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特開2023-90894注射の間に加えられる力を検出するためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090894
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】注射の間に加えられる力を検出するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20230622BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61M5/31 534
A61M5/24
A61M5/31 520
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077231
(22)【出願日】2023-05-09
(62)【分割の表示】P 2020511905の分割
【原出願日】2018-08-29
(31)【優先権主張番号】62/553,004
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー リニ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード クルーグ
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ペティス
(57)【要約】
【課題】現在の注射システムは、適切な加えられる力に関する情報をユーザーに提供しない。また、ペンニードルハブ、付与される力、および、要求される注射深さの間の機械的な関係が存在し、この種の情報が必要とされている。
【解決手段】医療用デバイス(100)は、インスリンペン(102)と、ペンニードル(104)と、力センサー(106)とを含む。また、デバイスは、力センサー(106)から信号を受け取るためのマイクロプロセッサー(206)を含む。聴覚的および/または視覚的インジケーター(218、220)は、適正な注射技術を促すために、ユーザーにフィードバックを提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンニードルが取り付けられているインスリンペンと、
前記ペンニードルのハブ面上に配置された力センサーであって、注射手順の間に皮膚表面に加えられる力を測定する、力センサーと、
前記力センサーから信号を受け取るマイクロコントローラーと、
前記マイクロコントローラーによって制御される聴覚的インジケーターおよび視覚的インジケーターのうちの少なくとも1つと、
を含む、医療用デバイス。
【請求項2】
前記力センサーのアナログ信号を増幅するための増幅器と、増幅された前記信号をデジタルに変換するためのアナログ-デジタルコンバーターと、をさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記マイクロコントローラーに電力を供給する電源をさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記電源からの電力を制御するための電圧調整器と、バッテリーの充電を制御するための充電管理コントローラーと、をさらに含む、請求項3に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記バッテリーは、再充電可能なバッテリーである、請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記マイクロコントローラーを外部デバイスに接続するための、および、バッテリーを充電するための電力を受け取るための、USBポートをさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記力センサーから受け取るデータに基づいてルールにしたがうための、および、前記力センサーによって測定された加えられた力に基づいて前記少なくとも1つのインジケーターを介してフィードバックを提供するための、プログラムインストラクションを含有するメモリーをさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、適切な注射技術の上達および正確なニードル挿入深さの促進のために、薬剤注射の間に皮膚表面に加えられる力を検出して示すためのシステムおよび方法を開示する。代替的実施形態は、用量投与の間にペンシステム注射器ボタンに加えられる力を捕捉するために、追加のセンサーを組み込む。
【背景技術】
【0002】
糖尿病を管理する患者の大部分は、インスリン投与のためにシリンジまたはペンデバイスを利用しており、皮下組織への一貫した送達に関して適切な注射技術およびデバイス性能に依存している。不快感/痛みを引き起こす不適切な技術は、治療のアドヒアランスに影響を与える可能性がある。全用量の不完全な送達(漏出)、皮内の(浅い)または筋肉内の(深い)送達、および、脂肪肥大組織内への注入をもたらす不十分な技術は、一貫しない血糖コントロールにつながり、短期間および長期間の糖尿病関連の合併症に寄与する。自己注射の指導は、治療の開始時に提供されるのみであることが多い。結果的に、技術の上達は、極度に患者に依存し、心理的または物理的な障壁に起因して、最適でない方法をもたらす可能性がある。注射を実施する親および介護者は、直接的な感覚のフィードバックが不可能であるため、明らかに不利な立場にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の注射システムは、適切な加えられる力に関する情報をユーザーに提供しない。また、ペンニードルハブ、付与される力、および、要求される注射深さの間の機械的な関係が存在し、この種の情報が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、標的組織内の一貫したニードル深さの配置を促進するための適切な注射技術の上達および維持のために、糖尿病および他の医療の教育者、介護者、ならびに患者に実用的なツールを提供する。例示的な実施形態によるシステムは、加えられる挿入力/付与される力を測定および理解することによって、最適化された注射デバイス(ペン、自動注射器、ペンニードル、シリンジ)を開発するための意味のある方法をさらに提供する。本発明の実施形態は、作用する力を測定し、それをシステム機能、患者受容性、好み、および他の人的要因と同等にするための、臨床的に有用なツールを提供する。最後に、フィードバック制御ループを使用することによって、本発明の実施形態は、(たとえば、光インジケーター、サウンドインジケーター、または振動インジケーターによって)適当な力がデバイスに加えられているときに信号を送ること、あるいは、システムの力が適切な範囲内になるまで使用を防ぐロックアウトを作ることのいずれかによって、適切な使用を促進することができる。
【0005】
本発明の実施形態は、添付の図面に関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】本発明の第1の実施形態の分解図である。
図1B図1Aのペンニードルハブ上の力センサーの詳細図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による信号処理回路のブロック図である。
図3】2つの力センサーを備えた本発明の別の実施形態を示す図である。
図4A】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4B】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4C】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4D】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4E】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4F】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4G】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4H】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
図4I】親指および皮膚に加えられた力を示す経時的な力のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面の全体を通して、同様の参照数字は、同様の要素、特徴、および構造を表すものと理解されるべきである。
【0008】
ここで、本発明の例示的な実施形態が、添付の図面を参照して説明される。本明細書で説明されている実施形態は、単なる例示に過ぎず、本発明の実施形態の製造法および使用法を当業者に図示する役割を果たすが、さまざまな変更および修正が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書で説明されている実施形態に行われ得ることが認識されるべきである。
【0009】
図1Aおよび図1Bに図示されているように、本発明の第1の実施形態は、ペンニードル104および力センサー106を備えたインスリンペン102を含むデバイス100である。力センサー106は、好ましくは、ペンニードル104のハブ面108上に配置される。インスリンペンが使用されるとき、ペンニードル104は、皮膚表面に押し付けられ、力センサー106は、物理的な刺激の変化を電気信号に変換する。電気信号は、好ましくは、信号調整回路などによって、力値などの機械的な量へと調整および変換され、およびマイクロコントローラーへ転送される。ここで、力値は、アルゴリズムまたはプロセスへの入力としての役割を果たしてもよい。
【0010】
図2は、本発明の実施形態による処理回路の例示的なブロック図を示す。処理回路は、好ましくは、図1Aおよび図1Bに図示されているデバイス100の中に物理的に組み込まれるが、本明細書で説明される処理回路の構成要素のうちの1つまたは複数が、別個のデバイスの中に配置され得ることを当業者は容易に認識するであろう。図2の処理回路200は、好ましくは、力センサー106と、力センサー106から受けた生の信号を増幅するための信号増幅器202と、アナログ-デジタルコンバーター204と、力センサーからの力値を表す変換されたデジタル信号を受け取るマイクロコントローラー206とを含む。また、処理回路は、好ましくは、電源208を含み、電源208は、好ましくは、コインバッテリーからマイクロコントローラー206に電力を供給するためのDC-DCコンバーター210などを含む。また、電源208は、好ましくは、LiPOバッテリーなどのような再充電可能なバッテリー(図示せず)、ならびに、関連する電圧調整器212および充電管理コントローラー214を含む。また、好ましくは、処理回路は、処理回路200を他のデバイスに接続するための、および、再充電可能なバッテリーを充電するための、USBポート216などを含む。また、処理回路200は、好ましくは、ユーザーに表示を出力するための、LEDインジケーター218といった視覚的インジケーターおよび聴覚的インジケーター220を含む。
【0011】
マイクロコントローラー206は、好ましくは、実行のためのプログラムインストラクションを含有するメモリー222を含むか、または、それに関連付けられる。プログラムインストラクションは、有利には、力センサーから受け取ったデータに基づいて一連のルールにしたがうように提供されてもよく、また、測定された加えられた力に基づくフィードバックを視覚的インジケーションおよび/または聴覚的インジケーションを介して介護者に提供するように提供されてもよい。
【0012】
第2の例示的な実施形態が、図3に図示される。第2の実施形態は、デバイス300が1つではなく2つのロードセンサーを含むことを除いて、第1の実施形態と同様である。この実施形態は、任意の標準的なインスリンペン302の端部上に組み込まれ得る、アダプターアッセンブリ300を含む。アッセンブリ300は、ドーナツ形状のロードセルなどの力センサー304と、センサーハウジング306と、トランスファーニードルアッセンブリ308とを含む。アダプターアッセンブリ300は、好ましくは、標準的なインスリンペンにねじ止めされ、ペンニードル312に対する接続部310を提供する。力センサー304は、注射手順の間に皮膚表面に加えられる力を測定する。また、デバイス300は、親指ボタン308に関連付けられ、ペンシステムを通して薬剤を送達するために加えられる力を測定する、ロードセンサー314を含む。処理回路および電源は、アダプターアッセンブリの中へ組み込まれてもよく、または、接続部は、それらの構成要素を収容する外部デバイスに提供されてもよい。このように、注射力を測定することができ、フィードバックが、任意の標準的なインスリンペンのユーザーに提供され得る。
【0013】
図4A図4Iは、第2の実施形態によるデバイスから記録されたデータを図示する。図示されるように、2つのロードセンサーが、デバイスに組み込まれており、1つは、親指ボタンの上にあり、1つは、コネクターアダプター内にある。2つのセンサーによって時間の経過とともに測定される力が、図にプロットされている。図示されるように、この特定の注射に関して、皮膚に加えられる力は、即座に測定され、半安定レベルに保持され、ペンシステムから注射部位へ注入物を送達するために必要とされる親指の力の測定がそれに続く。流体送達が完了すると、加えられた親指の力が止められる。デバイスは、流体送達後5~10秒にわたって皮膚表面に保持され、注射部位からの漏出を最小化する。注射手順の終わりに、インスリンペンが、ユーザーから引き抜かれる。
【0014】
当業者によって認識されるように、注射の間にインスリンペンまたはその構成要素に存在する力を記録することによって、注射の分析を行うことができ、フィードバックが導出され、ユーザーに提供され得る。たとえば、そのようなデータは、ユーザーが十分な力を使用していないこと、または、親指ボタンが押された後に十分に長い持続期間の間インスリンペンを注射部位に保持していないことを明らかにするであろう。
【0015】
デバイスの好適な実施形態は、ペンニードルハブ面の中またはペンニードルハブ面上に一体化された力センサーを有する。電気的な接続部が、ペンニードルハブ内に提供され、力センサーに電力を提供し、力の信号が、さらなる処理のために獲得される。処理回路および電源は、好ましくは、ペンシステム本体部の内側に提供されている。
【0016】
第2の実施形態は、ペンニードルハブの中またはペンニードルハブ上に一体化された力センサーを含み、インスリンペンの外部の別個のハウジングに接続されるように構成されたフレックス回路リード線を伴う。電源および処理回路は、好ましくは、外部ハウジングの中に配置される。外部ハウジングは、アドオン式デバイスとしてインスリンペンにフィットするように構成されている。
【0017】
当業者によって認識されるように、本明細書で説明されるいかなる実施形態も、データ可視化およびストレージのための関連のソフトウェアアプリケーションによって、CPU、タブレット、電話機、および/または腕時計などの耐久性のある媒体へ、優先媒体または無線媒体を介したデータ転送を可能にする回路コンポーネントを組み込んでもよい。
【0018】
また、本発明の実施形態は、ペンニードルデバイスに関連して説明されてきたが、皮膚または他の生理学的表面との直接的な接触を必要とする任意の適切な注射または薬物送達システムが、本明細書で概説される原理および特徴を利用することができることを当業者は認識するであろう。
【0019】
最後に、開示された実施形態に対する変更が、特許請求の範囲に定義されるような本発明およびそれらの均等物の範囲を逸脱することなく可能であるということ、ならびに、異なる実施形態の特徴および請求項を、それらが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせてもよいことを当業者は認識するであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
【手続補正書】
【提出日】2023-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンニードルが取り付けられているインスリンペンと、
前記ペンニードルのハブ面上に配置された力センサーであって、注射手順の間に皮膚表面に加えられる力を測定する、力センサーと、
前記力センサーから信号を受け取り、注射の間に時間の経過とともに力のデータを記録するマイクロコントローラーと、
前記マイクロコントローラーによって制御される聴覚的インジケーターおよび視覚的インジケーターのうちの少なくとも1つと、
を含み、前記マイクロコントローラーは、時間の経過とともに測定される力データが、注射力が所定の長さの時間にわたって所定の閾値を超えたことを示さない限り、前記聴覚的または前記視覚的インジケーターを作動させる、医療用デバイス。
【請求項2】
前記力センサーのアナログ信号を増幅するための増幅器と、増幅された前記信号をデジタルに変換するためのアナログ-デジタルコンバーターと、をさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記マイクロコントローラーに電力を供給する電源をさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記電源からの電力を制御するための電圧調整器と、バッテリーの充電を制御するための充電管理コントローラーと、をさらに含む、請求項3に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記バッテリーは、再充電可能なバッテリーである、請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記マイクロコントローラーを外部デバイスに接続するための、および、バッテリーを充電するための電力を受け取るための、USBポートをさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記力センサーから受け取るデータに基づいてルールにしたがうための、および、前記力センサーによって測定された加えられた力に基づいて前記少なくとも1つのインジケーターを介してフィードバックを提供するための、プログラムインストラクションを含有するメモリーをさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。