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特開2023-90575流体圧アクチュエータ及びアクチュエータ制御システム
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  • 特開-流体圧アクチュエータ及びアクチュエータ制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090575
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ及びアクチュエータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20230622BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F15B15/10 H
B25J19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205603
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
【テーマコード(参考)】
3C707
3H081
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES10
3C707HS13
3H081AA18
3H081GG12
(57)【要約】
【課題】流体圧アクチュエータに過大な力が作用したり、対象物が破損することを抑制する。
【解決手段】本開示に係る流体圧アクチュエータ1は、膨張及び収縮する円筒状のチューブ11と、チューブ11の外周面を覆いチューブ11の軸方向の伸長を規制するとともに径方向の伸長を許容するスリーブ12と、チューブ11の軸方向の先端側に装着され対象物Oを保持する保持部18とを備え、保持部18は少なくとも対象物Oを保持する部位が弾性部材で形成されており、物体の接触を検出する接触検出部120を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって駆動する流体圧アクチュエータであって、
膨張及び収縮する円筒状のチューブと、
前記チューブの外周面を覆い前記チューブの軸方向の伸長を規制するとともに径方向の伸長を許容するスリーブと、
前記チューブの軸方向の先端側に装着され対象物を保持する保持部と
を備え、
前記保持部は少なくとも対象物を保持する部位が弾性部材で形成されており、物体の接触を検出する接触検出部を有する、流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記流体圧アクチュエータは、前記チューブの軸方向の収縮を規制する拘束部材を更に備え、
前記接触検出部からの検出信号は、前記拘束部材を通じて、又は前記拘束部材に沿って伝送される、請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記拘束部材は、中間層として前記接触検出部からの検出信号を伝送する導電層を有する積層板である、請求項2に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記弾性部材は、導電性部材であり、
前記接触検出部は、前記弾性部材の抵抗値の検出により物体の接触検出が可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記接触検出部は、圧電素子を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータと、前記流体圧アクチュエータの制御を行う制御部とを備えるアクチュエータ制御システムであって、
前記制御部は、前記接触検出部からの検出信号に基づく前記保持部への押圧力が第1閾値より大きい場合に異常接触があったと判断する、アクチュエータ制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、複数の前記流体圧アクチュエータの前記接触検出部から検出信号を取得し、少なくとも2つの前記流体圧アクチュエータからの検出信号に基づく前記保持部への押圧力が第2閾値以上前記第1閾値以下である場合に、対象物を正常に保持していると判断する、請求項6に記載のアクチュエータ制御システム。
【請求項8】
前記保持部は複数の接触検出部を備え、前記制御部は、前記複数の接触検出部のうちの1又は複数の接触検出部からの検出信号を選択して異常接触又は対象物の正常な保持を判断する、請求項6又は7に記載のアクチュエータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体圧アクチュエータ及びアクチュエータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体又は液体を用いてチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータが知られている。例えば、特許文献1には、空気圧によって膨張、収縮するゴム製のチューブと、チューブの外周面を覆うスリーブとを有する流体圧アクチュエータ(いわゆるマッキベン型の流体圧アクチュエータ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-088999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の従来の流体圧アクチュエータでは、保持する対象物以外の物体に接触して流体圧アクチュエータに過大な力がかかったり、保持する対象物に過大な力を加えてしまう場合があり、これらの点において改善の余地があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、流体圧アクチュエータに過大な力が作用したり、対象物が破損することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の流体圧アクチュエータは、流体の圧力によって駆動する流体圧アクチュエータであって、膨張及び収縮する円筒状のチューブと、前記チューブの外周面を覆い前記チューブの軸方向の伸長を規制するとともに径方向の伸長を許容するスリーブと、前記チューブの軸方向の先端側に装着され対象物を保持する保持部とを備え、前記保持部は少なくとも対象物を保持する部位が弾性部材で形成されており、物体の接触を検出する接触検出部を備えている。
本開示の流体圧アクチュエータによれば、対象物を弾性部材で保持するため、対象物の破損や傷の発生を抑制することができる。また、保持部が接触検出部を備えることによって、対象物に対して過大な押圧力をかけたり対象物以外の物体に接触したりする異常接触を容易に検知することができるので、流体圧アクチュエータの制御性を向上させることができる。そして、流体圧アクチュエータや対象物Oの破損等を抑制することができる。
【0007】
また、流体圧アクチュエータでは、前記流体圧アクチュエータは、前記チューブの軸方向の収縮を規制する拘束部材を更に備え、前記接触検出部からの検出信号は、前記拘束部材を通じて、又は前記拘束部材に沿って伝送されることが好ましい。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータ内で信号の伝送方向に延在し比較的剛性が高い拘束部材内又は拘束部材に沿って配線部材を配置することができるので、配線部材以外の部材を追加することなく配線経路を確保することができる。また、配線部材の断線等を発生しづらくすることができる。
【0008】
また、本開示の流体圧アクチュエータでは、前記拘束部材は、中間層として前記接触検出部からの検出信号を伝送する導電層を有する積層板であることが好ましい。このように、配線部材を拘束部材の中間層とすることで配線部材が拘束部材の外層によって保護されるので、配線部材の信頼性を高めることができる。
【0009】
本開示の流体圧アクチュエータでは、前記弾性部材は、導電性部材であり、前記接触検出部は、前記弾性部材の抵抗値の検出により物体の接触検出が可能であることが好ましい。このような構成の採用によって、保持部を導電性部材で形成することによって接触センサとして利用することができるので、新たなセンサを組み込むことなく保持部への接触検出を行うことができる。
【0010】
本開示の流体圧アクチュエータでは、前記接触検出部は、圧電素子を備えることが好ましい。このような構成の採用によって、所定位置における所定方向の圧力を簡素なセンサで検出することができるので、所定の押圧力以上の異常接触を確実に検出することができる。
【0011】
また、本開示のアクチュエータ制御システムは、上記いずれかに記載の流体圧アクチュエータと、前記流体圧アクチュエータの制御を行う制御部とを備えるアクチュエータ制御システムであって、前記制御部は、前記接触検出部からの検出信号に基づく前記保持部への押圧力が第1閾値より大きい場合に異常接触があったと判断することが好ましい。このような構成の採用によって、保持部が対象物に対して過大な押圧力をかけるか又は対象物以外の物体と接触する異常接触を認識し、流体圧アクチュエータの駆動を速やかに停止することができる。本実施形態では、保持部を弾性部材により形成することで対象物の破損や傷の発生を抑制できる一方、異常接触を察知しづらかったが、接触検出部の導入により速やかに異常接触を検出して流体圧アクチュエータの駆動を停止させることができる。
【0012】
また、本開示のアクチュエータ制御システムでは、前記制御部は、複数の前記流体圧アクチュエータの前記接触検出部から検出信号を取得し、少なくとも2つの前記流体圧アクチュエータからの検出信号に基づく前記保持部への押圧力が第2閾値以上前記第1閾値以下である場合に、対象物を正常に保持していると判断することが好ましい。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータが過大な押圧力をかけておらず、かつ複数の流体圧アクチュエータによって対象物が適正な押圧力で挟持されていることを認識して、対象物Oの正常な保持を判断することができる。
【0013】
また、本開示のアクチュエータ制御システムでは、前記保持部は複数の接触検出部を備え、前記制御部は、前記複数の接触検出部のうちの1又は複数の接触検出部からの検出信号を選択して異常接触又は対象物の正常な保持を判断することが好ましい。このような構成の採用によって、保持部18にかかる押圧力の周方向位置及び高さ位置をより正確に認識することができるので、異常接触及び正常な保持の判断をより正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、流体圧アクチュエータに過大な力が作用したり、対象物が破損することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る流体圧アクチュエータの正面図である。
図2図1に示される流体圧アクチュエータの一部分解斜視図である。
図3A図1に示される基端側封止部を含む流体圧アクチュエータの軸方向に沿った一部断面図である。
図3B図3AにおけるB部詳細図である。
図4A図1に示される先端側封止部を含む流体圧アクチュエータの軸方向に沿った一部断面図である。
図4B図4AにおけるC部詳細図である。
図5図1におけるA-A’断面による流体圧アクチュエータの径方向に沿った断面図である。
図6】流体圧アクチュエータに流体圧力を加えて曲げ変形させ、対象物を保持している状態を示す図である。
図7図1に示される流体圧アクチュエータを用いたシステムの一構成例を示す概略図である。
図8A】接触検出部からの検出信号を伝送するフレキシブルプリント基板が拘束部材に沿って設けられている状態を示す図である。
図8B】接触検出部からの検出信号を伝送する導電層が拘束部材の中間層として設けられている状態を示す図である。
図9】流体圧アクチュエータの制御系の構成を示すブロック図である。
図10】本開示の一実施形態に係る流体圧アクチュエータにおける、保持部材が有する接触検出部の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る流体圧アクチュエータ1の実施形態について、図面を参照して説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0017】
(流体圧アクチュエータ1の構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る流体圧アクチュエータ1を示している。図1及び図2に示されるように、流体圧アクチュエータ1は、チューブ11、スリーブ12、第1封止部13A、第2封止部13B、拘束部材17及び保持部18を備えている。
【0018】
本実施形態では、流体圧アクチュエータ1の中心軸線が軸線C上に配置されている。本実施形態では、この軸線Cに沿う保持部18側(図1における右側)を先端側、支持部40側(図1における左側)を基端側とする。また、軸線Cに直交する方向を径方向といい、軸線Cに直交する直線に沿って軸線Cから離れる方向を径方向外側、軸線Cに直交する直線に沿って軸線Cに近づく方向を径方向内側とする。また、図面において、「軸方向」はDAXと示され、「径方向」はDと示される。
【0019】
本実施形態において、保持部18は、流体圧アクチュエータ1の駆動によって保持すべき対象物Oに当接し、対象物Oに流体圧アクチュエータ1の駆動力を作用させる部位である。保持部18は、図1に示す正面視で円柱形状の本体部18sの先端側に略半球形状の先端部18tを有しており、破線で図示する連結部14Cが装着凹部18a(図4A参照)の内側に嵌合することによって封止部材14に装着されている。
【0020】
本実施形態において、保持部18は、導電性の弾性部材で形成されてもよい。導電性弾性部材は、例えば、カーボン等の導電性フィラーを配合(分散混合)した、ゴムや樹脂エラストマーなどの複合材料である。保持部18の材料は、例えば天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、又はシリコーンゴムなどに導電性フィラーを配合した材料とすることができる。ただし、後述する接触検出を保持部18の抵抗値の変化の検出以外の手法による場合は、必ずしも保持部18は導電性弾性部材である必要は無く、導電性を有していない他のゴムや樹脂エラストマーなどを採用し得る。
【0021】
特に、保持部18における、少なくとも保持する対象物Oに当接する部位は、弾性部材で形成されていることが好ましい。このような構成によって、保持部18が対象物Oを傷つけることなく保持することができる。
【0022】
なお、保持部18は、図1等に示す態様に限定されず、例えば保持する対象物Oに向かって方向づけられた爪部を備えることによって、爪部が他の部位よりも対象物Oに強く当接し、対象物Oとの静止摩擦力を高めてより確実に対象物Oを保持するように構成してもよい。また、対象物Oから遠ざかる方向に凹む保持凹所を設けることで、手のひらで対象物Oを包み込むように保持するように構成してもよい。
【0023】
保持部18の形成は、例えば圧縮成形、射出成形又は押出成形などによって一体成形することができる。また、二色成形やインサート成形などを用いることによって、保持部18を構成する材料を部位ごとに異ならせて最適化することができる。例えば、保持部18における対象物Oに当接する部位に上述のいずれかのゴム材料を用いるとともに、他の部位にプラスチック又は金属等の材料を用いて剛性を高めてもよい。
【0024】
流体圧アクチュエータ1のチューブ11には、第1封止部13Aに設けられた接続口14Dを介して流体を流入させることができる。流体圧アクチュエータ1は、チューブ11内への流体の流入によって、流体圧アクチュエータ1の軸方向において収縮し、径方向において膨張する。一方で、流体圧アクチュエータ1は、チューブ11からの流体の流出によって、流体圧アクチュエータ1の軸方向において膨張し、径方向において収縮する。このように、流体圧アクチュエータ1は、その形状変化によって、アクチュエータとしての機能を発揮することができる。
【0025】
このような流体圧アクチュエータ1は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉として適用可能であるとともに、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢、手又は指としても用いることができる。
【0026】
流体圧アクチュエータ1の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、又は水、鉱物油などの液体のどちらでもよいが、特に、流体圧アクチュエータ1は、高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有し得る。
【0027】
チューブ11は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ11は、流体による収縮及び膨張を繰り返すため、ブチルゴムなどの弾性材料によって構成されている。ただし、チューブ11を構成する弾性部材は、流体圧アクチュエータ1を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、又は水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種とされてもよい。
【0028】
スリーブ12は、円筒状であり、チューブ11の外周面を覆う。スリーブ12は、所定方向に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ12は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ11の軸方向の膨張を規制すると共に径方向の膨張を許容し、チューブ11の変形に追従する。
【0029】
スリーブ12を構成する繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)又はポリエチレンテレフタラート(PET)等の繊維コードを用いることが好ましい。ただし、スリーブ12を構成する繊維コードは、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維コードであってもよい。
【0030】
第1封止部13A及び第2封止部13Bは、それぞれ軸方向におけるチューブ11の端部(先端側及び基端側)を封止している。本実施形態では、第1封止部13Aが、軸方向におけるチューブ11の基端側(図1における左側)を封止し、第2封止部13Bが、軸方向におけるチューブ11の先端側(図1における右側)を封止している。本開示において、第1封止部13A及び第2封止部13Bは、特に区別されない場合には、単に「封止部13」と総称される。
【0031】
図2に示されるように、封止部13(図示例は第1封止部13A)は、封止部材14、係止リング15及びかしめ部材16を含む。
【0032】
封止部材14は、チューブ11の軸方向の端部を封止する。封止部材14は、図2に示すように、頭部14Aと、頭部14Aから軸方向に延びる胴部14Bとを有する。胴部14Bは、チューブ11の軸方向外側からチューブ11に挿入される。封止部材14は、頭部14A及び胴部14Bに加え、他の部材を連結させるための連結部14Cが設けられていてもよい。
【0033】
連結部14Cは、頭部14Aから軸方向において胴部14Bと反対側に突出している。連結部14Cには、他の部材を連結しやすくするために、径方向に延在する貫通孔が区画されていてもよい。図1を参照すると、本実施形態では、第1封止部13Aの連結部14Cに、流体圧アクチュエータ1を支持する支持部40が取り付けられている。また、第2封止部13Bの連結部14Cには、図1等に示すように、保持部18が装着されている。保持部18は、第2封止部13Bの連結部14Cが装着凹部18a(図4A参照)に嵌合することによって流体圧アクチュエータ1に着脱可能な状態で取り付けられている。
【0034】
封止部材14は、ステンレス鋼などの金属を用いて構成されるが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いて構成されてもよい。
【0035】
図2及び図3Aに示すように、係止リング15は、封止部材14にスリーブ12を係止する、リング状の部材である。具体的には、図3Aに示されるように、スリーブ12は、係止リング15を介して径方向外側に折り返されている。
【0036】
図2に示すように、係止リング15には、封止部材14と係合できるように一部が切り欠かれた切欠き部15Aが形成されている。係止リング15は、封止部材14と同様の金属、硬質プラスチック材料などの材料、或いは、自然繊維(自然繊維の糸)、ゴム(例えばOリング)などの材料を用いて構成されてもよい。
【0037】
かしめ部材16は、チューブ11及びスリーブ12を封止部材14とともにかしめる。かしめ部材16は、封止部材14の胴部14Bの外径よりも大きい、筒状の部材である。かしめ部材16は、チューブ11及びスリーブ12の、封止部材14が挿入された部分の径方向外側を覆うように設けられ、治具によってかしめられることで、チューブ11及びスリーブ12を締め付け、封止部材14に密着固定させる。
【0038】
かしめ部材16は、アルミニウム合金、真鍮又は鉄などの金属を用いて構成されてもよい。図1に示されるように、かしめ部材16の外周面には、治具によってかしめられた痕である圧痕16Aが形成されていてもよい。
【0039】
第1封止部13Aと第2封止部13Bとの相違点は、第1封止部13Aが封止部材14に接続口14D、通過孔14E及び配線誘導溝14Hが設けられている(図3A及び図3B参照)のに対して、第2封止部13Bは、配線誘導溝14J及び配線誘導孔14Fが設けられている(図4A及び図4B参照)点である。図3Aに示されるように、本実施形態では、第1封止部13Aの封止部材14に、接続口14D、通過孔14E及び配線誘導溝14Hが設けられている。また、図4Aに示すように、第2封止部13Bの封止部材14に、配線誘導溝14J及び配線誘導孔14Fが設けられている。
【0040】
接続口14Dは、流体圧アクチュエータ1の駆動圧力源、具体的には、気体又は液体等のコンプレッサと接続されたホース(管路)が取り付けられる。接続口14Dを介して流入した流体は、封止部材14の内部に区画された通過孔14Eを通過して、チューブ11の内部に流入する。本実施形態では、接続口14Dは、封止部材14の頭部14Aの径方向外側に向けて開口するように設けられている。通過孔14Eは、頭部14A及び胴部14Bに亘って形成されている。接続口14Dとチューブ11内とは、通過孔14Eにより連通している。
【0041】
第1封止部13Aの配線誘導溝14Hは、図3A及び図3Bに示すように、後述する拘束部材17が装着されている周方向位置において径方向内側に切り欠かれた溝部である。拘束部材17に沿って先端側から基端側までスリーブ12の内側を延在する配線部材17aは、先端部に設けられた接触検出部120(図4A参照)からの検出信号を伝送する。配線部材17aは、図3A及び図3Bに示すように拘束部材17を離れて配線誘導溝14H内に入り、接続口14Dに隣接する位置まで基端側に延びた後、約90度折り曲げられて径方向外側方向に方向づけられ、流体圧アクチュエータ1の外部まで延在する。これによって、図9(流体圧アクチュエータ1の制御系200)に示すように、接触検出部120からの接触検出信号が配線部材17aを介して流体圧アクチュエータ1外部の制御部110まで伝送される。
【0042】
一方、第2封止部13Bの配線誘導溝14Jは、図4A及び図4Bに示すように、拘束部材17が装着されている周方向位置において径方向内側に切り欠かれた溝部である。配線部材17aは、図4A及び図4Bに示すように拘束部材17を離れて配線誘導溝14J内に入り、更に径方向略中心位置を軸線C方向に延びる配線誘導孔14Fを通って保持部18内まで延材している。配線部材17aは、図8Aに示すように2本の導体パターン17a1及び17a2を有しており、保持部18内で分岐して保持部18内の異なる部位と電気接続され、保持部18の抵抗値の検出を行う。
【0043】
配線部材17aからの2本の導体パターン17a1及び17a2の先端部は、それぞれ保持部18の側方凹部18b、及び配線通し溝18C経由で装着凹部18aの先端部に導電性接着剤などによって電気接続され固定されている。この場合、2本の導体パターン17a1及び17a2の先端部は、それぞれ図8Aに示すベース層17a3及びカバー層17a4の半分を伴っている。この構成によって、配線部材17aの先端側と保持部18とを確実に電気接続することができる。
【0044】
図2から図6に示すように、スリーブ12の径方向内側には、拘束部材17が設けられている。拘束部材17は、スリーブ12の径方向内側において、軸方向の基端側から先端側に亘って設けられている。
【0045】
拘束部材17は、軸方向には圧縮せず、径方向(撓み方向とも称される)に沿ってのみ変形可能である。つまり、拘束部材17は、チューブ11の周方向の所定位置において、軸方向に沿った圧縮に対して抵抗し、軸方向に直交する直交方向(径方向)に曲げ変形可能である。
【0046】
拘束部材17は、また拘束部材17が設けられているチューブ11の周方向の所定位置において、径方向外側へのチューブ11(及びスリーブ12)の膨張を拘束(規制)する機能も有している。
【0047】
拘束部材17は、例えば、板バネ(leaf spring)を用いて形成されている。板バネの寸法は、流体圧アクチュエータ1のサイズ、及び必要とされる発生力などに応じて選択されればよく、特に限定されない。また、板バネの材料についても特に限定されないが、典型的には、ステンレス鋼等の金属など、曲げ易く、圧縮に強い材料であればよい。例えば、拘束部材17は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の薄板などによって形成されてもよい。CFRPは、金属に比べて塑性変形をし難いため、流体圧アクチュエータ1が湾曲後、元の真っ直ぐな状態に戻りやすい。
【0048】
図3Aから図6に示すように、拘束部材17は、チューブ11とスリーブ12との間に設けられる。図5は、図1におけるA-A’断面での流体圧アクチュエータ1の径方向に沿った断面図である。拘束部材17は、チューブ11及びスリーブ12と密着していてもよいし、拘束部材17と、チューブ11及び/又はスリーブ12との間、及び拘束部材17の側方には、多少隙間が形成されていてもよい。ただし、拘束部材17は、チューブ11内に埋設されていてもよく、或いは、チューブ11の径方向内側に設けられていてもよい。
【0049】
拘束部材17は、チューブ11(及びスリーブ12)の周方向における一部に設けられる。すなわち、チューブ11は、周方向において拘束部材17に覆われている部分と覆われていない部分を有している。拘束部材17の幅は、特に限定されないが、チューブ11の外径を基準とすれば、概ね当該外径の半分程度とされてもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、拘束部材17は、平板状であるが、撓み方に影響がない範囲において、チューブ11及びスリーブ12の断面形状に沿って多少湾曲していてもよい。
【0051】
拘束部材17は、チューブ11及びスリーブ12の軸方向における基端側から先端側に亘って設けられている。具体的には、拘束部材17は、第1封止部13Aから第2封止部13Bに亘って設けられていてもよい。本実施形態では、拘束部材17は、チューブ11と略等しい長さとされている。
【0052】
ただし、拘束部材17は、必ずしも完全に第1封止部13Aから第2封止部13Bに亘って設けられていなくてもよく、第1封止部13A及び第2封止部13Bの何れか一方(特に、湾曲時に自由端となる可能性が高い第2封止部13B側)には、拘束部材17が延在していなくてもよい。
【0053】
本実施形態では、図3Aから図6に示すように、拘束部材17の径方向内側には、配線部材17aが配置されている。配線部材17aは、拘束部材17に沿って先端側から基端側まで延在し、導電性ゴム部材で形成された保持部18(接触検出部120)と、流体圧アクチュエータ1の外部に配置された制御系200(図9参照)とを電気接続している。
【0054】
配線部材17aは、拘束部材17の径方向内側に拘束部材17に沿って配置されており、図8Aに示すような層構成を備えている。すなわち、配線部材17aは、ベース層17a3と、ベース層17a3の径方向内側の面に設けられた2本の導体パターン17a1,17a2と、2本の導体パターン17a1,17a2を覆うカバー層17a4とを備えている。
【0055】
配線部材17aは、例えばフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)とすることができる。この場合、ベース層17a3及びカバー層17a4には、例えば耐熱性及び所定の強度を備えたポリイミド樹脂などを用いることができる。ベース層17a3及びカバー層17a4には、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、又は液晶ポリマーなどを用いてもよい。配線部材17aは、接着層によって拘束部材17に接着固定されていてもよいし、かしめ部材16によって長手方向両端部をチューブ11とスリーブ12の間で挟持されることにより固定されていてもよい。
【0056】
本実施形態では、同一面内に2本の導体パターン17a1,17a2を配置したが、3本以上を同一面内に配置してもよいし、ポリイミド層などの絶縁層を間に挟んで複数の導体層を設けてもよい。また、拘束部材17の両面に配線部材17aを配置してもよい。
【0057】
また、配線部材17aは、例えば図8Bに示すように、拘束部材17を構成する外板17b1及び内板17b2の間に拘束部材17の中間層として設けられていてもよい。外板17b1及び内板17b2が絶縁体又は絶縁処理されている場合には、ベース層17a3及びカバー層17a4は必ずしも設けなくてもよい。
【0058】
本実施形態では、保持部18は、配線部材17aを介して外部の定電流源150と接続されている。保持部18(接触検出部120)内に一定電流を流すことによって保持部18に接続した配線部材17aの2本の導体パターン17a1及び17a2の間に生じる電位差が、2本の導体パターン17a1及び17a2の間の抵抗値に対応しており、制御部110(図9参照)は、この抵抗値の変化を接触検出結果として取得する。
【0059】
制御部110における各処理は、例えば、図示しない記憶部などに記憶された所定のプログラムを制御部110が備えるCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)で実行させることによって、ソフトウエア処理として実現することができる。しかし、この態様には限定されず、各処理は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってハードウエア処理として実現するように構成してもよい。制御部110は、ADコンバータ経由で上記電位差を取得してもよい。
【0060】
上記所定のプログラムを記憶する記憶部は、読取り可能な記憶媒体を含み、当該記憶媒体には、EPROM、EEPROM若しくはフラッシュメモリ等の書換え可能でプログラム可能なROM若しくは情報を格納可能な磁気ディスク記憶媒体など、他の有形の記憶媒体又はこれらいずれかの組合せが含まれる。記憶部は、制御部110内に設けられていてもよいし、制御部110と接続可能な外部記憶装置内の記憶媒体であってもよい。上述の記憶部には、制御プログラムのほか、制御部110が取得した各種データを記憶してもよい。
【0061】
流体圧アクチュエータ1及び制御部110は、アクチュエータ制御システムを構成する。
【0062】
(流体圧アクチュエータの動作)
次に、図6を参照して、本開示の一実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の動作について説明する。図6において、流体圧アクチュエータ1は、基端側が支持部40により固定されており、先端側が自由に移動できる状態である。つまり、流体圧アクチュエータ1の基端側が固定端であり、先端側が自由端である。
【0063】
図1と同様に、流体圧アクチュエータ1の先端側(図6の下側)の連結部14Cが保持部18の装着凹部18a内に嵌合することで保持部18が装着されている。
【0064】
図6には、1つの流体圧アクチュエータ1のみを図示している。しかし、例えば図7に示すように、複数の流体圧アクチュエータ1を、周方向に並べて配置してもよい。
【0065】
図9に示す制御部110は、対象物Oに作用させたい押圧力に対応した目標圧力信号を電空(E/P)変換器130に送信する。E/P変換器130は、エア源140から供給される加圧エアの圧力を、目標圧力信号に応じて調整して、流体圧アクチュエータ1のチューブ11内に供給する。流体圧アクチュエータ1のチューブ11の内部に流体が流入すると、チューブ11が軸方向に収縮しようとするが、チューブ11の周方向の一部に、軸方向に亘って拘束部材17が設けられているため、チューブ11の、拘束部材17が設けられている周方向の部分(図6における軸線Cより左側部分)において、チューブ11の軸方向に沿った収縮が拘束(規制)される。一方で、チューブ11の、拘束部材17が設けられていない部分(図6における軸線Cより右側部分)は収縮しようとするため、拘束部材17が背骨のような役割を果たし、拘束部材17が設けられているチューブ11の周方向位置と反対側(図6における右側)において、方向D1に向かって流体圧アクチュエータ1(具体的には、チューブ11及びスリーブ12)が撓む。方向D1は、撓み方向とも称される。
【0066】
一方で、流体圧アクチュエータ1の内部から流体が流出すると、流体圧アクチュエータ1は元の直線状の姿勢に戻る。これにより、流体圧アクチュエータ1を、例えば、ロボットアーム、又は、ロボットハンドの指として利用することができる。
【0067】
例えば、図6に示されるように、流体圧アクチュエータ1を駆動させて方向D1に向かって保持部18を変位させると、図6に図示されていない他の流体圧アクチュエータ1と協働して、作業台Tの上に置かれた対象物Oを挟持して持ち上げることができる。
【0068】
本実施形態では、図4Aに示すように、保持部18は、接触検出部120を備えている。すなわち、導電性ゴム部材で形成された保持部18における装着凹部18aの先端部と、装着凹部18aから径方向外側に凹む側方凹部18bとには、配線部材17aの2本の導体パターン17a1,17a2が導電性接着剤によって固定され、保持部18内の上記2点間の抵抗値を測定可能とされている。
【0069】
すなわち、図4Aにおいて、保持部18における本体部の側面(符号18sが付されている領域)が対象物Oに接触すると、2本の導体パターン17a1,17a2の接着箇所の間の導電性ゴム部材が径方向(図4Aにおける上下方向)に圧縮されるため、上記2点間の抵抗値が変化する。制御部110は、この抵抗値の変化から保持部18に加えられた押圧力を算出するように構成してもよい。すなわち、抵抗値の変化が大きいほど保持部18に加えられた押圧力を大きく算出することができる。
【0070】
この場合の抵抗値の変化が大きいとは、例えば変化前の抵抗値に対する、抵抗値の変化の絶対値の割合が大きい、などである。
【0071】
制御部110は、例えば算出された押圧力が第1閾値よりも大きい場合に、保持部18が対象物Oに対して過大な押圧力をかけるか又は対象物O以外の物体と接触する異常接触が発生したと判断し、流体圧アクチュエータ1の駆動を停止することができる。また、制御部110は、例えば算出された押圧力が第2閾値以上第1閾値以下である場合に、対象物Oを正常に保持していると判断することができる。
【0072】
この場合の第1閾値は、想定される対象物Oを保持した場合に保持部18に作用する押圧力よりも明らかに大きな押圧力(例えば想定される押圧力の5倍以上)とするのが好ましい。保持部18に作用する押圧力がこの第1閾値を超えた場合には、想定している対象物O以外の障害物や、容器、床、壁等に当接して押圧力を受けている可能性が高く、異常接触があったと判断してよい。
【0073】
また、第2閾値は、想定される対象物Oの重量や使用する流体圧アクチュエータ1の数から判断して、適正と考えられる押圧力の最小値とするのが好ましい。
【0074】
また、制御部110は、適正な抵抗値が取得できない場合に、保持部18から制御部110までの経路に断線が発生したと認識することができる。
【0075】
流体圧アクチュエータ1の利用者は、対象物Oの大きさ、重量、表面状態又は載置場所などに応じて保持部18を適宜最適なものに容易に交換することができる。例えば、対象物Oの重量が大きい場合に保持部18を剛性の高い材料のものに変えたり、対象物Oの大きさが大きい場合により保持面積が大きい保持部18に交換することができる。
【0076】
本実施形態では、保持部18内に配線部材17aからの2本(1組)の導体パターン17a1,17a2のみを配置するように構成したが、この態様には限定されない。例えば、保持部18内のそれぞれ異なる部位に2組以上の導体パターンを配置して、保持部18内の複数の部位の抵抗値の変化を検出するように構成してもよい。
【0077】
この場合、保持部18は、複数の接触検出部120を備えており、制御部110は、複数の接触検出部120のうちの1又は複数の接触検出部120からの検出信号を選択して異常接触又は対象物Oの正常な保持を判断することができる。
【0078】
また、制御部110は、複数の接触検出部120からの検出信号を用いて押圧された周方向位置や高さ位置などを判断するように構成してもよい。
【0079】
例えば、保持部18に加わる押圧力の大きさ、周方向位置及び高さ位置と、保持部18に設けられた複数の接触検出部120からの検出信号との関係性を学習させた接触検出用学習済みモデルをあらかじめ生成して記憶部に記憶しておき、制御部110が、新たに出力された複数の接触検出部120からの検出信号と上記学習済みモデルとを用いて保持部18に加えられた押圧力の大きさ、周方向位置及び高さ位置などを推定するようにしてもよい。
【0080】
(流体圧アクチュエータを用いたシステム)
図7を参照して、流体圧アクチュエータ1を用いたシステムの一構成例を説明する。具体的には、図7に示されるシステムは、流体圧アクチュエータ1を駆動させることにより対象物Oを把持する把持システム50である。
【0081】
図7に示されるように、把持システム50は、台座部51、支柱部52、第1アクチュエータ接続部53、伸縮型アクチュエータ54、第2アクチュエータ接続部55、及び流体圧アクチュエータ1を備えている。
【0082】
台座部51の上面には、支柱部52が立設されている。支柱部52の上端部は、下方に向けて折り返されており、支柱部52の先端部分には、第1アクチュエータ接続部53が連結されている。
【0083】
第1アクチュエータ接続部53には、伸縮型アクチュエータ54が吊り下げられている。伸縮型アクチュエータ54は、流体圧アクチュエータ1の上下方向の位置を調整する。伸縮型アクチュエータ54は、上述した流体圧アクチュエータ1のような拘束部材17は備えられておらず、一般的なマッキベン型のアクチュエータであってよい。このため、伸縮型アクチュエータ54は、軸方向(図中の白抜き矢印方向)に沿って収縮及び膨張する。つまり、伸縮型アクチュエータ54は、単に軸方向の長さが変化するだけであり、上述した拘束部材17を有する流体圧アクチュエータ1のように湾曲することはできない。ただし、伸縮型アクチュエータ54は、拘束部材17を備え、湾曲することが可能であってもよい。また、伸縮型アクチュエータ54は、マッキベン型のアクチュエータに限られず、別の構成のアクチュエータであってもよい。
【0084】
伸縮型アクチュエータ54の下端には、第2アクチュエータ接続部55が連結されている。第2アクチュエータ接続部55には、支持部40を介して流体圧アクチュエータ1が吊り下げられている。
【0085】
図示する例では、4つの流体圧アクチュエータ1と、4つの流体圧アクチュエータ1を基端側で支持する1つの支持部40と、を備えている。4つの流体圧アクチュエータ1のそれぞれには、チューブ11の軸方向に亘って拘束部材17が設けられている。
【0086】
図示する例では、4つの流体圧アクチュエータ1は、それぞれに対向する流体圧アクチュエータ1とは反対側に拘束部材17が備えられている。この構成によって、4つの各流体圧アクチュエータ1は、対向する流体圧アクチュエータ1の方向に向かって曲げ変形可能である。
【0087】
これにより、把持システム50は、伸縮型アクチュエータ54及び流体圧アクチュエータ1が駆動することにより、対象物Oを把持して、持ち上げることができる。
【0088】
すなわち、把持システム50を制御する制御部110は、4つの流体圧アクチュエータ1内の圧力を制御して、各流体圧アクチュエータ1の先端部に装着された保持部18が互いに近づく方向に曲げ変形させて、対象物Oを保持することができる。
【0089】
制御部110は、保持する対象物Oの大きさ、重量などに応じて、駆動する流体圧アクチュエータ1の本数を変えたり、流体圧アクチュエータ1の駆動圧力や基端部の高さ位置などを適宜調整するようにしてもよい。また、複数の流体圧アクチュエータ1同士の間隔を更に調整可能とすることによって、対象物Oの大きさ等に応じて最適な位置で保持できるようにしてもよい。
【0090】
把持システム50を制御する制御部110は、例えば複数の流体圧アクチュエータ1の少なくとも1つの流体圧アクチュエータ1において算出された押圧力が第1閾値よりも大きい場合に、保持部18が対象物Oに過大な押圧力をかけたり対象物O以外の物体と接触する異常接触が発生したと判断し、把持システム50の作動を停止してもよい。
【0091】
また、把持システム50の制御部110は、例えば複数の流体圧アクチュエータ1のうちの2つの流体圧アクチュエータ1において算出された押圧力が第2閾値以上第1閾値以下である場合に、対象物Oを正常に保持していると判断してもよい。
【0092】
(保持部の変形例)
次に、図10を参照しつつ、流体圧アクチュエータ1に装着する保持部18の変形例について説明する。
【0093】
保持部18は、流体圧アクチュエータ1の駆動によって保持すべき対象物Oに当接し、対象物Oに流体圧アクチュエータ1の駆動力を作用させる部位である。保持部18は、円柱形状の本体部18sの先端側に略半球形状の先端部18tを有しており、連結部14Cが装着凹部18aの内側に嵌合することによって封止部材14に装着されている。
【0094】
本実施形態において、保持部18は、弾性部材で形成されてもよい。保持部18の材料は、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどの弾性材料によって形成することができる。また、保持部18は他のゴムや樹脂エラストマーなどを採用し得る。
【0095】
特に、保持部18における、少なくとも保持する対象物Oに当接する部位は、弾性部材で形成されていることが好ましい。このような構成によって、保持部18が対象物Oを傷つけることなく保持することができる。
【0096】
保持部18の形成は、例えば圧縮成形、射出成形又は押出成形などによって一体成形することができる。また、二色成形やインサート成形などを用いることによって、保持部18を構成する材料を部位ごとに異ならせて最適化することができる。例えば、保持部18における対象物Oに当接する部位に上述のいずれかのゴム材料を用いるとともに、他の部位にプラスチック又は金属等の材料を用いて剛性を高めてもよい。
【0097】
装着凹部18aの側面の一部の周方向位置には、径方向外側に向かって凹む配線通し溝18Cが設けられている。配線通し溝18Cは、軸方向に先端部に向かって延在しており、配線通し溝18Cの先端方向端部は、装着凹部18aの径方向幅と同一幅で切り欠かれている。配線通し溝18Cの先端方向端部には、図10に示すように、接触検出部120として機能する圧電素子19が径方向(図10の上下方向)の圧力を検出可能な状態で配置されている。
【0098】
圧電素子19は、力が加えられて変形すると起電力を発生する。この特性によって、図10において径方向の圧力が加えられると、2本の導体パターン17a1,17a2の間に圧力の大きさに対応した起電力が発生する。制御部110(図9参照)は、この起電力を接触検出結果として取得する。
【0099】
本実施形態では、径方向の圧力を検出するように圧電素子19を配置したが、検出すべき圧力が加わる部位、及び方向を考慮して圧電素子19を配置する。圧電素子19は、保持部18内に1つ又は複数配置することができる。
【0100】
なお、接触検出部120は、導電性ゴム部材又は圧電素子19以外の手段を用いてもよく、保持部18の弾性変形に追従して圧力を検出できればよい。接触検出部120には、例えばひずみゲージなどを用いてもよい。
【0101】
以上述べたように、本開示の一実施形態に係る流体圧アクチュエータ1は、流体の圧力によって駆動する流体圧アクチュエータ1であって、膨張及び収縮する円筒状のチューブ11と、チューブ11の外周面を覆いチューブ11の軸方向の伸長を規制するとともに径方向の伸長を許容するスリーブ12と、チューブ11の軸方向の先端側に装着され対象物Oを保持する保持部18とを備え、保持部18は少なくとも対象物Oを保持する部位が弾性部材で形成されており、物体の接触を検出する接触検出部120を有するように構成した。このような構成の採用によって、対象物Oを弾性部材で保持するため、対象物Oの破損や傷の発生を抑制することができる。また、保持部18が接触検出部120を備えることによって、対象物Oに対して過大な押圧力をかけたり対象物O以外の物体に接触したりする異常接触を容易に検知することができるので、流体圧アクチュエータ1の制御性を向上させることができる。そして、流体圧アクチュエータ1や対象物Oの破損等を抑制することができる。
【0102】
また、本実施形態では、流体圧アクチュエータ1は、チューブ11の軸方向の収縮を規制する拘束部材17を更に備え、接触検出部120からの検出信号は、拘束部材17を通じて、又は拘束部材17に沿って伝送されるように構成した。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータ1内で信号の伝送方向に延在し比較的剛性が高い拘束部材17内又は拘束部材17に沿って配線部材17aを配置することができるので、配線部材17a以外の部材を追加することなく配線経路を確保することができる。また、配線部材17aの断線等を発生しづらくすることができる。
【0103】
また、本実施形態では、拘束部材17は、中間層として接触検出部120からの検出信号を伝送する導電層を有する積層板であるように構成した。このように、配線部材17aを拘束部材17の中間層とすることで配線部材17aが拘束部材17の外層によって保護されるので、配線部材17aの信頼性を高めることができる。
【0104】
また、本実施形態では、弾性部材は導電性部材であり、接触検出部120は、弾性部材の抵抗値の検出により物体の接触検出が可能であるように構成した。このような構成の採用によって、保持部18を導電性部材で形成することによって接触センサとして利用することができるので、新たなセンサを組み込むことなく保持部18への接触検出を行うことができる。
【0105】
また、本実施形態では、接触検出部120は、圧電素子19を備えるように構成した。このような構成の採用によって、所定位置における所定方向の圧力を簡素なセンサで検出することができるので、所定の押圧力以上の異常接触を確実に検出することができる。
【0106】
また、本実施形態は、上記いずれかに記載の流体圧アクチュエータ1と、流体圧アクチュエータ1の制御を行う制御部110とを備えるアクチュエータ制御システムであって、制御部110は、接触検出部120からの検出信号に基づく保持部18への押圧力が第1閾値より大きい場合に異常接触があったと判断するように構成した。このような構成の採用によって、保持部18が対象物Oに対して過大な押圧力をかけるか又は対象物O以外の物体と接触する異常接触を認識し、流体圧アクチュエータ1の駆動を速やかに停止することができる。本実施形態では、保持部18を弾性部材により形成することで対象物Oの破損や傷の発生を抑制できる一方、異常接触を察知しづらかったが、接触検出部120の導入により速やかに異常接触を検出して流体圧アクチュエータ1の駆動を停止させることができる。
【0107】
また、本実施形態では、制御部110は、複数の流体圧アクチュエータ1の接触検出部120から検出信号を取得し、少なくとも2つの流体圧アクチュエータ1からの検出信号に基づく保持部18への押圧力が第2閾値以上前記第1閾値以下である場合に、対象物Oを正常に保持していると判断するように構成した。このような構成の採用によって、流体圧アクチュエータ1が過大な押圧力をかけておらず、かつ複数の流体圧アクチュエータ1によって対象物Oが適正な押圧力で挟持されていることを認識して、対象物Oの正常な保持を判断することができる。
【0108】
また、本実施形態では、保持部18は複数の接触検出部120を備え、制御部110は、複数の接触検出部120のうちの1又は複数の接触検出部120からの検出信号を選択して異常接触又は対象物Oの正常な保持を判断するように構成した。このような構成の採用によって、保持部18にかかる押圧力の周方向位置及び高さ位置をより正確に認識することができるので、異常接触及び正常な保持の判断をより正確に行うことができる。
【0109】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0110】
例えば、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1は、図4A等に示す形状の保持部18を備えるように構成したが、この態様には限定されない。保持部18の形状は、保持しようとする対象物Oの形状、大きさ、重量、表面の状態等に応じて種々の形状を採用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示は流体圧アクチュエータ1及びアクチュエータ制御システムに関する。
【符号の説明】
【0112】
1:流体圧アクチュエータ、 11:チューブ、 12:スリーブ、 13:封止部、 13A:第1封止部、 13B:第2封止部、 14:封止部材、 14A:頭部、 14B:胴部、 14C:連結部、 14D:接続口、 14E:通過孔、 14F:配線導入孔、 14H:配線導入溝、 14J:配線導入溝、 15:係止リング、 15A:切欠き部、 16:かしめ部材、 16A:圧痕、 17:拘束部材、 17a:配線部材、 17a1:導体パターン、 17a2:導体パターン、 17a3:ベース層、 17a4:カバー層、 17b1:外板、 17b2:内板、 18:保持部、 18a:装着凹部、 18b:側方凹部、 18C:配線通し溝、 18s:本体部、 18t:先端部、 19:圧電素子、 40:支持部、 50:把持システム、 51:台座部、 52:支柱部、 53:第1アクチュエータ接続部、 54:伸縮型アクチュエータ、 55:第2アクチュエータ接続部、 110:制御部、 120:接触検出部、 130:E/P変換器、 140:エア源、 150:定電流源、 200:制御系、 C:軸線、 O:対象物、 T:作業台、 D1:撓み方向
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10