(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090689
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】クッション性多孔質シースカバーを有するバスケットカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022201089
(22)【出願日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】63/291,301
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/057,036
(32)【優先日】2022-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK17
4C160KK18
4C160KK39
4C160KL03
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】医療装置を提供すること。
【解決手段】医療装置は、シャフトと、バスケットアセンブリとを含む。シャフトは、患者の器官の腔内に挿入するために構成されている。バスケットアセンブリは、シャフトの遠位に接続され、腔内の組織に電気エネルギーを印加するように構成された電極を含む。バスケットアセンブリは、バスケットアセンブリ上に取り付けられており、腔内の組織に接触し、同時に、(i)電極が組織を凹ませることを阻止し、(ii)電極から印加された電気エネルギーが組織に送達されることを可能にするように構成されている、可撓性多孔質シースを更に含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
患者の器官の腔内に挿入するために構成されたシャフトと、
前記シャフトの遠位に接続され、かつ前記腔内の組織に電気エネルギーを印加するように構成された電極を備えるバスケットアセンブリと、
前記バスケットアセンブリ上に取り付けられており、前記腔内の前記組織に接触し、同時に、(i)前記電極が前記組織を凹ませることを阻止し、(ii)前記電極から印加された電気エネルギーが前記組織に送達されることを可能にするように構成されている、可撓性多孔質シースと、を備える、医療装置。
【請求項2】
前記可撓性多孔質シースが、前記電極が前記組織を凹ませることを阻止するように、加圧流体によって膨張されるように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記可撓性多孔質シースを膨張させるために前記シャフト内のチャネルに前記流体を供給するように結合されたポンプを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記バスケットアセンブリが、前記多孔質シースを通して前記シャフトから前記組織に灌注流体を運ぶように結合された1つ以上の灌注出口を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記可撓性多孔質シース、及び前記電極のうちの少なくとも1つが、それらの間に有限流体充填間隙を有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記可撓性多孔質シースが、前記電極が前記組織を凹ませることを阻止するように構成された最小所与厚さを有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記多孔質シースが、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む編組ポリマー繊維、又はポリアミドを含む編組ポリマー繊維のうちの1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記多孔質シースが、直径が変化する管として編組されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記多孔質シースが、親水性コーティング又は疎水性コーティングのうちの少なくとも1つを有するポリマー繊維部分を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記多孔質シースが、血液が前記腔から前記シースを通って内側に侵入することを阻止しながら、灌流流体が1つ以上の灌流出口から前記シースを通って前記組織まで外側に通過することを可能にするように構成された布を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記バスケットアセンブリが、それぞれの近位先端及び遠位先端を有する複数の弾性スプラインを備え、前記スプラインの前記近位先端が、前記バスケットアセンブリの近位端部において機械的に接合され、前記スプラインの前記遠位先端が、前記バスケットアセンブリの遠位端部において機械的に接合され、前記スプラインが、前記バスケットアセンブリが前記腔内に展開されたときに半径方向外側に湾曲し、それによって前記シースを前記腔内の前記組織に接触させる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
電気信号発生器を備え、前記電気信号発生器が、前記組織をアブレーションするのに十分な振幅で前記電極に電気エネルギーを印加するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
医療用プローブを製造するための方法であって、
バスケットアセンブリを製造することであって、
腔内の組織に電気エネルギーを印加するように構成された電極と、
前記バスケットアセンブリ上に取り付けられており、前記腔内の前記組織に接触し、同時に、(i)前記電極が前記組織を凹ませることを阻止し、(ii)前記電極から印加された電気エネルギーが前記組織に送達されることを可能にするように構成されている、可撓性多孔質シースと、を備える、バスケットアセンブリを製造することと、
患者の器官の腔内に挿入するために構成されたシャフトに前記バスケットアセンブリを接続することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記可撓性多孔質シースが、前記電極が前記組織を凹ませることを阻止するように、加圧流体によって膨張されるように構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記医療用プローブが、前記可撓性多孔質シースを膨張させるために前記シャフト内のチャネルに前記流体を供給するためにポンプに結合されるように更に構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バスケットアセンブリを製造することが、前記シャフトから前記多孔質シースを通して前記組織に灌注流体を運ぶように結合された、1つ以上の灌注出口を製造することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記可撓性多孔質シース、及び前記電極のうちの少なくとも1つが、それらの間に有限流体充填間隙を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記可撓性多孔質シースが、前記電極が前記組織を凹ませることを阻止するように構成された最小所与厚さを有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療用プローブ、特に多電極アブレーションカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓不整脈は一般的に、催不整脈性の電気経路を遮断するために、心筋組織のアブレーションによって治療される。この目的のために、カテーテルが患者の血管系を通して心臓の室に挿入され、カテーテルの遠位端部にある電極が、アブレーションされる組織と接触される。場合によっては、組織を熱的にアブレーションするために、高電力高周波(radio-frequency、RF)電気エネルギーが電極に印加される。代替的に、不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)によって組織をアブレーションするために、高電圧パルスが電極に印加されてもよい。
【0003】
一部のアブレーション処置は、バスケットカテーテルを使用し、ここでは多電極が、カテーテルの遠位端部にある拡張可能バスケットアセンブリのスプラインに沿って配列される。スプラインは、外側に屈曲し、バスケット様形状を形成し、体腔内の組織を接触させる。例えば、米国特許出願公開第2020/0289197号は、エレクトロポレーションアブレーション治療のための装置及び方法を記載しており、例示的な装置は、医療用アブレーション治療のためのカテーテルに結合されたスプラインのセットを含む。スプラインのセットの各スプラインは、そのスプライン上に形成された電極のセットを含んでもよい。スプラインのセットは、第1の構成と第2の構成との間を移行するように構成されてもよい。
【0004】
米国特許出願公開第2020/0163707号は、カテーテルの遠位先端部分を画定する拡張可能スプライン構造を備えるカテーテルを記載している。スプライン構造は、複数の個々のスプラインを含むことができ、各スプラインは、複数のエネルギー伝達要素及び/又は温度センサを支持するように構成されることができる。スプライン構造と関連付けられるように構成された拡張可能バルーンは、その長さに沿ってスプライン構造に取り付けられていない。バルーンの壁を通した電気的動作は、冷凍アブレーションの前、間、又は後に行われてもよい。
【0005】
別の例として、米国特許出願公開第2019/0336208号は、心臓疾患、高血圧、及び他の医学的障害の処置のための装置及び方法を記載している。例えば、この刊行物は、肺静脈心筋アブレーションを含む胸部静脈アブレーション手技を行うことによって、心房細動を処置するための装置及び方法を記載している。いくつかの態様では、アブレーションは、アブレーションによって引き起こされる組織形成狭窄又は新生内膜過形成を軽減することができる薬剤の送達と協調して行われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な医療装置は、シャフトと、バスケットアセンブリと、可撓性多孔質シースとを含むことができる。シャフトは、患者の器官の腔内に挿入するために構成されることができる。バスケットアセンブリは、シャフトの遠位に接続されることができる。バスケットアセンブリは、腔内の組織に電気エネルギーを印加するように構成された電極を含むことができる。可撓性多孔質シースは、バスケットアセンブリ上に取り付けられることができ、腔内の組織に接触するように構成されることができ、同時に、(i)電極が組織を凹ませることを阻止し、(ii)電極から印加された電気エネルギーが組織に送達されることを可能にする。多孔質シースは、(i)電極が組織を凹ませることを阻止し、(ii)電極から印加される電気エネルギーが組織に送達されることを可能にするように、導電性流体によって膨張されることができる。多孔質シースの孔は、組織を洗浄することができる。導電性流体は、バスケットアセンブリのスプライン内の開口部を通して、及び/又は他の灌注チャネルを通して、多孔質シース内に送達されることができる。
【0007】
医療装置を使用する例示的な方法は、シャフトの遠位に接続されたバスケットアセンブリを患者の器官の腔に挿入することを含むことができる。電気エネルギーは、バスケットアセンブリの電極を使用して、腔内の組織に印加されることができる。可撓性多孔質シースは、膨張されることができる。腔内の組織は、バスケットアセンブリ上に取り付けられた可撓性多孔質シースを使用して接触されることができる。可撓性多孔質シースは、同時に、(i)電極が組織を凹ませることを阻止し、(ii)電極から印加される電気エネルギーが組織に送達されることを可能にすることができる。膨張したシースのサイズは、多孔質シースが膨張する圧力によって少なくとも部分的に決定されることができる。バスケットアセンブリに対する膨張させられたシースのサイズは、バスケットアセンブリの電極が組織に力を印加することを阻止し、及び/又は電極から組織への力を低減若しくは分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の本開示の態様の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【
図1】本開示の一態様に係る、バスケットカテーテルアセンブリのクッション性多孔質シースカバーを含むバスケットカテーテルを備えるカテーテルベースのアブレーションシステムの概略図である。
【
図2】本開示の一態様に係る、クッション性多孔質シースカバーを有する
図1のバスケットアセンブリの概略側面図である。
【
図3】本開示の一態様に係る、
図1のカテーテルを用いて組織をアブレーションする方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読まれるべきものであり、異なる図面における同様の要素には同一の番号が付けられている。図面は、必ずしも縮尺どおりとは限らず、選択された実施形態を示しており、また本発明の範囲を限定することを意図していない。詳細な説明は、限定ではなく例として本発明の原理を示す。この説明は、当業者が本発明を製造及び使用することを明らかに可能にし、また本発明を実施するための最良の態様であると現在考えられているものを含めて、本発明のいくつかの実施形態、適応例、変形例、代替物及び使用を説明する。
【0010】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は範囲に対する「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の一部又は集合が本明細書に記載の意図された目的のために機能することを可能にする好適な寸法公差を示す。より具体的には、「約」又は「およそ」は、記載された値の±10%の値の範囲を指してもよく、例えば、「約90%」は、81%~99%の値の範囲を指してもよい。
【0011】
本明細書で述べる「患者」、「ホスト」、「ユーザ」、及び「被験者」の血管系は、ヒト又は任意の動物の血管系であってよい。動物は、哺乳類、獣医学的動物、家畜動物、又はペット類の動物などを含むがこれらに限定されない、種々のあらゆる該当する種類のものであり得ることを理解するべきである。一例として、動物は、ヒトに類似したある特定の性質を有するように特に選択された実験動物(例えば、ラット、イヌ、ブタ、サルなど)であり得る。被験者は、例えば、あらゆる該当するヒト患者でよいことを理解するべきである。
【0012】
本明細書で論じられるように、「オペレータ」及び「ユーザ」は、医師、外科医、技術者、科学者、又は本明細書で開示される治療のための多電極カテーテルの送達と関連付けられる任意の他の個人若しくは送達器具類を含むことができる。
【0013】
本明細書で使用する場合、「管状」及び「管」という用語は、広義に解釈されるものとし、直円柱構造、若しくは断面が厳密に円形である構造、又はその長さ全体にわたって均一な断面である構造に限定されるものではない。例えば、管状構造は、概して、実質的な直円柱構造として例解される。しかしながら、管状構造は、本開示の範囲から逸脱することなく、テーパ状又は湾曲した外面を有してもよい。
【0014】
多電極心臓カテーテルは、典型的には、複数の電極と共に配設される遠位端アセンブリを備える。例えば、バスケットカテーテルは、典型的には、患者の器官の腔内に挿入するためにシャフトの遠位端部に結合された、スプラインの拡張可能フレームを備える。
【0015】
バスケットカテーテルは、バスケットカテーテルのスプライン(ひいてはスプライン上の電極)が同時に複数の場所で組織に接触し、アブレーションすることができることから、アブレーション処置を迅速かつ効率的に実行するのに有用である。しかしながら、電極は、処置中に組織を凹ませる可能性があり、これは局所的な過熱につながる可能性があり、結果として、炭化及び/又は他の外傷をもたらす可能性がある。滑らかで丸みを帯びた外形を有する電極の使用は、これらの効果を軽減するのに役立つことができるが、それ自体によっては組織損傷の問題を排除しない。
【0016】
本明細書に記載される本開示の態様は、電極からシースを通して組織に電気エネルギーが印加されることを依然として可能にしながら、電極が組織を凹ませないようにする一種の可撓性多孔質シースによってバスケットアセンブリを覆うことによって、これらの問題に対処する。
【0017】
いくつかの態様では、この機械的軟化効果を達成すると同時に、電気アブレーションの有効性を維持するために、可撓性多孔質シースは、導電性流体(例えば、生理食塩水)の灌注によって膨張される。加圧流体は、以下に説明するように、多孔質シースが包囲されたバスケットよりも幾分大きくなるようにシースのサイズを増大させる。シースが組織に接触する(例えば、組織に押し付けられる)と、シースはクッションとして作用する。クッション効果は、電極が組織を凹ませることを阻止するか、又は実質的な影響を軽減する。多孔質シース及び封入バスケットは、封入バスケット上の電極のうちの少なくともいくつかが、組織にいかなる力も印加しないように構成されてもよい。追加的又は代替的に、多孔質シース及び封入バスケットは、封入バスケット上の電極のうちの少なくともいくつかが多孔質シースを介して間接的に組織に力を加えるように構成されてもよく、バスケットによって組織に加えられる力は、電極が組織と直接接触していた場合(多孔質シースがない場合)よりも実質的に小さく、及び/又は実質的に大きな表面積にわたって広がる。
【0018】
典型的には、膨張したシースは、導電性流体によって充填された有限間隙によって電極の少なくともいくつかから分離される。間隙は、典型的には最大で数ミリメートルである。間隙のサイズは、典型的には、電極による有害な陥凹を低減するのに十分であるように選択され、同時に、電極から組織への十分なエネルギー伝達を可能にする。他の態様では、可撓性多孔質シースは、多孔質シース材料自体(例えば、軟質多孔質エラストマー)がいくらかのクッション性を提供する一方で、シースを通して嵌合するために依然として圧縮可能であるように、それ自体のいくらかの最小厚さで作製されることができる。
【0019】
いくつかの態様では、多孔質シースの材料の種類及び厚さは、カテーテルを通ってバスケットアセンブリに送達される灌注流体がシースを通って組織に外向きに通過することができる一方で、体腔(すなわち、器官の空洞から)からシースを通って内向きに血液が浸透するのを依然として阻止するように選択されてもよい。したがって、シースは、血液凝固を阻止するのに更に有用である。
【0020】
いくつかの態様では、電気信号発生器は、近接しているがカバーによって組織から物理的に分離された電極によって組織をアブレーションするのに十分な振幅でバスケットアセンブリ上の電極に電気エネルギーを印加する。一態様では、電気信号発生器は、電極からシースを通して印加される電気エネルギーが組織内に不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を引き起こすように、十分な振幅で電極に双極電気パルスを印加する。追加的又は代替的に、電気信号発生器は、電極からシースを通って印加される電気エネルギーが組織の熱的アブレーションを引き起こすように、十分な電力を有する電極に高周波(RF)電流を印加する。
【0021】
開示された技術は、必要な変更を加えて、灌注による膨張のために構成された可撓性多孔質シースによって覆われた多電極ラッソーカテーテルアセンブリなど、アブレーションに適用される他のタイプのカテーテルと共に使用されることができる。以下に記載される態様は、特に心臓内アブレーションのためのバスケットカテーテルに関するものであるが、本開示の原理は、電気エネルギーが生体組織に印加される他の種類の処置における使用に適合されてもよい。
【0022】
図1は、本開示の一態様に係る、バスケットアセンブリ40のクッション性多孔質シースカバー60を含むバスケットカテーテル22を備えるカテーテルベースのアブレーションシステム20の概略図である。システム20の要素は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,California)製のCARTO(登録商標)システムの構成要素に基づくものであってよい。
【0023】
医師30は、患者28の血管系を通って患者の心臓26の心腔にカテーテル22をナビゲートし、次いでバスケットアセンブリ40を展開し、その上に可撓性多孔質シース60がカテーテル22の遠位端に嵌合される。バスケットアセンブリ40の近位端部は、シャフト25の遠位端部に接続され、これを医師30が、カテーテル22の近位端部の近くでマニピュレータ32を使用して操縦する。バスケットアセンブリ40は、折り畳み構成において管状シース23を通して挿入され、管状シースは、患者28の血管系を通過して、アブレーション処置が実行されることになる心室の中に入る。心室に挿入されると、バスケットアセンブリ40が、管状シースから配備され、室内で拡張される。カテーテル22は、その近位端部において制御コンソール24に接続される。コンソール24上のディスプレイ27は、アブレーション処置の標的存在位置にバスケットアセンブリ40を位置決めする上で医師30を支援するために、バスケットアセンブリの存在位置を示すアイコンと共に、心室のマップ31又は他の画像を提示し得る。
【0024】
バスケットアセンブリ40が心臓26内に適切に配設及び位置決めされると、医師30は、コンソール24内の電気信号発生器38を作動させて、プロセッサ36の制御下でバスケットアセンブリ上の電極に電気エネルギー(IREパルス又はRF波形など)を印加する。電気エネルギーは、双極性モードにおいて、バスケットアセンブリ40上の電極対の間に、又は単極性モードにおいて、バスケットアセンブリ40上の電極と、別個の共通電極、例えば、患者の皮膚に適用される導電性バックパッチ41との間に適用されてもよい。アブレーション処置中、潅注ポンプ34が、食塩水溶液などの潅注流体を、シャフト25を通してバスケットアセンブリ40に送達する。
【0025】
典型的には、カテーテル22は、バスケットアセンブリ40の位置(存在位置及び配向)を示す位置信号を出力する1つ又は2つ以上の位置センサ(図示せず)を備える。例えば、バスケットアセンブリ40は、印加された磁場に応答して電気信号を出力する1つ又は2つ以上の磁気センサを組み込んでもよい。プロセッサ36は、当該技術分野で知られており、例えば、上述のCARTOシステムに実装される技術を用いて、バスケットアセンブリ40の存在位置及び配向の座標を見つけるために、信号を受信及び処理する。それに代わって、あるいはそれに加えて、システム20は、バスケットアセンブリ40の座標を見けるために、他の位置感知技術を適用してもよい。例えば、プロセッサ36は、バスケットアセンブリ40上の電極と、患者28の胸部に適用される体表面電極39との間のインピーダンスを感知し得、また、同様に当該技術分野で知られている技術を用いて、インピーダンスを存在位置の座標に変換し得る。いずれの場合でも、プロセッサ36は、マップ31上にバスケットアセンブリ40の存在位置を表示する際に座標を使用する。
【0026】
それに代わって、本明細書に記載されるカテーテル22及びアブレーション技術は、位置感知の恩恵を受けることなく用いられ得る。そのような態様では、心臓26内のバスケットアセンブリ40の存在位置を確認するために、例えば、蛍光透視法及び/又は他の撮像技術が使用されてもよい。
【0027】
図1に示されるシステム構成は、本開示の態様の動作を理解する際に概念を明確にするための例として提示されるものである。簡潔にするために、
図1は、システム20のうちの、バスケットアセンブリ40及びそのバスケットアセンブリを使用するアブレーション処置に特異的に関連する要素のみを示す。システムの残りの要素は、本開示の原理が、他の構成要素を使用して、他の医療治療システムにおいて実施され得ることは、当業者であれば同様に理解するであろうことは明らかであろう。全てのこのような代替的な実装は、本開示の範囲内であると考えられる。
【0028】
図2は、本開示の一態様に係る、クッション性多孔質シースカバー60を有する
図1のバスケットアセンブリ40の概略側面図である。バスケットアセンブリ40は、その拡張状態で見られ、可撓性多孔質シース60は、シャフト25内のチャネル21を介して運ばれる加圧された灌注流体によって得られるその膨張状態にある。
【0029】
図示のように、バスケットアセンブリ40は、遠位端部48と、シャフト25の遠位端部52に接続された近位端部50と、を有する。バスケットアセンブリ40は、複数のスプライン44を備え、その近位端はバスケットアセンブリ40の近位端部50において結合され、その遠位端はバスケットアセンブリ40の遠位端部48において結合される。1つ又は2つ以上の電極54が、スプライン44の各々に外方に配設されている。あるいは、スプライン44は、固体導電性材料を含むことができ、したがって、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0307815号として公開された、2020年4月7日に出願された米国特許出願第16/842,648号に記載されるように、電極自体として機能してもよい。
【0030】
スプライン44内の潅注出口56は、スプライン内を流れる潅注流体が、電極54の近傍で流出し、また組織に潅注することを可能にする。代替的又は追加的に、潅注出口は、バスケットアセンブリ内の他の場所、例えば、バスケットアセンブリ(図示せず)の内部に収容されている潅注マニホールド上に位置し得る。
【0031】
図示された拡張状態において、スプライン44は、半径方向外側に曲がり、多孔質シース60を拡張させ、灌注によって更に膨張された後、心臓内の組織に接触する。図示のように、可撓性シース60は、バスケットアセンブリ40の上に取り付けられており、したがって、バスケットアセンブリが拡張されて組織に対して前進されるときに心臓26内の組織に接触する。したがって、シース60は、望ましくない陥凹を引き起こし得る、電極54と心臓組織との間の直接的な機械的接触を阻止する。見られるように、可撓性多孔質シース、及び電極のうちの少なくとも1つは、それらの間に有限流体充填間隙70を有する。
【0032】
それでもなお、電極54に印加される電気エネルギーは、シース60を通って組織に流れる。一態様は、シース60は、例えば、約70μmの厚さを有する、発泡ポリテトラフルオロエチレン(expanded polytetrafluoroethylene、ePTFE)を含む。ePTFE内の細孔は、潅注流体が潅注出口56からシース60を通って外側に通過して心臓組織を潅注することを可能にする一方で、血液が心室からシースを通って内側に貫通することを阻止するのに十分な大きさである。ePTFEシースはまた、滑らかで、円滑で、強く、生体適合性であり、膨張することにより、電極54が心臓組織を凹ませるのを阻止するのに有利である。特定の実施形態では、多孔質シースは、10μm2から100,000μm2のそれぞれの面積を有する細孔を有してもよい。あるいは、細孔のそれぞれの面積は、100μm2から10,000μm2の間である。
【0033】
あるいは、シース60は、ポリエチレンテレフタレート(PET)糸、ポリアミド糸、任意の他の適切な材料の糸、ブレンド糸、又は糸の種類の組み合わせなどの適切なポリマー繊維を編組することによって作られた管を備える。管は、展開されたバスケット形状により良好に適合するように、可変直径で編組されてもよい。具体的には、管の近位の直径は、バスケットの近位のネックに嵌合するように作製されてもよく、遠位直径は、可能な限り小さく作製されてもよい。遠位端部は、緩んだ糸端を接着剤で留めること、糸端を一緒に溶融すること、又は任意の他の好適な封止方法によって閉じられてもよい。平坦な形状ではなく管状形状で布を利用する利点は、材料がバスケット形状により良好に適合し、ひだが回避又は最小化されることである。ひだの回避は、シース60の折り畳み直径を低減するのに役立ち、また、材料の折り畳みにおいて血液が凝固する可能性も低減する。
【0034】
多孔質シース60は、親水性コーティング又は疎水性コーティングのうちの少なくとも一方を有するポリマー繊維部分を含むことができる。所与のポリマー繊維部分は、親水性コーティング又は疎水性コーティングのうちの一方のみを有することができる。所与のポリマー繊維部分は、親水性コーティング及び疎水性コーティングの双方を有することができる。例えば、ポリマー繊維部分の外側又は内側表面は、疎水性コーティングを有することができ、反対側の表面は、親水性コーティングを有することができる。
【0035】
折り畳み状態(図示せず)では、スプライン44は直線状であり、バスケットアセンブリ40の心臓26への挿入を容易にするためにシャフト25の長手方向軸に平行に位置合わせされる。この状態では、可撓性シース60は、スプラインと共に内側に折り畳まれる。
【0036】
一態様では、スプライン44は、バスケットアセンブリ40の安定状態が折り畳み状態になるように生成される。この場合、バスケットアセンブリ40は、シースから押し出されると、シャフト25を介して牽引ワイヤ(図示せず)を近位方向に引っ張ることによって拡張される。牽引ワイヤ(図示せず)を解放することは、バスケットアセンブリ40が折り畳み状態に戻ることを可能にする。
【0037】
別の態様では、バスケットアセンブリ40の安定状態が
図2の拡張状態であるように、スプライン44が生成される。この場合、バスケットアセンブリ40は、シースから押し出されると拡張状態に開き、バスケットアセンブリをシース内に引き戻す前に、牽引ワイヤは、スプライン44を真っ直ぐにするための可撓性プッシャロッド46に置き換えられてもよい。
【0038】
多孔質シース70を有しないバスケットは、その最外径(典型的には、46として参照される長手方向軸からバスケットの赤道領域で測定される)が、完全に膨張した多孔質シースカバーの最大内径と同じ又は僅かに小さくてもよい。いくつかの実施形態では、バスケットの最大外径は、完全に膨張した多孔質シース70の内径の約80%から95%の任意の値である。
【0039】
上述した態様は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で具体的に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、本明細書の上記した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0040】
図3は、本開示の一態様に係る、
図1のカテーテルアセンブリを用いて組織をアブレーションする方法を概略的に示すフローチャートである。このプロセスは、バスケットカテーテルアセンブリ位置決めステップ302において、医師30が心臓26の腔にバスケットカテーテルを挿入し、心腔内の標的位置でバスケットアセンブリ40を拡張することから始まる。
【0041】
次に、医師30は、シース膨張ステップ304において、可撓性多孔質シース60を、電極54がアブレーションされた組織と直接物理的に接触することなくアブレーションを可能にする上述した形態に膨張させるように灌注を適用するようにシステム20に命令する。
【0042】
組織接触ステップ306において、医師30は、機能電極54の少なくとも一部(例えば、サブセット)を、例えば、アセンブリ40の側周全体にわたって、組織に計画された近接にする。医師は、膨張した多孔質シース60を組織と完全に接触させることによってこれを達成する。例えば、医師は、膨張した多孔質シース60を肺静脈の小孔に対して遠位方向に押し付け、その後、不整脈を治療するために肺静脈隔離を行ってもよい。シースカバー60が押されると、電極の遠位電極54の部分は、小孔組織に十分に近付けられるが、これらの遠位電極が小孔組織を凹ませる危険性はない。
【0043】
最後に、カテーテルが位置決めされて組織に押し付けられた後、医師は、組織アブレーションステップ308において、電気アブレーションを行う。
【0044】
図3に示されている例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されたものである。本態様はまた、心臓内心電図を取得するなど、追加ステップも含み、これらは、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書の開示から意図的に省略されている。加えて、提示を明確にするために、温度測定及び接触力の測定などの他の可能なステップは省略されている。
【実施例0045】
シャフト(25)と、バスケットアセンブリ(40)とを含む医療装置。シャフトは、患者の器官の腔内に挿入するために構成されている。バスケットアセンブリは、シャフト(25)の遠位に接続され、腔内の組織に電気エネルギーを印加するように構成された電極(54)を含む。バスケットアセンブリは、バスケットアセンブリ上に取り付けられており、腔内の組織に接触し、同時に、(i)電極が組織を凹ませることを阻止し、(ii)電極から印加された電気エネルギーが組織に送達されることを可能にするように構成されている、可撓性多孔質シース(60)を更に含む。