(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090721
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】画像表示装置、画像表示用プログラム及び画像表示方法
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20230622BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20230622BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20230622BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20230622BHJP
G09G 5/14 20060101ALI20230622BHJP
G09G 5/373 20060101ALI20230622BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230622BHJP
H04N 5/262 20060101ALI20230622BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20230622BHJP
A61F 9/00 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G09G5/00 510G
G09G5/00 555G
G09G5/37 320
G09G5/10 B
G09G5/37 100
G09G5/377 100
G09G5/14 C
G09G5/00 550B
G09G5/373 100
G09G5/373 300
G09G5/00 530T
G06T7/00 660Z
H04N5/262 010
H04N5/66 A
A61F9/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061157
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2020015225の分割
【原出願日】2020-01-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 画像表示装置を配布した。(配布日:平成31年2月1日以降)
(71)【出願人】
【識別番号】516007858
【氏名又は名称】株式会社ジョリーグッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】上路 健介
(72)【発明者】
【氏名】土門 広弥
(57)【要約】
【課題】画像表示装置を装着したユーザが顔を速く動かした場合にも、視覚弱者等の視覚の状態に対応する画像を適切に表示する。
【解決手段】画像表示装置1は、ユーザUに装着された状態で画面に画像を表示する画像表示装置1であって、画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを記憶媒体から取得するデータ取得部141と、画像表示装置1の向き又はユーザUの視線の向きの変化に伴って、第1画像データのうち異なる画像データを画面に表示させる表示画像データとして抽出し、抽出した表示画像データを画面に表示させる表示制御部142と、を有し、表示制御部142は、画面の所定の領域において、画面に表示している表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、表示画像データに重ねて画面に表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着された状態で画面に画像を表示する画像表示装置であって、
前記画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを記憶媒体から取得するデータ取得部と、
前記画像表示装置の向き又は前記ユーザの視線の向きの変化に伴って、前記第1画像データのうち異なる画像データを前記画面に表示させる表示画像データとして抽出し、抽出した前記表示画像データを前記画面に表示させる表示制御部と、
を有し、
前記表示制御部は、前記画面の所定の領域において、前記画面に表示している前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させる、
画像表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記画面の中央位置を含む円形又は楕円形の前記所定の領域の濃度が前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い前記第2画像データを前記画面に表示させる、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記所定の領域の中心に近いほど濃度が高い前記第2画像データを前記画面に表示させる、
請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、時間が経過するにつれて、前記第2画像データの濃度を高くする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、時間が経過するにつれて、前記第2画像データが表示される前記所定の領域の面積を大きくする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記ユーザが前記画像表示装置の使用を開始し始めてから所定の期間は、前記第2画像データを表示させずに前記第1画像データのみを表示させ、前記所定の期間が経過した後に前記第2画像データの表示を開始する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記画像表示装置の向きによらず、前記画面の所定の位置に前記第2画像データを表示させる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記第1画像データの表示を開始した後の第1タイミングで、前記画面における前記所定の領域よりも広い範囲の輝度を低下させ、又は濃度を高くし、前記第1タイミングの後の第2タイミングにおいて、前記第2画像データの前記所定の領域の濃度を高くする、
請求項1から7のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
ユーザの視線の向きを検出する視線検出部をさらに有し、
前記表示制御部は、前記視線検出部が検出した視線の向きに基づいて決定した前記所定の領域において、前記第2画像データを前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記ユーザの状態を示す情報に基づいて、前記第2画像データの濃度、大きさ、形状、又は濃度が変化する速度を変化させる、
請求項1から9のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
画面に画像を表示する画像表示装置が有するプロセッサを、
前記画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを記憶媒体から取得するデータ取得部、及び
前記画像表示装置の向き又は前記画像表示装置を使用するユーザの視線の向きの変化に伴って、前記第1画像データのうち異なる画像データを前記画面に表示させる表示画像データとして抽出し、抽出した前記表示画像データを前記画面に表示させる表示制御部、
として機能させ、
前記表示制御部は、前記画面の所定の領域において、前記画面に表示している前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させる、
画像表示用プログラム。
【請求項12】
ユーザに装着された状態で画面に画像を表示する画像表示装置が実行する画像表示方法であって、
前記画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを記憶媒体から取得するデータ取得ステップと、
前記画像表示装置の向き又は前記画像表示装置を使用するユーザの視線の向きの変化に伴って、前記第1画像データのうち異なる画像データを前記画面に表示させる表示画像データとして抽出するステップと、
抽出した前記表示画像データを前記画面に表示させる表示制御ステップと、
を有し、
前記表示制御ステップにおいては、前記画面の所定の領域において、前記画面に表示している前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させる、
画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する画像表示装置、画像表示用プログラム及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者、視覚障害者又は視覚弱者(以下、「視覚弱者等」という。)が室内や室外を視認した状態を示す画像をヘッドマウントディスプレイに表示させることにより、ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザUが、視覚弱者等の視覚の状態を疑似体験できるようにする技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、ヘッドマウントディスプレイに設けられたカメラで撮影した画像データを、予め作成された補正データを用いて補正することにより、視覚弱者等が室内や室外を視認した状態に近い擬似的な画像を示す画像データを作成していた。このような技術を用いた場合、ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザが顔を速く動かしたときに、補正のための画像処理が間に合わず、適切な画像を表示できない場合があるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、画像表示装置を装着したユーザが顔を速く動かした場合にも、視覚弱者等の視覚の状態に対応する画像を適切に表示できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の画像表示装置は、ユーザに装着された状態で画面に画像を表示する画像表示装置であって、前記画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを記憶媒体から取得するデータ取得部と、前記画像表示装置の向き又は前記ユーザの視線の向きの変化に伴って、前記第1画像データのうち異なる画像データを前記画面に表示させる表示画像データとして抽出し、抽出した前記表示画像データを前記画面に表示させる表示制御部と、を有し、前記表示制御部は、前記画面の所定の領域において、前記画面に表示している前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させる。
【0007】
前記表示制御部は、前記画面の中央位置を含む円形又は楕円形の前記所定の領域の濃度が前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い前記第2画像データを前記画面に表示させてもよい。
【0008】
前記表示制御部は、前記所定の領域の中心に近いほど濃度が高い前記第2画像データを前記画面に表示させてもよい。
【0009】
前記表示制御部は、時間が経過するにつれて、前記第2画像データの濃度を高くしてもよい。また、前記表示制御部は、時間が経過するにつれて、前記第2画像データが表示される前記所定の領域の面積を大きくしてもよい。
【0010】
前記表示制御部は、前記ユーザが前記画像表示装置の使用を開始し始めてから所定の期間は、前記第2画像データを表示させずに前記第1画像データのみを表示させ、前記所定の期間が経過した後に前記第2画像データの表示を開始してもよい。
【0011】
前記表示制御部は、前記画像表示装置の向きによらず、前記画面の所定の位置に前記第2画像データを表示させてもよい。
【0012】
前記表示制御部は、前記第1画像データの表示を開始した後の第1タイミングで、前記画面における前記所定の領域よりも広い範囲の輝度を低下させ、又は濃度を高くし、前記第1タイミングの後の第2タイミングにおいて、前記第2画像データの前記所定の領域の濃度を高くしてもよい。
【0013】
前記画像表示装置は、ユーザの視線の向きを検出する視線検出部をさらに有し、前記表示制御部は、前記視線検出部が検出した視線の向きに基づいて決定した前記所定の領域において、前記第2画像データを前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させてもよい。
【0014】
前記表示制御部は、前記ユーザの状態を示す情報に基づいて、前記第2画像データの濃度、大きさ、形状、又は濃度が変化する速度を変化させてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様の画像表示用プログラムは、画面に画像を表示する画像表示装置が有するプロセッサを、前記画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを記憶媒体から取得するデータ取得部、及び前記画像表示装置の向き又は前記画像表示装置を使用するユーザの視線の向きの変化に伴って、前記第1画像データのうち異なる画像データを前記画面に表示させる表示画像データとして抽出し、抽出した前記表示画像データを前記画面に表示させる表示制御部、として機能させ、前記表示制御部は、前記画面の所定の領域において、前記画面に表示している前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させる。
【0016】
本発明の第3の態様の画像表示方法は、ユーザに装着された状態で画面に画像を表示する画像表示装置が実行する画像表示方法であって、前記画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを記憶媒体から取得するデータ取得ステップと、前記画像表示装置の向き又は前記画像表示装置を使用するユーザの視線の向きの変化に伴って、前記第1画像データのうち異なる画像データを前記画面に表示させる表示画像データとして抽出するステップと、抽出した前記表示画像データを前記画面に表示させる表示制御ステップと、を有し、前記表示制御ステップにおいては、前記画面の所定の領域において、前記画面に表示している前記表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、前記表示画像データに重ねて前記画面に表示させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画像表示装置を装着したユーザが顔を速く動かした場合にも、視覚弱者等の視覚の状態に対応する画像を適切に表示できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る画像表示装置の外観図である。
【
図3】第1画像データについて説明するための図である。
【
図4】表示画像データについて説明するための図である。
【
図5】表示制御部が第2画像データを表示部に表示させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[画像表示装置1の概要]
図1は、本実施形態に係る画像表示装置1の外観図である。画像表示装置1は、ユーザUに装着された状態で画面に画像を表示する装置である。画像表示装置1は、ユーザUが仮想的な空間にいる場合にユーザUが視認する、ユーザUの周囲の仮想現実画像を表示する。画像表示装置1が表示する画像は、静止画であってもよく、動画像であってもよい。
【0020】
画像表示装置1は、例えばゴーグル又は眼鏡の形態を有する。画像表示装置1は、筐体10と、筐体の内側(ユーザUが視認する側)に設けられた表示部11とを有する。画像表示装置1のユーザUは、画像表示装置1を手で保持したり、頭部に固定したりすることにより、表示部11に表示される画像コンテンツを閲覧することができる。
【0021】
画像コンテンツは、ユーザUが仮想的な空間にいる場合にユーザUが視認するユーザUの周囲の仮想現実画像を含む。画像コンテンツは、ユーザUが視覚に影響を与える疾病を患った状態でユーザUが視認する周囲の画像を仮想的に示す画像データにより構成されている。疾病を患った状態は、例えば視野の中心付近が暗くなったり不明瞭になったりする状態である。ユーザUは、このような画像コンテンツを閲覧することにより、視覚弱者等の視覚の状態を疑似体験することができる。その結果、ユーザUは、画像コンテンツを閲覧することにより、疾病を患わないように努める意識を高めることができる。
【0022】
ユーザUが臨場感を得るためには、ユーザUが顔の向きを変えたことに応じて、ユーザUが視認する仮想現実画像が、顔の向きに対応する画像に変化することが望ましい。一方、視覚弱者等の視覚の状態を示す領域(以下、「擬似疾患領域」という。)は、表示部11の画面において同じ位置に表示されなければならない。
【0023】
表示部11にこのような画像を表示するために、従来の技術を応用して、仮想現実画像データのうち表示部11に表示される部分である表示画像データの画素値を変更することにより、擬似疾患領域を暗くしたり不明瞭にしたりすることが考えられる。しかしながら、ユーザUが顔の向きを速く動かした場合、画像表示装置1は、表示部11が表示する表示画像データを高速に切り替える必要がある。このような場合、表示画像データの画素値を変更する画像処理が間に合わず、画像表示装置1が擬似疾患領域の画像の状態を適切に再現できないという問題が生じる。
【0024】
そこで、画像表示装置1は、表示部11に表示する画像コンテンツを、周囲の画像に対応する第1画像データと、疾病を患った状態に対応する第2画像データとによって構成することを特徴としている。画像表示装置1は、第1画像データに第2画像データを重ねて表示部11に表示させることで、第1画像データの各画素の画素値を、疾病を患った状態を示す画素値に補正する画像処理を行うことなく、ユーザUが第1画像データを視認している間に、あたかも第1画像データの状態が変化したかのようにユーザUに感じさせることができる。
【0025】
[画像表示装置1の内部構成]
図2は、画像表示装置1の内部構成を示す図である。画像表示装置1は、表示部11と、通信部12と、記憶部13と、制御部14と、を有する。制御部14は、データ取得部141及び表示制御部142を有する。
【0026】
表示部11は、画像データを表示するディスプレイである。表示部11は、表示制御部142の制御に基づいて画像コンテンツを表示する。
【0027】
通信部12は、外部の装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。通信部12は、例えばデータ取得部141の指示に基づいて外部のサーバから画像コンテンツを受信する。通信部12は、受信した画像コンテンツをデータ取得部141に入力する。通信部12は、受信した画像コンテンツを記憶部13に記憶させてもよい。
【0028】
記憶部13は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を有しており、表示部11に表示される画像コンテンツを記憶する。記憶部13は、ユーザUの操作に基づいて通信部12がサーバから受信した画像コンテンツを一時的に記憶してもよく、画像コンテンツを予め記憶していてもよい。また、記憶部13は、制御部14が実行する画像表示用プログラムを記憶する。
【0029】
制御部14は、例えばプロセッサ(CPU)であり、記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部141及び表示制御部142として機能する。
【0030】
データ取得部141は、表示部11の画面に表示される範囲よりも大きな範囲に対応する第1画像データを外部のサーバ又は記憶部13等の記憶媒体から取得する。画面に表示される範囲よりも大きな範囲は、例えば、球形状の擬似空間の内面に相当する範囲、又は円筒形状の擬似空間の内面に相当する範囲である。データ取得部141は、取得した第1画像データを表示制御部142に入力する。
【0031】
表示制御部142は、画像表示装置1の向き又はユーザUの視線の向きの変化に伴って、第1画像データのうち異なる画像データを画面に表示させる表示画像データとして抽出し、抽出した表示画像データを画面に表示させる。表示制御部142は、例えば画像表示装置1が有する加速度センサーから出力される信号に基づいて画像表示装置1の向きの変化を特定することができる。また、表示制御部142は、画像表示装置1に設けられた視線検出部(不図示)により、ユーザUの視線の向きの変化を特定することができる。視線検出部は、例えば、カメラを有しており、カメラで撮像した画像におけるユーザUの瞳孔の位置により視線の向きを検出する。
【0032】
図3は、第1画像データについて説明するための図である。
図3(a)は、第1画像データが示す仮想的な空間を上方から視認した状態を示す図である。
図3(a)においては、ユーザUの周囲に、AからHまでの8個の物体が存在している。ここでは、これらの物体が円柱形状の物体である場合を例示する。
図3(b)は、
図3(a)に示した位置にいるユーザUが顔の向きを360度回転した場合に視認することができる第1画像データである。
【0033】
図3(b)に示す第1画像データの中心位置は、ユーザUが正面を向いた状態における視線の位置に対応する。
図3(b)に示す第1画像データの左端の位置、及び右端の位置は、ユーザUが後方(180度の位置)を向いた状態における視線の位置に対応する。画像表示装置1が第1画像データの表示を開始する時点で、表示制御部142は、ユーザUが正面を向いた状態でのユーザUの視野に対応する範囲の表示画像データを表示する。
【0034】
図4は、表示画像データについて説明するための図である。
図4(a)は、ユーザUが正面を向いている状態で表示部11に表示される表示画像データを示している。当該表示画像データには、
図3(b)に示した第1画像データにおける中央付近に存在する物体H、A、Bの画像が含まれている。
図4(b)は、ユーザUが左側を向いた状態で表示部11に表示される表示画像データを示している。当該表示画像データには、
図3(b)に示した第1画像データにおける左側に存在する物体F、G、Hの画像が含まれている。
【0035】
表示制御部142がユーザUの顔の向き(すなわち画像表示装置1の向き)の変化に伴って、順次、表示画像データを切り替えることにより、ユーザUは、実際に周囲を見ているように感じることができる。
【0036】
このような表示画像データを視認しているユーザUが、視野の中心付近が暗くなって見づらくなるような視覚の疾患が生じた場合の状態を疑似体験できるようにするために、表示制御部142は、表示部11の画面の中央位置を含む所定の領域において、画面に表示している表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、表示画像データに重ねて画面に表示させる。
【0037】
図5は、表示制御部142が第2画像データを表示部11に表示させた状態を示す図である。
図5(a)は、ユーザUが正面を向いている状態で表示部11に表示される表示画像データ及び第2画像データ(
図5における符号R)を示している。表示制御部142は、ほぼ円形又は楕円形の所定の領域の濃度が表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い第2画像データを画面に表示させる。その結果、第2画像データが表示されている領域においては、表示画像データが見づらくなっている。
【0038】
この際、表示制御部142は、所定の領域の中心に近いほど濃度が高い第2画像データを画面に表示させてもよい。表示制御部142は、例えば、第2画像データを表示画像データに重ねる際の第2画像データの透過度(アルファ値)を、所定の領域の中心からの距離に応じて変化させることにより、中心に近いほど濃度が高く見える態様(すなわち暗く見える態様)の第2画像データを画面に表示させることができる。表示制御部142がこのような第2画像データを表示画像データに重ねて表示することにより、画像表示装置1は、中心に近いほど視力が低下するような視角の疾患を効果的に再現することができる。
【0039】
図5(b)は、ユーザUが左側を向いている状態で表示部11に表示される表示画像データ及び第2画像データを示している。
図5(b)においては、表示画像データの内容が
図5(a)から変化しているが、第2画像データの位置及び大きさは変化していない。このように、表示制御部142が、画像表示装置1の向きによらず、擬似疾患領域に対応する画面内の領域に第2画像データを表示させることで、表示画像データの画素値を変化させる必要がない。その結果、ユーザUが顔を速く動かした場合であっても、ユーザUが視認する所定の領域が疾患状態になるので、ユーザUが、視覚弱者等の視覚の状態を違和感なく疑似体験することができる。
【0040】
表示制御部142は、時間が経過するにつれて第2画像データの濃度を高くしてもよい。表示制御部142は、時間が経過するにつれて第2画像データの透過度を小さくすることにより第2画像データの濃度を高くしてもよく、第2画像データの画素値を変更することにより第2画像データの濃度を高くしてもよい。表示制御部142は、時間が経過するにつれて、濃度が周囲よりも濃くなっている所定の領域(すなわち擬似疾患領域)の面積を大きくしてもよい。表示制御部142がこのように動作することで、ユーザUが、時間が経過するにつれて疾患がどのように悪化しているかを効果的に擬似体験することができる。
【0041】
表示制御部142は、ユーザUの生活習慣、又は薬の摂取状況等のユーザUの状態を示す情報の入力を受け付けて、受け付けた情報に基づいて、第2画像データの濃度、大きさ又は形状を変えたり、時間の経過に伴って濃度が変化する速度を変えたりしてもよい。
【0042】
表示制御部142は、例えば、悪い生活習慣を示す情報の入力を受け付けた場合に、第2画像データの濃度を高くしたり、第2画像データを表示する領域を大きくしたり、濃度が高くなる速度を速めたりする。逆に、表示制御部142は、良い生活習慣を示す情報の入力を受け付けた場合に、第2画像データの濃度を低くしたり、第2画像データを表示する領域を小さくしたり、濃度が高くなる速度を遅くしたりする。表示制御部142がこのように動作することで、ユーザUが生活習慣を改善するように動機づけられやすくなる。
【0043】
ところで、ユーザUが画像表示装置1の使用を開始した直後から第2画像データが表示されていると、ユーザUは、視覚の疾患が生じた場合の不便さを実感しづらい。そこで、表示制御部142は、ユーザUが画像表示装置1の使用を開始し始めてから所定の期間は、第2画像データを表示させないで、第1画像データのみを表示させる。そして、表示制御部142は、所定の期間が経過した後に、第2画像データの表示を開始する。さらに、表示制御部142は、第2画像データの表示を開始した後は、徐々に第2画像データの中央付近の濃度を高くする。表示制御部142がこのように動作することで、より効果的にユーザUに視覚の疾患が生じた場合の不便さを実感させることができる。
【0044】
また、表示制御部142は、第1画像データの表示を開始した後の第1タイミングで、画面において、第2画像データにおいて濃度を高くする所定の領域よりも広い範囲(例えば画面全体)の輝度を下げたり濃度を高くしたりして、画面を少し暗くしてもよい。この場合、表示制御部142は、表示画像データの輝度又は濃度を変化させてもよく、第2画像データの輝度又は濃度を変化させてもよい。表示制御部142がこのように動作することで、ユーザUの意識を画面に引き付けやすくなる。
【0045】
表示制御部142は、第1タイミングの後の第2タイミングにおいて、第2画像データにおける所定の領域以外の領域の濃度を低くするとともに、所定の領域の濃度をさらに高くする。第1タイミングと第2タイミングの時間差は、ユーザUの注意を引くことができる時間であり、例えば1秒である。表示制御部142は、第2タイミングにおいて、第2画像データにおける所定の領域以外の領域の濃度を低くすることなく、所定の領域の濃度を高くしてもよい。
【0046】
表示制御部142は、第2タイミングにおいて画面全体の輝度を第1タイミングの前の状態に戻してから所定の時間(例えば1秒)待機した後に、第2画像データにより、一部の領域の濃度を高くしてもよい。表示制御部142がこのように動作することで、ユーザUの注意を引きつけた上で、視覚の疾患が生じた場合の不便さを実感させやすくなる。
【0047】
[第1変形例]
以上の説明においては、表示制御部142が、周囲よりも濃度が高い領域を画面の中央付近に表示させる場合を例示したが、濃度が高い領域の位置は画面の中央付近に限定されない。例えば、表示制御部142は、ユーザUの視線の向きを検出する視線検出部が検出した視線の向きに基づいて決定した所定の領域において、第2画像データを表示画像データに重ねて画面に表示させ、所定の領域の濃度を表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高くしてもよい。
【0048】
表示制御部142が視線の向きに基づいて濃度を高くする領域を決定する場合、例えば、ユーザUが右上を見ている間は、画面の右上の領域の濃度が他の領域よりも高くなる。ユーザUが左下を見ている間は、画面の左下の領域の濃度が他の領域よりも高くなる。表示制御部142がこのように動作することで、画像表示装置1は、視覚の疾患の状態をより高精度に再現することができる。
【0049】
[第2変形例]
以上の説明においては、画像表示装置1が、筐体10と表示部11とが一体化された装置である場合を例示したが、画像表示装置1の形態はこれに限らない。表示部11が、スマートフォン又はタブレットのような情報端末により構成されており、情報端末が画像表示装置として機能してもよい。
【0050】
[第3変形例]
以上の説明においては、第1画像データが拡張現実画像である場合を例示したが、第1画像データは、画像表示装置1に設けられたカメラによって撮影されたリアルタイム画像であってもよい。
【0051】
[第4変形例]
以上の説明においては、画像表示装置1が、視野の中心付近が暗くなるようにユーザUに見える第2画像データを表示する場合を例示したが、第2画像データが表示する態様は任意である。画像表示装置1は、ユーザUに視認させたい疾患の状態に応じた第2画像データを第1画像データに重ねて表示してよい。例えば、表示制御部142は、疾患の種類を表示部11に表示させ、ユーザUによって選択された疾患に対応する態様の第2画像データを表示部11に表示させてもよい。
【0052】
[画像表示装置1による効果]
以上説明したように、画像表示装置1においては、表示制御部142が、画面の中央位置を含む所定の領域において、画面に表示している表示画像データの少なくとも一部の領域の濃度よりも高い濃度を有する第2画像データを、表示画像データに重ねて画面に表示させる。表示制御部142がこのように動作することで、画像表示装置1は、画像表示装置1を装着したユーザUが顔を速く動かした場合にも、視覚弱者等の視覚の状態を示す画像を適切に表示できる。
【0053】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0054】
1 画像表示装置
10 筐体
11 表示部
12 通信部
13 記憶部
14 制御部
141 データ取得部
142 表示制御部
【手続補正書】
【提出日】2023-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想現実画像を含む画像コンテンツを記憶するメモリと、
前記画像コンテンツに基づく表示画像を表示するためのディスプレイを含む筐体と、
前記画像コンテンツに基づいて前記表示画像を生成する表示制御部と、
を有し、
前記表示制御部は、前記仮想現実画像の少なくとも一部の所定の領域に対して所定の画像処理を実行することにより、視覚障害が開始した後に徐々に前記視覚障害が悪化するように前記画像処理の効果を強くするように構成された前記表示画像を生成する、
画像表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記表示画像の中央位置を含む円形又は楕円形の前記所定の領域の濃度が前記表示画像における前記所定の領域以外の領域の濃度よりも高い重畳画像を前記仮想現実画像に重ねる前記画像処理を実行する、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記所定の領域の中心に近いほど濃度が高い前記重畳画像を含む前記表示画像を生成する、
請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、時間が経過するにつれて、前記重畳画像の濃度を高くする、
請求項2又は3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、時間が経過するにつれて、前記重畳画像が表示される前記所定の領域の面積を大きくする、
請求項2から4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、ユーザが前記画像表示装置の使用を開始し始めてから所定の期間は、前記重畳画像を表示させずに前記仮想現実画像のみを表示させ、前記所定の期間が経過した後に前記重畳画像の表示を開始する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記画像表示装置の向きによらず、前記ディスプレイにおける所定の位置に前記重畳画像を表示させる、
請求項2から6のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記仮想現実画像の表示を開始した後の第1タイミングで、前記所定の領域よりも広い範囲の輝度を低下させ、又は濃度を高くし、前記第1タイミングの後の第2タイミングにおいて、前記重畳画像の前記所定の領域の濃度を高くする、
請求項2から7のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
画面に画像を表示する画像表示装置が有するプロセッサに、
メモリから仮想現実画像を含む画像コンテンツを読み出すステップと、
前記仮想現実画像の少なくとも一部の所定の領域に対して所定の画像処理を実行することにより、視覚障害が開始した後に徐々に前記視覚障害が悪化するように前記画像処理の効果を強くするように構成された表示画像を生成するステップと、
前記表示画像を前記画像表示装置のディスプレイに表示させるステップと、
を実行させるための画像表示用プログラム。
【請求項10】
コンピュータが実行する、
メモリから仮想現実画像を含む画像コンテンツを読み出すステップと、
前記仮想現実画像の少なくとも一部の所定の領域に対して所定の画像処理を実行することにより、視覚障害が開始した後に徐々に前記視覚障害が悪化するように前記画像処理の効果を強くするように構成された表示画像を生成するステップと、
前記表示画像を前記画像表示装置のディスプレイに表示させるステップと、
画像表示方法。