(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090675
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】クロマトグラフィ用脱塩システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/14 20060101AFI20230622BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20230622BHJP
G01N 30/64 20060101ALI20230622BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20230622BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G01N30/14 Z
G01N30/72 C
G01N30/64 A
G01N30/26 M
G01N30/86 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198360
(22)【出願日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】17/553,956
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン リウ
(57)【要約】
【課題】分析システムを提供する。
【解決手段】分析システムは、試料を1つ以上の分析物に分離するように構成されたクロマトグラフィカラムと、移動相から1つの電荷の少なくともイオンを除去するように構成されたイオン除去デバイスであって、クロマトグラフィカラムの出力に流体結合される、イオン除去デバイスと、移動相中の1つの電荷のイオンの活量に対応する信号を測定するように構成されたイオン選択センサであって、イオン除去デバイスの出力に流体結合される、イオン選択センサと、移動相の流れを中断することができる任意選択の分流弁と、イオン選択センサの信号を監視し、かつ信号が所定の閾値よりも大きい場合に任意選択の分流弁を切り替えて移動相の流れを中断するか、又はポンプをオフにするように構成されたマイクロプロセッサと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析システムであって、
a)移動相をポンプで送るように構成されたポンプと、
b)前記移動相に試料を入力するように構成された注入弁であって、前記ポンプの出力に流体結合される、注入弁と、
c)前記試料を1つ以上の分析物に分離するように構成されたクロマトグラフィカラムであって、前記注入弁の出力に流体結合される、クロマトグラフィカラムと、
d)前記移動相から1つの電荷の少なくともイオンを除去するように構成されたイオン除去デバイスであって、前記クロマトグラフィカラムの出力に流体結合される、イオン除去デバイスと、
e)前記移動相中の1つの電荷の前記イオンの活量に対応する信号を測定するように構成されたイオン選択センサであって、前記イオン除去デバイスの出力に流体結合される、イオン選択センサと、
f)前記移動相の流れを中断することができる任意選択の分流弁と、
g)前記イオン選択センサの前記信号を監視し、かつ前記信号が所定の閾値よりも大きい場合に前記任意選択の分流弁を切り替えて前記移動相の前記流れを中断するか、又は前記ポンプをオフにするように構成されたマイクロプロセッサと、を備える、分析システム。
【請求項2】
h)第1の入口、第1の出口、及び第2の出口を備える、第1の分割デバイスを更に備え、
前記第1の入口が、前記第1の出口及び前記第2の出口の各々に流体結合され、前記第1の入口が、前記イオン除去デバイスにも流体結合され、前記第1の出口が、前記イオン選択センサの入力に流体結合され、
前記第1の分割デバイスが、前記移動相の第1の部分が前記第1の出口に流れ、前記移動相の第2の部分が前記第2の出口に流れるように、前記イオン除去デバイスから前記第1の入口内に入力された前記移動相を分割するように構成されている、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記移動相の前記流れを中断することができる前記分流弁を備え、前記分流弁が、第1の弁入口、第1の弁出口、及び第2の弁出口を有し、前記分流弁が、第1の状態及び第2の状態を有し、
前記第1の弁状態では、前記第1の弁入口が、前記第1の弁出口に流体結合され、前記第2の弁出口には流体結合されず、
前記第2の弁状態では、前記第1の弁入口が、前記第2の弁出口に流体結合され、前記第1の弁出口には流体結合されない、請求項2に記載の分析システム。
【請求項4】
前記第1の分割デバイスの前記第2の出口が、前記分流弁の前記第1の弁入口に流体連結される、請求項3に記載の分析システム。
【請求項5】
前記分流弁の前記第1又は第2の弁出口のいずれかが、質量分析計に流体接続される、請求項4に記載の分析システム。
【請求項6】
1つの電荷の前記イオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群から選択される、請求項1に記載の分析システム。
【請求項7】
前記イオン選択センサが、固体電極を備え、前記イオン選択センサが、イオン交換試薬を浸出させない、請求項1に記載の分析システム。
【請求項8】
フローセル入口及びフローセル出口を有するイオン選択フローセルを更に備え、前記イオン選択フローセルが、前記イオン選択センサを含み、前記フローセル入口が、前記イオン除去デバイスの出口に流体結合される、請求項1に記載の分析システム。
【請求項9】
前記イオン選択センサが、ヒドロニウム電極であり、前記信号が、pH値に対応し、前記所定の閾値が、2~4の範囲のpH値から選択される、請求項2に記載の分析システム。
【請求項10】
前記イオン選択センサが、カリウム電極であり、前記信号が、カリウム活性値に対応し、前記所定の閾値が、1.75mMのカリウム活性値に対応する、請求項2に記載の分析システム。
【請求項11】
前記イオン選択センサが、陽イオンサプレッサ及び導電率センサを備え、前記陽イオンサプレッサの出力が、前記導電率センサの入力と流体結合している、請求項1に記載の分析システム。
【請求項12】
i)第2の入口、第3の出口、及び第4の出口を備える、第2の分割デバイスを更に備え、
前記第2の入口が、前記第3の出口及び前記第4の出口の各々に流体結合され、前記第2の入口が、前記クロマトグラフィカラムの前記出力にも流体結合され、前記第3の出口が、前記イオン除去デバイスに流体結合され、前記第4の出口が、電気化学検出器に流体結合され、
前記第2の分割デバイスが、前記移動相の第3の部分が前記第3の出口に流れ、前記移動相の第4の部分が前記第4の出口に流れるように、前記第2の入口内に入力された前記移動相を分割するように構成されている、請求項1に記載の分析システム。
【請求項13】
質量分析計及びクロマトグラフィシステムを用いて試料を分析する方法であって、
試料を前記クロマトグラフィシステムのクロマトグラフィカラムに注入することと、
移動相を前記クロマトグラフィカラムに流入させて、異なる時間において前記試料を前記クロマトグラフィカラムから溶出する1つ以上の分析物に分離することと、
前記移動相を前記クロマトグラフィカラムからイオン除去デバイスに流入させることと、
前記イオン除去デバイス内で前記移動相から1つの電荷の少なくともイオンを除去することと、
前記イオン除去デバイス内で前記イオンを除去した後、前記移動相を第1の部分及び第2の部分に分割することと、
前記第1の部分をイオン選択センサに流すことと、
前記イオン選択センサで信号を測定することと、
前記イオン選択電極からの前記信号が、所定の閾値を下回る場合、前記第2の部分を質量分析計に流すことと、を含む、方法。
【請求項14】
前記第2の部分を分流弁に流すことと、
前記イオン選択電極からの前記信号が、所定の閾値を下回る場合、前記第2の部分を前記分流弁から質量分析計に流すことと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン選択センサからの前記信号が、前記所定の閾値を超えていると判定し、その後、前記分流弁から前記質量分析計への前記第2の部分の前記流れを停止することと、
前記第2の部分が前記分流弁から廃棄物リザーバに流れるように、前記分流弁を切り替えることと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン選択センサからの前記信号が、前記所定の閾値を超えていると判定し、その後、前記第2の部分の流れが前記質量分析計へ通過することを停止すること、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記移動相を前記クロマトグラフィカラムに流入させた後、かつ前記イオン除去デバイス内で1つの電荷の少なくともイオンを除去する前に、前記移動相を第3の部分及び第4の部分に分割することと、
前記第3の部分を電気化学検出器に流入させ、その後、前記電気化学検出器内の1つ以上の分析物を測定することと、
前記第4の部分を前記イオン除去デバイス内に流入させることと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン選択センサが、固体電極を備え、前記イオン選択センサが、イオン交換試薬を浸出させない、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
フローセル入口及びフローセル出口を有するイオン選択フローセルを更に備え、前記イオン選択フローセルが、前記イオン選択センサを含み、前記フローセル入口が、前記イオン除去デバイスの出口に流体結合される、請求項13に記載の分析システム。
【請求項20】
前記イオン選択センサが、ヒドロニウム電極であり、前記信号が、pH値に対応し、前記所定の閾値が、2~4の範囲のpH値から選択される、請求項13に記載の分析システム。
【請求項21】
前記イオン選択センサが、カリウム電極であり、前記信号が、カリウム活性値に対応し、前記所定の閾値が、1.75mMの前記カリウム活性値に対応する、請求項13に記載の分析システム。
【請求項22】
前記イオン選択センサが、陽イオンサプレッサ及び導電率センサを備え、前記陽イオンサプレッサの出力が、前記導電率センサの入力と流体結合している、請求項13に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高速陰イオン交換クロマトグラフィとパルスアンペロメトリック検出(HPAE-PAD)を組み合わせると、高感度、かつ最小限の試料調製で非誘導体炭水化物を直接定量することが可能になる。親水性相互作用クロマトグラフィ(HILIC)などの他のクロマトグラフィ技法と比較して、HPAEはオリゴ糖の優れた分解能を提示することが示されている。HPAEを質量分析計(MS)と組み合わせることで、より迅速でより信頼性の高い同定及びピークの確認が可能になる。更に重要なことは、複雑なオリゴ糖構造の解明に使用できることである。特に注目される1つの分野は、バイオ医薬品の使用量が増加した結果、急成長している糖鎖分析である。別の重要な分野は、食品及び栄養の研究における、プレバイオティクス、並びに他のオリゴ糖及び多糖類の特性評価であり、オリゴ糖及び多糖類のプロファイリングにおいてHPAE-PADはすでに確立した技法であるが、HPAE-MSはより詳細な特性評価を提示することができる。
【0002】
HPAE及びMSの連動は、技術的な課題である。オリゴ糖の分離に使用される典型的なアルカリ酢酸塩及び水酸化物溶離液は、不揮発性及び高い伝導性のため、質量分析計で用いられるエレクトロスプレーイオン化(ESI)に適合しないため、カラムとESI-MSとの間に脱塩デバイスが必要である。
【0003】
脱塩器(サプレッサ)は、2つの陽イオン交換膜が3つのチャネルを隔てるサンドイッチ構造を採用している。中央のチャネルは溶離液チャネルである一方で、隣接する側面のチャネルは再生チャネルである。再生チャネルで水の電気分解が起こり、陽イオン交換膜を通過するヒドロニウムイオンが発生し、溶離液中のアルカリ陽イオンを連続的に交換し、水酸化アルカリ及び酢酸塩を、水と、揮発性でESI-MSに適合する酢酸とに変化させることができる。脱塩器の性能は、多くの要因の影響を受ける可能性がある。陽イオン交換膜は、試料マトリックス又は汚染物質の沈殿で汚染される可能性があり、イオン交換がうまくいかず、脱塩効率が低下する。再生剤ボトルの振れにより再生剤チャネルに液体がなくなり、再生が失敗する可能性がある。脱塩器は、下流の目詰まりによって引き起こされる高い背圧により、漏れて故障する可能性がある。脱塩器が適切に機能していない場合、不揮発性のアルカリ酢酸塩及び水酸化物溶離液が侵入して、ESIが不安定になり、イオン化の抑制、広範囲なピークのテーリング、及び複雑化した質量スペクトルを引き起こすことがある。ESIプローブに不揮発性塩類が流れ続けると、ESIソースに塩の堆積物が蓄積する可能性があり、メンテナンスが必要になるため、システムのダウンタイムが長くなる。
【発明の概要】
【0004】
分析システムは、移動相をポンプで送るように構成されたポンプと、移動相に試料を入力するように構成された注入弁であって、ポンプの出力に流体結合される、注入弁と、試料を1つ以上の分析物に分離するように構成されたクロマトグラフィカラムであって、注入弁の出力に流体結合される、クロマトグラフィカラムと、移動相から1つの電荷の少なくともイオンを除去するように構成されたイオン除去デバイスであって、クロマトグラフィカラムの出力に流体結合される、イオン除去デバイスと、移動相中の1つの電荷のイオンの活量に対応する信号を測定するように構成されたイオン選択センサであって、イオン除去デバイスの出力に流体結合される、イオン選択センサと、移動相の流れを中断することができる任意選択の分流弁と、イオン選択センサの信号を監視し、かつ信号が所定の閾値よりも大きい場合に任意選択の分流弁を切り替えて移動相の流れを中断するか、又はポンプをオフにするように構成されたマイクロプロセッサと、を備える。
【0005】
これら及び他の目的、並びに利点は、添付の図面及びその説明から明らかになるであろう。
【0006】
この明細書に組み込まれ、かつ、この明細書の一部を成している、添付の図面は、実施形態を例示しており、上に提示された概略的な説明及び以下に提示される実施形態の詳細な説明とともに、本開示の原理を解説する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】代表的なHPAE-PAD/MSシステムの模式図である。
【
図6】導電率の読み取り値を試験するための実施例1のシステムの模式図である。
【
図8】実施例2についての較正標準1、2、5、10、及び20mM酢酸カリウムを使用した、カリウムISEの較正である。
【
図9】実施例2のISE電圧とカリウム濃度との関係のグラフである。
【
図10】10mM KOHを使用して運転するために脱塩器をオフにしたときの、ISE電圧及び導電率のグラフである。
【
図11】5mM KOH/5mM KOAcを使用して運転するために脱塩器をオフにしたときの、ISE電圧及び導電率のグラフである。
【
図13】実施例4の陽イオンサプレッサの前後に測定された導電率のグラフである。
【
図15】実施例5のNaOH溶離液からのナトリウム濃度に対してプロットされた導電率のプロットである。
【
図16】実施例5のNaOAc/NaOH溶離液からのナトリウム濃度に対してプロットされた導電率のプロットである。
【
図17】実施例5のナトリウム濃度を感知する導電率検出器の応答時間のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一部の分離に使用される溶離液には、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)に適合しない不揮発性塩が含まれている。実施例としては、オリゴ糖の分離に使用されるアルカリ酢酸塩及び水酸化物溶離液が挙げられる。非揮発性塩を水又は揮発性酸の形態(例えば、酢酸)に変えるには、サプレッサが必要である。サプレッサが故障すると、不揮発性塩がMSに入り、MSが停止してしまい、質量分析計の大規模な修理が必要になる。記載されたシステム及び方法は、サプレッサがいつ故障したかを検出する方法を提供し、介入によってMSへの損傷を防ぐことを許容する。
【0009】
いくつかの実施形態では、分析システムは、移動相をポンプで送るように構成されたポンプと、移動相に試料を入力するように構成された注入弁であって、ポンプの出力に流体結合される、注入弁と、試料を1つ以上の分析物に分離するように構成されたクロマトグラフィカラムであって、注入弁の出力に流体結合される、クロマトグラフィカラムと、移動相から1つの電荷の少なくともイオンを除去するように構成されたイオン除去デバイスであって、クロマトグラフィカラムの出力に流体結合される、イオン除去デバイスと、移動相中の1つの電荷のイオンの活量に対応する信号を測定するように構成されたイオン選択センサであって、イオン除去デバイスの出力に流体結合される、イオン選択センサと、移動相の流れを中断することができる任意選択の分流弁と、イオン選択センサの信号を監視し、かつ信号が所定の閾値よりも大きい場合に任意選択の分流弁を切り替えて移動相の流れを中断するか、又はポンプをオフにするように構成されたマイクロプロセッサと、を備える。
【0010】
オリゴ糖の分離に使用される溶離液条件は、通常、一定の水酸化アルカリ(典型的には、100mM NaOH)中のアルカリ酢酸塩(例えば、最大200~400mM NaOAc)勾配を含む。
図1は、代表的なHPAE-PAD/MSシステムの模式図を示す。カラム出口は、PAD用の電気化学セルに接続され、続いて電解再生された脱塩器(Thermo Fisher Scientific)に接続される。導電率検出器を脱塩器の出口において接続し、流出液がMSに入る前に導電率を監視することができる。しかし、導電率の読み取り値は、濃度の異なる酢酸とアルカリ酢酸溶液の混合物である、流出液の正確な組成に関する情報を提供するものではない。したがって、導電率信号は、脱塩器が適切に機能しているかどうかの指標を効果的に提供することができない(
図1及び実施例1)。説明されているデバイスは、効果的な指標を有する流出液のリアルタイムモニタを提示する。
【0011】
イオン除去デバイス(脱塩器)の実施例としては、サプレッサが挙げられる。自己再生サプレッサの場合、電極に定電流を印加して水電解を引き起こし、溶離液抑制のための水素又は水酸化物イオンを連続的に供給する。サプレッサは、単一電荷のイオン、又は正及び負の両方の電荷のイオンを除去するように設計することができる。いくつかの実施形態では、イオン除去デバイスは、単一電荷のイオンのみを除去するように構成されている。いくつかの実施形態では、イオン除去デバイスは、両方の電荷のイオンを除去するように構成されている。除去されるイオンは、典型的には、溶離液の対イオンである。いくつかの実施形態では、1つの電荷のイオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群から選択される。
【0012】
イオン選択センサは、移動相中の1つの電荷のイオンの活量に対応する信号を測定するように構成されている。イオン選択センサの実施例には、イオン選択電極(ISE)及びpHセンサが含まれる。いくつかの実施形態では、イオン選択センサは、イオン除去デバイスの流出液の塩濃度の増加を検出する。溶離液中のアルカリ陽イオンの組み合わせイオン選択電極(ISE)は、フローセルに収容することができる。ISEは、流出液のアルカリ陽イオン濃度を継続的に監視する。ISEの出力電位は、溶液中の選択されたイオンの濃度に比例する。いくつかの実施形態では、ISEの出力を使用して、電極応答が設定値を超えたときに分流弁をトリガして、弁の位置を切り替え、不揮発性溶離液が質量分析計に入るのを防ぐことができる。例えば、カリウム電極は、pH>2で、ミリモルレベルのカリウムイオンを正確に検出することができる。いくつかの実施形態では、イオン選択センサはカリウム電極であり、信号はカリウム活性値に対応し、所定の閾値は0.1mM~0.35Mのカリウム活性値に対応する(
図2)。所定の閾値の実施例としては、0.1mM~0.2mM、0.2mM~0.3mM、0.3mM~0.4mM、0.4mM~0.5mM、0.5mM~0.6mM、0.6mM~0.7mM、0.7mM~0.8mM、0.8mM~0.9mM、0.9mM~1mM、1mM~1.25mM、1.25mM~1.5mM、1.5mM~1.75mM、1.75mM~2mM、2mM~5mM、5mM~10mM、10mM~15mM、15mM~20mM、20mM~25mM、25mM~50mM、50mM~75mM、75mM~100mM、100mM~125mM、125mM~150mM、150mM~175mM、175mM~200mM、200mM~225mM、225mM~250mM、250mM~275mM、275mM~300mM、300mM~325mM、325mM~350mMが挙げられる。いくつかの実施形態では、閾値は1.75mMである。いくつかの実施形態では、ISEの出力を使用してポンプをオフし、不揮発性溶離液が質量分析計に入るのを防ぐことができる。データは、酢酸の存在下で関心のある範囲内のカリウム濃度の変化が、ISEによって十分に検出可能であることを示している(実施例2)。いくつかの実施形態では、イオン選択センサは、固体電極を備え、イオン選択センサは、イオン交換試薬を浸出させない。
【0013】
いくつかの実施形態では、イオン選択センサは、ヒドロニウム電極(pHセンサ、
図3)である。脱塩器が正常に機能している場合、流出液のpHは、2~3の範囲にある。脱塩器がアルカリ酢酸塩及び水酸化アルカリの>99%を酢酸及び水に変えることができない場合、流出液中に存在するアルカリイオンが増加し、アルカリ酢酸塩の濃度が上昇し、ひいては、pHの上昇につながる。pHの変化は、pHセンサによって識別可能であり、脱塩器のステータスの指標として使用することができる(実施例3)。流れのpHは酸性であるため、pHセンサはアルカリイオン(例えば、ナトリウムイオン)から何ら干渉を受けず、信頼性の高い測定を提示することができる。通常の操作条件下では、脱塩器からの流出液が継続的にMSに流入する一方で、pHセンサは流出液のpHを継続的に監視する。pHの読み取り値は、システムのステータスに関する指標を提供する。いくつかの実施形態では、pHセンサの出力を、pHが設定値を超えたときに分流弁をトリガして、弁の位置を切り替えるための機構として使用して、不揮発性溶離液が質量分析計に入るのを防ぐことができる。いくつかの実施形態では、所定の閾値は、2、2.5、3、3.5、及び4など、2~4の範囲のpH値から選択される。MSへの流路は閉じられ、廃棄物への流路は開かれているため、塩を含む流出液はMSに導かれない。脱塩器がアルカリ酢酸塩及び水酸化アルカリの>99%を酢酸及び水に変えることができなかった場合、pHセンサの読み取り値は3を超える。いくつかの実施形態では、pHセンサの出力を使用してポンプをオフし、不揮発性溶離液が質量分析計に入るのを防ぐことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、イオン選択センサは、イオン選択フローセルを備える。イオン選択フローセルは、フローセル入口及びフローセル出口を有する。イオン選択フローセルはイオン選択センサを含み、フローセル入口はイオン除去デバイスの出口に流体結合される。
【0015】
いくつかの実施形態では、イオン選択センサが所定の閾値を超えている信号を検出すると、分流弁が移動相の流れを中断することができる。分流弁は、第1の弁入口、第1の弁出口、及び第2の弁出口を有する。分流弁は、第1の状態及び第2の状態を有する。第1の弁状態において、第1の弁入口は、第1の弁出口に流体結合され、第2の弁出口には流体結合されない。第2の弁状態では、第1の弁入口は、第2の弁出口に流体結合され、第1の弁出口には流体結合されない。分流弁は、MSの上流にある。これは、MSのすぐ上流、又はイオン選択センサの前、又はイオン除去デバイスの前にあってもよい。分流弁は、移動相の流れを中断し、第1の状態から第2の状態に切り替えることによって、水などの別の液体に置き換えることができる。いくつかの実施形態では、第1の分割デバイスの第2の出口は、分流弁の第1の弁入口に流体連結される。いくつかの実施形態では、分流弁の第1又は第2の弁出口のいずれかは、質量分析計に流体接続される。
【0016】
マイクロプロセッサは、イオン選択センサの信号を監視し、かつ信号が所定の閾値よりも大きい場合に任意選択の分流弁を切り替えて移動相の流れを中断するか、又はポンプをオフにするように構成されている。これにより、イオンが多すぎる移動相がMSに入るのを防ぐことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、脱塩器の出口において、マイクロティなどの第1の分割デバイスを使用して流れが分割される。第1の分割デバイスは、第1の入口、第1の出口、及び第2の出口を備える。第1の入口は、第1の出口及び第2の出口の各々に流体結合され、第1の入口は、イオン除去デバイスにも流体結合される。分割デバイスの第1の出口は、フローセル又はpHセンサ内に収容された溶離液中のアルカリ陽イオンの組み合わせイオン選択電極(ISE)などのイオン選択センサに接続される。いくつかの実施形態では、分割デバイスの第2の出口は分流弁に接続され、次いでMSに接続される。弁は通常、MSに対して開いており、廃棄するための流路に対しては通常閉じている。通常の操作条件下では、脱塩器からの流出液が継続的にMSに流入する一方で、イオン選択センサは流出液のアルカリ陽イオン濃度を継続的に監視する。脱塩器の機能は、溶離液中のアルカリ陽イオンをヒドロニウムイオンに交換することであるため、アルカリ陽イオンの濃度が高くなると、脱塩器が機能していないことを示している。イオン選択センサの出力電位は、溶液中の選択されたイオンの濃度に比例するため、イオン選択センサの出力を使用して、電極応答が設定値を超えたときに分流弁をトリガして、弁の位置を切り替え、不揮発性溶離液が質量分析計に入るのを防ぐことができる。例えば、カリウム電極は、pH>2で、ミリモルレベルのカリウムイオンを正確に検出することができる。データは、酢酸の存在下で関心のある範囲内のカリウム濃度の変化が、ISEによって十分に検出可能であることを示している(実施例2)。MS及びISEを通過する流量の比率は、背圧チュービングを通して調整することができる。脱塩器の出口とMSの入口との間の接続の長さは、追加のマイクロティ及び分流弁に対応するために大幅に変更する必要がないため、セットアップによって大きな分散が生じることはない。
【0018】
いくつかの実施形態では、流れは、脱塩器の出口にあるマイクロティなどの第1の分割デバイスを使用して分割される。第1の分割デバイスは、第1の入口、第1の出口、及び第2の出口を備える。第1の入口は、第1の出口及び第2の出口の各々に流体結合され、第1の入口は、イオン除去デバイスにも流体結合される。分割デバイスの最初の出口は、陽イオンサプレッサに接続され、次いで導電率センサに接続される。いくつかの実施形態では、分割デバイスの第2の出口は分流弁に接続され、次いでMSに接続される。弁は通常、MSに対して開いており、廃棄するための流路に対しては通常閉じている(
図7)。酢酸及びアルカリ酢酸塩の混合物を含む、変化した溶離液が陽イオンサプレッサに入った後、酢酸イオンが水酸化物イオンに交換され、混合物は水酸化アルカリ及び水に変えられる。脱塩器の故障によるアルカリ陽イオン濃度の上昇は、導電率センサによって、DI水からの低導電率のバックグラウンドに対して直接検出することができる。実施例4に示すように、Dionex CERS陽イオンサプレッサ前の導電率は、変えられた溶離液の様々な濃度との直接的な相関を反映していない一方で、Dionex CERS陽イオンサプレッサ後の導電率は、ナトリウム濃度と導電率応答との間に線形関係を示している。実施例5では、脱塩器を有するThermo Scientific Dionex ICS-6000システムで実施形態を実証し、Dionex CERS 1-mmプロトタイプ陽イオンサプレッサの前後で導電率を測定した。この実施形態は、脱塩性能の直接的な指標である、流れの中のアルカリ陽イオンの量を監視するための信頼できる解決策を提示する。
【0019】
いくつかの実施形態では、質量分析計に入るストリームからの分流(例えば、10μL/分)を最小限に抑えるために、キャピラリ形式の陽イオンサプレッサ(Dionex CCES300など)を使用することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、導電率センサと結合した陽イオンサプレッサの代わりに、導電率を検出するセンサ電極をサプレッサが装備している、統合した陽イオンサプレッサ及び導電率センサを使用することができる(
図4)。統合した陽イオンサプレッサ及び導電率センサの構造は、Dionex Electrolytic pH Modifier(Thermo Fisher Scientific)と同様の形式を有することができ、デバイスの出口近くに置かれたセンサ電極のペアを追加することが可能である。
【0021】
いくつかの実施形態では、分析システムは、第2の入口、第3の出口、及び第4の出口を備える第2の分割デバイスを更に備える。第2の入口は、第3の出口及び第4の出口の各々に流体結合される。第2の入口も、クロマトグラフィカラムの出口に流体結合される。第3の出口は、イオン除去デバイスに流体結合される。第4の出口は、電気化学検出器に流体結合される。第2の分割デバイスは、移動相の第3の部分が第3の出口に流れ、移動相の第4の部分が第4の出口に流れるように、第2の入口内に入力された移動相を分割するように構成されている。
【0022】
質量分析計及びクロマトグラフィシステムを用いて試料を分析する方法は、複数のステップを含む。試料は、クロマトグラフィシステムのクロマトグラフィカラムに注入される。移動相をクロマトグラフィカラムに流入させて、異なる時間において試料をクロマトグラフィカラムから溶出する1つ以上の分析物に分離する。移動相を、クロマトグラフィカラムからイオン除去デバイスに流入させる。1つの電荷の少なくともイオンを、イオン除去デバイス内で移動相から除去する。イオン除去デバイス内のイオンを除去した後、移動相を第1の部分及び第2の部分に分割する。第1の部分は、イオン選択センサに流される。信号は、イオン選択センサで測定される。第2の部分は、イオン選択センサからの信号が所定の閾値を下回る場合、質量分析計に流される。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、第2の部分を分流弁に流すことと、第2の部分を分流弁から質量分析計に流すことであって、イオン選択電極からの信号が、所定の閾値を下回る場合、質量分析計に流すことと、を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、イオン選択センサからの信号が、所定の閾値を超えていると判定し、その後、分流弁から質量分析計への第2の部分の流れを停止することを更に含む。分流弁は、第2の部分が分流弁から廃棄物リザーバに流れるように、切り替えられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、イオン選択センサからの信号が、所定の閾値を超えていると判定し、その後、第2の部分の流れが質量分析計へ通過することを停止することを更に含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法は、移動相をクロマトグラフィカラムに流入させた後、かつイオン除去デバイス内で1つの電荷の少なくともイオンを除去する前に、移動相を第3の部分及び第4の部分に分割することを更に含む。第3の部分は、電気化学検出器に流入される。1つ以上の分析物が電気化学検出器で測定される。第4の部分は、イオン除去デバイスに流入される。
【0027】
この場合、全ての範囲は包括的であり、組み合わせることが可能である。すなわち、範囲で示された値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。例えば、400~450ppmとして定義される範囲は、独立した実施形態として400ppm及び450ppmを含む。400~450ppmの範囲及び450~500ppmの範囲を組み合わせて、400~500ppmの範囲にすることができる。
【0028】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形を含み、特定の数値への言及は、文脈が明確に指示しない限り、少なくともその特定の数値を含む。したがって、例えば、「ある材料」への言及は、当業者に知られているそのような材料及びその同等物のうちの少なくとも1つへの言及であり、以下同様である。
【0029】
修飾語「約」も、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示していると見なされるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲も開示している。単一の数値を修飾するために使用する場合、「約」という用語は、指示された数値のプラス又はマイナス10%を指す場合があり、指示された数値を含む。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示し得、「約1」は0.9~1.1を意味する。
【0030】
リストが与えられた場合、特に断らない限り、そのリストの各個々の要素及びそのリストのあらゆる組み合わせは、別個の実施形態として解釈されるものと理解されるものとする。例えば、「A、B、又はC」として与えられた実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B、又はC」を含むと解釈されるものとする。
【0031】
明確さのために、別個の実施形態との関連で本明細書において説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることも理解されたい。すなわち、明らかに相容れない、又は除外されない限り、各個々の実施形態は他の実施形態と組み合わせ可能であるとみなされ、そのような組み合わせは別の実施形態であるとみなされる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で説明されている本発明の様々な特徴も、別々に又は任意のサブコンビネーションで提供され得る。更に、特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように起草できることに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の記載、又は「否定的な」制限の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などの、そのような排他的用語を使用するための先行詞として機能することを意図している。最後に、実施形態は、一連のステップの一部又はより一般的な構造の一部として説明することができるが、上述の各ステップは、それ自体独立した実施形態と見なすこともできる。
【0032】
本開示では、いくつかの実施形態を説明によって例示し、例示した実施形態をかなり詳細に説明したが、出願人の意図は、添付された特許請求の範囲をかかる詳細に制限又は多少なりとも限定するものではない。追加の利点及び改変が、当業者には容易に明らかとなろう。更に、個別のリストからの特徴を組み合わせることができ、実施例からの特徴を開示全体に一般化することができる。
【実施例0033】
実施例1:脱塩器からの流出液を監視するために単一の導電率検出器を使用しても、流出液の組成を示すのに効果的ではない
図5は、脱塩器の流出液の導電率を監視するためのセットアップの概略図を示している。脱塩器の後、酢酸ナトリウム(NaOAc)及び水酸化ナトリウム(NaOH)の溶離液は、酢酸(HOAc)及び酢酸ナトリウム(NaOAc)の混合物に変換される。様々な濃度の溶離液を0.25mL/分でシステムを通してポンプで送り込んだ。溶離液を脱塩した後、導電率を導電率検出器(CD)で測定した。この実験では、Dionex ERD 500 2-mmデバイスを脱塩器として使用した。適切に操作されたDionex ERD 500は、マニュアルによると、存在するナトリウムイオンの≧99.5%(最大0.35M)を交換する。
【0034】
計算を簡単にするために、99%の脱塩効率を使用して、脱塩器の流出液の組成を導き出した。対応する流出液の導電率は、流出液濃度、酢酸解離定数(K
a)、及びナトリウム、水素、及び酢酸イオンの限界当量導電率値を使用して計算した。結果を表1に示す。導電率検出器を通して収集された導電率の読み取り値を、比較のために示す。測定値は、計算値にかなり近い。導電率の値は、溶離液の濃度に関連付けられているように見える、すなわち、導電率が高いほど、溶離液の濃度が高くなる。
【表1】
【0035】
所与のNaOAc/NaOH溶離液濃度では、HOAc/NaOAc混合物の組成は脱塩効率に依存する。脱塩効率が低いほど、HOAc/NaOAc混合物中のナトリウムイオンの濃度が高くなる。一連のHOAc/NaOAc溶液は、特定の選択されたナトリウム濃度での溶離液組成の計算に基づいて調製された(MSから流れをそらすための閾値として5mMナトリウム濃度を選択すると仮定)。一連のHOAc/NaOAc溶液を、
図6の概略図に示されるセットアップを使用して導電率検出器内にポンプで送った。
【0036】
表2では、測定された導電率の値が、流出液濃度、酢酸解離定数(K
a)、及び限界当量導電率に基づいて計算された導電率の値と比較されている。計算に基づく脱塩効率も表2に示す。計算値からの測定値の偏差は、計算が、溶離液の濃度が100mMを超える時に無限希釈での限界当量導電率に基づいているという事実によって説明できる。700~800μS(表1に示す完全に抑制された250mM NaOAc/100mM NaOHの導電率に相当、分離終了時のカラム洗浄によく採用される溶離液条件)のCD読み取り値が、流れを迂回させる閾値である場合(この値以下の任意のCD読み取り値は、脱塩器が適切に機能していることを示すものとしてシステムにより認識される)、400~500μS(表2に示す妥協した抑制条件下での50mM NaOAc/100mM NaOH又は100mM NaOAc/100mM NaOH溶離液からの5mMナトリウムイオンにほぼ相当)は、システムが脱塩器の故障開始を示すものとして認識することはない。脱塩器の流出液には様々な濃度の酢酸が存在しているため、所与のナトリウム濃度(例えば、5mM)について、脱塩器の流出液の導電率読み取り値は表2に示すように大きく変化し得る。HPAEを使用したオリゴ糖の分離では、典型的には、様々な濃度及び勾配のNaOAc/NaOH溶離液勾配が採用されるため、脱塩器の流出液の導電率を、分流弁の切り替えへの脱塩器のステータスを直接指示するのは現実的ではない。ΔCDと溶液組成との間にも明確な相関関係は見られなかった。
【表2】
【0037】
実施例2:カリウムイオン選択電極(ISE)は、脱塩器の流出液に存在するカリウムイオンを効果的に検出する。
様々な濃度の水酸化カリウム(KOH)と酢酸カリウム(KOAc)の混合物を、
図7に示すシステムを通してポンプで送り、カリウムISEをフローセルに収容し、導電率検出器の出口に位置させた。脱塩器はDionex ERD 500 2-mmであった。カリウムISEの潜在的な出力は、Dionex UCI-100インターフェースを介してDionex Chromeleon 7において記録された。カリウムISEの較正は検体カップで行い、電極出力を記録した(
図8)。全ての2つのプラトー間のディップは、2つの較正溶液の間隔である。この実施例では、適切な電流を脱塩器に印加して、既知の濃度の溶離液を、システムを通してポンプで送り込んだ。ISE電圧とカリウム濃度との関係のグラフを
図9に示す。10mM KOH及び5mM mM KOH/5mM KOAcを使用した運転中は、それぞれ
図10及び11に示す脱塩器をオフにした(電流をオフにした)。導電率検出器及びカリウムISEを使用して、脱塩器の流出液を監視した。この実験における導電率検出器の目的は、カリウムISEの応答時間の基準を提供することであった。
【0038】
実施例3: pHセンサは、脱塩器の脱塩効率の変化を効果的に識別する
HOAc/NaOAc溶液の混合物であるシミュレーションされた脱塩器流出液の濃度は、200mM NaOAc/100mM NaOH溶離液の様々な脱塩効率に基づいて計算した。溶液は検体カップで調製し、pH電極で測定した。濃度及び酢酸解離定数(K
a)からシミュレーションされた脱塩器流出液のpHも計算した。計算されたpHは、表3の測定されたpHと比較される。
【表3】
【0039】
実施例4
脱塩器の流出液の導電率の読み取り値は、流出液に存在するナトリウムイオンの量との相関関係を示さない。陽イオンサプレッサの後に位置する導電率検出器からの応答は、脱塩器の流出液中のナトリウム濃度との線形相関を示す。
【0040】
200mM NaOAc/100mM NaOHの濃度での溶離液のシミュレーションされた脱塩器流出液(HOAc/NaOAcの混合物)を調製し、
図12の概略図に示すように、第1の導電率検出器(CD1)、次いで陽イオンサプレッサ(Dionex CERS 4mm)及び第2の導電率検出器(CD2)を通してポンプで送った。Dionex CERSサプレッサでは、酢酸イオン(OAc
-)が電解生成された水酸化物イオン(OH
-)に交換され、HOAcが低導電率のバックグラウンドを有する水(H
2O)に変換された。これにより、高塩濃度の溶離液中のナトリウム濃度を選択的に検出することが許容される。
【0041】
図13及び表4に示されるように、CD2からの応答は混合物中のナトリウム濃度に直線的に関連しているが、CD1の応答はナトリウム濃度と明確な相関関係を示さない。したがって、CD2は、脱塩器の流出液中のナトリウム濃度を効果的に指示することを提供する。
【表4】
【0042】
実施例5:導電率センサに結合された陽イオンサプレッサは、脱塩器の流出液に存在するナトリウムイオンを効果的に検出する
この実施例では、脱塩器の障害をシミュレーションする。様々な濃度のNaOAc/NaOH溶離液を、HPAEシステムを通してポンプで送り、脱塩器(Dionex ERD 500 2-mm)の電流をオフにし、陽イオンサプレッサ(Dionex CERS 500 1-mmプロトタイプ)に適切なサプレッサ電流を印加した。脱塩器(Dionex ERD500 2-mm)を通過する流量は、0.25mL/分であった。陽イオンサプレッサ(Dionex CERS 500 1-mmプロトタイプ)を通過する流量は、0.05~0.063mL/分であった。陽イオンサプレッサの再生液流量は、0.1~0.13mL/分であった。Dionex CERS 500 1-mmプロトタイプに印加された電流は、15mAであった。脱塩器の電源が入っていなかったので、脱塩器及び陽イオンサプレッサを通るナトリウムイオンの濃度は既知であった。セットアップの概略図(
図14)の点線の長方形は、分流弁及び質量分析計が現在の実験セットアップに対して置かれる場所を示している。脱塩器流出液の導電率が流出液中のナトリウム濃度を示すのに有効でないことを示すように、導電率検出器1(CD1)をシステム内に置いた。CD2応答をナトリウム濃度に対してプロットして、線形相関を示した。
【0043】
この実施例では、水酸化ナトリウム(NaOH)溶離液及び酢酸ナトリウム(NaOAc)/NaOH溶離液の両方のナトリウム濃度を調べる。5~50mMのナトリウム濃度を有するNaOH溶液の導電率を計算し、参考のための理論値として
図15及び16にプロットした。CD1及びCD2の両方で測定された溶離液の導電率を表4に報告する。様々な溶離液濃度で測定されたCD2からの導電率を
図15及び16にプロットする。
図15及び16に示すように、CD2の実験データの曲線は線形であり、ナトリウム濃度が増加するにつれて、曲線は理論曲線から逸れる。この偏差は、理論的な導電率が限界当量導電率イオンの合計に基づいているという事実によって説明でき、これは、溶液の無限希釈における電解質の当量導電率である(コールラウシュの法則)。この偏差は、ナトリウムの高濃度によって引き起こされる。ナトリウム濃度の閾値を設定することに関して言えば、濃度は曲線の線形範囲内に収まるため、偏差は方法の有効性に影響しない。この実験は、導電率検出器に結合した陽イオンサプレッサを使用すると、脱塩器の流出液中のナトリウム濃度の効果的な測定が提示される。脱塩器のステータスを監視するために使用することができる。
図15及び16は、(A)NaOH溶離液及び(B)NaOAc/NaOH溶離液のナトリウム濃度に対してプロットされた導電率を示しており、線形関係が示されている。点線の円は、5~10mM NaOHの当量導電率に基づいて計算された理論値を表す。結果を確認するために、0.05及び0.063mL/分である2つの流量を異なる日に試験した。表5は、
図15及び16のプロットを構成するために使用されたデータを示しており、測定値の日々の一貫性と、導電率信号に対する流量(0.5mL/分対0.063mL/分)の最小限の影響を明示している。5mMナトリウム濃度を閾値として設定するには、約1200μSを使用して分流弁の切り替えをトリガすることができる。
【0044】
図17は、ナトリウム濃度を感知する導電率検出器の応答時間のプロットである。溶離液濃度:(A)100mM NaOAc/100mM NaOH(B)200mM NaOAc/100mM NaOH。脱塩器(Dionex ERD 500 2-mm)を通る溶離液の流量:0.25mL/分、陽イオンサプレッサ(プロトタイプDionex CERS 1-mm)を通る流量:0.05mL/分、Dionex ERD 500 2-mm電流:150mA、プロトタイプDionex CERS 1-mm電流18mA、Dionex ERD 500 2-mmの再生流量:1.5mL/分、プロトタイプDionex CERS 1-mmの再生流量:0.1mL/分、実線のトレース:CD2、点線のトレース:CD1。
【0045】
ナトリウム濃度変化の導電率感知(CD2)の応答時間を評価するために、CD1及びCD2の信号を重ねて
図17に示す。この実施例では、2つの溶離液濃度条件(A)100mM NaOAc/100mM NaOH及び(B)200mM NaOAc/100mM NaOHを試験した。それらは、最初に適切な脱塩器及び陽イオンサプレッサの電流で運転した。次に、
図17に示すように、運転0分で脱塩器の電流をオフにした。自己再生しない(ゼロの電流を印加した)結果、ヒドロニウムイオンがなくなると、導電性溶離液が増加した。陽イオンサプレッサの前(CD1)及び後(CD2)の導電率の変化を記録した。CD1信号は、CD2の応答時間を評価するための参照として使用された。2つの検出器間の物理的な距離にもかかわらず。CD1とCD2との立ち上がり時間の差は、どちらの条件でも約0.4分であり、ナトリウム濃度の効果的な実際の感知を示している。
【表5】