(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090584
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】大規模空間除菌システム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20230622BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20230622BHJP
B05B 12/04 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61L9/14
B05B17/06
B05B12/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205618
(22)【出願日】2021-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】520088498
【氏名又は名称】株式会社空間除菌
(71)【出願人】
【識別番号】519437180
【氏名又は名称】株式会社NSFエンゲージメント
(71)【出願人】
【識別番号】390003333
【氏名又は名称】新晃工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222956
【氏名又は名称】東洋熱工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516088215
【氏名又は名称】広沢電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】森久 康彦
【テーマコード(参考)】
4C180
4D074
4F035
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180EA58X
4C180GG08
4C180HH05
4C180KK06
4C180LL20
4C180MM08
4D074AA10
4D074BB06
4D074DD03
4D074DD05
4D074DD12
4D074DD13
4D074DD17
4D074DD18
4D074DD22
4D074DD34
4D074DD61
4F035AA02
4F035BA03
4F035BA22
(57)【要約】
【課題】除菌作用を有し所定の粒径を有する微粒子を大規模空間の隅々にまで拡散させることが可能な大規模空間除菌システムを提供する。
【解決手段】本発明の大規模空間除菌システムは、液剤を貯留可能な霧化タンク、霧化タンク内で液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子が配設された霧化デバイス、所定の回転数を保持可能な送風部材を備え、液剤の微粒子を搬送するための搬送エアを霧化タンクに設けられた送風口から霧化タンク内に吐出する送風機、霧化デバイスで生成された微粒子と搬送エアを送出する送出部材、を備える霧化ユニットを複数備えた生成部と、霧化ユニットの運転台数を制御する制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤を貯留可能な霧化タンク、前記霧化タンク内で液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子が配設された霧化デバイス、所定の回転数を保持可能な送風部材を備え、前記液剤の微粒子を搬送するための搬送エアを前記霧化タンクに設けられた送風口から前記霧化タンク内に吐出する送風機、前記霧化デバイスで生成された微粒子と搬送エアを送出する送出部材、を備える霧化ユニットを複数備えた生成部と、
前記霧化ユニットの運転台数を制御する制御部と、
を備えた大規模空間除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模な空間に除菌作用を有する液剤を噴霧することで空間の除菌を行う空間除菌システムにおいて、空間全体に所定の粒径を有する微粒子を均一に拡散させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
除菌効果を奏する水溶液を霧化して空間に噴霧することで種々のウイルスや細菌を死滅させる空間除菌装置が開発されている。
【0003】
このような空間除菌装置において、除菌効果のある液剤の微粒子を隅々まで、かつ均等に空間内に拡散するためには、所望の粒径、特に、微粒子が空気中でブラウン運動を起こすことができる程度に小さな粒径を有する微粒子を安定して生成することが要求される。
【0004】
このような空間除菌装置の一例として、例えば、コンサートホール、ライブハウス、劇場ないしは映画館などの広いスペースにおいて、除菌作用を有する液剤を大量に噴霧する必要が生じる場合がある。そのような場合において、粒子の粒径が大きいと空間の隅々まで至る前に床面に落下してしまうとともに、床面や壁面、各種電気機器を湿らせてしまうこととなり、滑りやカビ、機器の故障の原因となるため好ましくない。そのため、空気中を長時間浮遊して除菌効果を発揮するよう、ブラウン運動を起こすことができる程度の小さな粒径を有する微粒子を発生させる必要がある。
【0005】
一般的に、液剤を霧化して噴霧するためには、液剤が貯留されている霧化ユニットにおいて、超音波振動子等の振動子を用いて発生させた霧滴を搬送媒体を用いて搬送して空気中に拡散する技術が採用されている。(特許文献1、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-92336号公報
【特許文献2】特許第6742046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に開示された技術によると、超音波振動子を用いて霧化された液剤を搬送媒体を用いて搬送して空間内に噴霧することが可能な除菌装置を得ることができる。
【0008】
特に、特許文献2に開示された技術によると、超音波振動子、セパレータ及び送風機の配置を工夫することで、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子(粒径0.1~2μm程度)を生成することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された技術は、単一の霧化ユニットを用いて液剤の霧化を行うため、コンサートホールなどにおいて大量の微粒子を発生させるためには、霧化ユニットのスケールアップが必要となる。霧化ユニットをスケールアップして噴霧量を増加させようとした場合、搬送媒体を供給するための送風機の回転数を増加させることとなり、その結果、微粒子の粒径が変わる恐れがある。
【0010】
つまり、微粒子を搬送するための搬送媒体を供給する送風機の回転数を増加させた場合、粒径の小さな微粒子だけでなく粒径の大きな粒子をも搬送することになり、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子のみを搬送することは難しい。
【0011】
粒径の小さな微粒子を選択的に発生させるためには、送風機の回転数を下げる必要がある。送風機の回転数を下げることで、空気のドラフトを下げ、大きくて重い粒子を搬送しないようにすることができるため、粒径の小さな微粒子を選択的に搬送することができる。しかし、送風機の回転数を下げると、風量も同時に下がるため、広い範囲にわたって噴霧することができず、ホールや劇場などの大空間の隅々にまで微粒子を行き渡らせることは難しい。
【0012】
本発明は、これらの課題に鑑み、送風機の回転数を上げることなく大規模空間の隅々にまで除菌作用を有する粒子を大量に拡散させることができる大規模空間除菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0014】
第1の特徴に係る大規模空間除菌システムは、液剤を貯留可能な霧化タンク、霧化タンク内で液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子が配設された霧化デバイス、所定の回転数を保持可能な送風部材を備え、液剤の微粒子を搬送するための搬送エアを霧化タンクに設けられた送風口から霧化タンク内に吐出する送風機、霧化デバイスで生成された微粒子と搬送エアを送出する送出部材、を備える霧化ユニットを複数備えた生成部と、霧化ユニットの運転台数を制御する制御部とを備える。
【0015】
第1の特徴に係る発明によれば、霧化ユニットごとに、所定の回転数を保持可能な送風部材を備えた送風機が設けられており、しかも、霧化ユニットの運転台数を制御する制御部を備えるため、多くの微粒子を生成する場合であっても、霧化ユニットの運転台数を増加させるだけで大量の微粒子を発生させることが可能であり、送風部材の回転数を変化させる必要がない。そのため、所定の粒径の微粒子を大量に生成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、除菌作用を有し所定の粒径を有する微粒子を大規模空間の隅々にまで拡散させることが可能な大規模空間除菌システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る大規模空間除菌システムの斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本実施形態に係る霧化ユニット10の部分拡大斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、本実施形態に係る霧化ユニット10の作動状態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る霧化ユニット10の霧化方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0019】
[大規模空間除菌システムの全体構成]
図1を用いて、本実施形態に係る大規模空間除菌システムの全体構成を説明する。
【0020】
図1に示すように、大規模空間除菌システムは、液剤を霧化して微粒子を生成し搬送する複数の霧化ユニット10(10A、10B、10C)と、それぞれの霧化ユニット10で霧化された液剤を合流させる合流管20と、複数の霧化ユニット10(10A、10B、10C)及び合流管20を内部に配設する筐体30と、霧化ユニット10で生成された微粒子と空調済み空気とを混合する混合部と筐体30とを連通させる連通部40とからなる生成部1、複数の霧化ユニット10に液剤を供給する供給部2、霧化ユニット10及び供給部2を制御する制御部3、生成部1から送出された微粒子及び搬送エアと空調済み空気とを混合する図示しない混合部、及び、雰囲気空気を空調済み空気に調和して混合部に送出する図示しない空調装置によって構成される。
【0021】
また、本実施形態においては、液剤として、除菌効果のある亜塩素酸水溶液を使用することを想定し、大規模空間除菌システム1は、劇場やコンサートホール、ライブハウス等の大規模空間において空気中に浮遊するウィルスや細菌を死滅ないし無害化させる除菌装置として使用される。
【0022】
[霧化ユニット10の構成]
図1及び
図2を使用して、本実施形態に係る生成部1における霧化ユニット10について説明する。
図2Aは霧化ユニット10の部分拡大斜視図を示し、
図2Bは霧化ユニット10の使用時の様子を示す模式図である。なお、
図2A及び
図2Bにおいては液位センサ15の図示を省略している。
【0023】
図1及び
図2Aに示すように、霧化ユニット10は、所定の幅を有し液剤を貯留可能な霧化タンク11と、霧化タンク11内において液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子12a、12b、12c・・・が幅方向及び奥行き方向に複数配設された霧化デバイス12と、所定の回転数を保持可能な図示しない送風部材を備え、液剤の微粒子を搬送するための搬送エアを、霧化タンク11に設けられた送風口11bから霧化タンク11内に吐出する送風機13と、超音波振動子12a、12b、12c・・・によって発生する液剤の液柱を受けるよう配設される二枚のバッフルプレート14a、14bと、霧化タンク11内の液位を検知する液位センサ15とを備える。
【0024】
霧化タンク11は、供給部2を介して供給される液剤を貯留して霧化するためのものであり、所定の幅を有する略直方体の形状を呈する。霧化タンク11の天面11dには供給口11aが形成されており、後述する供給部2の液剤供給ポンプ2aを介して供給された液剤が供給口11aを介して霧化タンク11内に流入する。また、霧化タンク11の天面11dには送風口11bが形成されており、送風機13からの搬送エアが送風口11bを通じて霧化タンク11内に流入する。さらに、霧化タンク11の天面11dには送出口11cが形成されており、霧化タンク11内で霧化された微粒子が搬送エアとともに送出口11cから送出される。霧化タンク11は後述する筐体30の底面に、例えばねじ止めなどの周知の手段によって固定される。なお、霧化タンク11はポリエチレンテレフタラート(PET)によって形成される。また、本実施形態においては、霧化タンク11の天面11dは、霧化タンク11の本体部分に装着される天面部材によって形成される。
【0025】
霧化デバイス12は霧化タンク11内の底部に配設された複数の超音波振動子12a、12b、12c・・・を備えるデバイスであり、図示しない電源ユニットから供給される電力によって作動して超音波を発する。本実施形態に係る霧化デバイス12は、霧化タンク11の奥行き方向にわたって2列、幅方向にわたって3列の超音波振動子12a、12b、12c、12d、12e、12fが平面状に配設されており、霧化タンク11内の広範囲にわたって液剤を霧化して微粒子を発生させる。霧化デバイス12を作動させると、液面からは配列された超音波振動子12a、12b、12c・・・ごとに、それぞれの超音波振動子12a、12b、12c・・・の上方に向けて液柱が発生する。
【0026】
送風機13は、制御部3からの信号に応じて回転数を制御可能な図示しない送風部材を備えており、霧化された液剤を搬送するための搬送エアを送風口11bを通じて霧化タンク11内に供給するものであり、搬送エアを吐出する図示しない吐出口が霧化タンク11の送風口11bに接続され、下方に向けて送風可能に配設される。本実施形態において、送風機13は電源ユニットから供給される電力によって駆動され、制御部3からの信号に応じて印加電圧を変化させることで回転数を制御する。
【0027】
次に、二枚のバッフルプレート14a、14bについて説明する。バッフルプレート14a、14bはステンレス鋼によって形成された平板状の部材であり、その基本的機能は、霧化デバイス12の超音波振動によって発生した液滴を大きな液滴と小さな微粒子とに分けることである。つまり、それぞれの超音波振動子12a、12b、12c・・・の上方に液柱が発生すると、液柱に含まれる粒径の大きな液滴はバッフルプレート14a、14bに衝突して下方に流れ霧化タンク11に貯留される液層に還流する。一方、液柱に含まれる粒径の小さな霧滴は、バッフルプレート14a、14b近傍に浮遊した状態となり、送風機13によって供給される搬送エアに伴い送出口11cへ搬送される。このように、バッフルプレート14a、14bの働きによって、超音波振動によって発生した粒径の大きな液滴と粒径の小さな霧滴とを分離することができる。
【0028】
このような基本的機能に加え、本実施形態に係るバッフルプレート14a、14bは、さらに、後述する機能を発揮できるよう、下記のように配設される。
【0029】
本実施形態に係るバッフルプレート14a(本発明における第一バッフルプレート)は、送風口11bの下方であって、超音波振動子のうち霧化タンク11の幅方向一端側に配設された超音波振動子12a、12dの上方に配設される。
【0030】
また、バッフルプレート14aは、一端が霧化タンク11の天面11dに接続される接続部14ac(本発明における第一接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向一端側の側面と所定の間隔を隔てて配設されるエッジ部14ae(本発明における第一エッジ部)を有するよう、霧化タンク11の幅方向一端側に向けて斜め下方に傾斜して配設される。
【0031】
バッフルプレート14b(本発明における第二バッフルプレート)は、供給口11a及び送出口11cの下方であって、超音波振動子のうち霧化タンク11の幅方向他端側に配設された超音波振動子12c、12fの上方に配設される。
【0032】
また、バッフルプレート14bは、一端が霧化タンク11の天面に接続される接続部14bc(本発明における第二接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向他端側、つまり、バッフルプレート14aが配設される側とは逆側の側面と所定の間隔を隔てて配設されるエッジ部14be(本発明における第二エッジ部)を有するよう、バッフルプレート14aとは逆方向、つまり、霧化タンク11の幅方向他端側に向けて斜め下方に傾斜して配設される。
【0033】
つまり、バッフルプレート14aの端部は霧化タンク11の幅方向一端側の側面と所定の間隔を隔てるよう配設され、バッフルプレート14bの端部は霧化タンク11の幅方向他端側の側面と所定の間隔を隔てるよう配設される。
【0034】
そして、送風口11bはバッフルプレート14aの接続部14acよりも幅方向一端側に設けられるとともに、送出口11cはバッフルプレート14bの接続部14bcよりも幅方向他端側に設けられる。
【0035】
液位センサ15は霧化タンク11内に貯留されている液剤の液位を検知するためのものであり、本実施形態においては霧化タンク11の外部に配設されたフロート式のものが使用される。この場合、霧化タンク11には、適宜の高さに図示しない流通孔が設けられており、流通孔を通じて液位センサ15に液剤が流入する。流通孔を通じて接続された霧化タンク11と液位センサ15は、後述する連通部40の存在によって筐体30内において同じ圧力下におかれるため、液位センサ15内の液位と霧化タンク11内の液位は同じ値となる。このようにして、外付けの液位センサ15によって霧化タンク11の液位が検知されるが、液位を計測できるものであればこれに限ったものではない。本実施形態における液位センサ15は、所定の第一液位h1、及び、第一液位h1よりも高い第二液位h2を検知するために使用される
【0036】
停止センサ16は、液位センサ15と同様に、霧化タンク11内に貯留されている液剤の液位を検知するためのものであるが、後述するように、霧化ユニット10の運転を強制的に停止することを判別するための液位を検知するものである。
【0037】
送出部材17は、霧化タンク11の天面11dに形成された送出口11cに接続された筒状の部材であり、霧化タンク11内で霧化され送出口11cから送出された微粒子を搬送エアとともに霧化タンク11外へ排出するための部材である。それぞれの霧化ユニット10に設けられた送出部材17は合流管20に接続される。
【0038】
[合流管20の構成]
合流管20はそれぞれの霧化ユニット10の送出部材17から送出された微粒子と搬送エアを合流させて筐体30から排出するための管状部材である。合流管20は、水平に配設されそれぞれの霧化ユニット10の送出部材17が接続される水平部と、水平部から立ち上がり筐体30の天面を貫通する鉛直部とからなる。
【0039】
[筐体30の構成]
筐体30はそれぞれの霧化ユニット10と合流管20を内部に配設するものである。霧化ユニット10の送風機13は筐体30内の空気を霧化タンク11内に供給することとなる。
【0040】
[連通部40の構成]
連通部40は、筐体30と図示しない混合部とを連通する菅状の部材であり、筐体30と混合部を連通することで、筐体30内の圧力を混合部の圧力と同一のものとする。このようにすることで、空調装置の空調済み空気による動圧の影響を受けることなく、筐体30内に配設された霧化ユニット10の液位を正常に検知することができる。これについては後述する。
【0041】
[供給部2の構成]
【0042】
供給部2は、図示しない原液タンクと、原液タンクに貯留される原液を所定の濃度の液剤に希釈する希釈部と、希釈部で希釈された液剤を霧化ユニット10に供給するための液剤供給ポンプ2aと、液剤供給ポンプ2aに接続され原液タンクと霧化ユニット10の間で液剤を流通させる液剤供給管2bと、液剤供給管2bを通じて供給される液剤を各霧化ユニット10に分配する分配手段2cによって構成される。
【0043】
液剤供給管2bは、希釈部と霧化タンク11の天面に形成された供給口11aとを接続する。
【0044】
また、分配手段2cはそれぞれの霧化ユニット10に接続される液剤供給管2bに配設される電磁弁等によって構成され、制御部3からの信号に基づいてオンオフ制御を行うことで、所望の霧化ユニット10に希釈された液剤を供給することができる。
【0045】
例えば、
図1に示すように、霧化ユニット10A、霧化ユニット10B、霧化ユニット10Cの3つのユニットがあったとして、霧化ユニット10Aにのみ液剤を供給する場合、霧化ユニット10Aに接続されている液剤供給管2bの電磁弁2cのみを開とし、霧化ユニット10B及び霧化ユニット10Cに接続されている液剤供給管2bの電磁弁2cを閉とする。このようにすることで、霧化ユニット10Aにのみ液剤を供給することができる。
【0046】
このように、液剤供給ポンプ2aと液剤供給管2bを用いることで、所定の濃度に希釈された液剤を、必要に応じて供給口11aから霧化タンク11内に供給することができる。
【0047】
その際、分配手段2cが液剤供給管2bの流通のオンオフを切り替えることで、所望の霧化ユニット10の霧化タンク11にのみ希釈された液剤を供給することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、液剤供給ポンプ2aとしてチューブポンプが使用されるが、これに限ったものではない。
【0049】
[制御部3の構成]
制御部3は、各霧化ユニット10における超音波振動子12a、12b、12c・・・及び送風機13の駆動や、液剤供給ポンプ2a及び分配手段2cの駆動を制御するものであり、周知の回路やスイッチ等によって構成される。
【0050】
また、制御部3には、商用の電源に接続し各機器に電力を供給するためのケーブルなども含まれる。
【0051】
制御部3は筐体30の外面に設置されており、上記のように各霧化ユニット10における超音波振動子12a、12b、12c・・・及び送風機13の駆動や、液剤供給ポンプ2a及び分配手段2cの駆動を制御することで、霧化ユニットの運転台数を制御する。
【0052】
[霧化ユニット10を使用した霧化方法]
次に、
図3に示すフローチャートを用いて、本実施形態に係る大規模空間除菌システムにおける個々の霧化ユニット10を使用した液剤の霧化方法について説明する。
【0053】
〔ステップS100:液剤の供給開始〕
まず、図示しない電源スイッチを入れると、制御部3は希釈部、液剤供給ポンプ2a及び分配手段2cを作動し、原液タンクに貯留されている液剤を希釈し、霧化タンク11への供給を開始する(ステップS100)。
【0054】
原液タンクに貯留されている液剤の希釈と霧化タンク11への供給は下記のように行われる。つまり、制御部3からの信号によって液剤供給ポンプ2aが駆動し、それに伴い原液タンクから液剤が流出し、希釈部にて所定の濃度に希釈された後、液剤供給ポンプ2aと分配手段2cと液剤供給管2bとを介して、霧化タンク11の上面に形成された供給口11aから霧化タンク11内に流入する。
【0055】
このとき、液剤の供給を所望する霧化ユニット10すべてに同時に供給してもよいし、分配手段2cを順次切り替えて個々の霧化ユニット10に順次供給するようにしてもよい。
【0056】
〔ステップS110~S120:第二液位の判定~液剤の供給停止〕
ステップS100において液剤の供給が開始されると同時に、制御部3は液位センサ15による液位の判定を開始し、霧化タンク11内の液位が所定の第二液位h2に達したかを判定する(ステップS110)。
【0057】
液位センサ15によって検知した液位が第二液位h2に達しない場合、すなわちステップS110においてNの場合、制御部3は液剤供給ポンプ2aによる供給を継続し、第二液位h2に達した場合、すなわちステップS110においてYになると、制御部3は液剤供給ポンプ2aによる供給を停止する(ステップS120)。
【0058】
〔ステップS130:液剤の霧化〕
ステップS120において液剤の供給が停止されると、制御部3は霧化ユニット10における液剤の霧化を開始する(ステップS130)。なお、ステップS130における霧化運転の開始は、液位センサ15によって検知した液位が第一液位h1に達したことをトリガーとして行うよう制御しても構わない。その場合、霧化運転と液剤の供給が同時に行われることとなるが、早期に霧化運転を開始することができて好ましい。
【0059】
霧化ユニット10において液剤の霧化を行うに際し、制御部3は送風機13による搬送エアの送風を開始するとともに、霧化デバイス12による液剤の霧化を開始する。
【0060】
霧化デバイス12の作動に伴い、
図2Bに示すように、各超音波振動子12a、12b、12c・・・の上方には液柱が立ち上がる。液柱には大小様々な粒径を有する粒子が含まれるが、液柱が接触するように超音波振動子の上方において斜め下方に傾斜して配設されたバッフルプレート14a、14bに対し、液柱に含まれる粒径の大きな液滴が接触して下方に流れ、貯留されている液層に還流するとともに、粒径の小さな霧滴のみが空中に浮遊する。
【0061】
また、送風機13の作動に伴い、搬送エアが送風口11bから下方に向けて供給され、空中に浮遊する粒径の小さな霧滴を搬送して、送出口11cから送出させる。
【0062】
このとき、霧化タンク11の幅方向一端側に設けられたバッフルプレート14aは、送風口11bの下方で、かつ、幅方向一端側の超音波振動子12a、12dの上方に配設されているため、送風機13から供給される搬送エアが直接液面や液柱に到達することが防止されるとともに、液面から立ち上がる液柱や液滴が送風口11bから流入し直接送風機13に到達することが防止される。そのため、液剤の霧化や搬送エアの供給がお互いを妨げることなく機能し、それにより、粒子の粒径の選別の性能が担保される。
【0063】
また、送風機13から供給された搬送エアはバッフルプレート14aの一側の面に衝突し、バッフルプレート14aの一側の面に沿って流動するため、その際に圧力損失が発生し、粒子を搬送するための圧力が低下する。搬送エアの圧力が低下するため、バッフルプレート14a、14bに衝突することで液滴と小さな粒子とに分離された液剤から、通常搬送できる程度の大きさの粒子よりもさらに小さな微粒子のみが搬送エアによって搬送される。
【0064】
また、バッフルプレート14aの一側の面に沿って流動した搬送エアが、エッジ部14aeと霧化タンク11の一端側の面の間から流出する際に、バッフルプレート14aの他側の面、つまり液柱が接触する領域には負圧の領域が形成されるが、その負圧領域においては搬送エアの圧力が一層低下するため、粒径の非常に小さな微粒子以外は搬送することができず、下方の液面に落下することになる。そのため、ブラウン運動を起こすことができる程度に粒径の小さな微粒子のみが搬送エアによって下流側に搬送される。
【0065】
このようなメカニズムによって、単にバッフルプレートで液柱を受けるよりも微細な粒子を搬送エアによって搬送することができ、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子のみを選択的に吐出することが可能な霧化装置を提供することができる。
【0066】
また、バッフルプレート14aは、一端が霧化タンク11の天面11dに接続される接続部14ac(第一接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向一端側の側面と所定の間隔を隔てるエッジ部14ae(第一エッジ部)を有するよう、斜め下方に傾斜して配設される。そして、送風機13から供給される搬送エアを霧化タンク11内の外周側を通過させるべく、内方から外方に向けて突出して配設されている。
【0067】
バッフルプレート14aのこのような構造により、送風口11bから下向きに供給された搬送エアは、バッフルプレート14aの配設方向にしたがって流れの向きを斜め下方に変化させ、霧化タンク11の一端側の側面とバッフルプレート14aのエッジ部14aeとの間に形成される間隙を通過して霧化タンク11の液層付近の底部に至る。底部に至った搬送エアは他端側の側面に向かって方向を転換し、液面近傍を霧化タンク11の他端側の側面に向かって流通する。そして、霧化タンク11の他端側の側面近傍で向きを上方に転換し、天面11dに形成された送出口11cに向けて流れる。また、一部の搬送エアは、霧化タンク11の一端側の側面とバッフルプレート14aの他端部との間に形成される間隙を通過した後、バッフルプレート14a液柱を受ける側の面に回り込んでから、霧化タンク11内に旋回流を形成し、送出口11cから流出する。
【0068】
このようにして、送風口11bから下向きに供給された搬送エアは、バッフルプレート14aの配設方向にしたがって霧化タンク11の内部でゆるやかな旋回流を形成し、一部は液柱を受ける側の面に回り込んでから、一部は霧化タンク11内の外周側を通過したうえで、送出口11cから送出される。
【0069】
そして、送風口11bから供給された搬送エアが霧化タンク11内の外周側を通過してゆるやかな旋回流を形成するため、旋回流の発生に伴う遠心力の効果によって、微細な粒子とさらに微細な微粒子とに分離され、微粒子のみが搬送エアに搬送される。
【0070】
さらに、本実施形態においては、送風口11bと送出口11cとが、霧化タンク11の天面11dであってバッフルプレート14aを挟んで互いに逆側における箇所に設けられる。
【0071】
そのため、バッフルプレート14aを挟んだ旋回流を形成することができ、旋回流による遠心分離の効果を高めることができる。
【0072】
このようにして、本実施形態における霧化ユニット10は、送風機13とバッフルプレート14aが協働することによって、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子のみを選択的に生成して送出することができる。
【0073】
また、本実施形態においては、バッフルプレート14bは、一端が霧化タンク11の天面に接続される接続部14bc(第二接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向他端側、つまり、バッフルプレート14aが配設される側とは逆側の側面と所定の間隔を隔てるエッジ部14be(第二エッジ部)を備えるよう、バッフルプレート14aとは逆方向の斜め下方に向けて配設される。
【0074】
そして、バッフルプレート14bは送出口11cの下方で、かつ、幅方向他端側の超音波振動子12c、12fの上方に配設されている。そのため、超音波振動子12c、12fによって発生した液柱に含まれる粒径の大きな液滴がバッフルプレート14bの下面に接触して下方に流れ、貯留されている液層に還流するとともに、粒径の小さな霧滴のみが空中に浮遊する。
【0075】
このとき、搬送エアの圧力はバッフルプレート14aとの接触によって低下しているため、通常搬送できる程度の大きさの粒子よりもさらに小さな微粒子のみが搬送エアによって搬送される。このようにして、バッフルプレート14b近傍で発生した粒子に関しても、粒径の小さな微粒子のみを選別して搬送することができる。
【0076】
また、送風口11bは霧化タンク11の天面11dにおいてバッフルプレート14aの接続部14acよりも幅方向一端側に設けられるとともに、送出口11cはバッフルプレート14bの接続部14bcよりも幅方向他端側に設けられることにより、霧化タンク11内に形成される旋回流はバッフルプレート14a及びバッフルプレート14bを挟んで霧化タンク11内全体にわたって形成される大きなものとなる。そのため、搬送エアの遠心力による微粒子の選定がより強化され、ブラウン運動を起こすことができる程度に微細な微粒子のみを確実に選別して噴霧することができる。
【0077】
〔ステップS140~S150:第一液位の判定~液剤の補充開始〕
図3のフローチャートに戻る。ステップS130において液剤の霧化が開始されると、制御部3は液位センサ15による液位の判定を開始し、霧化タンク11内の液位が、第一液位h1を下回ったかどうかを判定する(ステップS140)。
【0078】
液位センサ15によって検知した液位が第一液位h1を確保できている場合、すなわちステップS140においてNの場合、制御部3はそのまま霧化を継続し、第一液位h1を下回った場合、すなわちステップS140においてYになると、制御部3は液剤供給ポンプ2aによる液剤の補充を開始する(ステップS150)。
【0079】
ステップS150における液剤の補充は、ステップS100と同様に、液剤供給ポンプ2aを作動することによって行われる。この場合、霧化運転を継続しながら、液剤供給ポンプ2aによる液剤の霧化タンク11への補充を同時に行うことができる。
【0080】
特に、供給口11aがバッフルプレート11bの上方に形成されているため、供給口11aから供給される液剤はバッフルプレート11bを伝って液体の状態で霧化タンク11内に貯留される液層に落下する。つまり、供給口11aから供給される液剤は超音波振動の影響を受けることなく、液層に補充される。そのため、本実施形態における微粒子の選別性能に影響を与えることなく、液剤を補充することができる。
【0081】
〔ステップS160~S170:第二液位の判定~液剤の供給停止〕
ステップS150において液剤の補充が開始されると同時に、制御部3は液位センサ15による液位の判定を開始し、霧化タンク11内の液位が所定の第一液位h1よりも高い第二液位h2に達したかを判定する(ステップS160)。
【0082】
液位センサ15によって検知した液位が第二液位h2に達しない場合、すなわちステップS160においてNの場合、制御部3は液剤供給ポンプ2aによる供給を継続し、第二液位h2に達した場合、すなわちステップS160においてYの場合、制御部3は液剤供給ポンプ2aによる供給を停止する(ステップS170)。
【0083】
その後は、電源スイッチが落とされるまで、あるいは、霧化ユニット10が休止状態となるまで、再びステップS140に戻り、第一液位の判定から液剤の供給までを繰り返し行うよう制御してもよい。
【0084】
このようにすることで、霧化タンク11内の液剤の液位を第一液位h1と第二液位h2の間に保持することができ、所望の粒径の微粒子のみを霧化することができる。
【0085】
つまり、本実施形態においては、霧化タンク11内に貯留される液剤を超音波振動子12a、12b、12c・・・を用いて霧化し、バッフルプレート14を用いて所望の粒径を有する微粒子のみを選別して搬送エアで搬送するものであるところ、霧化タンク11内の液面の液位は選別する粒子の粒径の精度に大きな影響を与える。そのため、霧化タンク11内に貯留される液剤の液位が所定範囲となるよう制御することは、ブラウン運動を行うことができる程度に小さな微粒子のみを選別して取り出す本システムにおいて非常に重要である。
【0086】
特に、本実施形態においては、筐体30と混合部とを連通する管状部材である連通部40を備えるため、筐体30内の圧力と混合部の圧力とは同一に保持される。そのため、霧化タンク11と液位センサ15は、連通部40の存在によって同じ圧力下におかれる。というのも、霧化タンク11内は、混合部ないしその下流側に配置され微粒子と空調済み空気との混合気を送風する送風機に吸引されるため、仮に連通部40がなければ、霧化タンク11内の圧力は筐体30内の圧力よりも小さくなり、霧化タンク11の液面は液位センサ15の液面よりも高くなるからである。
【0087】
そこで、本実施形態においては、筐体30と混合部とを連通する連通部40を備え、筐体30内の圧力と混合部の圧力とを同一に保持するため、液位センサ15内の液位と霧化タンク11内の液位が同じ値に保持される。その結果、霧化タンク11の液位を正確に計測することができ、ブラウン運動を行うことができる程度に小さな微粒子のみを選別して取り出すことが可能となる。
【0088】
また、制御部3は常時、停止センサ16を用いて、第一液位h1よりも低い第3液位h3を下回ったかどうかを判定するよう構成してもよい。停止センサ16が第3液位h3を下回ったことを検知した場合、制御部3は送風機13及び霧化デバイス12の動作を直ちに停止する。
【0089】
このようにすることで、液剤が極端に少ない状況における霧化デバイス12の作動を抑制し、いわゆる空焚きを防止することができる。
【0090】
また、このとき、制御部3は運転を停止すると同時に、警報音を鳴らすか、あるいは、警告灯を点灯させることで、ユーザに空焚き状態となったことを通知させるよう構成してもよい。このようにすることで、ユーザは空焚き状態になったことを認知することができる。
【0091】
[霧化ユニット10を使用した粒径の調整]
次に、本実施形態における霧化ユニット10を使用して噴霧する微粒子の粒径を所望の値に調整する方法について説明する。
【0092】
上述の通り、制御部3は送風機13に印加する電圧を制御することによって、送風機13の送風部材の回転数を制御することができる。そして、送風部材の回転数を上げることで、送出口11cから送出される微粒子の粒径を小さくすることができる。逆に、送風部材の回転数を下げることで、送出口11cから噴霧される微粒子の粒径を大きくすることができる。この送風部材の回転数変化に伴って噴霧される粒子の粒径を変化させることができるメカニズムについて、以下に説明する。
【0093】
一般には、送風部材の回転数を制御すると、回転数の変化に伴って風量が変化する。例えば、送風部材の回転数を上げると風量が増加し、回転数を下げると風量が減少する。しかしながら、風圧自体は変化しないため、搬送エアによる搬送の能力は変化せず、回転数を変化させることにより搬送可能な粒子の粒径を変化させることはできない。
【0094】
一方、本発明においては、送風機13から供給される搬送空気の送風口11bがバッフルプレート14aの上方に配設されているため、送風口11bから供給される搬送エアがバッフルプレート14aの一側の面に衝突し、圧力損失が生じる。
【0095】
搬送エアの圧力損失を引き起こした状態で送風部材の回転数を制御すると、搬送エアの風量変化に対して風圧の変化を大きくすることができる。例えば、送風部材の回転数を上げると、搬送エアの風量が増加することで、バッフルプレート14aへの接触に伴って発生する圧力損失が増加するため、搬送エアの圧力が低下し、粒子を搬送する能力が低減する。そのため、回転数を変化させる前と比して、粒径の小さな粒子を搬送することとなる。
【0096】
逆に、送風部材の回転数を下げると、搬送エアの風量は減少し、バッフルプレート14aへの接触に伴って発生する圧力損失が減少するため、搬送エアの圧力が上昇し、粒子を搬送する能力が向上する。そのため、回転数を変化させる前と比して、粒径の大きな粒子を搬送することとなる。
【0097】
このようにして、圧力損失の増減を利用して、搬送できる粒子の粒径を変化させることができる。
【0098】
また、本実施形態においては、搬送エアはバッフルプレート14aのエッジ部14aeと霧化タンク11との間に形成される間隔を通った後、バッフルプレート14aにおける液柱を受ける側の面に回り込んでから送出口11cに至るため、バッフルプレート14aの周りに送出口に向けた搬送エアの緩やかな旋回流が形成される。
【0099】
そして、送風部材の回転数を制御することによって、風量が変化するため、霧化された粒子に印加する遠心力が変化し、つまり、搬送可能な粒子の粒径を変化させることができる。例えば、送風部材の回転数を上げると、搬送エアの風量が増加することで、旋回流に随伴される粒子に印加される遠心力が増加し、粒径の比較的小さな粒子が分離されるため、粒径の非常に小さな粒子のみを搬送することとなる。
【0100】
逆に、送風部材の回転数を下げると、搬送エアの風量は減少し、旋回流に随伴される粒子に印加される遠心力が低下するため、粒子を分離する能力が弱まり、粒径の大きな粒子も搬送できるようになる。
【0101】
このようにして、制御部3によって送風機13の送風部材の回転数を制御することで、所望の粒径の微粒子を送出口11cから送出することが可能となる。
[噴霧量の制御]
【0102】
次に、大規模空間除菌システムから噴霧される液剤の噴霧量の制御について説明する。噴霧する液剤の流量の制御は、制御部3による霧化ユニット10の台数制御によって行われる。
【0103】
実施形態に係る大規模空間除菌システムにおいては、複数の霧化ユニット10を備えており、制御部3からの信号により、個々に運転を行うことができる。つまり、個々の霧化ユニット10における超音波振動子12a、12b、12c・・・及び送風機13を駆動することで、個別に液剤の霧化を行い霧化ユニット10から送出することができる。
【0104】
そして、例えば霧化ユニット10A、霧化ユニット10B、霧化ユニット10Cからなる3つの霧化ユニット10があったとして、一台の霧化ユニット10のみを運転して二台の霧化ユニット10を休止状態とする一台運転モードや、二台の霧化ユニット10を運転して一台の霧化ユニット10を休止状態とする二台運転モード、すべての霧化ユニット10を運転状態とする三台運転モードなどを切り替えて実行することができる。
【0105】
一台運転モードにおいては、霧化ユニット10Aのみを運転状態として霧化ユニット10B及び霧化ユニット10Cを休止状態とする状態、次いで霧化ユニット10Bのみを運転状態として霧化ユニット10A及び霧化ユニット10Cを休止状態とする状態、次いで霧化ユニット10Cのみを運転状態として霧化ユニット10A及び霧化ユニット10Bを休止状態とする状態、を所定間隔で順次切り替えるよう制御を行う。
【0106】
二台運転モードにおいては、霧化ユニット10A及び霧化ユニット10Bを運転状態として霧化ユニット10Cのみを休止状態とする状態、次いで霧化ユニット10A及び霧化ユニット10Cを運転状態として霧化ユニット10Bのみを休止状態とする状態、次いで霧化ユニット10B及び霧化ユニット10Cを運転状態として霧化ユニット10Aのみを休止状態とする状態、を所定間隔で順次切り替えるよう制御を行う。
【0107】
三台運転モードにおいては、霧化ユニット10A、霧化ユニット10B及び霧化ユニット10Cを運転状態とする制御を行う。
【0108】
このように、制御部3は、運転状態の霧化ユニット10の台数と休止状態の霧化ユニット10の台数を調整することで、運転台数の制御を行う。
【0109】
そして、それぞれの霧化ユニット10の霧化タンク11から送出された微粒子及び搬送エアは、それぞれの送出部材17を介して合流管20に流入し、合流管20の下流であって筐体30の外部に配置される混合部において、空調装置から供給される空調済み空気と混合されたのち、除菌対象となる空間内に噴霧される。
【0110】
このように、本実施形態に係る大規模空間除菌システム1の制御部3は霧化ユニット10の運転台数を制御することができ、これにより、噴霧する微粒子の量を、微粒子の粒径を変化させることなく制御することができる。つまり、ブラウン運動を起こすことができる程度の小さな粒径を有する微粒子を大量に噴霧することができる。
【0111】
以下、その理由を説明する。各霧化ユニット10は送風機13を備えており、霧化ユニット10において所定量の微粒子を生成するに際し、超音波振動子12a、12b、12c・・・に所定の電圧を印可するとともに、送風機13が備える送風部材を所定の回転数に維持するよう制御を行う。そして、仮に一つの霧化ユニット10を用いてより多くの微粒子を生成しようとした場合、超音波振動子12a、12b、12c・・・に印可する電圧を増加させ、送風機13の送風部材の回転数を高くすることが考えられる。しかしながら、送風部材の回転数を変化させると、単に搬送できる微粒子の量が変化するだけでなく、搬送する微粒子の粒径も変化することとなる。その場合、ブラウン運動を起こすことができる程度の小さな粒径の微粒子を多く取り出すことができなくなり、大規模空間全体に液剤の微粒子を行き渡らせることができなくなる。
【0112】
本発明においては、大規模空間除菌システム1が備える制御部3は、個々に送風機13を備える霧化ユニット10の運転台数を制御することができるため、それぞれの送風機13の送風部材の回転数を所定の回転数に維持しつつ、霧化ユニット10の運転台数を増減することにより、生成する微粒子の量を調整することができる。その結果、送風機13の回転数を変動させる必要がないので、個々の霧化ユニット10から吐出される微粒子の粒径は、ブラウン運動を起こすことができる程度の小さな粒径を保持することができる。
【0113】
このように、それぞれが送風機13を備えた複数の霧化ユニット10の運転台数を制御することにより噴霧量を制御することで、噴霧する液剤の粒径をブラウン運動を起こすことができる程度の小さな粒径に保持しつつ、噴霧量のみを調整することができる。そのため、大規模空間に噴霧する場合であっても、除菌効果のある液剤を隅々まで行き渡らせることができる。
【0114】
以上説明された本発明の効果についてまとめると、以下のようになる。
【0115】
霧化ユニット10ごとに、所定の回転数を保持可能な送風部材を備えた送風機13が設けられており、しかも、霧化ユニット10の運転台数を制御する制御部3を備えるため、多くの微粒子を生成する場合であっても、霧化ユニット10の運転台数を変化させるだけで大量の微粒子を発生させることが可能であり、送風部材の回転数を変化させる必要がない。そのため、所定の粒径の微粒子を大量に生成することができる。
【0116】
超音波振動子のうち幅方向一端側に配設された超音波振動子12a、12dによって発生する液剤の液柱を受けるよう配設されるバッフルプレート14aと、幅方向他端側に配設された超音波振動子12c、12fによって発生する液剤の液柱を受けるよう配設されるバッフルプレート14bとを備えるため、各超音波振動子12a、12b、12c・・・の上方に配設されたバッフルプレート14a、14bに液柱が接触することにより、液柱に含まれる粒径の大きな液滴がバッフルプレート14a、14bに接触して下方に流れ、貯留されている液層に還流するとともに、粒径の小さな霧滴のみが空中に大量に浮遊して搬送エアに搬送される。
【0117】
このとき、バッフルプレート14aは、霧化タンク11における幅方向一端側の内面と所定の間隔を隔てて配置されるエッジ部14aeと、霧化タンク11の内側に接続される接続部14acを備え、送風口11bは接続部14acよりも霧化タンク11の幅方向一端側寄りに配設され、バッフルプレート14bは、霧化タンク11における幅方向他端側の内面と所定の間隔を隔てて配置されるエッジ部14beと、霧化タンク11の内側に接続される接続部14bcを備え、送出口11cは接続部14bcよりも霧化タンク11の幅方向他端側寄りに配設されることにより、霧化タンク11内にはバッフルプレート14a及びバッフルプレート14bを挟んで霧化タンク11内全体にわたって大きな旋回流が形成される。そのため、旋回流の発生に伴う遠心力の効果によって、微細な粒子とさらに微細な微粒子とに分離され、ブラウン運動を起こすことができる程度に微細な微粒子のみを確実に選別して大量に噴霧することが可能な大規模空間除菌システムを提供することができる。
【0118】
また、送風口11bから供給された搬送エアがバッフルプレート14aにおける一側の面に接触するようバッフルプレート14aを配設するため、その際に圧力損失が生じ、粒子を搬送するための圧力が低下する。搬送エアの圧力が低下するため、バッフルプレート14aに衝突することで液滴と小さな粒子とに分離された液剤から、通常搬送できる程度の大きさの粒子よりもさらに小さな微粒子のみを搬送エアによって搬送することができる。
【0119】
また、送出口11cがバッフルプレート14aの接続部14acに対して送風口11bの反対側に配設されているため、バッフルプレート14aと接触した搬送エアが、バッフルプレート14aのエッジ部14aeと霧化タンク11の内面との間に形成された間隔を通って送出口11cに至る。その際、バッフルプレート14aにおける搬送エアが接触する面の裏側、つまり液柱が接触する領域には負圧の領域が形成され、その負圧領域においては搬送エアの圧力が一層低下するため、粒径の非常に小さな微粒子以外は搬送することができず、下方の液面に落下することになる。そのため、ブラウン運動を起こすことができる程度に粒径の小さな微粒子のみを搬送エアによって送出口11c側に搬送することができる。
【0120】
また、送風口11bから供給された搬送エアが、バッフルプレート14aのエッジ部14aeと霧化タンク11との間に形成される間隔を通った後、液柱を受ける側の面に回り込んでから送出口11cに至るため、バッフルプレート14aの周りに送出口11cに向けた搬送エアの緩やかな旋回流が形成される。液柱がバッフルプレート14aに衝突することによって液滴から分離された微細な粒子が搬送エアに搬送される際、旋回流の発生に伴う遠心力の効果によって、微細な粒子とさらに微細な微粒子とに分離され、微粒子のみが搬送エアに搬送される。このようにして、バッフルプレート14aの効果と旋回流の効果によって微粒子のみを搬送エアとともに送出口11cから送出させることが可能な大規模空間除菌システムを提供することができる。
【0121】
また、送風口11bと送出口11cとがそれぞれ、バッフルプレート14aを挟んで互いに逆側における天面11dに設けられるため、バッフルプレート14aを挟んだ旋回流を形成することができ、旋回流による遠心分離の効果を高めることができるため、いっそう、粒径の小さな微粒子のみを噴霧することが可能な大規模空間除菌システムを提供することができる。
【0122】
また、バッフルプレート14aが超音波振動子12a、12dの上方、かつ、送風口11bの下方において、超音波振動子12a、12dによって発生する液柱及び送風口11bから供給される搬送エアを遮る向きに配置されているため、超音波振動子12a、12dの働きによって発生する液柱が、直接送風機13に吹き込まれることを防止できるとともに、送風機13からの搬送エアが直接液柱に吹きかかることを防止することができる。そのため、バッフルプレート14aによる粒子の選別効果を損ねることなく、微細な粒子のみを搬送エアによって搬送可能な大規模空間除菌システムを提供することができる。
【0123】
また、霧化タンク11内の液位が所定の第一液位h1を下回った場合にタンクユニット20に貯留された液剤の供給を開始するよう制御され、所定の第二液位h2に達すると供給が停止されるため、霧化運転にしたがって霧化タンク11内の液剤が消費されても霧化タンク11内の液位を第一液位h1と第二液位h2との間に保持することができる。したがって、広い範囲にわたって大量の液剤を噴霧する場合であっても、長時間にわたって安定して自動で噴霧を継続することが可能となる。そして、霧化タンク11の大型化を抑えることができるため、送風機13の容量を小さくすることができ、より小さな粒径の微粒子だけ、つまり、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子だけを選択して搬送することが可能な大規模空間除菌システムを提供することができる。
【0124】
また、第一液位h1よりも低い第三液位h3を検知する停止センサ16を備え、停止センサ16が第三液位h3を下回ったことを検知すると送風機13及び霧化デバイス12の動作を停止するため、万が一、第一液位h1を下回り第三液位h3に至った場合、空焚きの防止ができる。また、停止センサ16が液位センサ15とは別に設けられるため、仮に液位センサ15が故障したとしても、停止センサ16を用いることで、危険な空焚き状態となることを未然に防ぐことができる。
【0125】
また、液位センサ15が霧化タンク11の外部に接続されているため、超音波振動子の動作に伴う霧化タンク11内における液面の局所的な変動による影響を低減して正確な液位を計測することができる。
【0126】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0127】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0128】
この発明の噴霧装置は、様々な種類の液体を噴霧する、種々の噴霧装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 生成部
10 霧化ユニット
11 霧化タンク
11a 流入口
11b 送風口
11c 送出口
11d 天面
12 霧化デバイス
12a、b・・・ 超音波振動子
13 送風機
14a、b バッフルプレート
15 液位センサ
16 停止センサ
17 送出部材
20 合流管
30 筐体
2 供給部
3 制御部