(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090775
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230622BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20230622BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069247
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2020560046の分割
【原出願日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2018232868
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 直希
(72)【発明者】
【氏名】松本 朋之
(72)【発明者】
【氏名】石井 亮
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 彩子
(57)【要約】
【課題】フッティングの形成が抑制され且つメッキ液耐性に優れたレジストパターン膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】酸解離性基を有する重合体(A)と、光酸発生剤(B)と、式(C2)に示す化合物(C2)および前記化合物(C2)の多量体から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)とを含有する、感光性樹脂組成物。
[式(C2)中、Zは、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子である。式(C2)中、R
32およびR
33は、それぞれ独立に2価の炭化水素基であり、R
34は、グリコールウリル環構造またはイソシアヌル環構造を示し、mは、1または0であり、qは、1~4の整数である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性基を有する重合体(A)と、
光酸発生剤(B)と、
式(C2)に示す化合物(C2)および前記化合物(C2)の多量体から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)と
を含有する、感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(C2)中、Zは、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子である。
式(C2)中、R
32およびR
33は、それぞれ独立に2価の炭化水素基であり、R
34は、グリコールウリル環構造またはイソシアヌル環構造を示し、mは、1または0であり、qは、1~4の整数である。]
【請求項2】
前記重合体(A)100質量部に対して、前記化合物(C)を0.01~10質量部含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(C)が、前記化合物(C2)である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(C2)が、式(C2-1)に示す化合物(C2-1)および式(C2-2)に示す化合物(C2-2)から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
[式(C2-1)および式(C2-2)中、Xは、それぞれ独立に水素原子または式(g2)に示す1価の基であり、ただし、式(C2-1)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基であり、式(C2-2)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基である。]
【化3】
[式(g2)中、Z、R
32、R
33およびmは、それぞれ式(C2)中のZ、R
32、R
33およびmと同義であり、*は、式(C2-1)または式(C2-2)中の窒素原子との結合手である。]
【請求項5】
クエンチャー(D)をさらに含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
金属膜を有する基板の前記金属膜上に、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の樹脂膜を形成する工程(1)、
前記樹脂膜を露光する工程(2)、および
露光後の前記樹脂膜を現像する工程(3)
を有する、レジストパターン膜の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により製造されたレジストパターン膜を金属膜上に有するメッキ用基板に対して、酸素含有ガスのプラズマ処理を行う工程(4)、および
前記プラズマ処理後、前記レジストパターン膜を型としてメッキ処理を行う工程(5)を有する、メッキ造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンおよびタブレット端末等のモバイル機器の高性能化は、異なる機能を有する半導体チップを、FO-WLP(Fan-Out Wafer Level Package)、FO-PLP(Fan-Out Panel Level Package)、TSV(Through Silicon Via)、シリコンインターポーザー等の高密度パッケージング技術を用いてパッケージングすることにより行われている。
【0003】
このようなパッケージング技術では、半導体チップ間の電気的接続に用いられる配線およびバンプも高密度になってきている。したがって、配線およびバンプの形成に用いられるレジストパターン膜も、微細かつ高密度のものが求められている。
【0004】
通常、配線およびバンプはメッキ造形物であり、銅膜等の金属膜を有する基板の前記金属膜上に感光性樹脂組成物を塗布してレジスト塗膜を形成し、そのレジスト塗膜に対してマスクを用いて露光および現像を行ってレジストパターン膜を形成し、そのレジストパターン膜を型にして基板上にメッキ処理を行うことで製造される(特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-008972号公報
【特許文献2】特開2006-330368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レジストパターン膜において、基板に近い側(ボトム側)の幅が基板から遠い側(トップ側)の幅より大きい形状は、フッティング形状と言われている。ポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターン膜は、フッティング形状を有する傾向にある。
【0007】
フッティング形状を有するレジストパターン膜を用いて形成されるメッキ造形物は、基板(具体的には金属膜)との接触面積が小さいため、基板との接着力が弱い。特に、レジストパターン膜におけるパターンが微細かつ高密度になると、フッティング形状を有するレジストパターン膜を用いて形成されるメッキ造形物は、基板との接触面積が極端に小さくなるため、基板との接着力がさらに弱くなる。
【0008】
一方、メッキ処理中において、メッキ液はレジストパターン膜と基板(具体的には金属膜)との接触領域に浸入しやすい。この場合、得られるメッキ造形物の形状が悪化する傾向にある。レジストパターン膜におけるフッティング形状は、前記接触領域において前記メッキ液の浸入を防ぐ効果がある。このため、フッティング形状を有するレジストパターン膜は、メッキ液耐性に優れる傾向にある。
【0009】
したがって、レジストパターン膜においてフッティングの形成を抑制することと、レジストパターン膜のメッキ液耐性を向上させることとは、二律背反の関係にあると考えられる。
【0010】
本発明の課題は、フッティングの形成が抑制され且つメッキ液耐性に優れたレジストパターン膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供すること、前記感光性樹脂組成物を用いたレジストパターン膜の製造方法、および前記レジストパターン膜を用いたメッキ造形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく検討を行った。その結果、以下の構成を有する感光性樹脂組成物により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、例えば以下の[1]~[7]に関する。
【0012】
[1]酸解離性基を有する重合体(A)と、光酸発生剤(B)と、式(C1)に示す化合物(C1)、式(C2)に示す化合物(C2)および前記化合物(C2)の多量体から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)とを含有する、感光性樹脂組成物。
【0013】
【0014】
[式(C1)および(C2)中、Zは、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子である。式(C1)中、R31は、それぞれ独立に1価の炭化水素基、または前記1価の炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子をメルカプト基に置換した基であり、pは1以上の整数である。但し、式(C1)中、pが1である場合、およびpが2以上の整数で全てのZが酸素原子である場合には、少なくとも1つのR31は前記1価の炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子をメルカプト基に置換した基である。式(C2)中、R32およびR33は、それぞれ独立に2価の炭化水素基であり、R34は、グリコールウリル環構造またはイソシアヌル環構造を示し、mは、1または0であり、qは、1~4の整数である。]
[2]前記重合体(A)100質量部に対して、前記化合物(C)を0.01~10質量部含有する、前記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
[3]前記化合物(C)が、前記化合物(C2)である、前記[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記化合物(C2)が、式(C2-1)に示す化合物(C2-1)および式(C2-2)に示す化合物(C2-2)から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
【0017】
[式(C2-1)および式(C2-2)中、Xは、それぞれ独立に水素原子または式(g2)に示す1価の基であり、ただし、式(C2-1)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基であり、式(C2-2)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基である。]
【0018】
【0019】
[式(g2)中、Z、R32、R33およびmは、それぞれ式(C2)中のZ、R32、R33およびmと同義であり、*は、式(C2-1)または式(C2-2)中の窒素原子との結合手である。]
[5]クエンチャー(D)をさらに含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0020】
[6]金属膜を有する基板の前記金属膜上に、前記[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の樹脂膜を形成する工程(1)、前記樹脂膜を露光する工程(2)、および露光後の前記樹脂膜を現像する工程(3)を有する、レジストパターン膜の製造方法。
【0021】
[7]前記[6]に記載の製造方法により製造されたレジストパターン膜を金属膜上に有するメッキ用基板に対して、酸素含有ガスのプラズマ処理を行う工程(4)、および前記プラズマ処理後、前記レジストパターン膜を型としてメッキ処理を行う工程(5)を有する、メッキ造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フッティングの形成が抑制され且つメッキ液耐性に優れたレジストパターン膜を形成できる感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物を用いたレジストパターン膜の製造方法、および前記レジストパターン膜を用いたメッキ造形物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、フッティング形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中で例示する各成分、例えば感光性樹脂組成物中の各成分や、重合体(A)中の各構造単位は、特に言及しない限り、それぞれ1種単独で含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
【0025】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう)は、酸解離性基を有する重合体(A)(以下「重合体(A)」ともいう)と、光酸発生剤(B)と、後述する化合物(C)とを含有する。
【0026】
<重合体(A)>
重合体(A)は、酸解離性基を有する。
酸解離性基とは、光酸発生剤(B)から生成する酸の作用により解離可能な基である。前記解離の結果として重合体(A)中にカルボキシ基およびフェノール性水酸基等の酸性官能基が生成する。その結果、重合体(A)のアルカリ性現像液に対する溶解性が変化し、本組成物は、レジストパターン膜を形成することができる。
【0027】
重合体(A)は、酸解離性基により保護された酸性官能基を有する。酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基が挙げられる。重合体(A)としては、例えば、カルボキシ基が酸解離性基により保護された(メタ)アクリル樹脂、フェノール性水酸基が酸解離性基により保護されたポリヒドロキシスチレン樹脂が挙げられる。
【0028】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000~500,000、好ましくは3,000~300,000、より好ましくは10,000~100,000、さらに好ましくは20,000~60,000である。
【0029】
重合体(A)のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常、1~5、好ましくは1~3である。
【0030】
本組成物は、1種又は2種以上の重合体(A)を含有することができる。
本組成物中の重合体(A)の含有割合は、前記組成物の固形分100質量%中、通常、70~99.5質量%、好ましくは80~99質量%、より好ましくは90~98質量%である。前記固形分とは、後述する有機溶剤以外の全成分をいう。
【0031】
≪構造単位(a1)≫
重合体(A)は、通常、酸解離性基を有する構造単位(a1)を有する。
構造単位(a1)としては、例えば、式(a1-10)に示す構造単位、式(a1-20)に示す構造単位が挙げられ、式(a1-10)に示す構造単位が好ましい。
【0032】
【0033】
式(a1-10)および(a1-20)中の各記号の意味は以下のとおりである。
R11は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、または前記アルキル基中の少なくとも1つの水素原子を、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、フェニル基等のアリール基、水酸基、およびアルコキシ基等の別の基に置換した基(以下「置換アルキル基」ともいう)である。
【0034】
R12は、炭素数1~10の2価の有機基である。
Arは、炭素数6~10のアリーレン基である。
R13は、酸解離性基である。
【0035】
mは、0~10の整数、好ましくは0~5、より好ましくは0~3の整数である。
前記炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、デシル基が挙げられる。
【0036】
前記炭素数1~10の2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等の炭素数1~10のアルカンジイル基;前記アルカンジイル基中の少なくとも1つの水素原子を、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、フェニル基等のアリール基、水酸基、およびアルコキシ基等の別の基に置換した基が挙げられる。
【0037】
前記炭素数6~10のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。
前記酸解離性基としては、酸の作用により解離し、前記解離の結果として重合体(A)中にカルボキシ基およびフェノール性水酸基等の酸性官能基が生成する基が挙げられる。具体的には、式(g1)に示す酸解離性基、ベンジル基が挙げられ、式(g1)に示す酸解離性基が好ましい。
【0038】
【0039】
式(g1)中、Ra1~Ra3は、それぞれ独立にアルキル基、脂環式炭化水素基、または前記アルキル基もしくは前記脂環式炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子を、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、フェニル基等のアリール基、水酸基、およびアルコキシ基等の別の基に置換した基であり、Ra1およびRa2が相互に結合して、Ra1およびRa2が結合する炭素原子Cとともに脂環構造を形成していてもよい。
【0040】
Ra1~Ra3の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
【0041】
Ra1~Ra3の前記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式飽和環状炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環式不飽和環状炭化水素基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環式飽和環状炭化水素基が挙げられる。
【0042】
Ra1、Ra2および炭素原子Cにより形成される前記脂環構造としては、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の単環式飽和環状炭化水素構造;シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等の単環式不飽和環状炭化水素構造;ノルボルニル、アダマンチル、トリシクロデシル、テトラシクロドデシル等の多環式飽和環状炭化水素構造が挙げられる。
【0043】
式(g1)に示す酸解離性基としては、式(g11)~(g15)に示す基が好ましい。
【0044】
【0045】
式(g11)~(g15)中、Ra4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基であり、nは、1~4の整数である。式(g11)~(g14)中の各環構造は、炭素数1~10のアルキル基、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、およびアルコキシ基等の置換基を1つまたは2つ以上有していてもよい。*は結合手を示す。
【0046】
構造単位(a1)としては、式(a1-10)および(a1-20)に示す構造単位の他にも、特開2005-208366号公報、特開2000-194127号公報、特開2000-267283号公報、および特開2004-348106号公報に記載のアセタール系酸解離性基を有する構造単位;特開2013-101321号公報に記載のスルトン環を有する構造単位;特開2000-214587号公報、および特開2000-199960号公報等に記載の架橋型酸解離性基を有する構造単位が挙げられる。
【0047】
上記公報に記載の構造単位は、本明細書に記載されているものとする。
重合体(A)は、1種又は2種以上の構造単位(a1)を有することができる。
重合体(A)中の構造単位(a1)の含有割合は、通常、10~50モル%、好ましくは15~45モル%、より好ましくは20~40モル%である。
【0048】
なお、本明細書において、重合体(A)中の各構造単位の含有割合は、重合体(A)を構成する全ての構造単位の合計を100モル%とした場合の値である。前記各構造単位は、通常、重合体(A)合成時の単量体に由来する。各構造単位の含有割合は、1H-NMRにより測定することができる。
【0049】
重合体(A)は、一実施態様において、構造単位(a1)として、R11が水素原子である式(a1-10)に示す構造単位と、R11が炭素数1~10のアルキル基または置換アルキル基である式(a1-10)に示す構造単位とを有することが好ましい。このような態様であると、本組成物の解像性をより向上でき、また、メッキ液に対するレジストパターン膜の膨潤耐性およびクラック耐性をより向上できる傾向にある。
【0050】
≪構造単位(a2)≫
重合体(A)は、アルカリ性現像液への溶解性を促進する基(以下「溶解性促進基」ともいう)を有する構造単位(a2)をさらに有することができる。重合体(A)が構造単位(a2)を有することで、本組成物から形成される樹脂膜の解像性、感度および焦点深度等のリソ性を調節することができる。
【0051】
構造単位(a2)としては、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造およびフッ素アルコール構造から選ばれる少なくとも1種の基または構造を有する構造単位(ただし、構造単位(a1)に該当するものを除く)が挙げられる。これらの中でも、メッキ造形物形成時のメッキからの押し込みに対して強いレジストパターン膜を形成できることから、フェノール性水酸基を有する構造単位が好ましい。
【0052】
カルボキシ基を有する構造単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、3-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート等の単量体由来の構造単位、および特開2002-341539号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0053】
フェノール性水酸基を有する構造単位としては、例えば、2-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-イソプロペニルフェノール、4-ヒドロキシ-1-ビニルナフタレン、4-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアリール基を有する単量体由来の構造単位が挙げられる。ヒドロキシアリール基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、メチルヒドロキシフェニル基、ジメチルヒドロキシフェニル基、ジクロロヒドロキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、テトラヒドロキシフェニル基等のヒドロキシフェニル基;ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基等のヒドロキシナフチル基が挙げられる。
【0054】
アルコール性水酸基を有する構造単位としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイロオキシ-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン等の単量体由来の構造単位、および特開2009-276607号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0055】
ラクトン構造を有する構造単位としては、例えば、特開2017-058421号公報、国際公開第2009/113228号、特開2010-138330号公報、特開2010-275555号公報、特開2016-098350号公報、および特開2015-214634号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0056】
環状カーボネート構造を有する構造単位としては、例えば、特開2017-058421号公報、特開2009-223294号公報、および特開2017-044875号公報に記載の構造単位に記載の構造単位が挙げられる。
【0057】
スルトン構造を有する構造単位としては、例えば、特開2017-058421号公報、特開2014-029518号公報、特開2016-061933号公報、および特開2013-007846号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0058】
フッ素アルコール構造を有する構造単位としては、例えば、特開2004-083900号公報、特開2003-002925号公報、特開2004-145048号公報、および特開2005-133066号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0059】
上記公報に記載の構造単位は、本明細書に記載されているものとする。
重合体(A)は、1種又は2種以上の構造単位(a2)を有することができる。
重合体(A)中の構造単位(a2)の含有割合は、通常、10~80モル%、好ましくは20~65モル%、より好ましくは25~60モル%である。構造単位(a2)の含有割合が前記範囲内であれば、アルカリ性現像液に対する溶解速度を上げることができ、その結果、本組成物の厚膜での解像性を向上させることができる。
【0060】
重合体(A)は、構造単位(a1)を有する重合体と同一のまたは異なる重合体中に構造単位(a2)を有することができるが、同一の重合体中に構造単位(a1)~(a2)を有することが好ましい。
【0061】
≪構造単位(a3)≫
重合体(A)は、構造単位(a1)~(a2)以外の他の構造単位(a3)をさらに有することができる。
【0062】
構造単位(a3)としては、例えば、
スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メトキシスチレン、3-メトキシスチレン、4-メトキシスチレン等のビニル化合物由来の構造単位;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、ラウロキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造単位;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造単位;
フェニル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造単位;
(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル等の不飽和ニトリル化合物由来の構造単位;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド化合物由来の構造単位;
マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド化合物由来の構造単位;
が挙げられる。
【0063】
重合体(A)は、1種又は2種以上の構造単位(a3)を有することができる。
重合体(A)中の構造単位(a3)の含有割合は、通常、40モル%以下である。
重合体(A)は、構造単位(a1)および/または構造単位(a2)を有する重合体と同一のまたは異なる重合体中に構造単位(a3)を有することができるが、同一の重合体中に構造単位(a1)~(a3)を有することが好ましい。
【0064】
≪重合体(A)の製造方法≫
重合体(A)は、各構造単位に対応する単量体を、適当な重合溶媒中で、イオン重合法またはラジカル重合法等の公知の重合方法により製造することができる。これらの中でも、ラジカル重合法が好ましい。
【0065】
前記ラジカル重合法に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(イソ酪酸メチル)、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0066】
また、重合に際しては、必要に応じて、メルカプタン化合物、ハロゲン炭化水素等の分子量調節剤を使用することができる。
<光酸発生剤(B)>
光酸発生剤(B)は、露光により酸を発生する化合物である。この酸の作用により、重合体(A)中の酸解離性基が解離して、カルボキシ基およびフェノール性水酸基等の酸性官能基が生成する。その結果、本組成物から形成された樹脂膜の露光部がアルカリ性現像液に易溶性となり、ポジ型のレジストパターン膜を形成することができる。このように、本組成物は化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物として機能する。
【0067】
光酸発生剤(B)としては、例えば、特開2004-317907号公報、特開2014-157252号公報、特開2002-268223号公報、特開2017-102260号公報、特開2016-018075号公報、および特開2016-210761号公報に記載の化合物が挙げられる。これらは本明細書に記載されているものとする。
【0068】
光酸発生剤(B)としては、具体的には、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム・ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドアニオン、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム・トリス(ノナフルオロブチルスルホニル)メチド等のオニウム塩化合物;
1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタンや、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロゲン含有化合物;
4-トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物;
ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート等のスルホン酸化合物;
N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-ブチル-ナフチルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-プロピルチオ-ナフチルイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.1.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(10-カンファ-スルホニルオキシ)ナフチルイミド等のスルホンイミド化合物;
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-1,1-ジメチルエチルスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン化合物;
が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、オニウム塩化合物および/またはスルホンイミド化合物が、解像性およびメッキ液耐性に優れたレジストパターン膜を形成できることから好ましい。
本組成物は、1種又は2種以上の光酸発生剤(B)を含有することができる。
【0070】
本組成物中の光酸発生剤(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常、0.1~20質量部、好ましくは0.3~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。光酸発生剤(B)の含有量が前記範囲内であると、解像性により優れたレジストパターン膜が得られる傾向にある。
【0071】
<化合物(C)>
化合物(C)は、以下に説明する、式(C1)に示す化合物(C1)、式(C2)に示す化合物(C2)および前記化合物(C2)の多量体から選ばれる少なくとも1種である。フッティングの形成がより抑制されることから、前記化合物(C2)が好ましい。
【0072】
化合物(C)を含有する本組成物を用いることで、ポジ型感光性樹脂組成物で問題となるフッティングの形成が抑制され、しかもメッキ液耐性に優れるレジストパターン膜を形成できたと推測される。
【0073】
本発明が上記効果を発現する理由は、以下のように推測される。
感光性樹脂組成物に含まれる光酸発生剤(B)から露光により生成した酸は、銅膜等の金属膜にとっては酸化剤として作用すると考えられる。このため、前記組成物から形成された樹脂膜中では、露光により生成した酸の量が金属膜に近い箇所で少なくなり、その結果、現像により形成されたレジストパターン膜はフッティング形状を有することになる。このため、フッティングの原因は、銅膜等の金属膜と光酸発生剤(B)より生成した酸との接触、すなわち前記金属膜による酸のクエンチにあると考えられる。そこで、金属および金属酸化物に対する親和性の高いメルカプト基(およびメルカプト基を生成するスルフィド結合)を有する化合物(C)を含む樹脂膜を金属膜上に形成することで、化合物(C)と金属膜とから薄膜の複合膜が形成され、この薄膜により前記接触を避けることができる。以下に説明する構造を有する化合物(C)を用いることで、このような複合膜が良好に形成されたと推測される。
【0074】
また、水およびアルコール等の親水性溶剤を含有するメッキ液は、レジストパターン膜のボトム部分の親水性が高い場合、ボトム部分と金属膜との間に浸入する可能性がある。そこで、ボトム部分の疎水性を高くすることで、メッキ液の前記浸入を防ぐことができる。化合物(C)は疎水性が高いことから、本組成物を用いてこのようなボトム部分を形成することができる。
【0075】
なお、以上の説明は推測であって、本発明を何ら限定するものではない。
化合物(C)の疎水性については、分配係数が指標となる。化合物(C)の分配係数は、好ましくは2~10、より好ましくは3~7である。分配係数は、ClogP法により算出したオクタノール/水分配係数(logP)の値であり、数値が大きいほど疎水性(脂溶性)が高いことを意味する。
【0076】
本組成物は、1種又は2種以上の化合物(C)を含有することができる。
本組成物中の化合物(C)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常、0.01~10質量部、好ましくは0.02~1質量部、より好ましくは0.05~0.5質量部である。このような態様であると、本組成物は前述した効果をより発揮することができる。
【0077】
≪化合物(C1)≫
化合物(C1)は、式(C1)に示す化合物である。
【0078】
【0079】
式(C1)中、Zは、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子である。R31は、それぞれ独立に1価の炭化水素基、または前記1価の炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子をメルカプト基に置換した基(以下「メルカプト置換基」ともいう)である。pは、1以上の整数、好ましくは1~4の整数である。例えばZが硫黄原子でpが3の場合、化合物(C1)はトリスルフィド結合を有する。但し、pが1である場合、およびpが2以上の整数で全てのZが酸素原子である場合には、少なくとも1つのR31は前記1価の炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子をメルカプト基に置換した基(メルカプト置換基)である。
Zが硫黄原子の場合は、pは、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2~3の整数である。Zが酸素原子の場合は、pは、好ましくは1である。
【0080】
R31の1価の炭化水素基は、通常、炭素数1~12の1価の炭化水素基である。前記1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基が挙げられる。
【0081】
R31のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
R31のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0082】
R31のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~12のアリールアルキル基が挙げられる。
メルカプト置換基としては、例えば、4-メルカプトフェニル基が挙げられる。
【0083】
化合物(C1)において、例えばスルフィド結合、エーテル結合(p=1の場合)、ポリスルフィド結合(p=2以上の整数で全てのZが硫黄原子の場合)またはメルカプト基(R31がメルカプト置換基の場合)は、炭化水素構造に結合している。このため、化合物(C1)は疎水性が高くなっていると推測される。
【0084】
化合物(C1)としては、例えば、下記式(C1-1)~(C1-3)に示す化合物が挙げられる。
【0085】
【0086】
≪化合物(C2)およびその多量体≫
化合物(C2)は、式(C2)に示す化合物である。
【0087】
【0088】
式(C2)中の各記号の意味は以下のとおりである。
Zは、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子である。
R32およびR33は、それぞれ独立に2価の炭化水素基であり、好ましくはアルカンジイル基、アリーレン基またはアリーレンアルカンジイル基であり、これらの中では、フッティングの形成が抑制され且つメッキ液耐性に優れたレジストパターン膜を形成できることから、アルカンジイル基がより好ましい。
【0089】
前記アルカンジイル基の炭素数は、通常、1~12、好ましくは2~12である。前記アルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;1-メチルプロパン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、1-メチルブタン-1,4-ジイル基、2-メチルブタン-1,4-ジイル基等の分岐状アルカンジイル基が挙げられる。これらの中でも、直鎖状アルカンジイル基が好ましい。
【0090】
前記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~10のアリーレン基が挙げられる。
前記アリーレンアルカンジイル基は、1つ以上のアリーレン基と1つ以上のアルカンジイル基とが任意の順序で結合した2価の基である。各々のアリーレン基およびアルカンジイル基としては、上記した具体例が挙げられる。
【0091】
R34は、グリコールウリル環構造またはイソシアヌル環構造を示す。なお、グリコールウリル環構造およびイソシアヌル環構造は、疎水性を低下させうる結合を有しているが、その構造対称性が高いため、化合物(C2)の疎水性を悪化させるほどではないと推測される。
【0092】
mは、1または0である。
qは、1~4の整数である。R34がグリコールウリル環構造である場合、qは1~4の整数である。R34がイソシアヌル環構造である場合、qは1~3の整数である。qが2以上の整数の場合、式(C2)中の-(R32-Z)m-R33-SHで表される基は同一でも異なってもよい。
【0093】
化合物(C2)において、メルカプト基またはスルフィド結合、エーテル結合(mが1の場合)は、炭化水素構造に結合している。このため、化合物(C2)は疎水性が高くなっていると推測される。
【0094】
化合物(C2)としては、式(C2-1)に示す化合物(C2-1)、および式(C2-2)に示す化合物(C2-2)が好ましく、前記化合物(C2-1)がより好ましい。
【0095】
【0096】
式(C2-1)および(C2-2)中、Xは、それぞれ独立に水素原子または式(g2)に示す1価の基である。ただし、式(C2-1)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基であり、好ましくは、全てのXが式(g2)に示す1価の基である。また、式(C2-2)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基であり、好ましくは、全てのXが式(g2)に示す1価の基である。
【0097】
【0098】
式(g2)中、Z、R32、R33およびmは、それぞれ式(C2)中のZ、R32、R33およびmと同義であり、*は、式(C2-1)または(C2-2)中の窒素原子との結合手である。
化合物(C2-1)としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス[2-メルカプトエチル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(2-メルカプトエチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(3-メルカプトプロピルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(4-メルカプトブチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(5-メルカプトペンチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(6-メルカプトヘキシルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(8-メルカプトオクチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(10-メルカプトデシルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(12-メルカプトドデシルスルファニル)プロピル]グリコールウリルが挙げられる。
【0099】
化合物(C2-2)としては、例えば、1,3,5-トリス[2-メルカプトエチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-メルカプトプロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトプロポキシ)エチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(2-メルカプトエチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(3-メルカプトプロピルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(4-メルカプトブチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(5-メルカプトペンチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(6-メルカプトヘキシルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(8-メルカプトオクチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(10-メルカプトデシルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(12-メルカプトドデシルスルファニル)プロピル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0100】
化合物(C2)は、例えば、特開2016-169174号公報、特開2016-164135号公報、および特開2016-164134号公報に記載された方法により合成することができる。
【0101】
化合物(C2)は、多量体を形成していてもよい。前記多量体は、複数の化合物(C2)がメルカプト基のカップリングによりジスルフィド結合を形成することで得られる多量体である。前記多量体は、例えば、化合物(C2)の2~5量体である。
【0102】
<クエンチャー(D)>
本組成物は、クエンチャー(D)をさらに含有することができる。
クエンチャー(D)は、例えば、光酸発生剤(B)から露光により生成した酸が樹脂膜中で拡散することを制御するために用いられる成分であり、その結果、本組成物の解像性を向上させることができる。
【0103】
クエンチャー(D)としては、例えば、塩基性化合物、塩基を発生する化合物が挙げられ、例えば、特開2011-029636号公報、特開2014-013381号公報、特表2015-526752号公報、特開2016-099483号公報、および特開2017-037320号公報に記載の化合物が挙げられる。これらは本明細書に記載されているものとする。
【0104】
クエンチャー(D)としては、例えば、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;アニリン、1-ナフチルアミン等の芳香族アミン;トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、1,3-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、ポリエチレンイミン等のポリアミノ化合物;ホルムアミド等のアミド化合物;尿素、メチルウレア等のウレア化合物;イミダゾール、ベンズイミダゾール等の含窒素複素環化合物;N-(t-ブトキシカルボニル)ピペリジン、N-(t-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、N-(t-ブトキシカルボニル)イミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)-2-フェニルベンズイミダゾール等の酸解離性基を有する含窒素化合物が挙げられる。
【0105】
本組成物は、1種又は2種以上のクエンチャー(D)を含有することができる。
本組成物中のクエンチャー(D)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常、0.001~10質量部、好ましくは0.01~5質量部である。
【0106】
<その他成分>
本組成物は、その他成分をさらに含有することができる。
前記その他成分としては、例えば、前記感光性樹脂組成物の塗布性、消泡性等を改良する作用を示す界面活性剤、露光光を吸収して光酸発生剤の酸発生効率を向上させる増感剤、前記感光性樹脂組成物から形成した樹脂膜のアルカリ性現像液への溶解速度を制御するアルカリ可溶性樹脂や低分子フェノール化合物、露光時の散乱光の未露光部への回り込みによる光反応を阻止する紫外線吸収剤、前記感光性樹脂組成物の保存安定性を高める熱重合禁止剤、その他、酸化防止剤、接着助剤、無機フィラーが挙げられる。
【0107】
<有機溶剤>
本組成物は、有機溶剤をさらに含有することができる。有機溶剤は、例えば、本組成物中に含まれる各成分を均一に混合するために用いられる成分である。
【0108】
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル溶剤;メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0109】
本組成物は、1種又は2種以上の有機溶剤を含有することができる。
本組成物中の有機溶剤の含有割合は、通常、40~90質量%である。
<感光性樹脂組成物の製造>
本組成物は、前述した各成分を均一に混合することにより製造することができる。また、異物を取り除くために、前述した各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルターで濾過することができる。
【0110】
[感光性樹脂組成物キット]
本発明の一実施態様として、化合物(C)と有機溶剤とを含有する第1剤と、酸解離性基を有する重合体(A)と光酸発生剤(B)とを含有する第2剤とを有する感光性樹脂組成物キットが挙げられる。各成分の詳細は前述したとおりである。
【0111】
前記第1剤中の化合物(C)の含有割合は、通常、0.0001~10質量%、好ましくは0.001~1質量%である。前記第2剤は、その他、前述したクエンチャー(D)、その他成分、有機溶剤などを含有することができる。前記第2剤中の各成分の含有量(含有割合)は、前述した感光性樹脂組成物またはその固形分中の各成分の含有量(含有割合)と同様である。
【0112】
前記感光性樹脂組成物キットは、例えば、金属膜を有する基板の前記金属膜上に前記第1剤を塗布した後、前記第1剤により表面処理済みの前記金属膜上に前記第2剤の樹脂膜を形成する、という方法で使用することができる。以降の工程は、以下に説明する工程(2)および(3)と同様である。この方法によっても、前記金属膜上に化合物(C)を含む膜が形成されるという前述した推測理由により、本発明の効果が発現すると考えられる。
【0113】
[レジストパターン膜の製造方法]
本発明のレジストパターン膜の製造方法は、金属膜を有する基板の前記金属膜上に、本発明の感光性樹脂組成物の樹脂膜を形成する工程(1)、前記樹脂膜を露光する工程(2)、および露光後の前記樹脂膜を現像する工程(3)を有する。
【0114】
<工程(1)>
前記基板としては、例えば、半導体基板、ガラス基板が挙げられる。基板の形状には特に制限はなく、表面形状は平板状および凸凹状が挙げられ、基板の形状としては円形および正方形が挙げられる。また、基板の大きさに制限はない。
【0115】
前記金属膜としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金およびパラジウム等の金属、ならびに前記金属を含む2種以上の合金を含む膜が挙げられ、銅膜、すなわち銅および/または銅合金を含む膜が好ましい。金属膜の厚さは、通常、100~10,000Å、好ましくは500~2,000Åである。金属膜は、通常、前記基板の表面に設けられている。金属膜は、スパッタ法等の方法により形成することができる。
【0116】
前記樹脂膜は、通常、金属膜を有する基板の前記金属膜上に本組成物を塗布して形成される。本組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法が挙げられ、これらの中でもスピンコート法、スクリーン印刷法が好ましい。
【0117】
本組成物を塗布した後、有機溶剤を揮発させる等の目的のため、塗布された当該本組成物に対して加熱処理を行うことができる。前記加熱処理の条件は、通常、50~200℃で0.5~20分間である。
【0118】
前記樹脂膜の厚さは、通常、1~100μm、好ましくは5~80μmである。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で形成した樹脂膜を露光する。
【0119】
前記露光は、通常、所定のマスクパターンを有するフォトマスクを介して、等倍投影露光または縮小投影露光で、樹脂膜に選択的に行う。露光光としては、例えば、波長150~600nm、好ましくは波長200~500nmの紫外線または可視光線が挙げられる。露光光の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、レーザーが挙げられる。露光量は、露光光の種類、感光性樹脂組成物の種類、および樹脂膜の厚さによって適宜選択でき、通常、100~20,000mJ/cm2である。
【0120】
前記樹脂膜に対する露光後、現像前に、前記樹脂膜に対して加熱処理を行うことができる。前記加熱処理の条件は、通常、70~180℃で0.5~10分間である。前記加熱処理により、重合体(A)において酸解離性基の酸による解離反応を促進することができる。
【0121】
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で露光した樹脂膜を現像して、レジストパターン膜を形成する。現像は、通常、アルカリ性現像液を用いて行う。現像方法としては、例えば、シャワー法、スプレー法、浸漬法、液盛り法、パドル法が挙げられる。現像条件は、通常、10~30℃で1~30分間である。
【0122】
アルカリ性現像液としては、例えば、アルカリ性物質を1種又は2種以上含有する水溶液が挙げられる。アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、ピロール、ピペリジンが挙げられる。アルカリ性現像液におけるアルカリ性物質の濃度は、通常、0.1~10質量%である。アルカリ性現像液は、例えば、メタノール、エタノール等の有機溶剤および/または界面活性剤をさらに含有することができる。
【0123】
現像により形成されたレジストパターン膜を水等により洗浄することができる。その後、前記レジストパターン膜をエアーガンまたはホットプレートを用いて乾燥することができる。
【0124】
以上のようにして、基板の金属膜上に、フッティングの形成を抑制しつつ、メッキ造形物を形成するための型となるレジストパターン膜を形成することができ、したがってレジストパターン膜(型)を金属膜上に有するメッキ用基板が得られる。レジストパターン膜の厚さは、通常、1~100μm、好ましくは5~80μmである。レジストパターン膜の開口部の形状としては、メッキ造形物の種類に即した形状を選択することができる。メッキ造形物が配線の場合、パターンの形状は例えばラインアンドスペースパターンであり、メッキ造形物がバンプの場合、前記開口部の形状は例えば立方体形状のホールパターンである。
【0125】
フッティングの形成が抑制された型を有するメッキ用基板を用いることによって、基板(具体的には金属膜)とメッキ造形物との接触面積が増加することから、基板への密着性に優れるメッキ造形物を製造することができる。
【0126】
[メッキ造形物の製造方法]
本発明のメッキ造形物の製造方法は、本発明のレジストパターン膜の製造方法により製造されたレジストパターン膜を金属膜上に有するメッキ用基板に対して、酸素含有ガスのプラズマ処理を行う工程(4)、および前記プラズマ処理後、前記レジストパターン膜を型としてメッキ処理を行う工程(5)を有する。
【0127】
<工程(4)>
工程(4)において酸素含有ガスのプラズマ処理(前記メッキ用基板の表面処理)を行うことにより、金属膜表面とメッキ液との親和性を高めることができる。これは、以下の理由によると推測される。レジストパターン膜開口部の金属膜表面には、現像で除去されなかった化合物(C)含有膜が形成されていると考えられる。化合物(C)に含まれる硫黄原子は、メッキムラおよび腐食の原因になりえる。そこで、レジストパターン膜形成後、メッキ処理前に、レジストパターン膜開口部の金属膜表面の化合物(C)含有膜をプラズマ処理により除去することで、メッキ処理を良好に行える。なお、以上の説明は推測であって、本発明を何ら限定するものではない。
【0128】
工程(4)では、例えば、レジストパターン膜を金属膜上に有するメッキ用基板を真空状態にした装置内に入れ、酸素のプラズマを放出させて、前記メッキ用基板の表面処理を行う。プラズマ処理条件は、電源出力が通常、50~300Wであり、酸素含有ガスの流量が通常、20~150mLであり、装置内圧力が通常、10~30Paであり、処理時間が通常、0.5~30分である。酸素含有ガスは、酸素の他、例えば水素、アルゴンおよび四フッ化メタンから選ばれる1種又は2種以上を含有することができる。前記プラズマ処理により表面処理されたメッキ用基板を水等により洗浄することができる。
【0129】
<工程(5)>
工程(5)では、前記プラズマ処理後、前記レジストパターン膜を型として、前記レジストパターン膜によって画定される開口部(現像で除去された部分)に、メッキ処理によりメッキ造形物を形成する。
【0130】
メッキ造形物としては、例えば、バンプ、配線が挙げられる。メッキ造形物は、例えば、銅、金、ニッケル等の導体からなる。メッキ造形物の厚さは、その用途によって異なるが、例えば、バンプの場合、通常、5~100μm、好ましくは10~80μm、更に好ましくは20~60μmであり、配線の場合、通常、1~30μm、好ましくは3~20μm、更に好ましくは5~15μmである。
【0131】
メッキ処理は、例えば、メッキ液を用いたメッキ液処理が挙げられる。メッキ液としては、例えば、銅メッキ液、金メッキ液、ニッケルメッキ液、はんだメッキ液が挙げられ、具体的には、硫酸銅またはピロリン酸銅等を含む銅メッキ液、シアン化金カリウムを含む金メッキ液、硫酸ニッケルまたは炭酸ニッケルを含むニッケルメッキ液が挙げられる。これらの中でも、銅メッキ液が好ましい。メッキ液は、通常、水およびアルコール等の親水性溶剤を含有する。
【0132】
メッキ処理としては、具体的には、電解メッキ処理、無電解メッキ処理、溶融メッキ処理等の湿式メッキ処理が挙げられる。ウエハーレベルでの加工におけるバンプや配線を形成する場合、通常、電解メッキ処理により行われる。
【0133】
電解メッキ処理の場合、スパッタ法または無電解メッキ処理によりレジストパターン膜の内壁に形成したメッキ膜をシード層として用いることができ、また、基板上の前記金属膜をシード層として用いることもできる。また、シード層を形成する前にバリア層を形成してもよく、シード層をバリア層として用いることもできる。
【0134】
電解メッキ処理の条件は、メッキ液の種類等により適宜選択できる。銅メッキ液の場合、温度が、通常、10~90℃、好ましくは20~70℃であり、電流密度が、通常、0.3~30A/dm2、好ましくは0.5~20A/dm2である。ニッケルメッキ液の場合、温度が、通常、20~90℃、好ましくは40~70℃であり、電流密度が、通常、0.3~30A/dm2、好ましくは0.5~20A/dm2である。
【0135】
メッキ処理は、異なるメッキ処理を順次行うことができる。例えば、はじめに銅メッキ処理を行った後、ニッケルメッキ処理を行い、次に溶融はんだメッキ処理を行うことで、はんだ銅ピラーバンプを形成することができる。
【0136】
<他の工程>
本発明のメッキ造形物の製造方法は、工程(5)の後に、前記レジストパターン膜を除去する工程をさらに有することができる。この工程は、具体的には、残存するレジストパターン膜を剥離して除去する工程であり、例えば、レジストパターン膜およびメッキ造形物を有する基板を剥離液に浸漬する方法が挙げられる。剥離液の温度および浸漬時間は、通常、20~80℃で1~10分間である。
【0137】
剥離液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルスルホキシドおよびN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる少なくとも1種を含有する剥離液が挙げられる。
【0138】
本発明のメッキ造形物の製造方法は、メッキ造形物を形成した領域以外の前記金属膜を、例えば、ウェットエッチング法等の方法により除去する工程をさらに有することができる。
【実施例0139】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
<重合体の重量平均分子量(Mw)>
下記条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて重合体の重量平均分子量(Mw)を測定した。
・GPC装置:東ソー株式会社製、装置名「HLC-8220-GPC」
・カラム:東ソー株式会社製カラムのTSK-MおよびTSK2500を直列に接続
・溶媒:テトラヒドロフラン
・温度:40℃
・検出方法:屈折率法
・標準物質:ポリスチレン
[合成例1および2]
2,2'-アゾビス(イソ酪酸メチル)をラジカル重合開始剤として用いたラジカル重合により、表1に示す構造単位およびその含有割合を有する重合体(A-1)および(A-2)を製造した。表1中に示す構造単位の詳細を下記式(a1-1)~(a1-4)、(a2-1)~(a2-2)、(a3-1)~(a3-2)に示す。なお、表1中のa1-1~a3-2欄の数値の単位はモル%である。各構造単位の含有割合は、1H-NMRにより測定した。
【0140】
【0141】
【0142】
<感光性樹脂組成物の製造>
[実施例1A~9A、比較例1A~3A]感光性樹脂組成物の製造
下記表2に示す種類および量の各成分を均一に混合することにより、実施例1A~9A、比較例1A~3Aの感光性樹脂組成物を製造した。重合体成分以外の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表2中の数値の単位は質量部である。
B-1:下記式(B-1)に示す化合物
B-2:下記式(B-2)に示す化合物
【0143】
【0144】
C-1:ジメチルトリスルフィド
C-2:4,4'-チオビスベンゼンチオール
C-3:下記式(C-3)に示す化合物
【0145】
【0146】
C-4:下記の製造方法により下記式(C-4)で表される化合物を合成した。
特開2015-059099号公報の実施例の段落[0105]~[0131]を参考に、出発物質であるグリコールウリルをイソシアヌル酸に変更して、1,3,5-トリスアリルイソシアヌル酸を合成し、次いでチオ酢酸と反応させることにより、1,3,5-トリス[3-メルカプトプロピル]イソシアヌレート(C-4)を合成した。
【0147】
【0148】
C-5:下記式(C-5)で表される化合物(川口化学工業株式会社製)。
【0149】
【0150】
RC-1:下記式(RC-1)に示す化合物
【0151】
【0152】
RC-2:2-メルカプトエタノール
RC-3:下記式(RC-3)に示す化合物
【0153】
【0154】
D-1:下記式(D-1)に示す化合物
D-2:下記式(D-2)に示す化合物。
【0155】
【0156】
E-1:フッ素系界面活性剤
(商品名「NBX-15」、ネオス株式会社製)
F-1:γ-ブチロラクトン
F-2:シクロヘキサノン
F-3:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0157】
【0158】
<レジストパターン膜の製造>
[実施例1B~9B、比較例1B~3B]
銅スパッタ膜を備えてなるシリコンウエハ基板の銅スパッタ膜上にスピンコーターを用いて、実施例1A~9A、比較例1A~3Aの感光性樹脂組成物を塗布し、ホットプレートにて120℃で60秒間加熱し、膜厚6μmの塗膜を形成した。前記塗膜を、ステッパー(ニコン社製、型式「NSR-i10D」)を用い、パターンマスクを介して、露光した。露光後の塗膜を、90℃で60秒間加熱し、次いで、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に180秒間浸漬して現像した。その後、流水洗浄し、窒素ブローして、基板の銅スパッタ膜上に実施例1B~9B、比較例1B~3Bのレジストパターン膜(ライン幅:2μm、ライン幅/スペース幅=1/1)を形成した。このレジストパターン膜のフッティング形状の大きさを電子顕微鏡で観察した。評価結果を表3に示す。フッティング形状の大きさとは、
図1におけるwの大きさを意味する。
【0159】
このレジストパターン膜を形成した基板を、「パターニング基板」という。
<メッキ造形物の製造>
[実施例1C~9C、比較例1C~3C]
前記レジストパターン膜を型として、電解メッキ処理を行い、メッキ造形物を製造した。電解メッキ処理の前処理として、酸素プラズマによる処理(出力100W、酸素流量100ミリリットル、処理時間60秒間)を行い、次いで水洗を行った。前処理後のパターニング基板を銅メッキ液(製品名「MICROFAB SC-40」、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製)1L中に浸漬し、メッキ浴温度25℃、電流密度8.5A/dm2に設定して、2分10秒間電界メッキ処理を行い、メッキ造形物を製造した。
【0160】
前記メッキ造形物の製造後において、前記レジストパターン膜とシリコンウエハ基板の銅スパッタ膜との界面にメッキ液がしみ込んでいるか否かを電子顕微鏡で観察し、そのメッキ液のしみ込みの有無を「メッキ液耐性」として下記評価基準にて評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0161】
AA:メッキ液のしみ込み無。
BB:メッキ液のしみ込み有。
【0162】