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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090758
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】浄水フィルター
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20230622BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20230622BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20230622BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C02F1/28 D
C02F1/28 G
D04H3/14
D04H3/147
D04H3/16
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068176
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2018230936の分割
【原出願日】2018-12-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 浄水フィルターをサンプル送付したことによる公開 公開日:平成30年4月11日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F) 浄水フィルターの情報をメール送信したことによる公開 公開日:平成30年5月8日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F) 浄水フィルターをサンプル送付したことによる公開 公開日:平成30年5月9日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F) 浄水フィルターをサンプル提供したことによる公開 公開日:平成30年5月15日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F) 浄水フィルターをサンプル送付したことによる公開 公開日:平成30年6月11日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F) 浄水フィルターをサンプル提供したことによる公開 公開日:平成30年6月28日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F) 浄水フィルターをサンプル送付したことによる公開 公開日:平成30年8月9日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F) 浄水フィルターをサンプル送付したことによる公開 公開日:平成30年9月3日 公開場所:クリタック株式会社(東京都中野区本町2丁目46番1号 中野坂上サンブライトツインビル11F)
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河内 昭典
(72)【発明者】
【氏名】新谷 晃一
(72)【発明者】
【氏名】菊川 恵理子
(57)【要約】
【課題】 薄型の浄水フィルターを効率的に製造することが可能であり、取扱い性に優れた薄型の浄水フィルターの提供を主な課題とする。
【解決手段】 繊維状活性炭及び粒状活性炭を含む活性炭成型体と、前記活性炭成型体を内包する不織布と、を備え、厚さが1~20mmである、平板状の浄水フィルターであって、前記不織布が、前記浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している、浄水フィルター。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状活性炭及び粒状活性炭を含む活性炭成型体と、
前記活性炭成型体を内包する不織布と、を備え、
厚さが1~20mmである、平板状の浄水フィルターであって、
前記不織布が、前記浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している、浄水フィルター。
【請求項2】
繊維状活性炭を含む活性炭成型体と、
前記活性炭成型体を内包する不織布と、を備え、
厚さが1~20mmである、平板状の浄水フィルターであって、
前記活性炭成型体が、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されており、
前記活性炭成型体を、前記シートの長手方向が前記浄水フィルターの厚さ方向に対して垂直な方向となるように備え、
前記不織布が、前記浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している、浄水フィルター。
【請求項3】
前記不織布が連続繊維で構成された不織布である、請求項1又は2に記載の浄水フィルター。
【請求項4】
前記連続繊維同士が熱エンボス加工により部分的に圧着されている、請求項3に記載の浄水フィルター。
【請求項5】
前記連続繊維が、芯鞘型複合繊維であって、該芯鞘型複合繊維の鞘部の融点が芯部の融点より低い、請求項3又は4に記載の浄水フィルター。
【請求項6】
前記浄水フィルターの密度が0.1~0.5g/cmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄型の浄水フィルターが知られている。
【0003】
薄型の浄水フィルターとして、通水性のある紙或いは不織布等を濾材とし、この濾材の2枚を重ねた上下濾剤層の中空部に濾材の接着部分を除いて粉末又は顆粒の活性炭等の吸着材層を形成させ、濾材・吸着材・濾材の3層シート状とし、両濾材の周辺部分、もしくは周辺部分以外にさらに必要に応じて設けた区画線部分を接着してなる使い捨て浄水用フィルターが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-77689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された浄水用フィルターを製造する場合、次のような製造方法が考えられる。
(1)粉末又は顆粒の活性炭を準備する工程。
(2)粉末又は顆粒の活性炭を挿入するための開口部を有する、通水性のある紙或いは不織布等からなる袋体を準備する工程。
(3)前記袋体の開口部から粉末又は顆粒の活性炭を挿入する工程。
(4)前記袋体の開口部を閉じる工程。
(5)必要に応じて区画線部分を接着する工程
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記製造方法では、袋体の開口部から粉末又は顆粒の活性炭を挿入するのが困難であり作業効率に劣ることが判明した。また、得られた浄水フィルターは、区画線部分を設けたとしても、粉末又は顆粒の活性炭の袋体内での偏りが生じ、これに起因して浄化する水が流れ易い部分と流れにくい部分とができて、効率的な浄水が困難となり、取扱い性に劣る場合があることを知得した。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、薄型の浄水フィルターを効率的に製造することが可能であり、取扱い性に優れた薄型の浄水フィルターの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、まず、特許文献1の浄水フィルターにおいて吸着材層として、粉末又は顆粒の活性炭を結合材により固化した多孔質成形体、所謂カーボンブロックとすることを想起した。そして、具体的に、柱状のカーボンブロックを所定の薄い厚さとなるようにスライスし、該スライスしたカーボンブロックを内包するように両面から不織布で挟み、両面の不織布を浄水フィルターの周辺部となる位置において熱プレスして接着する方法を想起し、これにより作業効率の向上及び取扱い性に優れるものとすることができると期待した。
【0009】
しかしながら、本発明者が上記方法をおこなったところ、カーボンブロックは、スライスする際、不織布で挟み込む際又はボード状にカーボンを成型してこれを所定の形状とするために打ち抜き加工する際に、カーボンブロックの端面において割れや欠けが発生し、浄水フィルターを効率的に生産することが困難となる場合があることが判明した。また、スライスしたカーボンブロックを両面から不織布で挟み、該不織布同士を、浄水フィルターの周辺部となる位置において熱プレスして接着する際にも、やはりスライスしたカーボンブラックに割れ、欠けが生じ、不織布から炭塵が漏出しやすくなる場合があることが判明した。
【0010】
一方、本発明者は、活性炭として繊維状活性炭を用い、所定の厚さとなるように湿式抄紙した活性炭繊維シートを、面方向から所定の形状となるように打ち抜き加工した活性炭成型体を準備し、これを両面から不織布で挟み、両面の不織布を浄水フィルターの周辺部となる位置において熱プレスして接着する方法もおこなった。しかしながら、本発明者は、該方法では、得られる浄水フィルターが、厚さが薄いこともあり、柔らかすぎて取扱い性に劣り、例えばボトル型浄水器等、持ち運び可能な小型の携帯型浄水器等に浄水フィルターを装着しにくくなる場合があることを知得した。具体的には、濾過する水のショートパス等を防ぐべく、浄水フィルターを、浄水フィルターの側面に沿ってゴムやシリコーン樹脂製のシーリング材(例えば、ガスケット、パッキン等が挙げられる。)に嵌め込んで装着させる場合がある。しかしながら、上記湿式抄紙した活性炭繊維シートは、ゴムやシリコーン樹脂製のシーリング材に嵌め込むことが困難であり、小型の携帯型浄水器等に装着することが困難であった。
【0011】
そこで、本発明者が鋭意検討し、活性炭成型体を、繊維状活性炭及び粒状活性炭を含む活性炭成型体、又は、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されており、前記活性炭成型体を、前記シートの長手方向が前記浄水フィルターの厚さ方向に対して垂直な方向となるように備えるようにすることによって、活性炭成型体の硬度を調整することができること、そして、活性炭成型体の硬度を調整することによって、薄型の浄水フィルターを効率的に製造することができ、かつ、取扱い性に優れるものとすることが可能となることを突き止めた。本発明は、かかる知見に基づき、鋭意検討を重ねることにより完成された発明である。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.繊維状活性炭及び粒状活性炭を含む活性炭成型体と、前記活性炭成型体を内包する不織布と、を備え、厚さが1~20mmである、平板状の浄水フィルターであって、前記不織布が、前記浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している、浄水フィルター。
項2.繊維状活性炭を含む活性炭成型体と、前記活性炭成型体を内包する不織布と、を備え、厚さが1~20mmである、平板状の浄水フィルターであって、前記活性炭成型体が、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されており、前記活性炭成型体を、前記シートの長手方向が前記浄水フィルターの厚さ方向に対して垂直な方向となるように備え、前記不織布が、前記浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している、浄水フィルター。
項3.前記不織布が連続繊維で構成された不織布である、項1又は2に記載の浄水フィルター。
項4.前記連続繊維同士が熱エンボス加工により部分的に圧着されている、項3に記載の浄水フィルター。
項5.前記連続繊維が、芯鞘型複合繊維であって、該芯鞘型複合繊維の鞘部の融点が芯部の融点より低い、項3又は4に記載の浄水フィルター。
項6.前記浄水フィルターの密度が0.1~0.5g/cmである、項1~5のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浄水フィルターによれば、薄型の浄水フィルターを効率的に製造することが可能であり、取扱い性にも優れる。従って、例えばボトル型浄水器等、持ち運び可能な小型の携帯型浄水器用の浄水フィルターとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の浄水フィルターの一例を説明する模式的断面図である。
図2】本発明の浄水フィルターの活性炭成型体の一例を説明する模式的斜視図である。
図3】本発明の浄水フィルターの活性炭成型体を湿式成型する際に用いる型枠の一例を説明する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係る浄水フィルター(以下、「第1実施形態の浄水フィルター」と略することがある。)は、繊維状活性炭及び粒状活性炭を含む活性炭成型体と、前記活性炭成型体を内包する不織布と、を備え、厚さが1~20mmである、平板状の浄水フィルターであって、前記不織布が、前記浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している。また、本発明の第2実施形態に係る浄水フィルター(以下、「第2実施形態の浄水フィルター」と略することがある。)は、繊維状活性炭を含む活性炭成型体と、前記活性炭成型体を内包する不織布と、を備え、厚さが1~20mmである、平板状の浄水フィルターであって、前記活性炭成型体が、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されており、前記活性炭成型体を、前記シートの長手方向が前記浄水フィルターの厚さ方向に対して垂直な方向となるように備え、前記不織布が、前記浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している。以下、まず、第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体、第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体、について詳述する。
【0016】
<第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体>
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、繊維状活性炭及び粒状活性炭を含む。第1実施形態の浄水フィルターは、繊維状活性炭と、粒状活性炭と、を含む活性炭成型体とすることで、活性炭成型体の硬度を調整することができ、これにより効率的に薄型の浄水フィルターを製造でき、取扱い性に優れるものとすることができる。
【0017】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、繊維状活性炭の比表面積としては、特に制限されないが、例えば、700~3000m/gが挙げられ、薄型の浄水フィルターとするときの強度と遊離残留塩素の除去性能とをより両立させる観点から、700~1500m/gが好ましく挙げられる。なお、本発明において、比表面積は、窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値である。また、繊維状活性炭の平均繊維径としては、特に制限されないが、例えば、5~30μmが挙げられる。なお、繊維状活性炭の平均繊維径は、JIS K 1477:2007 7.3.1に準じ、反射顕微鏡によって測定及び算出をする。
【0018】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、繊維状活性炭は、浄水フィルターに抗菌性能を付与する観点から、銀を担持した繊維状活性炭とすることができる。
【0019】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、粒状活性炭の比表面積としては、特に制限されないが、例えば、700~3000m/gが挙げられ、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度の平均値、及び活性炭成型体の側面の硬度の平均値をより高いものとすることと、遊離残留塩素の除去性能とをより両立させる観点から、800~2000m/gがより好ましく挙げられる。また、粒状活性炭の平均粒子径としては、20~500μmが挙げられる。なお、粒状活性炭の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製の商品名LA-920)を用いて測定された、粒状活性炭の粒度分布における積算体積値が50%になる粒度をいう。
【0020】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、粒状活性炭は、浄水フィルターに抗菌性能を付与する観点から、銀を担持した粒状活性炭とすることができる。
【0021】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、活性炭成型体中の繊維状活性炭の含有割合としては、例えば、15~60質量%が挙げられ、25~50質量%より好ましく挙げられる。また、粒状活性炭の含有割合としては、例えば40~85質量%が挙げられ、50~75質量%が好ましく挙げられる。また、活性炭成型体において、活性炭(繊維状活性炭及び粒状活性炭)の質量割合としては、70質量%以上が挙げられ、80質量%以上が好ましく挙げられる。当該質量割合の上限値は特に制限されないが、例えば、95質量%以下が挙げられ、90質量%以下が好ましく挙げられる。第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、繊維状活性炭と粒状活性炭の質量比(粒状活性炭/繊維状活性炭)としては、例えば、0.1~10が挙げられ、1~5が好ましく挙げられる。
【0022】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、繊維状活性炭及び粒状活性炭以外の、他の成分を含むことができる。当該他の成分として、例えば、イオン交換繊維、イオン交換樹脂、キレート繊維、キレート樹脂、ケイ酸チタニウム及びゼオライトからなる群より選ばれる1種以上の鉛除去成分が挙げられる。活性炭成型体において鉛除去成分を含有させる場合、その含有割合としては、例えば、1~20質量%、好ましくは2~10質量%が挙げられる。
【0023】
また、上記他の成分として、パルプが挙げられる。パルプを含有することにより、活性炭成型体の強度をより高めることができ、活性炭成型体の割れ、欠けをより低減させ、浄水フィルターとしたときの取扱い性をより高めることができる。該パルプとして、具体的には、セルロース系パルプ、アクリル系パルプ、ポリエチレン系パルプ等が挙げられる。中でも、パルプの融点が、後述する、活性炭成型体を内包する不織布の融着成分よりも高いことが好ましい。これにより、後述する、活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程において、不織布をヒートシールする際、活性炭成型体内でパルプが溶融せず、繊維状活性炭等活性炭の細孔構造を維持しやすくすることができる。好ましいパルプの融点としては、例えば、活性炭成型体を内包する不織布の融着成分よりも10℃以上高いことが好ましく、例えば、融点が130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上が挙げられる。なお、本発明において、融点を持たない場合は、軟化点を融点とする。また、本発明において、融点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とする。活性炭成型体においてパルプを含有させる場合、その含有割合としては、例えば、1~15質量%、好ましくは3~12質量%が挙げられる。
【0024】
また、第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、上記他の成分として、融点が150℃以下、好ましくは120℃以下の合成樹脂成分を含むことができる。中でも、該他の成分として芯鞘型複合繊維を含み、該芯鞘型複合繊維の鞘成分として融点が150℃以下、好ましくは120℃以下の合成樹脂成分を含むことが好ましく挙げられる。一方で、活性炭成型体は、鉛除去成分以外の合成樹脂成分を含まないものとすることもできる。
【0025】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度の平均値としては、活性炭成型体の割れ、欠けの低減と、取扱い性の向上とをより両立させる観点から、30~70が好ましく、40~70がより好ましい。また、活性炭成型体の側面の硬度の平均値としては、活性炭成型体の割れ、欠けの低減と、取扱い性の向上とをより両立させる観点から、30~70が好ましく、40~70がより好ましい。
【0026】
なお、本発明において、硬度は、JIS S 6050に準じ、株式会社テクロック社製デュロメータ型式GS-701Nを用い、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度としては、活性炭成型体を中空の台座の真ん中に置き、上面の中心付近を3箇所測定し、その中央値を読み取り、活性炭成型体の側面の硬度としては、側面を3箇所測定し、その中央値を読み取る。
【0027】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体の厚さは、1~20mmが挙げられ、好ましくは1~10mmが挙げられる。該活性炭成型体の体積としては、3~30cmが挙げられ、5~20cmが好ましく挙げられる。該活性炭成型体の質量としては、0.1~10gが好ましく、1~5gがより好ましく挙げられる。該活性炭成型体の密度としては、活性炭成型体の割れ、欠けの低減と、取扱い性の向上とをより両立させる観点から、0.2~0.5g/cmが好ましく、0.3~0.5g/cmがより好ましく挙げられる。
【0028】
第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体の形態としては、特に制限されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)繊維状活性炭と、粒状活性炭とを含むスラリーを調製し、該スラリーを、例えば図3に示す多数の吸引用小孔6を有する成型用の型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥する方法(湿式成型法又はスラリー吸引法)により製造される活性炭成型体(以下、「スラリー吸引成型体」と略することがある。)。この場合、得られる活性炭成型体は、繊維状活性炭と、粒状活性炭が、前述したパルプによって絡み合って形状保持されるものが挙げられる。
(2)繊維状活性炭と、粒状活性炭とを含む不織布。当該不織布の形態としては、乾式不織布又は湿式不織布が挙げられる。乾式不織布としては、例えば、エアレイド又はカード法(カードウェブ法)により得られる短繊維構造体による不織布、及び当該不織布にニードルパンチ加工を施して積層一体化したニードルパンチ不織布が挙げられる。湿式不織布としては、繊維状炭素材料を含む溶液を、パルパー、ビーター、リファイナーなどの装置を用いて混合、せん断し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーをワイヤー上に流し、脱水、乾燥して得られる、湿式抄紙不織布が挙げられる。なお、乾式不織布の場合、粒状活性炭は公知の手法で含有させることができ、例えば、2枚の乾式不織布を準備し、当該2枚の乾式不織布で粒状活性炭を挟み込む方法等が挙げられる。
【0029】
<第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体>
第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、繊維状活性炭を含み、活性炭成型体が、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されており、前記活性炭成型体は、前記シートの長手方向が前記浄水フィルターの厚さ方向に対して垂直な方向となるように備えられている。
【0030】
図2は、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されている、第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体の一例を説明する模式的斜視図である。図2において、活性炭成型体2は、繊維状活性炭を含むシート23が渦巻状に捲回された状態で成型されており、該活性炭成型体2は、シート23の長手方向が浄水フィルター23の厚さ方向に対して垂直な方向となるように配置される。図2において、活性炭成型体2は、シート23の表面又は裏面が活性炭成型体2の側面21を形成し、シート23の長手方向端部(耳)が渦巻状に並んで活性炭成型体2の上面22及び下面(図示しない。)を形成している。図2に示す活性炭成型体において、上面22から下面へ向かう方向及び下面から上面22へ向かう方向が活性炭成型体の厚さ方向である。浄化する水は、活性炭成型体2の厚さ方向に通水されることが好ましい。また、図2に示すように、活性炭成型体2は、厚さ方向に連通する中空部、及び他の部材による中芯、を有さないことが好ましい。このように、シート23の長手方向端部が複数層並んで活性炭成型体2の上面22及び下面を形成することにより、上面22及び下面の硬度を調整することができる。また、シート23を、張力をかけた状態で捲回することにより、活性炭成型体2を側面21から中心へ向かう方向に圧縮し、側面21の硬度を調整することができる。当該活性炭成型体の製造方法としては、繊維状活性炭を含むシート23を準備し、例えば樹脂製の細い巻芯に該シート23を捲回し、該巻芯を抜き、次いで巻芯を抜いたことにより形成される中空部を潰して該シート製の巻芯を製造しておく。そして、得られた該シート製の巻芯に、改めて繊維状活性炭を含むシート23を、張力をかけて捲回し、熱処理等により形態を固定し、必要に応じて活性炭成型体2が所定の厚さとなるように厚さ方向とは垂直な面方向にカットして、活性炭成型体2とする方法、が挙げられる。また、シートには、第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体の項で説明した、粒状活性炭、並びに/又は繊維状活性炭及び粒状活性炭以外の、他の成分を含むことができる。
【0031】
繊維状活性炭を含むシート23の形態としては、不織布とすることが好ましい。当該不織布としては、乾式不織布又は湿式不織布が挙げられる。乾式不織布としては、例えば、エアレイド又はカード法(カードウェブ法)により得られる短繊維構造体による不織布、及び当該不織布にニードルパンチ加工を施して積層一体化したニードルパンチ不織布が挙げられる。湿式不織布としては、繊維状炭素材料を含む溶液を、パルパー、ビーター、リファイナーなどの装置を用いて混合、せん断し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーをワイヤー上に流し、脱水、乾燥して得られる、湿式抄紙不織布が挙げられる。より具体的には、上記シートは、繊維状活性炭を含む不織布であって、該繊維状活性炭が、後述するパルプによって互いに絡み合って形状保持された状態、及び/又は、後述する合成樹脂成分によって互いに溶融接着されて形状保持された状態のものとすることが挙げられる。
【0032】
第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、繊維状活性炭の比表面積としては、特に制限されないが、例えば、700~3000m/gが挙げられ、薄型の浄水フィルターとするときの強度と遊離残留塩素の除去性能とをより両立させる観点から、700~1500m/gが好ましく挙げられる。また、繊維状活性炭の平均繊維径としては、特に制限されないが、例えば、5~30μmが挙げられる。
【0033】
第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体において、繊維状活性炭は、浄水フィルターに抗菌性能を付与する観点から、銀を担持した繊維状活性炭とすることができる。
【0034】
第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、粒状活性炭を含むことができる。粒状活性炭の比表面積としては、特に制限されないが、例えば、700~3000m/gが挙げられ、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度の平均値、及び活性炭成型体の側面の硬度の平均値をより高いものとすることと、遊離残留塩素の除去性能とをより両立させる観点から、800~2000m/gがより好ましく挙げられる。また、粒状活性炭の平均粒子径としては、20~500μmが挙げられる。粒状活性炭は、浄水フィルターに抗菌性能を付与する観点から、銀を担持した粒状活性炭とすることができる。また、第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、粒状活性炭を含まないものとすることもできる。
【0035】
第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、繊維状活性炭及び粒状活性炭以外の、他の成分を含むことができる。当該他の成分として、例えば、イオン交換繊維、イオン交換樹脂、キレート繊維、キレート樹脂、ケイ酸チタニウム及びゼオライトからなる群より選ばれる1種以上の鉛除去成分が挙げられる。活性炭成型体において鉛除去成分を含有させる場合、その含有割合としては、例えば、1~20質量%、好ましくは2~10質量%が挙げられる。
【0036】
また、上記他の成分として、パルプが挙げられる。パルプを含有することにより、活性炭成型体の強度をより高めることができ、活性炭成型体の割れ、欠けをより低減させ、浄水フィルターとしたときの取扱い性をより高めることができる。該パルプとして、具体的には、セルロース系パルプ、アクリル系パルプ、ポリエチレン系パルプ等が挙げられる。中でも、パルプの融点が、後述する、活性炭成型体を内包する不織布の融着成分よりも高いことが好ましい。好ましいパルプの融点としては、例えば、活性炭成型体を内包する不織布の融着成分よりも10℃以上高いことが好ましく、例えば、融点が130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上が挙げられる。なお、本発明において、融点を持たない場合は、軟化点を融点とする。また、本発明において、融点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とする。活性炭成型体においてパルプを含有させる場合、その含有割合としては、例えば、1~15質量%、好ましくは1~8質量%が挙げられる。
【0037】
また、第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体は、上記他の成分として、融点が150℃以下、好ましくは120℃以下の合成樹脂成分を含むことができる。中でも、鞘部が融点150℃以下、好ましくは120℃以下の合成樹脂成分により構成され、芯部が前記鞘部を構成する合成樹脂成分より融点が30℃以上高い合成樹脂により構成される、芯鞘型繊維とすることが好ましく挙げられる。融点が150℃以下、好ましくは120℃以下の合成樹脂成分を含む繊維を含む場合、第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体中の当該繊維の含有量としては、5~30質量%が挙げられ、8~25質量%がより好ましく挙げられる。
【0038】
第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度の平均値としては、活性炭成型体の割れ、欠けの低減と、取扱い性の向上とをより両立させる観点から、30~70が好ましく、40~70がより好ましい。また、活性炭成型体の側面の硬度の平均値としては、活性炭成型体の割れ、欠けの低減と、取扱い性の向上とをより両立させる観点から、30~70が好ましく、40~70がより好ましい。
【0039】
第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体の厚さは、1~20mmが挙げられ、好ましくは1~10mmが挙げられる。該活性炭成型体の体積としては、3~30cmが挙げられ、5~20cmが好ましく挙げられる。該活性炭成型体の質量としては、0.1~10gが好ましく、1~5gがより好ましく挙げられる。活性炭成型体の密度としては、活性炭成型体の割れ、欠けの低減と、取扱い性の向上とをより両立させる観点から、0.1~0.4g/cmが好ましく、0.1~0.25g/cmがより好ましく挙げられる。
【0040】
<不織布>
次に、第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターが共通して備える、不織布について詳述する。第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターにおいて、不織布は、浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され前記活性炭成型体を内包している。不織布で活性炭成型体を内包させることにより、活性炭成型体から発生する炭塵が浄水フィルター外部へ漏出することを防ぐことができる。
【0041】
第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体を内包する不織布の形態としては、特に制限されない。中でも、製造工程において不織布のシワの発生をより防ぎやすくしつつ、機械的強度に優れる観点から、連続繊維で構成された不織布であることが好ましい。連続繊維で構成された不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布又はフラッシュ紡糸不織布が挙げられ、中でも、スパンボンド不織布が好ましい。また、連続繊維で構成された不織布は、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化されたものとすることができる。これにより、上記シワの発生をより一層低減させることができる。
【0042】
連続繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、パルプ繊維等の有機繊維等を挙げることができる。
【0043】
上記連続繊維として、芯部と鞘部とからなり、鞘部の融点が芯部の融点より低い、芯鞘型複合繊維とすることが特に好ましい。連続繊維を上記芯鞘型複合繊維とすることにより、鞘部のみを適度に溶融でき不織布の接着性を向上させる。さらに、芯部を残したまま鞘部を溶融するので、繊維形状を極力維持して不織布の機械的強度を維持しやすくできる。
【0044】
上記芯鞘型複合繊維としては、特に制限されないが、鞘部の融点が芯部の融点よりも30℃以上低いものが挙げられる。例えば、芯部が融点150~280℃の合成樹脂、鞘部が融点80~160℃の合成樹脂であって、鞘部の融点が芯部の融点よりも30℃以上低い芯鞘型複合繊維が挙げられる。芯部及び鞘部の組み合わせの例としては、例えば、芯部がポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレン、鞘部が融点160℃以下の共重合ポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンである組み合わせが挙げられる。より具体的には、芯部が融点150~180℃のポリプロピレン、鞘部が融点100~140℃のポリエチレン(好ましくは密度が0.942g/cm以上の高密度ポリエチレン)である芯鞘型複合繊維、芯部が融点230~280℃のポリエチレンテレフタレート、鞘部が融点110~150℃のポリエチレン(好ましくは密度が0.942g/cm以上の高密度ポリエチレン)である芯鞘型複合繊維、又は、芯部が融点230~280℃のポリエチレンテレフタレート、鞘部が融点が芯部の融点よりも30℃以上低い共重合ポリエステル(好ましくはイソフタル酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート)が挙げられる。
【0045】
連続繊維の単糸繊度としては、特に制限されないが、例えば、1~20dtexが挙げられ、1~10dtexがより好ましく挙げられる。
【0046】
第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体を内包する不織布の質量(g/m)としては、不織布のシワの発生をより防ぎやすくしつつ、成形性により優れたものとする観点から、15~100g/mが好ましく、30~60g/mがより好ましい。また、第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体を内包する不織布の厚さとしては、不織布のシワの発生をより防ぎやすくしつつ、成形性により優れたものとする観点から、0.1~0.6mmが好ましく、0.1~0.4mmがより好ましい。
【0047】
第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターにおいて、不織布の引張強力(N/5cm)は、MD方向(機械方向)が10~800N/25mm、CD方向(MD方向と直交する方法)が5~500N/25mmが挙げられる。また、MD方向の引張強力とCD方向の引張強力との比(MD方向/CD方向)としては、1.2~3.0が挙げられ、1.5~2.5が好ましく挙げられる。また、不織布のシワの発生をより防ぎやすくしつつ、成形性により優れたものとする観点から、MD方向の引張強力は100~300N/5cm、CD方向の引張強力は50~200N/5cmが好ましい。なお、本発明において、不織布の引張強力は次のように測定、算出する。すなわち、JIS L 1913:2010 6.3に従い、東洋ボールドウイン社製テンシロンRTM-500型を用いて、幅50mm、長さ200mmの試験片を、把持間隔100mm、引張速度100mm/分の条件で測定し、試料10点の平均値を求め、引張強力とする。
【0048】
第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体を厚さ方向の両面から前記した不織布で覆う際は、1枚の不織布を折って覆ってもよいし、2枚の不織布を用いて覆ってもよい。
【0049】
本発明において、活性炭成型体を内包する不織布は、予め活性炭成型体の形状に合わせた窪み部を成形したものとすることができる。具体的には、例えば、活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を熱成形可能な温度に加熱しておき、コアとキャビティーの間に上記不織布をセットして、金型で不織布を熱成形することが挙げられる。そして、不織布の成形した窪み部に、所定の形状とした活性炭成型体をセットし、活性炭成型体において成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するように平面状の不織布を配して、活性炭成型体を覆うことができる。このようにすることで、余分な不織布をなるべく余すことなく活性炭成型体を内包することができ、不織布のシワよりの発生等を防ぎ易くすることができる。
【0050】
<浄水フィルター>
第1実施形態の浄水フィルター及び第2実施形態の浄水フィルターは、前述した不織布が、前述した第1実施形態の浄水フィルター又は第2実施形態の浄水フィルターの周辺部の少なくとも一部で接合され当該活性炭成型体を内包している。
【0051】
図1に示すように、本発明の浄水フィルター1は、繊維状活性炭を含む活性炭成型体2と、前記活性炭成型体を内包する不織布3と、を備え、厚さが1~20mmである。そして、不織布3が、浄水フィルター1の周辺部4の少なくとも一部、好ましくは全部で接合され活性炭成型体2を内包している。浄水フィルターの平面形状としては特に制限されないが、例えば、円形、楕円形、矩形、三角形、三日月状等が挙げられる。
【0052】
上記接合方法としては、特に制限されないが、浄水フィルター1の周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で、一方の不織布3の上から当該金型を上記周縁部4となる位置で熱プレスし、上部の不織布3と下部の不織布3を周縁部4でヒートシールさせる方法が好ましく挙げられる。なお、平面状の不織布3を2枚準備して、活性炭成型体2の上下から配置して活性炭成型体2を挟むように覆って、一方の不織布3の上から上記熱プレスすることもできる。
【0053】
本発明の浄水フィルターの好ましい浄水性能としては、JIS S 3201:2017に準じ、ろ過流量を0.1L/minとして測定される遊離残留塩素のろ過能力試験において、除去率が80%以下の値となるまでの総ろ過水量が200L以上であることが好ましく、250L以上であることがより好ましい。
【0054】
本発明の浄水フィルターの好ましい浄水性能としては、JIS S 3201:2017に準じ、ろ過流量を0.1L/minとして測定される2-MIBのろ過能力試験において、除去率が80%以下の値となるまでの総ろ過水量が100L以上であることが好ましく、150L以上であることがより好ましい。
【0055】
本発明の浄水フィルターの好ましい浄水性能としては、JIS S 3201:2017に準じ、ろ過流量を0.1L/minとして測定される溶解性鉛のろ過能力試験において、除去率が80%以下の値となるまでの総ろ過水量が100L以上であることが好ましく、150L以上であることがより好ましい。
【0056】
<本発明の浄水フィルターの製造方法>
次に、本発明の浄水フィルターの製造方法について説明する。
【0057】
本発明の浄水フィルターの製造方法は、活性炭成型体と、前記活性炭成型体を厚さ方向の両面から内包する不織布と、を備え、厚さが1~20mmである平板状の浄水フィルターの製造方法であって、前述した第1実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体又は前述した第2実施形態の浄水フィルターが備える活性炭成型体を準備する工程Aと、前記活性炭成型体を厚さ方向の両面から前記不織布で覆う工程Bと、前記活性炭成型体を厚さ方向の両面から前記不織布で覆った状態で、前記不織布を前記浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、前記不織布で前記活性炭成型体を内包させる工程Cと、を備える。また、本発明の製造方法は、工程(A)に次いで、準備した活性炭成型体を所定の形状となるようにカットする工程を備えてもよい。
【0058】
前述のように、本発明の浄水フィルターの製造方法において、工程(B)に先立って、活性炭成型体を内包する不織布に、当該活性炭成型体の形状に合わせた窪み部を成形しておくことが好ましい。具体的には、例えば、活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を熱成形可能な温度に加熱しておき、コアとキャビティーの間に上記不織布をセットして、金型で不織布を熱成形することが挙げられる。そして、不織布の成形した窪み部に、所定の形状とした活性炭成型体をセットし、活性炭成型体において成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するように不織布を配して、活性炭成型体を覆うことができる。このようにすることで、余分な不織布をなるべく余すことなく活性炭成型体を内包することができ、不織布のシワよりの発生等を防ぎ易くすることができる。
【0059】
本発明の浄水フィルターの製造方法は、必要に応じて、活性炭成型体を内包する不織布を、浄水フィルターの周縁部に沿った形状にカットする不織布カット工程を備えることができる。当該不織布カット工程と工程A~Cとの順序については、特に制限されない。・BR>\め工程Aの前、工程Bの前又は工程Cの前に、予め不織布カット工程を備えてもよいし、工程Cの後に備えてもよい。また、工程Cの前に、浄水フィルターの周縁部に沿った形状にカットされた不織布を準備する工程を備えることもできる。
【0060】
<浄水フィルターの用途>
本発明の浄水フィルターは、薄型であることから、例えば、ポット型浄水器、ボトル型やタンブラー型、ストロー型、バッグ型等、持ち運び可能な小型の携帯型浄水器用に好適である。ボトル型浄水器として、具体的には、濾過をおこなう原水を貯留する貯水部と、該貯水部の上方に着脱可能に備えられ、前記貯水部に貯められた原水を濾過する本発明の浄水フィルターと、該浄水フィルターの上方に着脱可能に備えられ、前記浄水フィルターを通過することにより濾過された原水が通過する貫通口を有する吸い口部と、を備えるボトル型浄水器であって、該ボトル型浄水器は、前記浄水フィルター及び前記吸い口部を取り外すことで原水が前記貯水部に貯められ、前記貯水部に原水を貯めた後、前記浄水フィルター及び吸い口部が貯水部にセットされ、ユーザーが飲用する際、前記原水が、前記浄水フィルターを通過することで濾過され、前記吸い口部を通して飲用に供される、ボトル型浄水器が挙げられる。
【実施例0061】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0062】
(実施例1)
1.活性炭成型体を準備する工程A
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維A(比表面積1070m/g、繊維径16μm)を15質量部、粒状活性炭として、ヤシ殻活性炭F(比表面積1000m/g、平均粒子径220μm)を70質量部、イオン交換繊維としてユニチカ株式会社製商品名「A-02CA」を5質量部、アクリル系パルプとして日本エクスラン工業株式会社製商品名「Bi-PUL」を10質量部、合計100質量部を、水中に分散してスラリーを調製し、図3に例示するような多数の吸引用小孔6を有する円形の成型用型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥して、スラリー吸引成型体である活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が54.3mm、厚さが4.3mm、質量が2.59g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が46、活性炭成型体の側面の硬度が62であった。
【0063】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0064】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
上記熱成型した不織布の窪み部に、活性炭成型体をセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0065】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、実施例1の浄水フィルターを得た。
【0066】
(実施例2)
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維A(比表面積1070m/g、繊維径16μm)を15質量部、粒状活性炭として、ヤシ殻活性炭G(比表面積1700m/g、平均粒子径420μm)を70質量部、イオン交換繊維としてユニチカ株式会社製商品名A-02CAを5質量部、アクリル系パルプとして日本エクスラン工業株式会社製商品名Bi-PULを10質量部、合計100質量部を、水中に分散してスラリーを調製し、図3に例示するような多数の吸引用小孔6を有する円形の成型用型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥して、スラリー吸引成型体である活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が46.3mm、厚さが4.3mm、質量が1.74g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が65、活性炭成型体の側面の硬度が64であった。
【0067】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0068】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B上記熱成型した不織布の窪み部に、活性炭成型体をセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0069】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、実施例2の浄水フィルターを得た。
【0070】
(実施例3)
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維A(比表面積1070m/g、繊維径16μm)を30質量部、粒状活性炭として、ヤシ殻活性炭G(比表面積1700m/g、平均粒子径420μm)を55質量部、イオン交換繊維としてユニチカ株式会社製商品名A-02CAを5質量部、アクリル系パルプとして日本エクスラン工業株式会社製商品名Bi-PULを10質量部、合計100質量部を、水中に分散してスラリーを調製し、図3に例示するような多数の吸引用小孔6を有する円形の成型用型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥して、スラリー吸引成型体である活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が46.3mm、厚さが4.3mm、質量が1.74g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が54、活性炭成型体の側面の硬度が53であった。
【0071】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0072】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
上記熱成型した不織布の窪み部に、活性炭成型体をセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0073】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、実施例3の浄水フィルターを得た。
【0074】
(実施例4)
1.活性炭成型体を準備する工程A
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維A(比表面積1070m/g、繊維径16μm)を15質量部、粒状活性炭として、ヤシ殻活性炭F(比表面積1000m/g、平均粒子径220μm)を70質量部、イオン交換繊維としてユニチカ株式会社製商品名A-02CAを5質量部、アクリル系パルプとして日本エクスラン工業株式会社製商品名Bi-PULを10質量部、合計100質量部を、水中に分散してスラリーを調製し、図3に例示するような多数の吸引用小孔6を有する円形の成型用型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥して、スラリー吸引成型体である活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が46.3mm、厚さが3.8mm、質量が2.61g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が51、活性炭成型体の側面の硬度が58であった。
【0075】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0076】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
上記熱成型した不織布の窪み部に、活性炭成型体をセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0077】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、実施例4の浄水フィルターを得た。
【0078】
(実施例5)
1.活性炭成型体を準備する工程A
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維C(比表面積1750m/g、繊維径13μm)を80質量部、芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維(ユニチカ社製;メルティ4080、繊維径12μm、繊維長5mm)を20質量部、合計100質量部を、開繊と混合によるカードウェブ法により、目付65g/m、厚さ4.0mmの活性炭繊維シート(乾式不織布)を作製した。この活性炭繊維シートを、樹脂製の細い巻芯に捲回し、該巻芯を抜き、次いで巻芯を抜いたことにより形成される中空部を潰して該シート製の巻芯を製造し、得られた該シート製の巻芯に、改めて上記シートを、張力をかけて捲回し、熱処理等により芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維の鞘部ポリエステルを溶融させて形態を固定し、円柱状の活性炭成型体を得た。当該活性炭成型体を側面から活性炭成型体の厚さが6.3mmとなるようにカットし、活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が24.3mm、厚さが6.3mm、質量が0.65g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が57、活性炭成型体の側面の硬度が66であった。また、当該活性炭成型体は、図2に例示するように、捲回されているシートの表面又は裏面が活性炭成型体の側面を形成し、シートの長手方向端部が渦巻状に並んで活性炭成型体の上面及び下面を形成しているものであった。
【0079】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0080】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
準備した活性炭成型体を、上記熱成型した不織布の窪み部に、該活性炭成型体を構成するシートの長手方向が浄水フィルターの厚さ方向に対して垂直な方向となるようにセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0081】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、実施例5の浄水フィルターを得た。
【0082】
(実施例6)
1.活性炭成型体を準備する工程A
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維B(比表面積1710m/g、繊維径16μm)を80質量部、芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維(ユニチカ社製;メルティ4080、繊維径12μm、繊維長5mm)を20質量部、合計100質量部を、開繊と混合によるカードウェブ法により、目付65g/m、厚さ4.5mmの活性炭繊維シート(乾式不織布)を作製した。この活性炭繊維シートを、樹脂製の細い巻芯に捲回し、該巻芯を抜き、次いで巻芯を抜いたことにより形成される中空部を潰して該シート製の巻芯を製造し、得られた該シート製の巻芯に、改めて上記シートを、張力をかけて捲回し、熱処理等により芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維の鞘部ポリエステルを溶融させて形態を固定し、円柱状の活性炭成型体を得た。当該活性炭成型体を側面から活性炭成型体の厚さが5.3mmとなるようにカットし、活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が81.3mm、厚さが5.3mm、質量が3.27g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が56、活性炭成型体の側面の硬度が27であった。また、当該活性炭成型体は、図2に例示するように、捲回されているシートの表面又は裏面が活性炭成型体の側面を形成し、シートの長手方向端部が渦巻状に並んで活性炭成型体の上面及び下面を形成しているものであった。
【0083】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0084】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
準備した活性炭成型体を、上記熱成型した不織布の窪み部に、該活性炭成型体を構成するシートの長手方向が浄水フィルターの厚さ方向に対して垂直な方向となるようにセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0085】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、実施例6の浄水フィルターを得た。
【0086】
(比較例1)
1.活性炭成型体を準備する工程A
粒状活性炭として、ヤシ殻活性炭E(比表面積1000m/g、平均粒子径110μm)を95質量部、アクリル系パルプとして日本エクスラン工業株式会社製商品名Bi-PULを5質量部、合計100質量部を、水中に分散してスラリーを調製し、図3に例示するような多数の吸引用小孔6を有する円形の成型用型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥して、スラリー吸引成型体である活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が69.3mm、厚さが11.3mm、質量が21.62g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が90、活性炭成型体の側面の硬度が88であった。
【0087】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0088】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
上記熱成型した不織布の窪み部に、活性炭成型体をセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0089】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、比較例1の浄水フィルターを得た。
【0090】
(比較例2)
1.活性炭成型体を準備する工程A
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維A(比表面積1070m/g、繊維径16μm)を95質量部、アクリル系パルプとして日本エクスラン工業株式会社製商品名Bi-PULを5質量部、合計100質量部を、水中に分散してスラリーを調製し、図3に例示するような多数の吸引用小孔6を有する円形の成型用型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥して、スラリー吸引成型体である活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が54.3mm、厚さが4.8mm、質量が1.43g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が39、活性炭成型体の側面の硬度が12であった。
【0091】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0092】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
上記熱成型した不織布の窪み部に、活性炭成型体をセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0093】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、比較例2の浄水フィルターを得た。
【0094】
(比較例3)
1.活性炭成型体を準備する工程A
繊維状活性炭として石炭ピッチ系活性炭繊維A(比表面積1070m/g、繊維径16μm)を85質量部、イオン交換繊維としてユニチカ株式会社製商品名A-02CAを10質量部、アクリル系パルプとして日本エクスラン工業株式会社製商品名Bi-PULを5質量部、合計100質量部を、水中に分散してスラリーを調製し、図3に例示するような多数の吸引用小孔6を有する円形の成型用型枠5に流し込み、吸引用小孔6を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥して、スラリー吸引成型体である活性炭成型体を得た。得られた活性炭成型体は、円盤状であり、外径が54.3mm、厚さが4.8mm、質量が1.99g、活性炭成型体の厚さ方向の上面及び下面の硬度が24、活性炭成型体の側面の硬度が0であった。
【0095】
2.活性炭成型体を内包する不織布の準備
活性炭成型体を内包する不織布として、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布である、ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0503WDO(質量50g/m、厚さ0.34mm、MD方向の引張強力が215N/25mm、CD方向の引張強力が100N/25mm)を2枚準備した。前記得られた活性炭成型体と略同形状のコアとキャビティーを有する金型を温度120℃に加熱しておき、上記2枚の不織布のうち1枚をコアとキャビティーの間にセットして、該不織布を熱成形し、活性炭成型体と同形状の窪み部を設けた。
【0096】
3.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆う工程B
上記熱成型した不織布の窪み部に、活性炭成型体をセットし、活性炭成型体から見て熱成形した不織布が配置される側とは反対側から活性炭成型体を内包するようにもう1枚の不織布を配して、活性炭成型体全体を2枚の不織布で覆った。
【0097】
4.活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C
熱成形した不織布側から、浄水フィルターの周縁部と略同形状の筒状の金型を有する熱プレス機で金型を上記周縁部4となる位置で温度240℃で熱プレスし、上部の熱成形した不織布と下部の不織布を該周縁部でヒートシールし、活性炭成型体を内包させた。そして、周縁部の幅が1~2mmとなるように、2枚の不織布を円形にカットして、比較例3の浄水フィルターを得た。
【0098】
<加工性の評価>
実施例1~6及び比較例1~3について、浄水フィルターを10点ずつ作成したときの、活性炭成型体を厚さ方向の両面から不織布で覆った状態で、不織布を浄水フィルターの周縁部となる位置で接合し、不織布で活性炭成型体を内包させる工程C、における、活性炭成型体の割れ、欠けについて評価した。以下の基準により評価をおこない、3点以上を合格とした。
◎:サンプル10点中、割れ、欠けが発生しなかった。
○:サンプル10点中、1~3点において割れ、欠けが発生した。
×:サンプル10点中、4点以上において割れ、欠けが発生した。
【0099】
<取扱い性の評価>
シリコーンゴム製であって、実施例1~6及び比較例1~3の浄水フィルターの外径と略同一の内径を有するガスケットを準備し、浄水フィルターを該ガスケットに嵌め込みやすさについて評価した。評価は、浄水フィルターに精通した10人のパネラーによりおこない、以下の評価基準によりおこなった。○以上を合格とした。
◎:パネラー10人中10人が、実用上問題無いと判断した。
○:パネラー10人中6~9人が、実用上問題無い判断した。
×:パネラー10人中6人未満が、実用上問題無いと判断した。
【0100】
<活性炭成型体の炭塵の発生程度の評価>
本発明の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体の炭塵が少ないと、不織布による活性炭成型体の内包の際、ヒートシール工程において、シール不良や外観不良に繋がるシール部分(浄水フィルター周辺部で不織布同士が接合される部分)への炭塵の噛み込みを低減できるため、好ましい。炭塵発生の程度の評価として、以下の基準により評価した。
◎:シール部への炭塵の噛み込みはない。
○:シール部への炭塵の噛み込みが少ない。(1~2箇所)
△:シール部への炭塵の噛み込みが多少(2箇所以上)あるが、シール部に問題はない。
【0101】
各評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
<浄水フィルターの浄水性能>
実施例4の浄水フィルターについて、JIS S 3201:2017に準じ、ろ過流量を0.1L/minとして測定される遊離残留塩素のろ過能力試験をおこなったところ、総ろ過水量が250Lの時点での除去率は95%であり、遊離残留塩素のろ過能力が20L以上であった。また、実施例4の浄水フィルターについて、JIS S 3201:2017に準じ、ろ過流量を0.1L/minとして測定される2-MIBのろ過能力試験をおこなったところ、総ろ過水量が150Lの時点での除去率は89%であり、2-MIBのろ過能力が150L以上であった。また、実施例4の浄水フィルターについて、JIS S 3201:2017に準じ、ろ過流量を0.1L/minとして測定される溶解性鉛のろ過能力試験をおこなったところ、総ろ過水量が150Lの時点での除去率は96%であり、溶解性鉛のろ過能力が150L以上であった。
図1
図2
図3