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特開2023-90673炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090673
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20230622BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20230622BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197126
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】110147400
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】500066735
【氏名又は名称】大田精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】許 燕吉
(72)【発明者】
【氏名】凌 ▲啓▼文
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH06
2C002LL01
2C002MM02
2C002MM04
2C002MM07
(57)【要約】
【課題】重量配分設計の自由度及びフェース板の設計自由度に優れた、炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【解決手段】炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドであって、クラブヘッド本体10と、一つまたは二つの蓋部材20と、少なくとも一つのウェイト部材30とを含み、クラブヘッド本体10が、炭素繊維プリプレグを積層して一体成形されると共に、中空状のヘッド基部11と、ヘッド基部11の前方側の片側に位置するホーゼル部13と、ヘッド基部11の前方側に位置するフェース板部12とを備え、ヘッド基部11の頂部と底部の一方または両方に開口部110が形成され、蓋部材20が、炭素繊維プリプレグを積層して一体成形されると共に、ヘッド基部11の開口部110に組み付けられ、少なくとも一つのウェイト部材30が、クラブヘッド本体10のヘッド基部11の後方側に組み付けられることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドであって、クラブヘッド本体と、一つまたは二つの蓋部材と、少なくとも一つのウェイト部材とを含み、
前記クラブヘッド本体は、炭素繊維プリプレグを積層して一体成形されると共に、中空状のヘッド基部と、該ヘッド基部の前方側の片側に位置するホーゼル部と、該ヘッド基部の前方側に位置するフェース板部とを備え、該ヘッド基部の頂部と底部の一方または両方に開口部が形成され、
前記一つ又は二つの蓋部材は、炭素繊維プリプレグを積層して一体成形されると共に、前記ヘッド基部の開口部に組み付けられ、
前記少なくとも一つのウェイト部材は、前記クラブヘッド本体のヘッド基部の後方側に組み付けられることを特徴とする、
炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記クラブヘッド本体が、同一または異なる引張り弾性率の炭素繊維プリプレグを積層して一体成形されることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記ヘッド基部、ホーゼル部及びフェース板部の剛性が、互いに同一または異なるか、または、三つのうちいずれか一つが異なることを特徴とする、請求項2に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース板部が、打球セグメント及び該打球セグメントの外周を囲繞する外輪セグメントを有するフェース基部を含み、該打球セグメントの剛性が該外輪セグメントの剛性よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記フェース基部の内部に、金属または非金属材料からなるインナー部材が設置されることを特徴とする、請求項4に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記外輪セグメントが、前記ヘッド基部の前方側に一体成形されており、
前記打球セグメントが、前後に対向するように配置される前ブロックと後ブロックと、該前ブロックと後ブロックの間に形成される収容空間とを有し、前記インナー部材が、該前ブロックと後ブロックとの間に挟まれるように該収容空間内に収容され、前記外輪セグメントが、該前ブロックと後ブロックとを囲むように連結され、該インナー部材が該打球セグメント内に覆われるように設置されることを特徴とする、請求項5に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記ヘッド基部の厚さが、0.5mm~1.5mmの範囲であり、
前記インナー部材を包む前記フェース板部の打球セグメントの厚さが、4mm~6mmの範囲であり、
前記外輪セグメントの厚さが、3.5mm~4.5mmの範囲であり、
前記インナー部材の厚さが、0.7mm~1.2mmの範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記インナー部材が、環状部、コア部及び複数の連結部を備え、該コア部が、該環状部内に配置されると共に、該コア部の中心が該インナー部材の幾何中心に一致し、該複数の連結部が、該コア部と環状部との間に間隔を置いて配列されると共に、それぞれが該コア部の外周縁と該環状部の内周縁とに連結して、該コア部と環状部との間に複数のくり抜き部が仕切られることを特徴とする、請求項6に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記ウェイト部材の重さが20グラム~70グラムの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記ヘッド基部の後方側に、取付凹部が形成され、該取付凹部に固定部材が接着固定され、該固定部材上に、ネジ孔と、該ネジ孔の片側または両側に形成された固定孔を有し、
前記ウェイト部材上に、前記固定部材のネジ孔と対応するスルーホールが形成されると共に、該ウェイト部材の裏側に前記固定孔と対応する一つ又は二つの結合柱が形成され、該結合柱が該固定孔に嵌挿されることにより、該ウェイト部材が固定部材の表側面に位置決めされ、該ウェイト部材のスルーホールにネジを通して該固定部材のネジ孔に螺合することにより、該ウェイト部材が固定されることを特徴とする、請求項1から請求請求項9のいずれか一項に記載の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関し、特に、炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフクラブヘッドは、重心位置及び慣性モーメント(Moment Of Inertia,MOI)の設計自由度を向上させるために、部分的に炭素繊維複合材料を用いた構造を採用するか、クラブヘッド本体の一部を薄肉化する手段で、クラブヘッドの本体を軽量化し、これにより得た余剰重量を再配分することにより重心位置及び慣性モーメントを調整することを可能としている。
【0003】
従来技術の複合材料からなるクラブヘッドは、その前方側に開口部が形成され、炭素繊維複合材料で一体成形されたヘッド基部と、該ヘッド基部の前方側の開口部に固設される炭素繊維複合材料または金属材料からなるフェース板と、該ヘッド基部の底部または後方側に設置されるウェイト部材とを含む。
【0004】
従来技術の複合材料からなるゴルフクラブヘッドのヘッド基部は、軽量化に役立つ炭素繊維複合材料で製作され、軽減した重量をウェイト部材に再配分することができるが、しかしながら、炭素繊維複合材料からなるヘッド基部の前方側に金属材料からなるフェース板が装着された場合、金属材料からなるフェース板による重量軽減の効果が限られているので、その結果、ウェイト部材に再配分でき、余剰重量がわずかしか残らなかった。一般的には、従来技術の複合材料からなるゴルフクラブヘッドは、ウェイト部材に配分可能な余剰重量が大体20グラム程度しかないので、その重量配分設計の自由度は低い。一方、従来技術の炭素繊維複合材料からなるヘッド基部の前方側に炭素繊維複合材料からなるフェース板が装着された場合には、炭素繊維複合材料からなるフェース板による重量軽減の効果は前述した金属材料からなるフェース板よりも優れているが、炭素繊維複合材料からなるフェース板の剛性が懸念されるため、その剛性を確保するためにフェース板の設計自由度が制約されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、重量配分設計の自由度及びフェース板の設計自由度に優れた、炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドを提案しており、当該炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドは、クラブヘッド本体と、一つまたは二つの蓋部材と、少なくとも一つのウェイト部材とを含み、
前記クラブヘッド本体は、炭素繊維プリプレグを積層して一体成形されると共に、中空状のヘッド基部と、該ヘッド基部の前方側の片側に位置するホーゼル部と、該ヘッド基部の前方側に位置するフェース板部とを備え、該ヘッド基部の頂部と底部の一方または両方に開口部が形成され、
前記一つ又は二つの蓋部材は、炭素繊維プリプレグを積層して一体成形されると共に、前記ヘッド基部の開口部に組み付けられ、
前記少なくとも一つのウェイト部材は、前記クラブヘッド本体のヘッド基部の後方側に組み付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の技術手段によって、本発明に係る炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドは、以下に示すような優れた点と効果を有する。
1、ゴルフクラブヘッド全体の重量軽減に優れ、配分可能な余剰重量が多い。本発明に係るゴルフクラブヘッドは、炭素繊維複合材料で一体成形されたヘッド基部及びフェース板部を備えるクラブヘッド本体と、炭素繊維複合材料からなる蓋部材とから構成されることにより、ゴルフクラブヘッド全体の軽量化を図り、より多くの余剰重量を得ることができる。
2、ゴルフクラブヘッドにおける重量配分設計の自由度が高く、重心位置及び慣性モーメントの調整を容易にする。上述したように、本発明に係る素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドは、炭素繊維複合材料で一体成形されたヘッド基部及びフェース板部を備えるクラブヘッド本体と、炭素繊維複合材料からなる蓋部材とから構成されることにより、ゴルフクラブヘッドの軽量化を図り、より多くの余剰重量が得られ、その軽量化によって得られた余剰重量を容易に任意の位置に再配分することができるので、クラブヘッド本体の重量配分を自由に設計することができ、重心位置及び慣性モーメントの調整可能な範囲が広くなり、ゴルフクラブの打撃性能を向上させることができる。
【0008】
さらに、本発明に係る炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドの炭素繊維複合材料からなるフェース板部は、そのフェース基部内にインナー部材が設置されてサンドイッチ構造となることにより、強度と耐衝撃性を確保した上で、そのインナー部材の材質を異なる材料または異なる引張り弾性率の炭素繊維複合材料に変えれば、異なる剛性及び異なるフェース板部の回復係数(COR)を変化させることができると共に、多様な組み合わせを有することで、ゴルフクラブヘッドの剛性を多様に設計でき、打球時の飛距離やボールの捉えやすさ、打球感、打球音などを容易に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好適な実施例に係る炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドを前方側から見た斜視図である。
図2図1の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドを後方側から見た斜視図である。
図3図1の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドの平面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】本発明の好適な実施例に係る炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドのフェース板部の内部に設置された、くり抜き部を有するインナー部材を示す正面図である。
図6図3のB-B線断面図である。
図7図1の炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドを後方側から見た一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明に係る炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドの好適な実施例を示したものであり、示されている炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドは、炭素繊維複合材料からなるクラブヘッド本体10と、一つ又は二つの炭素繊維複合材料からなる蓋部材20と、少なくとも一つのウェイト部材30を含む。
【0011】
図1図4に示すように、前記クラブヘッド本体10は、同一または異なる引張り弾性率を有する炭素繊維プリプレグを複層に積層して一体成形されると共に、中空状のヘッド基部11と、該ヘッド基部11の前方側の片側に位置するホーゼル部13と、該ヘッド基部11の前方側に位置するフェース板部12とを備え、該ヘッド基部11の頂部及び底部の一方または両方に、該ヘッド基部11の内部空間に連通する開口部110が形成されている。尚、前記ヘッド基部11、ホーゼル部13及びフェース板部12の剛性は、互いに同一または異なるか、または三つのうちいずれか一つの剛性が異なる。
【0012】
図1図4に示された本発明の好適な実施例のヘッド基部11は、その頂部のみに開口部110が形成されており、上述したように、該ヘッド基部11の開口部110は、該ヘッド基部11の底部のみに形成されていてもよく、または、該ヘッド基部11の頂部及び底部の両方に形成されていてもよい。図4に示すように、前記ヘッド基部11の後方側に、前記ウェイト部材30を装着するための取付凹部14が形成されているが、ゴルフクラブヘッドの異なる性能に応じて、該取付凹部14の設置位置を任意に調整することができる。
【0013】
図1図4に示すように、前記フェース板部12は、複数層の炭素繊維プリプレグを積層して形成されたフェース基部120を含み、該フェース基部120は、打球セグメント120Aと、該打球セグメント120Aの周りを囲繞すると共に前記ヘッド基部11に連結する外輪セグメント120Bとを有する。尚、前記打球セグメント120A及び外輪セグメント120Bの剛性は、互いに同一または異なるか、または、該打球セグメント120Aの剛性は該外輪セグメント120Bよりも大きい。
【0014】
図1図4に示された本発明の好適な実施例において、前記フェース板部12は、複数層の炭素繊維プリプレグを積層して形成されたフェース基部120の内部にインナー部材123が包まれて設置されることにより、サンドイッチ構造となっている。尚、前記インナー部材123は、金属材料からなってもよいし、または非金属材料からなってもよく、ゴルフクラブヘッドの要求性能に応じて任意に設計変更することができる。前記フェース板部12は、軽量化に優れた炭素繊維複合材料からなるフェース基部120と、該フェース基部120とは異なる材料特性を有するインナー部材123とが結合されてサンドイッチ構造となるので、ゴルフクラブヘッドの異なる要求性能に応じて、該フェース板部12の反発係数(Coefficient of Restitution,COR)を変更することができる。
【0015】
上述したように、前記炭素繊維複合材料からなるフェース基部120内に被覆される前記インナー部材123は、金属材料で製作されてもよく、例えば、チタン合金、マグネシウム合金、アルミニウム合金または鉄系合金などの剛性の高い金属材料で製作された場合、前記フェース板部12の剛性を向上させることができるだけでなく、打球時に快適な金属質の打球音を発すると共に、フェース板部12の撓み変形の抑制、及びボールの飛距離の増加を図ることができる。一方、前記インナー部材123は、高分子ポリマー材料、弾性材料または石材などで製作されてもよく、これにより、フェース板部12の振動吸収性能の向上を図ることができる。また、前記インナー部材123とフェース基部120とはそれぞれ、弾性強度の異なる炭素繊維材料で製作されてもよく、好ましくは、インナー部材123は、フェース基部120よりも高い弾性率の炭素繊維プリプレグで製作されたほうがよく、例えば、フェース基部120が24ton/mmの低い弾性率グレード(引張り弾性率が230Gpa)の炭素繊維プリプレグで製作された場合において、該インナー部材123が、30~60ton/mmの中、高弾性率グレード(引張り弾性率が270~560Gpa)を有する炭素繊維プリプレグを採用し、その結果、フェース基部120のコアであるインナー部材123は、フェース基部120よりも大きい剛性と強度を有する。上述したように、フェース板部12のフェース基部120内に異なる材料特性を有するインナー部材123が設置されるサンドイッチ構造により、フェース板部12の強度と耐衝撃性を確保しつつ、インナー部材123を異なる材料または異なる引張り弾性率を有する炭素繊維に変えることで、フェース板部12の剛性及び反発係数(COR)を調整することが可能となる。
【0016】
図1図4に示すように、前記フェース板部12のフェース基部120の内に被覆されたインナー部材123の設置位置について詳しく説明する。前記フェース基部120の打球セグメント120Aの周りを囲繞する外輪セグメント120Bは、前記ヘッド基部11の前方側に一体成形されており、該打球セグメント120Aは、前後に対向するように配置される前ブロック121及び後ブロック122と、該前ブロック121と後ブロック122の間に位置する収容空間を有し、前記インナー部材123が、該収容空間内において、該前ブロック121、後ブロック122とに挟まれたように設置される。前記外輪セグメント120Bは、前記前ブロック121と後ブロック122の周りを囲んで連結することにより、該インナー部材123は前記打球セグメント120A内に包まれるようになる。
【0017】
さらに、前記フェース板部12のフェース基部120の内に包まれているインナー部材123の具体的な構造について詳しく説明する。該インナー部材123の外形寸法は、予め想定されたクラブヘッドの打球面の寸法に対応して設定されており、該インナー部材123の構成は、平らな板材や、網状の板材、または複数のくり抜き部を有する板材であってもよい。尚、該インナー部材123は、所定の強度を具備した上で、軽量化に優れた網状の板材または複数のくり抜き部を有する板材を採用することが好ましいが、これに限定されるものではない。図5は、前記インナー部材123の好適な実施態様を示したものであり、図面によると、インナー部材123は、環状部1231、コア部1232及び複数の連結部1233を備え、該コア部1232は、該環状部1231内に配置されると共に、該コア部1232の中心が該インナー部材123の幾何中心に一致し、該複数の連結部1233は、該コア部1232と環状部1231の間に間隔を置いて配列されると共に、それぞれが該コア部1232の外周縁と該環状部1231の内周縁とに連結し、これにより、該コア部1232と環状部1231との間に複数のくり抜き部が形成されるようになる。
【0018】
図1図4に示すように、前記ヘッド基部11の厚さは0.5mm~1.5mm、前記インナー部材123を包む前記フェース板部12のフェース基部120の打球セグメント120Aの厚さt4は4mm~6mm、前記外輪セグメント120Bの厚さt3は3.5mm~4.5mm、前記インナー部材123の厚さt5は0.7mm~1.2mmの範囲に設定される。尚、本発明の好適な実施例においては、前記ヘッド基部11の前方側の厚さt1が1.4mm、後方側の厚さt2が0.7mm、該外輪セグメント120Bの厚さt3が4mm、該打球セグメント120Aの厚さt4が5mm、該インナー部材123の厚さt5が1mmであることが好ましい。
【0019】
図4に示すように、前記ヘッド基部11の開口部110の内側に、前記蓋部材20を支持する取付環部1101を有し、該取付環部1101の外表面と該ヘッド基部11の外周面との間に、0.7mm~1mmの段差dを有し、本発明の好適な実施例においては、該段差dは0.7mmであることが好ましく、また、該取付環部1101の幅sは8mm~12mmの範囲でり、本発明の好適な実施例においては、該幅sは10mmであることが好ましく、さらに、該ヘッド基部11の開口部110の前縁と前記フェース板部12の前方側面との距離Dは、15mm~25mmの範囲に設定されており、本発明の好適な実施例においては、該距離Dは20mmであることが好ましい。前記ヘッド基部11の前端と該フェース板部12の周縁とは一体成形されている構成と、該ヘッド基部11の開口部110の前縁からフェース板部12の前方側面までの間に一定の長さを持つように設計されていることにより、本発明に係るゴルフクラブヘッドには、打球時の衝撃力に耐える十分な強度を有する。
【0020】
図1図4に示すように、本発明の炭素繊維複合材料からなる蓋部材20は、金型に複数層の炭素繊維プリプレグを積層して一体成形された部品であり、前記クラブヘッド本体10の開口部110に接着またはその他の結合方法で固設される。尚、該開口部110を蓋する蓋部材20は、当該開口部110が該クラブヘッド本体10のヘッド基部11の頂部に形成された場合にトップカバーとなり、当該開口部110がクラブヘッド本体10のヘッド基部11の底部に形成された場合にボトムカバーとなる。
【0021】
図1図4に示すように、前記ヘッド基部11の開口部110が、その内周縁に形成された取付環部1101のドーナツ状の中心にあたる空洞を通して、ヘッド基部11の内部空間と連通しており、該開口部110の内周縁に形成される取付環部1101の外表面と該ヘッド基部11の外周面との間に段差を有する。前記蓋部材20は、その外形と該開口部110の外形とは対応すると共に、その厚さと該開口部110の内周縁の取付環部1101の外表面と該ヘッド基部11の外周面との間の段差とは対応しており、このような設計により、クラブヘッド本体10の開口部110に組み付けられた蓋部材20は、該取付環部1101及び開口部110にすき間なく段差なく結合されることができる。
【0022】
図1図3及び図6に示すように、前記ヘッド基部11の前方側の片側に形成されたホーゼル部13には、チタン合金などの軽金属からなるスリーブ131が着脱可能に組み付けられており、その具体的な構造について説明すると、該スリーブ131の底端に締結孔を有し、該ヘッド基部11の前方側の底部に該締結孔と位置合わせされると共に該締結孔と連通する凹み部1102を有し、該ヘッド基部11底部の凹み部1102にネジ132を挿通して該スリーブ131の締結孔に螺合することにより、該スリーブ131が該ヘッド基部11に交換可能に組み付けられている。
【0023】
図2図4及び図7に示すように、前記ウェイト部材30は、前記クラブヘッド本体10のヘッド基部11の後方側に固設され、その数は一つであってもよいし、複数個であってもよく、ゴルフクラブヘッドの異なる要求性能に応じて、該ウェイト部材30の数を任意に設定することができる。本発明のクラブヘッド本体10及び蓋部材20はいずれも炭素繊維複合材料で製作されるので、その重量が大幅に軽減されており、その軽量化によって得られた余剰重量をウェイト部材30に配分することができる。従来技術のゴルフクラブヘッドのウェイト部材の重量は約20グラムであるのに対し、本発明のウェイト部材30の重量を20~70グラムまで増加することが可能となるので、設計時における重量的な余裕が生じ、再配分できる重量が多いので、本発明における重量配分設計の自由度が高い。尚、前記クラブヘッド本体10の後方側に固設されたウェイト部材30の重量の増加により、クラブヘッド本体10の重心位置も後方に移動し、これにより、ゴルフクラブヘッドの飛距離性能の向上に寄与する。図面に示された本発明の好適な実施例実施においては、前記ヘッド基部11の後方側の取付凹部14に、ウェイト部材30を螺合固定するための固定部材15が接着固定される。尚、本発明のウェイト部材30の重さは55グラム~65グラム、固定部材15の重さが8グラム~12グラムの範囲に設定されるが、該ウェイト部材30の重さが60±1グラムであることが好ましい。
【0024】
図2図4及び図7を参照しながら、前記固定部材15について詳しく説明する。該固定部材15は、金属材料(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金など)で製作されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、前記ウェイト部材30は、炭素繊維複合材料よりも高い比重の金属材料(例えば、タングステン-ニッケル系合金など)で製作される。前記固定部材15上に、ネジ孔151と、該ネジ孔151の片側または両側に形成された固定孔152を有し、前記ウェイト部材30上に、該固定部材15のネジ孔151と対応するスルーホール31を有すると共に、その裏側に該固定部材15の固定孔152と対応する一つ又は二つの結合柱32を有する。該結合柱32が該固定孔152に嵌挿されることにより、該ウェイト部材30が固定部材15の表側面に位置決めされ、該ウェイト部材30のスルーホール31にネジ33を通して該固定部材15のネジ孔151に螺合することにより、該ウェイト部材30が固定される。尚、前記ウェイト部材30と固定部材15との結合方法は上述した内容に限定されるものではなく、両者がしっかりと結合されていれば、どのような結合方法であってもよい。
【0025】
上記の技術手段によって、本発明に係る炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドは、炭素繊維複合材料で一体成形されたヘッド基部11及びフェース板12部を有するクラブヘッド本体10と、炭素繊維複合材料からなる蓋部材20とから構成されることにより、ゴルフクラブヘッド全体の軽量化を図ることができ、約20グラム~70グラムの余剰重量を得ることができる。また、本発明のクラブヘッド本体10は、炭素繊維複合材料から構成されていることで、強度を確保した上で軽量化を図り、その軽量化によって得られた余剰重量を容易に任意の位置に再配分することができるので、クラブヘッド本体10の重量配分を自由に設計することができ、重心GC深さ(いわゆる重心GC位置からフェース板の外表面との間の水平距離)及び慣性モーメント(Moment Of inertia, MOI)の調整可能な範囲は広く、ゴルフクラブヘッドの打撃性能をより一層向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明に係る炭素繊維複合材料からなるゴルフクラブヘッドの炭素繊維複合材料からなるフェース板部12は、そのフェース基部120内にインナー部材123が設置されてサンドイッチ構造となることにより、強度と耐衝撃性を確保した上で、そのインナー部材123の材質を異なる材料または異なる引張り弾性率の炭素繊維複合材料に変えれば、異なる剛性及び異なるフェース板部12の回復係数(COR)を変化させることができると共に、多様な組み合わせを有することで、ゴルフクラブヘッドの剛性を多様に設計でき、打球時の飛距離やボールの捉えやすさ、打球感、打球音などを容易に調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
10 クラブヘッド本体
11 ヘッド基部
110 開口部
1101 取付環部
1102 凹み部
12 フェース板部
120 フェース基部
120A 打球セグメント
120B 外輪セグメント
121 前ブロック
122 後ブロック
123 インナー部材
1231 環状部
1232 コア部
1233 連結部
13 ホーゼル部
131 スリーブ
132 ネジ
14 取付凹部
15 固定部材
151 ネジ孔
152 固定孔
20 蓋部材
30 ウェイト部材
31 スルーホール
32 結合柱
33 ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7