(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090636
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20230622BHJP
C09D 11/16 20140101ALI20230622BHJP
【FI】
B43K8/02
C09D11/16
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172667
(22)【出願日】2022-10-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2021205416
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】望月 千裕
(72)【発明者】
【氏名】佐川 弥
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350KF05
2C350NA05
4J039BC19
4J039BC33
4J039BE15
4J039CA03
4J039EA48
4J039GA26
(57)【要約】
【課題】 キャップが装着される筆記具であっても、キャップ内での結露の発生もない筆記具品質、商品価値の高い筆記具を提供する。
【解決手段】 少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒10と、該軸筒10の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先20と、該軸筒10のペン先20側に着脱自在に装着されるキャップ60と、を備えた筆記具Aであって、前記水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることを特徴とする筆記具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、
前記水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記水性インクには、更に、水溶性ベタイン類を含有することを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記ペン先は、筆記方向を視認することができる窓部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。
【請求項4】
キャップの内面に親水化処理を施したことを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップが装着される筆記具に関し、キャップ内での結露の発生もない筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マーキングペンタイプの筆記具等にあっては、近年、一部に、ペン先を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップが使用されているものが知られている。このタイプの筆記具は、温度変化や温度勾配のある環境下では、キャップ内に結露液が溜まり、見栄えが悪いという課題が生じることがあった。
この課題は、大きな筆記部を有するペン先を有し、かつ透明なキャップなどを用いる筆記具では、固有の課題であった。
【0003】
従来において、キャップ内の結露を抑えるためには、キャップの内容積を小さくして、不透明材料を用いる(目立たない)ことが一般的であったが、筆記方向を視認できる窓部を有するペン先などを見せるために、透明材料で構成されたキャップを用いた筆記具などでは、キャップを不透明材料で構成する対応は難しいのが現状であった。特に、油溶性染料、水溶性染料、顔料を色材に用いたインクを搭載した筆記具では、結露液の着色が顕著なことがあり、対策が必要であった。
【0004】
そこで、筆記具の水分蒸発防止兼結露防止装置として、軸筒内に水性インキを収容したインキ筒を内蔵する筆記具において、軸筒内に連続気孔を有する吸液体を装着すると共に、該吸液体に常温に於ける密閉雰囲気に75~95%の相対湿度を与える塩の飽和水溶液を吸液せしめたことを特徴とする筆記具の水分蒸発防止兼結露防止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、透明性を有する材料により形成したキャップなどの部材を用いた筆記具でありながら、筆記具により形成される筆跡が初期から退色や褐変を生じて見栄えを損なうことがなく、ペン先形状や筆記具内のインキの色調や残量を視認できる筆記具を提供するために、(イ)電子供与性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性材料、フォトクロミック有機材料、染料、蛍光顔料から選ばれる着色剤を含むインキと、前記インキを収容したインキ吸蔵体と、内部に前記インキ吸蔵体を収容した軸筒と、前記インキが吐出可能なペン先と、前記ペン先を保持する保持体と、前記軸筒のペン先側に着脱自在に取り付けられ透明性を有する材料にて形成されたキャップと、を備えた筆記具であって、前記キャップに紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含有、又は前記キャップ表面に紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含む光安定層を設けてなる筆記具、並びに、前記キャップに光安定剤を含有又は前記光安定層中に光安定剤を含有すること、前記保持体は透明性を有する材料にて形成すること、該保持体に紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含有、又は前記保持体の表面に紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含む光安定層を設けてなることなどが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭61-40551号公報(実用新案登録請求の範囲、第1図等)
【特許文献2】特開2020-29672号公報(特許請求の範囲、
図1~
図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1の筆記具の水分蒸発防止兼結露防止装置は、軸筒内に連続気孔を有する特定物性の吸液体を装着して水分蒸発防止兼結露防止を行うものであり、本発明の近接技術を開示するものであるが、本発明はインキ組成・物性等の点から、結露等の抑制や防止、並びに、保管時のドライアップを更に効果的に防止するものであり、本発明と上記特許文献1とは技術思想が相違するものである。
また、上記特許文献2の筆記具は、ペン先形状や筆記具内のインキの色調や残量を視認するために、透明性を有する材料にてキャップや保持体を形成する場合に、該キャップや保持体に紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含有、又はキャップや保持体の表面に光安定層を形成したりするものであり、本発明とは、発明の課題及び技術思想が相違するものである。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状などに鑑み、これを解消しようとするものであり、キャップが装着される筆記具であっても、キャップ内での結露の発生もなく、筆記具品質、商品価値の高い筆記具を提供すること、また、保管時のドライアップを更に効果的に防止することができる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクを特定物性・特定の配合組成等とすることにより、上記目的の各筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明の筆記具は、少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることを特徴とする。
前記水性インクには、更に、水溶性ベタイン類を含有することが好ましい。
前記ペン先は、筆記方向を視認することができる窓部を有することが好ましい。
前記キャップの内面に親水化処理を施すことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャップが装着される筆記具であっても、キャップ内での結露の発生もない筆記具品質、商品価値の高い筆記具が提供される。
また、キャップ内面を親水化処理し、その接触角を低下させ、その濡れ性を向上させることで、キャップ内面に結露液が広がり表面積が増え、結露液の揮発が促進されることにより、保管時(キャップをしている状態)での、ペン先のドライアップを更に抑制できる筆記具が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のキャップを備えた筆記具の実施形態の一例(第1実施形態)を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視縦断面図である。
【
図2】
図1の筆記具のペン先の拡大斜視図であり、(a)は一方向から見たペン先の拡大斜視図、(b)は(a)の180°展開した方向から見たペン先の拡大斜視図である。
【
図3】本発明のキャップを備えた筆記具の実施形態の他例(第2実施形態)を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視縦断面図である。
【
図4】
図3の筆記具のペン先の拡大斜視図であり、(a)は一方向から見たペン先の拡大斜視図、(b)は(a)の180°展開した方向から見たペン先の拡大斜視図である。
【
図5】本発明のキャップを備えた筆記具の実施形態の他例(第3実施形態)を示す図面であり、(a)は正面図、(b)は中央縦断面図、(b)は中央横断面図である。
【
図6】(a)は
図5の筆記具のキャップを取り外した状態の一例を示す図面であり、保持体が視認性を有する場合の前方側から見た斜視図であり、(b)は
図5の筆記具のキャップを取り外した状態の他例を示す図面であり、保持体が視認性を有しない場合の後方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の各実施形態を図面を参照しながら、詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0014】
<第1実施形態の筆記具:
図1~
図2>
本実施形態の筆記具は、
図1(a)~(c)に示すように、少なくとも、水性インクがインク吸蔵体15を介して内蔵される軸筒10と、該軸筒10の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先20と、該軸筒10のペン先20側に着脱自在に装着されるキャップ60と、を備えた筆記具Aであって、前記水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることを特徴とするものである。
【0015】
<水性インク>
本実施形態で用いる水性インクの一例としては、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることが必要であり、この蒸気圧の範囲内であれば、水性インクの配合組成は特に限定されず、例えば、少なくとも、色材と、水とを含有することが好ましい。
【0016】
<色材>
用いることができる色材としては、筆記具用に用いられるものが挙げられ、例えば、水に溶解もしくは分散する染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、着色樹脂微粒子又はその分散液〔顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、中空樹脂顔料(粒子)などを含む〕、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性顔料等、およびこれらの複合顔料を使用することができる。
染料としては、例えば、蛍光染料、水溶性染料、油溶性染料などを挙げることができる。
【0017】
用いることができる蛍光染料としては、発色性が良好であれば、特に限定はないが、例えば、ベーシックイエロー1、同40、ベーシックレッド 1、同1:1、同13、ベーシックバイオレット1、同7、同10、同11:1、ベーシックオレンジ22、ベーシックブルー7、ベーシックグリーン1、アシッドイエロー3、同7、アシッドレッド52、同77、同87、同92、アシッドブルー9、ディスパースイエロー121、同82、同83、ディスパースオレンジ11、ディスパースレッド58、ディスパースブルー7、ダイレクトイエロー85、ダイレクトオレンジ8、ダイレクトレッド9、ダイレクトブルー22、ダイレクトグリーン6、ソルベントイエロー44、ソルベントレッド49、ソルベントブルー5、ソルベントグリーン7などが挙げられる。特に、発色性、インキ安定性の点などから、前記蛍光染料の中でも、アゾメチン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系の蛍光染料などが好ましく用いられる。具体的には、アゾメチン系の蛍光染料としては、ベーシックイエロー1、同40、キサンテン系の蛍光染料としては、ベーシックレッド1:1、ベーシックバイオレット11:1、トリフェニルメタン系の蛍光染料としては、ベーシックバイオレット1などが特に好ましい蛍光染料として挙げられる。これらの染料は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
用いることができる油溶性染料としては、例えば、C.I.Solvent Black 7、同123、C.I.Solvent Blue 2、同25、同55、同70、C.I.Solvent Red 8、同49、同100、C.I.Solvent Violet 8、同21、C.I.Solvent Green 3、C.I.Solvent Yellow 21、同44、同61、C.I.Solvent Orange 37等が挙げられる。
【0019】
用いることができる水溶性染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、食用色素などが挙げられる。例えば、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドイエロー1、同7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同83、同87、同92、同94、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドバイオレット15、同17、同49、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同100、同103、同104、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、C.I.アシッドオレンジ56等の酸性染料、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、ローダミンF4G(C.I.45160)、ローダミン6GCP(C.I.45160)等の塩基性染料、
C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同41、同71、同86、同87、同106、同108、同199等の直接染料や、C.I.フードイエロー3等の食用色素等が挙げられる。
【0020】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー15、同17、C.I.ピグメントブルー17、同27、C.I.ピグメントレッド5、同22、同38、同48、同49、同53、同57、同81、同104、同146、同245、C.I.ピグメントイエロー1、同3、同12、同13、同14、同17、同34、同55、同74、同95、同166、同167、C.I.ピグメントオレンジ5、同13、同16、C.I.ピグメントバイオレット1、同3、同19、同23、同50、C.I.ピグメントグリーン7等の有機系顔料が挙げられる。
【0021】
着色樹脂微粒子又はその分散液としては、例えば、少なくとも、酸性官能基として水への溶解度が10質量%以下のカルボキシル基含有ビニルモノマー(A)と、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2~18の直鎖若しくは環状アルコールとのエステルモノマー(B)と、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子が水に分散されている着色樹脂微粒子の分散液や、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子であって、前記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量が着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であると共に、前記塩基性染料又は油溶性染料の含有量が全ポリマー成分に対して、15質量%以上である着色樹脂微粒子が水に分散されている着色樹脂微粒子の分散液などが挙げられる。
【0022】
熱変色性顔料としては、発色剤として機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された熱変色性顔料などを挙げることができる。
光変色性顔料としては、例えば、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、テルペンフェノール樹脂などの樹脂とにより構成される光変色性粒子や、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された光変色性顔料などを挙げることができる。
なお、本発明(実施例等含む)において、「平均粒子径」は、粒子径分布解析装置HR9320-X100(日機装株式会社製)を用いて、屈折率1.81、体積基準にて算出されたD50の値である。
【0023】
これらの色材は、各単独で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)使用することができる。
これらの色材の(合計)(固形分)含有量は、水性インク全量に対して、好ましくは、0.1~40質量%、更に好ましくは、1~30質量%とすることが望ましい。
この色材の含有量を0.1質量%以上とすることにより、十分な描線濃度を得ることができ、一方、40質量%以下とすることにより、粘度上昇を抑制し、インクの流動性が良好となるので好ましい。
【0024】
<他の成分>
本実施形態の水性インクには、上記色材、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、50℃での蒸気圧が、10.3~12.5kPaとなる範囲の水性インクであれば、本発明の効果を有する範囲において、必要に応じて、水性インクに通常用いられる各成分、例えば、分散剤、界面活性剤、グリコール類、グリコールエーテル類、親水性多価アルコール類、水溶性ベタイン類、粘性調整剤、固着樹脂、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤、pH調整剤などを含有することができる。
【0025】
用いることができる分散剤及び固着樹脂として、水溶性樹脂を含有することができる。例えば、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ウレタン系樹脂等の水溶性樹脂、また、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン等の樹脂エマルジョン等から、少なくとも1種を選択することができる。
【0026】
用いることができる界面活性剤として、特に限定はしないが、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤から選択される少なくとも一種の界面活性剤を用いることできる。
用いることができるグリコール類、グリコールエーテル類として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
親水性多価アルコール類としては、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどを用いることができる。
水溶性ベタイン類(両性化合物)は、隣接しない正電荷と負電荷を同一分子内に持ち、分子全体としては電荷を持たない化合物をいう。正電荷部位は、第4級アンモニウムカチオンが好ましい。このようなベタイン類としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリン、及びグルタミン酸ベタインなどが挙げられる。このなかでも、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタイン、カルニチンが好ましく、トリメチルグリシンがより好ましい。このような水溶性ベタイン類を用いることにより、更に本発明の効果をより向上する傾向にある。なお、水溶性ベタイン類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
用いることができる粘性調整剤として、多糖類等の天然高分子、合成高分子を用いることができる。多糖類としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウ
ェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、さらにメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、デンプングリコール酸及びその塩を用いることができる。合成高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニル-ポリビニルピロリドン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体及びその塩、イソブチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩を用いることができる。
【0028】
用いることができる防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンゾイソチアゾリン、ベンズイミダゾール系化合物等を用いることができる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類等を用いることができる。
用いることができるpH調整剤としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア、または、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物等を用いることができる。
【0029】
本実施形態において、水性インクは、少なくとも、上記色材、水を含み、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaとなる組成であれば良く、好ましい実施形態としては、上述のグリコール類のほか、多価アルコール(ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン)、水溶性ベタイン類(両性化合物)である、トリメチルグリシンなど(種類、配合量など)を好適に組み合わせることにより、上記50℃の蒸気圧が10.3~12.5kPaとなる水性インクを好ましく調整することができる。
本実施形態(後述する実施例等も含む)において、「50℃での蒸気圧」とは、静止法で測定した値をいう。
この50℃での蒸気圧が10.3~12.3kPaの水性インク、好ましくは、50℃での蒸気圧が10.3~12.0kPa、特に好ましくは、50℃での蒸気圧が10.3~11.1kPaを用いることにより、後述するように、キャップが装着される筆記具であっても、キャップ内での結露の発生もない特有の効果を奏するものとなる。
この水性インクの50℃での蒸気圧が10.3kPa未満では、インク粘性が高まり、正常に筆記できない、および筆記描線の乾燥性が低下することとなり、一方、12.3kPa超過では、結露が抑えられないおよび、キャップオフ時のペン先のドライアップの課題があり、好ましくない。
【0030】
本実施形態の水性インクは、少なくとも、上記色材、水、その他の各成分を筆記具用インク(マーキングペン用等)の用途に応じて適宜組み合わせて、また、好適な配合量となるように組み合わせて(上記好ましい実施形態を含む)、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaとなる範囲となる組成の筆記具用の水性インクが得られる。
また、本実施形態の水性インクのpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0031】
<第1実施形態の筆記具:具体的構成>
図1(a)は、本実施形態のキャップを備えた筆記具の平面図、(b)はその正面図、(c)はその正面視縦断面図、
図2は
図1の筆記具のペン先の拡大斜視図であり、(a)は一方向から見たペン先の拡大斜視図、(b)は(a)の180°展開した方向から見たペン先の拡大斜視図である。
本実施形態の筆記具Aは、上記特性の水性インクを搭載したものであり、
図1(a)~(c)に示すように、軸筒(筆記具本体)10のインク吸蔵体15から供給される水性インクを誘導し、かつ筆記方向を視認することができる窓部(視認部)を有するペン先20を備えると共に、このペン先20の反対側にも棒状のポリアセタール製のペン先50を備えたツインタイプの筆記具となっている。また、筆記具本体10の両側には、着脱自在となるペン先20を保護するクリップ部60aを有するキャップ60と、ペン先50を保護するキャップ70とが取り付けられている。
【0032】
軸筒10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、上記特性の水性インクを含浸したインク吸蔵体15を収容する筒状体からなると共に、図面上、右側となる一端側は細字タイプの棒状のペン先50を保持する保持具55を嵌合により固着するための嵌合部を有する保持部11となっており、左側となる他端には、筆記方向を視認することができる窓部となる視認部を有するペン先20を固着する先軸16が取り付けられている。
軸筒10は、例えば、ポリプロピレン等からなる樹脂を使用して筒状に成形され、筆記具本体(軸体)として機能する。軸筒10は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。
【0033】
インク吸蔵体15は、上記特性の50℃での蒸気圧が、10.3~12.5kPaである水性インクを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体15は、筆記具本体となる軸筒10内に収容保持されている。
【0034】
ペン先20は、
図2(a)及び(b)に示すように、少なくとも筆記部25を有する筆記芯30と、視認部を有する保持体40とにより構成されている。筆記部25を有する筆記芯30は、後述する保持体40に接着、溶着、嵌合等により取り付けられるものである。
筆記芯30は、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となった筆記部25と、該筆記部25以外は、筆記部25の両端部から薄板体(シート体)31、31とを有し、これらが一体に連設されており、外形が略U字状(コ字状も含む)に形成され、該薄板体31,31の断面は矩形形状となっている。
この筆記芯30は、軸筒10内に吸蔵される上述の蒸気圧特性の水性インクを効率よく、薄板体31,31を介して筆記部25へインクを誘導(供給)するものであれば特に限定されず、例えば、不織布、織物あるいは編物などの布帛、あるいは、通液性発泡体、焼結体などの通液性を有する素材から構成されるものが挙げられる。なお、筆記部25を含む筆記芯30は、一種類の素材から構成できるが、複数の素材を積層したりするなど組み合わせることで構成したり、また、筆記部25と該筆記部25以外を別部材同士で連結や結合等して構成してもよい。
【0035】
筆記部25を有する筆記芯30の形状、厚さなどは、保持体40への取り付け態様、筆記部25の形状、視認部43の視認部面積の最大化、インクを効率よく筆記部へ流出(供給)せしめる点等から設定されるものであり、好ましくは、幅方向長さ、長手方向長さは筆記芯30の薄板体31、31を固着する後述する保持体40の取付面の幅方向長さ、周面の長さとなるものであり、インクを効率よく筆記部25へ流出せしめる好適な長さがそれぞれ設定される。また、筆記芯30の筆記部25以外の薄板体31、31の厚さは、視認部43の視認部面積の最大化する点などから、0.3~3.0mmであるのが好ましく、0.5~1.0mmであるのが最も好ましい。
【0036】
筆記部25は、本実施形態においては筆記芯30の薄板体31、31と一体に構成されるものであり、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっており、この傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、この筆記部25は、描線幅が太いものであり、好ましくは、描線幅は1mm以上、更に好ましくは、描線幅は2mm以上の描線幅となる筆記部が望ましい。
本実施形態の筆記部25を含む筆記芯30は、プラスチック粉末を焼結した焼結芯から一体に構成されている。
【0037】
上記実施形態では、筆記芯30の筆記部25と薄板体31、31を同じ素材で一体構成したが、筆記部25と薄板体31、31とを別部材で構成し、これらを連結、結合、当接等しても良いものである。筆記部25を、例えば、気孔を有する多孔質で形成されたものが挙げられ、具体的には、スポンジ体、焼結体、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体、ポーラス体などを挙げることができる。多孔体を形成する材料としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などを用いることができ、具体的には、筆記部25を各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結体から構成し、薄板体31、31を、例えば、不織布、織物あるいは編物などの布帛、あるいは、通液性発泡体などの通液性を有する素材から構成してもよいものである。
【0038】
保持体40は、上記筆記芯30の筆記部25、薄板体31、31を固定して、筆記具本体10の先軸16先端開口部に固着されるものであり、筆記方向を視認することができる視認部(可視部)43を有するものである。
また、この保持体40には、前記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分(薄板状体31、31)を断面矩形形状としており、該保持体40の前端部となる視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aに形成されている。
上記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができ、視認部43の面積を従来よりも更に広く見せることができることとなる。
【0039】
このように構成される保持体40全体は、硬質材料で構成されており、例えば、視認性を有する硬質材料、例えば、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものである。視認可能となるゴム弾性を有しない樹脂としては、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、視認部43で筆記方向に書いてある文字を有効に視認できることとなる。なお、視認部43(傾斜状の屈折面43a、43aを含む)だけを視認性を有する材料で構成してもよい。なお、可視光線透過率(透過度)は多光源分光測色計〔スガ試験機社製、(MSC-5N)〕にて反射率を測定することで求めることができる。
また、保持体40は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0040】
この保持体40のコ字型状(U字型状)の保持溝の取付面に筆記芯30の薄板体31、31が接着剤による接着、溶着等により固着され、筆記部25に固着されている。
本実施形態では、視認部43の視認面積の最大化を図る点などから、上記薄板体31、31の厚さは、筆記部25の厚さより薄くなっており、また、インク誘導部の幅が保持体40の視認部43の幅の90%未満、更に好ましくは、50~80%であることが望ましい。
【0041】
ペン先50は、
図1(a)~(c)に示すように、細字タイプの棒状のペン先であり、断面が円形形状となるものであり、ペン先50の後端部(インク吸蔵体側)がインク吸蔵体15内に挿入されており、毛管力によりインク吸蔵体の上述の蒸気圧特性の水性インクがペン先50に供給されるものである。
このペン先50は、多孔質部材から構成されるものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂などのプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などからなるものである。
好ましいペン先50としては、繊維束芯、繊維芯、焼結芯、フェルト芯、スポンジ芯、無機多孔体芯であり、特に好ましくは、変形成形性の点、生産性の点から、繊維芯が望ましい。また、用いるペン先50の気孔率、大きさ、硬度などは、インク種、筆記具の種類等により、変動するものであり、例えば、気孔率では30~60%とすることが好ましい。また、本発明において、「気孔率」は、下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する筆記芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、筆記芯に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積を筆記芯の気孔体積と同一として、下記式から、気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(ペン先50の見掛け体積)×100
【0042】
本実施形態において、
図1(a)~(c)に示すように、軸筒10の一方のペン先20側の外周部と、他方のペン先50側の外周部に嵌合により着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されたクリップ60aを有するキャップ60、内キャップ70aを有するキャップ70が取り付けられている。
このキャップ60、キャップ70は、例えば、透明性を有しない材料(非視認性の材料)や、透明性(視認性)を有する材料などで構成することができる。
透明性を有しない材料(非視認性の材料)としては、例えば、透明性(非視認性)を有しない樹脂や、透明性(視認性)を有する樹脂にカーボンブラック等の非視認性の着色剤を使用して材料等が挙げられる。
透明性(視認性)を有する材料としては、例えば、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものである。透明性(視認性)を有するゴム弾性を有しない樹脂としては、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、外部からそれぞれのキャップ60、キャップ70を介してペン先20、50を見る(視認する)ことができるものとなっている。
なお、キャップ60、キャップ70の全体を透明性を有しない材料(非視認性の材料)又は透明性(視認性)を有する材料で形成する他、ペン先20、50を見たり(視認したり)、インクの色調を見たり(確認)できる形態の場合、キャップ60、キャップ70の全体を透明性(視認性)を有する材料でなくても、一部に透明性(視認性)を有する材料で形成してもよい。
また、本実施形態における上記特性の水性インクを熱変色性インクとした場合は、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%未満の熱可塑性エラストマーをキャップ60の頂部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易かつ低摩耗な摩擦体とすることで、摩擦時に消しカスの発生を少なくすることで周囲への汚れを防ぐことができる。
【0043】
本実施形態では、キャップ60の内面61、及び/又は、先軸16の表面17を、親水化処理を施して、親水性とすることが好ましい。このキャップ60内面、及び/又は、先軸16表面を、親水化処理し、その接触角を低下させ、その濡れ性を向上させることで、キャップ60内面や、先軸16表面に結露液が広がり表面積が増え、結露液の揮発が促進されることにより、保管時(キャップ60をしている状態)での、ペン先40のドライアップを抑制できる筆記具が得られるものとなる。更に、キャップ70内面にも親水化処理を施してペン先50のドライアップを抑制してもよいものである。
【0044】
親水化処理としては、例えば、水との接触角が90°未満の材料でコーティングするコーティング剤や、プラズマ処理、オゾン処理、コロナ処理、フレイム処理、電子線によるラジカル活性化処理などの活性化処理、親水化剤の塗布などが挙げられる。
コーティング剤としては、例えば、下記の活性剤溶液、多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、リン酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の多環フェニル型非イオン界面活性剤及びその硫酸塩等のイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のアルキルフェノール型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキル(C10~C18)エステル等の直鎖炭化水素型非イオン性界面活性剤、ソルビタン誘導体などにより親水化処理を施すことができる。
上記プラズマ処理、オゾン処理、コロナ処理、フレイム処理、電子線によるラジカル活性化処理などの活性化処理方法は、キャップの材質等によって適宜選択される。活性化処理の具体的な方法としては、例えば、真空から大気圧の雰囲気下で、コロナまたはプラズマでキャップ60の内面、先軸16の表面を処理する方法などが挙げられる。
親水化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体などの水溶性樹脂、無機金属を含むシリケート系親水化剤などが挙げられる。
更に、好ましくは、キャップ60内面、先軸16表面との水との接触角が90°未満であることが望ましく、上記親水化処理を好適に選択することにより行うことができる。
また、この接触角が90°未満には、キャップ60、先軸16の材質を水との接触角が90°未満の材料で成形されたものでもよい。この特性の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、プリブチレンテレフタレート(PBT)、66ナイロンなどが挙げられ、これらの材質で一体成形されたものや、二色成形されたキャップ60、先軸16が挙げられる。
【0045】
このように構成される筆記具Aでは、筆記具本体10内に上記蒸気圧特性の水性インクを吸蔵したインク吸蔵体15を挿入して保持せしめ、先端側は先軸16を介して上記構成のペン先20を順次嵌合等により固着せしめ、他端側はペン先50を固着せしめた保持具55を嵌合により固着せしめることにより、簡単にツインタイプの筆記具Aを作製することができ、インク吸蔵体15に吸蔵された上述の蒸気圧特性の水性インクは毛管力によりペン先20では筆記芯30の薄板体31、31を介して筆記部25、並びに、ペン先50に効率的に供給され、筆記に供されるものとなる。
【0046】
本実施形態のマーキングペンタイプの筆記具Aでは、透明性を有しない材料(非視認性)を有する材料で構成されるキャップ60(キャップ70を含む)を使用した場合、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たる場所や、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれる場所、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、用いる水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaを用いることにより、キャップ60内での結露の発生もなく、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる。
また、ペン先20を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップ60(キッャップ70を含む)が使用され、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たる場所や、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれる場所、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、用いる水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaを用いることにより、キャップ60内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、ペン先20、50の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ60、70を通して視認することができるため筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる(この点については、更に後述する実施例等で詳述する)。
【0047】
更に、キャップ60の内面61を、親水化処理を施すことにより親水性とすることで、結露液とキャップ60の内面61との接触角を低下させて結露液が広がり表面積が増えることで、結露液の揮発を促進させられる。また、結露液がキャップ60の内面61などで広がることで、加温部に結露液が接触することができ、結露液の揮発が促進され、保管時(キャップをしている状態)での、ペン先のドライアップを抑制できることとなる。
ペン芯が温度変化、温度分布にさらされることで、ペン先からインクが揮発し、キャップ60内に結露していくことで、ペン先40からのインク揮発が加速される。キャップ60内の結露液滴を速やかに揮発させ、ペン先60中のインクに復元させることができる。これにより、結露液滴が速やかに揮発することができ、保管時(キャップをしている状態)での、ペン先のドライアップを抑制できる。
さらに、保管時のドライアップのために加えていた、インク中への蒸発抑制材料が不要となり、インクの乾燥性、固着性、耐裏抜け性を高めることができる。
【0048】
本実施形態のマーキングペンタイプの筆記具Aにあっても、ペン先20を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップ60(キッャップ70を含む、以下同様)を用いた場合には、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たる場所や、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれる場所、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、用いる水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaを用いることにより、キャップ60内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、ペン先20、50の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ60、70を通して視認することができるため筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる(この点については、更に後述する実施例等で詳述する)。
【0049】
また、この筆記具Aでは、ペン先50は従来の汎用のペン先と同様であるので、ペン先20の機能等を説明すると、ペン先20は、
図1、
図2に示すように、筆記方向を視認することができる視認部(窓部)43を有するものであり、インク吸蔵体15の上述の蒸気圧特性の水性インクは筆記芯30の薄板体31、31の毛細力により筆記部25に到達し、筆記に供されるものとなる。筆記の際に、視認部(窓部)43で視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものとなる。
【0050】
更に、ペン先20は、インク吸蔵体15からのインクの誘導を筆記部25の厚さよりも薄く、流出性のある筆記芯30の薄板体31、31を介して筆記部25まで誘導するものであり、また、この薄板体31、31はシート状の多孔体から構成されているので、インク流出性が良好であり、太く設計する必要がなく、視認部43が阻害されず、また、上記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができるので、右利きで左から右方向に筆記する際に、視認部43で筆記方向を視認しながら筆記部25で描線を引くことなどができ、また、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性の薄板体31、31により一体構成の筆記部25へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、視認部43の有効面積の最大化を達成することができる筆記具が得られるものとなる。
【0051】
<第2実施形態の筆記具:全体構成:
図3~
図4>
本第2実施形態の筆記具は、
図3に示すように、少なくとも、水性インクがインク吸蔵体15を介して内蔵される軸筒10と、該軸筒10の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先20と、該軸筒10のペン先20側に着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されたキャップ60と、を備えた筆記具Bであって、前記水性インクは、上記第1実施形態と同様に、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることを特徴とするものである。
用いる水性インクは、上記第1実施形態で詳述した蒸気圧特性の水性インクを用いるものであるので、その説明を省略する。
【0052】
<第2実施形態の筆記具の具体的構成>
図3(a)は、本第2実施形態のキャップを備えた筆記具の平面図、(b)はその正面図、(c)はその正面視縦断面図、
図4は
図1の筆記具のペン先の拡大斜視図であり、(a)は一方向から見たペン先の拡大斜視図、(b)は(a)の180°展開した方向から見たペン先の拡大斜視図である。
本実施形態の筆記具は、
図3に示すように、少なくとも、上記配合組成の水性インクがインク吸蔵体15に内蔵される軸筒10と、該軸筒10の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先20と、該軸筒10のペン先20側に着脱自在に装着される透明性を有する材料又は透明性有しない材料にて形成されたキャップ60と、を備えた筆記具Bであって、前記水性インクは、上記第1実施形態で詳述した蒸気圧特性の水性インクを用いるものである。
なお、上記第1実施形態の筆記具Aと同様の構成、機能を有する場合は、以下の第2実施形態において、各図面等に同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
第2の実施形態の筆記具Bは、上記実施形態の筆記芯30の外形がU字状のものを用いたが、第2の実施形態では、
図3、
図4に示すように、外形がL字状の筆記芯35を保持体40に装着した点で相違するものである。
第2の実施形態の筆記芯35の筆記部36は、上記実施形態の筆記部と同様の形状となっており、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっている。筆記芯35では、筆記部36の端部側から薄板体37が一体に連設されており、外形がL字状に形成され、該薄板体37の断面は矩形形状となっている。
保持体40は、
図4に示すように、上記筆記芯35の筆記部36、薄板体37を固定して、筆記具本体10の先軸16先端開口部に固着されるものであり、上記
図1の実施形態では薄板体31、31を取り付けるための取付面を上下に形成したものであったが、本実施形態では、外形がL字状であるので、保持体40の下側のみに取り付ける形態となっている。
【0054】
本第2実施形態の筆記具Bにあっても、ペン先20を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップ60を使用した場合には、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たるところや、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれるところや、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、用いる水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることにより、キャップ60内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、ペン先20、50の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ60、70を通して視認することができるため筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる(この点については、更に後述する実施例等で詳述する)。
【0055】
また、この第2実施形態の筆記具Bでは、筆記芯35は、外形がL字状であるので、
図1の外形がU字状のものよりも、視認部43の上面側には薄板体31を装着しない構造となるので、遮るものはなく、その分視認部の面積を拡大でき、また、上記筆記芯35の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、底面側は断面積に対する視認部43の幅を広げることができ、しかも、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができ、視認部43の面積を
図1よりも更に広く見せることができることとなる。
【0056】
この第2実施形態のペン先20は、
図1の筆記具と同様に取り付けられるものであり、筆記方向を視認することができる視認部(窓部)43を有するものであり、インク吸蔵体15の水性インクは筆記芯36の毛細力により筆記部35に到達し、筆記に供されるものとなる。筆記の際に、視認部(窓部)43で視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものとなる。
【0057】
第2実施形態では、ペン先20は、インク吸蔵体15からの水性インクの誘導を筆記部35の厚さよりも薄く、流出性のある筆記芯35の薄板体37を介して筆記部36まで誘導するものであり、また、この薄板体37は上記
図1の実施形態よりもインク供給力に優れた素材を用いたものから構成されているので、インク流出性が良好であり、太く設計する必要がなく、視認部43が阻害されず、また、上記筆記芯35の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができるので、右利きで左から右方向に筆記する際に、視認部43で筆記方向を視認しながら筆記部36で描線を引くことなどができ、また、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性の薄板体37により一体構成の筆記部36へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、
図1の実施形態よりも視認部43の有効面積の最大化を達成することができる筆記具が得られるものとなる。
上記第1実施子形態と同様に、キャップ60、70の内面61、71に親水化処理を施してもよい。
【0058】
<第3実施形態の筆記具:全体構成:
図5~
図6>
本第3実施形態の筆記具Cは、マーキングペンタイプの筆記具であり、少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒80と、該軸筒80の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先90と、該軸筒80のペン先90側に着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されたキャップ65と、を備えた筆記具Cであって、前記水性インクは、上記第1実施形態の50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaである水性インクであることを特徴とするものである。
用いる水性インクは、上記第1実施形態で詳述した蒸気圧特性の水性インクを用いるものであるので、その説明を省略する。
【0059】
本第3実施形態の筆記具Cは、
図5~
図6に示すように、筆記具本体を構成する軸筒80、インク吸蔵体85、インク誘導芯95、ペン先90、キャップ体65を備えている。
軸筒80は、上記第1実施形態の軸筒10と同様の材料などで構成されるものであり、上記特性の水性インクを含浸したインク吸蔵体85を収容する有底筒状の後軸81と、ペン先40を固着する先軸86とを有している。
後軸81は、例えば、PP等からなる合成樹脂を使用して長い有底楕円筒形に成形され、筆記具の本体(軸筒)として機能する。この後軸81は、
図5(a)~(c)に示すように、後端側内部にインク吸蔵体85の後端部を保持する保持片からなる保持部材82が設けられており、後軸全体及び後述する先軸は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。また、後軸81のペン先側の開口部に先軸86が嵌合等により固着される構造となっている。
【0060】
インク吸蔵体85は、上記第1実施形態のインク吸蔵体15と同様の材料などで構成されるものである。
【0061】
インク誘導芯95は、インク吸蔵体85の水性インクを後述する保持体96に形成した挿着孔97内に挿着されるものであり、インク吸蔵体15,85と同様に繊維束、フェルト等の繊維束を加工した繊維束芯、または、硬質スポンジ、樹脂粒子焼結体等からなる樹脂粒子多孔体、スライバー芯等の連続気孔(流路)を有するものであり、インク吸蔵体85に含浸された上述の蒸気圧特性又は配合特性の水性インクをインク誘導芯95を介してペン先90の筆記部となるペン芯98へ供給できるものであれば、特にその形状、構造等は限定されるものでない。このインク誘導芯95の断面形状としては、例えば、円、楕円、正方形、長方形、台形、平行四辺形、ひし形、カマボコ形、半月形の形状が挙げられ、本実施形態では、断面形状が円形状となっている。
【0062】
ペン先90は、筆記部となるペン芯98と、該ペン芯98を保持し、筆記部にインクを供給するための上記インク誘導芯95を有する保持体96とを備えている。
【0063】
このように構成されるペン先90全体又は保持体96は、視認性を有する材料、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の材料から構成されるものであり、可視光線透過率が50%以上となる材料から構成されることが好ましい。
また、ペン先90全体又は保持体96は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成することができ、2種類以上の材料で構成する場合は、少なくとも一つが可視光線透過率50%以上となる材料から構成されているものが好ましく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0064】
図6(a)は、本実施形態の筆記具Cにおいてキャップを取り外した状態の一例を示し、保持体96が視認性を有する材料で構成された図面であり、
図6(b)は保持体96が視認性を有しない材料で構成された図面である。
本本実施形態の筆記具Cでは、筆記具の軸筒を構成する後軸81内にインクを吸蔵したインク吸蔵体85、インク誘導芯95を保持し、ペン芯98を取り付けたペン先90、先軸86を順次嵌合等により取り付けることにより、簡単に筆記具Cを作製することができるものである。
【0065】
キャップ65は、先軸86に嵌合等により着脱自在に取り付けられるものであり、ペン芯98を保護する内キャップ部66と、筒状型の外キャップ部67とから構成されている。また、内キャップ部66と、外キャップ部67との付け根箇所には、誤飲防止用のキャップ通気孔68が形成れている。さらに、上記内キャップ部66は内面66aに上述の親水化処理を施すと共に、曲面とすることで内キャップ66内部の水滴のダマを防ぐことができる構造となっている。
このキャップ65は、上記第1実施形態のキャップと同様に、透明性(視認性)を有する材料で、可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、外部からキャップ65を介してペン先90を見る(視認する)ことができるものとなっている。
【0066】
このように構成される本実施形態の筆記具Cでは、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に、キャップ65内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、ペン先90の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ65を通して視認することができるため筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる。
また、インク吸蔵体85からの上記特性の水性インクをインク誘導芯95、ペン芯98へと毛管力作用により連続的にかつ効率良く供給できるので、適切なインク流量を確保して筆記時の掠れを防止し、筆記流量の安定とインク吸蔵体85の水性インクを十分に使い切ることができる筆記具が得られるものである。
更に、ペン先90は、上述の如く、筆記部となるペン芯98と、該ペン芯98を保持し、筆記部にインクを供給するためのインク誘導芯95を少なくとも1つ有する保持体96を備えたものであり、インク吸蔵体85に含まれる水性インクを、保持体96に設けたインク誘導芯95を介して供給する共に、上記保持体96が、
図6(a)に示すように、視認性を有する材料で構成しているので、当該保持体96においてインク誘導芯95以外の全面(全体)が、筆記方向を視認できる視認部となるものであり、視認部の面積比率を、先軸86先端部より突出したペン先の40%以上とすることができ、好ましくは、ペン先の保持体96側面の視認部も、40%以上とし、更に、インク誘導部97を保持体96の長手方向中央部に形成し、インク誘導部97の幅方向の長さ、直径、断面積等を好ましい所定の範囲に好適に設定することにより、従来よりも筆記方向に書いてある文字を確実に読むことができる十分な視認性が付与することができると共に、終筆まで使用可能な筆記具が提供されるものとなる。
また、本実施形態では、ペン芯98が凸曲面となっており、筆記角が安定しなくとも太さの変化を少ない安定して筆記できる構成となっている。また、インク誘導芯95は保持体96の挿着孔97に挿入され、保持体96の中央部に配置しない構成、保持体96の中央部より外側に配置(挿着孔97を偏在させる配置)とすることで保持体96が透明性(視認性)を有する場合、視認面積が広くなったようにみせることができる。なお、
図6(b)は、保持体96が視認性を有しない材料で構成された図面であり、この場合は、インク誘導芯95は視認できない構造となっている。
【0067】
上記各実施形態の筆記具A~Cでは、インク吸蔵体15、85に上記第1実施形態の蒸気圧特性の水性インクを吸蔵するタイプを説明したが、軸筒のペン先側に着脱自在に装着される透明性(視認性)を有する材料又は透明性を有しない(非視認性の)材料にて形成されたキャップを備えるものであれば、直液式の筆記具、例えば、軸筒内に直接本発明に用いる蒸気圧特性の水性インクを収容し、中継芯を介してペン先の筆記部に水性インクを供給するコレクター形式などの筆記具であってもよいものである。
また、上記実施形態A~Cの各筆記具では、ペン先20、90は筆記方向が視認できる窓部を有するものであったが、軸筒のペン先側に着脱自在に装着される透明性(視認性)を有する材料又は透明性を有しない(非視認性の)材料にて形成されたキャップを備えるものであれば、ペン先の形状、構造は特に限定されないものである。
【実施例0068】
〔実施例1~10及び比較例1~2〕
下記表1に示す、配合処方にしたがって、常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。
また、得られた各筆記具用水性インク組成物について、下記構成の筆記具に搭載させた。得られた各筆記具を用いて、下記各評価方法により、結露の有無、筆記性能について、評価した。これらの結果を下記表1に表す。
【0069】
(筆記具の構成)
下記構成及び
図1~
図2に準拠するペン先、筆記具を使用した。ペン先、保持体等の寸法、物性等は下記に示すものを使用した。
【0070】
(ペン先20の構成)
アクリル樹脂製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC-5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕
視認部(窓部)43(四角形)の大きさ:10mm×8mm×5mm×5mm
視認部の幅:3mm
筆記芯30:薄板体31,31の構成:ポリエチレン製焼結芯、幅方向長さ:2mm、長手方向長さ:20mm、厚さ:0.5mm、筆記部25:ポリエチレン製焼結芯、気孔率:50%、4×3×6mm、厚さ=3mm、長手方向長さ=5mm
【0071】
インク吸蔵体15:PET繊維束、気孔率85%、φ6×80mm
筆記具本体10、キャップ60、70:ポリプロピレン(PP)製
ペン先50:ポリエステル製繊維束芯、気孔率60% 、φ2×40mm
キャップ60:ポリプロピレン(PP)製、透過度:70%
キャップ70:ポリプロピレン(PP)製、透過度:60%
【0072】
(結露の有無の評価方法)
得られた各筆記具を用いて、ホットカーペット上において9時間放置して、下記評価基準でキャップ60、70内の結露の有無を評価した。
評価基準:
A:結露なし。
B:少し曇っている。
C:大部分曇っている。
D:液滴が発生している。
E:液が溜まっている。
【0073】
(筆記性能の評価方法)
得られた各筆記具を用いて、PPC用紙に対し、25cmの直線筆記して、下記評価基準で筆記性能を評価した。
評価基準:
A:筆記描線に異常なし。
B:一部薄くなる箇所があるが、殆どの筆記描線には異常なし。
E:ほぼ掠れている。
【0074】
【0075】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1~10の各筆記具用水性インク組成物を搭載した筆記具は、本発明の範囲外となる比較例1~2に較べ、透明性を有する材料にて形成されたキャップが装着される筆記具であっても、筆記性能を損なうことなく、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることが確認された。
【0076】
また、実施例1~10の各筆記具は、
図1~
図2に準拠するものであり、インク吸蔵体15からのインクの誘導を筆記部25の厚さよりも薄く、流出性のある薄板体31,31で筆記部25まで誘導するものであり、また、この筆記部25、薄板体31,31を含む外形がU字状の筆記芯30は上記構成のポリエチレン製焼結芯から構成されているので、気孔率に対する毛管力の強さが大きく、しかも、その厚さは極めて薄くでき、インク流出性が良好であり、インク誘導部を太く設計する必要がなく、視認部43が阻害されず、また、上記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができるので、右利きで左から右方向に筆記する際に、視認部43で筆記方向を視認しながら筆記部25で描線を引くことなどができ、また、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性の薄板体31、31により一体構成の筆記部25へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、視認部43の有効面積の最大化を達成することができる筆記具が得られることが確認された。また、1mの高さから落下させた後でも、掠れることなく筆記できることが確認できた。
【0077】
実施例11~12の筆記具は、キャップの内面に親水化処理を施した。
上記で用いた筆記具のキャップ60、70において、下記方法でキャップ60、70の各内面に親水化処理を施した。
(親水化処理方法)
ポリシリケート系親水性コーティング剤「NP-235(大光テクニカル社製)」により、塗布後、室温(25℃)にて乾燥させたことで、キャップ60、70の内面に親水化処理を施した。
この筆記具を用いて、実施例8のインク組成で結露の有無について、評価したところ、結露の有無では「A」となり、比較例2のインク組成での結露の有無では「B」となり、親水化処理があることが確認できた。また、筆記性能も実施例11では「A」、実施例12では「B」となった。