(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090668
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】高難燃性積層複合材料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20230622BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230622BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
B32B9/00 A
C09K21/02
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194897
(22)【出願日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】202111550943.8
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522475351
【氏名又は名称】上緯新材料科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SWANCOR ADVANCED MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 618, Songsheng Road, Songjiang District, Shanghai 201613, China, P.R.C.
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼▲祚▼昌
(72)【発明者】
【氏名】蔡▲育▼庭
(72)【発明者】
【氏名】盧立哲
(72)【発明者】
【氏名】陳紅▲娟▼
(72)【発明者】
【氏名】陳俊安
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4H028
【Fターム(参考)】
4F072AA04
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4H028AA12
(57)【要約】
【課題】本発明は、高難燃性積層複合材料の調製方法を提供する。
【解決手段】高難燃性積層複合材料の調製方法は、無機粉体及び高分子材料を含む原料を提供する工程と、原料を無機シートとして形成する賦形工程と、高難燃性積層複合材料を得るように、無機シートを基材の表面に結合させる結合工程と、を備え、無機粉体と高分子材料の重量比は0.01~0.1であり、無機シートの厚さは0.1mm~8.0mmである。それにより、効率的に無機粉体を高分子材料に均一に分散させることができ、製造過程をより操作しやすくし、軽量で薄く高難燃性を有する高難燃性積層複合材料を調製して高い耐火性能が要求される産業分野に用いることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉体及び高分子材料を含む原料を提供する工程と、
前記原料を無機シートとして形成する賦形工程と、
高難燃性積層複合材料を得るように、前記無機シートを基材の表面に結合させる結合工程と、を備え、
前記無機粉体と前記高分子材料の重量比は0.01~0.1であり、前記無機シートの厚さは0.1mm~8.0mmである高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項2】
前記無機粉体は、ケイ酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムカリウム、メタカオリン、無機リン酸塩、ペンタエリトリトール、水酸化アルミニウム、膨張黒鉛、二酸化ケイ素、水酸化マグネシウム及びアルミニウム粉末からなる群から選択される請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項3】
前記高分子材料は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリフェノール型グリシジルエーテルエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ化オレフィン化合物、複素環型と混合型エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選択される樹脂成分を含む請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項4】
前記高分子材料は、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミド、酸無水物、樹脂、第三級アミン、イミダゾール及び尿素からなる群から選択される硬化剤を含む請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項5】
前記賦形工程において、スリットコーティング又はラミネートコーティングにより前記原料を前記無機シートとして形成する請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項6】
前記原料は、20℃~60℃の温度で塗布されて前記無機シートを形成する請求項5に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項7】
前記賦形工程において、静電塗装により前記原料を前記無機シートとして形成する請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項8】
前記賦形工程において、抄紙機により前記原料を前記無機シートとして賦形する請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項9】
前記無機シートの単位面積当たりの繊維重量は30gsm~1500gsmである請求項8に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項10】
前記原料は、合成繊維パルプ、合成繊維ミクロフィブリル、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリカーボネート繊維、ポリフェニレンスルファイド繊維、複合繊維、アルケン類ポリマーエマルジョン、アルケン類コポリマーエマルジョン、ブタジエン類ゴム、ラテックス及びアクリルラテックスからなる群から選択されるバインダを更に含み、前記原料における前記バインダの割合は5wt%~30wt%である請求項8に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項11】
前記結合工程において、真空アシスト樹脂トランスファー成形法により前記無機シートを前記基材の前記表面に結合させ、前記無機シートは、300mmHg~760mmHgの真空度及び20℃~60℃の温度で前記基材の前記表面に結合する請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項12】
前記結合工程において、ホットプレス成形法により前記無機シートを前記基材の前記表面に結合させ、前記無機シートは、2kg/cm2~20kg/cm2の圧力及び20℃~380℃の温度で前記基材の前記表面に結合する請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項13】
前記基材の材質は、炭素繊維、黒鉛繊維、芳香族ポリアミド繊維、炭化シリコン繊維、酸化アルミニウム繊維、ホウ素繊維、炭化タングステン繊維及びガラス繊維からなる群から選択される請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項14】
前記結合工程において、まず前記基材に対してプリプレグ処理を行ってから、前記無機シートを前記基材の前記表面に結合させる請求項13に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法。
【請求項15】
請求項1に記載の高難燃性積層複合材料の調製方法により調製された高難燃性積層複合材料であって、
前記基材と、
前記基材の前記表面に貼着される前記無機シートと、
を含む高難燃性積層複合材料。
【請求項16】
前記無機シートの前記基材から離れる表面に貼着されるクラッド層を更に含む請求項15に記載の高難燃性積層複合材料。
【請求項17】
前記高難燃性積層複合材料の坪量は30gsm~1500gsmである請求項15に記載の高難燃性積層複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性複合材料及びその調製方法に関し、特に無機シートで加工して得られた高難燃性積層複合材料及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の難燃性複合材料は、無機フィラー及び樹脂を含み、その調製方法としては、大体、無機フィラーをまず樹脂と混合してスラリーを形成し、前記スラリーを基材に施用し、スラリーが基材に結合した後、従来の難燃性複合材料を得ることができ、十分な難燃性を得るために、無機フィラーと樹脂の重量比を0.5よりも大きくする必要がある。しかしながら、高割合の無機フィラーによってスラリーの粘度が高過ぎるようになり、スラリーの流動性が低くなり、且つ無機フィラーが不均一に分布しやすくなり、更にプロセス工法の操作性及び製品の品質に影響を与え、高割合の無機フィラーの添加によって難燃性複合材料の重量と体積も大幅に増やされ、難燃性複合材料の適用が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに鑑み、如何に難燃性複合材料の適用の制限を低減するとともに、難燃性複合材料のプロセス工法の操作性を改善するかは、依然として解決すべき課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、難燃シートを調製してから、難燃シートを基材に結合させることで、操作性が高い状況で、軽量で難燃性に優れた高難燃性積層複合材料を得ることができる高難燃性積層複合材料及びその調製方法を提供することである。
【0005】
本発明の一態様は、無機粉体及び高分子材料を含む原料を提供する工程と、原料を無機シートとして形成する賦形工程と、高難燃性積層複合材料を得るように、無機シートを基材の表面に結合させる結合工程と、を備え、無機粉体と高分子材料の重量比が0.01~0.1であり、無機シートの厚さが0.1mm~8.0mmである高難燃性積層複合材料の調製方法を提供する。
【0006】
それにより、本発明の高難燃性積層複合材料の調製方法は、まず無機粉体を無機シートとしてから、無機シートを基材に結合させることで、効率的に無機粉体を高分子材料に均一に分散させることができ、製造過程をより操作しやすくし、軽量で体積が小さく高難燃性を有する高難燃性積層複合材料を調製することもでき、軌道交通、建築材料、船舶、航空宇宙、電気機器やプラスチックパイプなどの高い耐火性能が要求される産業領域に適用することに寄与する。
【0007】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、無機粉体は、ケイ酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムカリウム、メタカオリン、無機リン酸塩、ペンタエリトリトール、水酸化アルミニウム、膨張黒鉛、二酸化ケイ素、水酸化マグネシウム及びアルミニウム粉末からなる群から選択されてよい。
【0008】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、高分子材料は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリフェノール型グリシジルエーテルエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ化オレフィン化合物、複素環型と混合型エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選択されてよい樹脂成分を含んでよい。
【0009】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、高分子材料は、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミド、酸無水物、樹脂、第三級アミン、イミダゾール及び尿素からなる群から選択されてよい硬化剤を含んでよい。
【0010】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、賦形工程において、スリットコーティング又はラミネートコーティングにより原料を無機シートとして形成してよい。
【0011】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、原料は、20℃~60℃の温度で塗布されて無機シートを形成してよい。
【0012】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、賦形工程において、静電塗装により原料を無機シートとして形成してよい。
【0013】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、賦形工程において、抄紙機により原料を無機シートとして賦形してよい。
【0014】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、無機シートの単位面積当たりの繊維重量は30gsm~1500gsmであってよい。
【0015】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、原料は、合成繊維パルプ、合成繊維ミクロフィブリル、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリカーボネート繊維、ポリフェニレンスルファイド繊維、複合繊維、アルケン類ポリマーエマルジョン、アルケン類コポリマーエマルジョン、ブタジエン類ゴム、ラテックス及びアクリルラテックスからなる群から選択されるバインダを更に含んでよく、原料におけるバインダの割合は5wt%~30wt%であってよい。
【0016】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、結合工程において、真空アシスト樹脂トランスファー成形法により無機シートを基材の表面に結合させてよく、無機シートは、300mmHg~760mmHgの真空度及び20℃~60℃の温度で基材の表面に結合してよい。
【0017】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、結合工程において、ホットプレス成形法により無機シートを基材の表面に結合させてよく、無機シートは、2kg/cm2~20kg/cm2の圧力及び20℃~380℃の温度で基材の表面に結合してよい。
【0018】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、基材の材質は、炭素繊維、黒鉛繊維、芳香族ポリアミド繊維、炭化シリコン繊維、酸化アルミニウム繊維、ホウ素繊維、炭化タングステン繊維及びガラス繊維からなる群から選択されてよい。
【0019】
前記高難燃性積層複合材料の調製方法によれば、結合工程において、まず基材に対してプリプレグ処理を行ってから、無機シートを基材の表面に結合させてよい。
【0020】
本発明の別の態様は、前記の高難燃性積層複合材料の調製方法により調製された高難燃性積層複合材料であって、基材と、基材の表面に貼着される無機シートと、を含む高難燃性積層複合材料を提供する。
【0021】
前記高難燃性積層複合材料は、無機シートの基材から離れる表面に貼着されてよいクラッド層を更に含んでよい。
【0022】
前記高難燃性積層複合材料によれば、高難燃性積層複合材料の坪量は30gsm~1500gsmであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の上記と他の目的、特徴、利点と実施例をより明らかで分かりやすくするために添付される図面について、以下のように説明する。
【
図1】本発明の高難燃性積層複合材料の調製方法の工程のフローチャートである。
【
図2A】第2の実施例の高難燃性積層複合材料の構造図である。
【
図2B】
図2Aに示される高難燃性積層複合材料の箇所2Bにおける局所的顕微鏡写真である。
【
図3A】第3の実施例の高難燃性積層複合材料の構造図である。
【
図3B】
図3Aに示される高難燃性積層複合材料の箇所3Bにおける局所的顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態をより詳細に検討する。しかしながら、この実施形態は、様々な発明概念の適用であってよく、様々な異なる特定の範囲内で具体的に実施されてよい。特定の実施形態は、単に説明のためのものであり、且つ開示された範囲に限定されない。
【0025】
図1を合わせて参照されたく、
図1は、本発明の高難燃性積層複合材料の調製方法100の工程のフローチャートである。本発明の一態様は、工程110と、工程120と、工程130と、を含む高難燃性積層複合材料の調製方法100を提供する。
【0026】
工程110において、無機粉体及び高分子材料を含む原料を提供し、原料における高分子材料は、無機粉体が均一に分布することに役立ち、高難燃性積層複合材料の難燃効果を一致させることができる。無機粉体と高分子材料の重量比は0.01~0.1であり、それにより高難燃性積層複合材料が十分な難燃性を有し、且つ無機粉体の割合が高過ぎて凝集し後続のプロセスに影響を与えることを回避する。
【0027】
無機粉体は、ケイ酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウムカリウム、メタカオリン、無機リン酸塩、ペンタエリトリトール、水酸化アルミニウム、膨張黒鉛、二酸化ケイ素、水酸化マグネシウム及びアルミニウム粉末からなる群から選択されてよく、又は他の難燃性を有する無機材料であってよいが、本発明において制限されない。
【0028】
高分子材料は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリフェノール型グリシジルエーテルエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ化オレフィン化合物、複素環型と混合型エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選択されてよい樹脂成分を含んでよく、樹脂成分は、他の無機粉体と混合しやすく加工しやすいポリマーであってもよいが、本発明において制限されない。
【0029】
高分子材料は、アミン類(例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミド又は第三級アミン)、酸無水物、樹脂、イミダゾール及び尿素からなる群から選択されてよい硬化剤を更に含んでよく、硬化剤は、前記樹脂成分の硬化に役立つものであるため、その種類と割合については、樹脂成分に応じて組み合わせて使用してよい。また、樹脂成分の重量部は80部~150部であってよく、硬化剤の重量部は1部~50部であってよく、且つ、最適な材料特性を得るように、異なるプロセスの要件に応じて他の対応する助剤を加えてもよい。例えば、消泡に役立つように消泡剤を加えてよく、原料流動性を向上させるように希釈剤を加えてよく、又は高難燃性積層複合材料の含浸性を増やすように湿潤分散剤を加えてよいが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
工程120において、原料を無機シートとして形成する賦形工程を行い、無機シートの厚さは0.1mm~8.0mmであり、十分な難燃性が得られ、高難燃性積層複合材料の軽量化と薄さを維持することに一層寄与する。例えば、軽量化の高難燃性積層複合材料は、軌道交通に適用され、異なる結構に対応して異なる積層方法と工法を設計し、更に高難燃性積層複合材料の適用範囲を拡大し、加工利便性を向上させることができる。
【0031】
賦形工程において、スリットコーティング、ラミネートコーティング、静電塗装又は抄紙機によるプロセスにより無機シートを形成してよいが、本発明において上記プロセスに限定されない。以下、異なる賦形方法について1つずつ説明する。
【0032】
賦形工程において、原料は、スリットコーティング又はラミネートコーティングにより無機シートを形成することができる。スリットコーティングの場合、スクレーパにより原料が流動するように駆動するか、又は塗布ヘッドにより原料を押出し、原料を塗布プレートに平らに広げてから、加熱又は硬化により、原料を無機シートとして形成してよい。ラミネートコーティングの場合、塗布ホイールにより原料を離型紙に塗布してから、加熱又は硬化により、原料を無機シートとして形成してよい。更に、賦形工程において、原料は、20℃~60℃の温度で塗布されて無機シートを形成してよく、適切な温度により原料が十分な流動性を有するように確保することができ、塗布の成功率が増やされ、更に無機シートに欠陥が形成されることを回避することができる。
【0033】
又は、原料は、静電塗装により無機シートとして形成されてよく、詳しくは、まず高圧電気で原料を帯電する原料粒子として形成すると同時に、塗布プレートに逆の電気を印加し、原料粒子を塗布プレートに吸着し、無機シートを形成する。
【0034】
なお、抄紙機により原料を無機シートとして賦形してよく、即ち、原料を抄紙機のヘッドボックスに注ぎ、抄紙機のヘッドボックスにより、原料を成形網に平らに広げてから、ローラによる加圧、加熱乾燥などの工程を経て、原料を無機シートとして形成してよく、無機シートの厚さと密度が要求に合致することを確保するために、無機シートの単位面積当たりの繊維重量は30gsm~1500gsmであってよい。
【0035】
更に、抄紙機により無機シートを製造する時、原料は、バインダを更に含んでよく、原料におけるバインダの割合は5wt%~30wt%であってよく、バインダは、高分子材料の繊維の相互結合に役立ち、無機シートの機械的強度を向上させ、無機シートと基材の結合能力を補強することができる。バインダは、以下の固体バインダ及び液体バインダからなる群から選択されてよく、固体バインダは、合成繊維パルプ(synthetic pulp)、合成繊維ミクロフィブリル(synthetic fibers)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)繊維、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)繊維、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)繊維、ポリフェニレンスルファイド(polyphenylene sulfide;PPS)繊維、複合繊維又は他の化学繊維であってよく、液体バインダは、また分散性樹脂エマルジョンとゴムエマルジョンに分けられ、分散性樹脂エマルジョンは、アルケン類ポリマーエマルジョン又はアルケン類コポリマーエマルジョンであってよく、その成分は、アクリル酸、酢酸ビニル、プロピレン又はエタクリル酸などを含んでよく、ゴムエマルジョンは、ブタジエン類ゴム(例えばスチレンブタジエンゴム)、ラテックス(latex)又はアクリルラテックス(acrylic latex)などであってよい。
【0036】
工程130において、高難燃性積層複合材料を得るように、無機シートを基材の表面に結合させる結合工程を行う。基材の材質は、炭素繊維、黒鉛繊維、芳香族ポリアミド繊維、炭化シリコン繊維、酸化アルミニウム繊維、ホウ素繊維、炭化タングステン繊維及びガラス繊維からなる群から選択されてよく、基材の材質は、製品の用途に応じて決定されてよく、且つ前記無機粉体及び高分子材料の材質と互いに組み合わせて使用できるため、本発明は上記材料に限定されない。
【0037】
これに加えて、基材に対してプリプレグ処理を行ってから、無機シートを基材の表面に結合させてもよく、このように基材の難燃性を向上させるか、又は無機シートと基材の結合程度を増やすことができ、且つ、プリプレグ処理により、特定の材料の溶解性が足りず、成形温度が高いなどの欠点を改善することができるため、プロセス工法の操作性を大幅に向上させることができる。
【0038】
結合工程において、真空アシスト樹脂トランスファー成形法又はホットプレス成形法により無機シートを基材に結合させてよく、以下、異なる結合方法について1つずつ説明する。
【0039】
真空アシスト樹脂トランスファー成形法を採用すれば、無機シートと基材を一緒に真空バッグに入れてから、無機シートが基材の表面に結合するまで、真空バッグを真空度300mmHg~760mmHgと温度20℃~60℃の反応環境に形成させ、このようにすれば高難燃性積層複合材料を得ることができる。真空バッグに無機シートと基材を受けるためのガラス基材を置いてもよく、真空バッグに無機シートと基材の上方に位置する案内網を置いてもよく、案内網は、真空バッグにおけるガスの流動に役立ち、真空バッグにおける圧力を均等にし、無機シートと基材の結合に寄与する。
【0040】
ホットプレス成形法を採用すれば、2つのホットプレス板で無機シートと基材を挟持し、且つ、無機シートが基材の表面に結合するまで、無機シートと基材に2kg/cm2~20kg/cm2の圧力及び20℃~380℃の温度を施す必要があり、それにより高難燃性積層複合材料を得ることができる。
【0041】
本発明の別の態様は、前記の高難燃性積層複合材料の調製方法100により調製された高難燃性積層複合材料であって、基材と、基材の表面に貼着される無機シートと、を含む高難燃性積層複合材料を提供する。高難燃性積層複合材料の坪量は30gsm~1500gsmであってよく、それにより、高難燃性積層複合材料が十分な密度を有することを確保し、高難燃性積層複合材料の難燃性を向上させる。
【0042】
高難燃性積層複合材料は、無機シートの基材から離れる表面に貼着されてよいクラッド層を更に含んでよく、クラッド層は、美化作用を有し、又は無機シート及び基材を保護するために用いることができ、更に、プロセスの複雑さを減らすように、前記結合工程において一緒に無機シートの表面に結合してもよい。
【0043】
以下、本発明の高難燃性積層複合材料の調製方法により高難燃性積層複合材料を調製し、且つ欧州連合基準に基づく鉄道車両の防火・煙・毒性試験(EN45545-2試験)を行う。
【0044】
<難燃性テスト>
【0045】
本実験は、第1の実施例と比較例をもってEN45545-2試験を行い、本発明の調製方法により調製された高難燃性積層複合材料が優れた難燃性を有するか否かを判断する。第1の実施例の高難燃性積層複合材料は、前記高難燃性積層複合材料の調製方法により調製され、その基材は、ガラス繊維フェルト及びガラス繊維ギンガムを含み、使用される原料は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100部、アミン類硬化剤30部、湿潤分散剤1部、水酸化アルミニウム10部、膨張黒鉛10部、リン系難燃剤10部及びPETバインダ15部を含み、且つ、第1の実施例の高難燃性積層複合材料は、真空アシスト樹脂トランスファー成形法により調製されてなる。比較例は、従来の難燃性複合材料の調製方法により調製され、樹脂と硬化剤100部、及び水酸化アルミニウム110部を含む。
【0046】
続いて、それぞれ第1の実施例と比較例にEN45545-2試験を行い、テスト項目は、最大熱放出値(maximum of average rate of heat emission;MARHE)、特定光学密度(specific optical density at 4
th minute;D
s4)及び累積光学密度値(cumulative value of specific optical densities in the first 4 minutes of the test;VOF
4)を含み、試験結果は下記表1に挙げられている。
【表1】
【0047】
上記試験結果から示されるように、本発明の高難燃性積層複合材料は、EN45545-2試験における最高レベル(HL3)の基準に合致するが、比較例の難燃性複合材料は、最低レベル(HL1)の難燃効果のみを有し、本発明の高難燃性積層複合材料は優れた難燃性質を有することが証明された。
【0048】
<第2の実施例>
【0049】
図2A及び
図2Bを合わせて参照されたく、
図2Aは、第2の実施例の高難燃性積層複合材料200の構造図であり、
図2Bは、
図2Aに示される高難燃性積層複合材料200の箇所2Bにおける局所的顕微鏡写真である。第2の実施例の高難燃性積層複合材料200は、前記高難燃性積層複合材料の調製方法により調製され、使用される原料は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂100部、ジシアンジアミド5部、尿素1部、湿潤分散剤1~2部、ポリリン酸アンモニウム10~20部、ホウ酸亜鉛5~10部及びペンタエリトリトール5~10部を含み、且つホットプレス成形法により調製されてなる。
【0050】
高難燃性積層複合材料200は、基材210及び無機シート220を含み、基材210は、先にプリプレグ処理された。
図2Bから分かるように、基材210と無機シート220との間に明らかなレイヤリングがなく、基材210と無機シート220の結合状況が良好であることが示された。
【0051】
<第3の実施例>
【0052】
図3A及び
図3Bを合わせて参照されたく、
図3Aは、第3の実施例の高難燃性積層複合材料300の構造図であり、
図3Bは、
図3Aに示される高難燃性積層複合材料300の箇所3Bにおける局所的顕微鏡写真である。第3の実施例の高難燃性積層複合材料300は、前記高難燃性積層複合材料の調製方法により調製され、且つホットプレス成形法により調製されてなる。
【0053】
高難燃性積層複合材料300は、基材310、無機シート320及びクラッド層330を含み、基材310とクラッド層330は、先にプリプレグ処理された。
図3Bから分かるように、クラッド層330は、高難燃性積層複合材料300の外観を変更し、高難燃性積層複合材料300に特別な表面テクスチャを持たせることができ、基材310、無機シート320とクラッド層330の間に明らかなレイヤリングがなく、基材310、無機シート320とクラッド層330の結合状況が良好であることが示された。
【0054】
これに鑑み、本発明の高難燃性積層複合材料の調製方法は、まず無機粉体を無機シートとしてから、無機シートを基材に結合させることで、効率的に無機粉体を高分子材料に均一に分散させることができ、製造過程をより操作しやすくし、軽量で体積が小さく高難燃性を有する高難燃性積層複合材料を調製することもでき、軌道交通、建築材料、船舶、航空宇宙、電気機器とプラスチックパイプなどの高い耐火性能が要求される産業領域に適用することに寄与する。
【0055】
本発明は、実施例により前記のように開示されたが、実施例が本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0056】
100 高難燃性積層複合材料の調製方法
110、120、130 工程
200、300 高難燃性積層複合材料
210、310 基材
220、320 無機シート
330 クラッド層