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特開2023-90699スロットレスモータ用ロータ位置検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090699
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】スロットレスモータ用ロータ位置検出システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/21 20160101AFI20230622BHJP
【FI】
H02K11/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022202283
(22)【出願日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】2118458.5
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】522252637
【氏名又は名称】イーティーエー グリーンパワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ETA Green Power Limited
【住所又は居所原語表記】Hethel Engineering Centre Chapman Way Hethel NR14 8FB United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】リアム ボウマン
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611QQ03
5H611RR02
5H611RR04
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】スロットレスモータにおいて、高精度で正確なロータ位置の読み取りを行うこと。
【解決手段】本発明は、ロータ位置検出素子を含むスロットレスモータに関するものである。このモータは、回転軸を有するロータと、整数N個の別個のブロックに配置された複数のコイル巻線とを備え、各ブロックは、回転軸の周りに配置され、隣接するブロックの各対の間にギャップを有している。ロータ位置検出素子は、センサリングに固定されたセンサを有するセンサリングと、センサリングから延びるセンサリングアタッチメントとを有し、センサは回転軸の周りに間隔を置いて配置され、ロータ位置検出素子は、センサが所定の位置に保持されるようにブロックの少なくとも1つと相対してセンサリングを保持するように構成される。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスリングと、
回転軸を有するロータと、
整数N個の異なるブロックに配置された複数のコイル巻線と、
センサリングと、前記センサリングから延びるセンサリングアタッチメントと、を備えたロータ位置検出素子と、
を備え、
それぞれの前記ブロックは前記回転軸の周りに配置され、隣接する各対の前記ブロックの間にギャップを有し、
前記センサリングは、前記センサリングに固定されたセンサを有し、
複数の前記センサは、前記回転軸の周りに間隔を開けて配置され、
前記ロータ位置検出素子は、前記センサが所定の位置に保持されるように、前記センサリングを前記ブロックの少なくとも1つと相対的に保持するように構成される、
スロットレスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスロットレスモータにおいて、
前記センサリングアタッチメントは、前記センサリングを隣接する前記ブロックの間の前記ギャップの1つに結合させる。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスロットレスモータにおいて、
モータハウジングをさらに備え、
前記モータハウジングは、前記コイル巻線を前記モータハウジングに対して一定の位置に保持する、
スロットレスモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のスロットレスモータにおいて、
前記センサリングは、前記モータハウジングに結合されている、
スロットレスモータ。
【請求項5】
請求項3に記載のスロットレスモータにおいて、
前記センサリングは、前記モータハウジングと一体で形成されている、
スロットレスモータ。
【請求項6】
請求項3に記載のスロットレスモータにおいて、
前記モータハウジングは金属製である、
スロットレスモータ。
【請求項7】
回転軸を有するロータと、複数のコイル巻線と、を備えたスロットレスモータのロータ位置検出素子であって、
前記コイル巻線は、N個の異なるブロックに配置され、各対の隣接する前記ブロックの間にギャップを有し、
前記ロータ位置検出素子は、
少なくとも1つのセンサを備え、前記回転軸の周りに間隔を開けて配置されるように構成されたセンサリングと、
前記センサリングから延び、前記センサリングを少なくとも1つの前記ブロックと相対的に保持するように構成され、前記センサが前記ブロックと相対的な位置に保持されるセンサリングアタッチメントと、
を備えている、
ロータ位置検出素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
前記センサは、磁場センサ、電位差式位置センサ、誘導式位置センサ、渦電流式位置センサ、容量式位置センサ、光ファイバー式位置センサ、光学式位置センサ、超音波式位置センサのいずれか1つである、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
前記ロータ位置検出素子は、複数の前記センサを備えている、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項10】
請求項9に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
前記複数のセンサは、異なる前記ブロックの数及び/又は前記コイル巻線の相の数のうちの1つ以上に基づき、前記回転軸の周りに角度的に離間して配置される、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
前記センサリング及びと前記センサリングアタッチメントが一体で形成されている、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
それぞれの前記ブロックは、正整数X個の前記コイル巻線の相を含む、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項13】
請求項12に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
それぞれの前記コイル巻線の最大磁束の角度位置は、隣接する前記コイル巻線の最大磁束の角度位置からπ/NXラジアンの角度だけ離れている、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
それぞれの前記ブロックのそれぞれの前記コイル巻線は、それぞれの相巻線が第1方向に巻かれ、前記第1方向とは反対の第2方向に連続して巻かれるような巻線パターンの繰り返しで構成されている、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
N個の異なる前記ブロックは、前記回転軸を中心にN倍の回転対称性を有し、それぞれの前記ブロックの同等な位置は2π/Nラジアンだけ離れている、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項16】
請求項13に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
それぞれの前記センサは、他の前記センサからラジアン単位で以下の角度だけ離間しており、
nは任意の整数、mは0又はpXを除く任意の整数であり、pは任意の整数である、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項17】
請求項13に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
それぞれの前記センサは、他の前記センサからラジアン単位で以下の角度だけ離間しており、
nは任意の整数、mは0又は2pXを除く任意の整数であり、pは任意の整数である、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項18】
請求項7から17のいずれか1項に記載のロータ位置検出素子において、
前記センサリングアタッチメントは、隣接する前記ブロックの間の前記ギャップに結合するように構成される、
ロータ位置検出素子。
【請求項19】
請求項18に記載のロータ位置検出素子において、
前記センサリングアタッチメントの端部は、隣接する前記ブロックの間の前記ギャップに保持されるように構成されている、
ロータ位置検出素子。
【請求項20】
請求項7から19のいずれか1項に記載のロータ位置検出素子において、
隣接する前記ブロックの間の異なる前記ギャップにそれぞれ結合するように構成された複数のセンサリングアタッチメントを備えている、
ロータ位置検出素子。
【請求項21】
請求項7から20のいずれか1項に記載のロータ位置検出素子において、
複数の前記センサのうち少なくとも1つは、前記センサリングアタッチメントに対して固定位置に保持されている、
ロータ位置検出素子。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
前記センサリングアタッチメントは、テーパー状突起として形成されている、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。
【請求項23】
請求項22に記載のスロットレスモータ又はロータ位置検出素子において、
前記テーパー状突起は、前記ギャップの形状に合わせた形状になっている、
スロットレスモータ又はロータ位置検出素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ位置が改善されたスロットレスモータに関するものである。より詳細には、本発明は、スロットレスモータ用のロータ位置検出素子に関するものであるが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
モータの可動部であるロータと固定部であるステータとの位置関係が、モータの機能において基本的な役割を果たすことはよく知られている。起動時や毎分回転数(RPM)の全範囲にわたってモータが効率的に機能するようにするためには、ロータの位置が正確でなければならない。
【0003】
モータの構成はさまざまなバリエーションが知られているが、その多くはスロット付きモータ及びスロットレスモータの2つのカテゴリーに分類される。どちらの構成も、コイル巻線からなるステータ及びロータを有し、そのすべてがモータハウジング内に収容されている。ステータは、通常スチールラミネート製で、ロータを包むように配置され、ロータは永久磁石からなり、回転軸を中心に回転するように構成されている。コイル巻線は、典型的には銅製であり、ロータとステータとの間のエアギャップに巻かれている。コイル巻線は、通常、複数の電磁相から構成され、各相がモータコントローラからの電流出力によって通電される。
【0004】
スロット付きモータでは、ステータは、ロータの周囲に配置され、スロット付きの積層板が重ねられ、スロット(ティースと呼ばれることもある)にモータコイル巻線が挿入されている。スロットレスモータでは、ステータはロータの周囲に配置されるが、スロット付き積層板はなく、モータコイル巻線はロータに巻かれてロータとステータの間のエアギャップに配置される。
【0005】
スロットレスモータでは、コイル巻線の相は、各相が回転対称でロータの周りに繰り返されるように巻かれ、特定の相は、他の相により特定の相の後続の相巻線から分離される。例えば、例えば、A、B、Cの3つの相がある場合、繰り返される相巻きパターンは、ABC、ABC、ABC等となる。このパターンをロータの周囲に配置し、各相の巻線に通電する順番で、コイルに発生する磁場とロータの永久磁石との相互作用により、ロータにトルクを発生させる。このためには、ステータ巻線に対するロータの位置を正確に把握し、ロータの回転中の適切な時点で、ロータが静止している場合でさえも、適切な相に通電する必要がある。この相互作用により、ロータの回転方向及び回転速度がコントロールされ、モータコントロールの基本となっている。この相互作用は、永久磁石からなるロータについて説明したが、他のタイプのロータ、例えばリラクタンスモータのロータでも同様の方法でトルクが発生することが理解されるであろう。
【0006】
スロット付きモータでは、ロータ位置センサは、通常、ステータの「ティース」の上又は間に配置される。一方、スロットレスモータでは、ステータのティースがないため、センサを設けることがより困難な場合がある。その理由は、正確な読み取りを行うためには、ロータ位置センサをロータとステータ巻線に対して固定された状態で配置しなければならないからである。いずれの場合も、高精度で正確なロータ位置の読み取りを行うには、ステータ、ロータ、モータハウジングの相対的な測定誤差が重要である。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は独立請求項に記載されている通りであり、任意的の特徴は従属請求項に記載されている通りである。本発明の態様は、互いに関連して提供され、ある態様の特徴は、他の態様にも適用され得る。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、回転軸を有するロータと、整数N個の異なるブロックに配置された複数のコイル巻線と、センサリングと、センサリングから延びるセンサリングアタッチメントと、を備えたロータ位置検出素子と、を備え、それぞれのブロックは回転軸の周りに配置され、隣接する各対のブロックの間にギャップを有し、センサリングは、センサリングに固定されたセンサを有し、複数のセンサは、回転軸の周りに間隔を開けて配置され、ロータ位置検出素子は、センサが所定の位置に保持されるように、センサリングをブロックの少なくとも1つと相対的に保持するように構成される、スロットレスモータが提供される。
【0010】
複数のコイル巻線は複数のブロックに配置され、例えば複数のコイル巻線の各ブロックは隣接するブロックとの間にギャップを有し、特定のブロックに電流を流すと電磁気的に励起され、ロータ内にトルクを発生させて当該通電ブロックに向かって回転させる。このトルクは、ブロックの磁場と永久磁石ロータの磁場、又はリラクタンスロータのリラクタンスとの相互作用により発生する。ロータ位置検出素子をコイル巻線の特定のブロックに対して保持することにより、センサリングはロータに対して固定され、コイル巻線のブロックに対するロータの現在の位置関係を示す基準点を提供することができる。例えば、ロータの位置は、基準ブロックから離れたロータ上の特定の点の回転角として与えられてもよい。いくつかの例では、センサリングアタッチメントは、隣接するブロックの間のギャップの1つに結合するように構成される。コイル巻線の基準ブロックに対するロータの位置が分かれば、ロータを回転させるために必要なトルクを発生させるために、どのブロックに通電すればよいかがわかる。
【0011】
いくつかの例では、モータは、モータハウジングをさらに備え、ハウジングは、コイル巻線をハウジングに対して固定位置に保持し得る。いくつかの例では、モータハウジングは、例えば金属材料を備えた複合材料から形成され、いくつかの例では、ハウジングは金属製である。いくつかの例では、センサリングは、モータハウジングに結合されてもよい。ロータ位置検出素子は、コイルブロックとモータハウジングとに相対的に保持される。モータハウジングは、近位エンドキャップと遠位エンドキャップとを備えてよく、センサリングは、エンドキャップの1つに結合されてもよい。例えば、センサリングは、所定の向きでしかモータハウジングに結合できない小さな節を有してもよい。
【0012】
いくつかの例では、センサリングは、モータハウジングと一体で形成されてもよい。例えば、センサリングは、モータハウジングのエンドキャップと一体で形成されてもよい。これは、例えば、モータハウジングとセンサリングとを一体で鋳造することによって達成され得る。これは、センサリングをモータハウジングに溶接、接着、又はその他の方法で融合することによって達成される。いくつかの例では、センサリングアタッチメントをモータハウジングと一体で形成してもよく、センサリングをモータハウジングに結合可能にすることができる。センサリング及び/又はセンサリングアタッチメントをモータハウジングに結合することは、センサリング上のセンサが、モータハウジングだけでなくステータにも位置合わせされ、ロータに対して固定して保持されることを意味する。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、回転軸と複数のコイル巻線とを有するロータを備えるスロットレスモータ用ロータ位置検出素子が提供され、コイル巻線は、隣接するブロックの各対の間にギャップを有するコイル巻線のN個の異なるブロックに配置される。ロータ位置検出素子は、センサリングに固定され、回転軸の周りに間隔を開けて配置されるように構成された少なくとも1つのセンサを備えたセンサリングと、センサリングから延び、センサリングを少なくとも1つのブロックと相対的に保持するように構成されたセンサリングアタッチメントとを備え、センサがブロックと相対的に位置するように保持される。
【0014】
いくつかの例では、センサは、磁場センサ、例えばホール効果ベースの位置センサや磁歪式位置センサ、電位差式位置センサ、誘導式位置センサ、渦電流ベースの位置センサ、容量式位置センサ、光ファイバー式位置センサ、光学式位置センサ、超音波式位置センサのいずれか1つである。
【0015】
いくつかの例では、ロータ位置検出素子は、複数のセンサを備える。例えば、複数のセンサは、異なるブロックの数及び/又はコイル巻線の相の数のうちの1つ以上に基づいて、回転軸の周りに角度的に離間される。そうすることで、同等なコイル位置のうちどれがロータ上の特定の点に最も近いかを特定することが可能である。「同等なコイル位置」という用語は、コイル巻線内の誘導磁場の方向を意味し、巻線が複数の相を有する場合には、対応する相、又は対応する相及びコイル巻線の誘導磁場の方向を指す。すなわち、ブロック内の特定の相のコイル巻線は、異なるブロック内の同じ相で駆動されるコイル巻線と同等なコイル位置を有するが、誘導磁場の方向は異なる場合と異ならない場合がある。
【0016】
いくつかの例では、センサリングとセンサリングアタッチメントとが一体で形成されている。
【0017】
いくつかの例では、それぞれ異なるブロックは、正の整数X個の相のコイル巻線を含む。好ましくは、各ブロックは、3相のコイル巻線を備えている。例えば、各巻線の最大磁束の大きさの角度位置が、隣接する巻線の最大磁束の大きさの角度位置からπ/NXラジアンの角度だけ離れている。ここで、Nは異なるブロックの数、Xはブロック内の相の数である。この間隔は、誘導磁場の方向に関係なく、異なる角度位置のコイル巻線の特定の相を通過する電流によって発生する最大磁束、及び磁場の最も強い点に対応する。
【0018】
ブロックが互いに実質的に同一であるいくつかの例では、ブロック間の角度間隔(例えば、隣接する2つのブロックの中心間距離等、各ブロックの同じ点)は2π/Nラジアンであることに注意する。ここで、Nはブロックの総数である。これは、同等なブロック間の間隔π/NXラジアンと一致する。これは、任意のブロックが持つことができる第1方向及び第2方向に巻かれた巻線に関連する誘導磁場Pの2つの方向も存在するためである。これを考慮すると、同等なブロックに到達するための回転角度の「完全な」式は2π/NPXとなり、ここでP≡2となり、上記の式π/NXに到達する。
【0019】
いくつかの例では、各ブロックの各コイル巻線は、各相巻線が第1方向に巻かれ、第1方向とは反対の第2方向に連続して巻かれるような反復巻線パターンで構成されている。すなわち、(A↑、B↑、C↑、A↓、B↓、C↓)が1つの巻線パターン等である、ここで、A、B、Cは異なる相を表し、矢印(↑、↓)はコイル巻線における誘導磁場の方向を表す。なお、矢印の方向は任意であり、単に、2つの所定のコイルが、矢印が同じであれば互いに同じ方向の誘導磁場を有し、矢印が反対であれば反対方向の誘導磁場を有するように配置されていることを示すに過ぎない。したがって、上記の例のパターンでは、A↑及びA↓は同相であるが、通電すると磁場は逆方向を向く。これは、正弦波的に変化する電流を流したときに、互いに180度位相がずれていると考えることができる。
【0020】
いくつかの例では、N個の異なるブロックは、各ブロック内の同等な位置が2π/Nラジアンだけ離間されるように、回転軸についてN倍の回転対称性を有する。言い換えれば、各ブロックは回転軸を中心に等間隔に配置された同一の構成を持ち、任意の開始点から、任意の正の整数に2π/Nラジアンを掛けて計算された角度の回転が同等なコイル位置につながる。
【0021】
いくつかの例では、複数のセンサは、ラジアン単位で、以下の角度だけ互いに離間される、
ここで、nは任意の整数、mは0又はpXを除く任意の整数で、pは任意の整数である。これは、コイル巻線の回転対称の周囲で、時計回り方向すなわちpが正の整数値、又は反時計回り方向すなわちpが負の整数値のいずれかの位置を指している。
【0022】
いくつかの例では、複数のセンサは、ラジアン単位で、以下の角度だけ互いに離間される、
ここで、nは任意の整数、mは0又は2pXを除く任意の整数で、pは任意の整数である。この式は、誘導磁場の特定の位相及び方向におけるコイル巻線の回転対称の周りの任意の位置を指す。一部の例では、センサの間隔の一部にさらに非対称シフトδが適用され、すべてのコイルが回転対称を中心に等間隔に配置されている場合でも、一部のセンサが同等なコイル位置からオフセットして配置されるようにする。これにより、コイルに対する現在のロータ位置、例えば特定の位相及びコイル巻線の方向の最大磁束の点(例えばオフセットされていないセンサ)に関する情報、並びにロータ上の特定の点が次のコイル巻線に対してどのようにオフセットされているか、例えばある位相の特定のコイル巻線の方向で次に大きい磁束の大きさに関する情報が得られる。いくつかの例では、上記の式に加えて、一部又はすべてのセンサが、ある係数δにより非対称にオフセットされる。非対称オフセット係数δは、上述の非対称オフセットの一般原則に従って、さらに微妙な情報を得るために、異なるセンサの組に対して異なるものとすることができる。
【0023】
いくつかの例では、センサリングアタッチメントは、隣接するブロックの間のギャップに結合するように構成される。
【0024】
いくつかの例では、センサリングアタッチメントの端部は、隣接するブロックの間のギャップに保持されるように構成される。
【0025】
いくつかの例では、ロータ位置検出素子は、それぞれが隣接するブロックの間の異なるギャップに結合するように構成された複数のセンサリングアタッチメントを備えている。
【0026】
いくつかの例では、複数のセンサのうち少なくとも1つは、センサリングアタッチメント(複数可)に対して固定位置に保持される。
【0027】
いくつかの例では、センサリングアタッチメント(複数可)は、テーパー状突起として形成される。例えば、テーパー状突起は、コイル巻線の隣接するブロックの間のギャップの形状に合うように形成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ロータ位置検出素子アセンブリを備えたスロットレスモータを示す図である。
図2】ロータ位置検出素子を構成するスロットレスモータの一例を示す分解斜視図である。
図3A】スロットレスモータ用のコイル巻線のブロックを形成する個々のコイル巻線を例示する図である。
図3B】スロットレスモータ用のコイル巻線を例示する図である。
図4A】モータエンドキャップと結合したセンサリング及びセンサリングアタッチメントを示す斜視図である。
図4B】モータエンドキャップと結合したセンサリング及とセンサリングアタッチメントを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
請求項の実施形態は、精密なロータ位置測定システムを備えたスロットレスモータに関するものである。特に、請求項の実施形態は、例えば、コイル巻線を備えたステータと永久磁石からなるロータとを備えたスロットレスモータに使用され得る、センサリングと、センサリングをコイル巻線に対して固定保持するセンサリングアタッチメントとを備えたロータ位置検出素子に関するものである。その結果、より精密なモータコントロールを行うことができ、そして、モータの効率を向上させることができる。
【0030】
図1は、スロットレスモータ110及びロータ位置検出素子アセンブリ111を備えたシステム100を示す。ロータ位置検出素子アセンブリは、モータコントローラ(図示せず)に接続するためのセンサコネクタ112及びコネクタプラグ120を備えている。センサコネクタ112は、コネクタプラグ120を介してセンサ信号をモータコントローラへ転送するために、センサリングに結合するように構成される。本実施の形態では、センサコネクタ112とコネクタプラグ120との間の有線接続を示しているが、センサコネクタが、センサコネクタに結合された無線モジュールと通信するように構成された無線モジュールを備えた場合、センサデータの転送は、例えば、Bluetooth(登録商標)又はWi-Fi(登録商標)を介して、無線接続によって達成することができることが理解されるであろう。
【0031】
図2は、ロータ位置検出素子217、218、219を備えたスロットレスモータ210を備えたスロットレスモータアセンブリ200の一例を示す分解図である。図2は、ヒートシンクモータハウジング213、ステータ205、センサリングアタッチメント217、センサリング219、センサPCB218、モータハウジングエンドキャップ201を備えたスロットレスモータ210を示す。
【0032】
ステータ205は、異なるブロック206a、206bに配置された複数のコイル巻線を有するコイル巻線アセンブリ206を備え、さらに、コイル巻線アセンブリを包含するフラックスリング208を備え、この例では、そのすべてが、ヒートシンクモータハウジング213によって包含される。モータハウジングにヒートシンクを設けることで、モータ自体の温度調節を助けることができる。また、フラックスリングの追加により、コイル巻線に電流を流したときに発生する磁界の強さが増すことも理解できるであろう。
【0033】
コイル巻線アセンブリ206の異なるブロック206a、206bの各々は、隣接するブロック206a、206bの間にギャップを有する。回転軸Pを中心に回転可能なロータ203は、その円周上に間隔を置いて配置された永久磁石203a,203bを有し、ステータ205によって完全に包含されるようにステータ205及びモータハウジング213内に配置される。回転軸Pは、モータアセンブリ全体の中心を通って延び、この例では、複数の異なるブロック206a、206bは、N倍の回転対称で軸Pの周りに間隔を置いて配置される。Nは異なるブロック206a、206bの個数である。
【0034】
この例では、センサリング219は、センサリングアタッチメント217及びセンサPCB218とともに、ロータ位置検出素子217、218、219を構成する。センサリング219は、ロータ203上の磁石203a、203bの磁場を検出することができる少なくとも1つのセンサを備えている。センサPCB218は、センサリング219上のセンサに基本回路を提供し、センサコネクタ112用の結合点を提供してもよい。いくつかの実施形態では、センサは、磁場センサ、例えばホール効果ベースの位置センサ又は磁歪式位置センサ、電位差式位置センサ、誘導式位置センサ、渦電流ベースの位置センサ、容量式位置センサ、光ファイバー位置センサ、光学式位置センサ、音波式位置センサのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、センサPCB218は、センサリング219に結合しセンサ読み取り値を受け取るように構成されたセンサコネクタ112に収容されてもよい。センサリングアタッチメント217は、センサがステータ205及びコイル巻線アセンブリ206に対して所定の位置に維持されるように、ロータ位置検出素子217、218、219を異なるブロックの少なくとも1つに相対的に保持するように構成される。センサリングアタッチメント217は、隣接するブロック206a、206bの間のギャップに収まるように構成されたテーパー状突起を有してもよい。ロータ位置検出素子217、218、219は、ロータ位置検出素子の追加によってモータの長さが増加しないように、モータエンドキャップ201にも結合される。図2には3つのセンサリングアタッチメントが示されているが、1つ又は複数のセンサリングアタッチメントを使用してロータ位置検出素子を固定位置に保持することが可能であり、複数のセンサリングアタッチメントの各々は、隣接するブロック間の異なるギャップに適合するように構成されていることが理解されるであろう。
【0035】
モータの正常な機能では、ステータに磁場が発生し、これによりロータが回転軸を中心に回転することになる。センサリング219のセンサは、ロータ203の磁石によって生成される磁場を測定する。磁場測定の特性は、ロータの現在の向き、すなわち磁場の極性、磁場の強さ等に関する詳細を提供する。ロータ203の向きが分かれば、ロータ203にトルクを発生させて所望の方向に所望の速度で回転させるために、巻線内のどの相及び関連するコイルに通電する必要があるかを導き出すことができる。例えば、永久磁石ロータの場合、半径方向外側に向けられたN極を有するロータ203上の永久磁石は、センサ領域に磁場を発生させることができ、この磁場は、ある極性、この例ではN極、及び磁石とセンサとの間の間隔および磁石の強さに依存する強さを有する。このN極は、モータコントローラに情報を中継するセンサに最も近い磁石であってもよい。ここでは永久磁石ロータについて説明したが、適切なセンサを使用すれば、他のバージョンのロータも使用できることは当業者には理解されるであろう。
【0036】
センサを構成するセンサリング219の向きがステータ205に対して固定されているため、この例では、コイル巻線アセンブリ206及びセンサリングアタッチメントを介して、モータコントロールシステムは、ステータに対するロータ203の位置及び向きを決定することができる。そして、ロータ203にトルクを発生させて回転させるために、適切な極性で適切なコイル巻線(複数可)206に通電するための電流を供給することができる。
【0037】
図3A及び図3Bは、スロットレスモータにおけるコイル巻線の一例を示す。個々のコイル線301a~301nは、互いに結合され、モータの回転軸Pの周りにコイル巻線302のブロックを形成し、第1軸端及び第2軸端を有するコイルアセンブリを形成する。ブロック306a、306b、306cの巻き方は、コイル巻線の第1軸端302a、302b、302c及び第2軸端304a、304bで隣接するブロック間にギャップを生じさせるものである。いくつかの実施形態では、コイル巻線は、各ブロック306a、306b、306cが異なる相からなる正整数X個の相を構成する。いくつかの実施形態では、それぞれ異なるブロック306a、306b、306cは、正整数X個のコイル巻線の相を含んでもよい。好ましい実施形態では、各ブロック306a、306b、306cは、3相のコイル巻線を構成する。すなわち、各個別のコイル線301a~301nは、いずれかの相で電流を流すように構成されている。いくつかの実施形態では、各個別のコイル線は、隣接するコイル線と異なる位相で電流を流すように構成されている。いずれの場合も、個々のコイルは、ブロックを形成する第1軸端302に向かって第1方向に巻かれ、次に、ブロックを形成する第2軸端304に向かって第2方向に巻かれる。これにより、同じ相の各コイルは直列に接続される。
【0038】
各コイル線が通電すると磁場が発生し、各巻線の最大磁束の角度位置は、隣接する巻線の最大磁束の角度位置からπ/NXラジアンの角度で離れている。ここで、Nは異なるブロック数、Xはブロック内の相の数である。これらの点又はその近くでのセンサ測定値は、特定のロータの位置及び向きで発生させることができる最大トルクを示す。これは、磁束の大きさが最大の点が、磁場が最も強くなる点であり、例えば永久磁石ロータの場合、ロータに最大のトルクを発生させ、適切な磁極をコイルの発生磁場と整列させるためである。これはリラクタンスモータにも適用され、リラクタンスモータのロータ上のフラックスバリアは、コイルにより発生する磁力線と整列するようにロータを動かすことになる。
【0039】
図3A及び図3Bに示す実施形態では、各ブロックは、各相巻線が第1方向に巻かれ、第1方向とは反対の第2方向に連続して巻かれるような、繰り返しの巻線パターンで構成されている。したがって、各ブロックは、誘導磁場の第1方向におけるX個の相パターンと、第1方向とは反対の誘導磁場の第2方向におけるX個の相パターン、すなわち(A↑、B↑、C↑、A↓、B↓、C↓)を有することになる。矢印は誘導磁場の方向を表す。N個の異なるブロックは、各ブロックの同等な位置が2π/Nラジアンだけ離れているような回転軸Pに関するN倍の回転対称性を有する。言い換えれば、各ブロックは、任意の出発点から、任意の正の整数に2π/Nラジアンを乗じた角度を回転させると、同等なコイル位置になるように、回転軸を中心に等間隔に配置された同一の構成を有している。
【0040】
図4A及び図4Bは、ロータ位置検出素子を構成するモータハウジングエンドキャップ401の一例を示す斜視図及び正面図である。この例では、エンドキャップ401及びセンサリングアタッチメント417a、417bは一体で形成されている。センサリング419は、センサリング419が所定の方法でエンドキャップに結合されるように、エンドキャップ上の対応する形状及びサイズの孔に結合するように構成される小さな節421を備えてもよい。いくつかの実施形態では、センサリングアタッチメント417a、417b及び/又はセンサリング419は、モータエンドキャップ401と共にフライス加工又は鋳造されてもよい。いくつかの実施形態では、センサリングアタッチメント417a,417b及び/又はセンサリング419は、溶接、接着又は2つの構成要素を一緒に融合させる他の何らかの手段を介してモータエンドキャップ401に結合されてもよい。
【0041】
ロータ位置検出素子419、417はモータエンドキャップ401に結合可能である(又は結合されている)ため、ロータ位置検出素子は、モータハウジング213に対して固定位置に保持され得る。したがって、ロータ位置検出素子417、419は、ロータ位置検出素子が2つの隣接するコイル巻線ブロック306a、306bの間のギャップに収まるように、テーパー状のステータのコイル巻線に対して固定して保持することができる。いくつかの実施形態では、センサリングアタッチメント417a、417bの形状は、隣接するコイル巻線ブロック306a、306bの間のギャップの間に収まるように設計されている。ロータ位置検出素子417、419をステータに対して固定して保持することにより、センサをコイル巻線又はコイル巻線のブロックの特定の相に対して所定の位置に配置することができる。これにより、モータコントローラに提供されるロータ位置の測定値は、ステータに対するロータの相対的な位置を示す。言い換えれば、ロータ位置検出素子は、ステータのコイル巻線、ロータの回転軸、モータケーシング全般の少なくとも一つ、場合によっては全てに対して相対的に保持される。有利なことに、ロータ位置検出素子により行われるあらゆる測定は、測定値がモータアセンブリの構成部品の寸法誤差による干渉を低減しているため、より高いレベルの精度と正確さで完結することができる。
【0042】
本開示の文脈において、本明細書に記載されたシステムの他の例及び変形例は、当業者にとって明らかであろう。各図に示す実施形態は、単に例示的なものであり、本明細書に記載され、各請求項に規定されるように一般化、除去、又は置換され得る特徴を含むことが、上記の議論から理解されるであろう。

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【外国語明細書】