(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009073
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】組織を牽引するためのシステム、装置、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20230112BHJP
A61B 17/02 20060101ALI20230112BHJP
A61B 17/122 20060101ALI20230112BHJP
A61B 17/3205 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B17/02
A61B17/122
A61B17/3205
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168920
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2021104709の分割
【原出願日】2017-08-04
(31)【優先権主張番号】62/371,471
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウェールズ、ライアン ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】マケルウィー、ケビン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】スオン、ナローン
(72)【発明者】
【氏名】レイビン、サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】バーナム、アレクサンダー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】トン、レイ ヘウェンソン
(72)【発明者】
【氏名】コーネル、メアリー アン
(72)【発明者】
【氏名】アンデション、ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデン、ジョン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレッチビール、スコット イー.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA11
4C160AA20
4C160DD16
4C160DD26
4C160FF02
4C160KK03
4C160KK06
4C160KK47
4C160MM32
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】牽引により、使用者が病変を除去するための切断面をはっきりと観察すること。
【解決手段】組織牽引システムが開示される。同システムは、第1の端部と第2の端部とを有する伸張可能なテザーと、組織と係合するように構成された第1の組織係合部材と、組織と係合するように構成された第2の組織係合部材とを備える。第1の組織係合部材は、伸張可能なテザーの第1の端部に直接結合しており、第2の組織係合部材は、ループを介して伸張可能なテザーの第2の端部に結合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部と第2の端部とを有する伸張可能なテザーと、
組織と係合するように構成された第1の組織係合部材と、
組織と係合するように構成された第2の組織係合部材と
を備え、
前記第1の組織係合部材は、前記伸張可能なテザーの第1の端部に直接結合しており、
前記第2の組織係合部材は、ループを介して前記伸張可能なテザーの第2の端部に結合する、組織牽引システム。
【請求項2】
前記第1の組織係合部材と前記第2の組織係合部材の少なくともいずれか一方は、顎部を有する組織クリップである、請求項1に記載の組織牽引システム。
【請求項3】
前記伸張可能なテザーと前記第1の組織係合部材は、前記第2の組織係合部材から分離可能に配置可能である、請求項1に記載の組織牽引システム。
【請求項4】
前記伸張可能なテザーはゴムバンドからなり、該ゴムバンドは、前記伸張可能なテザーの第2の端部にある前記ループに加えて少なくとも1つのループを含む、請求項1に記載の組織牽引システム。
【請求項5】
前記伸張可能なテザーは、少なくとも1つのループを含むゴムバンドからなる、請求項1に記載の組織牽引システム。
【請求項6】
前記第1の組織係合部材と前記第2の組織係合部材の少なくともいずれか一方は、前記伸張可能なテザーの端部に係合する第1の端部と組織に係合する第2の端部とを有する、請求項1に記載の組織牽引システム。
【請求項7】
前記第1の組織係合部材と前記第2の組織係合部材の少なくともいずれか一方は、組織に係合する顎部を有する、請求項1に記載の組織牽引システム。
【請求項8】
前記テザーは、前記顎部から遠ざかって延びる前記第1の組織係合部材の端部に結合される、請求項7に記載の組織牽引システム。
【請求項9】
前記第1の組織係合部材は第1のアンカからなり、該第1のアンカは、前記伸張可能なテザーの第1の端部に結合されるとともに組織と係合するように構成された係合具を有し、
前記第2の組織係合部材は第2のアンカからなり、該第2のアンカは、前記伸張可能なテザーの第2の端部に結合されるとともに組織と係合するように構成された係合具を有する、請求項1に記載の組織牽引システム。
【請求項10】
前記第1の組織係合部材と前記第2の組織係合部材の少なくともいずれか一方は、顎部を有する組織クリップである、請求項9に記載の組織牽引システム。
【請求項11】
第1の端部と第2の端部とを有する伸張可能なテザーと、
前記伸張可能なテザーの前記第1の端部に結合されるとともに組織と係合するように構成された留め具を有する第1の組織係合部材と、
前記伸張可能なテザーの第2の端部に設けられ、かつ、第2の組織係合部材が係合可能なループからなる係合要素と
を備える組織牽引システム。
【請求項12】
第2の組織係合部材をさらに備え、該第2の組織係合部材は、前記伸張可能なテザーの第2の端部にある前記ループに係合するとともに、組織に係合するように構成された留め具を有する、請求項11に記載の組織牽引システム。
【請求項13】
前記第1の組織係合部材と前記第2の組織係合部材の少なくともいずれか一方は、組織に係合するための顎部を有する、請求項12に記載の組織牽引システム。
【請求項14】
前記伸張可能なテザーはゴムバンドからなり、該ゴムバンドは前記係合要素のループに加えて少なくとも1つのループを含む、請求項11に記載の組織牽引システム。
【請求項15】
前記伸張可能なテザーは、少なくとも1つのループを含むゴムバンドからなる、請求項11に記載の組織牽引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の様々な態様は、概して組織牽引に関連する。より具体的には、本発明は組織を牽引するためのシステム、装置、及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術開発により、医療システム、医療装置及び医療方法の使用者が対象者に対して益々複雑な手技を実施することができるようになってきた。例えば、対象者の消化管内における組織の除去は困難が生じ得る類の手技である。そのように困難な1つの分野は、組織上における病変の除去に関わるものである。病変を除去するために、使用者は病変又はその周りの組織を牽引することがある。この牽引により、使用者は病変を除去するための切断面をはっきりと観察することが可能となり得る。この可視化の実施は、脈管を切断してしまうというような望ましくない誤切開の防止を支援し得る。可視化はまた、病変の大部分又はすべてが除去されるのを保証することも支援し得る。
【発明の概要】
【0003】
牽引を行うためには、使用者は、病変又はその周りの組織に溶液を注射して、切断に備えてその組織を挙上し得る。病変、特に病変の基部に到達してそれを挙上するには、多数回の注射を行う必要があり得る。これは時間を要する場合がある。さらに、注射は、使用者が所望する視線の方向又は他のアクセスを提供するために十分な組織牽引を提供しないことがある。これらの潜在的な問題は、除去の標的である病変が平らな病変である場合に悪化する。
【0004】
上述の不都合の発生を低減又は排除しつつ牽引を提供する解決策は、使用者及び対象者に対してより良好な結果をもたらし得る。
本発明の態様は、とりわけ、組織を牽引するためのシステム、装置、及び方法に関連する。本願に開示された態様の各々は、他の開示された態様のうちのいずれかに関連して記載する特徴のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0005】
本発明の一態様において、組織牽引システムは、第1のアンカと、第2のアンカと、第1のアンカと第2のアンカとの間に延びる長尺状連結部材とを含み得る。システムはまた、第1のアンカと、第2のアンカと、長尺状連結部材とを受け入れるためのホルダも含み得る。ホルダは、近位部分と遠位部分とを含み得る。遠位部分は、第1のアンカをホルダから配置する過程において該遠位部分が第1のアンカの近位端部に力を及ぼすように、近位部分より小さな幅を有し得る。該力は、組織を受け入れるために第1のアンカを開姿勢に移行させ得る。
【0006】
組織牽引システムの態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。第1のアンカは、ホルダ内において第2のアンカに隣接し得る。第1のアンカは、第1の顎部と第2の顎部とを含み、第1の顎部は、第2の顎部に揺動可能に取り付けられ得る。第1のアンカは、第1の顎部と第2の顎部の少なくとも一方を、当該第1の顎部と第2の顎部の他方に向かって動くように付勢する付勢要素をさらに含み得る。第2のアンカは、第3の顎部と第4の顎部とを含み、第3の顎部は、第4の顎部に揺動可能に取り付けられ得る。第3の顎部と第4の顎部の遠位端部は、ホルダ内において第1の顎部と第2の顎部の近位端部の対向する表面に係合し得る。
【0007】
本発明の別の態様において、組織のための再配置可能なクリップシステムは、クリップを含み得る。クリップは、組織を受け入れるための第1の姿勢と、組織に係合するための第2の姿勢とを有する締結要素を含み得る。クリップはまた、締結要素の少なくとも一部を受け入れるための基部を含み得る。締結要素が基部から離れるように動かされると第1の姿勢に移行し得るとともに、締結要素が基部に向かって動くと第2の姿勢に移行し得る。クリップはまた、基部内に少なくとも部分的に受容された、締結要素を第1の姿勢と第2の姿勢との間で移行させるための作動要素を含み得る。作動要素は、係合要素を含み得る。システムはまた、器具を含み得る。器具は、係合要素に係合するための操作要素を含み得る。器具はまた、基部を受入部に対して固定するために基部の少なくとも一部を受け入れるための受入部を含み得る。操作要素は、基部を受入部に対して固定するために配置するように構成され得る。基部が受入部に固定されているときに、作動要素を基部に対して動かさせることにより、締結要素は、第1の姿勢と第2の姿勢との間で移行し得る。
【0008】
再配置可能なクリップシステムの態様は、下記の特徴のうちの1つ以上を含み得る。受入部は、第1の連結要素を含み得る。基部は、第2の連結要素を含み得る。第1の連結要素は、基部を受入部に対して固定するために第2の連結要素に解放可能に連結し得る。第1の連結要素は、溝と前記溝内に収容されるように構成された突起とのうちの一方を含み得る。第2の連結要素は、前記溝と前記突起とのうちの他方を含み得る。第1の連結要素は、内部の幾何学的機構を含み得る。第2の連結要素は、内部の幾何学的機構と嵌合する外部の幾何学的機構を含み得る。第1の連結要素と第2の連結要素とは、スナップ嵌合接続を形成し得る。操作要素は、曲がった遠位端部を有するアームを含むとともに、係合要素は、ループを含み得る。操作要素は、ボールを含むとともに、係合要素は、ソケットを含み得る。ボールは、ソケットに解放可能に連結され得る。
【0009】
さらに本発明の別の態様において、組織を牽引する方法は、第1の要素を第1の位置において組織に固定することを含み得る。該方法はまた、第2の要素を第2の位置において組織に固定することを含み得る。第2の位置は、第1の位置から離間され得る。第2の要素の組織に固定することは、第1の要素と、連結要素と、第2の要素とが、第1の位置の組織に対して力を及ぼし得るように、第1の要素と第2の要素との間に延びる連結要素の部分に張力を生じさせ得る。該力は、作用方向及び大きさを有し得る。方法はまた、第1の位置の組織に力が及ぼされている間に、第1の位置の組織を操作することを含み得る。
【0010】
組織を牽引する方法の態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。第2の位置で組織から第2の要素を解放すること。第2の要素を、第2の位置から離間されている第3の位置の組織に向けて移動させること。第2の要素を第3の位置の組織に固定すること。連結要素を用いて第1の要素を第2の要素に向けて引っ張ることにより、力の大きさを調整すること。第1の要素をホルダから放出すること。第1の要素をホルダと係合させ、第1の要素を開姿勢に移行させ、第1の位置の組織を受け入れること。第1の要素をホルダから係合解除して、第1の要素を閉姿勢に移行させ、第1の要素を第1の位置の組織に固定すること。
【0011】
前述の概要及び以下の詳細な説明の双方は、例示であり、説明のためのものに過ぎず、権利請求される本発明を限定するものではないことが理解される。
この明細書の一部に組み込まれ、かつそれを構成する添付図面は、本発明の例示的な態様を示し、記載とともに本発明の原理について説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図1B】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図1C】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図1D】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図1E】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図1F】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図1G】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図1H】本発明の諸態様による、使用時における牽引システムを示す図。
【
図2】本発明の諸態様による、使用時の別の牽引システムを示す図。
【
図3A】本発明の諸態様による、使用時におけるさらに別の牽引システムを示す図。
【
図3B】本発明の諸態様による、使用時におけるさらに別の牽引システムを示す図。
【
図3C】本発明の諸態様による、使用時におけるさらに別の牽引システムを示す図。
【
図3D】本発明の諸態様による、使用時におけるさらに別の牽引システムを示す図。
【
図3E】本発明の諸態様による、使用時におけるさらに別の牽引システムを示す図。
【
図4】本発明の諸態様による、ホルダと、アンカと、プッシャとを含むアセンブリの断面図。
【
図5】本発明の諸態様による、ホルダと、アンカと、プッシャとを含む別のアセンブリの破断図。
【
図6】本発明の諸態様による、列に配置された例示的な係合要素と留め具とを示す図。
【
図7A】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図7B】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図7C】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図9】本発明の諸態様による、別のアンカを示す図。
【
図10】本発明の諸態様による、別のホルダの端面図。
【
図11】本発明の諸態様による、ホルダとアンカの破断図。
【
図12A】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図12B】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図12C】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図12D】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図12E】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図12F】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図13】本発明の諸態様による、配置器具とアンカの一部を示す図。
【
図14】本発明の諸態様による、別の配置器具と別のアンカの一部を示す図。
【
図15】本発明の諸態様による、別の配置器具と別のアンカの一部を示す図。
【
図16A】本発明の諸態様による、別の配置器具と別のアンカの一部を示す図。
【
図16B】本発明の諸態様による、別の配置器具と別のアンカの一部を示す図。
【
図17】本発明の諸態様による、別のアンカの一部の斜視図。
【
図18】本発明の諸態様による、別の配置器具と別のアンカの一部を示す図。
【
図19A】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図19B】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図19C】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図19D】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図19E】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図19F】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図19G】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図19H】本発明の諸態様による、使用時における別の牽引システムを示す図。
【
図22】本発明の諸態様による、補助アンカを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は組織を牽引するためのシステム、装置及び方法に関する。ここで本発明の態様について詳細に言及し、それらの例を添付図面に示す。
可能な限り、同一又は同様の部品を参照するために、図面を通して同一又は類似の参照番号を用いる。「遠位」という用語は、患者に装置を導入する場合に使用者から最も遠く離れた部分を指す。対照的に、「近位」という用語は、患者の中に装置を配置する場合に使用者に最も近い部分を指す。「牽引」という用語は、例えば、組織を除去するための切断具を露出させるように、かつ/又は可視化するように組織を配置することを指し得る。本願において用いられる場合、「備える」「備えている」という用語又はそれらのあらゆる他の別例は、プロセス、方法、物品、又は装置が、それらの構成要素として列挙された要素だけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置のものとしては明示的に列挙されていない他の要素、或いは生来的ではない他の要素をも含み得るように、非排他的な包含をカバーすることが意図される。「例示的」という用語は、「理想」ではなく、「例」という意味に用いられる。
【0014】
図1A-
図1Hは、組織102の一部を牽引するためのシステム100を示す。組織102は、例えば、病変を有する領域等の除去の標的とされる領域104を含み得る。システム100は、組織102へのアクセスを提供するためのイントロデューサ106を含み得る。イントロデューサ106は、標的領域104に対向する組織、また別の場合には、標的領域に臨む組織102の部分にアンカ108,110を配置し得る。追加的に又は代替的に、イントロデューサは、標的領域104から離間した組織の部分にアンカ108,110を配置してもよい。
図1A及び
図1Bは、配置中のアンカ108,110を示す。
【0015】
イントロデューサ106はまた、
図1Cに示すように、アンカ112も標的領域104に配置し得る。アンカ112には、
図1Dにおいて視認可能なテザー114が結合され得る。テザー114には、クリップ116が結合され得る。イントロデューサ106及びその内部の配置器具(
図1Dでは視認不可)は、標的領域104を牽引するために、クリップ116をアンカ108に取り付け得る。牽引された標的領域104を切断するために、
図1Eに示した切断器具120が用いられ得る。
【0016】
図1F及び
図1Gは、標的領域104をさらに牽引するために、クリップ116をアンカ108から取り外して、クリップ116をアンカ110に取り付けているイントロデューサ106及び配置器具118を示す。アンカ108,110は標的領域104を牽引するための段階的な引張点として作用し得る。アンカ108とアンカ110との間の空間は、標的領域104を牽引するための異なる牽引のベクトル(例えば牽引の方向及び/又は大きさ)を実現する能力を使用者に提供し得る。この牽引のベクトルに対する制御は、使用者が切断器具120による標的領域104の切断を案内するために用いる切断具を露出させ、かつ/又は可視化する高い能力を使用者に提供し得る。
図1Hは、牽引ベクトルの調整後に牽引された標的領域104を切断している切断器具120を示す。
【0017】
イントロデューサ106は、長尺状管状部材122を含み得る。長尺状管状部材122は、長尺状管状部材122の内部を通って長さ方向に延びる複数のルーメン(図示せず)を含み得る。該ルーメンは、標的領域104に入退する器具、照明要素(図示せず)、撮像要素(図示せず)、及び/又は流体又は他の物質の流れ(図示せず)のうちの1つ以上を受け入れ得る。
【0018】
エンドキャップ126は、長尺状管状部材122の遠位端部を覆い得る。エンドキャップ126は、ルーメンと連通したポート128を含み得る(例えば、
図1F及び
図1Hを参照)。ポート130は、器具ルーメンと連通し得る。器具ルーメンを通って挿入された器具は、ポート130を介してイントロデューサ106の遠位端部から延出し得る。他のポート128は、照明要素、撮像要素、及び/又は、流体若しくは他の物質の流れを受け入れるために他のルーメンと連通し得る。イントロデューサ106の使用者は、照明要素及び撮像要素を用いて、標的領域104及びその周囲を可視化してもよい。イントロデューサ106は、例えば、任意の適当な種類の内視鏡、シース又はカテーテルを含み得る。
【0019】
イントロデューサ106はまた、操舵機構(図示せず)がその上に取り付けられたハンドル(図示せず)を備えてもよい。操舵機構は、長尺状管状部材122を通って長さ方向に延び得る1本以上の操舵ワイヤ又はケーブルに結合され得る。操舵機構を操舵ワイヤ又はケーブルに対して引張力及び/又は圧縮力を及ぼすように操作することによって、使用者は、イントロデューサ106の遠位端部の偏向を制御し得る。
【0020】
アンカ108は、組織102内に刺さるように構成された第1の端部132(
図1Aでは組織102に隣接している)を含み得る。第1の端部132は、例えば、先鋭な刺込先端部を含み得る。アンカ108はまた、第1の端部132の反対側に第2の端部134(
図1B・
図1Hで視認可能)を含み得る。第2の端部134は、取り付け点として機能し得る。例えば、第2の端部134は、ループ、小穴、フック、又は他の適当な取付要素を含み得る。
【0021】
第1の端部132と第2の端部134との間のアンカ108の中間部分は、収縮状態、すなわち静止状態と拡張状態、すなわち伸張状態との間を移行し得る。伸張時、アンカ108は、第1の端部132と第2の端部134とを互いに引き寄せる傾向を有する付勢力を及ぼし得る。例えば、アンカ108の中間部分は、引張コイルばね136を含み得る。
【0022】
引張コイルばね136はまた、付勢力の提供に加えて、機能性も提供し得る。例えば、引張コイルばね136を時計回り方向及び反時計回り方向のうちの一方に回転させることにより、コルク抜きの操作と同様に、第1の端部132が組織102へより深く刺さることを容易にし得る。引張コイルばね136を時計回り方向及び反時計回り方向のうちの他方に回転させることにより、第1の端部132の組織102からの後退を容易にし得る。これは、使用者に、アンカ108の組織102内への刺さる深さを制御する能力を提供し得る。
【0023】
アンカ110は、アンカ108の機構のうちの1つ以上を含み得る。一例において、アンカ110は、アンカ108と同一であってもよい。しかしながら、アンカ110は、アンカ108から離間した位置において組織102内に配置され得る。以下で詳細に説明するように、アンカ108,110が離間していることにより、アンカ108,110は、標的領域104に対して異なる牽引のベクトルを与える段階的な引張点として作用し得る。
【0024】
アンカ112もまた、アンカ108の機構のうちの1つ以上を含み得る。例えば、アンカ112は、(
図1Cに示すように)標的領域104において組織に刺さるように構成された第1の端部138と、第1の端部138の反対側の第2の端部140と、(
図1D-
図1Hに示すように)第1の端部138を第2の端部140に接続する引張コイルばね142とを含み得る。一例において、アンカ112の長さは、アンカ110の長さを上回り得る。標的領域104におけるアンカ112の刺さる深さは、アンカ112を時計回り方向及び反時計回り方向のいずれかに回転させることにより制御され得る。
【0025】
テザー114は、ワイヤ、コード、ケーブル、弾性バンド(例えばゴムバンド)、ばね(例えば、引張コイルばね)、縫合糸、高炭素ばね線、編組又は巻回フィラメント、ステンレス鋼、ニチノール、ばね鋼、ピアノ線、マッスルワイヤ、及び/又は、他の適当な長尺状部材を含み得る。テザー114は、金属、ポリマー、又は金属とポリマーの組み合わせであってもよい。テザー114の一端は、(
図1D-1Hに見られるように)アンカ112の第2の端部140に取り付けられ得る。テザー114の他端は、クリップ116に取り付けられ得る。クリップ116は、基部要素144を含み得る。基部要素144の一端は、係合要素146に取り付けられ得る。係合要素146はアンカ108,110の第2の端部に解放可能に連結されるように構成され得る。テザー114は、基部要素144が係合要素146と接する場所でクリップ116に取り付けられ得る。代替的に、テザー114は、クリップ116上のいかなる他の適当な位置でクリップ116に取リ付けられてもよい。
【0026】
基部要素144の外表面は、その上に肩部又は隣接部148を含み得る。肩部148は、外表面から突出する1つ以上の突起を含み得る。肩部148は、以下に記載するように、アンカ112に係合し得る。テザー114が引張コイルばねを備える例では、テザー114はアンカ112の引張コイルばね142と一体であってもよい。
【0027】
係合要素146に取り付けられた端部とは反対側の基部要素144の端部は、孔(図示せず)を含み得る。孔は、配置器具118の先端部分150を受け入れ得、クリップ116が先端部分150とともに移動し得るように、基部要素144内における先端部分150の受け入れを可能にする。
図1Fは、基部要素144に挿入される前における先端部分150を示しており、
図1Gは、基部要素144内に位置する先端部分150を示している(先端部分150は、基部要素144によって隠されている)。配置器具118のシャフト部分(図示せず)は、器具ルーメンを通って近位に延び得る。使用者は、先端部分150を、それぞれ、イントロデューサ106から延出させるため、及びイントロデューサ106内に後退させるため、並びに/又は、他の場合には、先端部分150を移動させるために、シャフト部分を操作し得る。シャフト部分は、イントロデューサ106が使用者によって偏向された場合に、イントロデューサ106とともに偏向するように十分に可撓性であり得る。
【0028】
配置に先立ち、配置器具118と、アンカ108,110,112と、テザー114とは、器具ルーメン内に収容され得る。これは、イントロデューサ106の遠位端部が標的領域104に向かって進む際に、例えば、アンカ108,110,112が時期尚早に組織に係合することを防止し得る。器具ルーメン内において、配置器具118の先端部分150は、クリップ116の基部要素144内に受け入れられ得る。アンカ112は、クリップ116を包囲し得る。アンカ112の第2の端部140は、肩部148に係合し得る。アンカ112の第1の端部138は、アンカ110の第2の端部に係合し得る。アンカ110の第1の端部は、アンカ108の第2の端部134に係合し得る。アンカ108の第1の端部132はポート130から凹んでいてもよい。
【0029】
イントロデューサ106の遠位端部が標的領域104に対して位置決めされたならば、使用者は、アンカ108を組織102内に配置することに備えて、イントロデューサ106の遠位端部を偏向させ得る。アンカ108の配置は、配置器具118を遠位に移動させ、少なくともアンカ108の第1の端部132をポート130から延出させ、組織102と接触させることを含み得る(
図1A)。アンカ108の配置はまた、配置器具118をその中央長手軸線の周りで回転させることを含み得る。この回転は、クリップ116、アンカ112、アンカ110及びアンカ108を、これらの要素間における係合の連鎖によって回転させ得る。アンカ108の第1の端部132が回転するにつれて、第1の端部132は、組織102内に刺さり、引き続き回転させることによって、組織102内により深く入り込み得る。所望の深さにまで刺さると、配置器具118とイントロデューサ106とは、アンカ108から離れるように移動されて、組織102内の適所にアンカ108を残し得る。アンカ110は別の位置において同様の方法で組織102内に配置され得る(
図1Bを参照)。アンカ112もまた、同様の方法で標的領域104内に配置され得る(
図1C参照)。
【0030】
配置器具118と、配置器具118に装着されたクリップ116の位置決めは、アンカ108,110,112を配置し、さらに解放する過程において、一層、遠位に移行し得る。アンカ112が配置される時までには、係合要素146は、
図1Cに示すように、器具ルーメン及びポート130から遠位に延出し得る。アンカ112の第1の端部138が標的領域104に埋め込まれている状態で、使用者は、イントロデューサ106と、配置器具118と、クリップ116(その基部要素144は、依然として配置器具118の先端部分150に装着されていてもよい)とをアンカ108に向けて移動させ得る。この動作は、アンカ112及び標的領域104を引っ張り得る引張力をテザー114上に与え得る。牽引は、標的領域104とアンカ108との間に延びるベクトルに沿い得る。上記動作はまた、アンカ108,112及び/又はテザー114を伸張させ得る。
【0031】
アンカ108,110,112、テザー114、及びクリップ116が配置された状態で、配置器具118は、切断器具120の挿入を可能にするために、器具ルーメンから抜き取られ得る。切断器具120は、器具ルーメンを通って遠位に案内され、ポート130から
図1Eに示される位置まで遠位に延ばされ得る。切断器具120は、遠位切断要素154を含み得る。切断要素154としては、例えば、ブレード、電気手術電極、発熱要素、及び/又は、組織102を切断することに適した他の要素が挙げられ得る。シャフト156は、切断要素154から、器具ルーメンを通って、イントロデューサ106の近位端部まで近位に延び得る。シャフト156は、電気手術器又は他の適当な電源に動作可能に接続されて、組織102を切断するためのエネルギーを提供し得る。代替的に、配置器具118は適所に残され、切断器具120は、別のルーメンを通って導入されてもよい。
【0032】
使用者は、イントロデューサ106の遠位端部を左右に振り、(
図1Eにおいて切断要素154付近の両方向矢印によって示すように)切断要素154を牽引された標的領域104の左右に振ることにより、標的領域104を除去し得る。突き刺したり、捻ったり、持ち上げたり、押し下げたりすること等を含む、切断要素154の他の動作も実施され得る。切断要素154が標的領域104を切断するにつれて、標的領域104は、平らな切除片を形成し得、該平らな切除片は、アンカ112、テザー114、及び/又はアンカ108に作用する張力及び/又は付勢力によって、アンカ108に向かって引っ張られ得る。これは、標的領域104に作用する牽引力の低下をもたらし得る。牽引力を増大するために、使用者は器具ルーメンから切断器具120を抜き取り得る。使用者は、器具ルーメンに配置器具118を再導入し、先端部分150が
図1Fに示すように再度ポート130から遠位に延出するまで、配置器具118を操縦し得る。先端部分150は、クリップ116の基部要素144に再進入し得る。先端部分150は、イントロデューサ106の支援により、アンカ108の第2の端部134から係合要素146を解放するようにクリップ116を移動させ得る。次に、先端部分150及びイントロデューサ106は、
図1Gに見られるように、係合要素146をアンカ110の第2の端部と係合させるようにクリップ116を移動させ得る。この動作は、アンカ112を引っ張り得るテザー114に対して引張力を与え、それにより標的領域104をさらに牽引し得る。上記牽引は、標的領域104とアンカ110との間に延びるベクトルに沿い得る。クリップ116のアンカ110への移動はまた、アンカ110,112及び/又はテザー114を伸張させ得る。
【0033】
配置器具118は、切断器具120のための空間を空けるために、器具ルーメンから再度抜き取られ得る。使用者は、
図1Hに示すように、切断器具120を用いて、牽引された標的領域104の切断を続け得る。代替的に、配置器具118と切断器具120は、イントロデューサ106の異なるルーメンに配置され得れば、一方を他方と入れ替えるために抜き取る必要はない。アンカ108,110と共に付加的なアンカを組織102内に配置して、使用者が切断を支援するために標的領域104をさらに牽引することを可能にしてもよいことが理解されるはずである。標的領域104が除去されるまで、上述した工程段階が繰り返され得る。
【0034】
図2は、標的領域又は病変204における組織202を牽引するための別のシステム200を示す。システム100と同様に、システム200は、イントロデューサ206と、切断器具220と、段階的な引張地点として作用するために組織202に埋め込むためのアンカ208,210と、標的領域204に埋め込むためのアンカ212と、アンカ212をアンカ208,210に連結するためのテザー214と、アンカ208,210に係合するためのテザー214の端部に位置するクリップ216とを含み得る。
【0035】
システム200は、様々な形でシステム100とは異なっていてもよい。例えば、アンカ208は、第1の端部に取り付けられた留め具(図示せず)を有する基部要素244を含み得る。留め具は、アンカ208を組織202に固定するために組織202内に埋め込まれ得る。留め具は、例えば、アンカ108と同等のらせん状の刺込端部を含んでもよい。係合要素234は、基部要素244の第2の端部に取り付けられ得る。係合要素234は、ループ又は小穴を含み得る。アンカ210は、アンカ208と同等であるか、又は同一であってもよい。
【0036】
アンカ212は、第1の端部において留め具238を有するとともに、第2の端部240においてテザー214を有する基部要素242を含み得る。留め具238は、例えば、顎部によって形成された把持要素を含み得る。顎部は、組織を受け入れるための開放位置と受入れた組織を把持するための閉鎖位置との間を移行し得ることが想定される。アンカ208,210の留め具もまた留め具238と同等であり得る。任意の適当な配置器具(図示せず)は、顎部を開放位置と閉鎖位置との間で作動させるように構成され得る。例示的な配置器具については、以下に記載する。代替的に、イントロデューサ206から、アンカ208,210,212とテザー214とクリップ216とを配置するために、システム100の配置器具118と同等の配置器具が用いられてもよい。
【0037】
テザー214の第1の端部は、アンカ212の第2の端部240に取り付けられ得る。テザー214の第2の端部はクリップ216に取り付けられ得る。クリップ216は、クリップ216をアンカ208に取り付けるためにアンカ208の係合要素234(及びアンカ210の係合要素)内に収容されるように構成された係合要素246を含み得る。クリップ216はまた、切断器具220を受け入れるように構成された開口部又は小穴258を含み得る。
【0038】
イントロデューサ206の器具ルーメン内から、アンカ208,210,212と、テザー214と、及びクリップ216を配置するために、任意の適当な配置器具が用いられ得る。アンカ208,210,212と、テザー214と、クリップ216が配置されるとともに、配置器具が器具ルーメンから抜き取られた状態で、切断器具120が器具ルーメンを通って遠位に案内され、イントロデューサ206から遠位に延出され得る。代替的に、配置器具と切断器具120とは、イントロデューサ206の異なるルーメンをふさぎ得れば、一方を他方と入れ替えるために抜き取る必要はない。
【0039】
使用者は、切断器具220の遠位端部をクリップ216の開口部258に挿入し得る。使用者は、イントロデューサ206と切断器具220とを移動させ、クリップ216をアンカ208に向けて引っ張り得る(
図2に破線で図示)。使用者は、クリップ216の係合要素246をアンカ208の係合要素234に取り付け得る。これらの動作は、アンカ212を引っ張り得るテザー214に対して引張力を与え、それにより標的領域204を牽引し得る。該牽引は、標的領域204とアンカ208との間に延びるベクトルに沿い得る。上記動作はまた、テザー214を伸張させ得る。
【0040】
標的領域204が牽引された状態で、使用者は、牽引された標的領域204の左右に切断器具220の切断要素254を振り得る。切断要素254が標的領域204を切断するにつれて、標的領域204は、テザー114における張力及び/又は付勢力によって、アンカ208に向かって引っ張られ得る平らな切除片を形成し得る。これは、標的領域204に対する牽引力の低下をもたらし得る。牽引力を増大するために、使用者は、切断器具220をクリップ216の開口部258に再挿入し得る。使用者は、切断器具220及びイントロデューサ206を用いて、クリップ216を移動させ、係合要素246をアンカ108の係合要素234から解放し得る。次に、切断器具220は、係合要素246をアンカ210の係合要素と係合させるように、クリップ216を移動させ得る(
図2に実線で図示)。この動作は、アンカ212を引っ張り得るテザー214に対して引張力を与え、それにより標的領域204をさらに牽引し得る。該牽引は、標的領域204とアンカ210との間に延びるベクトルに沿い得る。上記動作はまた、テザー214を伸張させ得る。
【0041】
使用者は、切断器具220を用いて、さらに牽引された標的領域204を切断し得る。アンカ208,210と共に付加的なアンカを組織202内に配置して、上述のステップを実施することにより、使用者が切断を支援するために標的領域204をさらに牽引することを可能にしてもよいことが理解されるはずである。上述したプロセスは標的領域204が除去されるまで繰り返され得る。
【0042】
システム200の諸態様は、システム100の諸態様と相互に置き換え可能であることが理解されるはずである。例えば、システム200のアンカ208,210,212と、テザー214と、クリップ216のうちの1つ以上は、システム100のアンカ108,110,112と、テザー114と、クリップ116に置き換えて用いられてもよい。反対も考えられる。例えば、システム100のアンカ108,110,112と、テザー114と、クリップ116のうちの1つ以上は、システム200のアンカ208,210,212と、テザー213と、クリップ216に置き換えて用いられてもよい。
【0043】
図3A-
図3Iは、組織を牽引するための別のシステム300を示す。
図3A-
図3Eは、対象者において使用中のシステム300を示す。
図3F-
図3Iは、システム300の特定の態様をより明瞭に示すために使用されているシステム300の一部を示す。システム300は、段階的な引張点として作用するようにアンカ308,310を組織302内に配置するためのイントロデューサ306(イントロデューサ106と同等)を含み得る。配置される前に、アンカ308,310は、ホルダ362のルーメン360(
図3F-
図3Iに示されているルーメン)内に収容され得る。使用者が、イントロデューサ306を標的領域へ操縦する間においてホルダ362を器具ルーメン内に後退させるとともに、同使用者が、アンカ308,310を組織302に配置することを容易にするべく、ホルダ362をイントロデューサ306の遠位端部から延出させ得るように、ホルダ362は、イントロデューサ306の器具ルーメン(図示せず)内において摺動可能であり得る。アンカ308,310は、ルーメン360内に位置する間、ルーメン360を形成するホルダ362の表面によって拘束され得る(
図3F-
図3Iを参照)。例えば、アンカ308,310は、ホルダ362の内表面によって、直線形態に保持されてもよい。
【0044】
アンカ308,310は、ルーメン360内において直列に配置され得る。アンカ308の第1の端部332は、ホルダ362の遠位端部に向かって延び得る。アンカ308の第2の端部334は、
図3Hに見られるように、アンカ310の第1の端部に係合し得る。一例において、アンカ308は、当該アンカ308とアンカ310とが易壊性部分によって接続されて、アンカ310と一体であってもよい。代替的に、アンカ308,310は、当該アンカ308の第2の端部334が当該アンカ310の第1の端部と隣接した別部材であってもよい。
【0045】
アンカ310の第2の端部は、プッシャ又はプランジャ364の遠位端部に係合し得る。使用者は、プッシャ364を遠位に移動させ、ルーメン360を通ってアンカ308,310を遠位に押し得る。引き続き遠位方向に移動させることにより、プッシャ364は、アンカ308の第1の端部332をホルダ362から延出させ得る。第1の端部332は、組織302に刺さり得る(
図3A、
図3B及び
図3Fを参照)。アンカ308のより多くがホルダから延出するにつれて、アンカ308の露出部分は、その非拘束姿勢に戻り始め得る(
図3C、
図3G及び
図3Hを参照)。非拘束姿勢は、例えば、
図3D、
図3E、及び
図3Iに示すループ構成、又は代替的に、三角形、フック、ステープル、又は任意の他の適当な形状を含んでもよい。アンカ308は、ワイヤ、ステンレス鋼、ニチノール、高炭素ばね鋼、形状記憶材料を含むポリマー材料、及び/又は生体吸収性材料を含む任意の適当な材料から製造され得る。アンカ308は、ホルダ362から解放されると、アンカ310から分離して、組織302上に残存し得る(
図3D及び
図3Iを参照)。アンカ310の第1の端部は、ホルダ362から延出し得、該配置プロセスは、アンカ310をアンカ308から離間した位置に配置するために繰り返され得る(
図3E及び3I)。2つのアンカ308,310が示されているが、使用者が何段階の引張点を設定したいかに応じて、いかなる数のアンカがホルダ362内に収容されてもよいことが理解されるはずである。
【0046】
図4は、別のホルダ462を示す。ホルダ462は、アンカ408,410が任意の付加的なアンカと共に積層され得ること以外は、システム300のホルダ362と同等であり得る。アンカ408,410は、アンカ308,310のように端と端とが接して配置される代わりに、部分的に重なり合い得る。ホルダ462のルーメン460は、積層されたアンカ408,410を収容するために、ホルダ362のルーメン360より幅広であり得る。システム300のプランジャ、すなわちプッシャ364と、該プッシャと同等のプランジャ、すなわちプッシャ464とは、アンカ408の近位端部434を遠位に押して、アンカ408を組織に配置し得る。次に、プランジャ464は、アンカ410を配置する準備として、後退してアンカ410の近位端部に係合するように移動し得る。このプロセスを繰り返して、ホルダ462内のアンカをすべて配置する。
【0047】
図5は、ホルダ562を示す。ホルダ562は、システム300,400のホルダ362,462にそれぞれ同等であり得る。ホルダ562において、アンカ508,510は、他のアンカと共に、ルーメン又はチャンバ560内において束構成に並んで配置され得る。システム300,400のプランジャ、すなわちプッシャ364,464にそれぞれ同等のプランジャ、すなわちプッシャ564は、アンカの近位端部を一つずつ遠位に押して、アンカを組織に配置し得る。配置動作と配置動作との間に、プランジャ564は、次のアンカの配置の準備として、後退させられて次のアンカの近位端部に配置され得る。
【0048】
図6は、3つの列670,672,674を有する配列、すなわちテーブル668を示す。列670は、例えば、尖端を有する片フック673と、顎部を備えた把持要素674と、尖端を備えたマルチフックアセンブリ676と、磁石678と、面ファスナの第1の半部680と、球根状端部を備えたフック682と、ループ684とを含む様々な種類の係合要素を示す。クリップ116,216の係合要素146,246の代わりに、それぞれ、列670内の係合部材のうちのいずれかをシステム100,200において用いてもよい。
【0049】
列672は、列670の係合要素に係合する様々な種類の係合要素を示す。列672は、例えば、ループ、すなわち小穴686(片フック673、把持要素674、及びマルチフックアセンブリ676に付着するように構成されている)と、磁石688(磁石678を引きつけて、それに付着するように構成されている)と、面ファスナの第2の後半部690(前半部680に付着するように構成されている)と、角度をなしたフック692(フック682及びループ684に付着するように構成されている)とを含む。
【0050】
列674は、物体を組織に締結するために用いられ得る様々な種類の留め具を示しており、留め具は、例えば、T-タグ694、鋭い先端部を備えたコイル696、リング要素698、及び自己拡張型フックアセンブリ699を含む。列674の留め具のうちのいずれも、列672の係合要素のうちのいずれかとともに用いられて、列672の係合要素を組織に締結し得る。列674からの留め具と列672からの係合要素とのアセンブリは、システム100,200,300において、それぞれアンカ108,110,208,210,308,310として用いられてもよい。また、列674の留め具のいずれもシステム100,200において、アンカ112,212を標的領域104,204にそれぞれ締結するために用いられ得ることも想定される。テーブル668の一覧は、例示的な態様を示しており、すべての可能性を網羅した一覧ではない。例えば、システム100,200,300の係合要素及び/又は留め具のうちのいずれもテーブル668の一部をなし得る。
【0051】
図7A-7Cは、組織702を牽引するためのシステム700を示す。組織702は、例えば、病変を有する領域のように除去の標的とされる領域704を含み得る。システム700は、組織702へのアクセスを提供するためのイントロデューサ706を含み得る。イントロデューサ706は、アンカ708,712を標的領域704に対向又は他の場合には対面した組織702の一部と、標的領域704自体とにそれぞれ係合するように配置し得る。
【0052】
図7Aは、イントロデューサ706の遠位端部の標的領域704への操縦を容易にするための送出姿勢にあるシステム700を示す。アンカ708,712は、ホルダ762内に収容され得る。配置器具718もホルダ762内に収容され得る。配置器具718を遠位に移動させることによって、使用者は、アンカ708,712を遠位に押して、アンカ708,712を配置し得る。
図7Bは、配置の間に、イントロデューサ706から遠位に延びているホルダ762と、ホルダ762から遠位に押し出されているアンカ712とを示す。アンカ712が(
図7B中に見られたように)ホルダ762から退出するにつれて、ホルダ762の遠位端部は、アンカ712を開姿勢に移行させ得る。開放したアンカ712は、標的領域704を受け入れ得る。アンカ712がホルダ762から分離すると、アンカ712は、標的領域704上で閉じ、それにより標的領域704を把持し得る。テザー714は、一端においてアンカ712に結合され、他端においてアンカ708に結合され得る。
【0053】
アンカ712が標的領域704を把持した状態で、使用者は、標的領域704に臨み得る組織、また、別の場合には、標的領域704に対向し得る組織702の一部に向かってホルダ762とクリップ708とを移動させるように、イントロデューサ706を偏向させ得る。使用者は、配置器具718を用いて、アンカ708をホルダ762から押し出して、アンカ708に組織702を把持させ得る。これらの動作は、アンカ712を引っ張り得るテザー714に対して引張力を与え、それにより
図7Cに示すように標的領域704を牽引し得る。該牽引は、標的領域704とアンカ712との間に延びるベクトルに沿い得る。上記動作はまた、テザー714を伸張させ得る。
【0054】
切断器具720は、牽引された標的領域704を切断するために用いられ得る。切断によってテザー714に緩みを生じ、標的領域704に影響を与える場合には、例えば、配置器具718を用いてアンカ708を組織702から外し、アンカ708を再位置決めし、次いでアンカ708が組織702の別の部分に係合し得るようにアンカ708を解放することによって、アンカ708の位置を調整し得る。この調整は、標的領域704に対して異なる牽引のベクトル(例えば牽引の方向及び/又は大きさ)を用いる能力を使用者に提供し得る。この牽引のベクトルに対する制御は、標的領域704を除去するべく、使用者が切断動作を案内するために、切断器具720とともに使用者が用いる切断具を露出させ、かつ/又は可視化する改善された能力を使用者に提供し得る。
【0055】
イントロデューサ706は、例えば、システム100のイントロデューサ106と同等であり得る。イントロデューサ706は、器具ルーメン701を含み得る。器具ルーメン701は、
図7Aの破断図において視認可能であり、またイントロデューサ706の一部が内部の幾何学的機構を示すために透明になっている
図7Bにおいても視認可能である。物質を照明するため、撮像するため、かつ/又は移動させるための他のルーメン(図示せず)が含まれ得ることが想定される。
【0056】
使用者が、イントロデューサ706を標的領域704へ操縦する間においてホルダ762を器具ルーメン701内に後退させるとともに、同使用者が、アンカ708,710を組織702に配置することを容易にするべく、ホルダ762をイントロデューサ706の遠位端部から延出させ得るように、ホルダ762は、イントロデューサ706の器具ルーメン701内で摺動可能であり得る。ホルダ702は、近位部分703及び遠位部分705を有し得る。ルーメン760は、近位部分及び遠位部分703,705を通って延び得る。近位部分703は、遠位部分705より幅広であり得る。追加的に又は代替的に、近位部分703の内径は、遠位部分705の内径より大きくてよい。よって、ルーメン760は遠位部分705においてよりも近位部分703においてより幅広であり得る。近位部分703から遠位部分705への移行は、ホルダ702及びルーメン760が繋ぎ部分においてテーパーをなし得るように、緩やかであり得る。
【0057】
アンカ708は、顎部707,709によって形成された把持要素のように、組織702に締結される留め具738を含み得る。顎部707,709は、支点711において互いに揺動可能に取り付けられ得る。ねじりばね部材等の付勢要素713は顎部707,709に係合して顎部707,709を閉姿勢に付勢し得る。顎部707,709が閉姿勢に移行するにつれて、アンカ708の第1の端部732における顎部707,709の遠位先端部は、互いに向かって移動し得る。妨げられていない場合には、顎部707,709の遠位先端部は、互いに接触するように移動し得る。支点711の反対側のアンカ708の第2の端部734では、顎部707,709が閉姿勢に移行するにつれて、顎部707,709の近位先端部は、互いに離れるように移動し得る。顎部707,709が(例えば付勢要素713により及ぼされる付勢する力に抗して)開姿勢に移行するにつれて、第2の端部734における顎部707,709の近位先端部は、互いに向かって移動し、かつ第1の端部732における遠位先端部707,709は、互いに離れるように移動し得る。顎部707,709の1つ以上に対して顎部707,709の近位先端部又はその付近において力を及ぼすことにより、顎部707,709は、開姿勢に移行され、顎部707,709が組織702を受け入れることが可能となり得る。顎部707,709への力を除去することで、顎部707,709は、閉姿勢に移行して組織702に締結することが可能となり得る。傾斜した突起、湾曲した突起、傾斜部等の突出部715,717を顎部707,709の近位先端部に設けて、以下に記載するように、顎部707,709の開姿勢への移行を容易にしてもよい。アンカ712は、アンカ708と同等であり得る。アンカ708,712は、テザー714によって接続され得る。
【0058】
配置に先立ち、アンカ708,712は、ホルダ762の近位部分703のルーメン760内に直列に配置され得る。アンカ708の第1の端部732は、ホルダ762の遠位端部に向かって延び、アンカ712の第2の端部(例えば近位端部)に係合し得る。アンカ708の第2の端部734は、配置器具718の遠位端部に係合し得る。近位部分703のルーメン760は、アンカ708,712がそれらの閉姿勢となり得るような大きさであり得る。代替的に、ルーメン760は、例えばホルダ762の内表面と突出部715,717との間の係合によりアンカ708,712が部分的に開放した形態となり得るような大きさであってもよい。テザー714は、アンカ708,712と並んでルーメン760内に収容され得る。代替的に、アンカ708,712の1つ以上は、ルーメン760内において端と端を接して反転していてもよい。
【0059】
イントロデューサ706を標的領域704又はその付近に位置した状態で、使用者は、配置器具718を遠位に移動させ、アンカ708,712をホルダ762の近位部分703からルーメン760を通って遠位部分705まで押し得る。引き続き遠位方向に移動させることにより、配置器具718は、アンカ712をホルダ762から押し出し始め得る。アンカ712の第2の端部がホルダ762の近位部分703と遠位部分705との間の繋ぎ部分に到達すると、遠位部分705では、ホルダ762の幅が狭くなっているために、アンカ712上の突出部は、ホルダ762の内表面に係合し得る。この係合は、アンカ712の顎部の近位先端部に圧縮力を及ぼし、それにより顎部の遠位先端部を互いに離れるように移動させて(
図7B)、標的領域704を受け入れ得る。引き続き配置器具718を遠位方向に移動させることにより、アンカ712は、ホルダ762から完全に外に移動され得る。アンカ712の突出部がホルダ762から係合解除すると、アンカ712の付勢要素は、アンカ712の顎部を閉姿勢に押し付け、それにより顎部を標的領域704に締結し得る。これらのステップにより、アンカ712(及びアンカ708)は、ホルダ762とのその相互作用により、配置の過程において自動的に開閉し得る。
【0060】
使用者は、標的領域704に対向する組織、また別の場合には、標的領域704に臨む組織702上の位置にイントロデューサ706を移動させ得る。(まだホルダ706内に位置する)アンカ708とアンカ712との間のテザー714を介した接続により、この動作は、標的領域704を牽引し得る。所望の牽引のベクトルが得られた状態で、使用者は、アンカ712が標的領域704上に配置された方法と同様の方法で、アンカ708を組織702上に配置して、牽引のベクトルを固定し得る(
図7Cを参照)。次に、使用者は、ホルダ762を器具ルーメン760から除去し得る。
【0061】
標的領域704が牽引された状態で、使用者は切断器具720(この開示における前述の切断器具のうちのいずれかと同等であってもよい)によって標的領域704を切断し得る。切断中、標的領域704は、テザー714における張力及び/又は付勢力によってアンカ708に向かって引っ張られ得る平らな切除片を形成し得る。これは、標的領域704に対する牽引力の低下をもたらし得る。牽引力を増大するために、使用者は、切断器具720を抜き取り、配置器具718を再導入し得る。使用者は、配置器具718をイントロデューサ706から延出させ得る。配置器具718は、鉗子顎部等の把持要素719を含み得る。使用者は、顎部707,709の近位先端部に圧縮力を及ぼして、アンカ708を開姿勢に移行させ、その結果、組織702は解放され得る。配置器具718及び/又はイントロデューサ706は、標的領域704に対して異なる牽引力を及ぼし得る組織702上の別の位置にアンカ708を移動させ得る。次に、使用者は、標的領域704の切断に戻り得る。このプロセスは、標的領域704が除去されるまで繰り返され得る。
【0062】
他の変形例が考えられる。例えば、複数のテザー714が用いられてもよい。テザー714の各々は、それらの第1の端部において同一のアンカ712に結合されてもよい。テザー714の各々は、それらの第2の端部においてそれら自身のアンカ708を有してもよい。テザー・アンカの組み合わせの各々は、組織702の異なる場所に取り付けられてもよく、よって標的領域704に対して異なるベクトルを有する複数の牽引力を与える。
【0063】
代替的に、複数のアンカ・テザー・アンカアセンブリ(例えば、アンカ708、テザー713及びアンカ712のアセンブリと同等)が標的領域704を牽引するために用いられてもよい。例えば、1つのアンカ・テザー・アンカアセンブリは、第1の切断過程の間に標的領域704を最初に牽引するために用いられ得る。そのようなアンカ・テザー・アンカアセンブリに緩みが生じ、所望の量及び/又は方向の牽引が提供されていない場合には、牽引の量を増やすため、及び/又は牽引の方向を変えるために、別のアンカ・テザー・アンカアセンブリを配置してもよい。上記のアンカ・テザー・アンカアセンブリは、同一であってもよいし、又は1つ以上の相違を有していてもよい。例えば、1つは、短尺テザー、異なるテザー構造、及び/又は異なる種類のアンカを有してもよい。
【0064】
代替的に、テザー714は、省略されてもよい。アンカ708,710は、必ずしも組織牽引に用いられずに、組織に係合するために互いに離れて配置されてもよい。例えば、アンカ708,710は、組織内の開口部を閉じるため、組織を位置決めするため、血管を挟むため、又は他の適当な作業を行うためのクリップとして用いられてもよい。
【0065】
図8及び
図9は、アンカ808,908を示す。アンカ808,908は、いずれもシステム700のアンカ708,712の代わりに用いられ得る。アンカ808,908は、それぞれ8の字を形成する、一体顎部807,809と、一体顎部907,909とをそれぞれ含み得る。
【0066】
アンカ808に関して、付勢要素813は、アンカ808の近位部分の対向する表面に係合し得る。付勢要素813は、例えば、圧縮ばねを含み得る。
図8において、付勢要素813は、圧縮力がアンカ808の近位部分に及ぼされている場合に付勢要素813がどのように見えるかを示す、部分圧縮状態で図示されている。力が及ぼされていない場合には、顎部807,809の遠位先端部は、互いに向かって移動し、かつ/又は係合するように移動し得る。
【0067】
アンカ908に関して、付勢要素913は、アンカ908の遠位部分の対向する表面に係合し得る。付勢要素913は、例えば、引張ばねを含み得る。
図9において、付勢要素913は、圧縮力がアンカ908の近位部分に及ぼされているときに付勢要素913がどのように見えるかを示す部分伸張状態で図示されている。力が及ぼされていない場合には、顎部907,909の遠位先端部は、互いに向かって移動し、かつ/又は係合するように移動し得る。
【0068】
図10は、ホルダ1062の遠位端面を示す。ホルダ1062内には、ルーメン1060が示される。ホルダ1062は、その遠位端部において異なる内径を有する複数の内表面領域を含み得る。例えば、ホルダ1062の内表面は、対向領域1023,1025を含み得る。対向領域1023,1025は、ホルダ1062の中央長手軸線から等しく離間され得る。ホルダ1062の内表面はまた、対向領域1027,1029を含み得る。対向領域1027,1029は、ホルダ1062の中央長手軸線に向かって徐々に傾斜し得る。ホルダ1062の内表面はまた、対向領域1031,1033を含み得る。対向領域1031,1033は、対向領域1023、隣接する対向領域1029間の繋ぎと、対向領域1025、隣接する対向領域1027間の繋ぎとを提供し得る。対向領域1031,1033は、ほぼ同一平面上にあってもよく、かつ/又はホルダ1062の内表面の直線部分であってもよい。対向領域1023,1025、対向領域1027,1029、対向領域1031,1033を有するホルダ1062の内表面の部分は、ホルダ1062の遠位部分のみであり得る。ホルダ1062の近位部分の内表面は、円形であり得るとともに、対向領域1023,1025の間に画定される内径と同等の内径を有し得る。
【0069】
ホルダ1062は、システム700におけるホルダ762の代わりに用いられてもよい。アンカ708,712,808,908のいずれもルーメン1060内に配置され得る。ホルダ1062の内表面の領域は、アンカに係合し得る。例としてアンカ708を用いると、アンカ708は、ホルダ1062の近位部分においてルーメン1060内に配置され得る。アンカ708は、ホルダ1062の近位部分におけるルーメン1060の幅に応じて、その閉姿勢にあってもよいし、又はその閉姿勢に近い状態であってもよい。配置器具718は、アンカ708を遠位に移動させ、顎部707,709の遠位部分をホルダ1062から延出させるとともに、顎部707,709の近位部分を対向領域1023,1025と係合させ得る。使用者は、ホルダ1062をアンカ708に対して時計回りに回転させ、顎部707,709の近位部分を対向領域1027,1029と係合させ得る。対向領域1027,1029の直径方向に対向する部分の間の距離が短くなるため、ホルダ1062を引き続き時計回りに回転させることにより、顎部707,709の近位部分は圧縮され得る。顎部707,709の近位部分が対向領域1031,1033に接近する所で、アンカ708は、開姿勢に達し得る。開放した顎部707,709は、組織(図示せず)を受け入れ得る。ホルダ1062を引き続き時計回りに回転させることにより、顎部707,709の近位部分は、対向領域1027,1029から引き離され、付勢要素713によって顎部707,709に及ぼされる付勢力により、対向領域1031,1033に沿って半径方向外側に移動し得る。アンカ708は、その閉姿勢に戻ることによって、顎部707,709を組織上に固定し得る。アンカ712,808,908のいずれも同様の方法でホルダ1062から配置されてもよい。
【0070】
図11は、ホルダ762と同等のホルダ1162を示す。例えば、ホルダ1162は、近位部分1103と、遠位部分1105と、ルーメン1160とを含んでもよく、ルーメン1160の幅は、遠位部分1105においてよりも近位部分1103においてより大きい。図面では、ホルダ1162の内部とその中に収容されたアンカ(例えばアンカ1108,1112,1121)とを露出させるために、ホルダ1162の一部が切り取られている。アンカ1108,1110,1121は、アンカ708,712と同等であり得る。例えば、アンカ1108は、支点1111のまわりを揺動する顎部1107,1109を含み得る。また顎部1107,1109は付勢要素1113(例えば、ねじりばね)によって閉姿勢に向けて付勢され得る。閉姿勢では、顎部1107,1109の遠位先端部は接触していてもよいし、又は顎部1107,1109の間の組織に対して圧縮力を及ぼしてもよい。顎部1107,1109の近位先端部に圧縮力を及ぼすことで、付勢要素1113によって及ぼされる付勢力に打ち勝つことによって、顎部1107,1109は、開姿勢に移行され得る。アンカ1112、1121は、アンカ1108と同等であり得る。
【0071】
ホルダ1162から送出して配置することに先立ち、アンカ1108,1112,1121は、アンカ1121の顎部の遠位先端部が、アンカ1108の顎部1107,1109の近位先端部を挟み込んだ状態で、端と端を接して構成され得る。同様に、アンカ1108の顎部1107,1109の遠位先端部は、アンカ1112の顎部の近位先端部に挟み得る。
【0072】
配置の間、配置器具(図示しないが、配置器具718と同等)は、ルーメン1160を通ってアンカ1108,1112,1121を遠位に押し出すために用いられ得る。アンカ1112は、ホルダ1162の遠位端部から退出し始め得る。アンカ1108の顎部1107,1109の遠位先端部がホルダ1162の近位部分1103と遠位部分1105との間の繋ぎ部分に到達すると、ホルダ1162の直径が小さくなることにより、ホルダ1162の内表面がアンカ1108の顎部1107,1109の遠位先端部に圧縮力を及ぼすようになり得る。この圧縮力は、アンカ1112の顎部の近位先端部に作用し、それによりアンカ1112をその開姿勢に移行させ得る。アンカ1112は、その顎部の間に組織を受け入れ得る。
【0073】
配置器具がアンカ1108,1112,1121をさらに遠位に押すにつれて、アンカ1108の顎部の近位先端部は、ホルダ1162の近位部分1103と遠位部分1105との間の繋ぎ部分においてホルダ1162(及びアンカ1121の顎部の遠位先端部)によって圧縮され得る。アンカ1108は、アンカ1112を解放し、アンカ1112がその閉姿勢に移行して組織に締結することを可能にし得る。その後アンカ1108は、組織を受け入れるための準備が整い得る。このプロセスは、付加的なアンカを配置するために繰り返されてもよい。3つのアンカが示されているが、任意の適当な数のアンカがホルダ1162内に含まれ得ることが理解されるはずである。配置された後、配置器具は、アンカ1108,1112,1121の顎部のうちのいずれかの近位先端部に圧縮力を及ぼして、組織が解放されるようにアンカを開姿勢に移行させるために用いられ得る。配置器具1118及び/又はイントロデューサ1106は、アンカ1108,1112,1121のうちのいずれかを他の場所へ移動させてもよい。
【0074】
アンカ1108,1112,1121は、テザーでつながれることなく配置されて、必ずしも組織を牽引するために協働せずに、組織に係合してもよいことが想定される。例えば、アンカ1108,1112,1121は、組織内の開口部を閉じるため、組織を位置決めするため、血管を挟むため、又は他の適当な作業を行うためのクリップとして用いられてもよい。代替的に、アンカ1108,1112,1121のうちの2つ以上が組織牽引に用いられ得るように、アンカ1108,1112,1121のうちの少なくとも2つはテザー(図示していないが、テザー114,214,714と同等)によって連結されていてもよい。システム1100は、狭くなった遠位部分1105を備えたホルダ1162を有すると上述されているが、
図10のホルダ1062がホルダ1162と置き換わってもよいことが想定される。そのような例では、アンカ1108,1112,1121の開放及び閉鎖を行うために、アンカ1108,1112,1121に対するホルダ1062の相対的回転が用いられ得る。
【0075】
図12A-12Fは、組織1202を牽引するためのシステム1200を示す。組織1202は、例えば、病変を有する領域等の除去の標的とされる領域1204を含み得る。システム1200は、組織1202へのアクセスを提供するためのイントロデューサ1206を含み得る。イントロデューサ1206は、標的領域1204上や、標的領域1204が対向する組織1202の一部、或いは、標的領域1204に臨む組織1202の一部といった組織1202上に、アンカ1208,1212を配置することを容易にし得る。アンカ1208,1212を結合し得るテザー1214もまた、標的領域1204の牽引を支援するために配置され得る。
【0076】
図12Aは、イントロデューサ1206の遠位端部の標的領域1204への操縦を容易にするための送出姿勢にあるイントロデューサ1206を示す。アンカ1208,1212はホルダ1262内に収容され得る。配置器具1218もまたホルダ1262内に収容され得る。配置器具1218は、アンカ1212に解放可能に連結され得る。配置器具1218を遠位に移動させることによって、使用者は、アンカ1208,1212とテザー1214を遠位に押して、アンカ1208,1212とテザー1214をホルダ1262から放出し得る(
図12Bを参照)。アンカ1208は、閉姿勢で放出され得る。アンカ1212は、最初に閉姿勢で放出され得る。アンカ1208がいったん放出された場合には、配置器具1218は、アンカ1212を、標的領域1204を受け入れるための開姿勢に移行させるように作動され得る。配置器具1218は、
図12Cに見られるように、アンカ1212を標的領域1204に締結するためにアンカ1212を閉姿勢に移行させるように再び作動され得る。アンカ1212が標的領域1204に締結された状態で、使用者は、配置器具1218をアンカ1212から解放し得る。使用者は、イントロデューサ1206をアンカ1208に向けて操作し、イントロデューサ1206をアンカ1208に解放可能に連結し得る(
図12D及び
図12Eを参照)。イントロデューサ1206及び配置器具1218を用いて、使用者は、アンカ1208を標的領域1204に対向する組織、また別の場合には、標的領域に臨む組織1202の部分に移動させ得る。この動作は、アンカ1212を引っ張り得るテザー1214に対して引張力を与え、それにより標的領域1204を牽引し得る。所望の牽引のベクトルが得られた場合、使用者はアンカ1208を開放するように配置器具1218を作動させ得る。これは、アンカ1208が組織1202を受け入れることを可能にし得、その後、配置器具1218は、アンカ1208を組織1202に締結するためにアンカ1208を閉じ得る。
【0077】
切断器具1220(この開示内における前述の切断器具のうちのいずれかと同等)は、牽引された標的領域1204を切断するために用いられ得る(
図12F参照)。切断によって標的領域1204の牽引がもはや十分でないほどテザー1214における張力を低減する場合には、アンカ1208の位置は、再調整されてもよい。再調整は、配置器具1218をアンカ1208(
図12Dを参照)に解放可能に連結し、組織1202を解放するためにアンカ1208を開放するように配置器具1218を作動させ、アンカ1208を新たな所望の牽引のベクトルが得られる組織1202上の別の位置へ移動させ、アンカ1208を新たな位置で組織1202に締結するためにアンカ1208を閉じるように配置器具1218を作動させることによって行われ得る。この再調整は、標的領域1204に関して、異なる牽引のベクトル(例えば牽引の方向及び/又は大きさ)を用いる能力を使用者に提供し得る。この牽引のベクトルに対する制御は、標的領域1204を除去するべく、使用者が切断動作を案内するために、切断器具1220とともに使用者が用いる切断具を露出させ、かつ/又は可視化する改善された能力を使用者に提供し得る。追加的に又は代替的に、配置器具1218は、アンカ1212を新たな標的領域の牽引及び除去の目的で標的領域1204から別の標的領域に移動させるために用いられ得る。
【0078】
イントロデューサ1206は、この開示に記載した前述のイントロデューサのうちのいずれと同等であってもよい。イントロデューサ1206は、複数のルーメンを含み、そのルーメンのうちの1つは、器具ルーメン1260であり得る。ホルダ1262の遠位端部が(例えばアンカ1208,1212の配置する過程において、)イントロデューサ1206から延出可能であり、かつ(例えばイントロデューサ1206の遠位部分の標的領域1204への挿入及び操作中に)イントロデューサ1206内に後退可能であり得るように、ホルダ1262は、器具ルーメン1260内において摺動可能であり得るスリーブを含み得る。
【0079】
アンカ1208は基部1244を含み得る。基部1244は、内部ルーメンを有するスリーブ又はカプセルを含み得る。アンカ1208はまた、顎部1207,1209によって形成された把持要素等の、組織1202に固定される留め具1238を含み得る。留め具1238は、基部1244の遠位端部から遠位に延出し得る。顎部1207,1209は、閉姿勢(
図12Aに示す)及び開姿勢(
図12B中のアンカ1212の開姿勢と同等)を有し得る。
【0080】
アンカ1208はまた、作動要素1235を含み得る。作動要素1235は、ループ1237及びシャフト1239を含み得る。ループ1237は、基部1244の近位端部から近位へ延び得る。ループ1237は、シャフト1239によって留め具1238に結合され得る。シャフト1239は、基部1244を通って延び得る。ループ1237及びシャフト1239の近位方向の移動により顎部1207,1209が基部1244に向かって引っ張られると、顎部1207,1209は、閉姿勢をとり得る。基部1244の遠位端部は、顎部1207,1209に拘束力を及ぼし、もって顎部1207,1209を閉姿勢に保持し得る。ループ1237及びシャフト1239の遠位方向の移動は、顎部1207,1209を基部1244から遠位に延出させ、顎部1207,1209に対する拘束力を除去し、それにより顎部1207,1209が開姿勢に移行することを可能にし得る。アンカ1212は、アンカ1208と同等であり得る。アンカ1208,1212は、テザー114,214,714と同等であり得るテザー1214によって接続され得る。テザー1214の端部は、アンカ1208,1212の基部に取り付けられ得る。代替的に、テザー1214は、省略されてもよい。そのような例では、アンカ1208,1212は、個々の再配置可能な外科クリップとして用いられてもよい。
【0081】
配置器具1218は、受入部1241及び操作要素1243を含み得る。受入部1241は、ルーメン(図示せず)を有するスリーブ又はカプセルを含み得る。操作要素1243が受入部1241の遠位端部から延出可能であるとともに、遠位端部又は受入部1241の中に後退可能であり得るように、操作要素1243は、受入部1241のルーメン内において近位方向及び遠位方向に移動可能であり得る。
図12Dは、受入部1241の遠位端部から遠位に延出した操作要素1243を示す。操作要素1243は、アンカ1208の作動要素1235のループ1237に解放可能に係合するように構成され得る。例えば、操作要素1243は曲がった遠位端部1245を含み得る。
【0082】
曲がった遠位端部1245がループ1237に係合したならば、操作要素1243は受入部1241内に引き込まれて、アンカ1208を受入部1241まで近位へ引っ張り得る。最初に、ループ1237及びシャフト1239の近位部分が受入部1241に引き込まれ得る。操作要素1243をさらに引き込むことにより、基部1244は、受入部1241が基部1244を受け入れ得るように、受入部1241に引き込まれ得る。受入部1241の遠位部分及び基部1244の近位部分は、受入部1241と基部1244とを解放可能に連結するために協働する連結要素1247,1249を備え、受入部1241が基部1244を一時的に捕捉することを可能にし得る。連結要素1247,1249が係合されると、受入部1241と基部1244とは相互に固定され得る。連結要素1247,1249は、スナップ嵌合結合、ラッチ構成、電磁結合等の任意の適当な解放可能な機械的結合を含み得る。
【0083】
連結要素1247,1249が係合された状態で、操作要素1243は、基部1244に対してループ1237、シャフト1239、顎部1207,1209を遠位に移動させるように遠位に延び得る。これは、アンカ1208が組織1202を捕捉し得るように、及び/又は以前に捕捉した組織1202を解放し得るように、顎部1207,1209をそれらの開姿勢へ移動させ得る。操作要素1243の近位への移動は、顎部1207,1209をそれらの閉姿勢に戻して、アンカ1208を新たに捕捉した組織に締結し得る。アンカ1208が組織1202に締結された後、連結要素1247,1249は、互いに解放され得、また操作要素1243は、ループ1237から解放され得る。配置器具1218は、アンカ1208から離れるように移動されて、アンカ1208を組織上の適所に残し得る。このプロセスは、組織上へのアンカ1208,1212の配置及び/又は再配置が所望されるたびに繰り返され得る。
【0084】
図13は、システム1200の位置決め要素1218及びアンカ1208と同等の別の位置決め要素1318及び別のアンカ1308の一部を示す。位置決め要素1318及びアンカ1308のそれらの部分は、位置決め要素1218及びアンカ1208の同様の部分の代わりに用いられてもよいことが想定される。位置決め要素1318は、受入部1341と、曲がった遠位端部1245を有した操作要素1343とを含み得る。アンカ1308は、顎部1307,1309を有した留め具1338と、シャフト(図示せず)及びループ1337を含む作動要素1335と、基部1344とを含み得る。
【0085】
受入部1341と基部1344は、協働する連結要素1347,1349を含み得る。連結要素1347は、受入部1341の遠位端部から近位へ、さらに側方方向に延びてL形の空洞を形成する溝又はチャネルを含み得る。連結要素1349は、基部1344の外表面から突出する突起を含み得る。使用時、操作要素1343は、ループ1337に係合して、基部1344を受入部1341に引き込み得る。操作要素1343が近位に移動するにつれて、連結要素1349が連結要素1347内を通って近位へ移動し得るように、連結要素1349は、連結要素1347と中継され得る。操作要素1343をねじることにより、アンカ1308がその中央長手軸線の周りで回転され、連結要素1349が連結要素1347を通って側方方向に進めさせ得る。これにより、位置決め要素1318は、アンカ1308に解放可能に連結される。
【0086】
位置決め要素1318がアンカ1308に解放可能に連結されることで、受入部1341と基部1344とは相互に固定され得る。操作要素1343は、アンカ1308を組織に締結するために、顎部1307,1309を閉じるように、近位へ引っ張られ得る。操作要素1343は、顎部1307,1309を開放するように遠位に押されて、顎部1307,1309が組織を捕捉するのを可能にし、かつ/又はアンカ1308の再配置のために、以前に捕捉した組織から顎部1307,1309を解放し得る。
【0087】
図14は、システム1200,1300の位置決め要素1218,1318及びアンカ1208,1308にそれぞれ同等の別の位置決め要素1418及び別のアンカ1408の一部を示す。位置決め要素1418及びアンカ1408のそれらの部分は、他の位置決め要素及びアンカの同様の部分の代わりに用いられてもよいことが想定される。位置決め要素1418は、受入部1441と、曲がった遠位端部1445を有した操作要素1443とを含み得る。アンカ1408は、顎部1407,1409を有した留め具1438と、シャフト1439及びループ1437を含む作動要素1435と、基部1444とを含み得る。
【0088】
受入部1441及び基部1444は、協働する連結要素1447,1449を含み得る。連結要素1447,1449は、例えば、噛み合うねじ山等の噛み合う幾何学的構造を含み得る。連結要素1447は、受入部1441の内表面上におけるねじ山を含み得る。連結要素1449は、基部1444の外表面上におけるねじ山を含み得る。使用時、操作要素1443は、ループ1437に係合し、基部1444の近位端部を受入部1441の遠位端部に引き付け得る。場合により操作要素1443を近位に引っ張ることによって支援して、操作要素1443をねじることにより、アンカ1408は、その中央長手軸線の周りで回転され、それにより連結要素1447,1447の係合を促進し得る。操作要素1443をさらにねじることにより、アンカ1408は位置決め要素1418内に螺入され得る。これにより、位置決め要素1418は、アンカ1408に解放可能に連結される。
【0089】
位置決め要素1418がアンカ1408に解放可能に連結されることで、受入部1441と基部1444とは、相互に固定され得る。操作要素1443は、アンカ1408を組織に締結するために、顎部1407,1409を閉じるように近位へ引っ張られ得る。操作要素1443は、顎部1407,1409を開放するように遠位に押されて、顎部1407,1409が組織を捕捉することを可能にし、かつ/又はアンカ1408の再配置のために、以前に捕捉した組織から顎部1407,1409を解放し得る。
【0090】
図15は、操作要素1543の一部と、特に操作要素1543の曲がった遠位端部1545とを示す。操作要素1543は、操作要素1243,1343,1443と同等であり得る。曲がった遠位端部1545は、作動要素1535のループ1537に係合し得る。ループ1537は、ループ1237,1337,1437と同等であり得る。しかしながら、ループ1537は、その中に形成された不連続部1551を有し得る。曲がった遠位端部1545によって充分な力が不連続部1551に印加されると、曲がった遠位端部1545はループ1537を広げて、曲がった遠位端部1545が不連続部1551を介してループ1537に入退することを可能にし得る。ループ1537は、操作要素のループへの進入、及び操作要素のループからの離脱を容易にするために、ループ1237,1337,1437のうちのいずれの代わりに用いられてもよい。
【0091】
図16A及び
図16Bは、別の位置決め要素1618及び別のアンカ1608の一部を示す。位置決め要素1618及びアンカ1608のそれらの部分は、位置決め要素1218,1318,1418等のこの開示に記載する他の位置決め要素のうちのいずれかの同様の部分の代わりに用いられてもよいことが想定される。位置決め要素1618は、受入部1641と、拡張した遠位端部1645を有した操作要素1643とを含み得る。拡張した遠位端部1645は、球状ボール、円板、及び/又は他の適当な突出部を含み得る。アンカ1608は、顎部(図示せず)を有した留め具と、シャフト1639及びソケット1637を含む作動要素1635と、基部1644とを含み得る。留め具は、例えば、留め具1238,1338,1438の態様を含み得る。
【0092】
受入部1641及び基部1644は、協働する連結要素1647,1649を含み得る。連結要素1647,1649は、例えば、噛み合うスナップ嵌合要素を含んでもよい。連結要素1647は、受入部1641の内表面の遠位端部における1つ以上の突起を含み得る。連結要素1649は、基部1644の近位端部の外表面上における1つ以上の陥凹部若しくは切込み、又は基部1644の近位端部の1つ以上の側面を通る1つ以上の開口部を含み得る。
【0093】
図16Aは、受入部1641を基部1644に対して固定するために互いに解放可能に連結された連結要素1647,1649を示す。操作要素1643の拡張した遠位端部1645もまた、作動要素1635のソケット1637に解放可能に連結され得る。解放可能に連結した操作要素1643及び作動要素1635を遠位に移動させることにより留め具は開放され、一方、それらを近位へ移動させることにより留め具は、閉じ得る。
図16Aでは、留め具は、閉じられている。ソケット1637の近位端部と基部1644の縮径部1653とが係合することにより、ソケット1637のさらなる近位への移動が防止され得る。閉じた留め具は、組織に固定され得る。アンカ1608を組織上の適所に残すために、操作要素1643は、
図16Bに示すように、ソケット1637から拡張した遠位端部1645を引き出すために近位へ引っ張られ得る。操作要素1643を引き続き近位に引っ張ることにより、拡張した遠位端部1645を受入部1641の縮径部1657と接触させ得る。拡張した遠位端部1645が縮径部1657を通って近位に移動するにつれて、拡張した遠位端部1645は縮径部1657を強制的に開き、連結要素1647を連結要素1649から解放し得るようにし、もって位置決め要素1618がアンカ1608から解放されることを可能にし得る。
【0094】
再配置の目的でアンカ1608を組織から取り外すために、受入部1641の遠位端部は、基部1644の近位端部に向かって移動し得る。連結要素1647の傾斜面は、基部1644の近位端部に係合し得、その近位端部は、連結要素1647を外側に移動させ、さらに基部1644の外表面上に移動させ得る。受入部1641は、連結要素1647が連結要素1649との嵌合するまで、基部1644に対して遠位に移動し得る。操作要素1643は、拡張した遠位端部1645を縮径部1657と係合させるように移動し得、縮径部1657を外側に押しやるのを助け、それにより受入部1641の基部1644への接続を容易にする。操作要素1643は、ソケット1637と係合するように遠位に移動して、ソケット1637を遠位に押し、それにより留め具を開放させ得る。ソケット1637を遠位に押すと、拡張した遠位端部1645は、ソケット1637に嵌り込み得る。一例において、留め具が完全に開放される地点を超えたソケット1637のさらなる遠位の移動を制限するために、基部1644の内表面上に突起、肩部、又は他の隣接部(図示せず)を設けて、ソケット1637の遠位端部に係合させてもよい。ソケット1637が突起、肩部、又は隣接部と接触すると、拡張した遠位端部1645をソケット1637の近位端部に対して強制的に押しつけることによって、拡張した遠位端部1645はソケット1637に嵌め込まれ得る。
【0095】
留め具を開放したまま、アンカ1608は、組織上の1つの場所から解放されて、組織上の別の場所へ提供され得る。拡張した遠位端部1645がソケット1637に受容されているため、操作要素1643を近位へ移動させることにより、作動要素1635を近位へ移動させることによって、留め具は、新たな場所で組織上に閉じ得る。位置決め要素1618は、その後、上述したステップごとにアンカから解放され得る。このプロセスは、再配置が所望されるたびに繰り返され得る。
【0096】
図17は、作動要素1635と同等であり得る作動要素1735の一部の斜視図を示す。作動要素1735は、作動要素1635の代わりに用いられてもよい。作動要素1735は、その近位端部においてソケット1737を含み得る。しかしながら、作動要素1735の近位部分は、基部1644の近位端部を越えて近位へ延びるとともに、作動要素1735の残部は、基部1644内に収容され得る。ソケット1737の近位端部の側方突起1757は、アンカ1608の留め具が完全に開放されているときに、基部1644の近位端部に隣接するように構成され得る。基部1644の近位端部に対する側方突起1757の隣接は、留め具の閉鎖に用いるために、ソケット1737を適所に保持して、操作要素1643の拡張した遠位端部1645のソケット1737内への挿入を容易にし得る。ソケット1737は、拡張した遠位端部1645のソケット1737への側面からの進入を容易にするためにU字型凹部を画定し得る。またU字型凹部の基部は、拡張した遠位端部1645の側面からの進入をさらに容易にするために拡張されてもよいことも想定される。
【0097】
図18は、位置決め要素1618及びアンカ1608と同等の別の位置決め要素1818及び別のアンカ1808の一部を示す。アンカ1808は、顎部1807,1809を有するばね付勢留め具1838を含み得る。留め具1838は、圧縮ばねを含み得る付勢要素1859によってばね付勢され得る。付勢要素1859の近位端部は、顎部1807,1809の近位端部において基部要素1861に係合し得る。付勢要素1859の遠位端部は、アンカ1808の基部1844の遠位端部に対して固定され得るストッパ1863に係合し得る。付勢要素1859に作用する変形力がない場合には、付勢要素1859は、基部要素1861をストッパ1863から離れるように移動させ得る。これは、顎部1807,1809を基部1844の遠位端部に向けて引っ張り、顎部1807,1809と基部1844の遠位端部の内表面との間の係合、及び/又は顎部1807,1809とストッパ1863の外表面との間の係合により、顎部1807,1809を閉鎖させる。
【0098】
位置決め要素1818は、拡張した遠位端部1645と同等であり得る拡張した遠位部分1845を有する操作要素1843を含み得る。拡張した遠位部分1845は、円板、球状ボール、及び/又は他の適当な形態の拡張部を含み得る。拡張した遠位部分1845は、受入部1641と同等であり得る位置決め要素1818の受入部(図示せず)に係合して、受入部上の連結要素と基部1844上の連結要素(図示せず)との係合を容易にするために用いられ得る。連結要素は、例えば連結要素1647,1649と同等であり得る。拡張した遠位部分1845はまた、連結要素の係合解除も容易にし得る。
【0099】
連結要素が係合されると、操作要素1843は、基部1844を通って遠位に押され得る。拡張した遠位部分1845から遠位に延びる延長部1865は基部要素1861に係合し得る。延長部1865は、基部要素1861に対して遠位向きの力を及ぼして、付勢要素1859の圧縮をもたらし、また顎部1807,1809を開放位置に移動させ得る。基部要素1861に対する遠位向きの力を除去又は低減すると、付勢要素1859は顎部1807,1809を閉鎖位置へ戻し得る。
【0100】
図19A-19Hは、組織1902を牽引するためのシステム1900を示す。組織1902は、例えば、病変を有する領域等の除去の標的とされる領域1904を含み得る。システム1900は、組織1902へのアクセスを提供するためのイントロデューサ1906を含み得る。イントロデューサ1906は、標的領域1904を通るテザー1914の配置、及び標的領域1904に対向する組織、また別の場合には標的領域1904に臨む組織1902の部分上へのアンカ1908の配置を容易にし得る。
【0101】
図19Aは、標的領域1904付近に配置されたイントロデューサ1906と、イントロデューサ1906の遠位端部から遠位に延びたアンカ1908とを示す。
図19Bは、標的領域1904を受け入れるために、その顎部1907,1909が広がった開姿勢にあるアンカ1908を示す。テザー1914は顎部1907に固定され得る。
図19Cは、顎部1907,1909によって標的領域1904に刺さり、テザー1914を標的領域1904に通すために閉姿勢に移行されているアンカ1908を示す。テザー1914は顎部1909によって把持され得る。
図19Dは、開姿勢に戻ったアンカ1908を示しており、この時点でテザー1914は標的領域1904に通されている。アンカ1908は配置器具(図示せず)の作動によって開閉され得る。
【0102】
使用者は、イントロデューサ1906及びアンカ1908を標的領域1904に対向する組織、また別の場合には標的領域1904に臨む組織1902の部分へ操作し得る。この動作は、テザー1914を引っ張り得るテザー1914に対して引張力を与え、それにより標的領域1904を牽引し得る(
図19Eに図示)。所望の牽引のベクトルが得られると、使用者は、アンカ1908を閉じて、アンカ1908を所望の位置で組織1202に締結し得る(
図19Fに図示)。
【0103】
切断器具1920(この開示内に記載した前述の切断器具のうちのいずれかと同等)は、牽引された標的領域1904を切断するために用いられ得る(
図19G参照)。切断により標的領域1904の牽引がもはや不十分となるほどテザー1914における張力が低減される場合には、牽引を増大するためにテザー1914の長さが調整され得る。再調整は、
図19Hに示すように、鉗子又は他の把持器具によってテザー1914の自由端を把持し、その自由端を引っ張って、アンカ1908を標的領域1904に結合しているテザー1914の部分を引き締めることによって行われ得る。
【0104】
イントロデューサ1906は、この開示に記載した他のイントロデューサのうちのいずれと同等であってもよい。イントロデューサ1906は、複数のルーメンを含み、そのルーメンのうちの1つは、器具ルーメン(図示せず)であり得る。イントロデューサ1906の遠位端部にはエンドキャップ1926が設けられ得る。エンドキャップ1926は、ポートを備え、そのうちの1つはポート1930であり得る。ポート1930は、器具ルーメンに開放し得る。アンカ1908が、送出中には器具ルーメン内に収容されるとともに、配置のためにイントロデューサ1906の遠位端部から遠位に延びるようにポート1930を通過することによって器具ルーメンから延出され得るように、アンカ1908は、器具ルーメン内において摺動可能であり得る。イントロデューサ1906内への移動、及び、イントロデューサからのアンカ1908の移動は、アンカ1908に解放可能に連結された配置器具(図示せず)によって引き起こされ得る。配置器具は、例えば、この開示に記載する前述の配置器具のうちのいずれと同等であってもよい。
【0105】
アンカ1908は、顎部1907,1909及び基部1944を含み得る。顎部1907,1909は、基部1944に対して移動することによって、開姿勢と閉姿勢との間を移行可能であり得る。例えば、顎部1907,1909は、基部1944の遠位端部に対して遠位に移動される場合には、開姿勢に向かって移行し得る。顎部1907,1909は、基部1944の遠位端部に対して近位へ移動される場合には、閉姿勢に向かって移行し得る。顎部1907,1909及び基部1944の構成及び操作は、アンカ1208,1210,1308,1408,1608,1808の同様の構成要素の構成及び操作と同等であり得る。顎部1907,1909を操作するための配置器具は、配置器具1218,1318,1418,1618,1818と同等であり得る。
【0106】
縫合糸、鎖又は他の適当な構造及び/又は材料を含み得るテザー1914は、アンカ1908が閉じられる際に、顎部1909から側方方向内側に延びる掴持要素1967がテザー1914の一部を引っ掛け得るように、顎部1907の一部に沿って延び得る。使用時、アンカ1908は、(
図19Bにみられるように)顎部1907,1909が標的領域1904の両側に跨った開姿勢に配置され得る。その後、顎部1909が顎部1907に向かって動くにつれて、(
図19Cに示すように)掴持要素1967が標的領域1904に刺通するように、アンカ1908は、閉じ得る。掴持要素1967の端部のフック機構1969は、第1の顎部1907に沿って延びるテザー1914のループ1971を引っ掛けるように、顎部1907と中継し得る。掴持要素1967がそれに引っ掛けられたテザー1914とともに標的領域1904に通され、それにより、テザー1914を標的領域1904に固定し得るように、アンカ1908は、再度開放され得る。
【0107】
顎部1907は、遠位端部において顎部1907の内表面に沿った切り欠き1973を含み得る。顎部1907はまた、切り欠き1973と連絡した、顎部1907の遠位端部を通って側方方向に延びるスロット1975を含み得る。テザー1914のループ1971が切り欠き1973に引っ掛けられると、ループ1971の一部は、スロット1975を横断して延び得る。掴持要素1967は、切り欠き1973の対向した側面の間においてスロット1975を通過して、ループ1971を引っ掛け得る。顎部1907はまた、該顎部を通って側方方向に延びる開口1977を備えてもよく、開口1977は、スロット1975から一定距離だけ離間されている。代替的に、顎部1907は、テザー1914を顎部1907に固定するために、テザー1914上のキャッチ、磁石、面ファスナ、ネジ穴、又はキーパーと嵌合するためのループ、磁石、面ファスナ、ねじ、又はラッチを備えてもよい。
【0108】
一定長のテザー1914は、アンカ1908の基部1944を通って延び、テザー1914の近位自由端部は、基部1944の近位端部から外に突き出ている。テザー1914は、その遠位端部において、テザー1914の残りの遠位長が顎部1907の内表面に沿って延び得るように、開口1977に送り込まれ得る。テザー1914のループ1971は、ループ1971の一部がスロット1975を横断して延びるように、切り欠き1973の対向した側面によって引っ掛けられ得る。よって掴持要素1967がスロット1975に通されると、掴持要素1967は、ループ1971を通過して、その一部分を掴持するか、又は引っ掛け得る。
【0109】
掴持要素1967は、顎部1909の内表面から側方に延び得る。掴持要素1967は、J字型又はL字型のスロットによって画定され得るフック機構1969を含み得る。掴持要素1967の自由端は、傾斜面1979を有し得る。傾斜面1979は、掴持要素1967がスロット1975内に挿入される際に、ループ1971がフック機構1969に到達してフック機構1969内に収容されるまで、ループ1971が傾斜面1979に沿って案内され得るように構成されている。アンカ1908が閉じられると、掴持要素1967の少なくとも一部は、フック機構1967がループ1971を引っ掛けるように、スロット1975内に収容され得る。
【0110】
テザー1914の近位自由端は、アンカ1908が配置されているとき、(
図19Gに示すように)基部1944の近位端部から延出し得る。その自由端を引っ張ることによって、標的領域1904とアンカ1908との間のテザー1914の部分が引き締められ得る。基部1944には一方向機構(図示せず)が備えられていてもよい。一方向機構は、テザー1914の緩みを防止しながら、テザー1914の引き締めを可能にし得る。一方向機構は、ジップチェーン、例えば、ラチェットアセンブリを含み得る。テザー1914は上述した他のテザーと同等であり得る。追加的に又は代替的に、テザー1914は、引き締めるための一方向移動を容易にするために、ジップタイ又はジップチェーンと同等の溝及び/又は突起を備えてもよい。代替的に、テザー1914は省略されてもよく、またアンカ1908は外科クリップとして個々に用いられてもよい。
【0111】
図20A及び
図20Bは、テザー1914がアンカ1908から器具ルーメンを通ってポート1930へ、さらにイントロデューサ1906の近位端部から近位に延び得るシステム1900の別形を示す。使用者は、テザー1914を引っ張ることにより、イントロデューサ1906の近位端部から、標的領域1904上における牽引を調整し得る。鉗子などを用いてテザー1914を把持するステップが回避され得る。
【0112】
図20A及び
図20Bに関する別の相違は、テザー1914が基部1944を通って延びていなくてもよいということである。従って、基部1944に一方向機構を設ける必要がない。むしろ、一方向機構は、標的領域1904とアンカ1908との間におけるテザー1914の緩みを防止するために、ポート1930、器具ルーメン、又はイントロデューサ1906の近位端部に設けられてもよい。上記で説明したように、一方向機構はラチェットアセンブリ、ジップタイ機構などを含み得る。追加的に又は代替的に、一方向機構は、テザー1914の望ましくない遠位の移動を防止するために、イントロデューサ1906の近位端部における規制手段を含んでもよい。
【0113】
図20Aにおいて、切断器具1920は、平らな切除片を生じる方法で、標的領域1904を切断し得る。これは、アンカ1908と標的領域1904との間のテザー1914の部分に緩みを生じさせ得る。
図20Bは、イントロデューサ1906の近位端部からテザー1914の近位端部を引っ張ることにより引き締められた後のアンカ1908と標的領域1904との間のテザー1914の部分を示す。
【0114】
図21A及び
図21Bは、補助アンカ1910を配置することによって標的領域1904に作用する牽引ベクトルが調整され得るシステム1900の別形を示す。補助アンカ1910は、イントロデューサ1906(又は別のイントロデューサ)によって、アンカ1908と標的領域1904との間のテザー1914の部分と係合するように操作され得る。補助アンカ1910は、テザー1914を保持したまま、別の位置の組織1902に締結されることにより、テザー1914及びアンカ1908によって標的領域1904に及ぼされる牽引力の大きさ及び/又は方向を調整し得る。牽引ベクトルをさらに調整するために、付加的な補助アンカが配置されてもよい。また補助アンカ1910は、この開示に記載した他の前述のテザーのうちのいずれの牽引ベクトルを調整するために用いられてもよいことも想定される。
【0115】
図22は、テザー1914と組織1902とを係合させることによって牽引ベクトルを調整するために用いられ得る補助アンカ2210のもう一つの例示的な別形をさらに示す。補助アンカ2210は、対向した顎部2283,2285を含み得る。顎部2283,2285は、顎部2283,2285を閉姿勢に付勢するために、ねじりばね等の付勢要素2287,2289を含み得る。顎部2283,2285は、ばね部材2291によって連結され得る。ばね部材2291は、顎部2283,2285と顎部2283,2285によって把持された物質との間に牽引力を及ぼすように伸張され得る引張ばねを含み得る。ばね部材2291の両端は、スイベリングリンク2293,2295によって顎部2283,2285に揺動可能に結合され得る。一例において、顎部2283は、テザー1914を受け入れるために開放され、テザー1914を把持するために閉じ得る。顎部2285は、所望量の牽引力が顎部2283及びばね部材2291によってテザー1914に及ぼされた後に、組織に締結され得る。
【0116】
図23A及び
図23Bは、ヒンジ2395によりアンカ1908の基部1944に揺動可能に結合されたスイベルリンク2393の角度を調整することによって、標的領域1904に作用する牽引ベクトルが調整され得るシステム1900の別形を示す。
図23Aにおいて、スイベルリンク2393は、基部1944に対して、その中央長手軸線が同軸を有するように配置され得る。スイベルリンク2393は、
図23Bに示すように、基部1944に対して、その中央軸線が角度をなすように揺動され得る。基部1944に対するスイベルリンク2393の角度をなした配向を維持するために、ラチェットアセンブリ等のロッキング機構がヒンジ2395に備えられてもよい。スイベルリンク2393の角度を変えることにより、標的領域1904に及ぼされる牽引力の方向を向け直したり、また牽引力の大きさを増大させたりして、標的領域1904の切断を容易にし得る。このスイベルリンク接続は、この開示内の前述のテザー及びアンカのいずれの間に提供されてもよいことが想定される。
【0117】
図24A及び
図24Bは、標的領域1904に作用する牽引ベクトルが、標的領域1904とアンカ1908との間に延びるテザー1914の部分においてテザー1914の脚部の間の距離を調整することによって調整され得るシステム1900の別形を示す。そのような調整は、環状要素2397を用いて提供され得る。使用者は、環状要素2397を
図24Aに示す位置から標的領域1904に向かってテザー1914を下って摺動させ得る。環状要素2397を標的領域1904に向けて
図24Bに示す位置まで引き続き摺動させることにより、テザー1914が標的領域1904を締め付け得るように、標的領域1904を通過しているテザー1914の長さが低減され得る。該締付によって、標的領域1904は上方に浮揚され得る。環状要素2397は、この開示に記載するシステム1900のいずれの別例とともに用いられてもよいことが想定される。
【0118】
図25A及び
図25Bは、テザー1914によって標的領域1904に及ぼされる牽引力が、テザー1914を加熱すること、及び/又はテザー1914に電気エネルギーを導くことにより調整され得るシステム1900の別形を示す。そのような例では、テザー1914は、例えば、熱又は電気エネルギーが印加されると収縮するように構成されたニチノールワイヤを含み得る「マッスルワイヤ」を用いて製造されてもよい。アンカ1908の基部1944は、例えば、切断器具1920の遠位先端部を受け入れるように構成されたポート2599を含み得る。切断器具1920は、ポート2599を介してテザー1914を収縮させるためのエネルギーを供給し得る。
図25Aは、テザー1914の収縮前における標的領域1904に牽引力が及ぼされているテザー1914を示す。
図25Bは、牽引力が増している収縮後におけるテザー1914を示す。この開示内の前述の基部及びテザー構成のいずれも、マッスルワイヤ及びマッスルワイヤにエネルギーを導くためのポートを備えて、マッスルワイヤの収縮により増大した牽引を提供してもよいことが考えられ得る。
【0119】
本発明の範囲から逸脱することなく、開示した装置及び方法において様々な修正及び変更をなすことができることは当業者には明らかだろう。本発明の他の態様は、明細書の検討及び本願で開示した特徴の実施から当業者には明らかになるであろう。明細書及び実施例は単に例示的なものと見なされることが意図される。
【外国語明細書】