(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090984
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】マーケティング情報分析装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0201 20230101AFI20230622BHJP
【FI】
G06Q30/0201
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078639
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2021164507の分割
【原出願日】2017-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】509286983
【氏名又は名称】株式会社ロイヤリティマーケティング
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河原 大地
(57)【要約】
【課題】多数の顧客の中から真に有望な顧客を高い確率で選定できるようにする。
【解決手段】マーケティングサーバSVにおいて、複数の顧客情報データベースDB1~DBnから各ユーザの購入情報を収集し、この収集した購入情報をもとにユーザ別、所得層別および地域エリア別の家計簿情報を作成する。そして、先ず所得層別の家計簿情報および地域エリア別の家計簿情報をもとに、支出項目が同一の商品またはサービス群の中で注目する商品またはサービスの消費比率がしきい値以上となる所得層および地域エリアを選択し、この選択された所得層および地域エリアのいずれか一方または両方に属するユーザ集合の中から、支出項目が同一の商品またはサービス群の中で注目する商品またはサービスの消費比率がしきい値以上となるユーザをアプローチ対象ユーザとして選択する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザの各々について、複数種類の商品またはサービスに対する購入情報を管理する購入情報管理データベースから、前記複数のユーザの購入情報を取得する取得手段と、
前記取得された購入情報に基づいて、前記ユーザごとに、当該ユーザが購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する生成手段と、
前記ユーザごとに、前記生成された消費内訳を表す情報に基づいて、前記複数種類の商品またはサービスのうち注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、前記複数のユーザの中からアプローチ対象のユーザを選択する選択手段と
を具備するマーケティング情報分析装置。
【請求項2】
前記取得手段は、一人のユーザの購入情報が複数の購入情報管理データベースに分散管理されている場合に、前記複数の購入情報管理データベースに対しそれぞれアクセスして前記ユーザに係る複数の購入情報を取得し、当該取得された複数の購入情報をユーザ別に統合してメモリに保存する、請求項1に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項3】
前記生成手段は、
前記ユーザを複数の所得層に分類し、前記所得層ごとに当該所得層に分類されたユーザ集合が購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する手段
をさらに備え、
前記選択手段は、
前記所得層ごとに、前記ユーザ集合の消費内訳を表す情報に基づいて、前記注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、前記複数の所得層の中からアプローチ対象の所得層を選択する手段と、
前記選択された所得層に分類されたユーザ集合に属する複数のユーザの中から、当該各ユーザが購入した前記注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率に基づいて、アプローチ対象のユーザを選択する手段と
を備える、請求項1または2に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項4】
前記生成手段は、
前記ユーザをその居所または購入場所に応じて複数の地域エリアに分類し、前記地域エリアごとに当該地域エリアに分類されたユーザ集合が購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する手段
をさらに備え、
前記選択手段は、
前記地域エリアごとに、前記ユーザ集合の消費内訳を表す情報に基づいて、前記注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、前記複数の地域エリアの中からアプローチ対象の地域エリアを選択する手段と、
前記選択された地域エリアに分類されたユーザ集合に属する複数のユーザの中から、当該各ユーザが購入した前記注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率に基づいて、アプローチ対象のユーザを選択する手段と
を備える、請求項1または2に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項5】
前記生成手段は、支出項目を複数の項目に区分した家計簿データを備え、前記ユーザごと、前記所得層ごと、または前記地域エリアごとに、前記取得されたユーザまたはユーザ集合の購入情報に基づいて、前記ユーザまたはユーザ群が購入した商品またはサービスとその購入額を前記家計簿データの該当する項目に分類することにより、前記消費内訳を表す情報を生成する、請求項3または4に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項6】
前記選択手段は、
前記家計簿データを用いて生成された消費内訳を表す情報に基づいて、前記注目する第1の商品またはサービスと、当該第1の商品またはサービスと同一の支出項目に分類された他の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、前記アプローチ対象のユーザ、所得層または地域エリアを選択する、請求項5に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項7】
プロセッサおよびメモリを有する情報処理装置が実行するマーケティング情報分析方法であって、
前記情報処理装置が、複数のユーザの各々について、複数種類の商品またはサービスに対する購入情報を管理する購入情報管理データベースから、前記複数のユーザの購入情報を取得する過程と、
前記情報処理装置が、前記取得された購入情報に基づいて、前記ユーザごとに、当該ユーザが購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する過程と、
前記情報処理装置が、前記ユーザごとに、前記生成された消費内訳を表す情報に基づいて、前記複数種類の商品またはサービスのうち注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出する過程と、
前記情報処理装置が、前記算出された消費比率に基づいて、前記複数のユーザの中からアプローチ対象のユーザを選択する過程と
を具備するマーケティング情報分析方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のマーケティング情報分析装置が具備する前記各手段としてプロセッサを動作させるマーケティング情報分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マーケティング情報分析装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータによるデータマイニング処理により、顧客情報を分析して企業活動にとって有益な情報を得ようとする技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、分析対象となる地域に対し複数のエリアクラスタを設定し、エリアクラスタごとに当該エリアに居住する顧客の住民属性をもとに顧客一人当たりの平均収益を算出して高収益エリアクラスタを特定し、当該高収益エリアクラスタに属するエリアに居住する顧客の中から有望な顧客を選定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載された技術は、単に顧客からの収益、つまり顧客の購入額のみに着目して顧客を選定しているため、顧客が真に有望な顧客であるかを判断することは困難だった。例えば、スポーツ用品の量販店がスポーツに対する関心が高い顧客を有望な顧客として選定しようとする場合、単にスポーツ用品の購入額が多い顧客を選定してもこの顧客がスポーツに関心の高い顧客であるとは限らない。何故なら、スポーツ用品の購入額が多くても、子供の授業や付き合いで義務的に購入しているだけで、特にスポーツに対し関心を持っているとは言えないからである。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、多数の顧客の中から真に有望な顧客を高い確率で選定できるようにしたマーケティング情報分析装置、方法およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明の第1の態様は、マーケティング情報分析装置または方法が、複数のユーザの各々について、複数種類の商品またはサービスに対する購入情報を管理する購入情報管理データベースから上記複数のユーザの購入情報を取得する手段または過程と、上記取得された購入情報に基づいて、上記ユーザ別に、上記複数種類の商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する手段または過程と、上記ユーザごとに、上記生成された消費内訳を表す情報に基づいて、前記複数種類の商品またはサービスのうち注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、上記複数のユーザの中からアプローチ対象のユーザを選択する手段または過程とを具備するようにしたものである。
【0007】
この発明の第2の態様は、一人のユーザの購入情報が複数の購入情報管理データベースに分散管理されている場合に、上記ユーザの購入情報を取得する手段が、上記複数の購入情報管理データベースに対しそれぞれアクセスして上記ユーザに係る複数の購入情報を取得し、当該取得された複数の購入情報をユーザ別に整理してメモリに保存するようにしたものである。
【0008】
この発明の第3の態様は、上記消費内訳を表す情報を生成する手段が、上記ユーザを複数の所得層に分類し、当該所得層別に当該所得層に分類されたユーザ集合が購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する手段をさらに備え、かつ上記ユーザを選択する手段が、上記所得層ごとに、上記ユーザ集合の消費内訳を表す情報に基づいて、上記注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、上記複数の所得層の中からアプローチ対象の所得層を選択する手段と、この選択された所得層に分類されたユーザ集合に属する複数のユーザの中から、当該各ユーザが購入した第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率に基づいてアプローチ対象のユーザを選択する手段とを備えるようにしたものである。
【0009】
この発明の第4の態様は、上記消費内訳を表す情報を生成する手段が、上記ユーザをその居所または購入場所に応じて複数の地域エリアに分類し、上記地域エリア別に当該地域エリアに分類されたユーザ集合が購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する手段をさらに備え、かつ上記ユーザを選択する手段が、上記地域エリアごとに、上記ユーザ集合の消費内訳を表す情報に基づいて、上記注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、上記複数の地域エリアの中からアプローチ対象の地域エリアを選択する手段と、この選択された地域エリアに分類されたユーザ集合に属する複数のユーザの中から、当該各ユーザが購入した第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率に基づいて、アプローチ対象のユーザを選択する手段とを備えるようにしたものである。
【0010】
この発明の第5の態様は、上記ユーザを選択する手段が、支出項目を複数の項目に区分した家計簿データを備え、ユーザ別、所得層別または地域エリア別に、上記取得された上記ユーザまたはユーザ集合の購入情報に基づいて、上記ユーザまたはユーザ群が購入した商品またはサービスとその購入額を上記家計簿データの該当する項目に分類することにより、上記消費内訳を表す情報を生成するようにしたものである。
【0011】
この発明の第6の態様は、上記ユーザを選択する手段が、上記家計簿データを用いて生成された消費内訳を表す情報に基づいて、注目する第1の商品またはサービスと、当該第1の商品またはサービスと同一の項目に分類された他の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、アプローチ対象のユーザ、所得層または地域エリアを選択するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の第1の態様によれば、ユーザごとに、それぞれその購入情報から商品またはサービスの消費比率が算出され、この算出された消費比率に基づいてアプローチ対象のユーザが選択される。一般に、複数種類の商品またはサービスのうち消費比率が相対的に高い商品またはサービスにはユーザの購入意欲が反映されたものが多い。従って、上記消費比率に着目すれば、アプローチ対象として、注目する商品又はサービスに対する購入意欲の高いユーザを選択することが可能となる。
【0013】
この発明の第2の態様によれば、一人のユーザの購入情報が複数の購入情報管理データベースからそれぞれ取得され、互いに関連付けられて保存される。このため、例えば一人のユーザが共通ポイントカードを用いて購入した商品またはサービスの購入情報、或いは複数のクレジットカードやポイントカードを使い分けて購入した商品またはサービスの購入情報が複数の購入情報管理データベースに分散して保存されている場合でも、購入情報を幅広く漏れなく収集することができ、これにより当該ユーザの消費内訳をより正確に把握することが可能となる。
【0014】
この発明の第3の態様によれば、所得層ごとに、当該所得層に属するユーザ集合による商品またはサービスの消費比率が算出され、この算出結果に基づいて複数の所得層の中から注目する商品またはサービスの消費比率が高いユーザが多い所得層が先ず選択される。そして、この選択された所得層に属するユーザ群の中から、注目する商品またはサービスの消費比率が高いユーザがアプローチ対象として選択される。このため、注目する商品またはサービスを多く購入するユーザが所得と相関がある場合には、当該注目する商品またはサービスに対する購入意欲の高いユーザを効率良く絞り込むことが可能となる。
【0015】
この発明の第4の態様によれば、地域エリアごとに、当該地域エリアを主たる行動エリアとするユーザ集合による商品またはサービスの消費比率が算出され、この算出結果に基づいて複数の地域エリアの中から、注目する商品またはサービスの消費比率が高い地域エリアが先ず選択される。そして、この選択された地域エリアに属するユーザ群の中から、注目する商品またはサービスの消費比率が高いユーザが選択される。このため、注目する商品またはサービスを多く購入するユーザと当該ユーザの行動エリアとの間に相関がある場合に、当該注目する商品またはサービスに対する購入意欲の高いユーザを効率良く絞り込むことが可能となる。
【0016】
この発明の第5の態様によれば、家計簿データを利用することで、ユーザが購入した商品またはサービスが種類ごとに分類される。家計簿は、個人消費を最も端的に表すツールである。このため、家計簿データをテンプレートとして利用することで、ユーザが購入した商品またはサービスに関する情報を効率良くかつ的確に項目ごとに分類することができる。従って、特別な分類アプリケーションを用意することなく、消費内訳を表す情報を生成することが可能となる。
【0017】
この発明の第6の態様によれば、注目する第1の商品またはサービスの消費比率が、上記家計簿データの同一の支出項目に分類された他の商品またはサービスに対する消費比率として算出される。例えば、注目する商品またはサービスが教養・娯楽費類の支出項目に分類されている場合に、同じ教養・娯楽費類の支出項目に分類されている他の商品またはサービスに対する消費比率として算出される。このため、注目する商品またはサービスに対するユーザの購入実績の特徴を的確に判定することが可能となり、これにより注目する商品またはサービスに対し購入意欲の強いユーザを高い確率で選択することが可能となる。
【0018】
すなわちこの発明の各態様によれば、多数の顧客の中から真に有望な顧客を高い確率で選定することが可能なマーケティング情報分析装置、方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係るマーケティング情報分析装置を備えたシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係るマーケティング情報分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示したマーケティング情報分析装置によるマーケティング情報分析処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示したマーケティング情報分析処理におけるユーザ絞り込み処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3に示したマーケティング情報分析処理におけるアプローチ対象情報の作成処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図3に示したマーケティング情報分析処理で使用する家計簿の一例を示す図。
【
図7】
図7は、
図3に示したマーケティング情報分析処理により作成される個人別家計簿、所得層別家計簿および地域別家計簿の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(構成)
図1は、この発明の一実施形態に係るマーケティング情報分析装置を備えたシステムの全体構成を示す図であり、図中SVがマーケティング情報処理装置としてのマーケティングサーバを示している。
【0021】
マーケティングサーバSVは、複数の顧客情報データベースDB1~DBnとの間で、通信ネットワークNWを介して通信可能となっている。
顧客情報データベースDB1~DBnは、例えば共通ポイントカードを使用する複数のカード運営会社や、提携関係にある複数のクレジットカードやポイントカード等の支払いカードの運営会社がそれぞれ管理するもので、個々の会員ユーザまたは顧客ユーザについて業種業界を超えた複数の取引情報を分散して記憶している。取引情報は、会員ユーザまたは顧客ユーザの個人情報と、商品またはサービスの購入情報を含む。個人情報は、例えば、ユーザ名、年齢、性別、住所、電話番号やメールアドレス等の連絡先情報、および年収等のユーザ属性情報を含んでいる。購入情報は、ユーザが購入した商品またはサービスの識別コード、購入店舗の属性情報、購入日時、購入金額を含んでいる。購入店舗の属性情報には、店舗名、所在地および連絡先情報等が含まれる。なお、個人情報は匿名加工した情報としてもよい。
【0022】
またマーケティングサーバSVは、サービス提供サーバGMとの間で、上記通信ネットワークNWを介して通信可能となっている。
サービス提供サーバGMは、メーカや販売者またはその委託を受けたサービス事業者が運営するもので、マーケティングサーバSVから提供される顧客リストをもとに、ユーザ端末TM1~TMmに対し、例えば商品またはサービスに係るダイレクトメールを送信したり、レコメンドサービスを行う。レコメンドサービスには、宅配または郵送による紙のダイレクトメールや、電子メール、Web広告などが含まれるほか、マーケティングサーバSVから提供される顧客リストをもとに、ユーザ宅に配られる折り込みチラシやポスティング広告なども含まれる。
【0023】
ユーザ端末TM1~TMmとしては、例えば携帯電話機やスマートフォン、タブレット型端末等の携帯端末が用いられる。なお、携帯端末以外にも、据置型のパーソナルコンピュータや、ネットワーク通信機能を備えたテレビジョン装置等を用いることも可能である。また、通信ネットワークNWは、インターネットに代表されるInternet Protocol(IP)ネットワークと、このIPネットワークにアクセスするためのアクセスネットワークとから構成される。アクセスネットワークとしては、例えば有線電話網、携帯電話網、Local Area Network(LAN)、無線LANまたはCATV網が用いられる。
【0024】
ところで、マーケティングサーバSVは次のように構成される。
図2はその機能構成を示すブロック図である。
すなわち、マーケティングサーバSVは、制御ユニット10と、記憶ユニット20と、通信インタフェースユニット30とを備えている。
【0025】
通信インタフェースユニット30は、制御ユニット10の制御の下、通信ネットワークNWを介して、上記顧客情報データベースDB1~DBnおよびサービス提供サーバGMとの間でデータ通信を行う。通信プロトコルは通信ネットワークNWで規定されたプロトコルを使用する。具体的にはTransmission Control Protocol/Internet Protocol(TCP/IP)やUser Datagram Protocol/Internet Protocol(UDP/IP)等が使用される。
【0026】
記憶ユニット20は、記憶媒体としてHard Disk Drive(HDD)またはSolid State Device(SSD)等の随時書き込みおよび読み出しが可能な不揮発性メモリと、Random Access Memory(RAM)等の随時書き込み読み出しが可能な揮発性メモリを使用したもので、この発明の一実施形態を実施する上で必要な記憶領域として、購入情報記憶部21と、家計簿記憶部22と、分析結果記憶部23と、アプローチ情報記憶部24とを有している。なお、記憶ユニット20はクラウドサーバ等に設けられているデータベースを利用することも可能である。
【0027】
購入情報記憶部21は、個人情報記憶エリアと、購入情報記憶エリアとを有する。個人情報記憶エリアおよび購入情報記憶エリアは、それぞれ上記顧客情報データベースDB1~DBnから収集された各ユーザの個人情報および購入情報を、ユーザ識別情報(ユーザID)と関連付けて記憶する。
【0028】
家計簿記憶部22は、後述する家計簿作成部12においてユーザ別、所得層別、および地域エリア別に作成された家計簿情報を、それぞれユーザID、所得層の識別情報(所得層ID)、および地域エリアの識別情報(地域エリアID)と関連付けて記憶する。
【0029】
分析結果記憶部23は、後述する分析部13により得られる、ユーザ別、所得層別、および地域エリア別の購入商品またはサービスの消費内訳の分析結果を、ユーザID、所得層ID、および地域エリアIDと関連付けて記憶する。
【0030】
アプローチ情報記憶部24は、後述するアプローチ対象選択部14により選択されたアプローチ対象のユーザIDを記憶する。
【0031】
制御ユニット10は、プロセッサおよび作業用メモリを有し、この発明の一実施形態を実施するために必要な制御機能として、購入情報取得制御部11と、家計簿作成部12と、分析部13と、アプローチ対象選択部14と、送信制御部15とを備えている。
【0032】
なお、上記購入情報取得制御部11、家計簿作成部12、分析部13、アプローチ対象選択部14および送信制御部15は、いずれも記憶ユニット20内のプログラムメモリに格納されたプログラムを上記プロセッサに実行させることにより実現される。
【0033】
購入情報取得制御部11は、上記顧客情報データベースDB1~DBnから、当該各データベースに記憶されている複数のユーザの個人情報および購入情報をそれぞれ通信インタフェースユニット30により受信する。そして、上記顧客情報データベースDB1~DBnからそれぞれ受信した各ユーザの個人情報および購入情報を、ユーザごとにそのユーザIDと関連付けることで統合して上記購入情報記憶部21に記憶させる。
【0034】
家計簿作成部12は、個人消費を最も端的に表すツールである家計簿を利用して、ユーザの購入情報を支出項目別に分類するもので、以下の処理機能を有する。
(1) ユーザごとに、上記購入情報記憶部21に記憶された購入情報に基づいて、当該購入情報に含まれる商品またはサービスとその購入額を、予め用意された家計簿テンプレートに定義された複数の支出項目に分類する。そして、その分類結果をユーザ別の家計簿情報とし、ユーザIDと関連付けて家計簿記憶部22に記憶させる処理。
【0035】
(2) 上記購入情報記憶部21に記憶された各ユーザの個人情報に含まれる年収を参照して、上記各ユーザを所得層別に分類する。そして、所得層ごとに、当該所得層に分類された各ユーザのユーザ別家計簿情報を統合して所得層別の家計簿情報を作成し、この所得層別家計簿情報を所得層IDと関連付けて家計簿記憶部22に記憶させる処理。
【0036】
(3) 上記購入情報記憶部21に記憶された各ユーザの個人情報に含まれるユーザの住所をもとに、ユーザが居住する地域エリア(例えば町名単位で設定)を特定し、各ユーザを上記特定された複数の地域エリアのいずれかに分類する。そして、地域エリアごとに、当該地域エリアに分類された各ユーザのユーザ別家計簿情報を統合して地域エリア別の家計簿情報を作成し、この地域エリア別家計簿情報を地域エリアIDと関連付けて家計簿記憶部22に記憶させる処理。
【0037】
分析部13は、以下の処理機能を有する。
(1) ユーザごとに、上記家計簿作成部12により作成されたユーザ別家計簿情報に基づいて、支出項目ごとに、当該項目に含まれる商品またはサービスに対する、注目する商品またはサービスの消費の比率を算出する処理。
【0038】
(2) 所得層ごとに、上記家計簿作成部12により作成された所得層別家計簿情報に基づいて、支出項目ごとに、当該項目に含まれる商品またはサービスに対する、注目する商品またはサービスの消費の比率を算出する処理。
【0039】
(3) 地域エリアごとに、上記家計簿作成部12により作成された地域エリア別家計簿情報に基づいて、支出項目ごとに、当該項目に含まれる商品またはサービスに対する、注目する商品またはサービスの消費の比率を算出するする処理。
【0040】
アプローチ対象選択部14は、以下の処理機能を有する。
(1) 所得層ごとに、上記分析部13により算出された、注目する第1の商品またはサービスの消費比率が、予め設定した所得層判定用のしきい値(第2のしきい値)以上となる所得層を選択し、この選択した所得層の所得層IDをアプローチ情報記憶部24に記憶させる処理。
【0041】
(2) 地域エリアごとに、上記分析部13により算出された、注目する第1の商品またはサービスの消費比率が、予め設定した地域エリア判定用のしきい値(第3のしきい値)以上となる地域エリアを選択し、この選択した地域エリアの地域エリアIDをアプローチ情報記憶部24に記憶させる処理。
【0042】
(3) 上記選択された所得層および地域エリアのいずれか一方、または両方に属するユーザ集合の中から、ユーザごとに上記分析部13により算出された、上記注目する第1の商品またはサービスの消費比率が、予め設定されたユーザ選択用のしきい値(第1のしきい値)以上となるユーザをアプローチ対象として選択し、この選択したユーザのユーザIDをアプローチ情報記憶部24に記憶させる処理。
【0043】
送信制御部25は、上記アプローチ情報記憶部24に記憶された情報をもとに、アプローチ対象として選択されたユーザのリスト(アプローチ対象情報)を生成する。そして、この生成されたアプローチ対象情報を、通信インタフェースユニット30からサービス提供サーバGMへ送信する処理を行う。
【0044】
(動作)
次に、以上のように構成されたマーケティングサーバSVの動作を説明する。
図3は、マーケティングサーバSVによる全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0045】
(1)購入情報の収集
顧客情報データベースDB1~DBnには、会員登録したユーザの個人情報が事前に記憶されている。そして、この状態でユーザがクレジットカードやポイントカード等の支払いカードを使用して所望の商品またはサービスを購入すると、その購入情報が顧客情報データベースDB1~DBnのいずれかにユーザIDと関連付けられて記憶される。
【0046】
マーケティングサーバSVは、先ずステップS10において、購入情報取得制御部11の制御の下、顧客情報データベースDB1~DBnに対しそれぞれアクセスする。なお、顧客情報データベースDB1~DBnのアクセス先情報、つまりURLは、予め記憶ユニット20内のアクセス先メモリに記憶されているものを使用する。
【0047】
上記アクセスにより、顧客情報データベースDB1~DBnからは複数のユーザの個人情報および購入情報がそれぞれダウンロードされる。マーケティングサーバSVは、上記購入情報取得制御部11の制御の下で、上記ダウンロードされた複数のユーザの個人情報および購入情報を、ユーザIDと関連付けて購入情報記憶部21に記憶させる。
【0048】
従って、一人のユーザの購入情報が上記顧客情報データベースDB1~DBnに分散して記憶されている場合でも、これらの購入情報は漏れなく収集され、ユーザIDと関連付けられることで統合されて記憶される。なお、上記購入情報の取得処理は、例えば毎日決められた時刻に行われ、これにより購入情報記憶部21に記憶された購入情報は更新される。その他、購入情報の取得は、新たな購入情報がデータベースに追加されるごとに、或いは一定の時間間隔でリアルタイムに収集するようにしてもよい。また、個人情報は初回のみダウンロードし、2回目以降はユーザIDと購入情報のみをダウンロードするようにしてもよい。
【0049】
(2)家計簿情報の作成
上記購入情報の取得処理が終了すると、マーケティングサーバSVは続いてステップS20に移行し、家計簿作成部12の制御の下で、上記購入情報記憶部21に記憶された購入情報をもとに以下のように家計簿情報の作成処理を実行する。
【0050】
すなわち、先ずステップS21において、上記購入情報記憶部21に記憶された購入情報をユーザごとに読み出す。そして、当該購入情報に含まれる商品またはサービスを、予め用意された家計簿テンプレートを用いてその複数の支出項目に分類する。つまり、購入情報を、個人消費を最も端的に表すツールである家計簿情報に自動変換する。
【0051】
図6は家計簿テンプレートの一例を示すもので、支出項目として、固定費類、食品類、日用品類、医療・衛生費類、教養・娯楽費類、被服費類、小遣い類、預貯金類および特別費が設けられている。各支出項目には、それぞれ内訳として
図6に例示するような各種商品またはサービスが分類される。なお、上記各支出項目のうち食品類、日用品類、医療・衛生費類は必要経費と定義され、また教養・娯楽費類、被服費類、小遣い類はゆとり費と定義される。ゆとり費とは、生活する上で必ずしも必要ではないが、生活を豊かにするために用いる費用のことである。
【0052】
家計簿作成部12は、上記支出項目ごとに、当該支出項目に分類された商品またはサービスの各々についてその購入額の合計を算出する。そして、上記支出項目別に分類された商品またはサービスの識別情報とその購入額の合計を、ユーザ別の家計簿情報として、ユーザIDと関連付けて家計簿記憶部22に記憶させる。
【0053】
家計簿作成部12は、次にステップS22において、購入情報記憶部21から各ユーザの個人情報を読み出し、当該個人情報に含まれる年収をもとに各ユーザを所得層別に分類する。そして、所得層ごとに、当該所得層に分類された各ユーザのユーザ別家計簿情報を家計簿記憶部22から読み出し、このユーザ別家計簿情報をもとに、支出項目別にかつ当該支出項目に含まれる商品またはサービスごとに、その購入額の平均または分散を算出する。そして、この所得層別に作成された家計簿情報を、所得層IDと関連付けて家計簿記憶部22に記憶させる。
【0054】
この結果、例えば
図7の(a)に示す各ユーザU1~Ukのユーザ別家計簿が所得層別に分類され、所得層ごとに当該所得層に分類された複数のユーザの家計簿情報をもとに、
図7(b)に示すように所得層別の家計簿情報が作成される。
【0055】
家計簿作成部12は、続いてステップS23において、購入情報記憶部21から各ユーザの個人情報を読み出し、当該個人情報に含まれる自宅住所をもとにユーザが居住する地域エリア(例えば町名単位で設定)を特定し、各ユーザを上記特定された複数の地域エリアのいずれかに分類する。また、上記地域エリアごとに、当該地域エリアに分類された各ユーザの個人別家計簿情報を家計簿記憶部22から読み出し、このユーザ別家計簿情報をもとに、支出項目別にかつ当該支出項目に含まれる商品またはサービスごとに、その購入額の平均または分散を算出する。そして、この地域エリア別に作成した家計簿情報を、地域エリアIDと関連付けて家計簿記憶部22に記憶させる。
【0056】
この結果、例えば
図7の(a)に示す各ユーザU1~Ukのユーザ別家計簿がユーザの居住住所をもとに地域エリア別に分類され、地域エリアごとに当該地域エリアに分類された複数のユーザの家計簿情報をもとに、
図7(c)に示すように地域エリア別の家計簿情報が作成される。
【0057】
なお、例えば購入情報に含まれる購入店舗の住所をもとに、ユーザごとに当該ユーザが立ち寄る回数または時間が最も多い地域エリア(ユーザの代表的な行動エリア)を特定し、各ユーザを同様に特定された行動エリアにそれぞれ分類することにより、行動エリア別の家計簿情報を作成するようにしてもよい。
【0058】
(3)アプローチ対象となるユーザの選択
マーケティングサーバSVは、ステップS30により分析要求の入力を監視している。そして、例えばサービス提供サーバGMから分析要求を受信すると、分析部13およびアプローチ対象選択部14の制御の下で、上記分析要求により要求された条件に該当するアプローチ対象ユーザを選択するための処理を以下のように実行する。なお、分析要求には、注目する商品またはサービスの指定情報と、アプローチ対象ユーザの絞り込みに所得または居住地域を利用するか否かを指定する情報(絞り込み指定情報)が含まれている。
【0059】
(3-1)全ユーザの中からアプローチ対象を選択する場合
分析部13は、先ずステップS31において、上記分析要求に上記絞り込み指定情報が含まれているか否かを判定する。そして、絞り込み指定情報が含まれていない場合には、ステップS60において、購入情報記憶部21に記憶されている全ユーザを選択し、ステップS70においてこの全ユーザの中からアプローチ対象のユーザを選択する処理を行う。
図5は、アプローチ対象ユーザの選択処理手順とその処理内容を示すフローチャートである。
【0060】
分析部13は、先ずステップS71において、全ユーザの消費比率に基づくユーザ選択用のしきい値(第1のしきい値)を設定する。この第1のしきい値は、上記購入情報記憶部21に記憶された全ユーザについてその消費比率を求め、その平均値をもとに設定する。
【0061】
なお、一般的な家計の支出構造の統計データをもとに、第1のしきい値を設定することも可能である。この場合、統計データとしては、例えば「消費者問題および消費者政策に関する報告、第1部 消費者問題の現状、第1章 消費者を取り巻く社会経済情勢の動向と消費者行動・意識」、図表1-1-1-3等、(2009-2011年度)、[2017年2月14日検索]、インターネット<URL: http://www.caa.go.jp/adjustments/houkoku/honbun_1_1_1.html>が利用できる。
【0062】
分析部13は、次にステップS72において、上記ステップS60により選択された全ユーザの中から一人を選択する。そして、この選択したユーザについて、上記家計簿記憶部22に記憶されているユーザ別家計簿情報をもとに、上記分析要求により指定された注目する商品またはサービスと、同一の支出項目内のその他の商品またはサービスとの間の、消費比率を計算する。
【0063】
続いてアプローチ対象選択部14が、ステップS74において、上記計算された消費比率を上記ステップS71で設定した第1のしきい値と比較し、上記消費比率が第1のしきい値以上であれば、ステップS75において上記ユーザをアプローチ対象として選択する。これに対し、上記消費比率が第1のしきい値に満たなければ、当該ユーザをアプローチ対象として選択しない。
【0064】
例えば、いまサービス事業者が、注目する商品またはサービスとして、「スポーツ用品またはサービス」を指定したとする。この場合、分析部13は、
図6に示した家計簿情報を参照して、「スポーツ」と、当該スポーツが含まれる支出項目と同一の項目、つまり「教養・娯楽費類」の中のその他の商品またはサービスである、「エンタテーメント」や「レジャー・旅行」、「園芸」等との間の消費比率を算出する。そして、この計算の結果、「教養・娯楽費類」の支出項目内における「スポーツ」の消費比率が第1のしきい値以上高ければ、当該ユーザは「スポーツ用品またはサービス」に対する購入意欲が高いと見なし、当該ユーザをアプローチ対象として選択する。これに対し、「スポーツ用品またはサービス」に対する購入金額が高かったとしても、「教養・娯楽費類」の支出項目内における当該「スポーツ」の消費比率が第1のしきい値に満たなければ、当該ユーザをアプローチ対象として選択しない。
【0065】
アプローチ対象選択部14は、上記選択したアプローチ対象のユーザのユーザIDをアプローチ情報記憶部24に保存する。なお、このときユーザIDに関連付けられている個人情報を購入情報記憶部21から読み出し、当該個人情報を上記ユーザIDと関連付けてアプローチ情報記憶部24に保存する。
【0066】
分析部13は、ステップS76において、選択対象となっている全ユーザの選択処理が終了したか否かを判定する。そして、まだ選択していないユーザが残っていれば、ステップS72に戻って次のユーザを選択し、ステップS73~S75による処理を繰り返す。以上の処理は、未選択のユーザが無くなるまで繰り返し行われる。
【0067】
(3-2)所得層別および地域エリア別にユーザ集合を絞り込んだのち、アプローチ対象ユーザを選択する場合
上記ステップS31において、分析要求に絞り込み指定情報が含まれていたとする。この場合マーケティングサーバSVは、分析部13およびアプローチ対象選択部14の制御の下、ステップS40においてユーザの絞り込み処理を行う。
図4はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0068】
(3-2-1)所得層別の絞り込み
分析部13は、先ずステップS41において、所得層を選択するための第2のしきい値と、地域エリアを選択するための第3のしきい値を各々設定する。これらのしきい値は、例えば、上記家計簿記憶部22に記憶された所得層別家計簿情報および地域別家計簿情報に基づいて、支出項目ごとに消費比率を求め、その平均値をもとに設定する。
【0069】
分析部13は、ステップS42により所得層を1つ選択する。そしてステップS43において、上記選択した所得層について、上記家計簿記憶部22に記憶されている所得層別家計簿情報をもとに、上記分析要求により指定された注目する商品またはサービスと、同一の支出項目内のその他の商品またはサービスとの間の、消費比率を計算する。
【0070】
続いてアプローチ対象選択部14が、ステップS44において、上記計算された消費比率を上記ステップS41で設定した第2のしきい値と比較し、上記消費比率が第2のしきい値以上であれば、ステップS45において上記所得層を選択する。これに対し、上記消費比率が第2のしきい値に満たなければ、当該所得層は選択しない。
【0071】
例えば、いまサービス事業者が、注目する商品またはサービスとして、先に述べた「スポーツ用品またはサービス」を指定したとする。この場合、分析部13は、所得層別の家計簿情報を参照して、「スポーツ」と、当該スポーツが含まれる支出項目と同一の項目、つまり「教養・娯楽費類」の中のその他の商品またはサービスである、「エンタテーメント」や「レジャー・旅行」、「園芸」等との間の消費比率を算出する。そして、この計算の結果、「教養・娯楽費類」の支出項目内における「スポーツ」の消費比率が第2のしきい値以上高ければ、当該所得層に属するユーザ集合は「スポーツ用品またはサービス」に対する購入意欲が高いと見なし、当該所得層のユーザ集合をアプローチ対象の候補として選択する。これに対し、「スポーツ用品またはサービス」に対する購入金額が高かったとしても、「教養・娯楽費類」の支出項目内における当該「スポーツ」の消費比率が第2のしきい値に満たなければ、当該所得層に属するユーザ集合は選択しない。
【0072】
アプローチ対象選択部14は、上記アプローチ対象の候補として選択した所得層のIDをアプローチ情報記憶部24に保存する。
分析部13は、ステップS46において、選択対象となっている全ての所得層の選択処理が終了したか否かを判定する。そして、まだ選択していない所得層が残っていれば、ステップS42に戻って次の所得層を選択し、ステップS43~S45による処理を繰り返す。以上の処理は、未選択の所得層が無くなるまで繰り返し行われる。
【0073】
(3-2-2)地域エリア別の絞り込み
上記所得層別のユーザ集合の絞り込み処理が終了すると、分析部13は続いて地域エリア別のユーザ集合の絞り込み処理を以下のように実行する。
すなわち、分析部13は、先ずステップS47において、地域エリアを1つ選択する。そしてステップS48において、上記選択した地域エリアについて、上記家計簿記憶部22に記憶されている地域別家計簿情報をもとに、上記分析要求により指定された注目する商品またはサービスと、同一項目内のその他の商品またはサービスとの間の、消費比率を計算する。
【0074】
続いてアプローチ対象選択部14が、ステップS49において、上記計算された消費比率を上記ステップS41で設定した第3のしきい値と比較し、上記消費比率が第3のしきい値以上であれば、ステップS51において上記地域エリアを選択する。これに対し、上記消費比率が第3のしきい値に満たなければ、当該地域エリアは選択しない。
【0075】
例えば、注目する商品またはサービスとして、先に述べたように「スポーツ用品またはサービス」が指定された場合には、「教養・娯楽費類」の支出項目内における「スポーツ」の消費比率が第3のしきい値以上高ければ、当該地域エリアに居住するユーザ集合は「スポーツ用品またはサービス」に対する購入意欲が高いと見なし、当該地域エリアのユーザ集合をアプローチ対象の候補として選択する。これに対し、「スポーツ用品またはサービス」に対する購入金額が高かったとしても、「教養・娯楽費類」の支出項目内における当該「スポーツ」の消費比率が第3のしきい値に満たなければ、当該地域エリアに居住するユーザ集合はスポーツに対する関心が低いと見なして選択しない。
【0076】
アプローチ対象選択部14は、上記アプローチ対象の候補として選択した地域エリアのIDをアプローチ情報記憶部24に保存する。
分析部13は、ステップS52において、選択対象となっている全ての地域エリアの選択処理が終了したか否かを判定する。そして、まだ選択していない地域エリアが残っていれば、ステップS47に戻って次の地域エリアを選択し、ステップS48~S51による処理を繰り返す。以上の処理は、未選択の地域エリアが無くなるまで繰り返し行われる。
【0077】
アプローチ対象選択部14は、上記所得層別および地域別の絞り込み処理が終了すると、ステップS53において、上記選択された所得層に属し、かつ上記選択された地域エリアに居住するユーザ集合を選択する。従って、例えば「スポーツ」に関心が高い所得層のユーザ集合の中から、さらに「スポーツ」に関心が高い地域エリアに居住するユーザ集合が選択される。
【0078】
上記所得層別および地域別の絞り込み処理を行った場合、分析部13およびアプローチ対象選択部14は、ステップS70において、上記選択された所得層に属し、かつ上記選択された地域エリアに居住するユーザ集合を対象として、当該ユーザ集合に含まれる各ユーザの中からアプローチ対象となるユーザの選択処理を実行する。
【0079】
かくして、この場合アプローチ情報記憶部24には、例えば「スポーツ」に関心が高いユーザが多く存在する所得層で、かつ「スポーツ」に関心が高いユーザが多い地域エリアに居住するユーザ集合の中から選択された、「スポーツ用品」への購入意欲が高いユーザがアプローチ対象として記憶される。
【0080】
なお、以上の説明では、所得層別の絞り込みにより選択され、かつ上記地域別の絞り込みにより選択されたユーザ集合の中から、アプローチ対象のユーザを選択するようにした。しかし、それに限らず、所得層別の絞り込みにより選択されたユーザ集合の中からアプローチ対象のユーザを選択すると共に、地域エリア別の絞り込みにより選択されたユーザ集合の中からもアプローチ対象のユーザを選択するようにしてもよい。
【0081】
(4)アプローチ情報の提供
マーケティングサーバSVは、サービス提供サーバGMからアプローチ対象情報の配信要求が送信され、当該配信要求の受信をステップS80で検出すると、送信制御部15の制御の下、ステップS81において上記アプローチ情報記憶部24からアプローチ情報を読み出す。そして、このアプローチ情報を通信インタフェースユニット30から要求元のサービス提供サーバGMへ送信する。
【0082】
サービス提供サーバGMは、上記アプローチ情報を受信すると、当該アプローチ情報に記載されたユーザの端末TM1~TMmに向け、例えば「スポーツ用品またはサービス」の新製品を紹介するためのダイレクトメールを送信する。
【0083】
(効果)
以上詳述したように一実施形態では、マーケティングサーバSVにおいて、複数の顧客情報データベースDB1~DBnから各ユーザの購入情報を収集し、この収集した購入情報をもとにユーザ別、所得層別および地域エリア別の家計簿情報を作成する。そして、先ず所得層別の家計簿情報および地域エリア別の家計簿情報をもとに、支出項目が同一の商品またはサービス群の中で注目する商品またはサービスの消費比率がしきい値以上となる所得層および地域エリアを選択し、この選択された所得層および地域エリアのいずれか一方または両方に属するユーザ集合の中から、支出項目が同一の商品またはサービス群の中で注目する商品またはサービスの消費比率がしきい値以上となるユーザをアプローチ対象ユーザとして選択するようにしている。
【0084】
ここで、一般に複数種類の商品またはサービスのうち消費比率が相対的に高い商品またはサービスにはユーザの購入意欲が反映されたものが多い。従って、上記したように消費比率に着目してアプローチ対象ユーザを選択することで、注目する商品又はサービスに対する購入意欲の高いユーザを高い確率で選択することが可能となる。
【0085】
また、アプローチ対象ユーザの選択に先立ち、注目する商品またはサービスの消費比率がしきい値以上となる所得層および地域エリアを選択するようにしているので、多数のユーザの中からアプローチ対象の候補となるユーザ集合を絞り込むことができ、これによりアプローチ対象ユーザを効率良く選択することが可能となる。
【0086】
さらに、顧客情報データベースDB1~DBnから収集した購入情報をもとにユーザ別、所得層別および地域エリア別の家計簿情報を作成し、これらの家計簿情報をもとに支出項目が同一の複数の商品またはサービスの消費内訳に着目してアプローチ対象ユーザの絞り込みおよび選択を行うようにしているので、注目する商品またはサービスに対する関心が高いユーザを的確に選択することができる。
【0087】
さらに、一人のユーザの購入情報を複数の顧客情報データベースDB1~DBnからそれぞれ収集して家計簿情報を作成するようにしているので、一人のユーザが共通ポイントカードを使用して、或いは複数のクレジットカードやポイントカードを使い分けて複数の店から購入した商品またはサービスの購入情報を幅広く収集することができ、これにより当該ユーザの消費内訳をより正確に把握することが可能となる。
【0088】
[その他の実施形態]
アプローチ対象となるユーザを選択する際に、家計簿データの複数の支出項目のうち、必要経費に該当する支出項目に分類された商品またはサービスと、必ずしも必要ではないが生活を豊かにするために用いるゆとり費用に該当する支出項目に分類された商品またはサービスとの消費比率を算出し、当該算出された消費比率に基づいて、アプローチ対象のユーザを選択するようにしてもよい。
【0089】
このようにすると、例えば趣味や娯楽に係る商品またはサービスに注目したとき、必要経費に対するゆとり費用の支出比率が高いユーザを、趣味や娯楽に係る商品またはサービスに対する購入意欲の高いと見做して、高い確率で選択することが可能となる。
【0090】
また、前記一実施形態では、所得層別および地域エリア別に家計簿情報を作成し、これらの家計簿情報を利用してユーザ集合を選択し、この選択されたユーザ集合の中からアプローチ対象ユーザを選択するようにした。しかしそれに限らず、例えば年齢層別または家族構成別に家計簿情報を作成し、これらの家計簿情報を利用してユーザ集合を選択し、この選択されたユーザ集合の中からアプローチ対象ユーザを選択するようにしてもよい。
【0091】
また、ユーザごとではなく、例えば地域情報、所得、購入情報別にユーザ群を構成し、このユーザ群ごとに購入情報を収集して、当該ユーザ群に含まれるユーザの購入情報を相互に補完するようにしてもよい。
さらに、レコメンドサービスとして折り込みチラシやポスティング広告を行う場合には、マーケティングサーバSVまたはサービス提供サーバGMにチラシ等の配信制御部を追加する。そして、折り込みチラシやポスティング広告の配布を請け負う業者やポスティング業者の端末に、チラシの配信要求を印刷データとともに送信するように構成すればよい。
【0092】
その他、購入情報の取得手段、消費内訳を表す情報を生成する手段、ユーザを選択する手段の機能、マーケティング情報分析装置の構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0093】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0094】
SV…マーケティングサーバ、DB1~DBn…購入情報管理サーバ、GM…データ提供サーバ、TM~TMm…ユーザ端末、NW…通信ネットワーク、10…制御ユニット、20…記憶ユニット、30…通信インタフェースユニット、11…購入情報取得制御部、12…家計簿作成部、13…分析部、14…アプローチ対象選択部、15…送信制御部、21…購入情報記憶部、22…家計簿記憶部、23…分析結果記憶部、24…アプローチ情報記憶部。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザの各々について、複数種類の商品またはサービスに対する購入情報を管理する購入情報管理データベースから、前記複数のユーザの購入情報を取得する取得手段と、
前記取得された購入情報に基づいて、前記ユーザごとに、当該ユーザが購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する生成手段と、
前記ユーザごとに、前記生成された消費内訳を表す情報に基づいて、前記複数種類の商品またはサービスのうち注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出する算出手段と
を具備するマーケティング情報分析装置。
【請求項2】
前記取得手段は、一人のユーザの購入情報が複数の購入情報管理データベースに分散管理されている場合に、前記複数の購入情報管理データベースに対しそれぞれアクセスして前記ユーザに係る複数の購入情報を取得し、当該取得された複数の購入情報をユーザ別に統合してメモリに保存する、請求項1に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項3】
前記生成手段は、
前記ユーザを複数の所得層に分類し、前記所得層ごとに当該所得層に分類されたユーザ集合が購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する手段
をさらに備える、請求項1または2に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項4】
前記生成手段は、
前記ユーザをその居所または購入場所に応じて複数の地域エリアに分類し、前記地域エリアごとに当該地域エリアに分類されたユーザ集合が購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する手段
をさらに備える、請求項1または2に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項5】
前記生成手段は、支出項目を複数の項目に区分した家計簿データを備え、前記ユーザごと、所得層ごと、または地域エリアごとに、前記取得されたユーザまたはユーザ集合の購入情報に基づいて、前記ユーザまたはユーザ群が購入した商品またはサービスとその購入額を前記家計簿データの該当する項目に分類することにより、前記消費内訳を表す情報を生成する、請求項1に記載のマーケティング情報分析装置。
【請求項6】
プロセッサおよびメモリを有する情報処理装置が実行するマーケティング情報分析方法であって、
前記情報処理装置が、複数のユーザの各々について、複数種類の商品またはサービスに対する購入情報を管理する購入情報管理データベースから、前記複数のユーザの購入情報を取得する過程と、
前記情報処理装置が、前記取得された購入情報に基づいて、前記ユーザごとに、当該ユーザが購入した商品またはサービスの消費内訳を表す情報を生成する過程と、
前記情報処理装置が、前記ユーザごとに、前記生成された消費内訳を表す情報に基づいて、前記複数種類の商品またはサービスのうち注目する第1の商品またはサービスとそれ以外の第2の商品またはサービスとの消費比率を算出する過程と、
を具備するマーケティング情報分析方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のマーケティング情報分析装置が具備する前記各手段としてプロセッサを動作させるマーケティング情報分析プログラム。