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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090671
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
B43K25/02 140
B43K25/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196009
(22)【出願日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2021204810
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 恭平
(72)【発明者】
【氏名】石川 智
(72)【発明者】
【氏名】古屋 圭章
(72)【発明者】
【氏名】福留 義一
【テーマコード(参考)】
2C041
【Fターム(参考)】
2C041AA06
2C041AB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来のクリップでは、内壁部間の隙間が直線形状で構成されているため、クリップの組み立て工程において、他のクリップが隙間に侵入してクリップ同士が絡み合い、組み立て性が悪化してしまうという問題があった。本発明は、組み立て性の良好なクリップを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、外装体に取り付けられるクリップであって、クリップは少なくとも、クリップ本体と、クリップ本体の長手方向に沿った両辺から外装体側に延びる2片の取付部と、で構成され、取付部には、一方の取付部から他方の取付部に向かって延びる侵入防止壁部が形成され、侵入防止壁部間の隙間が湾曲して形成されたクリップを要旨とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体に取り付けられるクリップであって、クリップは少なくとも、クリップ本体と、クリップ本体の長手方向に沿った両辺から外装体側に延びる2片の取付部と、で構成され、取付部には、一方の取付部から他方の取付部に向かって延びる侵入防止壁部が形成され、侵入防止壁部間の隙間が湾曲して形成された、クリップ。
【請求項2】
前記隙間の最小幅が、クリップ本体の厚みより狭い、請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記隙間が、一方の侵入防止壁部の端面が他方の侵入防止壁部側に向かって突出し、他方の侵入防止壁部の端面が相補的に陥没することで形成された、請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記隙間を形成する侵入防止壁部の両端面同士が、侵入防止壁部が互いに突出する方向に互い違いに交差する幅が、前記隙間の最小幅より小さい、請求項3に記載のクリップ。
【請求項5】
前記取付部と略平行であって、前記侵入防止壁部の端面の、最も他方の侵入防止壁部側に向かって突出した頂部を通過する各仮想直線間の距離が、前記隙間の最小幅より小さい請求項3に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具や塗布具などの外装体に取り付けられるクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリップは、筆記具や塗布具などの外装体に取り付けられることで、クリップと外装体の外壁との間に挟持空間を形成し、衣服の一部や書類などを挟持することができる。従来より、クリップの取付方法は種々検討されている。例えば特許文献1(特開2006-264314号公報)には、クリップの長手方向に沿った両辺から外装体側に向かって形成された側壁部から、互いの側壁部の方向に向かって突出した矢形状の係止突起が形成され、係止突起が外装体側の部材に食い込むことでクリップを外装体に取り付ける方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-264314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、クリップを外装体に取り付けるための構造が形成された取付部の付近は、複雑な形状になることが多い。そのため、筆記具や塗布具を組み立てる工程で、クリップ同士が互いに絡み合ってしまうことがある。例えば、大量のクリップの方向を整える工程でクリップに微振動を加えながら細い経路を移動させる自動機内や、めっき処理を施す際の研磨工程や熱処理工程などにおいてクリップを撹拌する容器内などで、斯様な状態が発生することがある。各工程でクリップ同士が互いに不意に絡み合ってしまうと、各工程で任意の処理を施すことが困難になり、組み立て性が低下してしまう。
【0005】
このような課題に対して、特許文献1には、側壁部間の空間に他のクリップが侵入して絡み合うのを防止するため、側壁部から互いの側壁部に向かって突出し、クリップの長手方向に対して直交する内壁部が形成されたクリップが開示されている。内壁部によって先述の自動機内や容器内などで他のクリップが側壁部間に侵入して絡み合うのを防止することができる。
【0006】
しかし、特許文献1に開示されているクリップでは、内壁部間の隙間が直線形状で構成されているため、クリップの組み立て工程などにおいて、内壁部がクリップの長手方向のいずれかへ変形すると一気に隙間が広がってしまい、他のクリップが隙間に侵入してクリップ同士が絡み合い、組み立て性が悪化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、組み立て性の良好なクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、外装体に取り付けられるクリップであって、クリップは少なくとも、クリップ本体と、クリップ本体の長手方向に沿った両辺から外装体側に延びる2片の取付部と、で構成され、取付部には、一方の取付部から他方の取付部に向かって延びる侵入防止壁部が形成され、侵入防止壁部間の隙間が湾曲して形成されたクリップを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクリップは、侵入防止壁部間の隙間が湾曲しているため、侵入防止壁部がクリップ長手方向に変形するなどしても、隙間の幅方向のみならず、クリップ長手方向やクリップ本体から外装体にかけての方向の狭さを維持することができる。よって、自動機内などで他のクリップが隙間に侵入してクリップ同士が絡み合うのを防止することができ、組み立て性の良好なクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)ボールペン1の外観図、(b)(a)を90°軸回転させた図、(c)ボールペン1の外観斜視図
図2】(a)図1(a)の縦断面図、(b)図1(b)の縦断面図
図3図1の状態からキャップ2dを尾栓2c側へ取り付けボールペン1を使用可能とした図
図4】(a)頭冠2dbの外観図、(b)頭冠2dbの外観斜視図
図5】キャップ2dの縦断面拡大図
図6】(a)クリップ6の外観図、(b)クリップ6の外装体2側外観図、(c)クリップ6の外観斜視図
図7】クリップ6の取付部6b付近拡大図
図8図4(a)のA‐A’断面矢視図
図9図6(b)のB‐B’断面矢視図
図10】他の実施形態に係る図9相当図
図11図10のG部分拡大図
図12図10のG部分拡大図
図13】(a)出没式筆記具としてのボールペン1の外観図、(b)(a)を90°軸回転させた図、(c)出没式筆記具としてのボールペン1の外観斜視図
図14】(a)図13(a)の縦断面図、(b)図13(b)の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、筆記具や塗布具などの外装体に取り付けられるクリップとして実施することができる。筆記具としては、ボールペン、シャープペンシル、マーキングペン、筆ペンなどを例示することができる。また、塗布具としては、修正ペン、アイライナー、アイブローなどを例示することができる。
【0012】
以降、図を参照しながら本発明に係る第1の実施形態について説明する。図1(a)(b)(c)は、本発明に係るクリップが取り付けられた筆記具であるボールペン1の外観を示した図、図2(a)(b)は、図1(a)(b)の縦断面図である。
【0013】
ボールペン1の外装体2は、軸筒2aと、チップセット2bと、尾栓2cと、キャップ2dと、で構成されている。ボールペン1は、軸筒2aからキャップ2dを着脱して使用される、所謂キャップ式の筆記具である。図3は、軸筒2aのチップセット2b側からキャップ2dを外して、ボールペン1を使用可能とした図である。キャップ2dは、尾栓2c側にも取り付けることができる。
【0014】
軸筒2aは、ポリプロピレン樹脂製の筒状部材である。軸筒2aの前端開口部には、チップセット2bが配置されている。チップセット2bは、ボールペンチップ2baと、ポリプロピレン樹脂製のチップホルダー2bbと、で構成されている。軸筒2aの後端開口部には、尾栓2cが配置される。尾栓2cはポリプロピレン樹脂製の部材であり、同じくポリプロピレン樹脂製の栓部材であるフロート3と共に、軸筒2a内部に直接収納されたインキが漏れるのを防いでいる。軸筒2aの外壁には、ボールペン1の使用が手で把持する部分である、エラストマー製のグリップ4が配置されている。
【0015】
軸筒2aは、前軸と後軸とに分かれた筒状の別部材同士を、螺子螺合などの方法で結合させて構成することもできる。また軸筒2a、チップホルダー2bb、尾栓2c、フロート3の材質も、成形性、耐久性、インキとの反応性などを考慮して、ポリプロピレン樹脂の他、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又は、これらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。
【0016】
キャップ2dは、有底筒状の部材である。キャップ2dは、ポリプロピレン樹脂製の筒状部材であるキャップ本体2daと、ポリカーボネート樹脂製の部材である頭冠2dbとで構成されている。キャップ2d内部のうち、頭冠2dbが形成している領域内には、ニトリルゴム製のパッキン5が配置されている。
【0017】
図4(a)(b)は、頭冠2dbの外観を示した図、図5は、キャップ2dの縦断面拡大図である。頭冠2dbの開口部側の外壁には、周方向に連なった環状溝2dbaが設けられている。また、頭冠2dbの開口部側の外壁には、頭冠2dbの開口端面から長手方向に延びる縦溝2dbbが設けられている。縦溝2dbbは、周方向に対向する位置に2箇所設けられている。頭冠2bdが配置されるキャップ本体2daの前端開口部側の内壁には、環状溝2dbaが嵌り込む環状突起2daaが設けられている。環状突起2daaが環状溝2dbaに嵌り込むことで、頭冠2dbをキャップ本体2daに、所望の固定強度で取り付けることができる。また、キャップ本体2daの前端開口部側の内壁には、キャップ本体2daの前端開口端面から長手方向に延びる縦リブが設けられている。キャップ本体2daと頭冠2dbとを組み立てる際に、縦リブが縦溝2dbbに入り込むことによって、頭冠2dbが周方向に回転してしまうのを防止することができる。
【0018】
頭冠2dbの開口部側と反対側である前端側の外壁には、クリップ6が取り付けられるための被取付突起2dbcが設けられている。被取付突起2dbcが、後述するクリップ6の取付突起6baに挟持されることで、クリップ6を頭冠2dbに取り付けることができる。
【0019】
図6(a)(b)(c)は、クリップ6の外観を示した図、図7は、クリップ6の取付部6b付近拡大図、図8は、図4(a)のA‐A’断面矢視図である。クリップ6は少なくとも、クリップ本体6aと、取付部6bと、で構成される部材である。本実施形態においては、取付部6bと反対側の端部に玉部6cも形成されている。以降、クリップ本体6aの長手方向において玉部6cの反対側を前端側とする。クリップ本体6aは、クリップ6を構成する基礎となる部材であり、ボールペン1が組み立てられた状態において、外装体2の外壁との間に挟持空間を形成する部材である。本実施形態においては、炭素鋼製のクリップ本体6aを、プレス加工などの方法によって適宜折り曲げ、加工することで、取付部6bや、玉部6cを形成している。その後クリップ6に、ニッケルめっき、すず―コバルトめっき、クロメート処理が施されている。取付部6bは、クリップ本体6aの長手方向に沿った両辺から外装体2側に折り曲げられて形成された部位である。取付部6bは2片形成されており、クリップ本体6aを挟んで対向する角度で形成されている。
【0020】
取付部6bには、取付突起6baと、侵入防止壁部6bbと、が形成されている。取付突起6baは、取付部6bの端部のうち、クリップ本体6aの長手方向に沿った端部がさらに折り曲げられて形成されている。取付突起6baは、2片形成されており、頭冠2dbの被取付突起2dbcを挟持する部位である。取付突起6baは前端側から、被取付突起2dbcは環状溝2dba側の端部から、互いに順次接触し、クリップ6が頭冠2dbに取り付けられる。
【0021】
取付突起6baには、前端側から玉部6c側に向かって、取付突起6ba間の幅が順次狭くなる縮径部が、クリップ本体6aの長手方向に沿って3段階連なって形成されている。最も前端側に位置する縮径部の玉部6c側には、取付突起6ba間の幅が急に広くなる段部が形成されており、その先に2番目の縮径部が形成されている。同様に、2番目の縮径部の玉部6c側には、取付突起6ba間の幅が急に広くなる段部が形成されており、その先に最も玉部6c側に位置する3番目の縮径部が形成されている。
【0022】
取付突起6baのうち、最も前端側に位置する1番目の縮径部と、3番目の縮径部は、前端側から玉部6c側に向かって、一定の傾きで取付突起6ba間の幅が狭くなっており、面一の傾斜面を形成している。2番目の縮径部は、前端側から玉部6c側に向かう中腹までは、1番目や3番目の縮径部よりも緩やかに取付突起6ba間の幅が狭くなっており、中腹以降は、中腹までよりも急に取付突起6ba間の幅が狭くなっている。このようにすることで、クリップ6を使用する際に、つまりクリップ6が頭冠2dbに取り付けられた状態で、クリップ本体6aが外装体2の外壁から一時的に離れる方向に変形させられる際に取付突起6baに生じる応力を適宜減少させることができ、頭冠2dbが疲労破壊しづらい。
【0023】
被取付突起2dbcには、クリップ6を頭冠2dbに取り付ける際に、取付突起6baの縮径部が乗り越えることで取付部6bが被取付突起2dbcから抜けるのを防止することができる突起が設けられている。突起は、頭冠2dbの長手方向に沿って2段階形成されている。各段階とも、互いに周方向外側に向かって突出した2か所の突起が形成されることで、被取付突起2dbcの幅を部分的に拡径している。各突起の、頭冠2dbの開口部側は、頭冠2dbの開口部側から前端側に向かって、幅が順次広くなっているため、取付突起6baの縮径部と相まって、クリップ6を頭冠2dbにスムーズに取り付けることができる。
【0024】
図9は、図6(b)のB‐B’断面矢視図である。取付部6bの、クリップ6長手方向端部のうち、玉部6c側の端部が、互いに接近する方向にさらに折り曲げられて、侵入防止壁部6bbが形成されている。侵入防止壁部6bbは、両取付部6bに形成されており、一方の取付部6bから他方の取付部6bに向かって延びる部位である。侵入防止壁部6bbによって、例えば、ボールペン1の組み立て工程において、大量のクリップ6の方向を整える工程でクリップ6に微振動を加えながら細い経路を移動させる自動機内や、めっき処理を施す際の研磨工程や熱処理工程などにおいてクリップ6を撹拌する容器内などで、クリップ本体6aと取付部6bとで囲われた領域内に、他のクリップ6の一部が侵入してクリップ6同士が絡み合ってしまうのを防止することができる。各工程でクリップ6同士が互いに不意に絡み合わず、各工程で任意の処理を施すこと容易になり、ボールペン1の組み立て性が良好となり好ましい。
【0025】
図9の波線及び斜線で示したように、侵入防止壁部6bb間の隙間Sは、湾曲して形成されている。隙間Sの空間を形成する、侵入防止壁部6bbの端面6bbaが、クリップ本体6a側から外装体2側にかけて、全域に亘って曲面で形成されている。これにより、両端面6bba同士が対向する領域である隙間Sが、クリップ本体6aの長手方向視で曲線状になり、全域が曲路として形成される。隙間Sが湾曲して形成されることで、先述の自動機内や容器内などで、侵入防止壁部6bbの一方又は両方が変形するなどしても、隙間Sの幅方向、クリップ本体6aの長手方向、クリップ本体6a側から外装体2側にかけての方向のいずれも、隙間Sの狭さを維持することができ好ましい。例えば、侵入防止壁部6bbが根元から長手方向のいずれかにさらに折り曲がり、任意の位置から変位しても、変位量に対して隙間Sが広がる量を最小限に抑えることができ好ましい。
【0026】
隙間Sの幅が狭いほど、先述の、他のクリップ6に対する侵入防止効果が高くなる。一方、隙間Sの幅が狭すぎると、換言すれば端面6bb同士が接近し過ぎる設計であると、クリップ6自体の製造時の公差などによって、隙間Sが閉塞してしまう恐れがある。隙間Sが閉塞されてしまうと、特にクリップ6を金属製とする場合、表面をめっき処理を施す際に、めっき液が隙間Sを通過できなくなるため、クリップ6表面全域にめっき液が行きわたりにくくなってしまう。本実施形態のように隙間Sが曲線状に湾曲していれば、隙間Sの幅を狭めすぎる必要がないため、公差を気にし過ぎずにクリップ6を設計することができ、引いてはボールペン1の組み立て性が良好となり好ましい。
【0027】
また、本実施形態のように隙間Sが曲線状に湾曲していれば、隙間Sが狭くとも、めっき処理を施す際にめっき液が隙間Sで一時的に液膜を形成しにくくなるため、めっき処理による被膜が形成しやすくなり、ボールペン1の組み立て性が良好となり好ましい。さらに本実施形態では、隙間Sの最小幅をクリップ本体6aの厚みより狭くしており、侵入防止壁部がクリップ長手方向に変形するなどして隙間Sの幅が広げられたとしても、クリップ本体6aが折り曲げられて形成された他のクリップ6が、湾曲した隙間Sにさらに侵入しにくくなり、ボールペン1の組み立て性が良好となり好ましい。
【0028】
端面6bbaは、互いに他方の侵入防止壁部6bb側に向かって最も突出した頂部を有している。図9の、向かって右側の端面6bbaのうち、最も、向かって右側の取付部6b側に陥没した点を通過し、各取付部6bと略平行な仮想直線である破線Cと、向かって右側の端面6bbaのうち、最も、向かって左側の侵入防止壁部6bb側に向かって突出した頂部を通過し、各取付部6bと略平行な仮想直線である破線Dと、が重ならない形状になっている。同様に、向かって左側の端面6bbaのうち、最も、向かって左側の取付部6b側に陥没した点を通過し、各取付部6bと略平行な仮想直線である破線Eと、向かって左側の端面6bbaのうち、最も、向かって右側の侵入防止壁部6bb側に向かって突出した頂部を通過し、各取付部6bと略平行な仮想直線である破線Fと、が重ならない形状になっている。破線Dが破線Fよりも、向かって左側の侵入防止壁部6bb側に位置する程度に、向かって右側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaは、クリップ本体6a側が向かって左側の侵入防止壁部6bb側に向かって突出している。同様に、破線Fが破線Dよりも、向かって右側の侵入防止壁部6bb側に位置する程度に、向かって左側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaは、外装体2側が向かって右側の侵入防止壁部6bb側に向かって突出している。このように、両端面6bbaの頂部同士が、両侵入防止壁部6bbが互いに突出する方向に互い違いになり、頂部同士が他方側により突出しているほど、隙間Sの湾曲の程度が大きくなり、他のクリップ6に対する侵入防止効果が高くなり好ましい。
【0029】
端面6bbは、互いに他方の侵入防止壁部6bb側に向かって突出した頂部に対して、端面6bbaが相補的に陥没した形状も有している。向かって右側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaは、外装体2側が他方の頂部に対して相補的に陥没し、向かって左側の侵入防止壁部6bb端面6bbaは、クリップ本体6a側が他方の頂部に対して相補的に陥没している。端面6bbaがこのように隙間Sを形成することで、隙間Sの幅を略等間隔に保つことができる。曲線状に湾曲して形成された隙間Sの幅が略等間隔に保たれると、局所的に隙間Sが広い箇所が少なくなり、他のクリップ6に対する侵入防止効果が高くなり好ましい。
【0030】
図10は、他の実施形態に係る図9相当図である。図9までに図示した第1の実施形態に係るクリップ6の、隙間Sの態様のみ変更している。図10に図示した実施形態は(以降、「第2実施形態」)、第1の実施形態より、隙間Sの湾曲の程度が緩やかになっている。
【0031】
図10の、向かって左側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaは、クリップ本体6a側から外装体2側にかけての中腹付近に頂部を有しており、向かって右側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaは、クリップ本体6a側から外装体2側にかけての中腹付近が陥没しており、クリップ本体6a側に頂部が、外装体2側に頂部の次に突出した部位が形成されている。
【0032】
図11及び図12は、図10のG部分拡大図である。向かって右側の端面6bbaのうち、最も、向かって右側の取付部6b側に陥没した点を通過し、各取付部6bと略平行な仮想直線である破線Hと、向かって右側の端面6bbaのうち、最も、向かって左側の侵入防止壁部6bb側に向かって突出した頂部を通過し、各取付部6bと略平行な仮想直線である破線Iと、が重ならない形状になっている。向かって左側の端面6bbaのうち、最も、向かって右側の侵入防止壁部6bb側に向かって突出した頂部を通過し、各取付部6bと略平行な仮想直線である破線Jは、破線Iの右側に位置している(なお、同一図面上では両破線が重なって視認され得るため、図を分けて表示している)。このように、両端面6bbaの頂部同士が、侵入防止壁部6bbが互いに突出する方向に僅かに互い違いに交差している。第1の実施形態に係る端面6bbaより、頂部同士が互い違いに交差する幅が極めて小さいものの、両端面6bbaが互いに相補的に湾曲した曲面で隙間Sを形成ししているため、比較的簡易な形状でありながら、他のクリップ6の侵入防止効果を得ることができ好ましい。
【0033】
向かって左側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaの頂部は、クリップ本体6aの長手方向視で、曲率半径0.62mmの曲がり方をしている。当該頂部に対して相補的に没入した、向かって右側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaであって、クリップ本体6a側から外装体2側にかけての中腹付近は、クリップ本体6aの長手方向視で、曲率半径0.72mmの曲がり方をしている。向かって左側の頂部と、向かって右側の侵入防止壁部6bbの端面6bbaとが形成する幅が0.10mmであり、隙間Sの領域内で最小の幅となっている。幅が略均一に形成された隙間Sの領域内の最小幅に対し、クリップ本体6aの厚みが0.25mmと2倍以上であるため、他のクリップ6の侵入防止効果が高く好ましい。
【0034】
さらに、本実施形態では、両端面6bbaの頂部同士が、侵入防止壁部6bbが互いに突出する方向に互い違いに交差する幅(破線Iと破線Jとの距離)が0.0005mmであり、隙間Sの領域内での最小幅である0.10mmより小さいため、湾曲した隙間Sの曲線の曲がり方が緩やかである。両端面6bba同士が互いに相手側に突出し過ぎておらず複雑な形状を有していないため、クリップ6自体の加工が比較的簡単な形状でありながら、組み立て性の良好なクリップ6を提供することができ好ましい。侵入防止壁部6bb同士が互いに突出する方向に互い違いに交差しない場合であっても、破線Iと破線Jとの距離が、隙間Sの領域内での最小幅より小さければ、組み立て性の良好なクリップ6とすることができ好ましい。
【0035】
筆記具の形態としては、軸筒2aの外部に露出させた操作部を、軸筒2aの内部に前後動可能に収納した筆記具本体と連動させて、筆記部を軸筒2aの前端開口部から出没可能とした、所謂出没式の筆記具などとすることもできる。図13は、ボールペン1を出没式筆記具とした場合の外観を示した図、図14(a)(b)は、図13(a)(b)の縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ボールペン
2 外装体
2a 軸筒
2b チップセット
2ba ボールペンチップ
2bb チップホルダー
2c 尾栓
2d キャップ
2da キャップ本体
2daa 環状突起
2db 頭冠
2dba 環状溝
2dbb 縦溝
2dbc 被取付突起
3 フロート
4 グリップ
5 パッキン
6 クリップ
6a クリップ本体
6b 取付部
6ba 取付突起
6bb 侵入防止壁部
6bba 端面
6c 玉部
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14