(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090691
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】細胞製剤
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20230622BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20230622BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20230622BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230622BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61M5/14 500
A61M5/168 500
A61M5/145 500
A61K35/12
A61K9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201136
(22)【出願日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2021204729
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、産学共同実用化開発事業「羊膜間葉系幹細胞の細胞製剤化と治療応用」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好(中島) 清花
(72)【発明者】
【氏名】梅田 伸好
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】中石 智之
【テーマコード(参考)】
4C066
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066EE14
4C066FF01
4C066FF04
4C066HH05
4C066HH07
4C066QQ26
4C066QQ44
4C076AA22
4C076BB17
4C076FF68
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA23
4C087MA66
4C087NA10
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、細胞製剤の点滴投与に使用するチューブの設置方法に工夫を加えることで、投与される細胞懸濁液の液量だけでなく細胞数のコントロールが可能な、安全性の高い細胞製剤とその投与システムを開発することである。
【解決手段】流速1.5mL/min以下での体内投与に使用する細胞製剤であって、前記細胞製剤を収容するための容器及び前記体内投与用の針を連結するチューブと組み合せて使用され、前記チューブは、前記針との接続部を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下である、細胞製剤を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流速1.5mL/min以下での体内投与に使用する細胞製剤であって、
前記細胞製剤を収容するための容器及び前記体内投与用の針を連結するチューブと組み合せて使用され、
前記チューブは、前記針との接続部を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下である、
前記細胞製剤。
【請求項2】
前記体内投与の対象者が15歳未満である、請求項1に記載の細胞製剤。
【請求項3】
前記体内投与の対象者の体重が50kg以下である、請求項1に記載の細胞製剤。
【請求項4】
前記体内投与の方法が記載されたラベル、添付文書又は取扱説明書が付された、請求項1に記載の細胞製剤。
【請求項5】
体内投与用の針、流路、及び液体製剤を収容するための容器がその順に接続された液体製剤投与用装置であって、
前記針は前記流路の第1の末端に接続され、前記容器は前記流路の第2の末端に接続され、
前記流路は、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、
前記液体製剤が、前記針より流速1.5mL/min以下で体内投与されるように構成される、前記装置。
【請求項6】
前記液体製剤が細胞及び/又は沈降速度が0.50μm/s~50μm/sの微粒子を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記液体製剤が細胞製剤である、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記微粒子の直径が5μm~30μmである、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の末端における前記流路の内径が、前記第1の末端における前記流路の内径より大きい、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記流路が、互いに連結された2以上の流路で構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記2以上の流路が流路接続部により接続される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記流路接続部が前記第1の末端より低い位置に配置される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の末端を有する流路が水平面に対し90°±20°で配置される、請求項5に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の末端を有する流路が折り返し部を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項15】
前記流路が流速調節部を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項16】
前記流速調節部が輸液ポンプ又はシリンジポンプを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
チューブを含む細胞製剤投与用キットであって、
前記チューブは、体内投与用の針及び細胞製剤を収容するための容器と組み合せて使用され、
前記針は前記チューブの第1の末端に接続され、前記容器は前記チューブの第2の末端に接続され、
前記チューブは、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、
前記細胞製剤は流速1.5mL/min以下で体内投与される、
前記キット。
【請求項18】
前記チューブが第1の末端及び第2の末端の両方を有するチューブである、請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低速でも点滴投与可能な細胞製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、治療に用いられる細胞製剤の研究開発が盛んに進められており、臨床現場でも数多く使用されるようになってきた。細胞製剤の代表的な投与方法として、血管内への点滴投与や担体に保持した状態での局所投与等が挙げられる。なかでも点滴投与は侵襲性が低く、操作も簡便であるため、細胞製剤の投与方法として広く採用されている。細胞製剤を点滴投与する方法としては、細胞製剤が入った容器を点滴スタンドに吊るして、容器に輸血チューブを繋ぎ、輸液ポンプ又はローラークレンメにより一定の流速に制御して投与されるのが一般的である。現在行われている細胞製剤の点滴投与は、成人を対象としていることからその投与速度は、3~5mL/min若しくはそれ以上の流速に設定されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
一方、小児の場合、点滴投与における輸液の流速は成人よりも遅い1mL/min程度が推奨されており(非特許文献2)、細胞製剤についても1mL/min程度の流速に設定する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】テムセル(登録商標)HS注添付文書、JCRファーマ株式会社、2017年1月
【非特許文献2】麻酔薬および麻酔関連薬ガイドライン第3版4訂、VII 輸液・電解質液、公益社団法人日本麻酔学会、2019年9月5日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、小児を対象とする細胞製剤の開発において、細胞製剤の流速を1mL/minに設定して実際に点滴投与の実験によるシミュレーションを行い、その滴下される液量及び細胞数を経時的に測定した。その結果、滴下される液体の液量自体は一定かつ設定値通りとなるものの、その液体中の細胞数は上下に大きく変動することが判明した。具体的には、単位時間当たりに血管内に流れ込むことになる細胞数が、あるタイミングでは成人に投与する流速に相当する程度まで上昇したり、また別のタイミングでは非常に低い流速で滴下しているレベルまで大きく低下したりを繰り返しており、血管内に投与される実際の細胞数がコントロールできないという、予想もしていない問題に直面した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、点滴投与に使用するチューブに特定の工夫を加えることで、驚くべきことに、1.5mL/min以下の低流速においても、液量だけでなく細胞数も設定値を維持して点滴投与できることを見出した。すなわち本明細書によれば、以下の発明が提供される。
【0007】
(1)点滴スタンドに吊り下げられた容器からチューブ及びチューブの下流側の末端に接続した針を通じて、流速1.5mL/min以下で体内に点滴投与される細胞製剤であって、前記チューブとして、針との接続部から少なくとも20cmまでの区間におけるチューブ内径が2.3mm以下である第1のチューブが使用されることを特徴とする細胞製剤。
(2)前記第1のチューブの上流側にさらに内径2.4mm以上の第2のチューブが接続されており、前記第2のチューブの上流側の末端が下流側の末端よりも高い位置で設置されていることを特徴とする、(1)に記載の細胞製剤。
(3)前記第2のチューブの設置角度が水平面に対し70°未満とならない、(2)に記載の細胞製剤。
(4)前記第2のチューブが水平面に対し略垂直に設置されている(2)に記載の細胞製剤。
(5)前記第1のチューブの下流側の末端が、第1のチューブと第2のチューブとの接続部よりも高い位置に設置されている、(2)から(4)のいずれかに記載の細胞製剤。
(6)輸液ポンプを用いて流速を制御して投与される、(1)から(5)のいずれかに記載の細胞製剤。
(7)投与対象者の年齢が15歳未満である、(1)から(6)のいずれかに記載の細胞製剤。
(8)投与対象者の体重が50kg以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の細胞製剤。
(9)点滴スタンドに吊り下げられた容器からチューブを通じて血管内に点滴投与される細胞製剤であって、流速1.5mL/min以下で投与される旨と、(1)から(8)のいずれかに記載の手段、又はそれに関連する若しくは同等の効果を得ることができる手段が記載された、ラベル、添付文書又は取扱説明書を付された細胞製剤。
(10)前記手段が、内径2.3mm以下のチューブを使用すること、及び/又は、点滴投与時のチューブの設置条件である、(9)に記載の細胞製剤。
【0008】
[1]流速1.5mL/min以下での体内投与に使用する細胞製剤であって、前記細胞製剤を収容するための容器及び前記体内投与用の針を連結するチューブと組み合せて使用され、前記チューブは、前記針との接続部を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下である、前記細胞製剤。
[2]前記体内投与の対象者が15歳未満である、[1]に記載の細胞製剤。
[3]前記体内投与の対象者の体重が50kg以下である、[1]又は[2]に記載の細胞製剤。
[4]前記体内投与の方法が記載されたラベル、添付文書又は取扱説明書が付された、[1]から[3]のいずれかに記載の細胞製剤。
[5]前記第2の末端における前記チューブの内径が、前記第1の末端における前記チューブの内径より大きい、[1]から[4]のいずれかに記載の細胞製剤。
[6]前記チューブが、互いに連結された2以上のチューブで構成される、[1]から[5]のいずれかに記載の細胞製剤。
[7]前記2以上のチューブがチューブ接続部により接続される、[6]に記載の細胞製剤。
[8]前記チューブ接続部が前記第2の末端より低い位置に配置される、[7]に記載の細胞製剤。
[9]前記チューブ接続部が前記第1の末端より低い位置に配置される、[7]又は[8]に記載の細胞製剤。
[10]前記第2の末端を有するチューブが水平面に対し90°±20°で配置される、[1]から[9]のいずれかに記載の細胞製剤。
[11]前記第1の末端を有するチューブが折り返し部を有する、[1]から[10]のいずれかに記載の細胞製剤。
[12]前記チューブが流速調節部を有する、[1]から[11]のいずれかに記載の細胞製剤。
[13]前記流速調節部が輸液ポンプ又はシリンジポンプを含む、[12]に記載の細胞製剤。
[14]体内投与用の針、流路、及び液体製剤を収容するための容器がその順に接続された液体製剤投与用装置であって、前記針は前記流路の第1の末端に接続され、前記容器は前記流路の第2の末端に接続され、前記流路は、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、前記液体製剤が、前記針より流速1.5mL/min以下で体内投与されるように構成される、前記装置。
[15]前記液体製剤が細胞及び/又は沈降速度が0.50μm/s~50μm/sの微粒子を含む、[14]に記載の装置。
[16]前記液体製剤が細胞製剤である、[14]又は[15]に記載の装置。
[17]前記微粒子の直径が5μm~30μmである、[15]又は[16]に記載の装置。
[18]前記第2の末端における前記流路の内径が、前記第1の末端における前記流路の内径より大きい、[14]から[17]のいずれかに記載の装置。
[19]前記流路が、互いに連結された2以上の流路で構成される、[14]から[18]のいずれかに記載の装置。
[20]前記2以上の流路が流路接続部により接続される、[19]に記載の装置。
[21]前記流路接続部が前記第2の末端より低い位置に配置される、[20]に記載の装置。
[22]前記流路接続部が前記第1の末端より低い位置に配置される、[20]又は[21]に記載の装置。
[23]前記第2の末端を有する流路が水平面に対し90°±20°で配置される、[14]から[22]のいずれかに記載の装置。
[24]前記第1の末端を有する流路が折り返し部を有する、[14]から[23]のいずれかに記載の装置。
[25]前記流路が流速調節部を有する、[14]から[24]のいずれかに記載の装置。
[26]前記流速調節部が輸液ポンプ又はシリンジポンプを含む、[25]に記載の装置。
[27]チューブを含む細胞製剤投与用キットであって、前記チューブは、体内投与用の針及び細胞製剤を収容するための容器と組み合せて使用され、前記針は前記チューブの第1の末端に接続され、前記容器は前記チューブの第2の末端に接続され、前記チューブは、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、前記細胞製剤は流速1.5mL/min以下で体内投与される、前記キット。
[28]前記チューブが第1の末端及び第2の末端の両方を有するチューブである、[27]に記載のキット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって小児のような投与速度の制限のある対象者に対しても安全で有効性の高い細胞製剤を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る細胞製剤の設置方法を示す図である。
【
図2-1】実施例1~3におけるチューブの設置角度に関する模式図である。
【
図2-2】実施例4~8におけるチューブの設置角度に関する模式図である。
【
図3】比較例1~2におけるチューブの設置角度に関する模式図である。
【
図4】実施例1で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図5】実施例2で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図6】実施例3で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図7】実施例4で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図8】実施例5で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図9】実施例6で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図10】実施例7で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図11】実施例8で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図12】比較例1で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図13】比較例2で回収した細胞懸濁液の細胞濃度を示す。グラフ中に引いた横線は、容器内(即ち滴下前)の細胞懸濁液の濃度を示す。
【
図14】本発明のデバイスの例示的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1]用語の説明
本発明の細胞製剤の一様態の設置方法を
図1に示す。この態様では、細胞製剤は、点滴スタンドに吊り下げられた容器から容器に接続されたチューブ内を通って流れ、チューブの先に接続された針から排出される。
【0012】
本明細書における、チューブの上流下流とは、投与時における細胞製剤の流れの方向に準じて定義されるものであり、チューブの「上流側」とは細胞製剤が流入する側、すなわち容器側を示す。チューブの「下流側」とは細胞製剤が排出される側、すなわち針側を示す。
【0013】
一部の態様では、
図14に示す通り、細胞製剤を収容するための容器と体内投与用の針を連結する流路(例えば、チューブ)において、針に接続される末端(つまり下流側の末端)を第1の末端、容器に接続される末端(つまり上流側の末端)を第2の末端と称する。
【0014】
[2]細胞製剤
本明細書における「細胞製剤」は、細胞を含む組成物であり、好ましくは医薬組成物である。細胞製剤は細胞懸濁液から構成されていても良い。本明細書における「細胞懸濁液」は、医学的及び/又は薬学的に許容される細胞と、医学的及び/薬学的に許容される薬剤とを含む。
【0015】
細胞の種類は、医学的及び/又は薬学的に許容される細胞であれば特に限定されないが、例えば、多能性幹細胞(人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、精巣由来の多能性幹細胞であるGS細胞、胎児の始原生殖細胞由来のEG細胞、骨髄等に由来するMuse細胞等)、体性幹細胞(骨髄、脂肪組織、歯髄、胎盤、卵膜、臍帯血、羊膜、絨毛膜等に由来する間葉系幹細胞、神経幹細胞等)、白血球、単球、顆粒球、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞等)、巨核球、マクロファージ、神経細胞、心筋細胞、心筋前駆細胞、肝細胞、肝臓前駆細胞、α細胞、β細胞、γ細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、角膜細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、周細胞等が例示でき、前記細胞は遺伝子導入された形態やゲノム上の対象遺伝子等をノックダウンされた形態でもよい。
【0016】
本発明で用いられる細胞は、典型的にはヒト由来であるが、例えば、マウス、ラット、ハムスター等のげっ歯類、ゴリラ、チンパンジー、マーモセット等の霊長類、さらにイヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜又は愛玩動物等の哺乳動物由来のものであってもよい。
【0017】
細胞製剤の適用の対象となる疾患としては特に限定されず、免疫関連疾患、虚血性疾患、下肢虚血、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、神経性疾患、移植片対宿主病(GVHD)、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、放射線腸炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、膠原病、脳卒中、脳梗塞、脳内血腫、脳血管麻痺、脳腫瘍、肝硬変、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、乾癬、表皮水疱症、糖尿病、菌状息肉腫(Alibert-Bazin症候群)、強皮症、軟骨等の結合組織の変性及び/又は炎症から起こる疾患、関節軟骨欠損、半月板損傷、離弾性骨軟骨症、無腐性骨壊死、変形性膝関節症、炎症性関節炎、関節リウマチ、眼疾患、血管新生関連疾患、虚血性心疾患、冠動脈性心疾患、遺伝性筋疾患、遺伝性血液疾患、遺伝性神経疾患、心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、弁膜症、創傷、上皮損傷、線維症、肺疾患、筋ジストロフィー、脊髄性筋委縮症、慢性膵炎、慢性腎炎、並びに癌から選択される疾患の治療剤として使用することができる。なお、使用目的が輸血や造血幹細胞移植である場合は、本発明の細胞製剤に含まれない。つまり、本発明の細胞製剤は、血球の補充を主目的に使用されるものではない。本発明の細胞製剤は、例えば、免疫細胞療法、細胞補充療法、ex vivo遺伝子治療等の再生・細胞医療・遺伝子治療等に使用される。
【0018】
前記医学的及び/又は薬学的に許容される薬剤は、細胞を医薬として利用可能な形態に維持することができ、ヒト等の動物に投与可能な媒体であれば特に限定されない。前記医学的及び/又は薬学的に許容される薬剤は、医薬製剤として製造する段階で細胞医薬製剤と混合しても良いし、患者又は被験者に対して細胞医薬製剤を投与する段階で細胞医薬製剤と混合しても良い。前記医学的及び/又は薬学的に許容される薬剤としては特に限定されないが、例えば、生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、注射用水、アミノ酸電解質等が挙げられる。また、前記医学的及び/又は薬学的に許容される薬剤は、必要に応じて塩類、ビタミン類、アミノ酸類、多糖類、ジメチルスルホキシド、緩衝剤、アルブミン、培地、細胞凍結保護剤等を含み得る。また、医薬として活性を有する成分である免疫抑制剤、抗生物質、アルブミン製剤、ビタミン製剤、抗炎症剤等を含んでもよい。
【0019】
前記塩類としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属の塩;カルシウム、バリウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属の塩;アルミニウム、亜鉛、銅、鉄等の塩;アンモニウム塩;テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、コリン等の四級アンモニウム塩;ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン、ジオラミン、トロメタミン、メグルミン、プロカイン、クロロプロカイン等の有機アミンとの塩;グリシン、アラニン、バリン等のアミノ酸との塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
前記ビタミン類としては、例えば、葉酸、ナイアシンアミド、ピリドキシン塩酸塩、ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、リボフラビン、ビタミンB12、チアミン、ビタミンA、ビタミンE等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
前記アミノ酸類としては、全ての必須アミノ酸(L-トリプトファン、L-ロイシン、L-リジン、L-フェニルアラニン、L-イソロイシン、L-スレオニン、L-ヒスチジン、L-メチオニン、及びL-バリン)、全ての非必須アミノ酸(L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、グリシン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-システイン、L-セリン、L-チロシン、L-プロリン)、その他のL-シスチン等の天然アミノ酸を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0022】
前記多糖類としては、例えば、セルロース、キチン及びキトサン等の非水溶性多糖類、及び例えば、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、ザンタンガム、ヘキスロン酸、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ラムナン硫酸、アルギン酸及びそれらの塩等の水溶性多糖類を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0023】
前記培地としては、細胞が生存できる成分組成で構成されており、かつヒト等の動物に投与すること可能な成分組成で構成されている培地であれば特に限定されないが、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、ハムF10培地、ハムF12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、及びこれらの混合培地(例えば、DMEM/F12培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium/Nutrient Mixture F-12 Ham))、CHO-S-SFM II(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)、Hybridoma-SFM(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)、eRDF Dry Powdered Media(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)、UltraCULTURETM(BioWhittaker社)、UltraDOMATM(BioWhittaker社)、UltraCHOTM(BioWhittaker社製)、UltraMDCKTM(BioWhittaker社)等が挙げられる。例えば、STEMPRO(登録商標) hESC SFM(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)、mTeSR1(Veritas社)、TeSR2(Veritas社)等の培地を用いることができる。
【0024】
前記細胞凍結保護剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、CP-1(極東製薬工業社製)、BAMBANKER(リンフォテック社製)、STEM-CELLBANKER(日本全薬工業社製)、ReproCryo RM(リプロセル社製)、CryoNovo(Akron Biotechnology社製)、MSC Freezing Solution(Biological Industries社製)、CryoStor(HemaCare社製)等が挙げられる。
【0025】
前記抗生物質としては、例えば、サルファ製剤、ペニシリン、フェネチシリン、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、シクラシリン、カルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、アズロシリン、メクズロシリン、メシリナム、アンジノシリン、セファロスポリン及びその誘導体、オキソリン酸、アミフロキサシン、テマフロキサシン、ナリジクス酸、ピロミド酸、シプロフロキサン、シノキサシン、ノルフロキサシン、パーフロキサシン、ロザキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、ピペミド酸、スルバクタム、クラブリン酸、β-ブロモペニシラン酸、β-クロロペニシラン酸、6-アセチルメチレン-ペニシラン酸、セフォキサゾール、スルタンピシリン、アディノシリン及びスルバクタムのホルムアルデヒド・フードラートエステル、タゾバクタム、アズトレオナム、スルファゼチン、イソスルファゼチン、ノルカディシン、m-カルボキシフェニル、フェニルアセトアミドホスホン酸メチル、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、並びにミノサイクリン等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0026】
前記抗炎症剤としては、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド製剤、免疫抑制剤、生物学的製剤等が挙げられるが、これらに限定されない。上記の5-アミノサリチル酸製剤としては、例えば、サラゾスルファピリジン、メサラジン等を挙げることができるが、これらに限定されない。上記のステロイド製剤としては、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0027】
また、前記細胞製剤は、保存安定性、等張性、吸収性及び/又は粘性を増加するための種々の添加剤、例えば、乳化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、抗酸化剤、キレート剤、増粘剤、ゲル化剤、pH調整剤等を含んでもよい。
【0028】
前記増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。増粘剤の濃度は、選択される増粘剤によるが、患者又は被験者に投与した場合に安全であり、かつ所望の粘性を達成する濃度の範囲で、任意に設定することができる。
【0029】
細胞懸濁液の粘度は特に限定しないが、粘度が高すぎる場合には、点滴投与を適切に行うことができない。例えば、回転式粘度計TV-20(東機産業製)を用いて回転数10rpmで測定した場合における、投与時の温度条件における粘度は、好ましくは35mPa・sec以下、さらに好ましくは30mPa・sec以下、さらにより好ましくは25mPa・sec以下、例えば、24mPa・sec以下、21mPa・sec以下、20mPa・sec以下、19mPa・sec以下、16mPa・sec以下、15mPa・sec以下、14mPa・sec以下、11mPa・sec以下、10mPa・sec以下、9mPa・sec以下、8mPa・sec以下、7mPa・sec以下、6mPa・sec以下、5mPa・sec以下、4mPa・sec以下、3mPa・sec以下、2.5mPa・sec以下、又は2mPa・sec以下である。
【0030】
細胞製剤の細胞濃度(cells/mL)は、細胞濃度が高すぎる場合には細胞が血管や肺等で栓塞する恐れがあり、また細胞製剤の浸透圧が高くなりすぎて患者又は被験者への身体的負担が高くなる場合がある。一方で、細胞濃度が低すぎる場合には、治療効果を得ることができる細胞量を投与するのにかかる時間が長くなるため、その間に細胞製剤の品質が低下したり、患者又は被験者の拘束時間が長くなるといった負担につながる可能性がある。従って、これらを考慮した上で好ましい細胞濃度は適宜設定されるため特に限定されないが、例えば1×104cells/mL以上、2×104cells/mL以上、3×104cells/mL以上、4×104cells/mL以上、5×104cells/mL以上、6×104cells/mL以上、7×104cells/mL以上、8×104cells/mL以上、9×104cells/mL以上、1×105cells/mL以上、2×105cells/mL以上、3×105cells/mL以上、4×105cells/mL以上、5×105cells/mL以上、6×105cells/mL以上、7×105cells/mL以上、8×105cells/mL以上、9×105cells/mL以上、1×106cells/mL以上、1.5×106cells/mL以上、2×106cells/mL以上であり、また、1×109cells/mL以下、9×108cells/mL以下、8×108cells/mL以下、7×108cells/mL以下、6×108cells/mL以下、5×108cells/mL以下、4×108cells/mL以下、3×108cells/mL以下、2×108cells/mL以下、1×108cells/mL以下、9×107cells/mL以下、8×107cells/mL以下、7×107cells/mL以下、6×107cells/mL以下、5×107cells/mL以下、4×107cells/mL以下、3×107cells/mL以下、2×107cells/mL以下、1×107cells/mL以下、9×106cells/mL以下、8×106cells/mL以下、7×106cells/mL以下、6×106cells/mL以下、5×106cells/mL以下、4×106cells/mL以下、3×106cells/mL以下、2.5×106cells/mL以下、2×106cells/mL以下である。なお、前記以外にも、投与形態、使用目的及び、患者又は被験者の年齢、体重、症状等によって適宜決定することができる。
【0031】
本発明の細胞製剤は、後述の投与方法によって患者又は被験者に投与される。体内投与の対象者(患者又は被験者)への投与経路は特に限定されないが、例えば、皮下注入、リンパ節内注入、静脈内注入、動脈内注入、腹腔内注入、胸腔内注入、局所への直接注入等であることができる。なかでも、患者又は被験者の血管内に投与されること、すなわち静脈内注入又は動脈内注入が好ましく、静脈内注入がより好ましい。
【0032】
本発明は、後述の細胞製剤の投与方法において使用するための細胞製剤、つまり、流速1.5mL/min以下での体内投与に使用する細胞製剤であって、前記細胞製剤を収容するための容器及び前記体内投与用の針を連結するチューブと組み合せて使用され、前記チューブは、前記針との接続部を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下である、細胞製剤に関する。
【0033】
本発明の細胞製剤が使用される投与方法(例えば後述する投与速度や組み合わせて使用するチューブの特徴等)は、細胞製剤に付されたラベル、添付文書又は取扱説明書に記載されていてもよい。
【0034】
以下で本発明の細胞製剤の投与方法について詳述する。
本発明の細胞製剤の提供の際に使用される容器は、細胞製剤中の細胞が生存可能な容器であれば特に限定しない。例えば、本発明の細胞製剤は、下記の投与方法に使用される容器とは別の容器に充填された状態で提供されてもよく、そのまま下記の投与方法に使用可能な容器に充填された状態で提供されてもよい。衛生面や操作の簡便性という点では、細胞製剤の提供の際の使用された容器をそのまま下記の投与方法に利用するのがよく、その場合、提供された細胞製剤をそのまま投与してもよいし、凍結されている場合には解凍後投与してもよいし、必要に応じて生理食塩水やリンゲル液等で希釈してから投与してもよい。
【0035】
[3]細胞製剤の投与方法
本発明では、細胞製剤を、細胞製剤を収容するための容器(例えば、点滴スタンドに吊り下げられた容器)から、チューブ及びチューブの下流側の末端(第1の末端)に接続した針を通じて、体内投与の対象者(患者又は被験者)に投与する。チューブは、針との接続部(第1の末端)から上流側に向けて少なくとも20cmまでの区間(つまり、針との接続部を含む少なくとも20cmの区間)においては内径が2.3mm以下である第1のチューブを使用する。
【0036】
前記第1のチューブとしては、針との接続部から少なくとも20cmまでの区間における内径が2.3mm以下であれば特に限定されないが、投与される細胞数をより正確に維持するという観点からは、好ましくは2.2mm以下、2.1mm以下、2.0mm以下、1.9mm以下、1.8mm以下、1.7mm以下、1.6mm以下、1.5mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.2mm以下、1.15mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下である。また、チューブ内径が小さすぎる場合には、細胞がチューブ内に詰まる恐れがあるため、好ましくは0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上である。
【0037】
前記容器は特に限定されるものではなく、細胞製剤中の細胞が生存可能で、体内投与のためのチューブ等が接続可能な容器であればよいが、滅菌や凍結保存が可能なものが好ましい。例えば、当該分野において一般的に使用されるような点滴製剤用の各種容器(点滴容器)やその他の液体製剤を収容可能な容器(例えばシリンジ等)を用いることができる。点滴容器としては、例えば、凍結保存バッグ(コーニング社製)、フローズバッグF-100(ニプロ社製)、フローズバッグF-050(ニプロ社製)、セーフミックTPNバッグ(ジェイ・エム・エス社製)、ハイカリックIVHバッグ(テルモ社製)等を使用することができる。容器の材質は特に限定しない。例えば、チューブや流路について後述する材質であればよい。
【0038】
前記容器とチューブの接続方法は、容器中の細胞製剤がチューブ内に適切に送液される方法であれば特に限定されないが、例えば、点滴容器のゴム栓部に、チューブの上流部末端のびん針を突き刺すことで接続することができる。あるいは、容器とチューブとを無菌接合機等を用いて溶着することで接合してもよいし、コネクタや活栓等を使用して接続してもよい。容器とチューブの接続手段は容器に付属していても、チューブに付属していても、それらから独立して用意されてもよい。
【0039】
容器を保持するために点滴スタンド等を使用することができる。前記点滴スタンドは特に限定されるものではなく、細胞製剤の入った前記容器を吊り下げることができ、本発明のチューブの好ましい設置条件を実現できるものであればどのような形態のものを使用しても良い。医療従事者の操作性や、患者や被験者の安全性を考慮すると、点滴投与時に使用することを目的として、製造・販売されている点滴スタンドを用いることが好ましい。
【0040】
前記針は当該分野において一般的に使用されるものであればその種類や材質等特に限定されるものではなく、投与される細胞製剤の特徴や、使用目的、患者又は被験者の年齢や体重等に応じて適宜決定できる。針の形状は例えば、翼状針や留置針、輸液針を用いることができるが、ある程度投与時間を要する場合は留置針が好ましい。また、針のゲージについては、大きすぎる場合には、患者や被験者が刺入時に痛みを感じやすくなるため、特に小児を対象とする場合は、好ましくは26G以下、さらに好ましくは24G以下である。具体的には、サーフロー留置針 SR-OT2419C(24G、19mm、テルモ社製)、ニプロセーフレットキャス 09-046(22G、32mm、ニプロ社製)、ニプロセーフレットキャスPU 09-081(24G、19mm)、アンジオカットプラス 382412(24G、19mm、JMS社製)を例として挙げることができる。
【0041】
前記チューブと針の接続部における、接続の方法は特に限定されないが、例えば、チューブ及び/又は針に付属のコネクタを介して接続してもよいし、三方活栓を介して接続してもよい。また、チューブの先にあらかじめ針が接続している市販のチューブを利用することもできる。
【0042】
本明細書における第1のチューブ(第1の末端を有するチューブ)としては、内径が2.3mm以下で点滴投与に使用可能であればどのようなものを使用しても問題なく、特に限定されないが、例えば、エキステンションチューブJV-NDH1100FL(チューブ長100cm、内径1.0mm、JMS社製)、エキステンションチューブJV-ETP2100FL(チューブ長100cm、内径2.0mm、JMS社製)、延長チューブ66-767(チューブ長100cm、内径1.5mm、ニプロ社製)、サフィード延長チューブSF-ET1020L22(チューブ長100cm、内径1.1mm、テルモ社製)、トップエックステンションチューブX2-WL100(チューブ内径2.0mm、チューブ長100cm、トップ社製)等を挙げることができる。
【0043】
前記第1のチューブの材質については特に限定されないが、例えば、軟質材料、硬質材料又はその組合せであってよい。細胞製剤に接する部分の材質は、通過した細胞製剤が投与対象にとって有害となるものでなければ特に限定しない。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ナイロンエラストマー、ポリウレタン、シリコーン、シリコーンゴム等の各種天然樹脂又は合成樹脂製のものや、ガラス製のもの、ステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金等の金属製のもの、或いはこれらの混合物を用いることも可能である。
【0044】
針との接続部を含む少なくとも20cmの区間の構成は特に限定しない。例えば、1つのチューブで構成されてもよく、2以上のチューブで構成されていてもよい。この区間に使用されるチューブは、その全体にわたって内径が上述の範囲内のチューブであってもよく、上記区間のみにおいて内径が上述の範囲内であり、他の部分の内径は上述の範囲外のチューブであってもよい。この区間の長さは特に限定しない。例えば、50cm以上、80cm以上、90cm以上、100cm以上、110cm以上、120cm以上、130cm以上、140cm以上、150cm以上とすることができる。
【0045】
第1のチューブのチューブ長は特に限定しない。この区間が1つのチューブで構成される場合であれば、前記第1のチューブのチューブ長は20cm以上であれば特には限定されない。第1のチューブのチューブ長は、短すぎる場合には、患者や被験者の動きが制限されるため、好ましくは50cm以上、より好ましくは80cm以上、90cm以上、より好ましくは100cm以上、110cm以上、120cm以上、130cm以上、140cm以上、150cm以上である。また、上限は特に限定しないが、例えば、250cm、200cm、190cm、180cm、170cm、160cm、150cmである。
【0046】
本発明においては、チューブとして前記第1のチューブのみを使用することでも本発明の目的を達成しうるが(この場合、第1のチューブは第1の末端及び第2の末端の両方を有し、第1のチューブの第2の末端に容器が接続される)、前記第1のチューブの上流側に内径2.4mm以上の第2のチューブ(第2の末端を有するチューブ)を接続してもよい。一般に、当該分野において輸液に使用されている市販の輸液セットや輸血セットにおいては、第2のチューブに相当する内径のものがほとんどである。また、市販の輸液セットや輸血セットには、あらかじめ点滴容器と接続するためのびん針や、点滴筒(チャンバー)、点滴速度を調整するためのクレンメが付属していたり、チューブ径やチューブの耐圧等の点で輸液ポンプとの組合せが可能な規格であったりするため、本発明において、第1のチューブだけでなく第2のチューブを併用することでより簡便に細胞製剤の投与システムを構築することができるだけでなく、点滴速度のコントロールも容易となる。
【0047】
このとき、チューブ接続部が前記第2の末端より低い位置に配置され、前記第2のチューブの上流側の末端(第2の末端)は下流側の末端よりも高い位置で設置されていることが好ましく、特に輸液ポンプを使用しない場合はその必要がある。一方、前記第1のチューブの下流側の末端(第1の末端)の位置は特に限定されず、例えば、第1のチューブが第2のチューブに直接接続される場合、第2のチューブとの接続部(チューブ接続部)よりも高い位置でも低い位置でも同じ程度の高さであってもかまわない。本発明においては、第1のチューブを使用することで、たとえ第1のチューブの下流側の末端(第1の末端)を第2のチューブとの接続部(チューブ接続部)よりも高い位置に設置した場合においても、製剤中の細胞をチューブ内に滞留させることなく、設定した細胞数で投与することが可能となる。その場合、点滴容器から針までのチューブの長さや位置の余裕を持たせることができるため、投与中の患者又は被験者の姿勢や動きを制限する必要がないという点でも、本発明の方法は優れている。
【0048】
チューブの内部形状は特に限定しない。例えば、円形、楕円形、略円形、扇形、略扇形、多角形又はその組合せであってもよい。内部形状が円形以外の場合、チューブの内径は最も大きい内接円の直径を指す。チューブの外形及び内部形状は、途中で変化してもよい。
【0049】
前記第2のチューブの内径は、2.4mm以上であり、かつ細胞懸濁液を含む容器と第1のチューブの両方に接続可能な内径であれば特に限定されない。例えば、10.0mm以下、9.9mm以下、9.8mm以下、9.7mm以下、9.6mm以下、9.5mm以下、9.4mm以下、9.3mm以下、9.2mm以下、9.1mm以下、9.0mm以下、8.9mm以下、8.8mm以下、8.7mm以下、8.6mm以下、8.5mm以下、8.4mm以下、8.3mm以下、8.2mm以下、8.1mm以下、8.0mm以下、7.0mm以下、6.0mm以下、5.0mm以下、4.5mm以下、4.0mm以下、3.9mm以下、3.8mm以下、3.7mm以下、3.6mm以下、3.5mm以下、3.4mm以下、3.3mm以下、3.2mm以下、3.15mm以下、3.1mm以下、3.0mm以下、2.9mm以下、2.8mm以下、2.7mm以下、2.6mm以下、2.5mm以下が好ましく、2.5mm以上、2.6mm以上、2.7mm以上、2.8mm以上、2.9mm以上、3.0mm以上、3.1mm以上、3.15mm以上、3.2mm以上、3.3mm以上、3.4mm以上、3.5mm以上が好ましい。
【0050】
容器側の第2の末端におけるチューブの内径が上述の範囲内であればよく、例えば、第2のチューブの内径が第2の末端以外の区間において、上述の範囲外であってもよい。あるいは、当該方法において第1のチューブのみが使用され、第1のチューブの第2の末端が上述の範囲内であってもよい。あるいは、チューブの第2の末端は上述の範囲外であっても、第2の末端と容器とを接続する機器を使用することにより容器と接続することができる場合も、本発明に包含される。
【0051】
第2のチューブと第1のチューブは他のチューブを介して連結されていてもよく、直接連結されていてもよい。連結は、チューブ接続部を介した連結であってもよい。この場合、チューブ内径は接続部において不連続に変化する。
【0052】
チューブが互いに連結された2以上のチューブにより構成される場合、その数は特に限定しない。例えば、2以上、3以上、4以上のチューブを連結することができる。第1のチューブ以外のチューブの内径は特に限定しない。複数のチューブが同じ内径であってもよいし、全てのチューブが異なる内径を有していてもよい。また、複数のチューブを使用する場合、それぞれの連結様式は特に限定しない。例えば、全部又は一部の連結がチューブ接続部によってなされ、内径が不連続に変化してもよいし、チューブ接続部が使用されず、チューブ全体にわたって内径が連続的に変化してもよい。チューブは枝分かれしていてもよい。
【0053】
本明細書における、第1のチューブと第2のチューブの接続部における、接続の方法は特に限定されないが、例えば、チューブに付属されたコネクタを介した接続や、三方活栓を介した接続、FFコネクタ等のコネクタを介した接続、無菌接合機等を用いた溶着による接続等の方法が挙げられる。また、本発明の第1のチューブと第2のチューブに相当する内径を実質満たすように一体成形されたものであってもかまわない。
【0054】
本明細書における第2のチューブとしては、内径が2.4mm以上で点滴投与に使用可能であればどのようなものを使用しても問題なく、特に限定されないが、例えば、テルフュージョン輸血セットTB-U300L(テルモ社製)、テルフュージョン輸液セットTI-J350P(テルモ社製)、テルフュージョンポンプ用輸液セットTI-PU300L(テルモ社製)、輸血セットJB-U13L(JMS社製)、輸血セットJBP-U33L(JMS社製)、輸血セットTF-4A1Z(ニプロ社製)、輸液セットECO ISE-200 Z(ニプロ社製)等が挙げられる。
【0055】
第2のチューブの材質については特に限定されないが、例えば、軟質材料、硬質材料又はその組合せであってよい。細胞製剤に接する部分の材質は、通過した細胞製剤が投与対象にとって有害となるものでなければ特に限定しない。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性エラストマー、天然ゴム、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ナイロンエラストマー、ポリウレタン、シリコーン、シリコーンゴム等の各種天然樹脂又は合成樹脂製のものや、ガラス製のもの、ステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金等の金属製のもの、或いはこれらの混合物を用いることも可能である。また、第1のチューブと第2のチューブの材質は、同じものであっても異なるものでもかまわない。
【0056】
本発明における細胞製剤の投与方法としては、流速を1.5mL/min以下に制御して細胞製剤をチューブの下流側末端に接続した針から、患者又は被験者の体内に投与できる方法であれば制限されないが、例えば、チューブは流速調節部を含むことが好ましい。具体的には、例えば、チューブに流速調節部としてクレンメを取り付け、クレンメを調整することで流速を制御しながら重力により投与する方法や、チューブを流速調節部である輸液ポンプにセットし、輸液ポンプを用いて流速を制御して投与する方法、シリンジポンプ等のシリンジ送液手段にセットした細胞製剤を収容した容器にチューブを接続して流速を制御して投与する方法が挙げられる。複数の流速調節部を含めることができ、例えば、2以上のクレンメ及び/又は2以上の輸液ポンプを使用しても、クレンメと輸液ポンプを併用してもかまわない。
【0057】
流速調節部の位置は特に限定しない。例えば、第1のチューブ、及び/又は第2のチューブが流速調節部を有してもよく、チューブ接続部が流速調節部を有してもよい。
【0058】
前記輸液ポンプは当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、テルフュージョン輸液ポンプTE-161S(テルモ社製)、テルフュージョン輸液ポンプTE-261(テルモ社製)、セーフテック輸液ポンプ2 FP-N17(ニプロ社製)、キュアセンス輸液ポンプIP-100(JMS社製)等を挙げることができる。
【0059】
前記第2の末端を有するチューブ(例えば、第2のチューブ)の設置角度(
図2-1及び2-2において第2のチューブに関して記載された角度、及び
図14の角度αに対応)の大きさは特に限定しないが、チューブ接続部が上流側の末端(第2の末端)より低い位置に配置されるように設置角度を設定することが好ましい。具体的には、例えば、前記第2の末端を有するチューブの設置角度は水平面に対し70°未満とならないことが好ましい。ここで、第2の末端を有するチューブの設置角度が水平面に対し70°未満とならないとは、第2の末端を有するチューブ全体の80%以上の区間における設置角度が70°未満とならないことをいう。設置角度が70°未満とならない区間の割合は80%以上であれば限定されないが、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。また、上記設置角度は、80°未満とならないことがより好ましく、85°未満とならないことがさらに好ましく、略垂直であることがさらに好ましい。設置角度は例えば、90°±20°、90°±15°、90°±10°、90°±5°の範囲の角度とすることができる。略垂直とは、90°±5°の範囲の角度を指す。さらに好ましくは、例えば、90°±4°、90°±3°、90°±2°、90°±1°の範囲の角度とすることができる。一方で、第2の末端を有するチューブに第1のチューブが連結される場合における第1のチューブの設置角度は限定されず、上述したように第1のチューブの下流側の末端が第2のチューブとの接続部よりも高い位置にあるだけでなく、その角度が高い上り勾配の場合であっても、本発明の目的を達成しうる。
【0060】
上述の設置角度に設置される区間の構成は特に限定しない。例えば、第2のチューブのみで構成されてもよいし、第1のチューブのみで構成されてもよく、2以上のチューブで(例えば、第1のチューブと第2のチューブの両方で)構成されてもよい。例えば、第1のチューブの一部及び/又は第1のチューブと第2のチューブをつなぐチューブの全部又は一部がこの区間を構成してもよい。
【0061】
区間の長さは特に限定しないが、例えば、250cm以下、240cm以下、230cm以下、220cm以下、210cm以下、200cm以下、190cm以下、180cm以下、170cm以下、160cm以下、150cm以下とすることができ、30cm以上、40cm以上、50cm以上、70cm以上、90cm以上、100cm以上、110cm以上、115cm以上、120cm以上、130cm以上、140cm以上、145cm以上とすることができる。
【0062】
また、この区間を第1のチューブの一部が構成する場合、その長さは特に限定しない。例えば、1cm以上、2cm以上、3cm以上、4cm以上、5cm以上であってよく、例えば、250cm以下、200cm以下、150cm以下、100cm以下、50cm以下、30cm以下、20cm以下、15cm以下、10cm以下、9cm以下、7cm以下、6cm以下であってもよい。
【0063】
第2のチューブのチューブ長は特に限定しない。上記区間が第2のチューブのみで構成される場合、第2のチューブのチューブ長は上記の設置角度を満たすことができれば、どのような長さであっても構わない。第2のチューブが長すぎる場合には上記の設置角度を満たして設置すると、容器の設置位置が高くなりすぎ、医療従事者の操作性が低下するため、好ましくは250cm以下、240cm以下、230cm以下、220cm以下、210cm以下、200cm以下、190cm以下、180cm以下、170cm以下、160cm以下、150cm以下である。また、短すぎる場合には、患者又は被験者の動きが制限されるため、好ましくは30cm以上、より好ましくは40cm以上、さらにより好ましくは50cm以上、70cm以上、90cm以上、100cm以上、110cm以上、115cm以上、120cm以上、130cm以上、140cm以上、145cm以上である。
【0064】
チューブ接続部が第1の末端より低い位置に配置されてもよい。チューブの一部分が第1の末端より低い位置に配置される場合、チューブは1以上の折り返し部(
図14;
図2-1及び
図2-2では婉曲部)を有することになる。この場合、第1の末端を有するチューブが1以上の折り返し部を有することが好ましい。
【0065】
折り返し部における角度(折り返し角度:
図14の角度β)の大きさは特に限定しない。例えば、70°以下、60°以下、50°以下、40°以下、30°以下、25°以下、20°以下、15°以下、10°以下、5°以下、又は0°とすることができる。折り返し角度は固定されていてもよいが、一定の幅で変化できるように構成されていてもよい。
【0066】
折り返し部が下に凸の形状を有する場合、折り返し部の下流でチューブは上向きになる。この上り勾配(
図2-1及び2-2の婉曲部に関連して示される角度)は特に限定しない。例えば、上り勾配は20°以上、30°以上、40°以上、50°以上、60°以上、65°以上、70°以上、75°以上、80°以上、85°以上、又は90°とすることができる。
【0067】
折り返し部(婉曲部)の位置は特に限定しない。例えば、第1のチューブ(第1の末端を有するチューブ)の任意の位置に折り返し部を含めることができる。位置は、上述の設置角度に設置される区間の下流であれば特に限定しない。例えば、上述の区間の直後に折り返し部を有してもよいし、上述の区間より一定の距離が離れた下流に有してもよい。
【0068】
上述の区間と折り返し部の距離は特に限定しない。例えば、1cm以上、2cm以上、3cm以上、4cm以上、5cm以上であってよく、例えば、250cm以下、200cm以下、150cm以下、100cm以下、50cm以下、30cm以下、20cm以下、15cm以下、10cm以下、9cm以下、7cm以下、6cm以下であってもよい。また、折り返し部と第1の末端の間の距離は、例えば、20cm以上、50cm以上、80cm以上、90cm以上、95cm以上、100cm以上、110cm以上、115cm以上、120cm以上、130cm以上、140cm以上、145cm以上、150cm以上とすることができる。
【0069】
折り返し部の形状は特に限定しない。例えば、V字型をなしてもよく、U字型をなしてもよい。また、折り返し部はチューブが水平な区間を含んでもよい。
【0070】
チューブは停止部を含んでもよい。停止部は、細胞製剤のチューブ内の移動を一時的に中断又は投与終了時に停止させる部である。停止部の構成は特に限定しない。例えば、クランプ等の狭窄に基づく停止手段やコック等の仕切りに基づく停止手段等が挙げられる。
【0071】
チューブはまた、流速表示部を含んでもよい。流速表示部を含むことにより、細胞製剤の流量を簡単に把握することができる。流速表示部の構成は特に限定しない。例えば、点滴筒等の流動状況の可視化手段、輸液ポンプの流速表示画面等の流速の数値等への変換手段等が挙げられる。
【0072】
チューブは、脱気部を含むことができる。脱気部は、細胞製剤中の空気や気泡を排出する部である。脱気部の構成は特に限定しない。例えば、点滴筒、エアベントフィルタ等が挙げられる。
【0073】
上記各部の数は特に限定しない。それぞれを1つ又は複数含むことができる。また、各部の位置は特に限定しない。例えば、第1の末端を有するチューブが有してもよいし、第2の末端を有するチューブが有してもよいし、全てのチューブが有してもよい。
【0074】
また、一つの機器が複数の部として機能してもよい。例えば、三方活栓等のコックは停止部としても、チューブ接続部としても機能させることができる。また、流速調節部に使用可能な機器は、通常、停止部としても使用することができる。
【0075】
細胞製剤を投与する流速は、使用目的や体内投与の対象者(患者又は被験者)の年齢、体重、体重等に応じて適切に決定されるものであり、特に限定されないが、あまりに流速が遅すぎる場合には、細胞製剤の投与にかかる時間が長時間化し、細胞製剤の品質低下を引き起こす可能性があるため、好ましくは0.3mL/min以上、より好ましくは0.6mL/min以上、さらにより好ましくは0.9mL/min以上、1.0mL/min以上である。また、流速は1.5mL/min以下であれば特に限定しないが、例えば、1.4mL/min以下、1.3mL/min以下、1.2mL/min以下、1.1mL/min以下、1.0mL/min以下とすることができる。
【0076】
患者又は被験者の年齢及び体重:
本明細書の投与方法が実施される患者若しくは被験者は、成人と比べて体が小さいため、成人と比べてより遅い流速で細胞製剤を投与する必要のある患者若しくは被験者が想定される。対象となる患者若しくは被験者の年齢は限定されるものではないが、例えば、18歳以下、17歳以下、16歳以下、15歳以下、14歳以下が挙げられる。同様に、対象となる患者若しくは被験者の体重は限定されるものではないが、体重が軽いほど、遅い流速での投与が必要となることがあるため、例えば50kg以下、45kg以下、40kg以下が挙げられる。
【0077】
本発明の細胞製剤は、細胞製剤を収容するための容器(例えば、点滴スタンドに吊り下げられた容器)からチューブを通じて体内に点滴投与される細胞製剤であって、流速1.5mL/min以下で投与される旨と、本発明の投与の手段、又はそれに関連する若しくは同等の効果を得ることができる手段が記載された、ラベル、添付文書又は取扱説明書を付すことができる。
【0078】
本発明の投与の手段に関連する若しくは同等の効果とは、1.5mL/min以下の流速で細胞製剤を点滴投与した場合において、流量だけでなく細胞数も設定値を維持して点滴投与できる効果を示す。さらに具体的には、点滴投与する細胞懸濁液の平均乖離率が±10%以内である効果を示す。平均乖離率は、実施例に記載の方法で算出することができる。達成される平均乖離率は、±10%以内、±9%以内、±8%以内、±7%以内、±6%以内、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1.5%以内、±1%以内となり得る。
【0079】
前記本発明の投与の手段は、内径2.3mm以下のチューブを少なくとも組み合わせて使用すること、及び/又は、点滴時のチューブの設置条件であることが好ましい。
【0080】
使用するチューブの詳細や前記チューブの設置条件としては、上記[3]の細胞製剤の投与方法で記載されたような条件が挙げられるが、それに類する又は関連する手段、若しくは本発明と同等の効果を得ることができる条件であれば特に限定されない。
【0081】
[4]液体製剤投与用装置
本発明は、体内投与用の針、流路、及び液体製剤を収容するための容器がその順に接続された液体製剤投与用装置であって、前記針は前記流路の第1の末端に接続され、前記容器は前記流路の第2の末端に接続され、前記流路は、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、前記液体製剤が、前記針より流速1.5mL/min以下で体内投与されるように構成される、装置に関する。
【0082】
本発明の装置によれば、細胞及び/又は微粒子を含む液体製剤を、細胞や微粒子の投与速度を調整して投与することができる。
【0083】
液体製剤の構成は、基本的に医学的及び/又は薬学的に許容される薬剤について上述した構成に準ずる。したがって、ここでは相違点のみを説明する。
【0084】
本態様において使用される液体製剤は細胞及び/又は微粒子を含む。
液体製剤に含まれる細胞は、「[2]細胞製剤」において細胞に関して上述した内容に準ずる。
【0085】
液体製剤に使用される微粒子は、医学的及び/又は薬学的に許容される微粒子であれば特に限定しない。例えば、リピドイド、リポソーム、リポプレックス等の脂質粒子、ポリマー化合物、ナノチューブ等であってもよい。微粒子の材質は特に限定しない。例えば、ポリスチレン、グリシジルメタクリレート等の樹脂材料;鉄、金、銀等の金属材料;ジルコニア、チタニア、酸化鉄等の金属酸化物;フェライト等の磁性材料、或いはこれらの組合せ等を使用することができる。微粒子表面は、必要に応じて任意の官能基により表面修飾されていてもよく、抗体等の機能性分子やポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリペプチド等の分散安定化剤が結合していてもよい。また、脂質粒子の場合、カチオン性脂質、アニオン性脂質等のイオン性脂質、中性脂質、PEG化脂質、アミノアルコール脂質、リン脂質、コレステロール等のステロイド系脂質又はその組合せを含むことができる。
【0086】
微粒子の大きさは特に限定しない。微粒子の大きさは、例えば、沈降速度により判断することができる。本発明における微粒子の沈降速度は、例えば、溶媒として生理食塩水を使用した場合に、0.50μm/s~50μm/sであればよい。下限は、例えば、0.50μm/s、0.60μm/s、0.90μm/s、1μm/s、2μm/s、3μm/s、4μm/s、5μm/s、6μm/s、7μm/s、8μm/s、9μm/s、10μm/s、11μm/s、12μm/s、13μm/s、14μm/s、15μm/sであればよく、上限は、例えば、50μm/s、49μm/s、45μm/s、40μm/s、35μm/s、30μm/s、25μm/s、22μm/s、20μm/s、19μm/s、18μm/s、16μm/s、15μm/sであればよい。
【0087】
また、微粒子の直径は、例えば、30μm以下、25μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下であればよく、例えば、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上であればよい。
【0088】
微粒子の濃度は特に限定しない。投与形態、微粒子の種類、使用目的及び、投与対象者の年齢、体重、症状等によって適宜決定することができる。具体的には、例えば、1×104/mL以上、2×104/mL以上、3×104/mL以上、4×104/mL以上、5×104/mL以上、6×104/mL以上、7×104/mL以上、8×104/mL以上、9×104/mL以上、1×105/mL以上、2×105/mL以上、3×105/mL以上、4×105/mL以上、5×105/mL以上、6×105/mL以上、7×105/mL以上、8×105/mL以上、9×105/mL以上、1×106/mL以上、1.5×106/mL以上、2×106/mL以上とすることができ、また、1×109/mL以下、9×108/mL以下、8×108/mL以下、7×108/mL以下、6×108/mL以下、5×108/mL以下、4×108/mL以下、3×108/mL以下、2×108/mL以下、1×108/mL以下、9×107/mL以下、8×107/mL以下、7×107/mL以下、6×107/mL以下、5×107/mL以下、4×107/mL以下、3×107/mL以下、2×107/mL以下、1×107/mL以下、9×106/mL以下、8×106/mL以下、7×106/mL以下、6×106/mL以下、5×106/mL以下、4×106/mL以下、3×106/mL以下、2.5×106/mL以下、2×106/mL以下とすることができる。液体製剤が微粒子と細胞を含む場合、それらを合計して上述の範囲内であってもよい。
【0089】
本態様の装置に使用される体内投与用の針は、「[3]細胞製剤の投与方法」において上述した内容に準ずる。
【0090】
本態様の装置に使用される液体製剤を収容するための容器は、「[3]細胞製剤の投与方法」において細胞製剤を収容するための容器に関して上述した内容に準ずる。
【0091】
流路は液体が特定の方向へ流動可能な空間を指す。本明細書においては、流路は、液体の流入口及び流出口以外に開口部を有していても、有していなくてもよい。また、流路は逆流防止手段を備えていてもよい。
【0092】
流路の材質は特に限定しない。液体製剤に接する部分の材質は、流路を通過した液体製剤が投与対象にとって有害となるものでなければ特に限定しない。例えば、樹脂や生体分子等の有機材料、金属等の無機材料又はその組合せにより構成されてもよい。また、例えば、軟質材料、硬質材料又はその組合せにより構成されてもよい。例えば、チューブに関して上述した材料の他、ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ガラス又はこれらの組合せ等を使用することができる。
【0093】
流路の外形は特に限定しない。例えば、管状であってもよく、内部に溝状の流路を有するチップの様な形状であってもよい。また、流路の内部形状は特に限定しない。例えば、円形、楕円形、略円形、扇形、略扇形、多角形又はその組合せであってもよい。内部形状が円形以外の場合、流路の内径は最も大きい内接円の直径を指す。流路の外形及び内部形状は、途中で変化してもよい。
【0094】
針と接続する第1の末端を有する流路の内径は「[3]細胞製剤の投与方法」の第1のチューブに関する記載に準ずる。
【0095】
容器と接続する第2の末端における流路の内径は、第1の末端における流路の内径と同じであっても異なってもよい。例えば、第2の末端における前記流路の内径は第1の末端における流路の内径より大きい。
【0096】
第2の末端における流路の内径及び長さは「[3]細胞製剤の投与方法」の第1のチューブに関する記載に準ずる。
【0097】
本態様の装置の流路は、互いに直列に連結された2以上の流路で構成されてもよい。この場合、流路の形状、材質、内径等は各流路ごとに異なっていても、全部又は一部の流路において共通していてもよい。
【0098】
流路が2以上の流路により構成される場合、それぞれの連結様式は特に限定しない。複数の流路を使用する場合、例えば、全部又は一部の連結が流路接続部によってなされ、内径が不連続に変化してもよいし、流路接続部が使用されず、チューブ全体にわたって内径が連続的に変化してもよい。
【0099】
流路接続部及び流路の配置は特に限定しない。流路接続部、第1の末端を有する流路及び第2の末端を有する流路の配置は「[3]細胞製剤の投与方法」のチューブ接続部と第1のチューブ及び第2のチューブに関する記載に準ずる。
【0100】
流路は折り返し部、流速調節部、停止部、流速表示部及び脱気部からなる群から選択される一以上を有することができる。各部の内容は「[3]細胞製剤の投与方法」の記載に準ずる。
【0101】
上記各部の数は特に限定しない。それぞれを1つ又は複数含むことができる。また、各部の位置は特に限定しない。例えば、第1の末端を有する流路が有してもよいし、第2の末端を有する流路が有してもよいし、その他の流路が有してもよい。また、一つの機器が複数の部として機能してもよい。
【0102】
液体製剤の投与速度は「[3]細胞製剤の投与方法」における流速に関する記載に準ずる。
【0103】
[5]細胞製剤投与用キット
本発明はさらに、上記細胞製剤の投与方法に使用するためのキットに関する。
【0104】
具体的には、例えば、チューブを含む細胞製剤投与用キットであって、前記チューブは、体内投与用の針及び細胞製剤を収容するための容器と組み合せて使用され、前記針は前記チューブの第1の末端に接続され、前記容器は前記チューブの第2の末端に接続され、前記チューブは、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、前記細胞製剤は流速1.5mL/min以下で体内投与される、キットに関する。当該キットは、チューブのみを必須の構成とし、他の要素(例えば、細胞製剤、容器、針等)と組み合せて「[3]細胞製剤の投与方法」に記載の投与方法に使用される。
【0105】
当該キットのチューブは「[3]細胞製剤の投与方法」におけるチューブに準ずる。当該キットに含まれるチューブは、第1の末端及び/又は第2の末端を有するチューブであってもよく、いずれも有さないチューブであってもよい。好ましくは、本態様のキットは、第1の末端を有するチューブを含む。当該キットは、2以上のチューブを含んでもよく、針、容器、細胞製剤、容器との接続手段等を追加で含んでもよい。当該キットのチューブは、折り返し部、流速調節部、停止部、チューブ接続部、流速表示部及び脱気部からなる群から選択される一以上を有することができる。各部の内容は「[3]細胞製剤の投与方法」の記載に準ずる。
【0106】
例えば、少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であるチューブに、細胞製剤を収容するための容器と接続される接続部(びん針等)、点滴筒及び流速調節部が組み合わされた、細胞投与用のセットも本発明のキットの一実施形態である。
【0107】
また、例えば、細胞製剤を収容するための容器を含む細胞製剤投与用キットであって、前記容器は体内投与用の針とチューブと組み合せて使用され、前記針は前記チューブの第1の末端に接続され、前記容器は前記チューブの第2の末端に接続され、前記チューブは、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、前記細胞製剤は流速1.5mL/min以下で体内投与される、キットに関する。当該キットは、容器のみを必須の構成とし、他の要素(例えば、細胞製剤、チューブ、針等)と組み合せて「[3]細胞製剤の投与方法」に記載の投与方法に使用される。
【0108】
当該キットの容器は「[3]細胞製剤の投与方法」における容器に準ずる。当該キットは目的や細胞製剤の種類等に応じて2以上の容器を含んでもよく、針、チューブ、細胞製剤、チューブとの接続手段等を追加で含んでもよい。
【0109】
[6]細胞製剤投与用チューブ
本発明はさらに、上記細胞製剤の投与方法に使用するためのチューブに関する。
【0110】
本態様のチューブは、細胞製剤を収容するための容器と体内投与用の針を連結するためのチューブであり、前記針は前記チューブの第1の末端に接続され、前記容器は前記チューブの第2の末端に接続され、前記チューブは、前記第1の末端を含む少なくとも20cmの連続した区間において内径が2.3mm以下であり、かつ、前記容器との接続手段を備え、前記細胞製剤は流速1.5mL/min以下で体内投与される、チューブに関する。
【0111】
本態様のチューブは第1の末端及び第2の末端を有し、容器との接続手段を有する。本態様のチューブの構成は「[3]細胞製剤の投与方法」の記載に準ずる。
【0112】
容器との接続手段は、例えばびん針等が挙げられるが、容器中の細胞製剤がチューブ内に適切に送液されるものであれば特に限定しない。また、本態様のチューブは、折り返し部、流速調節部、停止部、チューブ接続部、流速表示部及び脱気部からなる群から選択される一以上を有することができる。各部の内容は「[3]細胞製剤の投与方法」の記載に準ずる。
【0113】
以下の実施例にて、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例0114】
(実施例1)
<チューブの設置条件>
テルフュージョンポンプ用輸血セットTB-PU300L(チューブ内径3.0mm、チューブ長220cm、テルモ社製)(第2のチューブに相当)を、容器との接続に使用されるびん針の先から115cmのところで切断し、切断面にチューブ接続部として三方活栓L型360°ロック(トップ社製)を取り付けた。この時、クレンメはチューブに残した。細胞懸濁液(間葉系幹細胞を細胞濃度2×10
6cells/mLで生理食塩水に懸濁したもの。その他成分として凍結保護剤を含む。回転式粘度計TV-20(東機産業製)を用いて回転数10rpm、温度22℃で測定した粘度は2mPas・sec)を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部に前記チューブのびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブに取り付けた三方活栓に、トップエックステンションチューブX1-L 120(チューブ内径1.1mm、チューブ長120cm、トップ社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、前記第2のチューブの容器から下流35cm~57cmの部分を、点滴スタンドに取り付けたテルフュージョン輸液ポンプTE-171E(テルモ社製)のチューブガイドにセットした。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、三方活栓から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、三方活栓から約5cmの部分で湾曲させて、湾曲部(
図2-1中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して0°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-1に示している。
【0115】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
輸液ポンプの流速を1mL/minに設定し、前記ポンプを用いて容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図4に示す。
【0116】
(実施例2)
<チューブの設置条件>
テルフュージョンポンプ用輸血セットTB-PU300L(チューブ内径3.0mm、チューブ長220cm、テルモ社製)(第2のチューブに相当)を、容器との接続に使用されるびん針の先から150cmのところで切断し、切断面にチューブ接続部として三方活栓L型360°ロック(トップ社製)を取り付けた。この時、クレンメはチューブに残した。実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部にチューブのびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブに取り付けた三方活栓に、トップエックステンションチューブX1-L 120(チューブ内径1.1mm、チューブ長120cm、トップ社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、前記第2のチューブの容器から下流45cm~67cmの部分を、点滴スタンドに取り付けたテルフュージョン輸液ポンプTE-171E(テルモ社製)のチューブガイドにセットした。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、三方活栓から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、三方活栓から約5cmの部分で湾曲させて、湾曲部(
図2-1中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して上り勾配40°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-1の実施例2に示している。
【0117】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
輸液ポンプの流速を1mL/minに設定し、前記ポンプを用いて容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図5に示す。
【0118】
(実施例3)
<チューブの設置条件>
テルフュージョンポンプ用輸血セットTB-PU300L(チューブ内径3.0mm、チューブ長220cm、テルモ社製)(第2のチューブに相当)を、容器との接続に使用されるびん針の先から150cmのところで切断し、切断面にチューブ接続部として三方活栓L型360°ロック(トップ社製)を取り付けた。この時、クレンメはチューブに残した。実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部にチューブのびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブに取り付けた三方活栓に、トップエックステンションチューブX1-L 120(チューブ内径1.1mm、チューブ長120cm、トップ社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、前記第2のチューブの容器から下流45cm~67cmの部分を、点滴スタンドに取り付けたテルフュージョン輸液ポンプTE-171E(テルモ社製)のチューブガイドにセットした。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、三方活栓から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、三方活栓から約5cmの部分で湾曲させて、湾曲部(
図2-1中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して上り勾配70°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-1の実施例3に示している。
【0119】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
輸液ポンプの流速を1mL/minに設定し、前記ポンプを用いて容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図6に示す。
【0120】
(実施例4)
<チューブの設置条件>
テルフュージョンポンプ用輸血セットTB-PU300L(チューブ内径3.0mm、チューブ長220cm、テルモ社製)(第2のチューブに相当)を、容器との接続に使用されるびん針の先から150cmのところで切断し、切断面にチューブ接続部として三方活栓L型360°ロック(トップ社製)を取り付けた。この時、クレンメはチューブに残した。実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部にチューブのびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブに取り付けた三方活栓に、トップエックステンションチューブX1-L 120(チューブ内径1.1mm、チューブ長120cm、トップ社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、前記第2のチューブの容器から下流45cm~67cmの部分を、点滴スタンドに取り付けたテルフュージョン輸液ポンプTE-171E(テルモ社製)のチューブガイドにセットした。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、三方活栓から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、三方活栓から約5cmの部分で湾曲させて、湾曲部(
図2-2中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して上り勾配90°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-2の実施例4、6に示している。
【0121】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
輸液ポンプの流速を1mL/minに設定し、前記ポンプを用いて容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図7に示す。
【0122】
(実施例5)
<チューブの設置条件>
実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部にテルフュージョン輸血セットTB-U300L(チューブ内径2.5mm、チューブ長140cm、テルモ社製)(第2のチューブに相当)のびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブの下流側末端のコネクタ(チューブ接続部)に、トップエックステンションチューブX1-L 120(チューブ内径1.1mm、チューブ長120cm、トップ社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げた。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、前記第2のチューブとの接続部から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、前記第2のチューブとの接続部から約5cmの部分で湾曲させて、湾曲部(
図2-2中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して上り勾配90°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-2の実施例5、7、8に示している。
【0123】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
前記第2のチューブに付属のクレンメを調節することで流速を1mL/minに調節し、容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図8に示す。
【0124】
(実施例6)
<チューブの設置条件>
テルフュージョンポンプ用輸血セットTB-PU300L(チューブ内径3.0mm、チューブ長220cm、テルモ社製)(第2のチューブに相当)を、容器との接続に使用されるびん針の先から150cmのところで切断し、切断面にチューブ接続部として三方活栓L型360°ロック(トップ社製)を取り付けた。この時、クレンメはチューブに残した。実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部にチューブのびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブに取り付けた三方活栓に、JMSエキステンションチューブJV-ND1150FL(チューブ内径1.0mm、チューブ長150cm、JMS社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、前記第2のチューブの容器から下流45cm~67cmの部分を、点滴スタンドに取り付けたテルフュージョン輸液ポンプTE-171E(テルモ社製)のチューブガイドにセットした。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、三方活栓から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、三方活栓から約5cmの部分で湾曲させて湾曲部(
図2-2中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して上り勾配90°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-2の実施例4、6に示している。
【0125】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
輸液ポンプの流速を1mL/minに設定し、前記ポンプを用いて容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流入してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図9に示す。
【0126】
(実施例7)
<チューブの設置条件>
実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部にニプロ輸血セットTFP-301E D200 CL Z(チューブ内径3.15mm、チューブ長150cm、ニプロ社製)(第2のチューブに相当)のびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブの下流側末端のコネクタ(チューブ接続部)に、トップエックステンションチューブX2-WL100(チューブ内径2.2mm、チューブ長100cm、トップ社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、前記第2のチューブの容器から下流45cm~67cmの部分を、点滴スタンドに取り付けたテーフテック輸液ポンプ2 FP-N17(ニプロ社製)のチューブガイドにセットした。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、前記第2のチューブとの接続部から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、前記第2のチューブとの接続部から約5cmの部分で湾曲させて、湾曲部(
図2-2中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して上り勾配90°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-2の実施例5、7、8に示している。
【0127】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
輸液ポンプの流速を1mL/minに設定し、前記ポンプを用いて容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図10に示す。
【0128】
(実施例8)
<チューブの設置条件>
実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部に、テルフュージョン輸血セットTB-U300L(チューブ内径2.5mm、チューブ長140cm、テルモ社製)(第2のチューブに相当)のびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブの下流側末端のコネクタ(チューブ接続部)に、トップエックステンションチューブX2-WL100(チューブ内径2.2mm、チューブ長100cm、トップ社製)(第1のチューブに相当)を接続し、その下流側末端(第1の末端)には留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。前記第2のチューブは、上流側末端(第2の末端)を下流側末端(チューブ接続部)よりも高くして、チューブ全体が水平面に対して90°になるように設置した。前記第1のチューブは、前記第2のチューブとの接続部から約5cmまでの区間は前記第2のチューブと同じ角度になるよう設置し、前記第2のチューブとの接続部から約5cmの部分で湾曲させて、湾曲部(
図2-2中「婉曲部」、
図14の「折り返し部」に対応)以降の下流部分は水平面に対して上り勾配90°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図2-2の実施例5、7、8に示している。
【0129】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
前記第2のチューブに付属のクレンメを調節することで流速を1mL/minに調節し、容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図11に示す。
【0130】
(比較例1)
<チューブの設置条件>
実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部に、テルフュージョン輸血セットTB-U300L(チューブ内径2.5mm、チューブ長140cm、テルモ社製)のびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブの下流側末端のコネクタに、翼状針(翼付静注針SV-25DLK(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、前記第2のチューブの容器から下流45cm~67cmの部分を、点滴スタンドに取り付けたテルフュージョン輸液ポンプTE-171E(テルモ社製)のチューブガイドにセットした。容器からポンプまでのチューブ部分は、水平面に対して90°になるように設置した。ポンプより下流部分は、下流側末端はポンプ出口よりも低い位置とし、緩みを持たせて曲線状に設置した。チューブの傾斜角度は上流側が水平面に対して約45°で、下流側に行くほど傾斜角度が小さくなり、下流側末端が水平面に対して約20°なるよう設置した。チューブ設置方法の模式図は
図3の比較例1に示している。
【0131】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
ポンプの流速を1mL/minに設定し、前記ポンプを用いて容器内の細胞懸濁液を滴下した。翼状針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収し、後述の通り、回収した細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図12に示す。
【0132】
(比較例2)
<チューブの設置条件>
実施例1と同じ細胞懸濁液を充填した容器(フローズバッグF-050)のサンプリングポートのゴム栓部に、テルフュージョン輸血セットTB-U300L(チューブ内径2.5mm、チューブ長140cm、テルモ社製)のびん針を差し込み、チューブと細胞懸濁液を充填した容器を接続した。前記チューブの下流側末端のコネクタに、留置針(サーフローフラッシュSR-FS2419W(テルモ社製))を取り付けた。細胞懸濁液を充填した容器を、点滴スタンドに吊り下げ、容器との接続部から70cmのところで前記チューブを90°に湾曲させた。湾曲部以降の下流部分は水平面に対して0°になるように設置した。チューブ設置方法の模式図は
図3の比較例2に示している。
【0133】
<滴下した細胞懸濁液の回収と細胞濃度の測定>
前記チューブに付属のクレンメを調節することで流速を1mL/minに調節し、容器内の細胞懸濁液を滴下した。留置針から流出してくる細胞懸濁液を約1mLずつ回収した。後述の通り、回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図13に示す。
【0134】
(評価例1)
<滴下した細胞懸濁液の濃度及び乖離率の評価>
実施例1~8及び比較例1~2において、約1mLずつ回収した各細胞懸濁液の細胞濃度を測定した。測定結果は
図4~13に示す通りである。次に、実施例1~8及び比較例1~2において、約1mLずつ回収した各細胞懸濁液の細胞濃度と、バッグ(容器)内の細胞懸濁液の細胞濃度(2×10
6cells/mL)の差を表す乖離率を求め、さらに各実施例及び比較例のそれぞれにおいて、回収した全細胞懸濁液における乖離率を平均することで平均乖離率を求めた(表1(表1-1にも同じ内容を示す))。なお、乖離率は次式を用いて求めた。
【0135】
【0136】
図4~13に示すように、実施例1~8における、回収した滴下後の細胞懸濁液の濃度は一定であり、かつ容器に含まれる細胞懸濁液の濃度(2×10
6cells/mL)と同程度であった。一方で、比較例1~2における回収した滴下後の細胞懸濁液の濃度は、容器に含まれる細胞懸濁液の濃度(2×10
6cells/mL)よりも低く、また一定に維持されることなく上下に変動していた。また、表1に示すように平均乖離率についても、実施例1~8では-10%以下(絶対値が10%以下)であり、容器内の細胞懸濁液と同程度の濃度の細胞懸濁液が滴下されていたが、比較例1~2では-25%を上回る値(絶対値が25%を上回る値)であり、滴下されてきた細胞懸濁液の濃度が容器内の細胞濃度と大きく乖離していた。
【0137】
これらの結果より、第1のチューブを使用する実施例1~8においては、細胞濃度、言い換えると液量当たりの細胞数を、設定値(投与する細胞製剤の濃度)通りに維持して投与できることが示された。目視による観測の結果においても、実施例1~8ではチューブ内に細胞の滞留や沈殿は認められなかった。一方、第1のチューブを使用しない比較例1~2では一定した細胞濃度での投与ができず、針から流出する溶液における細胞濃度は設定値(投与する細胞製剤の濃度)から大きく乖離していた。また、これら比較例1~2では、投与中、チューブ内に細胞が沈殿する現象が見られた。
【0138】