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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090730
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】抗ウイルス性基材、及びマスク
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/06 20060101AFI20230622BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20230622BHJP
   D04H 1/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B32B29/06
A41D13/11 M
D04H1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062447
(22)【出願日】2023-04-07
(62)【分割の表示】P 2022090164の分割
【原出願日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2021169321
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591108248
【氏名又は名称】カミ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】井川 博明
(72)【発明者】
【氏名】大山 浩
(72)【発明者】
【氏名】柏田 祥策
(72)【発明者】
【氏名】横田 博志
(72)【発明者】
【氏名】国武 哲則
(57)【要約】
【課題】抗ウイルス性基材の品質を確保することが可能となる、抗ウイルス性基材、及びマスクを提供すること。
【解決手段】抗ウイルス性基材20は、抗ウイルス性を有する基材であって、紙材又は布材にて構成された第1基材21と、第1基材21に設けられている抗ウイルス層22であり、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含む物質を含む抗ウイルス層22と、を備え、抗ウイルス層22に上記物質が含まれる量を、0.2g/m以上とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス性を有する抗ウイルス性基材であって、
紙材又は布材にて構成された第1基材と、
前記第1基材に設けられている抗ウイルス層であり、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含む物質を含む抗ウイルス層と、を備え、
前記抗ウイルス層に前記物質が含まれる量を、0.2g/m以上とした、
抗ウイルス性基材。
【請求項2】
紙材又は/及び布材にて構成された複数の第2基材であり、前記抗ウイルス層が設けられていない複数の第2基材を備え、
前記複数の第2基材を、積層状に設け、
前記第1基材が外部から露出しないように、当該第1基材を前記第2基材同士間に設け、
前記第1基材の厚さを、前記第2基材の厚さよりも薄くした、
請求項1に記載の抗ウイルス性基材。
【請求項3】
紙材にて構成された前記第1基材と、
布材にて構成された前記複数の第2基材と、を備える、
請求項2に記載の抗ウイルス性基材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の抗ウイルス性基材からなるマスク本体を備える、マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス性基材、及びマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抗ウイルス性を有する基材の一つとして、カテキンが塗布された不織布によって構成されてなるシート本体と、シート本体の表面に設けられた粘着層と、粘着層の粘着面に剥離可能に貼付されてなる剥離シートとを備える基材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3227491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の基材においては、シート本体にカテキンが塗布されているものの、当該塗布の詳細が不明であることから、当該カテキンの塗布量が十分でない場合には、所望の抗ウイルス性を有することが難しくなるおそれがあることから、基材の品質(具体的には、抗ウイルス性に関する品質)を確保する観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためのものであって、抗ウイルス性基材の品質を確保することが可能となる、抗ウイルス性基材、及びマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の抗ウイルス性基材は、抗ウイルス性を有する抗ウイルス性基材であって、紙材又は布材にて構成された第1基材と、前記第1基材に設けられている抗ウイルス層であり、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含む物質を含む抗ウイルス層と、を備え、前記抗ウイルス層に前記物質が含まれる量を、0.2g/m以上とした。
【0007】
請求項2に記載の抗ウイルス性基材は、請求項1に記載の抗ウイルス性基材において、紙材又は/及び布材にて構成された複数の第2基材であり、前記抗ウイルス層が設けられていない複数の第2基材を備え、前記複数の第2基材を、積層状に設け、前記第1基材が外部から露出しないように、当該第1基材を前記第2基材同士間に設け、前記第1基材の厚さを、前記第2基材の厚さよりも薄くした。
【0008】
請求項3に記載の抗ウイルス性基材は、請求項1又は2に記載の抗ウイルス性基材において、紙材にて構成された前記第1基材と、布材にて構成された前記複数の第2基材と、を備える。
【0009】
請求項4に記載のマスクは、請求項1又は2に記載の抗ウイルス性基材からなるマスク本体を備える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の抗ウイルス性基材によれば、抗ウイルス層に前記物質が含まれる量を、0.2g/m以上としたので、所望の抗ウイルス性を有することができ、抗ウイルス性基材の品質(具体的には、抗ウイルス性に関する品質)を確保することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の抗ウイルス性基材によれば、複数の第2基材を、積層状に設け、第1基材が外部から露出しないように、当該第1基材を第2基材同士間に設けたので、第1基材が外部から露出することを回避でき、第1基材によって抗ウイルス性基材の意匠性が低下することを防止できると共に、第1基材の保護性を高めることができる。
【0012】
請求項4に記載のマスクによれば、請求項1又は2に記載の抗ウイルス性基材からなるマスク本体を備えるので、抗ウイルス性基材の品質によってマスク本体の品質を確保することができ、マスクの製造性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るマスクを概念的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の分解斜視図である。
図2】第1基材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図である。
図3】第1抗ウイルス性確認試験の試験結果を示す図である。
図4】第2抗ウイルス性確認試験の試験結果を示す図である。
図5】第3抗ウイルス性確認試験の試験結果を示す図である。
図6】第4抗ウイルス性確認試験の試験結果を示す図である。
図7】第5抗ウイルス性確認試験の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る抗ウイルス性基材、及びマスクの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、抗ウイルス性を有する抗ウイルス性基材、及び当該抗ウイルス性基材を備えるマスクに関するものである。
【0016】
ここで、「抗ウイルス性」とは、ウイルスを不活化させる性能を意味する。
【0017】
また、「基材」とは、製品の構成要素を構成するための部材であり、実施の形態では、マスクの構成要素(具体的には、後述するマスク本体)を構成するための部材として説明する。ただし、これに限らず、例えば、マスク以外の紙製品(一例として、紙おむつ、ティシューペーパー、トイレットペーパー、包装体、壁紙、印刷紙等)又は/及び布製品(一例として、布おむつ、ハンカチ、タオル、衣服、布カバン等)の構成要素を構成するための部材であってもよい。
【0018】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0019】
(構成)
最初に、実施の形態に係るマスクの構成について説明する。
【0020】
以下の説明では、図1のX方向をマスクの左右方向(図示しない着用者から見た方向を基準とするものとし、-X方向をマスクの右方向、+X方向をマスクの左方向)、図1のY方向をマスクの前後方向(+Y方向をマスクの前方向、-Y方向をマスクの後方向)、図1のZ方向をマスクの上下方向(+Z方向をマスクの上方向、-Z方向をマスクの下方向)と称する。
【0021】
マスク1は、着用者の口及び鼻を覆うためのものであり、図1に示すように、マスク本体10、プリーツ部30、ノーズフィッター部40、及び耳側着脱部50を備えている。
【0022】
(構成-マスク本体)
まず、マスク本体10の構成について説明する。
【0023】
マスク本体10は、マスク1の基本構造体であり、着用者がマスク1を着用した状態(以下、「着用状態」と称する)において、着用者の鼻から顎に至る部分を略覆うことが可能な位置に設けられる。また、このマスク本体10は、抗ウイルス性を有する抗ウイルス性基材20からなり、具体的には、図1に示すように、第1基材21、抗ウイルス層22、外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25を備えている。
【0024】
なお、上述した「外側第2基材23」、「内側第2基材24」、及び「中間第2基材25」は、特許請求の範囲における「複数の第2基材」に対応する。また、以下では、マスク本体10(具体的には、第1基材21、外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25)の面のうち、着用者の肌面側の面11を「マスク内面11」と称し、着用者の肌面側とは反対側の面12を「マスク外面12」と称する。
【0025】
(構成-マスク本体-第1基材)
第1基材21は、マスク本体10の基本構造体の一部であり、図1図2に示すように、略シート状体にて形成されている。
【0026】
この第1基材21の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0027】
すなわち、第1基材21の正面形状については、略四角形状(具体的には、略長方形状)に設定している。ただし、これに限らず、例えば、略正方形状、略台形状、又は略楕円形状に設定してもよい。
【0028】
また、第1基材21の左右方向の長さについては、マスク本体10の左右方向の長さと略同一に設定しており、例えば、160mmから190mm程度に設定してもよい。ただし、これに限らず、例えば、マスク本体10の左右方向の長さよりも短く設定してもよい。
【0029】
また、第1基材21の上下方向の長さについては、マスク本体10の上下方向の長さと略同一に設定しており、例えば、80mmから110mm程度に設定してもよい。ただし、これに限らず、例えば、マスク本体10の上下方向の長さよりも短く設定してもよい。
【0030】
また、第1基材21の厚さについては、所望の耐久性を有する厚さに設定しており、例えば、0.03mmから0.5mm程度に設定してもよい。
【0031】
また、第1基材21の材質については任意であるが、実施の形態では、紙材にて構成されており、具体的には、目付けが14g/m程度である公知のマスク用紙材で構成されている。ただし、これに限らず、例えば、マスク用紙材以外の紙材(一例として、後述する試験結果から抗ウイルス性に寄与することが確認された茶香紙(具体的には、紙材に対して茶殻が20%以上配合された茶香紙)、又はマスク用布材(一例として、織布材、不織布材、編布材)で構成されてもよい。
【0032】
(構成-マスク本体-抗ウイルス層)
図1に戻り、抗ウイルス層22は、マスク本体10の抗ウイルス性を発揮させるための層である。この抗ウイルス層22は、茶葉抽出物質が第1基材21に塗布されて形成されており、具体的には、図1図2に示すように、茶葉抽出物質が第1基材21の略全体に塗布されて含浸された後、乾燥させて形成されている。
【0033】
また、抗ウイルス層22の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、後述する試験結果に基づいて、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量が0.1g/m以上となるように構成されている。
【0034】
具体的には、比較的高い抗ウイルス性を確保する観点から、後述する試験結果に基づいて、上記塗布量が0.2g/mとなるように構成されている。ただし、これに限らず、例えば、上記塗布量が0.2g/mを上回るように構成されてもよく、一例として、上記塗布量が0.4g/mとなるように構成されてもよい。
【0035】
なお、上記塗布量が0.4g/mを上回る場合には、茶葉抽出物質を第1基材21に塗布しづらくなるため、抗ウイルス層22を第1基材21に形成することが難しくなる。このことを踏まえて、実施の形態では、上記塗布量の上限値は、0.4g/m程度に設定されている。
【0036】
(構成-マスク本体-抗ウイルス層-茶葉抽出物質)
ここで、茶葉抽出物質は、茶葉(例えば、緑茶葉、紅茶葉等)から抽出される物質である。
【0037】
この茶葉抽出物質の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、マスク本体10の品質(具体的には、抗ウイルス性に関する品質)を確保する観点から、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含んでいる。ただし、これに限らず、例えば、これら以外の他のポリフェノール(一例として、ガロカテキン、ガロカテキンガレート)をさらに含んでもよい。
【0038】
また、茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mである場合において、茶葉抽出物質の成分のうち、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含む成分の塗布量については任意であるが、実施の形態では、0.1g/m程度に設定されている。ただし、これに限らず、例えば、0.1g/m未満に設定されてもよく、あるいは、0.1g/mを上回るように設定されてもよい。
【0039】
このような抗ウイルス層22により、所望のマスク本体10の抗ウイルス性を確実に発揮させることが可能となる。また、抗ウイルス層22を茶葉抽出物質から構成できるので、抗ウイルス層22を簡易に構成できると共に、例えば使用済みの茶葉を利用して抗ウイルス層22を構成できるので、抗ウイルス層22の製造性(具体的には、製造コストの低減等)を高めながら、茶葉のリサイクルに寄与することが可能となる。
【0040】
(構成-マスク本体-外側第2基材)
図1に戻り、外側第2基材23は、マスク本体10の基本構造体の他の一部であって、抗ウイルス層22が設けられていない基材(第2基材)である。この外側第2基材23は、略シート状体にて形成されており、図1に示すように、第1基材21よりも外側(図1(b)では、前側)に設けられている。
【0041】
また、外側第2基材23の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0042】
すなわち、外側第2基材23の正面形状については、略四角形状(具体的には、略長方形状)に設定している。ただし、これに限らず、例えば、略正方形状、略台形状、又は略楕円形状に設定してもよい。
【0043】
また、外側第2基材23の左右方向の長さについては、マスク本体10の左右方向の長さと略同一に設定しており、例えば、120mmから190mm程度に設定してもよい。
【0044】
また、外側第2基材23の上下方向の長さについては、マスク本体10の上下方向の長さと略同一に設定しており、例えば、80mmから110mm程度に設定してもよい。
【0045】
また、外側第2基材23の厚さについては、所望の耐久性を有する厚さに設定しており、例えば、0.1mmから0.7mm程度に設定してもよい。
【0046】
また、外側第2基材23の材質については任意であるが、実施の形態では、布材にて構成されており、具体的には、目付けが25g/m程度であるマスク用不織布材(例えば、スパンボンド不織布材等)で構成されている。ただし、これに限らず、例えば、マスク用不織布以外の布材(一例として、織布材、編布材)、又はマスク用紙材で構成されてもよい。
【0047】
(構成-マスク本体-内側第2基材)
内側第2基材24は、マスク本体10の基本構造体の他の一部であって、抗ウイルス層22が設けられていない基材(第2基材)である。この内側第2基材24は、略シート状体にて形成されており、図1(b)に示すように、第1基材21よりも内側(図1(b)では、後側)に設けられている。
【0048】
また、内側第2基材24の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0049】
すなわち、内側第2基材24の正面形状については、略四角形状(具体的には、略長方形状)に設定している。ただし、これに限らず、例えば、略正方形状、略台形状、又は略楕円形状に設定してもよい。
【0050】
また、内側第2基材24の左右方向の長さについては、マスク本体10の左右方向の長さと略同一に設定しており、例えば、160mmから190mm程度に設定してもよい。ただし、これに限らず、例えば、マスク本体10の左右方向の長さよりも短く設定してもよい。
【0051】
また、内側第2基材24の上下方向の長さについては、マスク本体10の上下方向の長さと略同一に設定しており、例えば、80mmから110mm程度に設定してもよい。ただし、これに限らず、例えば、マスク本体10の上下方向の長さよりも短く設定してもよい。
【0052】
また、内側第2基材24の厚さについては、所望の耐久性を有する厚さに設定しており、例えば、0.1mmから0.7mm程度に設定してもよい。
【0053】
また、内側第2基材24の材質については任意であるが、実施の形態では、布材にて構成されており、具体的には、目付けが25g/m程度であるマスク用不織布材(例えば、スパンボンド不織布材等)で構成されている。ただし、これに限らず、例えば、マスク用不織布材以外の布材(一例として、織布材、編布材)、又はマスク用紙材で構成されてもよい。
【0054】
(構成-マスク本体-中間第2基材)
中間第2基材25は、マスク本体10の基本構造体の他の一部であって、抗ウイルス層22が設けられていない基材(第2基材)である。この中間第2基材25は、略シート状体にて形成されており、図1(b)に示すように、第1基材21と内側第2基材24との相互間に設けられている。
【0055】
また、中間第2基材25の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0056】
すなわち、中間第2基材25の正面形状については、略四角形状(具体的には、略長方形状)に設定している。ただし、これに限らず、例えば、略正方形状、略台形状、又は略楕円形状に設定してもよい。
【0057】
また、中間第2基材25の左右方向の長さについては、マスク本体10の左右方向の長さと略同一に設定しており、例えば、160mmから190mm程度に設定してもよい。ただし、これに限らず、例えば、マスク本体10の左右方向の長さよりも短く設定してもよい。
【0058】
また、中間第2基材25の上下方向の長さについては、マスク本体10の上下方向の長さと略同一に設定しており、例えば、80mmから110mm程度に設定してもよい。ただし、これに限らず、例えば、マスク本体10の上下方向の長さよりも短く設定してもよい。
【0059】
また、中間第2基材25の厚さについては、所望の耐久性を有する厚さに設定しており、例えば、0.1mmから0.7mm程度に設定してもよい。
【0060】
また、中間第2基材25の材質については任意であるが、実施の形態では、布材にて構成されており、具体的には、目付けが25g/m程度であるマスク用不織布材で構成されている。例えば、目付けが25g/m程度であって、帯電処理(一例として、コロナ処理等)されたメルトブロー材で構成されることにより、中間第2基材25によって第1基材21を通過したウイルスを引き止めることができ、当該引き止められたウイルスに対して第1基材21による抗ウイルス性を作用させることが可能となる。ただし、これに限らず、例えば、マスク用不織布材以外の布材(一例として、織布材、編布材)、又はマスク用紙材で構成されてもよい。
【0061】
(構成-マスク本体-その他の構成)
マスク本体10の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では以下の通りに構成されている。
【0062】
すなわち、まず、複数の第2基材(具体的には、外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25)は、積層状に設けられており、第1基材21が外部から露出しないように、当該第1基材21は第2基材同士間に設けられている。
【0063】
具体的には、図1(b)に示すように、外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25は、前後方向に略沿って積層状に配置されている。また、第1基材21は、外側第2基材23と中間第2基材25との相互間に配置されていると共に、第1基材21の前面全体が外側第2基材23によって覆われると共に、第1基材21の後面全体が内側第2基材24又は/及び中間第2基材25によって覆われるように配置されている。そして、外側第2基材23及び中間第2基材25は、超音波接着、熱接着、又は接着剤(例えば、ホットメルト)等によって相互に接続されていると共に、中間第2基材25及び内側第2基材24は、超音波接着、熱接着、又は接着剤(例えば、ホットメルト)等によって相互に接続されている。
【0064】
このような構成により、第1基材21が外部から露出することを回避でき、第1基材21によってマスク本体10(抗ウイルス性基材20)の意匠性が低下することを防止できる。
【0065】
また、複数の第2基材のうち、第1基材21よりも積層方向の一方側に位置する第2基材の少なくともいずれか1つの目の大きさは、第1基材21よりも積層方向の他方側に位置する第2基材の目の大きさよりも小さく設定されている。
【0066】
具体的には、第1基材21よりも後側に位置する内側第2基材24及び中間第2基材25の少なくともいずれか1つの目の大きさは、第1基材21よりも前側に位置する外側第2基材23の目の大きさよりも小さく設定されている。例えば、中間第2基材25の目の大きさについては、10μm以下に設定され、外側第2基材23及び内側第2基材24の目の大きさについては、50μm以上に設定されてもよい。
【0067】
このような構成により、複数の第2基材の目の大きさをすべて同じにした場合に比べて、異物又は/及びウイルスが通過しにくいことから、マスク本体10のフィルタ機能を高めることができる。特に、複数の第2基材の目の大きさが上述した大きさに設定されることで、サージカルマスク用のマスク本体10に適用することが可能となる。
【0068】
なお、第1基材21の目の大きさについては任意であるが、実施の形態では、外側第2基材23の目の大きさと中間第2基材25の目の大きさとの間の大きさに設定されており、例えば、20μmから30μm程度に設定されてもよい。ただし、これに限らず、例えば、外側第2基材23の目の大きさ又は中間第2基材25の目の大きさのいずれかと同一の大きさに設定されてもよい。
【0069】
このようなマスク本体10(抗ウイルス性基材20)により、所望の抗ウイルス性を有することができ、マスク本体10の品質を確保することが可能となる。
【0070】
(構成-プリーツ部)
次に、プリーツ部30の構成について説明する。
【0071】
プリーツ部30は、マスク本体10を立体的に構成してマスク本体10を着用者の顔にフィットさせるためのものである。このプリーツ部30は、マスク本体10の一部(具体的には、第1基材21、外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25)を長尺な折り目状に形成したものであり、図1に示すように、マスク本体10において相互に間隔を隔てて上下方向に沿って複数並設されている。
【0072】
(構成-ノーズフィッター部)
次に、ノーズフィッター部40の構成について説明する。
【0073】
ノーズフィッター部40は、マスク本体10を着用者の鼻にフィットさせるためのものである。このノーズフィッター部40は、例えば長尺な公知のマスク用ノーズフィッター(一例として、ポリオレフィン及び鉄で構成されたノーズフィッター)を用いて構成されており、図1に示すように、外側第2基材23の上端部においてノーズフィッター部40の長手方向が左右方向に略沿って設けられており、外側第2基材23に対して超音波接着、熱接着、又は接着剤(例えば、ホットメルト)等によって固定されている。
【0074】
(構成-耳側着脱部)
次に、耳側着脱部50の構成について説明する。
【0075】
耳側着脱部50は、マスク本体10を着用者の耳に対して着脱自在に取り付けるための耳側着脱手段であり、図1に示すように、第1耳側着脱部51及び第2耳側着脱部52を備えている。
【0076】
(構成-耳側着脱部-第1耳側着脱部)
第1耳側着脱部51は、マスク本体10を着用者の右耳に対して着脱自在に取り付けるためのものである。この第1耳側着脱部51は、例えば公知の耳掛け用紐材(一例として、右耳にかけることが可能な長さを有する略ループ状のポリオレフィン製の紐材)で構成されており、マスク本体10の右端部に設けられている。具体的には、図1に示すように、第1耳側着脱部51の一方の端部がマスク本体10の右端部の上部分に超音波接着、熱接着、又は接着剤(例えば、ホットメルト)等によって接続されていると共に、第1耳側着脱部51の他方の端部がマスク本体10の右端部の下部分に超音波接着、熱接着、又は接着剤等によって接続されている。
【0077】
(構成-耳側着脱部-第2耳側着脱部)
第2耳側着脱部52は、マスク本体10を着用者の左耳に対して着脱自在に取り付けるためのものである。この第2耳側着脱部52は、例えば公知の耳掛け用紐材(一例として、左耳にかけることが可能な長さを有する略ループ状のポリオレフィン製紐材)で構成されており、マスク本体10の左端部に設けられている。具体的には、図1に示すように、第2耳側着脱部52の一方の端部がマスク本体10の左端部の上部分に対して超音波接着、熱接着、又は接着剤等によって接続されていると共に、第2耳側着脱部52の他方の端部がマスク本体10の左端部の下部分に対して超音波接着、熱接着、又は接着剤等によって接続されている。
【0078】
以上のようなマスク1により、抗ウイルス性基材20の品質によってマスク本体10の品質を確保することができ、マスク1の製造性を高めることが可能となる。
【0079】
(マスクの製造方法)
次に、マスク1の製造方法について説明する。
【0080】
実施の形態に係るマスク1の製造方法は、第1形成工程、第2形成工程、及び取付工程を含んでいる。
【0081】
(マスクの製造方法-第1形成工程)
まず、第1形成工程について説明する。
第1形成工程は、第1基材21に抗ウイルス層22を形成するための工程である。
【0082】
具体的には、まず、公知の巻き出し機によってロール状の第1基材21が巻き出されながら、公知のコーター設備(例えば、グラビアコーター)を用いて、当該巻き出された第1基材21のマスク外面12に対して塗布液が塗布される。そして、公知の乾燥設備(例えば、熱風乾燥装置等)によって、上記塗布された第1基材21が所定時間乾燥されることにより、抗ウイルス層22が形成される。その後、公知の切断機によって、抗ウイルス層22が形成された第1基材21は、所定のサイズに切断される。
【0083】
ここで、「塗布液」とは、茶葉抽出物質を第1基材21に対して塗布するための液であり、例えば、茶葉抽出物質、水、エタノール、及びイソプロピルアルコール等を含んで構成されている。
【0084】
また、第1基材21への塗布液の塗布量については任意であるが、実施の形態では、茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mとなるように設定しており、例えば、塗布液の塗布量=0.8g/m程度に設定してもよい。
【0085】
(マスクの製造方法-第2形成工程)
次に、第2形成工程について説明する。第2形成工程は、第1形成工程の後に、マスク本体10を形成するための工程である。
【0086】
具体的には、まず、公知の加工装置等によって、外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25が、積層状に設けられると共に、第1基材21が、外側第2基材23と中間第2基材25との相互間に配置される。次に、公知の加工装置によって、上記配置された外側第2基材23、内側第2基材24、中間第2基材25、及び第1基材21にプリーツ加工を施すことにより、プリーツ部30が形成される。その後、公知の接着装置によって、外側第2基材23及び中間第2基材25が、超音波接着等によって相互に接続されると共に、中間第2基材25及び内側第2基材24が、超音波接着等によって相互に接続されることにより、マスク本体10が形成される。
【0087】
(マスクの製造方法-取付工程)
続いて、取付工程について説明する。取付工程は、第2形成工程の後に、ノーズフィッター部40及び耳側着脱部50をマスク本体10に取り付けるための工程である。
【0088】
具体的には、公知の取付装置によって、ノーズフィッター部40がマスク本体10(具体的には、外側第2基材23)に対して超音波接着等によって接続されることで、ノーズフィッター部40がマスク本体10に取り付けられる。また、公知の縫製装置によって、耳側着脱部50がマスク本体10に対して超音波接着等によって接続されることで、耳側着脱部50がマスク本体10に取り付けられる。
【0089】
このような製造方法により、マスク1を簡易に製造することができる。また、第1形成工程において茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mとなるように塗布液が第1基材21に塗布されることで抗ウイルス層22を形成できるので、マスク本体10が所望の抗ウイルス性を有することができ、マスク本体10の品質を確保することが可能となる。
【0090】
(試験結果)
次に、本件出願人が行った第1抗ウイルス性確認試験から第5抗ウイルス性確認試験の試験結果について説明する。
【0091】
(試験結果-第1抗ウイルス性確認試験の概要)
まず、第1抗ウイルス性確認試験の概要について説明する。ここで、「第1抗ウイルス性確認試験」とは、各試験体の鳥インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス性の有無を確認するための試験である。
【0092】
また、第1抗ウイルス性確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りに行った。すなわち、まず、0.2gの各試験体に対して鳥インフルエンザウイルスを含むウイルス液(具体的には、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で109.5EID50/0.2mlに調整されたウイルス液)を400μl塗布して、室温で10分間反応させた。次に、各試験体から抽出した反応液を抗生物質入りPBSでそれぞれ10倍階段希釈して、発育鶏卵漿尿膜内に0.2mlずつそれぞれ接種した後、2日間培養した。続いて、各発育鶏卵漿尿膜から尿膜腔液をそれぞれ回収し、HA試験を用いて当該回収した尿膜腔液におけるウイルスの増殖状況を検出した。そして、上記検出した結果をウイルス力価(lоg10EID50/0.2ml)として算出した(なお、図3では、複数回検出した結果に基づいて算出されたウイルス力価の平均値を示す)。
【0093】
また、第1抗ウイルス性確認試験に用いられた試験体については、試験体A1から試験体A5に分けられる。
【0094】
ここで、試験体A1は、茶殻が配合された茶香紙(具体的には、パルプ紙に対して茶殻が20%配合された茶香紙)である。また、試験体A2は、上記茶香紙に抗ウイルス層22(具体的には、茶葉抽出物質の塗布量が0.1g/mである抗ウイルス層22)が形成されたものである。また、試験体A3は、上記茶香紙に抗ウイルス層22(具体的には、茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mである抗ウイルス層22)が形成されたものである。また、試験体A4は、茶殻が配合された茶香紙(具体的には、紙材に対して茶殻が60%配合された茶香紙)である。また、試験体A5は、単なるパルプ紙である。
【0095】
(試験結果-第1抗ウイルス性確認試験の詳細)
次いで、第1抗ウイルス性確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0096】
図3に示すように、ウイルス力価については、試験体A1から試験体A4のウイルス力価は、試験体A5のウイルス力価に比べて低いことが確認された。特に、試験体A2及び試験体A3のウイルス力価は、試験体A1及び試験体A5のウイルス力価よりも低いことが確認された。
【0097】
また、抗ウイルス活性値(抗ウイルス性の有無の判定を行うための値であり、各試験体のウイルス力価から試験体A5のウイルス力価を差し引いた値)については、試験体A1及び試験体A4の抗ウイルス活性値は、基準値(≧2.0(ISO 18184で定められた基準値))を満たさないものの(図3では、「×」で示す)、試験体A2及び試験体A3の抗ウイルス活性値は、基準値を満たすことが確認された(図3では、「〇」で示す)。したがって、試験体A1及び試験体A4については、所望の抗ウイルス性を有しないことが確認され、試験体A2及び試験体A3については、所望の抗ウイルス性を有することが確認された。
【0098】
また、修正抗ウイルス活性値(抗ウイルス性の有無の判定を行うための値であり、試験体A2又は試験体A3の抗ウイルス活性値から試験体A1の抗ウイルス活性値を差し引いた値)については、試験体A2及び試験体A3の修正抗ウイルス活性値は、上記基準値を満たすことが確認された(図3では、「(〇)」で示す)。特に、試験体A3の修正抗ウイルス活性値は、ISO 18184で定められたより高い抗ウイルスを示す基準値(≧3.0。以下、「高基準値」と称する)も満たすことも確認された。したがって、試験体A2及び試験体A3の抗ウイルス層22については、所望の抗ウイルス性を有することが確認された。
【0099】
以上のことから、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量を0.1g/m以上にすることの有効性が確認された。また、抗ウイルス層22と第1基材21を茶香紙で形成することの組み合わせの有効性も確認された。
【0100】
(試験結果-第2抗ウイルス性確認試験の概要)
次に、第2抗ウイルス性確認試験の概要について説明する。ここで、「第2抗ウイルス性確認試験」とは、各試験体のコロナウイルス(デルタ株)に対する抗ウイルス性の有無を確認するための試験である。
【0101】
また、第2抗ウイルス性確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りに行った。すなわち、宿主細胞にコロナウイルスを感染させ、EMEMを加えて所定時間培養した後に、遠心分離装置で4℃及び1000×gで15分間遠心分離した上清をウイルス懸濁液とした。次に、上記ウイルス懸濁液を減菌蒸留水で10倍希釈し、1~5×10PFU/mlに調整したもの試験ウイルス懸濁液とした。次いで、0.4gの各試験体に試験ウイルス懸濁液を0.2ml接種した。次に、各試験体を25℃で2時間作用させた後に、洗い出し液が20ml加えられた各試験体をボックスミキサーで撹拌した。続いて、上記撹拌した各試験体からコロナウイルスを洗い出した後に、ブラーク測定方法によってウイルス力価を特定した(なお、図4では、複数回検出した結果に基づいて算出されたウイルス力価の平均値を示す)。
【0102】
また、第2抗ウイルス性確認試験に用いられた試験体については、試験体B1及び試験体B2に分けられる。
【0103】
ここで、試験体B1は、単なるパルプ紙である。また、試験体B2は、単なるパルプ紙に抗ウイルス層22(具体的には、茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mである抗ウイルス層22)が形成されたものである。
【0104】
(試験結果-第2抗ウイルス性確認試験の詳細)
次いで、第2抗ウイルス性確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0105】
図4に示すように、ウイルス力価については、試験体B2のウイルス力価は、試験体B1のウイルス力価に比べて低いことが確認された。
【0106】
また、抗ウイルス活性値(抗ウイルス性の有無の判定を行うための値であり、各試験体のウイルス力価から試験体B1のウイルス力価を差し引いた値)については、試験体B2の抗ウイルス活性値は、上記基準値を満たすことが確認されると共に(図4では、「〇」で示す)、上記高基準値も満たすことが確認された。したがって、試験体B2については、所望の抗ウイルス性を有することが確認された。
【0107】
以上のことから、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量を0.2g/mにすることの有効性が確認された。
【0108】
(試験結果-第3抗ウイルス性確認試験の概要)
次に、第3抗ウイルス性確認試験の概要について説明する。ここで、「第3抗ウイルス性確認試験」とは、各試験体のインフルエンザウイルス(A型)に対する抗ウイルス性の有無を確認するための試験である。
【0109】
また、第3抗ウイルス性確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りに行った。すなわち、まず、400mgの各試験体と、10%イーグル培地含有水を用いて調整したインフルエンザウイルス溶液を0.2mlとを遠沈管に収容して、37℃及び5%CO2下で2時間静置した。次に、20mlのSCDLP培地を用いて遠沈管からインフルエンザウイルス溶液を抽出し、当該抽出したインフルエンザウイルス溶液を用いて10倍段階希釈系を作成した。次いで、上記10倍段階希釈系を宿主細胞に1ml滴下し、37℃及び5%CO2下で1時間感染処理を行った。次に、上記感染処理された細胞上清を0.8%オキソイド寒天溶液に置換し、37℃及び5%CO2下で1-2日間培養した。次いで、ブラークの形成を目視で確認した後に、上記培養したものを5%のグルタルアルデヒド溶液で固定してメチレンブルー染色を行った。そして、上記形成されたブラーク数の測定データに基づいて、ウイルス力価を特定した。
【0110】
また、第3抗ウイルス性確認試験に用いられた試験体については、試験体C1から試験体C3に分けられる。
【0111】
ここで、試験体C1は、茶香紙(具体的には、パルプ紙に対して茶殻が20%配合された茶香紙)である。また、試験体C2は、単なるパルプ紙に抗ウイルス層22(具体的には、茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mである抗ウイルス層22)が形成されたものである。また、試験体C3は、単なる不織布材に抗ウイルス層22(具体的には、茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mである抗ウイルス層22)が形成されたものである。
【0112】
(試験結果-第3抗ウイルス性確認試験の詳細)
次いで、第3抗ウイルス性確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0113】
図5に示すように、ウイルス力価については、試験体C2及び試験体C3のウイルス力価は、試験体C1のウイルス力価に比べて低いことが確認された。
【0114】
また、抗ウイルス活性値(抗ウイルス性の有無の判定を行うための値であり、各試験体のウイルス力価から試験体C1のウイルス力価を差し引いた値)については、試験体C2及び試験体C3の抗ウイルス活性値は、上記基準値を満たすことが確認された(図5では、「〇」で示す)。したがって、試験体C2及び試験体C3については、所望の抗ウイルス性を有することが確認された。
【0115】
以上のことから、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量を0.2g/mにすることの有効性が確認された。
【0116】
(試験結果-第4抗ウイルス性確認試験の概要)
次に、第4抗ウイルス性確認試験の概要について説明する。ここで、「第4抗ウイルス性確認試験」とは、第2抗ウイルス性確認試験と同様に、各試験体のコロナウイルス(デルタ株)に対する抗ウイルス性の有無を確認するための試験である。
【0117】
また、第4抗ウイルス性確認試験の試験方法については任意であるが、第2抗ウイルス性確認試験の試験方法と同様に行った。
【0118】
また、第4抗ウイルス性確認試験に用いられた試験体については、試験体D1及び試験体D2に分けられる。
【0119】
ここで、試験体D1は、単なるパルプ紙である。また、試験体D2は、単なるパルプ紙に抗ウイルス層22(具体的には、茶葉抽出物質の塗布量が0.4g/mである抗ウイルス層22)が形成されたものである。
【0120】
(試験結果-第4抗ウイルス性確認試験の詳細)
次いで、第4抗ウイルス性確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0121】
図6に示すように、ウイルス力価については、試験体D2のウイルス力価は、試験体D1のウイルス力価に比べて低いことが確認された。
【0122】
また、抗ウイルス活性値(抗ウイルス性の有無の判定を行うための値であり、各試験体のウイルス力価から試験体D1のウイルス力価を差し引いた値)については、試験体D2の抗ウイルス活性値は、上記基準値を満たすことが確認されると共に(図6では、「〇」で示す)、上記高基準値も満たすことが確認された。したがって、試験体D2については、所望の抗ウイルス性を有することが確認された。
【0123】
以上のことから、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量を0.4g/mにすることの有効性が確認された。
【0124】
(試験結果-第5抗ウイルス性確認試験の概要)
続いて、第5抗ウイルス性確認試験の概要について説明する。ここで、「第5抗ウイルス性確認試験」とは、各試験体のコロナウイルス(オミクロン株)に対する抗ウイルス性の有無を確認するための試験である。
【0125】
また、第5抗ウイルス性確認試験の試験方法については任意であるが、第2抗ウイルス性確認試験の試験方法と同様に行った。
【0126】
また、第5抗ウイルス性確認試験に用いられた試験体については、試験体E1及び試験体E2に分けられる。
【0127】
ここで、試験体E1は、単なるパルプ紙である。また、試験体E2は、単なるパルプ紙に抗ウイルス層22(具体的には、茶葉抽出物質の塗布量が0.2g/mである抗ウイルス層22)が形成されたものである。
【0128】
(試験結果-第5抗ウイルス性確認試験の詳細)
次いで、第5抗ウイルス性確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0129】
図7に示すように、ウイルス力価については、試験体E2のウイルス力価は、試験体E1のウイルス力価に比べて低いことが確認された。
【0130】
また、抗ウイルス活性値(抗ウイルス性の有無の判定を行うための値であり、各試験体のウイルス力価から試験体E1のウイルス力価を差し引いた値)については、試験体E2の抗ウイルス活性値は、上記基準値を満たすことが確認されると共に(図7では、「〇」で示す)、上記高基準値も満たすことが確認された。したがって、試験体E2については、所望の抗ウイルス性を有することが確認された。
【0131】
以上のことから、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量を0.2g/mにすることの有効性が確認された。
【0132】
(効果)
このように実施の形態によれば、抗ウイルス性基材20が、茶葉から抽出される茶葉抽出物質が第1基材21に塗布されて形成される抗ウイルス層22を備え、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量を、0.1g/m以上としたので、所望の抗ウイルス性を有することができ、抗ウイルス性基材20の品質(具体的には、抗ウイルス性に関する品質)を確保することが可能となる。
【0133】
また、抗ウイルス層22における茶葉抽出物質の塗布量を、0.2g/m以上としたので、比較的高い抗ウイルス性を有することができ、抗ウイルス性基材の品質を一層確保することが可能となる。
【0134】
また、茶葉抽出物質が、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含むので、所望の抗ウイルス性を確実に有することができ、抗ウイルス性基材20の品質を確保しやすくなる。
【0135】
また、複数の第2基材を、積層状に設け、第1基材21が外部から露出しないように、当該第1基材21を第2基材同士間に設けたので、第1基材21が外部から露出することを回避でき、第1基材21によって抗ウイルス性基材20の意匠性が低下することを防止できると共に、第1基材の保護性を高めることができる。
【0136】
また、複数の第2基材のうち、第1基材21よりも積層方向の一方側に位置する第2基材の少なくともいずれか1つの目の大きさを、第1基材21よりも積層方向の他方側に位置する第2基材の目の大きさよりも小さくしたので、複数の第2基材の目の大きさをすべて同じにした場合に比べて、異物又は/及びウイルスが通過しにくいことから、フィルタ機能を高めることができる。
【0137】
また、マスク1が、抗ウイルス性基材20からなるマスク本体10を備えるので、抗ウイルス性基材20の品質によってマスク本体10の品質を確保することができ、マスク1の製造性を高めることが可能となる。
【0138】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0139】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0140】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0141】
(抗ウイルス性基材の適用対象について)
上記実施の形態では、抗ウイルス性基材20がマスク1(具体的には、マスク本体10)に適用されると説明したが、これに限らず、例えば、マスク1以外の紙製品又は/及び布製品に適用されてもよい。この場合には、第1基材21又は/及び第2基材は、紙材(一例として、包装用紙材、印刷用紙材、緩衝材用紙材、紙容器用紙材等)又は/及び布材(一例として、織布材、不織布材、編布材等)にて形成されてもよい。
【0142】
(マスクについて)
上記実施の形態では、マスク1が、プリーツ部30及びノーズフィッター部40を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、プリーツ部30又は/及びノーズフィッター部40を省略してもよい。
【0143】
(抗ウイルス性基材について)
上記実施の形態では、抗ウイルス性基材20が、複数の第2基材(外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25)を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、複数の第2基材に加えて、別の第2基材をさらに備えてもよい。あるいは、複数の第2基材の少なくともいずれか1つを省略してもよい。一例として、中間第2基材25を省略してもよく、又は、外側第2基材23、内側第2基材24、及び中間第2基材25を省略してもよい。
【0144】
(第1基材について)
上記実施の形態では、第1基材21が外部から露出しないように、当該第1基材21が第2基材同士間に設けられていると説明したが、これに限らない。例えば、第1基材21が外部から露出するように設けられてもよい。
【0145】
(抗ウイルス層について)
上記実施の形態では、抗ウイルス層22は、茶葉抽出物質が第1基材21の略全体に塗布されることで形成されていると説明したが、これに限らず、例えば、茶葉抽出物質が第1基材21の一部のみ(例えば、第1基材21の端部以外の部分)に塗布されることで形成されてもよい。
【0146】
(第2基材について)
上記実施の形態では、複数の第2基材のうち、第1基材21よりも積層方向の一方側に位置する中間第2基材25の目の大きさが、第1基材21よりも積層方向の他方側に位置する外側第2基材23の目の大きさよりも小さく設定されていると説明したが、これに限らない。例えば、第1基材21よりも積層方向の一方側に位置する内側第2基材24及び中間第2基材25の各々の目の大きさが、外側第2基材23の目の大きさよりも小さく設定されてもよい。あるいは、複数の第2基材のすべての目の大きさが、略同一に設定されてもよい。
【0147】
(付記)
付記1の抗ウイルス性基材は、抗ウイルス性を有する抗ウイルス性基材であって、紙材又は布材にて構成された第1基材と、茶葉から抽出される茶葉抽出物質が前記第1基材に塗布されて形成される抗ウイルス層と、を備え、前記抗ウイルス層における前記茶葉抽出物質の塗布量を、0.1g/m以上とした。
【0148】
付記2の抗ウイルス性基材は、付記1に記載の抗ウイルス性基材において、前記抗ウイルス層における前記茶葉抽出物質の塗布量を、0.2g/m以上とした。
【0149】
付記3の抗ウイルス性基材は、付記1又は2に記載の抗ウイルス性基材において、前記茶葉抽出物質は、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含む。
【0150】
付記4の抗ウイルス性基材は、付記1から3のいずれか一項に記載の抗ウイルス性基材において、紙材又は/及び布材にて構成された複数の第2基材であり、前記抗ウイルス層が設けられていない複数の第2基材を備え、前記複数の第2基材を、積層状に設け、前記第1基材が外部から露出しないように、当該第1基材を前記第2基材同士間に設けた。
【0151】
付記5の抗ウイルス性基材は、付記4に記載の抗ウイルス性基材において、前記複数の第2基材のうち、前記第1基材よりも積層方向の一方側に位置する前記第2基材の少なくともいずれか1つの目の大きさを、前記第1基材よりも積層方向の他方側に位置する前記第2基材の目の大きさよりも小さくした。
【0152】
付記6のマスクは、付記1から5のいずれか一項の抗ウイルス性基材からなるマスク本体を備える。
【0153】
(付記の効果)
付記1に記載の抗ウイルス性基材によれば、茶葉から抽出される茶葉抽出物質が第1基材に塗布されて形成される抗ウイルス層を備え、抗ウイルス層における茶葉抽出物質の塗布量を、0.1g/m以上としたので、所望の抗ウイルス性を有することができ、抗ウイルス性基材の品質(具体的には、抗ウイルス性に関する品質)を確保することが可能となる。
【0154】
付記2に記載の抗ウイルス性基材によれば、抗ウイルス層における茶葉抽出物質の塗布量を、0.2g/m以上としたので、比較的高い抗ウイルス性を有することができ、抗ウイルス性基材の品質を一層確保することが可能となる。
【0155】
付記3に記載の抗ウイルス性基材によれば、茶葉抽出物質が、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、テアフラビン、テアフラビン-3-O-ガレート、テアフラビン-3’-O-ガレート、及びテアフラビン-3、3’-ジガレートを含むので、所望の抗ウイルス性を確実に有することができ、抗ウイルス性基材の品質を確保しやすくなる。
【0156】
付記4に記載の抗ウイルス性基材によれば、複数の第2基材を、積層状に設け、第1基材が外部から露出しないように、当該第1基材を第2基材同士間に設けたので、第1基材が外部から露出することを回避でき、第1基材によって抗ウイルス性基材の意匠性が低下することを防止できると共に、第1基材の保護性を高めることができる。
【0157】
付記5に記載の抗ウイルス性基材によれば、複数の第2基材のうち、第1基材よりも積層方向の一方側に位置する第2基材の少なくともいずれか1つの目の大きさを、第1基材よりも積層方向の他方側に位置する第2基材の目の大きさよりも小さくしたので、複数の第2基材の目の大きさをすべて同じにした場合に比べて、異物又は/及びウイルスが通過しにくいことから、フィルタ機能を高めることができる。
【0158】
付記6に記載のマスクによれば、付記1から5のいずれか一項の抗ウイルス性基材からなるマスク本体を備えるので、抗ウイルス性基材の品質によってマスク本体の品質を確保することができ、マスクの製造性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0159】
1 マスク
10 マスク本体
11 マスク内面
12 マスク外面
20 抗ウイルス性基材
21 第1基材
22 抗ウイルス層
23 外側第2基材
24 内側第2基材
25 中間第2基材
30 プリーツ部
40 ノーズフィッター部
50 耳側着脱部
51 第1耳側着脱部
52 第2耳側着脱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7