具体的には、第1補正部材6Aと第2補正部材6Bとは、図1に示すように、平面視において、軸線О1に対してなす角度(この例では、鋭角側角度)が等しい角度となるように交差している。図1を参照すれば、本実施形態において、第1補正部材6Aと軸線О1とがなす角度α1と、第2補正部材6Bと軸線О1とがなす角度α2とは、図1に示すように、平面視において等しい。言い換えれば、流体圧アクチュエータ1Aを軸線О1の周りに展開して平面形状としたとき、角度α1と角度α2とが等しい。この場合、流体圧アクチュエータ1Aの動作時に生じ得るねじれが軸線О1の周りの周方向両側から均等に抑制される。これによって、ねじれを抑制するための制御が容易になる。したがって、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aによれば、当該流体圧アクチュエータ1Aの曲げ変形に対する制御がさらに一層容易になる。
【0072】
また、本実施形態において、補正部材6は、第1固定部5Aと第2固定部5Bとに固定されている。この場合、第1固定部5Aよりも内側の、流体圧アクチュエータ1A内のスペースと、第2固定部5Bよりも内側の、流体圧アクチュエータ1A内のスペースとのそれぞれを有効に利用することができる。
【0073】
また、本実施形態において、補正部材6は、被覆部材7によって、第1固定部5Aと第2固定部5Bとに固定されている。例えば、被覆部材7として、温度変化によって収縮可能な収縮性部材を用いることにより、補正部材6は、被覆部材7によって第1固定部5Aと第2固定部5Bとに押さえつけられる。これにより、補正部材6は、第1固定部5Aの外周面と第2固定部5Bの外周面とに密着させた状態で固定される。したがって、この場合、補正部材6を第1固定部5Aと第2固定部5Bとのそれぞれに容易に固定することができる。ただし、補正部材6は、被覆部材7とともにまたは当該被覆部材7に代えて、粘着テープを用いることによって、第1固定部5Aと第2固定部5Bとに固定することができる。この場合、補正部材6は、固定部5の外周面の他、当該固定部5の内周面に固定することができる。
【0074】
なお、流体圧アクチュエータ1Aの駆動に用いられる流体は、空気などの気体、または水、鉱物油などの液体のどちらでもよい。ただし、本実施形態のような、マッキベン型流体圧アクチュエータは、高い圧力にも耐え得る高い耐久性を有し得る。したがって、本実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Aを用いれば、当該流体圧アクチュエータ1Aに高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有し得る。
【0075】
また、補正部材6は、第1固定部5Aと第2固定部5Bとによって、スリーブ3に固定させることができる。
【0076】
図8は、本発明の第2実施形態に係る、流体圧アクチュエータ1Bを概略的に示す側面図である。図9は、図8のC-C断面図である。なお、上述したところと実質的に同一の部分は、同一の符号を用いる。
【0077】
図8を参照すれば、本実施形態において、第1補正部材6Aは、第1固定部5Aの内側に固定されており、第2補正部材6Bは、第2固定部5Bの内側に固定されている。図9を参照すれば、流体圧アクチュエータ1Bにおいて、補正部材6は、かしめ部材53を用いることによって、チューブ2、スリーブ3および拘束部材4ととともに封止部材51に対してかしめられている。即ち、本実施形態において、補正部材6は、かしめ部材53を用いることによって、スリーブ3に押さえつけられる。これにより、補正部材6は、スリーブ3の外周面に密着させた状態で固定される。この場合、既存のかしめ部材53を用いることによって、補正部材6を容易に固定することができる。
【0078】
また、上述の流体圧アクチュエータ1A(以下の説明では、流体圧アクチュエータ1Aには、流体圧アクチュエータ1Bも含まれる。)は、ロボットに用いることができる。流体圧アクチュエータ1Aは、例えば、ロボットアーム、又は、ロボットハンドの指、として利用することができる。特に、ロボットハンドの指として利用した場合、より緻密な動作を実現させることができる。
【0079】
図10には、本発明に係る流体圧アクチュエータ1Aを用いたシステムの一例が概略的に示されている。図10のシステムは、駆動させることにより物を保持する保持システム100である。保持システム100は、流体圧アクチュエータ1Aを備えたロボットによって構成されている。
【0080】
図10に示すように、保持システム100は、台座部101と、支柱部102と、第1アクチュエータ接続部103と、伸縮型アクチュエータ104と、第2アクチュエータ接続部105と、エンドエフェクタ5106と、を備えている。
【0081】
台座部101の上面には、支柱部102が立設されている。支柱部102の上端部は、下方に向けて折り返されており、支柱部102の先端部分には、第1アクチュエータ接続部103が連結されている。
【0082】
第1アクチュエータ接続部103には、伸縮型アクチュエータ104が吊り下げられている。伸縮型アクチュエータ104は、エンドエフェクタ106の上下方向の位置を調整する。伸縮型アクチュエータ104としては、例えば、上述した拘束部材4を備えていない、流体圧アクチュエータであってよい。これによって、伸縮型アクチュエータ104は、流体の圧力の変化に応じて、軸線方向(図中の白抜き矢印方向)に沿って伸縮させることができる。つまり、伸縮型アクチュエータ104は、単に軸方向の長さが変化するだけであり、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1Aのように湾曲(曲げ変形)することはできない。ただし、伸縮型アクチュエータ104には、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1Aを用いることができる。即ち、伸縮型アクチュエータ104は、拘束部材4を備え、湾曲することが可能であってもよい。また、伸縮型アクチュエータ104は、流体圧アクチュエータに限られず、別の構成のアクチュエータであってもよい。
【0083】
伸縮型アクチュエータ104の下端には、第2アクチュエータ接続部105が連結されている。第2アクチュエータ接続部105には、エンドエフェクタ106が吊り下げられている。
【0084】
図示例では、エンドエフェクタ106は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1Aと、流体圧アクチュエータ1Aの先端に取り付けられた保持部107と、を有している。本実施形態において、流体圧アクチュエータ1Aは、指関節を含む指本体を構成している。また、本実施形態において、保持部107は、物をつまむための指先に相当する。即ち、本実施形態において、流体圧アクチュエータ1Aおよび保持部107は、ロボットハンドの指を構成している。また、本実施形態において、エンドエフェクタ106は、4つの流体圧アクチュエータ1Aを基端側で支持する1つの支持部108と、を備えている。即ち、本実施形態において、エンドエフェクタ106は、人の指の挙動を実現させる、ロボットハンドに相当する。
【0085】
保持システム100によれば、伸縮型アクチュエータ104及びエンドエフェクタ106が駆動することにより、任意の物を保持して、持ち上げることができる。特に、本実施形態に係る、保持システム100は、エンドエフェクタ106の一部を構成する流体圧アクチュエータ1Aにおいて、チューブの軸線周りの周方向でのねじれが生じ難い。したがって。本実施形態に係る、保持システム100によれば、物を精度よくつまむことができ、或いは、当該物を精度よくつかむことができる。
【0086】
保持システム100を参照すれば、流体圧アクチュエータ1Aは、ロボットのエンドエフェクタ56の構成要素の一部として、当該エンドエフェクタ106に含まれている。ただし、流体圧アクチュエータ1Aは、上述のとおり、エンドエフェクタ106の構成要素の一部としてだけでなく、ロボット全体の構成要素としての、ロボットアーム(伸縮型アクチュエータ104)として用いることができる。
【0087】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、上記の各変形例は、本発明の構成要素に含まれる。また、上記の各実施形態は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変形及び修正を行うことができる。例えば、流体圧アクチュエータ1Aにおいて、補正部材6は、被覆部材7の厚みを変えることによって、当該被覆部材7そのもので形成することができる。ただし、流体圧アクチュエータ1Bにおいて、被覆部材7は、省略することができる。また、上記の各実施形態において、補正部材6は、スリーブ3よりも外側に配置されているが、チューブ2とスリーブ3の間に配置することもできる。例えば、補正部材6は、拘束部材4のチューブ2側に配置することができ、或いは、スリーブ3側に配置することもできる。さらに、上記の各実施形態において、補正部材6は、第1補正部材6Aと第2補正部材6Bとの2つの補正部材を含んでいるが、当該補正部材6は、少なくとも1つとすることができる。即ち、補正部材6は、流体圧アクチュエータの寸法、用途、使用環境などに応じて、少なくとも1つとすることができる。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1A,1B:流体圧アクチュエータ, 2:チューブ, 3:スリーブ, 4:拘束部材, 5A:第1固定部, 5B:第2固定部, 51:封止部材, 51a:胴部, 51b:フランジ, 51c:連結部, 52:係止リング, 53,かしめ部材, 6:補正部材, 6A:第1補正部材, 6B:第2補正部材, 7:被覆部材, C:封止部, C1:第1封止部, C2:第2封止部, r1:内部流路,100:保持システム(ロボット), 101:台座部, 102:支柱部, 103:第1アクチュエータ接続部, 104:伸縮型アクチュエータ, 105:第2アクチュエータ接続部, 106:エンドエフェクタ, О1:流体圧アクチュエータ部の中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10