(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090966
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】非誤差関数圧縮応力プロファイルによるイオン交換ガラス及びその提供方法
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
C03C21/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078518
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2020182042の分割
【原出願日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】61/604,654
(32)【優先日】2012-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ダナ クレイグ ブックバインダー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード マイケル フィアッコ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル グロス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ルヴォヴィッチ ログノフ
(57)【要約】
【課題】非誤差関数圧縮プロファイルによるイオン交換ガラス及びその提供方法。
【解決手段】貯蔵された張力の所定のレベルにおいて、相補誤差関数に従う応力プロファイルを有するガラスにおいて許容可能であるよりも高い表面圧縮およびより深い層深さ(DOL)を可能にする圧縮応力プロファイルを有するガラス。いくつかの例において、亀裂系の方向を変えることができる埋め込み層または増加する圧縮の極大が、層深さ内に存在する。これらの圧縮応力プロファイルは、相補誤差関数に従う圧縮応力および層深さを作り出す第一イオン交換工程と、ガラス内の応力を部分的に緩和させてより大きなアルカリイオンをより深くまで拡散させる、ガラスの歪点より低い温度での熱処理と、表面において高い圧縮応力を再確立するための短時間での再イオン交換と、を含む3工程プロセスによって達成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および0.05mmから1.3mmの範囲の厚さtを有するガラスであって、
前記ガラス中において前記表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域であって、前記圧縮応力CSが、前記表面において最大値CS1を有し、かつ前記表面からの距離dにより変わる、第一領域と、
前記層深さから前記ガラス中へと広がる、引張応力CT下の第二領域であって、ここでCTはMPaで表され、-37.6ln(t)(MPa)+48.7(MPa)より大きく、前記ガラスの脆性限界を下回る、第二領域と
を含み、
前記圧縮応力の最大値CS1が少なくとも約400MPaである、ガラス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下において、2012年2月29日に出願された米国特許仮出願第61/604654号の優先権を主張するものであり、なお、本出願は当該仮出願の内容に依拠し、ならびに当該仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、非誤差関数圧縮応力プロファイルによるイオン交換ガラス及びその提供方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスの化学強化(またはイオン交換(IOX)とも呼ばれる)は、ガラスの歪点より低い温度での、ガラス内のより小さいカチオン(例えば、一価のアルカリ金属カチオン、例えば、Li+およびNa+など)と、外部媒体中、例えば溶融塩浴など、のより大きな一価のカチオン(例えば、K+)との交換を意味する。当該イオン交換プロセスは、ガラスの表面から相補誤差関数に従う特定の深さまで広がる圧縮応力プロファイルを付与するために使用される。高い圧縮応力は、圧縮層の深さ(層深さまたは「DOL」)にキズが含まれる限り、曲げにおいて高い強度をもたらす。
【0004】
ガラスの両面からの貯蔵された圧縮応力は、貯蔵された張力によって釣り合いが取られ、その許容可能な限界は、所定のガラス厚に対する脆性限界によって決まる。圧縮応力および層深さの限界は、相補誤差関数に従いかつ脆性限界未満に維持される様々な許容可能な組み合わせによって決定される。貯蔵された圧縮応力は、表面から層深さまでにおける相補誤差関数の下のエリアによって表される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、貯蔵された張力の所定のレベルにおいて、相補誤差関数に従う応力プロファイルを有するガラスにおいて許容可能であるものよりも高い表面圧縮およびより深い層深さ(DOL)を可能にする圧縮応力プロファイルを有するガラスを提供する。いくつかの例において、層深さ内に、亀裂系の方向を変えることができる埋め込み層または増加する圧縮の極大が存在する。これらの圧縮応力プロファイルは、相補誤差関数に従う圧縮応力および層深さを作り出すための第一イオン交換工程と、ガラス内の応力を部分的に緩和させてより大きなアルカリイオンをより深くまで拡散させるための、ガラスの歪点より低い温度での熱処理と、表面において高い圧縮応力を再確立するための短時間の再イオン交換とを含む3工程プロセスによって達成される。
【0006】
したがって、本開示の一態様は、表面および厚さtを有するガラスを提供することである。当該ガラスは、ガラス中において表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域であって、当該圧縮応力CSが、表面において最大値CS1を有しかつ相補誤差関数以外の関数により表面からの距離dによって変わる、第一領域と、層深さからガラス中へと広がる、引張応力CT下の第二領域とを含む。
【0007】
本開示の第二の態様は、表面および厚さtを有するイオン交換ガラスを提供することである。当該ガラスは、ガラス内において層深さDOLまで広がる、圧縮応力CS下の第一層を含む。当該第一領域は、圧縮応力CSが第一関数に従って変わる第一セグメントと、圧縮応力CSが第二関数に従って変わる第二セグメントとを含み、この場合、当該第一関数は当該第二関数と異なる。
【0008】
本開示の第三の態様は、ガラス内においてガラスの表面から層深さまで広がる層中の圧縮応力を有するガラスを提供する方法を提供することである。当該方法は、第一カチオンを含む塩でガラスをイオン交換することにより第一圧縮応力および第一層深さを作り出す工程であって、当該第一圧縮応力が相補誤差関数に従ってガラス内の距離により変わる工程と、当該ガラス内の応力を緩和させて当該第一カチオンをより深く当該ガラス内へと拡散させる工程と、第一カチオンを含む塩で当該ガラスを再イオン交換することにより表面において第二圧縮応力を作り出す工程であって、当該圧縮応力が、相補誤差関数以外の関数に従って距離により変わる、工程とを含む。
【0009】
これらおよび他の態様、利点、および顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】イオン交換された平面ガラス物品の断面概略図。
【
図2】圧縮応力が相補誤差関数に従うイオン交換ガラスでの応力のプロット。
【
図3】相補誤差関数に従わない圧縮応力プロファイルの実施例を相補誤差関数に従う圧縮応力プロファイルと比較する概略プロット。
【
図4】相補誤差関数に従う圧縮応力プロファイルを有する従来の強化ガラスの、厚さtの関数としての脆性限界CT
limitのプロット。
【
図5】1)KNO
3塩中において410℃で8時間イオン交換したガラス試料;2)500℃で90分間熱処理したガラス試料;および3)KNO
3塩中において410℃で5分間再イオン交換したガラス試料の、厚さに対する圧縮応力のプロット。
【
図6】1)KNO
3塩中において410℃で8時間イオン交換したガラス試料;2)500℃で90分間熱処理したガラス試料;および3)KNO
3塩中において410℃で30分間再イオン交換したガラス試料の、厚さに対する圧縮応力のプロット。
【
図7】1)KNO
3塩中において410℃で8時間イオン交換したガラス試料;2)500℃で90分間熱処理したガラス試料;および3)KNO
3塩中において410℃で60分間再イオン交換したガラス試料の、厚さに対する圧縮応力のプロット。
【
図8】1)KNO
3塩中において410℃で16時間イオン交換したガラス試料;2)500℃で90分間熱処理したガラス試料;および3)KNO
3塩中において410℃で60分間再イオン交換したガラス試料の、厚さに対する圧縮応力のプロット。
【
図9】イオン交換したガラスの圧縮応力プロファイルのモデル化した実施例のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図全体を通して、同様の参照文字は、同様の部品または対応する部品を示す。別記しない限り、「上」、「下」、「外側」、「内側」などの用語は、便宜上の単語であり、限定用語として解釈すべきではないことも理解されたい。さらに、ある群が要素およびそれらの組み合せの群の少なくとも1つを含むとして記載されている場合は常に、当該群は、個々にまたはお互いとの組み合わせのいずれかにおいて列記された任意の数のそれらの要素を含み得るか、それらの要素から実質的になり得るか、またはそれらの要素からなり得ることは理解されよう。同様に、ある群が要素およびそれらの組み合わせの群の少なくとも1つからなるとして記載されている場合は常に、当該群は、個々にまたはお互いとの組み合わせのいずれかにおいて列記された任意の数のそれらの要素からなり得ることは理解されよう。別記しない限り、値の範囲は、当該範囲の下限および上限が列挙されている場合、その両方ならびにそれらの間の任意の範囲が包含される。本明細書で使用される場合、別記しない限り、単数形は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0012】
概して図面、特に
図1を参照すると、図は、特定の実施形態を説明する目的のためであって、本開示または添付の特許請求の範囲をそれらに限定することを意図するものではないことは理解されるであろう。図面は、必ずしも原寸に比例している必要はなく、当該図面の特定の特徴および特定の図は、明瞭さおよび簡潔さのために、縮尺においてもしくは概略において誇張して示されている場合がある。
【0013】
ガラスの化学強化(イオン交換(IOX)とも呼ばれる)は、ガラスの歪点より低い温度での、ガラス中のより小さいカチオン(例えば、一価のアルカリ金属カチオン、例えば、Li+およびNa+など)と、外部媒体中、例えば溶融塩浴など、におけるより大きい一価のカチオン(例えば、K+)との交換を意味する。当該イオン交換プロセスは、ガラスの表面から相補誤差関数に従う特定の深さまで広がる圧縮応力プロファイルを付与するために使用される。高い圧縮応力は、キズが当該圧縮層の深さ(層深さ、または「DOL」)内に含まれる限り、曲げにおいて高い強度をもたらす。ガラスの両表面からによる貯蔵された圧縮応力は、貯蔵された張力によって釣り合いが取られ、それらの許容可能な限界は、所定のガラス厚に対する脆性限界によって決まる。
【0014】
イオン交換した平面ガラス物品の断面概略図を
図1に示す。ガラス物品100は、厚さt、第一表面110、および第二表面112を有する。いくつかの実施形態において、ガラス物品100は、0.05mm~約4mmの範囲の厚さtを有する。
図1に示された実施形態では、平坦な平面シートもしくはプレートとしてガラス物品100が描かれているが、ガラス物品100は、他の構成、例えば、三次元形状または非平面構成など、を有していてもよい。ガラス物品100は、ガラス物品100のバルク中へと第一表面110から層深さd
1まで広がる第一圧縮層120を有する。
図1に示された実施形態において、ガラス物品100は、第二表面112から第二層深さd
2まで広がる第二圧縮層122も有する。ガラス物品100は、d
1からd
2まで広がる中心領域130も有する。中心領域130は、引張張力または中心張力(CT)下にあり、当該張力は、第一圧縮層120および第二圧縮層122の圧縮応力と釣り合うかまたはそれを打ち消す。第一および第二圧縮層120、122の深さd
1、d
2は、ガラス物品100の第一および第二表面110、112への鋭い衝撃によって引き起こされるキズの伝播からガラス物品100を保護し、その一方で、圧縮応力は、キズが第一および第二圧縮層120、122の深さd
1、d
2を貫通する可能性を最小限に抑える。
【0015】
圧縮応力および層深さの限界は、典型的には、相補誤差関数に従いかつ脆性限界未満に維持される様々な許容可能な組み合わせによって決定される。貯蔵された圧縮応力は、表面から層深さまでの相補誤差関数の下のエリアによって表される。本明細書において使用される場合、用語「層深さ」および「DOL」は、表面圧縮層が最初に張力へと移行するゼロ応力点を意味する。
図2は、第一圧縮層120における、圧縮応力が相補誤差関数200に従うイオン交換ガラスの応力のプロットである。当該圧縮応力は、ガラスの表面(深さ=0μm)において最大値を有し、圧縮応力が張力に移行して総応力がゼロに等しくなる層深さDOLに達するまでは第一圧縮層120を通して一定の割合で減少する。
【0016】
深い圧縮層は、損傷抵抗性、すなわち、ガラスへのより激しい接触によってキズの深さがより大きくなる場合に強度を維持する能力、をもたらす。高い圧縮応力および深い圧縮層深さの両方を達成することが望ましくあり得る一方で、本明細書において「脆性限界」と呼ばれる安全限界を貯蔵されたエネルギーが超えるときに脆性挙動へ移行することによって限界が決まる。貯蔵された圧縮応力は、表面から層深さまでの相補誤差関数200の下のエリアAによって表される。両表面からの貯蔵された圧縮応力は、貯蔵された中央張力CTによって釣り合いが取られ、それの許容可能な限界は、所定のガラス厚に対する脆性限界によって決まる。圧縮応力および層深さの限界は、相補誤差関数200に従いかつ脆性限界未満に維持される様々な許容可能な組み合わせによって決定される。
【0017】
本明細書において説明されるように、これらに限定されるわけではないが、携帯型および定置型の電子デバイスのためのカバーガラス、建築および自動車の艶だし加工/窓、およびガラス容器などの用途のために損傷抵抗性である化学強化された-すなわち、イオン交換された-ガラスが提供される。当該ガラスは、ガラスの表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域(例えば、
図1の第一および第二圧縮層120、122など)と、当該層深さからガラスの中央領域もしくは内部領域中へと広がる、引張応力もしくは中央張力CT下の第二領域(例えば、
図1の中央領域130など)とを有する。
【0018】
圧縮応力CSは、その表面での最大圧縮応力CS
1と、相補誤差関数とは異なる(すなわち、それ以外の)関数に従って表面からの距離dにより変わる圧縮応力とを有する。本明細書において説明されるガラスにおける可能な圧縮応力プロファイルのそのような圧縮応力関数310、320の実施例が、
図3に図式的に示され、相補誤差関数と比較されている。特に圧縮応力関数320を参照すると、領域120(
図1)は、圧縮応力関数320が第一相補誤差関数である第一セグメント120aと、第一セグメント120aと中央領域130との間に位置されかつ圧縮応力が第一相補誤差関数とは異なる第二関数に従う、第二セグメント120bとを含む。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「誤差関数」および「Erf」は、0とx/σ√2との間での正規化ガウス関数の積分の2倍である関数を意味し、「相補誤差関数」および「Erfc」は、1から誤差関数を引いたものに等しく、すなわち、Erfc(x) = 1 -Erf (x)である。
【0020】
第一セグメント120aは、第一表面110から深さd120aまで広がっており、ガラス100の表面圧縮もしくは圧縮応力CSを形成する。いくつかの実施形態において、当該圧縮応力は、少なくとも400MPaであり、他の実施形態では、少なくとも約600MPaであり、さらに他の実施形態では、少なくとも約800MPaである。第一および第二圧縮層120、122のそれぞれにおける層深さDOLは、少なくとも約50μmであり、いくつかの実施形態では、少なくとも約100μmである。
【0021】
第二セグメント120bの関数は、第二相補誤差関数,拡散テール、または同様のものを含み得る。第二セグメント120bは、d
120bと層深さDOLとの間に位置する。
図3における圧縮応力関数310、320はそれぞれ、少なくとも1つの変曲点を有し、圧縮応力は、ガラスの表面110の下において極大CS
2および/または極小CS
3に達する。いくつかの実施形態において、第一圧縮層120は、3つ以上のセグメントを含み得、この場合、各セグメントは、隣接するセグメントを特徴付ける関数以外の関数に従う圧縮応力を有する。
【0022】
主要な両表面(
図1の110、112)における貯蔵された圧縮応力は、ガラスの中央領域(130)に貯蔵された張力によって釣り合いが取られ、これらの許容可能な限界は、所定のガラス厚に対する脆性限界によって決まる。脆性限界および脆性は、Kristen L.Barefootらにより2009年8月7日に「Strengthened Glass Articles and Method of Making」の名称において出願された米国特許第8,075,999号明細書に記載されており、当該特許は、2008年8月8日に出願された米国特許仮出願第61/087,324号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。米国特許第8,075,999号明細書に記載されているように、脆性または脆性挙動は、以下:強化ガラス物品(例えば、プレートまたはシート)の複数の小片(例えば、1mm)への破壊;ガラス物品の単位面積あたりに形成される断片の数;ガラス物品内における初期亀裂から分岐する複数の亀裂:および元の位置から特定の距離(例えば、約5cm、または約2インチ)への少なくとも1つの断片の激しい放出;ならびに、前述の破壊(サイズおよび密度)、亀裂、および放出挙動の任意の組み合わせ、のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる。用語「脆性挙動」および「脆性」は、いかなる外部耐久物、例えば、コーティング、接着層、または同様のものなど、も有さない強化ガラス物品での激しいまたは強力な断片化におけるそれらのモードを意味する。コーティング、接着層、および同様のものは、本明細書において説明される強化ガラスと併用することができるが、そのような外部耐久物は、当該ガラス物品の脆性または脆性挙動を特定する際には使用していない。
【0023】
圧縮応力CSおよび層深さDOLの限界は、相補誤差関数に従いかつ脆性限界未満に維持される様々な許容可能な組み合わせによって決まる。
図4は、米国特許第8,075,999号によって教示されるような、相補誤差関数に従う圧縮応力プロファイルを有する従来の強化ガラスでの、厚さtの関数としての脆性限界CT
limitのプロットである。ガラス物品は、
図4に示された線の上方において脆性である。中央張力CTは、以下の式:
【0024】
【0025】
を使用することにより、圧縮応力CS、層深さDOL、およびガラスの厚さtから決定することができ、この場合、当該式は、誤差関数プロファイルの三角形近似に関する中央張力CTの上限を表す。従来の強化ガラス(すなわち、圧縮応力プロファイルが単一の相補誤差関数によって特徴付けられるガラス)での、ガラスの所定の厚さtに対するCTlimitは、以下の式:
【0026】
【0027】
によって特定することができ、ここで、CTlimit、ガラス厚tは、ミリメートル(mm)で表されており、この場合、t≦1mmであり、ならびにln(t)は、厚さtの自然対数(底はe)である。
【0028】
したがって、相補誤差関数圧縮応力プロファイルを有する従来の強化ガラスを脆性限界未満に維持するためには、以下の式3に示されるようなCSおよびDOLが必要となる。
【0029】
【0030】
本明細書において説明されるガラスおよび方法は、相補誤差関数プロファイルを使用する場合に許容可能であろう別の方式よりも高い表面圧縮応力およびより深い層深さの組み合わせを可能にする圧縮応力プロファイルを提供する。式3に示されるように、CTlimitは、依然として、従来の相補誤差関数プロファイル三角形近似から算出されるが、本明細書において説明されるガラスの中央張力CTは、CTlimitを超え得る。
【0031】
【0032】
本明細書において説明されるガラスは、イオン交換によって化学的に強化された任意のガラスを含み得るか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態において、当該ガラスは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。
【0033】
一実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約64モル%~約68モル%のSiO2;約12モル%~約16モル%のNa2O;約8モル%~約12モル%のAl2O3;0モル%~約3モル%のB2O3;約2モル%~約5モル%のK2O;約4モル%~約6モル%のMgO;および0モル%~約5モル%のCaO、を含み、この場合、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%;Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%;5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%;(Na2O+B2O3)-Al2O3≧2モル%;2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%;および4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%である。当該ガラスは、Adam J.Ellisonらによって2007年7月27日に「Down-Drawable, Chemically Strengthened Glass for Cover Plate」の名称で出願された米国特許第7,666,511号明細書に記載されており、当該特許は、2007年5月18日に出願された米国特許仮出願第60/930,808号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0034】
別の実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、アルミナおよび酸化ホウ素のうちの少なくとも1つと、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物のうちの少なくとも1つとを含み、この場合、-15モル%≦(R2O+R’O-Al2O3-ZrO2)-B2O3≦4モル%であり、ここで、Rは、Li、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つであり、ならびにR’は、Mg、Ca、Sr、およびBaのうちの1つである。いくつかの実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約62モル%~約70モル%のSiO2;0モル%~約18モル%のAl2O3;0モル%~約10モル%のB2O3;0モル%~約15モル%のLi2O;0モル%~約20モル%のNa2O;0モル%~約18モル%のK2O;0モル%~約17モル%のMgO;0モル%~約18モル%のCaO;および0モル%~約5モル%ZrO2を含む。当該ガラスは、Matthew J.Dejnekaらによって2008年11月25日に「Glasses Having Improved Toughness And Scratch Resistance」の名称で出願された米国特許出願第12/277,573号明細書に記載されており、当該特許出願は、2008年11月29日に出願された米国特許仮出願第61/004,677号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0035】
別の実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約60モル%~約70モル%のSiO2;約6モル%~約14モル%のAl2O3;0モル%~約15モル%のB2O3;0モル%~約15モル%のLi2O;0モル%~約20モル%のNa2O;0モル%~約10モル%のK2O;0モル%~約8モル%のMgO;0モル%~約10モル%のCaO;0モル%~約5モル%のZrO2;0モル%~約1モル%のSnO2;0モル%~約1モル%のCeO2;約50ppm未満のAs2O3;および約50ppm未満のSb2O3を含み、この場合、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。当該ガラスは、Sinue Gomezらによって2009年2月25日に「Fining Agents for Silicate Glasses」の名称で出願された米国特許出願第12/392,577号明細書に記載されており、当該特許出願は、2008年2月26日に出願された米国特許仮出願第61/067,130号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0036】
別の実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、SiO2およびNa2Oを含み、この場合、当該ガラスは、当該ガラスが35キロポアズ(kpoise)の粘度を有する温度T35kpを有し、この場合、ジルコンが崩壊してZrO2およびSiO2を形成する温度Tbreakdownは、T35kpを超える。いくつかの実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約61モル%~約75モル%のSiO2;約7モル%~約15モル%のAl2O3;0モル%~約12モル%のB2O3;約9モル%~約21モル%のNa2O;0モル%~約4モル%のK2O;0モル%~約7モル%のMgO;および0モル%~約3モル%のCaOを含む。当該ガラスは、Matthew J.Dejnekaらによって2010年8月10日に「Zircon Compatible Glasses for Down Draw」の名称で出願された米国特許出願第12/856,840号明細書に記載されており、当該特許出願は、2009年8月29日に出願された米国特許仮出願第61/235,762号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0037】
別の実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも50モル%のSiO2と、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の調整剤とを含み、この場合、[(Al2O3(モル%)+B2O3(モル%))/(Σアルカリ金属調整剤(モル%))]>1である。いくつかの実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、50モル%~約72モル%のSiO2;約9モル%~約17モル%のAl2O3;約2モル%~約12モル%のB2O3;約8モル%~約16モル%のNa2O;および0モル%~約4モル%のK2Oを含む。当該ガラスは、Kristen L.Barefootらによって2010年8月18日に「Crack And Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom」の名称で出願された米国特許出願第12/858,490号明細書に記載されており、当該特許出願は、2009年8月21日に出願された米国特許仮出願第61/235,767号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0038】
別の実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、SiO2、Al2O3、P2O5、および少なくとも1種のアルカリ金属酸化物(R2O)を含み、この場合、0.75≦[(P2O5(モル%)+R2O(モル%))/M2O3(モル%)]≦1.2であり、ここで、M2O3=Al2O3+B2O3である。いくつかの実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約40モル%~約70モル%のSiO2;0モル%~約28モル%のB2O3;0モル%~約28モル%のAl2O3;約1モル%~約14モル%のP2O5;および約12モル%~約16モル%のR2Oを含み、ならびに、ある特定の実施形態では、約40~約64モル%のSiO2;0モル%~約8モル%のB2O3;約16モル%~約28モル%のAl2O3;約2モル%~約12%のP2O5;および約12モル%~約16モル%のR2Oを含む。当該ガラスは、Dana C.Bookbinderらによって2011年11月28日に「Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold」の名称で出願された米国特許出願第13/305,271号明細書に記載されており、当該特許出願は、2010年11月30日に出願された米国特許仮出願第61/417,941号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0039】
さらなる他の実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも約4モル%のP2O5を含み、この場合、(M2O3(モル%)/RXO(モル%))<1であり、M2O3=Al2O3+B2O3であり、RXOは、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。いくつかの実施形態において、当該一価および二価のカチオン酸化物は、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、およびZnOからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、当該ガラスは、0モル%のB2O3を含む。当該ガラスは、Timothy M.Grossによって2011年11月16日に「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」の名称で出願された米国特許仮出願第61/560,434号明細書に記載されており、なお、当該仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0040】
さらなる別の実施形態において、当該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2および少なくとも約11モル%のNa2Oを含み、圧縮応力は、少なくとも約900MPaである。いくつかの実施形態において、当該ガラスは、さらに、Al2O3と、B2O3、K2O、MgO、およびZnOのうちの少なくとも1つとを含み、この場合、-340+27.1・Al2O3-28.7・B2O3+15.6・Na2O-61.4・K2O+8.1・(MgO+ZnO)≧0モル%である。特定の実施形態において、当該ガラスは、約7モル%~約26モル%のAl2O3;0モル%~約9モル%のB2O3;約11モル%~約25モル%のNa2O;0モル%~約2.5モル%のK2O;0モル%~約8.5モル%のMgO;および0モル%~約1.5モル%のCaOを含む。当該ガラスは、Matthew J.Dejnekaらによって2011年7月1日に「Ion Exchangeable Glass with High Compressive Stress」の名称で出願された米国特許仮出願第61/503,734号明細書に記載されており、なお、当該仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記において説明したアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、リチウム、ホウ素、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、アンチモン、およびヒ素のうちの少なくとも1つを実質的に含有しない(すなわち、0モル%を含有する)。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記において説明したアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、当技術分野において公知のプロセス、例えば、スロットドロー法、フュージョンドロー法、リドロー法、および同様の方法など、によってダウンドロー可能であり、少なくとも130キロポアズのリキダス粘度を有する。
【0043】
相補誤差関数に従わない圧縮応力プロファイルを有するガラス、例えば、上記において説明したガラスなど、を提供するための方法も提供する。当該ガラスは、イオン交換媒体によって第一イオン交換される。当該イオン交換媒体は、溶融塩浴、ゲル、ペースト、または同様のものであり得、ならびに第一カチオンを含む塩を含む。当該第一カチオンは、第一層深さまで、ガラス中のより小さい第二カチオンと置き換わり、第一層深さ内に第一圧縮応力を作り出す。当該第一圧縮応力は、相補誤差関数に従ってガラス中へと距離により変わる。この工程は、任意の望ましいレベルで出発圧縮応力および層深さを固定するように変更することができ、ならびに脆性限界CTlimitによって束縛される必要もない。
【0044】
イオン交換の後、当該表面圧縮応力が緩和され、第一層深ささよりも深い第二層深さまで第一イオンがガラス中へとより深く拡散される。いくつかの実施形態において、この工程は、ガラスを当該ガラスの歪点より低い温度で加熱する工程を含む。イオン交換されたガラスをこの温度に加熱する工程により、結果として、表面より下のある深さにおいて圧縮応力の極大、すなわち、ガラスの表面より下に「埋め込まれた」圧縮応力最大値、が得られる。
【0045】
ガラスの表面圧縮応力を緩和する工程の後、当該ガラスは、表面圧縮応力を再確立するために再びイオン交換される。第一イオン交換工程と同様に、当該イオン交換はガラスを媒体に接触させることによって実施され、この場合、当該媒体は、溶融塩浴、ゲル、ペースト、または同様のものであり得、ならびに、ガラス中に第二表面圧縮応力を作り出すための第一カチオンを含む塩を含む。いくつかの実施形態において、当該第二イオン交換は、第一イオン交換より短い期間において実施される。
【0046】
ガラスの第二イオン交換の後に得られる圧縮応力プロファイル(すなわち、圧縮応力CSの変化)は、相補誤差関数以外の(ならびに相補誤差関数とは異なる)関数に従って変わり、ならびに、上記において前に説明した添付の図に示される関数の形態を取り得る。
【0047】
本明細書において説明したガラスおよび方法は、脆性限界未満に維持しつつ、CSおよびDOLのより高い組み合わせを達成する。埋め込まれた圧縮応力の増加および極大が達成される事例では、結果として、亀裂系の再方向付けが生じ得る。より高い圧縮応力は、ハンドリング試験、落球試験、および出来上がった状態のままでのリング・オン・リング強度試験にも当該ガラスを合格させ得る。より深い層深さも、損傷抵抗性、すなわち、より激しい接触によりキズの深さがより大きくなる場合に強度を維持する能力、を提供する。
【実施例0048】
以下の実施例は、本明細書において説明したガラスおよび方法の特徴および利点を説明するものであり、それらに当該開示または添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0049】
以下の名目上の組成:69モル%のSiO2;10モル%のAl2O3;14モル%のNa2O;1モル%のK2O;6モル%のMgO;0.5モル%のCaO;0.01モル%のZrO2;0.2モル%のSnO2;および0.01モル%のFe2O3を有するガラスの4つの実施例を調製し、本明細書において説明した方法に従ってイオン交換して、単一の相補誤差関数に従わない応力プロファイルを達成した。応力測定および深さプロファイルは、イオン交換したガラスの650μm直径のロッドにおいて干渉法を使用して作成した。当該方法は、ロッドの最初の5~10μm内側での応力の測定に限定した。1.3mm厚の平面ガラス試料上でのFSM測定を使用して、表面圧縮の補正を行った。
【0050】
当該方法は、3つの工程からなる。第一工程は、ガラスをイオン交換して標準的な相補誤差関数応力プロファイルを持たせることである。
図4~6に示された試料のイオン交換の工程1は、KNO
3塩浴中への410℃で8時間の浸漬処理であり、これにより、結果として、各試料に対し、44ミクロンのDOLおよび595MPaのCSを有する典型的な相補誤差関数プロファイルが得られた。この処理により、結果として、約44μmの層深さ(DOL)および約595MPaの圧縮応力(CS)が得られたが、工程1は、任意の望ましいレベルに出発CSおよびDOLを固定するように変更することができ、ならびに、脆性試験によって確定された中央張力CT
limitに束縛される必要はない。
【0051】
工程2において、イオン交換されたガラス試料を、当該ガラスの歪点より低い温度で、所望の時間加熱処理することにより、DOLの深さを広げるためにカリウムの拡散を促し、それと同時に、当該試料の表面圧縮応力を緩和した。この工程により、結果として、表面ではなくガラスの表面の下において、埋め込まれた圧縮応力の最大が得られた。
図5~7に示された試料を、N
2雰囲気中において500℃で90分間加熱処理し、それにより、結果として、工程1において達成されたDOLを超えるDOLの拡張が生じた。加熱処理温度および時間の選択は、所定の温度での所定のガラス組成に対する応力緩和の速度および拡散の速度に応じて変わる。
【0052】
工程3において、短い時間での第二イオン交換により、表面圧縮応力が再確立される。
図5において、410℃で5分間の第二イオン交換により、結果として、工程2および3からのプロファイルの重ね合わせによる表面でのCSのスパイクとCSが増加する埋め込み領域とが得られた。工程3により、結果として、約64μmの総DOLおよび約684MPaのCSを有する埋め込み圧縮層も得られた。
【0053】
図6において、410℃で30分間の第二イオン交換により、結果として、表面においてより高いCSが得られ、工程2および3からのプロファイルの重ね合わせから、肩が表れた。工程3により、約59ミクロンの総DOLおよび約744MPaのCSを有する埋め込み圧縮層も得られた。
【0054】
図7において、410℃で60分間の第二イオン交換により、結果として、ガラス中へより深く広がる表面CSのスパイクを有するプロファイルが得られた。工程3により、約55ミクロンの総DOLおよび約749MPaのCSを有する埋め込み圧縮層も得られた。
【0055】
図8に示されたガラス試料を、工程1において、KNO
3塩中において450℃で16時間イオン交換し、その結果として、典型的な相補誤差関数プロファイルを得た。工程2において、当該ガラス試料を500℃で90分間熱処理して、表面における圧縮応力を緩和させ、より深くまでのカリウムイオンの拡散を促し、結果として、より深い圧縮層深さを得た。工程3において、当該試料を、KNO
3塩中において410℃で60分間再イオン交換して、高い表面圧縮を再確立させた。工程3により、結果として、約90μmの総DOLおよび約740MPaのCSを有する埋め込み圧縮層も得られた。
【0056】
平面ガラスの圧縮応力プロファイルのモデル化された実施例を
図9に示す。深さLの関数A(L)として表される全応力Aは、以下のように記述することができる。
【0057】
【0058】
用語A1は、応力緩和効果の寄与を考慮しない、第一イオン交換工程後のピーク圧縮応力であり、CT1は、第一イオン交換工程およびその後の緩和工程の後の圧縮応力であり、ならびにb1およびErf(L/b1)は、それぞれ、第一イオン交換工程に関連する、イオン交換された層の深さと応力プロファイルの誤差関数である。用語b2は、第一イオン交換工程後の応力緩和の深さである。A2は、第一イオン交換工程の後の応力緩和工程後のピーク圧縮応力である。用語b3およびCT2は、それぞれ、第二イオン交換工程後のイオン交換された層の深さと中央張力調整である。
【0059】
第一イオン交換およびその後の緩和工程の後の中央張力CT1は、式(1)を使用して、以下の式:
【0060】
【0061】
によって得られ、ここで、圧縮応力CS1は、圧縮層のDOL2に「埋め込まれた(すなわち、ガラスの表面の下に位置された)」圧縮応力のピーク値または極大(
図9におけるX)である。第二イオン交換工程の後、中央張力は第二値CT2まで減少し、CS1およびDOL1は、それぞれ、CS1-1およびDOL1-1まで減少し、ならびに最大圧縮応力CS2が表面(厚さ=0)において達成される。
【0062】
【0063】
いくつかの実施形態において、総引張応力CT=CT1+CT2は、脆性限界CTlimit(式(3))以下であるべきである。当該総引張応力CTは、式(6)および(7)を合わせることによって得られる。
【0064】
【0065】
本開示の態様は、表面および厚さtを有するガラスであって、前記ガラス中において前記表面から層深さDOLまで広がる、圧縮応力下の第一領域であって、前記圧縮応力CSが、前記表面において最大値CS1を有し、かつ相補誤差関数以外の関数に従って前記表面からの距離dにより変わる、第一領域と、前記層深さから前記ガラス中へと広がる、引張応力CT下の第二領域とを含むガラスである。
【0066】
本開示の別の態様として、前記第一領域が、a.前記表面から第一深さd1まで広がる第一セグメントであって、前記深さd1が前記層深さDOL未満であり、前記圧縮応力CSが第一関数に従って変わる、第一セグメントと、b.前記第一深さd1から前記層深さDOLまで広がる第二セグメントであって、前記圧縮応力CSが第二関数に従って変わり、前記第一関数が前記第二関数とは異なる、第二セグメントと、を含むガラスでもよい。
本開示の別の態様として、前記第一関数が第一相補誤差関数であるガラスでもよい。
【0067】
本開示の別の態様として、前記第二関数が第二相補誤差関数または拡散テールであるガラスでもよい。
【0068】
本開示の別の態様として、前記圧縮応力が前記第二セグメント中に極大CS2を有するガラスでもよい。
本開示の別の態様として、CS1>CS2であるガラスでもよい。
本開示の別の態様として、MPaで表される前記引張応力CTが、-36.71n(t)(MPa)+48.7(MPa)以上であるガラスでもよい。
本開示の別の態様として、前記ガラスがアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであってもよい。
【0069】
本開示の別の態様として、前記最大圧縮応力CS1が少なくとも約400MPaであるガラスであってもよい。
【0070】
本開示のさらに別の態様は、ガラス内において該ガラスの表面から層深さまで広がる層中に圧縮応力を有するガラスを提供する方法であって、前記ガラスを、第一カチオンを含む塩でイオン交換することにより第一圧縮応力および第一層深さを作り出す工程であって、前記第一圧縮応力が相補誤差関数に従って前記ガラス内において距離により変わる、工程と、前記ガラスを前記ガラスの歪点より低い温度で加熱することにより、前記ガラス内の応力を緩和し、前記第一カチオンを前記ガラス中へとより深く拡散させる工程と、前記ガラスを、前記第一カチオンを含む塩で再イオン交換することにより前記表面において第二圧縮応力を作り出す工程であって、前記第二圧縮応力が前記相補誤差関数以外の関数に従って距離により変わる、工程と、を含む方法である。
【0071】
説明目的のために、典型的な実施形態について詳しく述べてきたが、前述の説明は、本開示または添付の特許請求の範囲に対する限定であると見なされるべきではない。したがって、本開示または添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者は、さまざまな変更、適合、および代替を想起し得る。