(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091114
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】送風システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20230623BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20230623BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20230623BHJP
F24F 8/24 20210101ALN20230623BHJP
F24F 6/12 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
F24F7/06 A
F24F8/24
F24F6/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205657
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 誠
(72)【発明者】
【氏名】栗原 豊明
【テーマコード(参考)】
3L055
3L056
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L055AA07
3L055BB02
3L055BB03
3L055DA12
3L056BE01
3L058BD02
3L058BG03
3L058BG04
3L260AB14
3L260BA07
3L260BA42
3L260CB54
3L260CB65
3L260FB72
3L260FC04
(57)【要約】
【課題】送風システムにおいて、風量一定制御を行う際にモータの特性ばらつきによる、送風機により送風される風量の目標風量からの乖離を抑制する。
【解決手段】送風システムは、吸込口2と吹出口3とを有する筐体1と、吹出口3から延びるダクト67と、吸込口2から吸い込んだ空気を吹出口3を介してダクト67へ送風する送風機12と、送風機12のモータ58へ印加する電圧を制御する電圧制御部42と、モータ58の回転数を検出する回転数検出部54と、を備える。電圧制御部42は、送風機12により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御し、回転数検出部54により検出されるモータ58の回転数が予め定められた回転数下限値より低い場合、モータ58の回転数が回転数下限値になるようにモータ58へ印加する電圧を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口とを有する筐体と、
前記吹出口から延びるダクトと、
前記吸込口から吸い込んだ空気を前記吹出口を介して前記ダクトへ送風する送風機と、
前記送風機のモータへ印加する電圧を制御する電圧制御部と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出部と、を備え、
前記電圧制御部は、
前記送風機により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくように前記モータへ印加する電圧を制御し、
前記回転数検出部により検出される前記モータの回転数が予め定められた回転数下限値より低い場合、前記モータの回転数が回転数下限値になるように前記モータへ印加する電圧を制御することを特徴とする送風システム。
【請求項2】
前記回転数下限値は、
静圧がゼロかつ前記回転数下限値で前記送風機のモータを回転させた場合の風量が前記目標風量以下となる回転数である請求項1記載の送風システム。
【請求項3】
吸込口と吹出口とを有する筐体と、
前記吹出口から延びるダクトと、
前記吸込口から吸い込んだ空気を前記吹出口を介して前記ダクトへ送風する送風機と、
前記送風機のモータへ印加する電圧を制御する電圧制御部と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出部と、
前記モータの電流値を検出する電流検出部と、を備え、
前記電圧制御部は、
前記送風機により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくように前記モータへ印加する電圧を制御し、
前記電流検出部により検出された前記モータの電流値が予め定められた電流上限値に達した場合、前記モータの電流値が前記電流上限値を保つように前記モータへ印加する電圧を制御することを特徴とする送風システム。
【請求項4】
前記電流上限値は、
前記モータの回転数が回転数上限値の場合に、前記送風機により送風される風量が仕様により定められる下限風量値となるときの前記モータの電流値以上であることを特徴とする請求項3に記載の送風システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間に送風する送風システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空間除菌脱臭装置は、対象とする領域を殺菌するために、薬剤などの微細水粒子、例えば次亜塩素酸水を散布する。例えば、空間除菌脱臭装置の液体微細化室は、貯水部に貯留された次亜塩素酸水溶液から水滴を放出する。水滴は、送風部による通風によって、空気風路を通って吹出口から対象領域に放出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送風システムにおいて、送風機により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくように送風機のモータへ印加する電圧を制御する風量一定制御を行うことが考えられる。
この場合、送風機のモータの特性ばらつきによって、送風機により送風される風量が目標風量よりも大きくなることもあれば小さくなることもある。即ち、モータの特性ばらつきにより、送風機により送風される風量が目標風量から離れた風量になってしまう。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、風量一定制御を行う際にモータの特性ばらつきによる、送風機により送風される風量の目標風量からの乖離を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の送風システムは、吸込口と吹出口とを有する筐体と、吹出口から延びるダクトと、吸込口から吸い込んだ空気を前記吹出口を介して前記ダクトへ送風する送風機と、送風機のモータへ印加する電圧を制御する電圧制御部と、前記モータの回転数を検出する回転数検出部と、を備え、電圧制御部は、送風機により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータへ印加する電圧を制御し、回転数検出部により検出されるモータの回転数が予め定められた回転数下限値より低い場合、モータの回転数が回転数下限値になるようにモータへ印加する電圧を制御する。
【0007】
また、本開示の別の態様の送風システムは、吸込口と吹出口とを有する筐体と、吹出口から延びるダクトと、吸込口から吸い込んだ空気を前記吹出口を介して前記ダクトへ送風する送風機と、送風機のモータへ印加する電圧を制御する電圧制御部と、モータの回転数を検出する回転数検出部と、モータの電流値を検出する電流検出部と、を備え、電圧制御部は、送風機により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータへ印加する電圧を制御し、電流検出部により検出されたモータの電流値が予め定められた電流上限値に達した場合、モータの電流値が電流上限値を保つようにモータへ印加する電圧を制御する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、風量一定制御を行う際にモータの特性ばらつきによる、送風機により送風される風量の目標風量からの乖離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の加湿システムの構成を示す図である。
【
図3】
図1の加湿装置の送風機の制御に関連する構成を示す図である。
【
図4】
図1の加湿装置におけるモータの複数の回転数のそれぞれにおける静圧と風量の関係、および、ダクトの複数の風路抵抗のそれぞれにおける静圧と風量の関係の一例を示す図である。
【
図5】
図1の加湿装置において、第5回転数の目標回転数が設定されたとき、風路抵抗が第5抵抗値の場合と第1抵抗値の場合の制御を説明するための図である。
【
図6】
図3の電圧制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図7】実施例2の加湿システムにおいて、モータの特性ばらつきの上限から下限の間で風量一定制御が実行される静圧と風量の範囲の一例を示す図である。
【
図8】実施例3の加湿システムにおいて、モータの特性ばらつきの上限から下限の間で風量一定制御が実行される静圧と風量の範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
本開示の実施例1を具体的に説明する前に、実施例1の概要を説明する。本実施例は、送風システムの一例として室内空間を加湿する加湿システムに関する。加湿システムの一例として、室内に対して、湿度を調節するとともに、空気浄化を行う成分(以下、「空気浄化成分」という)を含む水を噴霧する空間浄化システムを説明する。空間浄化システムは、湿度調節と空気浄化成分を含む水の噴霧とを実行する空間浄化装置を備える。空間浄化装置内の送風機により、噴霧された水により加湿された空気を室内に送り出す。空気浄化成分には、例えば、殺菌性あるいは消臭性を備えた次亜塩素酸が用いられる。これにより、室内の殺菌あるいは消臭を行う。
【0012】
既述のように、風路抵抗の設計値に応じて目標回転数を設定し、その目標回転数になるように送風機のモータの回転数を制御する場合、実際の風路抵抗に合った目標回転数より高い目標回転数が設定されると、風量が仕様の上限値より大きくなる可能性がある。風量が大きすぎると、過加湿になったり、空気中に放出される次亜塩素酸の量が多くなりすぎたりする。
【0013】
そこで、実施例では、モータの回転数が目標回転数より低い場合、風量が目標風量に近づくようにモータへの印加電圧を制御し、モータの回転数が目標回転数以上の場合、回転数が目標回転数に近づくように印加電圧を制御する。これにより、風路抵抗に合った目標回転数より高い目標回転数が設定された場合に風量が大きくなり過ぎないようにできる。
【0014】
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0015】
図1は、実施例1の加湿システム100の構成を示す。加湿システム100は、屋内空間62の空気を循環させる際に、屋内空間62からの空気(RA)に対して微細化された水とともに空気浄化成分を含ませる装置である。加湿システム100は、既述のように空間浄化システムとも呼べる。加湿システム100は、内部を流通した空気(SA)を屋内空間62に供給することで、屋内空間62の殺菌と消臭を行う。ここでは、空気浄化成分として次亜塩素酸が用いられ、空気浄化成分を含む水は次亜塩素酸水である。
【0016】
図1に示すように、加湿システム100は、加湿装置10、操作装置70、ダクト64a、ダクト64c、低反応性ダクト67a、及び低反応性ダクト67cを備える。加湿装置10は、空間浄化装置とも呼べる。本実施例では、低反応性ダクト67a及び低反応性ダクト67cを総称してダクト67と呼ぶ。
【0017】
図2は、
図1の加湿装置10の構成を示す。
図2に示すように、加湿装置10は、筐体1、浄化風路5、加湿部14、次亜塩素酸水生成部19、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ11、送風機12、温湿度センサ40、及び制御部41を含む。
【0018】
筐体1は、
図2に示すように、加湿装置10の外郭を形成する。筐体1は、吸込口2a、吸込口2c、吹出口3a、及び吹出口3cを有する。本実施例では、吸込口2a及び吸込口2cを総称して吸込口2と呼び、吹出口3a及び吹出口3cを総称して吹出口3と呼ぶ。
【0019】
図2に示すように、吸込口2a及び吸込口2cは、筐体1の一方の側面に配置される。吹出口3a及び吹出口3cは、筐体1の他方の側面(筐体1の一方の側面と対向する側面)に配置される。
【0020】
吸込口2a及び吸込口2cは、屋内空間62から取得された筐体1外の空気8a及び空気8cをそれぞれ加湿装置10に取り入れる取入口である。屋内空間62から取得された空気8a及び空気8cは、屋内空間62の温度調節されていない非温調空気または屋内空間62に別途設置された空調機等により温度調節された温調空気とも呼べる。
【0021】
図1に示すように、吸込口2aは、屋内空間62の天井等に設けられた屋内吸込口65aとの間でダクト64aを介して連通されている。吸込口2cは、屋内空間62の天井等に設けられた屋内吸込口65cとの間でダクト64cを介して連通されている。これにより、吸込口2aは、屋内吸込口65aから加湿装置10内に屋内空間62の空気8aを吸い込むことができる。吸込口2cは、屋内吸込口65cから加湿装置10内に屋内空間62の空気8cを吸い込むことができる。
【0022】
なお、屋内吸込口65cを設けなくてもよく、この場合、ダクト64aの一端を屋内吸込口65aに接続し、ダクト64aの他端側を分岐させて吸込口2aと吸込口2cとに接続してもよい。
【0023】
吹出口3aは、加湿装置10内を流通した空気9a(SA)を屋内空間62に吐き出す吐出口である。空気9aは、微細化された次亜塩素酸水を含む。吹出口3cは、加湿装置10内を流通した空気9c(SA)を屋内空間62に吐き出す吐出口である。空気9cもまた、微細化された次亜塩素酸水を含む。
【0024】
図1に示すように、吹出口3aは、屋内空間62の天井等に設けられた屋内吹出口68aとの間で低反応性ダクト67aを介して連通されている。吹出口3cは、屋内空間62の天井等に設けられた屋内吹出口68cとの間で低反応性ダクト67cを介して連通されている。これにより、吹出口3aは、屋内吹出口68aから屋内空間62に向けて、加湿装置10内を流通した空気9aを吹き出すことができる。吹出口3cは、屋内吹出口68cから屋内空間62に向けて、加湿装置10内を流通した空気9cを吹き出すことができる。
【0025】
なお、吹出口3aと吹出口3cとは互いに区別されるものではなく、例えば、吹出口3cを設けなくてもよい。この場合、低反応性ダクト67aの一端を吹出口3aに接続し、低反応性ダクト67aの他端側を分岐させて屋内吹出口68aと屋内吹出口68cとに接続してもよい。
【0026】
低反応性ダクト67a及び低反応性ダクト67cは、いずれも浄化風路5の下流に接続された、次亜塩素酸水との反応に乏しい低反応性素材を内壁に用いたダクトである。低反応性素材は、例えば、ポリオレフィン系素材である。ポリオレフィン系素材は、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンの少なくとも一方を含む。
【0027】
図2に示すように、浄化風路5は、筐体1内に設けられ、吸込口2(吸込口2a及び吸込口2c)と、吹出口3(吹出口3a及び吹出口3c)とを連通する。
【0028】
浄化風路5は、空気8a及び空気8cの両方が流通する風路である。浄化風路5は、空気8aと空気8cとが混合して流通する風路であるとも言える。浄化風路5には、その風路内にHEPAフィルタ11、次亜塩素酸水生成部19、送風機12、及び加湿部14が上流側から下流側に向けてこの順に設けられている。より詳細には、送風機12の上流には、送風機12の吸込口(図示せず)に隣接する位置に次亜塩素酸水生成部19が配置されている。送風機12の下流には、送風機12の排出口(図示せず)に隣接する位置に加湿部14が配置されている。また、浄化風路5におけるHEPAフィルタ11と送風機12との間に温湿度センサ40が設けられている。温湿度センサ40は、HEPAフィルタ11を流通した空気の温度及び湿度を計測し、計測値を制御部41に出力する。
【0029】
HEPAフィルタ11は、エアフィルタであり、加湿装置10に流入された空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄された空気を出力する。HEPAフィルタ11は、吸込口2a及び吸込口2cに隣接して配置される。
【0030】
送風機12は、HEPAフィルタ11を通過した空気を浄化風路5に沿って加湿部14に搬送するための装置である。送風機12は、浄化風路5の空気の流れを生成する。送風機12は、吸込口2から吸い込んだ空気を加湿部14、吹出口3を順次介してダクト67へ送風する。より詳細には、送風機12は、両吸込型の遠心ファンで構成される。遠心ファンは、公知の構成を採用することができ、図示しないモータで駆動される。送風機12は、加湿部14に向かって左右に設けられた吸込口(図示せず)のそれぞれから空気を吸い込み、排出口(図示せず)から加湿部14に空気を搬送する。
【0031】
送風機12では、制御部41からの出力信号に応じて風量、つまり回転数が制御される。送風機12が運転動作することにより、加湿部14に対して風が送られる。
【0032】
加湿部14は、浄化風路5内部に取り入れた空気を加湿するためのユニットであり、加湿の際に、送風機12から導入された空気に対して微細化された水とともに次亜塩素酸を含ませる。加湿部14は、微細化部とも呼べる。加湿部14は、次亜塩素酸水生成部19が生成した次亜塩素酸水を遠心破砕により微細化して空気中に放出する。微細化された次亜塩素酸水は、液体成分が蒸発した状態で吹出口3から筐体1外へ放出される。
【0033】
加湿部14は、図示しない遠心破砕ユニット及び混合槽を有する。加湿部14は、図示しない加湿モータを用いて遠心破砕ユニットを回転させ、混合槽に貯水されている次亜塩素酸水を遠心力で吸い上げて周囲(遠心方向)に飛散・衝突・破砕させ、通過する空気に水分を含ませる遠心破砕式の構成をとる。
【0034】
加湿部14は、制御部41からの出力信号に応じて加湿モータの回転数を変化させ、加湿能力(加湿量)を調整する。加湿量は、空気に対して空気浄化成分を付加する付加量ともいえる。制御部41は、温湿度センサ72で検出された湿度計測値に基づいて、遠心破砕ユニットの回転数を制御する。
【0035】
次亜塩素酸水生成部19(電解槽20及び塩水タンク23)は、浄化風路5における送風機12の上流に配置されている。次亜塩素酸水生成部19は、塩水タンク23に貯留する塩水(塩化ナトリウム水溶液)を電解槽20において所定の濃度に希釈して電気分解を行い、予め定められた濃度の次亜塩素酸水を生成する。
【0036】
つまり、電解槽20は、一対の電極間で、電解質として塩化物水溶液(例えば、塩水)を電気分解することで次亜塩素酸水を生成する。電解槽20には、一般的な装置が使用されるので、詳細な説明は省略する。ここで、電解質は、次亜塩素酸水を生成可能な電解質であり、少量でも塩化物イオンを含んで入れば特に制限はなく、例えば、溶質として塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を溶解した水溶液が挙げられる。また、塩酸でも問題ない。本実施例では、電解質として、水に対して塩化ナトリウムを加えた塩化物水溶液(塩水)を使用している。
【0037】
屋内空間62の壁面には、
図1に示すように、操作装置70(温湿度センサ72を含む)が設置される。操作装置70は、制御部41に対して有線あるいは無線で接続されており、少なくとも湿度設定値、湿度計測値、及び運転モード情報を制御部41に送信する。運転モードは、脱臭モード、殺菌モード、通常モードなどの空気中の次亜塩素酸量を指定するモードを含む。
【0038】
図3は、
図1の加湿装置10の送風機12の制御に関連する構成を示す。加湿装置10は、回転数設定スイッチ50、電流検出部52、回転数検出部54、駆動部56、及びモータ58をさらに有する。制御部41は、電圧制御部42及び記憶部44を有する。
【0039】
モータ58は、送風機12に設けられ、遠心ファンを駆動する。モータ58は、例えばDCモータである。
【0040】
電圧制御部42は、駆動部56に指示値を出力することで、モータ58へ印加する電圧を制御する。駆動部56は、電圧制御部42の指示値に応じた電圧をモータ58に印加してモータ58を駆動する。具体的には、駆動部56は、電圧制御部42の指示値に応じたデューティ比のパルス幅変調信号を生成し、当該信号を平滑化し、平滑化された電圧をモータ58に印加する。
【0041】
電流検出部52は、モータ58の電流値を検出し、検出した電流値を制御部41に供給する。回転数検出部54は、モータ58の回転数を検出し、検出した回転数を制御部41に供給する。
【0042】
回転数設定スイッチ50は、例えば制御部41の基板上などに設けられ、加湿システム100の設置工事を行う設置者などにより切り替えられることで、モータ58の目標回転数を設定する。回転数設定スイッチ50は、設定された目標回転数を制御部41に供給する。回転数設定スイッチ50は、段階的に予め定められた複数の目標回転数の何れかを選択可能に構成されてもよいし、目標回転数を無段階に設定可能に構成されてもよい。
【0043】
回転数検出部54により検出されたモータ58の回転数が目標回転数より低い場合、電圧制御部42は、送風機12により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する。この制御を風量一定制御と呼ぶ。
【0044】
回転数検出部54により検出されたモータ58の回転数が目標回転数以上の場合、電圧制御部42は、モータ58の回転数が目標回転数に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する。この制御を回転数一定制御と呼ぶ。
【0045】
このように、電圧制御部42は、モータ58の回転数が目標回転数以上であるか否かに応じて、風量一定制御と回転数一定制御を切り替える。
【0046】
風量一定制御についてより詳しく説明する。記憶部44は、予め定められた目標風量において、静圧を所定の最小値から所定の最大値まで変化させたときのモータ58の電流と回転数の関係を記憶している。この関係は、特性が概ね標準であるモータ58を用いて予め測定されている。本実施例では、モータ58の特性が標準であるとは、基準の回転数のときにモータ58に流れる電流が標準値であることを表す。モータ58の個体差による特性ばらつきにより、基準の回転数のときにモータ58に流れる電流が標準値より小さいモータ58、及び、基準の回転数のときにモータ58に流れる電流が標準値より大きいモータ58が存在し得る。
【0047】
モータ58の回転数が目標回転数より低い場合、電圧制御部42は、検出されたモータ58の電流値と回転数が記憶部44に記憶された目標風量における電流と回転数の関係に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する。検出されたモータ58の電流値における記憶部44に記憶された関係の回転数が、検出されたモータ58の回転数より低ければ、電圧制御部42は、印加電圧を増加させて回転数を増加させる。検出されたモータ58の電流値における記憶部44に記憶された関係の回転数が、検出されたモータ58の回転数以上であれば、電圧制御部42は、印加電圧を減少させて回転数を減少させる。これにより、モータ58の特性が概ね標準であれば、静圧が変化しても風量を概ね目標風量に保つことができる。風量一定制御には公知の技術を利用できる。
【0048】
図4は、
図1の加湿装置10におけるモータ58の複数の回転数のそれぞれにおける静圧と風量の関係、および、ダクト67の複数の風路抵抗のそれぞれにおける静圧と風量の関係の一例を示す。
図4の横軸は風量を示し、縦軸は静圧を示す。
【0049】
関係H1は、第1回転数における静圧と風量の関係を示す。関係H2は、第1回転数より大きい第2回転数における静圧と風量の関係を示す。関係H3は、第2回転数より大きい第3回転数における静圧と風量の関係を示す。関係H4は、第3回転数より大きい第4回転数における静圧と風量の関係を示す。関係H5は、第4回転数より大きい第5回転数における静圧と風量の関係を示す。本実施例では、設定可能な最大の目標回転数を第5回転数とする。図示する通り、回転数が一定である場合、静圧が小さくなるほど風量が大きくなる。
【0050】
関係R1は、ダクト67の風路抵抗が第1抵抗値であるときの静圧と風量の関係を示す。関係R2は、風路抵抗が第1抵抗値より大きい第2抵抗値であるときの静圧と風量の関係を示す。関係R3は、風路抵抗が第2抵抗値より大きい第3抵抗値であるときの静圧と風量の関係を示す。関係R4は、風路抵抗が第3抵抗値より大きい第4抵抗値であるときの静圧と風量の関係を示す。関係R5は、風路抵抗が第4抵抗値より大きい第5抵抗値であるときの静圧と風量の関係を示す。図示する通り、風路抵抗が一定である場合、風量が大きくなるほど静圧が大きくなる。
【0051】
図4では、関係H1から関係H5、関係R1から関係R5を例示しているが、より多くの静圧と風量の関係が存在してよい。
【0052】
下限風量値Q1、標準風量値Q2、及び上限風量値Q3は、加湿システム100の仕様により予め定められる。標準風量値Q2は、例えば、数百m3/hであってよい。標準風量値Q2は、操作装置70を操作することで変更可能であってもよい。
【0053】
目標風量Q4は、モータ58の回転数が設定可能な最大の目標回転数(第5回転数)であり、かつ、風路抵抗が最小(ゼロ)である場合に送風機12により送風される風量Q10より小さい。この風量Q10は、後述する
図5に示される。目標風量Q4は、実験やシミュレーションにより適宜設定される。
【0054】
目標風量Q4は、回転数検出部54により検出されたモータ58の回転数が目標回転数より低い場合に、モータ58の特性ばらつきにより発生する風量のばらつきの下限風量値が下限風量値Q1より大きくなるように設定される。これにより、モータ58の特性ばらつきにより風量が減少しても、風量を仕様の範囲内に収めることができる。
【0055】
図5は、
図1の加湿装置10において、第5回転数の目標回転数が設定されたとき、風路抵抗が第5抵抗値の場合と第1抵抗値の場合の制御を説明するための図である。
【0056】
ここでは、風路抵抗の設計値が第5抵抗値であることから第5回転数が選択されたと想定する。実際の風路抵抗も第5抵抗値であれば、関係H5と関係R5の交点P1の風量に制御される。交点P1の風量は、標準風量値Q2付近の値である。
【0057】
一方、風路抵抗の設計値の計算後にダクト67の仕様が変更されたこと、または、設計値の計算が誤っていたことなどにより、実際の風路抵抗は第1抵抗値である場合を想定する。この場合、実施例1とは異なり回転数一定制御のみを実行する比較例では、関係H5と関係R1の交点P2の風量に制御される。この風量は、仕様の上限風量値Q3より大幅に大きいため、既述のように加湿量と放出される次亜塩素酸の量が多くなりすぎる可能性がある。
【0058】
実施例1では、実際の風路抵抗が第1抵抗値である場合、風量一定制御により、目標風量Q4に制御される。つまり、風量は、関係R1上の点P3の風量に制御される。よって、設定された目標回転数が実際の風路抵抗に合った目標回転数より高すぎる場合、風量が大きくなり過ぎないようにできる。そのため、加湿量と放出される次亜塩素酸の量が多くなりすぎることも抑制できる。
【0059】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0060】
以上の構成による加湿システム100の動作を説明する。
図6は、
図3の電圧制御部42の処理を示すフローチャートである。
図6の処理は、加湿システム100の電源がオンになると開始される。電圧制御部42は、モータ58へ初期設定電圧を印加し(S10)、所定時間後にモータ58の回転数を取得する(S12)。初期設定電圧と所定時間は、実験やシミュレーションにより適宜定めることができる。モータ58の回転数が目標回転数より低い場合(S14のY)、電圧制御部42は、モータ58の電流値と回転数を取得し(S16)、電圧制御部42は、取得された電流値と回転数が記憶部44に記憶された目標風量における電流と回転数の関係に近づくように、パルス幅変調信号のデューティ比を制御し(S18)、S12に戻る。
【0061】
S14でモータの回転数が目標回転数以上である場合(S14のN)、電圧制御部42は、モータ58の回転数を取得し(S22)、モータ58の回転数が目標回転数に近づくようにパルス幅変調信号のデューティ比を制御し(S24)、S12に戻る。
【0062】
本実施例によれば、モータ58の回転数が目標回転数より低い場合、風量が目標風量に近づくように印加電圧を制御するので、設定された目標回転数が風路抵抗に合った目標回転数より高すぎる場合、風量が大きくなり過ぎないようにできる。
【0063】
また、モータ58の回転数が目標回転数以上の場合、モータ58の回転数が目標回転数に近づくように印加電圧を制御するので、設定された目標回転数が風路抵抗に対して適切であれば、モータ58の特性ばらつきによらず仕様の範囲内の所望の風量を得ることができる。
【0064】
よって、風路抵抗に合った目標回転数が設定された場合にモータ58の特性ばらつきによらず所望の風量を得ることができ、風路抵抗に合った目標回転数より高い目標回転数が設定された場合に風量が大きくなり過ぎないようにできる。
【0065】
(実施例2)
実施例2では、設定された目標回転数が予め定められた回転数下限値より低い場合、風量一定制御を実行せずに回転数一定制御を実行することが実施例1と異なる。以下、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0066】
図7は、実施例2の加湿システム100において、モータ58の特性ばらつきの上限から下限の間で風量一定制御が実行される静圧と風量の範囲A1の一例を示す。
図7では、説明の都合上、
図4の関係H1から関係H5に替えて関係H11から関係H14を示し、
図4の関係R1から関係R5に替えて関係R11から関係R14を示す。例えば、関係H11は、第1回転数における静圧と風量の関係を示す。関係H14は、第4回転数における静圧と風量の関係を示す。本実施例では、設定可能な最大の目標回転数は第4回転数であり、設定可能な最小の目標回転数は第1回転数である。関係R11は、風路抵抗が第1抵抗値であるときの静圧と風量の関係を示す。範囲A1は、関係Qn、関係Qx、関係Hn、関係H14、静圧がゼロの線で囲まれる範囲である。
【0067】
関係Qnは、風量一定制御が実行された場合において、モータ58の特性ばらつきが「+10%」の場合の静圧と風量の関係を示す。特性ばらつきが「+10%」とは、基準の回転数のときにモータ58に流れる電流が標準値より10%大きいことを表す。
【0068】
関係Qxは、風量一定制御が実行された場合において、モータ58の特性ばらつきが「-10%」の場合の静圧と風量の関係を示す。特性ばらつきが「-10%」とは、基準の回転数のときにモータ58に流れる電流が標準値より10%小さいことを表す。
【0069】
図示しないが、モータ58の特性ばらつきが0%と+10%の間にある場合の静圧と風量の関係が、関係Qnと目標風量Q4を示す破線との間に複数存在する。また、モータ58の特性ばらつきが0%と-10%の間にある場合の静圧と風量の関係が、関係Qxと目標風量Q4を示す破線との間に複数存在する。
【0070】
関係Hnは、目標回転数が回転数下限値であるときの静圧と風量の関係を示す。回転数下限値は、設定可能な最小の目標回転数(第1回転数)より大きい。モータ58の回転数が回転数下限値であり、かつ、静圧がゼロの場合、風量は目標風量Q4である。
【0071】
目標回転数が回転数下限値より低い場合、回転数検出部54により検出されたモータ58の回転数が目標回転数より低い場合であっても、電圧制御部42は、モータ58の回転数が目標回転数に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する。
【0072】
例えば、回転数下限値より低い第1回転数に目標回転数が設定された場合、回転数一定制御が実行され、風路抵抗に応じた関係H11上の風量に制御される。例えば、風路抵抗が第1抵抗値であれば、モータ58の特性ばらつきによらず、送風機12により送風される風量は、関係H11と関係R11の交点である標準風量値Q2となる。
【0073】
一方、
図7の例において実施例1の制御が行われたと仮定すると、第1回転数に目標回転数が設定された場合、風路抵抗が第1抵抗値であり、かつ、モータ58の特性ばらつきが+10%であれば、風量一定制御が実行され、送風機12により送風される風量は、関係Qnの延長線(図示せず)と関係R11の交点である下限風量値Q1付近の値となる。つまり、この場合、実施例1では実施例2より風量が小さくなる。
【0074】
このように、実施例2によれば、回転数下限値より低い目標回転数が設定された場合、モータ58の特性ばらつきにより風量が小さくなり過ぎることを抑制できる。
【0075】
(実施例2A)
また、実施例2の別の実施例2Aとして、実施例1のような回転数一定制御と風量一定制御を組み合わせた制御を行わない場合について説明する。以下、実施例2との相違点を中心に
図7を用いて説明する。実施例2と実施例2Aでは
図7の中の符号の定義が一部異なるので、それも合わせて説明する。実施例2Aにおいて、電圧制御部42は、送風機12により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する風量一定制御を行っている。例えば目標風量として風量Q4が設定されており、電圧制御部42は、目標風量Q4に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する風量一定制御を行っている。
【0076】
関係Qnは、風量一定制御が行われている場合において、モータ58の特性ばらつきが「+10%」の場合の静圧と風量の関係を示す。特性ばらつきが「+10%」とは、基準の回転数のときにモータ58に流れる電流が標準値より10%大きいことを表す。
【0077】
関係Qxは、風量一定制御が行われている場合において、モータ58の特性ばらつきが「-10%」の場合の静圧と風量の関係を示す。特性ばらつきが「-10%」とは、基準の回転数のときにモータ58に流れる電流が標準値より10%小さいことを表す。
【0078】
図示しないが、モータ58の特性ばらつきが0%と+10%の間にある場合の静圧と風量の関係が、関係Qnと目標風量Q4を示す破線との間に複数存在する。また、モータ58の特性ばらつきが0%と-10%の間にある場合の静圧と風量の関係が、関係Qxと目標風量Q4を示す破線との間に複数存在する。
【0079】
関係Hnは、モータ58の回転数が回転数下限値であるときの静圧と風量の関係を示す。回転数下限値は、静圧がゼロかつ回転数下限値で送風機12のモータ58を回転させた場合の風量が目標風量Q4となる回転数であることが望ましい。ただし、回転数下限値は、静圧がゼロかつ回転数下限値で送風機12のモータ58を回転させた場合の風量が目標風量Q4以下となる回転数でもよい。
【0080】
電圧制御部42は、目標風量Q4に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する際に回転数検出部54により検出されたモータ58の回転数が回転数下限値より低い場合、モータ58の回転数が回転数下限値になるようにモータ58へ印加する電圧を制御する第一補正制御を行う。
【0081】
例えば、モータ58の特性ばらつきがなければ、風路抵抗が第1抵抗値でありかつ風量一定制御が実行された場合の送風機12から送風される風量はQ4となる。一方、風路抵抗が第1抵抗値でありかつモータ58の特性ばらつきが+10%で風量一定制御が実行された場合の送風機12により送風される風量は、第一補正制御を実行しない場合、関係Qnの延長線(図示せず)と関係R11の交点である風量Q1付近の値となる。しかし、電圧制御部42が第一補正制御を実行した場合、送風機12により送風される風量は、関係Hnと関係R11の交点である風量Q3付近の値となる。電圧制御部42が第一補正制御を実行した場合の方が、送風機12により送風される風量を目標風量Q4に近づけることができる。即ち、モータの特性ばらつきによる、送風機12により送風される風量の目標風量からの乖離を抑制することができる。
【0082】
このように、実施例2Aによれば、モータ58の特性ばらつきにより風量が小さくなり過ぎることを抑制できる。よって、風量の目標風量からの乖離を抑制しつつ、+10%程度の比較的大きい特性ばらつきの安価なモータ58を使用できるので、加湿システム100のコストを低減できる。
【0083】
(実施例3)
実施例3では、モータ58の電流値を電流上限値に制限することが実施例2と異なる。以下、実施例2との相違点を中心に説明する。
【0084】
図8は、実施例3の加湿システム100において、モータ58の特性ばらつきの上限から下限の間で風量一定制御が実行される静圧と風量の範囲A1aの一例を示す。範囲A1aは、関係Qn、関係Hn、関係C1、関係H14、静圧がゼロの線で囲まれる範囲である。範囲A1aは、実施例2の範囲A1から範囲A2を除いた範囲である。関係C1は、モータ58の電流値が電流上限値である場合の静圧と風量の関係を示す。
【0085】
電流検出部52により検出されたモータ58の電流値が予め定められた電流上限値に達した場合、電圧制御部42は、モータ58の電流値が電流上限値を保つようにモータ58へ印加する電圧を制御する。
【0086】
例えば、モータ58の特性ばらつきが-10%であり、第4回転数に目標回転数が設定された場合、風路抵抗が第1抵抗値であれば、送風機12により送風される風量は、関係C1と関係R11の交点の風量に制御される。モータ58の電流値が電流上限値に制限されるためである。
【0087】
一方、同じ条件で実施例2の制御が行われたと仮定すると、モータ58の電流値が制限されないため、送風機12により送風される風量は、関係H14と関係R11の交点の風量となる。つまり、この場合、実施例2では実施例3より風量が大きくなる。
【0088】
このように、実施例3によれば、モータ58の特性ばらつきにより風量が大きくなり過ぎることを抑制できる。よって、最大風量を抑制しつつ、±10%程度の比較的大きい特性ばらつきの安価なモータ58を使用できるので、加湿システム100のコストを低減できる。また、消費電力を削減できる。
【0089】
ここで、電流上限値は、モータ58の回転数が設定可能な最大の目標回転数の場合に、送風機12により送風される風量が仕様の上限風量値Q3となるときのモータ58の電流値以上である。
図8の例では、電流上限値は、関係H14で上限風量値Q3となるときのモータ58の電流値、即ち交点P10でのモータ58の電流値と等しい。これにより、仕様の上限風量値Q3以下の風量値に電流制限による影響を及ぼさずに、モータ58の特性ばらつきにより風量が大きくなり過ぎることを抑制できる。
【0090】
(実施例3A)
また、実施例3とは別の実施例3Aとして、実施例1のような回転数一定制御と風量一定制御を組み合わせた制御を行わない場合について説明する。以下、実施例3との相違点を中心に
図8を用いて説明する。実施例3と実施例3Aでは
図8の中の符号の定義が一部異なるので、それも合わせて説明する。実施例3Aにおいて、電圧制御部42は、送風機12により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する風量一定制御を行っている。例えば目標風量として風量Q4が設定されており、電圧制御部42は、目標風量Q4に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する風量一定制御を行っている。
【0091】
範囲A1aは、実施例2Aの範囲A1から範囲A2を除いた範囲である。関係C1は、モータ58の電流値が電流上限値である場合の静圧と風量の関係を示す。
【0092】
電圧制御部42は、目標風量Q4に近づくようにモータ58へ印加する電圧を制御する際に電流検出部52により検出されたモータ58の電流値が予め定められた電流上限値に達した場合、モータ58の電流値が電流上限値を保つようにモータ58へ印加する電圧を制御する第二補正制御を行う。
【0093】
電流上限値は、モータ58の回転数が回転数上限値(例えば、第4回転数)の場合に、送風機12により送風される風量が仕様により定められる下限風量値(例えば、風量Q3)となるときのモータ58の電流値が望ましい。ただし、電流上限値は、モータ58の回転数が回転数上限値の場合に、送風機12により送風される風量が仕様により定められる下限風量値となるときのモータ58の電流値以上でも良い。
図8の例では、電流上限値は、関係H14で下限風量値Q3となるときのモータ58の電流値、即ち交点P10でのモータ58の電流値と等しい。これにより、仕様の下限風量値Q3以下の風量値に電流制限による影響を及ぼさずに、モータ58の特性ばらつきにより風量が大きくなり過ぎることを抑制できる。
【0094】
例えば、モータ58の特性ばらつきがなければ、風路抵抗が第1抵抗値でありかつ風量一定制御が実行された場合の送風機12から送風される風量はQ4となる。一方、風路抵抗が第1抵抗値でありかつモータ58の特性ばらつきが-10%で風量一定制御が実行された場合の送風機12により送風される風量は、第二補正制御を実行しない場合、関係Qxの延長線(図示せず)と関係R11の交点の風量となる。しかし、電圧制御部42が第二補正制御を実行した場合、送風機12により送風される風量は、関係C1と関係R11の交点の風量に制御される。これは、モータ58の電流値が電流上限値に制限されるためである。電圧制御部42が第二補正制御を実行した場合の方が、送風機12により送風される風量を目標風量Q4に近づけることができる。即ち、モータの特性ばらつきによる、送風機12により送風される風量の目標風量からの乖離を抑制することができる。
【0095】
このように、実施例3Aによれば、モータ58の特性ばらつきにより風量が大きくなり過ぎることを抑制できる。よって、風量の目標風量からの乖離を抑制しつつ、-10%程度の比較的大きい特性ばらつきの安価なモータ58を使用できるので、加湿システム100のコストを低減できる。また、消費電力を削減できる。
【0096】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0097】
例えば、実施例1から実施例3では、加湿部14は空気浄化成分を含む水を噴霧したが、噴霧される水は空気浄化成分を含まなくてもよい。この場合、加湿部14による加湿の方式も特に限定されず、気化式などを採用してもよい。また、実施例3を実施例1と組み合わせてもよい。
【0098】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の送風システム(100)は、吸込口(2)と吹出口(3)とを有する筐体(1)と、吹出口(3)から延びるダクト(67)と、吸込口(2)から吸い込んだ空気を吹出口(3)を介してダクト(67)へ送風する送風機(12)と、送風機(12)のモータ(58)へ印加する電圧を制御する電圧制御部(42)と、モータ(58)の回転数を検出する回転数検出部(54)と、を備える。電圧制御部(42)は、送風機(12)により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータ(58)へ印加する電圧を制御し、回転数検出部(54)により検出されるモータ(58)の回転数が予め定められた回転数下限値より低い場合、モータ(58)の回転数が回転数下限値になるようにモータ(58)へ印加する電圧を制御する。
【0099】
回転数下限値は、静圧がゼロかつ回転数下限値で送風機(12)のモータ(58)を回転させた場合の風量が目標風量以下となる回転数でもよい。
【0100】
本開示の別の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の送風システム(100)は、吸込口(2)と吹出口(3)とを有する筐体(1)と、吹出口(3)から延びるダクト(67)と、吸込口(2)から吸い込んだ空気を吹出口(3)を介してダクト(67)へ送風する送風機(12)と、送風機(12)のモータ(58)へ印加する電圧を制御する電圧制御部(42)と、モータ(58)の回転数を検出する回転数検出部(54)と、モータ(58)の電流値を検出する電流検出部(52)と、を備える。電圧制御部(42)は、送風機(12)により送風される風量が予め定められた目標風量に近づくようにモータ(58)へ印加する電圧を制御し、電流検出部(52)により検出されたモータ(58)の電流値が予め定められた電流上限値に達した場合、モータ(58)の電流値が電流上限値を保つようにモータ(58)へ印加する電圧を制御する。
【0101】
電流上限値は、モータ(58)の回転数が回転数上限値の場合に、送風機(12)により送風される風量が仕様により定められる下限風量値となるときのモータ(58)の電流値以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示に係る送風システムは、対象空間に空気を送風するシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 筐体、
2,2a,2c 吸込口、
3,3a,3c 吹出口、
5 浄化風路、
8a,8c,9a,9c 空気、
10 加湿装置、
11 HEPAフィルタ、
12 送風機、
14 加湿部、
19 次亜塩素酸水生成部、
20 電解槽、
23 塩水タンク、
40 温湿度センサ、
41 制御部、
42 電圧制御部、
44 記憶部、
50 回転数設定スイッチ、
52 電流検出部、
54 回転数検出部、
56 駆動部、
58 モータ、
62 屋内空間、
64a,64c ダクト、
65a,65c 屋内吸込口、
67 ダクト、
67a,67c 低反応性ダクト、
68a,68c 屋内吹出口、
70 操作装置、
72 温湿度センサ、
100 加湿システム