(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091053
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230622BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230622BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230622BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230622BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D7/63
C09D7/61
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079604
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2018237445の分割
【原出願日】2018-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中町 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】堀内 辰悟
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 昭
(72)【発明者】
【氏名】永野 裕幸
(57)【要約】
【課題】耐汚染性及び弾性適性に優れる塗料組成物を提供すること。
【解決手段】コアがガラス転移温度5~60℃の重合体であり、シェルがガラス転移温度50~100℃である重合体であり、ΔTg(シェルのガラス転移温度-コアのガラス転移温度)が30~60℃であるコア/シェルエマルション(A)並びに、ヒドラジド化合物、グリシジル基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の架橋剤(B)を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアがガラス転移温度5~60℃の重合体であり、シェルがガラス転移温度50~100℃である重合体であり、ΔTg(シェルのガラス転移温度-コアのガラス転移温度)が30~60℃であるコア/シェルエマルション(A)並びに、
ヒドラジド化合物、グリシジル基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の架橋剤(B)を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
コア/シェルエマルション(A)が、コアの重合体とシェルの重合体との質量比が前者/後者の比で50/50~90/10の範囲内にある請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
コア/シェルエマルション(A)の固形分含有量が、水性塗料組成物の固形分100質量部を基準として30~99.5質量部である請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
さらに酸化チタン顔料(C)を、水性塗料組成物の固形分100質量部を基準として20~200質量部含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
さらに沸点が200℃以上である有機溶剤(D)を水性塗料組成物中の固形分100質量部を基準として3~15質量部含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
厚さ3.0mmのガラス板上に膜厚70μmの硬化塗膜を形成し、23℃、湿度50%雰囲気下で1週間養生したときの塗膜表面を超微小硬さ試験装置により温度23℃・荷重5mN/25s下で測定したマルテンス硬度が、2.0~40.0N/mm2となる塗膜を形成できる請求項1~5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
被塗物に請求項1~6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装する段階を含んでなる塗膜形成方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物による硬化塗膜が形成された塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物に代表される屋外の基材には、装飾又は保護を目的として塗料が塗装されている。一般に塗膜は屋外で長期間の暴露により、砂塵、鉄粉、雨(酸性雨)、太陽光線などの影響によって塗膜表面が汚れ易くなり塗膜外観が悪くなる。
【0003】
かかる問題点に関する建築塗料の分野の市場のひとつの方向性として、雨だれによる汚染防止特性を有する塗料、いわゆる低汚染塗料に対する市場ニーズがある。
【0004】
一方、近年、塗料分野において水性への転換がされている。一般に、水性塗料は親水性基や乳化剤等により、溶剤型塗料と比較して仕上がり性、耐水性等の性能が劣る傾向にある。しかしながら昨今の市場のニーズに伴い、仕上がり性や耐水性が良好であり、さらには耐汚染性といった高機能を発揮する塗膜を形成するような水性塗料の開発が望まれている。
【0005】
塗膜に耐汚染性を付与させる手法としては、塗膜を撥水性にする手法と親水性にする手法が知られており、塗料設計者は被塗物及びそれに対して付着しうる汚れ成分の種類や性質等に応じていずれかの手法を選択することができる。
【0006】
例えば特許文献1には3級アミノ基及びカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂、カルボニル基含有アクリルエマルションおよびヒドラジド化合物を含む水性塗料組成物が開示されている。
【0007】
かかる水性塗料組成物によれば、耐汚染性に優れた塗膜を形成でき、しかも3級アミノ基及びカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂が硬化剤であるヒドラジド化合物によりバインダー成分であるカルボニル基含有アクリルエマルションと反応するため、耐汚染性を長期間維持することができるものであるが、常温乾燥の条件では形成される塗膜の耐水性、耐候性が不十分な点については否めない。
【0008】
また、前記屋外の基材に塗装される塗膜には基材面のひび割れに追従できるように適度な柔軟性(本明細書では、これ以降「弾性適性」と称することがある)が求められる。
【0009】
例えば特許文献2には、被塗面に、共重合体のガラス転移温度が-20℃以下である共重合体水分散液(A)を含む下地調整材(I)を塗装した後、該塗面上に、共重合体のガラス転移温度が-60~0℃である共重合体水分散液(B)及び共重合体のガラス転移温度が15~50℃である共重合体水分散液(C)を固形分質量比が(B)/(C)比で20/80~80/20の割合で含む上塗り塗料(II)を塗装することを特徴とする塗装仕上げ方法が開示されている。
【0010】
しかし、かかる塗装仕上げ方法は、ガラス転移温度が低い共重合体水分散液を含む下地調整材を使用する場合に限られており、また、下地面が平滑に調整されている場合はよいものの、さざなみ状などの凹凸状に調整されている場合には十分とはいえず、様々な種類・形状の下地調整材、下地面に適用できる、すなわち弾性適性に優れた上塗り塗料が求められている昨今の要求には応えられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000-119589号公報
【特許文献2】特開2008-12373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、低汚染性と弾性適性を兼ね備える水性塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
コアがガラス転移温度5~60℃の重合体であり、シェルがガラス転移温度50~100℃である重合体であり、ΔTg(シェルのガラス転移温度-コアのガラス転移温度)が30~60℃であるコア/シェルエマルション(A)並びに、
ヒドラジド化合物、グリシジル基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の架橋剤(B)を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
項2.
コア/シェルエマルション(A)が、コアの重合体とシェルの重合体との質量比が前者/後者の比で50/50~90/10の範囲内にある上記項1に記載の水性塗料組成物。
項3.
コア/シェルエマルション(A)の固形分含有量が、水性塗料組成物の固形分100質量部を基準として30~99.5質量部である上記項1又は2に記載の水性塗料組成物。
項4.
さらに酸化チタン顔料(C)を、水性塗料組成物の固形分100質量部を基準として20~200質量部含有する上記項1~3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
項5.
さらに沸点が200℃以上である有機溶剤(D)を水性塗料組成物中の固形分100質量部を基準として3~15質量部含有する上記項1~4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
項6.
厚さ3.0mmのガラス板上に膜厚70μmの硬化塗膜を形成し、23℃、湿度50%雰囲気下で1週間養生したときの塗膜表面を超微小硬さ試験装置により温度23℃・荷重5mN/25s下で測定したマルテンス硬度が、2.0~40.0N/mm2となる塗膜を形成できる上記項1~5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
項7.
被塗物に上記項1~6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装する段階を含んでなる塗膜形成方法。
項8.
上記項1~6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物による硬化塗膜が形成された塗装物品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性塗料組成物によれば低汚染性かつ弾性適性を有する塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水性塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明の水性塗料組成物は、コアがガラス転移温度5~60℃の重合体であり、シェルがガラス転移温度50~100℃である重合体であり、ΔTg(シェルのガラス転移温度-コアのガラス転移温度)が30~60℃であるコア/シェルエマルション(A)並びに、ヒドラジド化合物、グリシジル基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種の架橋剤(B)を含有するものである。
【0017】
コア/シェルエマルション(A)
本発明において使用されるコア/シェルエマルション(A)は、得られる塗膜の低汚染性かつ弾性適性の点から、コアがガラス転移温度5~60℃、好ましくは10~50℃、さらに好ましくは10~40℃の重合体であり、シェルがガラス転移温度50~100℃、好ましくは60~90℃、さらに好ましくは65~85℃である重合体であり、ΔTg(シェルのガラス転移温度-コアのガラス転移温度)が30~60℃、好ましくは35~60℃、さらに好ましくは40~60℃である。
【0018】
コア/シェルエマルションとは、中心層と外殻層からなる多層構造粒子である。両層の間に別の層を形成することも可能である。
【0019】
コア/シェルエマルションは、シード乳化重合法または多段階乳化重合法によって、合成される。例えば2層構造粒子の場合であれば、まず、ガラス転移温度5~60℃の樹脂を形成する1段目の重合性不飽和モノマー(1種または2 種以上の混合物)を乳化重合してシード粒子を作成し、ついで該シードの存在下に、ガラス転移温度50~100℃の樹脂を形成する2段目の重合性不飽和モノマー(1種または2種以上の混合物) を供給して乳化重合することにより、コア/シェルエマルションが得られる。3層またはそれ以上の層から成る粒子の場合には、上記の1段目と2段目のプロセスの中間に、他の樹脂層を形成する重合性不飽和モノマー(1種または2種以上の混合物)を供給して乳化重合するプロセスが加わる。
【0020】
尚、本明細書において各共重合体のガラス転移温度Tg(℃)の絶対温度をTg”とすると以下のように計算できる。
1/Tg”=W1′/T1+W2′/T2・・・+Wn′/Tn
(式中、W1′、W2′・・・Wn′は共重合体の製造に使用される合計の全モノマーに対する各モノマーの重量分率、T1、T2、・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)を示す。)。
【0021】
上記コアの重合体とシェルの重合体との質量比は、得られる塗膜の低汚染性かつ弾性適性等の観点から、前者/後者の比で50/50~90/10、好ましくは50/50~80/20、さらに好ましくは50/50~70/30の範囲内にあることが好適である。
【0022】
コア/シェルエマルションの粒子径は、得られる塗膜の低汚染性かつ弾性適性等の観点から、100~1000nm、好ましくは100~500nm、さらに好ましくは100~300nmの範囲内とする。この範囲外では、弾性適性が劣るので望ましくない。
【0023】
本明細書においてコアシェルエマルションの粒子径はサブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した値とする。
【0024】
上記重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、スチレン、エチルビニルベンゼン、α-メチルスチレン、フルオロスチレンなどの芳香族モノビニル化合物; アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物; メチルアクリレート、エチルアクリレート、n,i,tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、β-アクリロイルオキシエチルハイドロジエンフタレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、2-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアクリル酸エステルモノマー;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n,i,tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ダイアセトンメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートなどのメタクリル酸エステルモノマー;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボン基含有不飽和モノマー、およびそれらの無水物;スルホエチル(メタ)アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタクリロイルオキシスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基または硫酸エステル基含有不飽和モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド系モノマー;シリコン変性モノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレンマクロモノマー;ジビニルベンゼン、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどの多ビニル化合物等を挙げられる。
【0025】
本発明では、シェル重合体は、得られる塗膜の低汚染性かつ弾性適性等の観点から、酸価が4~80mgKOH/g、好ましくは5~60mgKOH/gの範囲内となるようにすることが好適である。この範囲外では、弾性適性が劣るので望ましくない。
【0026】
また、コアシェルエマルションを構成する重合性不飽和モノマー、特にシェル重合体を構成する重合性不飽和モノマーの少なくとも一部として、上記ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、カルボン酸基含有不飽和モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種の架橋性重合性不飽和モノマーを用いることが、得られる塗膜の弾性適性および低汚染性の点で有利である。
【0027】
架橋性重合性不飽和モノマーの使用量は、得られる塗膜の低汚染性かつ弾性適性等の観点から、コアシェルエマルションを構成する重合性不飽和モノマーの質量100質量部を基準として0.1~20質量部、特に0.2~10質量部の範囲内が好適である。
【0028】
上記乳化重合は、通常、水及び乳化剤の存在下で行なわれる。該乳化剤としては、揮発性有機化合物を含まないものであれば特に限定なく公知のアニオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、反応性乳化剤、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0029】
アニオン型界面活性剤としては、各種脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などを挙げることができる。ノニオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどを挙げることができる。また、カチオン型界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などを挙げることができる。反応性乳化剤は、分子中に重合性基を有する界面活性剤であり、具体例としては、「アデカリアソープSE-10N」(旭電化工業(株)製、商品名)、「アクアロンHS-10」(第一工業製薬(株)製、商品名)などを挙げることができる。
【0030】
これらの乳化剤の使用量は、用いる単量体の総量に対して、0.01~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%の範囲にあることが適当である。
【0031】
上記乳化重合では、粒子の安定性を高める観点から、必要に応じて乳化剤を後添加してもよい。後添加される乳化剤としては、ソルビタン系ノニオン型界面活性剤が好適である。
【0032】
上記乳化重合において重合性不飽和モノマーを重合させるために、通常、重合開始剤を添加する。該重合開始剤としては、揮発性有機化合物が発生せずそれ自身も揮発性有機化合物に該当しないものであれば、特に限定なく従来公知のものが使用でき、具体例としては、過酸化水素の如き水溶性無機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムの如き過硫酸塩類などが挙げられ、これらは単独または2種以上併用して使用できる。使用量としては、重合性不飽和モノマー使用量に対して、0.1~2重量%が望ましい。尚、過酸化物系重合開始剤と金属イオンまたは還元剤とを併用して重合開始剤とし、レドックス重合を行なってもよい。
【0033】
上記乳化重合においては、さらに必要に応じて、メルカプタン類などの連載移動剤;重炭酸ナトリウムなどの緩衝剤などを使用してもよい。但し、揮発性有機化合物を発生するものやそれ自身が揮発性有機化合物に該当するものは使用しないことが望ましい。
【0034】
本発明の水性塗料組成物において、コア/シェルエマルション(A)の固形分含有量は水性塗料組成物の固形分100質量部を基準として30~99.5質量部、好ましくは40~90質量部、さらに好ましくは50~80質量部の範囲内であることが得られる塗膜の低汚染性かつ弾性適性等の観点から、好ましい。
【0035】
架橋剤(B)
本発明の水性塗料組成物における架橋剤(B)は、ヒドラジド化合物、グリシジル基含有化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びイソシアネート化合物ら選ばれる少なくとも一種である。なかでも、得られる塗膜の低汚染性と弾性適性等の観点から、架橋剤(B)としては、ヒドラジド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物がより好ましい。また、1液型塗料は2液型塗料よりも取り扱いが簡便であるところ、本発明の水性塗料組成物を1液型とする点から、架橋剤(B)としては、ヒドラジド化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物がより好ましい。
【0036】
ヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2~18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも特に得られる塗膜の低汚染性と弾性適性等の観点から、ヒドラジド化合物としてはアジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0037】
グリシジル基含有化合物の具体例としては、例えば、ジグリシジルエーテル、2-グリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル基又はグリシジルエステル基を有するエポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性不飽和モノマーと、必要に応じて、その他の重合性不飽和モノマーとの(共)重合体等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
カルボジイミド化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得られる化合物である。カルボジイミド化合物は、水溶性又は水分散性であることが望ましく、特に限定されるものではないが、カルボジイミド当量が100~800、好ましくは200~600の範囲内にある化合物であることが望ましい。該当する市販品としては、例えば、「カルボジライトV-02」、「カルボジライトV-02-L2」、「カルボジライトV-04」、「カルボジライトE-01」、「カルボジライトE-02」(いずれも日清紡社製、商品名)などをあげることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
オキサゾリン化合物の具体例としては、例えば、2,2’-p-フェニレン-ビス-(1,3-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレン-ビス-(1,3-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)の如き低分子量のポリ(1,3-オキサゾリン)化合物;さらには、2-イソプロペニル-1,3-オキサゾリンの如き1,3-オキサゾリン基含有ビニル系単量体の単独重合体もしくはこれと共重合可能な各種のビニル系単量体とを共重合せしめて得られる、1,3-オキサゾリン基を含有するビニル系重合体を挙げることができ、水溶性又は水分散性の化合物であることが望ましく、特に限定されるものではないが、オキサゾリン基当量が、100~800、好ましくは200~600の範囲内にある化合物であることが望ましい。かかるポリオキサゾリン化合物の市販品としては、日本触媒化学工業(株)製の「エポクロスK-1000」、「エポクロスK-1020E」、「エポクロスK-1030E」、「エポクロスK-2010E」、「エポクロスK-2020E」、「エポクロスK-2030E」、「エポクロスWS-500」、「エポクロスWS-700」などを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
本発明の水性塗料組成物において、架橋剤(B)の固形分含有量は水性塗料組成物の固形分100質量部を基準として0.1~1.0質量部、好ましくは0.2~0.9質量部、さらに好ましくは0.3~0.8質量部の範囲内であることが得られる塗膜の低汚染性かつ弾性適性等の観点から、好ましい。
【0042】
酸化チタン顔料(C)
本発明の水性塗料組成物は、下地隠蔽性の点から、前記成分(A)及び(B)に加えてさらに酸化チタン顔料(C)を含んでも良い。
【0043】
酸化チタン顔料(C)は白色顔料であって、形成塗膜に白色を付与することができる。酸化チタン顔料(C)は、ルチル型、アナターゼ型のいずれの結晶型を有するものであってもよいが、形成される塗膜の耐候性及び下地色の隠蔽性に優れるという点から、ルチル型が好ましい。また、酸化チタン顔料(C)は、酸化チタンの表面を、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化珪素などの無機酸化物;アミン、アルコールなどの有機化合物などで被覆処理をしたものであってもよい。
【0044】
本発明の水性塗料組成物が酸化チタン顔料(C)を含有する場合、酸化チタン顔料(C)の含有量は、水性塗料組成物に含まれる樹脂の固形分100質量部に対して、20~200質量部、好ましくは40~160質量部、さらに好ましくは50~120質量部の範囲内であることが、得られる塗膜が低汚染性及び弾性適性に優れる点から好適である。なお、本明細書に置いて、特に断りがない限り、上記コア/シェルエマルション(A)及び架橋剤(B)は上記樹脂に含まれるものとする。
【0045】
沸点200℃以上の有機溶剤(D)
本発明の水性塗料組成物は、弾性適性の点から、前記成分(A)及び(B)に加えてさらに沸点が200℃以上、好ましくは210~300℃、さらに好ましくは220~290℃の範囲内である有機溶剤(D)を含んでも良い。
【0046】
上記沸点が200℃以上の有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノi-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノi-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノi-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノi-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノi-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート及び2,2,4-トリメチルペンタンジオール-1,3-ジイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノ2-エチルヘキサノエート、及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ2-エチルヘキサノエートなどのエステル系化合物等がある。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
なかでも、得られる塗膜の低汚染性及び弾性適性等の観点から、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート及び/又は2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートであることが好ましい。
【0048】
本発明の水性塗料組成物が沸点200℃以上の有機溶剤(D)を含有する場合、該有機溶剤(D)の含有量は、水性塗料組成物の固形分100質量部に対して、3~15質量部、好ましくは4~14質量部、さらに好ましくは5~13質量部の範囲内が好適である。
【0049】
その他の成分
本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて上記成分(A)及び(B)以外の樹脂を含有することができる。かかる樹脂としては、成分(A)以外のエマルション、水溶性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
上記成分(A)以外のエマルションとして具体的に例えば、アクリルエマルション、ウレタンエマルション、シリコーンエマルション、フッ素エマルション、シリコン変性アクリルエマルション、シリコーン変性アクリルエマルション、ウレタン変性アクリルエマルション、フッ素変性アクリルエマルション等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
本発明の水性塗料組成物が上記成分(A)及び(B)以外の樹脂を含有する場合、その含有量は固形分として、樹脂固形分100質量部を基準として1.0~15.0質量部、好ましくは2.0~12.0質量部、さらに好ましくは3.0~9.0質量部の範囲内であることが得られる塗膜の低汚染性及び弾性適性等の観点から好適である。
【0052】
また、本発明の水性塗料組成物はさらに必要に応じて前記酸化チタン顔料(C)以外の顔料、前記沸点200℃以上の有機溶剤(D)以外の有機溶剤、顔料分散剤、表面調整剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、沈降防止剤、増粘剤、防カビ剤、防藻剤、防腐剤、可塑剤、充填剤、分散剤、紫外線吸収剤及び光安定剤等を適宜配合しても良い。
【0053】
前記酸化チタン顔料(C)以外の顔料としては、着色顔料、体質顔料、金属粉等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
上記着色顔料としては、亜鉛華、酸化鉄、黄鉛、等の無機着色顔料、フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機着色顔料を挙げることができる。また、体質顔料としては、石英粉、タルク、酸化アルミナ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、マイカ等を挙げることができる。金属粉としては、ステンレス粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母粉等を、それぞれ挙げることができる。
【0055】
特に低汚染性および耐候性が良好である点から、顔料として体質顔料を使用してもよい。
【0056】
本発明の水性塗料組成物が上記体質顔料を含有する場合は、その含有量は固形分として、樹脂固形分100質量部を基準として1~100質量部、好ましくは5~90質量部、さらに好ましくは10~80質量部の範囲内であることが低汚染性および耐候性等の観点から好適である。
【0057】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、1液型組成物としても2液型組成物としてもよく、2液型組成物とする場合には、一般に成分(A)を含有する主剤と、成分(B)を含有する硬化剤とを、塗装直前に混合して使用に供される。本発明の水性塗料組成物が2液型組成物の場合、コア/シェルエマルション(A)及び架橋剤(B)の反応を促進するため硬化触媒を含有してもよい。
【0058】
塗装方法
本発明の水性塗料組成物が塗装される被塗物としては、特に制限されるものではなく、所望により下地処理された金属素材面(例えば鉄板面、亜鉛めっき面、ステンレス面、アルミニウム面等)、アルカリ性を有する基材(例えばコンクリート、石材、モルタル、スレート、スレート瓦)等、窯業系基材、プラスチック、木材等、並びにそれら基材面上の旧塗膜面を挙げることができる。
【0059】
また、かかる被塗物には、シーラー及び/又は下地調整剤が塗装されていてもよい。特に本発明の水性塗料組成物は、弾性適性に優れるため、下地調整剤の上に塗装されると本発明の効果がより発揮できる。
【0060】
塗装物の用途としては特に制限されるものではないが、建築物、構造物の外壁に適している。
【0061】
本発明の水性塗料組成物は、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手段で塗装することができる。
【0062】
本発明の水性塗料組成物は、塗装時の固形分を10~60%、好ましくは15~55%とすることが可能である。
【0063】
本発明の水性塗料組成物の塗布量は用途によって適宜調整でき、特に制限されるものではないが、一般には、30~400g/m2、50~250g/m2の範囲内が適当である。
【0064】
本発明の水性塗料組成物は常温乾燥の条件でも容易に架橋することができるが、必要に応じて強制乾燥又は加熱乾燥をしてもよい。
【0065】
水性塗料組成物を硬化させてなる硬化塗膜
本発明の水性塗料組成物を硬化させてなる硬化塗膜は耐汚染性と弾性適性に共に優れるものであり、以下のような性質を有する。厚さ3.0mmのガラス板上に本発明の水性塗料組成物を塗装して膜厚70μmの硬化塗膜を形成し、23℃、湿度50%雰囲気下で1週間養生したときの塗膜表面を超微小硬さ試験装置により温度23℃・荷重5mN/25s下で測定したマルテンス硬度が、2.0~40.0N/mm2、好ましくは2.5~30.0N/mm2、さらに好ましくは3.0~20.0N/mm2、となる塗膜を形成できる。
【0066】
また、本発明の水性塗料組成物を硬化させてなる硬化塗膜の引張弾性率は、50~600N/mm2、好ましくは70~500N/mm2、さらに好ましくは90~400N/mm2、であることが好ましい。該引張弾性率は、250μmアプリケーターを用いて、エマルション試料を脱脂したブリキ板上に塗布し、20℃で7日間乾燥後、水銀を用いて塗膜を剥利した。剥離塗膜について、(株)島津製作所製のEZ Testによって測定した。
【実施例0067】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0068】
コア/シェルエマルションの調製
製造例1
2リットルの4つ口フラスコにコンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付け、脱イオン水350部、ニューコール707SF(注1)10部を仕込み、内部の空気を窒素で置換した後、攪拌しつつ内部温度を80℃に上げた。次いで下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分および2.5%過硫酸アンモニウム水溶液80部を反応容器内に添加し、80度で20分間保持した。
脱イオン水 550部
スチレン 170部
メチルメタクリレート 660部
n-ブチルアクリレート 270部
2-ヒドロキシエチルアクリレート 270部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
アクリル酸 10部
ニューコール707SF(注1) 50部
その後、残りのプレエマルションを4時間かけて反応容器内へ連続滴下した。滴下終了後、80℃で1時間攪拌した後、脱イオン水50部を一括添加した。次に、別容器にて、下記組成の成分および2.5%過硫酸アンモニウム水溶液80部を撹拌し、エマルション化してそれを1時間を要して反応器中へ連続滴下した。
脱イオン水 500部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 320部
n-ブチルアクリレート 30部
2-ヒドロキシエチルアクリレート 30部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
アクリル酸 10部
ダイアセトンアクリルアミド 40部
ニューコール707SF(注1) 80部
滴下終了後、滴下終了後2時間熟成をおこなった。その後30℃まで冷却し、アンモニア水と脱イオン水を用いて固形分47%、pHが8.5となるように調整し、内部層が架橋した2層構造粒子からなるコア/シェルエマルション(A-1)を得た。得られたコア/シェルエマルション(A-1)は、平均粒子径160nmであった。
(注1)ニューコール707SF:商品名、日本乳化剤製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%
製造例2~9
製造例1において、表1の配合組成とする以外は製造例1と同様の操作でコア/シェルエマルション(A-2)~(A-9)を得た。
【0069】
【0070】
製造例10
2リットルの4つ口フラスコにコンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付け、脱イオン水350部、アデカリアソープSR-1025(注2)10部を仕込み、内部の空気を窒素で置換した後、攪拌しつつ内部温度を80℃に上げた。次いで下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分および2.5%過硫酸アンモニウム水溶液80部を反応容器内に添加し、80度で20分間保持した。
脱イオン水 350部
メチルメタクリレート 450部
n-ブチルメタクリレート 40部
2-ヒドロキシエチルアクリレート 230部
2‐ヒドロキシエチルメタクリラート 40部
アクリル酸 10部
ダイアセトンアクリルアミド 10部
ビニルトリエトキシシラン 20部
アデカリアソープSR-1025(注2) 80部
その後、残りのプレエマルションを2時間かけて反応容器内へ連続滴下した。滴下終了後、80℃で1時間攪拌した後、脱イオン水60部を一括添加した。次に、別容器にて、下記組成の成分および2.5%過硫酸アンモニウム水溶液80部を撹拌し、エマルション化してそれを1時間を要して反応器中へ連続滴下した。
脱イオン水 300部
メチルメタクリレート 200部
n-ブチルメタクリレート 40部
2-ヒドロキシエチルアクリレート 50部
2‐ヒドロキシエチルメタクリラート 10部
アクリル酸 10部
ダイアセトンアクリルアミド 10部
ビニルトリエトキシシラン 20部
アデカリアソープSR-1025(注2) 50部
滴下終了後、2時間熟成をおこなった。その後30℃まで冷却し、アンモニア水と脱イオン水を用いて固形分48%、pHが8.8となるように調整し、アルコキシシリル基を有する2層構造粒子からなるコア/シェルエマルション(CS-1)を得た。得られたコア/シェルエマルション(CS-1)は、平均粒子径150nmであった。また、コアのガラス転移温度は0℃であり、シェルのガラス転移温度は55℃であった。
(注2)アデカリアソープSR-1025:商品名、ADEKA製、非ノニルフェノール系反応性乳化剤、不揮発分25%
水性塗料組成物の調整
実施例1
攪拌混合容器に、コア/シェルエマルション(A-1)を55部(固形分)、アジピン酸ヒドラジドを0.5部(固形分)、「Ti-Pure R-706」(商品名、Chemours社製、酸化チタン顔料)を40部(固形分)、コア/シェルエマルション(CS-1)を3部(固形分)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートを7部、2,2,4-トリメチルペンタンジオール-1,3-ジイソブチレートを5.5部及びモノエチレングリコールを0.5部となるように添加して攪拌混合し、水性塗料組成物(1)を得た。
【0071】
実施例2~14、比較例1~5
実施例1において、表2の配合組成とする以外は実施例1と同様の操作で各塗料組成物を得た。
【0072】
表2中の数値は、溶剤については液体の量、その他については固形分量を記載している。
【0073】
なお、表2における各成分は以下の通りである。
「カルボジライト E-05」商品名、日清紡ケミカル株式会社製、多価カルボジイミド、NCN当量:310、
「タケネート WD-730」商品名、三井化学社製、水分散性ポリイソシアネート
【0074】
【0075】
【0076】
被塗物の調整
被塗物1
「スレートボード」(商品名、パルテック社製、スレートテストパネル)上に、「エコカチオンシーラー」(商品名、関西ペイント社製、建築用アクリルシリコン樹脂系シーラー塗料)を、刷毛を用いて塗布量が100g/m2となるように塗装し、室温にて24時間乾燥させることで塗膜を形成した。次いで、「アレス弾性ホルダー防水形」(商品名、関西ペイント社製、合成樹脂エマルション系複層仕上げ塗材)を、多孔質ローラーを用いて、塗布量が1,000g/m2となるように形状がさざなみ状となるように塗装し、室温にて24時間乾燥させて被塗物1とした。
【0077】
被塗物2
「スレートボード」(商品名、パルテック社製、スレートテストパネル)上に、「エコカチオンシーラー」(商品名、関西ペイント社製、建築用アクリルシリコン樹脂系シーラー塗料)を、刷毛を用いて塗布量が100g/m2となるように塗装し、室温にて24時間乾燥させることで塗膜を形成した。次いで、「アレスゴムタイルニューラフ」(商品名、関西ペイント社製、合成樹脂エマルション系複層塗材)を、リシンガンを用いて、塗布量が800g/m2となるように形状が凹凸状となるように塗装し、室温にて24時間乾燥させたのち、同塗料を、タイルガンを用いて塗布量が1,000g/m2となるように塗装し、室温にて24時間乾燥させて被塗物2とした。
【0078】
被塗物3
「A1050P」(商品名、パルテック社製、アルミパネル)上に、「スーパーザウルスII」(商品名、関西ペイント社製、建築用ターペン可溶変性エポキシ樹脂系下塗塗料)を、刷毛を用いて塗布量が140g/m2となるように塗装し、室温にて24時間乾燥させることで塗膜を形成して被塗物3とした。
【0079】
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について塗膜の性能を評価し、表1にその結果を示した。
【0080】
引張弾性率
上記実施例で得た各水性塗料組成物を、250μmアプリケーターを用いて、ポリプロピレン板上に塗布し、23℃、湿度50%雰囲気下で7日間乾燥後、塗膜を剥利した。剥離塗膜について、(株)島津製作所製のEZ Testによって測定した。
【0081】
マルテンス硬度
上記実施例で得た各水性塗料組成物を、250μmアプリケーターを用いて、ガラス板上に塗布し、23℃、湿度50%雰囲気下で7日間乾燥して試験板を得た。PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。その際、荷重5mN/25sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定した。
【0082】
弾性適性
建築仕上塗材JIS-A6909温冷繰返し試験の条件を適用し、評価した。被塗物1及び2に、各水性塗料組成物を塗装し、23℃、湿度50%雰囲気下で7日間乾燥した。各試験体を、23±2℃の上水道水中に18時間浸漬した後、直ちに-20±2℃の恒温器中で3時間冷却し、次いで直ちに50±3℃の別の恒温器中で3時間加温し、この24時間を1サイクルとする操作を10回繰返した後、試験室にて2時間静置し、塗膜のひび割れ、剥がれ及び膨れの有無を目視及びルーペによって評価した。
◎:目視でもルーペでも、ひび割れ、剥がれ及び膨れが見られない、
○:目視ではひび割れ、剥がれ及び膨れが見られないが、ルーペではひび割れ、剥がれ及び膨れのいずれかが見られる、
×:目視でひび割れ、剥がれ及び膨れのいずれかが見られる。
【0083】
耐汚染性
被塗物3に各水性塗料組成物を膜厚か塗布量100g/m2となるように塗面が平滑になるように塗装し、23℃、湿度50%雰囲気下で24時間乾燥させ、試験体を作製した。東京都大田区において試験面が南面を向き水平面に対し30度の角度となるように固定し、6ヵ月間ばくろした後の汚染状態を、下記基準により、目視で評価した。また、ばくろ前後の色差ΔEを、色彩色差計「CR-400」(商品名、ミノルタ(株)製)で評価した。
◎:ΔLが5より小さい(汚れはほぼ目立たない)、
○:ΔLが5~10(汚れが若干認められるが実用レベル)、
×:ΔLが10を越える(汚れが目立つ)。
【0084】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。