(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091118
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】乳脂肪酵素処理組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20230623BHJP
A23C 23/00 20060101ALI20230623BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230623BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20230623BHJP
A23L 29/20 20160101ALN20230623BHJP
【FI】
A23L27/20 A
A23C23/00
A23L27/00 D
A23L5/00 L
A23L29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205670
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000201733
【氏名又は名称】曽田香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 彩
(72)【発明者】
【氏名】佐野 恵右
(72)【発明者】
【氏名】西川 卓
【テーマコード(参考)】
4B001
4B035
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B001AC02
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4B047LP18
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、冷蔵状態でも流動性を有しながら乳化安定した状態にある乳脂肪酵素処理組成物を提供することにある。
【解決手段】冷蔵状態でも流動性を有しながら乳化安定した状態にある乳脂肪酵素処理組成物及び酵素反応前に食品多糖類を投入することを特徴とする当該乳製品酵素処理組成物の製造方法。本発明によれば、製造工程全体を通して乳化処理工程を組み込むことなく、冷蔵状態でも流動性を有しながら乳化安定した状態の乳脂肪酵素処理組成物を得ることが可能となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵状態で流動性及び乳化安定性を有し、温度10℃、せん断速度0.5毎秒における粘度が0.8~177.4Pa・sであることを特徴とする、乳脂肪酵素処理組成物。
【請求項2】
少なくとも乳脂肪、乳たんぱく質及び水を含む原料組成物に、酵素を用いる酵素反応を施すことにより得られる乳脂肪酵素処理組成物の製造方法であって、酵素として少なくとも脂肪分解酵素を用い、酵素反応を行う前に食品多糖類を加えることを特徴とする、冷蔵状態で流動性及び乳化安定性を有する乳脂肪酵素処理組成物の製造方法。
【請求項3】
さらに酵素としてプロテアーゼを併用する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
乳脂肪の含有量を1.0~24.8質量%、乳たんぱく質の含有量を0.5~5.0質量%、水の含有量を55.0~81.6質量%とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
さらに酵素としてプロテアーゼを併用し、乳たんぱく質の含有量を0.5~16.8質量%とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
食品多糖類がオクテニルコハク酸デンプンナトリウム、キサンタンガム、タマリンドガム、グァーガムからなる群から選択される1種である、請求項2~5に記載の製造方法。
【請求項7】
食品多糖類の種類と添加量が(a)~(d)のいずれかである、請求項6に記載の製造方法。
(a)オクテニルコハク酸デンプンナトリウム 2.0~5.5質量%
(b)キサンタンガム 0.4~1.0質量%
(c)タマリンドガム 0.6~2.0質量%
(d)グァーガム 0.7~2.0質量%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳脂肪酵素処理組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳風味を付与又は増強するような乳系素材は、乳を使用する飲食品のおいしさ向上、乳製品の代替、コスト削減等に有効である。その中でも、乳脂肪に酵素反応を施すことにより得られる乳脂肪酵素処理組成物は、特に強力な乳風味付与効果又は増強効果を有することから、産業上非常に有用である。
【0003】
上記のような乳脂肪酵素処理組成物の製造方法は多数報告されており、例えば、乳脂肪含有食品材料にクロモバクテリウム属に属する微生物の生産するリパーゼを作用させて得られる持続性乳製品フレーバーの製造方法(特許文献1)、生クリーム又はバターに脱脂粉乳および水を加えた基質に、リパーゼ、プロテアーゼならびに乳酸菌を作用させて得られるミルキー風味およびこく味を有する発酵乳フレーバーの製造方法(特許文献2)、乳脂肪含有食品材料をペニシリウム・クリソゲヌムに属する微生物の産生するリパーゼを作用させて得られる持続性乳製品フレーバーの製造方法(特許文献3)等が挙げられる。
【0004】
乳脂肪酵素処理組成物の製造にあたっては、製造工程中に食品多糖類を添加することもある。例えば、特許文献4においては、最終的に得られる乳製品フレーバーの呈味を改善する目的で、分枝サイクロデキストリンを添加している。また、特許文献5においては、フレーバー組成物における油浮きや離水を抑制する目的で、安定剤としてキサンタンガム等の食品多糖類を添加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-002549号公報
【特許文献2】特開平03-127962号公報
【特許文献3】特開平05-091851号公報
【特許文献4】特開平06-125733号公報
【特許文献5】特開2014-060935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳脂肪酵素処理組成物は冷蔵状態で保存する必要があるが、上記のような従前の製法で得られる乳脂肪酵素処理組成物は、おしなべて冷蔵状態で流動性を有していなかった。そのため、当該組成物の添加対象となる飲食品の製造においては、一旦加熱して流動する状態にしてから使用する必要があり、利便性に難があった。この点を解決すべく、従前の製法のまま特に工夫を施すことなく、単に原料の乳脂肪源の量を減らす等により組成物の粘度を下げようとすると、乳化状態を維持できずに油水分離を起こしてしまい、実用に足る乳脂肪酵素処理組成物は得られなかった。実際に冷蔵状態で流動性を有する乳脂肪酵素処理組成物は、軒並み乳化安定性に欠けていた。
【0007】
そこで、本発明の課題は、冷蔵状態でも流動性を有しながら乳化安定した状態にある乳脂肪酵素処理組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鋭意研究の結果、本発明者らは酵素反応前に食品多糖類を添加することにより、製造工程全体を通して乳化処理工程を組み込むことなく、冷蔵状態でも流動性を有しながら乳化安定した状態の乳脂肪酵素処理組成物が得られることを見出し、上記課題を解決させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]冷蔵状態で流動性及び乳化安定性を有し、温度10℃、せん断速度0.5毎秒における粘度が0.8~177.4Pa・sであることを特徴とする、乳脂肪酵素処理組成物。
[2]少なくとも乳脂肪、乳たんぱく質及び水を含む原料組成物に、酵素を用いる酵素反応を施すことにより得られる乳脂肪酵素処理組成物の製造方法であって、酵素として少なくとも脂肪分解酵素を用い、酵素反応を行う前に食品多糖類を加えることを特徴とする、冷蔵状態で流動性及び乳化安定性を有する乳脂肪酵素処理組成物の製造方法。
[3]さらに酵素としてプロテアーゼを併用する、[2]に記載の製造方法。
[4]乳脂肪の含有量を1.0~24.8質量%、乳たんぱく質の含有量を0.5~5.0質量%、水の含有量を55.0~81.6質量%とする、[2]に記載の製造方法。
[5]さらに酵素としてプロテアーゼを併用し、乳たんぱく質の含有量を0.5~16.8質量%とする、[4]に記載の製造方法。
[6]食品多糖類がオクテニルコハク酸デンプンナトリウム、キサンタンガム、タマリンドガム、グァーガムからなる群から選択される1種である、[2]~[5]に記載の製造方法。
[7]食品多糖類の種類と添加量が(a)~(d)のいずれかである、[6]に記載の製造方法。
(a)オクテニルコハク酸デンプンナトリウム 2.0~5.5質量%
(b)キサンタンガム 0.4~1.0質量%
(c)タマリンドガム 0.6~2.0質量%
(d)グァーガム 0.7~2.0質量%
【0010】
乳脂肪酵素処理組成物の製造過程で食品多糖類を添加する事例は前述のとおり公知となっているが、あくまで、酵素反応直後に油水分離した組成物の安定化、組成物の呈味改善あるいは組成物を粉末化するための助剤の目的で添加されている。加えて、食品多糖類を投入すると原料混合物の系の粘度が上昇することから、酵素反応前に投入すると反応効率が低下すること及び撹拌に余分なエネルギーを要することが明白であるため、上記の安定化や呈味改善の目的で添加する場合、基本的に酵素反応終了後に添加するのが一般的であった。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷蔵状態でも流動性と乳化安定性を有する乳脂肪酵素処理組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、乳脂肪酵素処理組成物とは、少なくとも乳脂肪、乳たんぱく質及び水を含む原料に酵素反応を施すことにより得られる組成物のことを指す。
【0013】
本発明の乳脂肪酵素処理組成物の製造方法は、少なくとも乳脂肪、乳たんぱく質及び水を含む原料組成物に食品多糖類を添加し殺菌する工程(以下、工程1と記載する場合あり)、殺菌後に酵素反応を行う工程(以下、工程2と記載する場合あり)及び酵素反応終了後に酵素を失活させる工程(以下、工程3と記載する場合あり)を主たる工程とする。
【0014】
工程1では、少なくとも乳脂肪、乳たんぱく質及び水を含む原料組成物を調製し、当該原料組成物に食品多糖類を添加し、撹拌しながら加熱して殺菌状態を保つ。
【0015】
原料組成物は酵素反応に供される組成物であり、本発明では少なくとも乳脂肪、乳たんぱく質及び水を含有する。便宜上、乳脂肪をもたらす原料を乳脂肪源、乳たんぱく質をもたらす原料を乳たんぱく質源と表記する。
【0016】
原料組成物における乳脂肪源には乳製品を用いることができる。当該乳製品は乳脂肪を含む乳製品であれば特に限定されず、例えば、乳等省令に記載の乳製品である牛乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮乳、無糖練乳、全粉乳、クリームパウダー等が挙げられる。なお、これらの乳製品は市販品を購入して使用することができ、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0017】
乳脂肪の含有量は、原料組成物、食品多糖類及び工程2で添加する酵素の総量に対し1.0~24.8質量%とするのが好ましい。この範囲であれば、最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物が冷蔵時の流動性及び乳化安定性を有しやすくなる。乳脂肪の含有量は、多過ぎると最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物の冷蔵時の流動性が無くなりやすく、少な過ぎると油水分離を引き起こしやすくなる。
【0018】
原料組成物における乳たんぱく質源にも乳製品を用いることができる。当該乳製品は乳たんぱく質を含む乳製品であれば特に限定されず、例えば、乳等省令に記載の乳製品である牛乳、クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー等が挙げられる。なお、これらの乳製品は市販品を購入して使用することができ、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0019】
乳たんぱく質の含有量は、原料組成物、食品多糖類及び工程2で添加する酵素の総量に対し0.5~5.0質量%とするのが好ましい。この範囲であれば、最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物が冷蔵時の流動性及び乳化安定性を有しやすくなる。乳たんぱく質の含有量は、多過ぎると工程3で酵素を失活させるために加熱する過程で乳脂肪酵素処理組成物が凝固しやすくなり、少な過ぎると酵素反応が円滑に進みにくくなり油水分離を引き起こしやすくなる。なお、酵素反応に用いる酵素として、後述のプロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)を併用する場合、併用しない場合と比べて原料組成物中の乳たんぱく質の含有量が増えても加熱過程で凝固しづらくなるため、原料組成物中の乳たんぱく質の含有量は、0.5~16.8質量%が好ましい範囲となる。よって、原料組成物中の乳たんぱく質の含有量は、原料組成物、食品多糖類及び工程2で添加する酵素の総量に対し0.5~16.8質量%が好ましく、0.5~5.0質量%がより好ましい。
【0020】
原料組成物中の水の含有量は、原料組成物、食品多糖類及び工程2で添加する酵素の総量に対し55.0~81.6質量%とするのが好ましい。この範囲であれば、最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物が冷蔵時の流動性及び乳化安定性を有しやすくなる。水の含有量は、多過ぎると油水分離を引き起こしやすくなり、少な過ぎると冷蔵時の流動性が無くなりやすくなる。
【0021】
原料組成物には、乳脂肪源、乳たんぱく質源及び水の他に、乳糖等の炭水化物を含んでもよい。炭水化物をもたらす原料(便宜上、炭水化物源と表記)としては、乳糖あるいは乳糖を含む食品や添加剤が一例として挙げられるが、特に限定はされない。
【0022】
本発明においては、工程1、すなわち酵素反応を行う前の段階で、原料組成物に食品多糖類を添加する。この段階で食品多糖類を添加することにより、原料組成物の系の均一化による酵素反応の促進をもたらし、冷蔵状態で流動性を有しながら乳化安定した状態にある乳脂肪酵素処理組成物を安定的に得ることができる。加えて、全製造工程において乳化処理工程が不要となり、さらに、目的の脂肪分解度に安定的に調節され、乳脂肪の分解度の制御も容易になる。
【0023】
本発明における食品多糖類としては、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、キサンタンガム、タマリンドガム又はグァーガムを用いるのが好ましいが、特に限定はされない。これらの食品多糖類は市販品を購入して使用することができる。
【0024】
食品多糖類の添加量は、使用する食品多糖類の種類により適宜調整すればよいが、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムであれば原料組成物、食品多糖類及び工程2で添加する酵素の総量に対し2.0~5.5質量%、キサンタンガムなら0.4~1.0質量%、タマリンドガムなら0.6~2.0質量%、グァーガムなら0.7~2.0質量%が好適な範囲の一例として挙げられ、この範囲であれば、最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物が冷蔵時の流動性及び乳化安定性を有しやすくなる。食品多糖類の添加量は、多過ぎると最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物の冷蔵時の流動性が無くなる他、原料組成物の粘度が高くなり過ぎて反応効率が低下する、撹拌できなくなる、原料組成物がゲル状になる等の不具合が発生し、少な過ぎると前述した食品多糖類を添加する目的が果たせない。
【0025】
原料組成物に食品多糖類を添加したら加熱殺菌を行う。加熱殺菌の温度は、特に限定されないが、例えば、63~140℃を設定することができる。また、加熱殺菌の時間は、加熱殺菌の温度に応じて適宜調整すればよい。
【0026】
斯くして得られる原料組成物と食品多糖類の混合物は、工程2に進む前に、所望により、乳酸菌を用いて乳酸発酵してもよい。乳酸発酵することにより、発酵感等の特徴的な風味に優れた乳脂肪酵素処理物を得ることができる。この乳酸発酵に用いる乳酸菌の種類は特に限定されず、乳酸菌は市販品を購入して使用することができる。
【0027】
工程2では、前述の加熱殺菌工程を経た原料組成物を、酵素の作用が発揮されやすい温度まで冷却した後、酵素を添加して攪拌し、酵素反応を行う。工程1で食品多糖類を添加したことにより、攪拌のみでも酵素反応が促進されるため、酵素添加後に反応を促進させる目的で乳化処理を行う必要はない。
【0028】
工程2の酵素反応では、酵素として少なくとも脂肪分解酵素を用いる。脂肪分解酵素の種類は特に限定されないが、リパーゼを用いるのが好ましい。リパーゼとしては、例えば、アスペルギルス属、ムコール属、リゾープス属、ペニシリウム属、キャンディダ属、ピキア属、クロモバクテリウム属、シュードモナス属等に属する各種微生物から採取されるリパーゼ、豚の膵臓から得られるリパーゼ、子牛、子羊、子やぎの口頭分泌腺から採取したオーラルリパーゼ等が挙げられ、特に限定はされないが、微生物由来のリパーゼの使用が好ましい。なお、これらのリパーゼは市販品を購入して使用することができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
工程2の酵素反応で用いる酵素としては、脂肪分解酵素の他、プロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)を併用しても良い。プロテアーゼを併用することにより、チーズ風味等の特徴的な風味に優れた乳脂肪酵素処理組成物を得ることができる。本発明においては、プロテアーゼとしてエキソ型のプロテアーゼ(エキソプロテアーゼ)を用いると最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物が油水分離するため、エンド型のプロテアーゼ(エンドプロテアーゼ)を用いるのが好ましい。エンドプロテアーゼとしては、例えば、セリンプロテアーゼであるトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、システインプロテアーゼであるパパイン、アスパラギン酸プロテアーゼであるペプシン、メタロプロテアーゼであるサーモリシン等が挙げられ、特に限定はされない。なお、これらのプロテアーゼは市販品を購入して使用することができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
酵素の添加量は、添加量と酵素反応効率のバランス等を考慮して適宜調整すればよい。
【0031】
酵素反応時の温度は、使用する酵素の種類に応じて、酵素が効率良く作用しやすい温度に適宜調整すればよく、例えば30~45℃を設定できるが、特に限定はされない。また、酵素反応の時間は、最終的に得られる乳脂肪酵素処理組成物が好適な乳風味付与効果又は増強効果を有するよう、反応物の酸価を観測して適宜調整すればよい。
【0032】
工程3では、工程2で得られた酵素反応物を加熱して添加した酵素を失活させる。
【0033】
酵素失活のための加熱条件は、添加した酵素を失活させることができる温度及び時間に適宜調整すればよく、例えば80~140℃を設定できるが、特に限定はされない。
【0034】
斯くして得られる乳脂肪酵素処理組成物は、温度10℃の冷蔵状態において流動性及び乳化安定性を有する。当該組成物中の乳脂肪、水分及び乳たんぱく質の含有量としては、前述した原料組成物の好適な組成から、乳脂肪は1.0~24.8質量%、水分は55.0~81.6質量%が好適な範囲として挙げられ、乳たんぱく質は0.5~16.8質量%が好ましく、0.5~5.0質量%がより好ましい。
【0035】
乳脂肪酵素処理組成物の流動性は、当該組成物が入った容器を傾けて目視で確認することができる他、当該組成物の粘度で数値化することもできる。具体的には、当該組成物の温度10℃における粘度が0.8~177.4Pa・sであれば冷蔵状態で流動性を有する。なお、本発明における粘度とは、温度10℃、せん断速度0.5毎秒の条件で測定した値のことを指す。粘度測定におけるせん断速度は、一般的には0.5毎秒よりも大きい値で設定するが、本発明においては、測定対象となる温度10℃の乳脂肪酵素処理組成物が比較的固めの物性を有するため0.5毎秒で測定する。
【0036】
本発明において、冷蔵状態で乳化安定性を有する乳脂肪酵素処理組成物とは、温度10℃の冷蔵状態で油水分離しない乳脂肪酵素処理組成物のことを指す。この乳化安定性の有無を確認する方法としては、遠心分離機を用いた加速試験等が一例として挙げられる。
【0037】
本発明により得られる乳脂肪酵素処理組成物は、そのままフレーバー組成物として使用することができ、飲食品に添加することにより、当該飲食品に乳特有の濃厚なコク、厚み、乳脂肪感等を与える乳風味付与効果や、当該飲食品が元々有している乳特有の濃厚なコク、厚み、乳脂肪感等を増強する乳風味増強効果をもたらす。
【0038】
本発明の乳脂肪酵素処理組成物が適用される飲食品としては、例えば、果実飲料、果汁入り飲料、野菜ジュース、発泡性飲料、濃縮ジュース、凍結ジュース、スポーツドリンク、栄養ドリンク、その他の機能性ドリンク、フレーバードティー、乳飲料、乳酸菌飲料、豆乳類などの飲料一般、ヨーグルト、ゼリー、ムース、デザート類、アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、シャーベットなどの冷菓並びに氷菓、ケーキ、クッキー、ビスケット、パイ、煎餅、その他の米菓などといった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子などの菓子類、パン、スナック類、チューインガム、ハードキャンディ、ソフトキャンディー、ゼリービーンズ、グミ、錠菓などを含む糖菓一般、クリーム、果実フレーバーソース、ジャムやマーマレード、甘味料、シロップ、カレールウ、シチュールウ、ハヤシライスのルウ、ハッシュドビーフのルウ、ソース、調味ソース、粉末調味料、液体調味料、ドレッシング、揚げ粉、パスタソース、グラタンソース、炊き込みご飯の素(パエリア、ビリヤニ、ピラフ等)、炒飯の素、麻婆豆腐の素、鍋の素、中華スープの素、コンソメスープの素等の調味料類、カップラーメン、カップ焼きそば、袋麺等の即席麺類、カップごはん等の即席米飯類、レトルト食品、冷凍食品(炒飯、ピラフ、餃子、焼売、から揚げ、ハンバーグ、フライ、コロッケ、グラタン、ピザ等)、缶詰等の調理食品や加工食品等を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0039】
本発明の乳脂肪酵素処理組成物の飲食品に対する好適な添加量は、添加対象の飲食品によって異なるため、適切な乳風味付与又は増強効果が得られ、かつ、乳風味が強くなり過ぎないよう、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0040】
本発明の乳脂肪酵素処理組成物は、単独で使用してもよいが、使用時の利便性のため適宜溶剤などで希釈されてもよい。希釈に用いる溶剤などは香料組成物に常用されるものであれば特に制限はない。また、あらかじめ香料組成物とすることもでき、香気及び/又は呈味に悪影響のない範囲であれば、香料以外の成分として常用される他の添加物を加えた組成物としてもよい。さらに、香料一般に適用される製剤化技術の適用も可能であり、粉末化、カプセル化など、状況により所望の形態に調製することもできる。
【0041】
本発明の乳脂肪酵素処理組成物は、飲食品中に均等に混合することができれば、飲食品の製造工程のどの時点で添加しても構わない。
【0042】
本発明における、各成分の含有量は一般的な測定方法で測定できる。測定方法としては、乳脂肪の含有量であればレーゼゴットリーブ法、乳たんぱく質の含有量であればケルダール法、水分の含有量であれば加熱乾燥法が一例として挙げられる。
【実施例0043】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)乳脂肪の量の検討
表1に記載の成分組成となるよう、純水、乳脂肪源として市販のバターオイル(乳脂肪100%)、乳たんぱく質源として市販のたんぱく質濃縮ホエイパウダー(水分3.7%、乳脂肪6.2%、たんぱく質80.3%、炭水化物7%)、炭水化物源としてラクトース(水分4.8%、たんぱく質0.1%、炭水化物94.8%)をそれぞれ表2に記載の質量比で混合して原料組成物を調製した。調製した原料組成物に食品多糖類としてオクテニルコハク酸デンプンナトリウムを表2に記載の質量比で添加し、撹拌しながらウォーターバスで加熱し、70℃の温度で20分以上殺菌状態を保った。冷却後、酵素として微生物由来のリパーゼ(キャンディダ属)を表2に記載の質量比となるよう添加して撹拌した。42時間後、ウォーターバスにより85℃の温度で40分間撹拌しながら加熱することで酵素を失活させ、乳脂肪酵素処理組成物を得た。
【0045】
【0046】
【0047】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における流動性を確認した。流動性は当該組成物が入った容器を傾けて目視により判断した。結果、表1に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で流動性を示した。
【0048】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における乳化安定性を確認した。乳化安定性は遠心分離機(KUBOTA製テーブルトップ遠心機Model5200)を用いて、温度10℃の状態における乳脂肪酵素処理組成物を3000rpmで5分間遠心分離にかけた後の離水した割合(%)を指標とし、この割合(離水度)が0%のものを乳化安定性があるものと判定した。なお、離水度は、上記の遠心分離後の乳脂肪酵素処理組成物を試験管に移したときの、当該組成物全体の高さに対する離水した部分の層の高さの割合である。結果、表1に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で離水度が0%となり、乳化安定性を示した。
【0049】
これらの結果から、乳脂肪の含有量が原料組成物、食品多糖類及びリパーゼの総量に対し1.0~24.8質量%の場合において、乳脂肪酵素処理組成物が温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示すことを確認した。
【0050】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における粘度を測定した。粘度はB型回転粘度計(ブルックフィールド製DV2T)を用いて、温度10℃、せん断速度0.5毎秒の条件で測定した。結果、表1に記載のとおり、温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示した乳脂肪酵素処理組成物の粘度は37.5~59.9Pa・sであった。
【0051】
(実施例2)水分の量の検討
実施例1と同じ原料、食品多糖類及びリパーゼを用い、表3に記載の成分組成となるよう、それぞれの使用量を表4に記載の質量比とし、実施例1と同様の手順で乳脂肪酵素処理組成物を得た。
【0052】
【0053】
【0054】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における流動性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表3に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で流動性を示した。
【0055】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における乳化安定性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表3に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で乳化安定性を示した。
【0056】
これらの結果から、水分の含有量が原料組成物、食品多糖類及びリパーゼの総量に対し55.0~81.6質量%の場合において、乳脂肪酵素処理組成物が温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示すことを確認した。
【0057】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における粘度を実施例1と同様の手順で測定した。結果、表3に記載のとおり、温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示した乳脂肪酵素処理組成物の粘度は6.7~107.6Pa・sであった。
【0058】
(実施例3)乳たんぱく質の量の検討
実施例1と同じ原料、食品多糖類及びリパーゼを用い、表5に記載の成分組成となるよう、それぞれの使用量を表6に記載の質量比とし、実施例1と同様の手順で乳脂肪酵素処理組成物を得た。
【0059】
【0060】
【0061】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における流動性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表5に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で流動性を示した。
【0062】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における乳化安定性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表5に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で乳化安定性を示した。
【0063】
これらの結果から、乳たんぱく質の含有量が原料組成物、食品多糖類及びリパーゼの総量に対し0.5~5.0質量%の場合において、乳脂肪酵素処理組成物が温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示すことを確認した。
【0064】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における粘度を実施例1と同様の手順で測定した。結果、表5に記載のとおり、温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示した乳脂肪酵素処理組成物の粘度は33.9~97.9Pa・sであった。
【0065】
(実施例4)食品多糖類の検討
表7に記載の成分組成となるよう、純水、乳脂肪源として市販のバターオイル(乳脂肪100%)、乳たんぱく質源として市販のたんぱく質濃縮ホエイパウダー(水分3.7%、乳脂肪6.2%、たんぱく質80.3%、炭水化物7%)、炭水化物源としてラクトース(水分4.8%、たんぱく質0.1%、炭水化物94.8%)をそれぞれ表8に記載の質量比で混合して原料組成物を調製した。調製した原料組成物に表8に記載の食品多糖類を表8に記載の質量比で添加し、撹拌しながらウォーターバスで加熱し、70℃の温度で20分以上殺菌状態を保った。冷却後、酵素として微生物由来のリパーゼ(キャンディダ属)を原料組成物の総量に対して表8に記載の質量比となるよう添加して撹拌した。42時間後、ウォーターバスにより85℃の温度で40分間撹拌しながら加熱することで酵素を失活させ、乳脂肪酵素処理組成物を得た。
【0066】
【0067】
【0068】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における流動性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表7及び表8に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で流動性を示した。
【0069】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における乳化安定性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表7及び表8に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で乳化安定性を示した。
【0070】
これらの結果から、食品多糖類の添加量が原料組成物、食品多糖類及びリパーゼの総量に対し、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムでは2.0~5.5質量%、キサンタンガムでは0.4~1.0質量%、タマリンドガムでは0.6~2.0質量%、グァーガムでは0.7~2.0質量%の場合において、乳脂肪酵素処理組成物が温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示すことを確認した。
【0071】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における粘度を実施例1と同様の手順で測定した。結果、表7及び表8に記載のとおり、温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示した乳脂肪酵素処理組成物の粘度は2.8~177.4Pa・sであった。
【0072】
(実施例5)
表9に記載の成分組成となるよう、純水、市販のバターオイル(乳脂肪100%)、市販のたんぱく質濃縮ホエイパウダー(水分3.7%、乳脂肪6.2%、たんぱく質80.3%、炭水化物7%)、ラクトース(水分4.8%、たんぱく質0.1%、炭水化物94.8%)をそれぞれ表10に記載の質量比で混合して原料組成物を調製した。調製した原料組成物に食品多糖類としてオクテニルコハク酸デンプンナトリウムを表10に記載の質量比で添加し、撹拌しながらウォーターバスで加熱し、70℃の温度で20分以上殺菌状態を保った。冷却後、乳酸菌を表10に記載の質量比で添加し、ウォーターバスにより37℃の温度で17時間撹拌しながら加熱することで乳酸発酵した。冷却後、酵素として微生物由来のリパーゼ(キャンディダ属)を表10に記載の質量比となるよう添加して撹拌した。42時間後、ウォーターバスにより85℃の温度で40分間撹拌しながら加熱することで酵素を失活させ、乳脂肪酵素処理組成物を得た。
【0073】
【0074】
【0075】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における流動性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表9に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で流動性を示した。
【0076】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における乳化安定性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表9に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で乳化安定性を示した。
【0077】
これらの結果から、乳酸発酵した原料を使用した場合においても、温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示す乳脂肪酵素処理組成物が得られることを確認した。
【0078】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における粘度を実施例1と同様の手順で測定した。結果、表9に記載のとおりとなった。
【0079】
(実施例6)
表11に記載の成分組成となるよう、純水、市販のクリームチーズ(水分40.0%、乳脂肪50.0%、たんぱく質5.0%、炭水化物3.5%)、市販のたんぱく質濃縮ホエイパウダー(水分3.7%、乳脂肪6.2%、たんぱく質80.3%、炭水化物7%)、ラクトース(水分4.8%、たんぱく質0.1%、炭水化物94.8%)をそれぞれ表12に記載の質量比で混合して原料組成物を調製した。調製した原料組成物に食品多糖類としてオクテニルコハク酸デンプンナトリウムを表12に記載の質量比で添加し、撹拌しながらウォーターバスで加熱し、70℃の温度で20分以上殺菌状態を保った。冷却後、乳酸菌を表12に記載の質量比で添加し、ウォーターバスにより37℃の温度で17時間撹拌しながら加熱することで乳酸発酵した。冷却後、酵素として微生物由来のリパーゼ(キャンディダ属)を表12に記載の質量比となるよう添加して撹拌した。42時間後、ウォーターバスにより85℃の温度で40分間撹拌しながら加熱することで酵素を失活させ、乳脂肪酵素処理組成物を得た。
【0080】
【0081】
【0082】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における流動性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表11に記載のとおり、温度10℃の冷蔵状態で流動性を示した。
【0083】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における乳化安定性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表11に記載のとおり、温度10℃の冷蔵状態で乳化安定性を示した。
【0084】
これらの結果から、乳脂肪源としてクリームチーズを用い、乳酸発酵した原料を使用した場合においても、温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示す乳脂肪酵素処理組成物が得られることを確認した。
【0085】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における粘度を実施例1と同様の手順で測定した。結果、表11に記載のとおりとなった。
【0086】
(実施例7)
表13に記載の成分組成となるよう、純水、乳脂肪源として市販のバターオイル(乳脂肪100%)、乳たんぱく質源として市販のたんぱく質濃縮ホエイパウダー(水分3.7%、乳脂肪6.2%、たんぱく質80.3%、炭水化物7%)、炭水化物源としてラクトース(水分4.8%、たんぱく質0.1%、炭水化物94.8%)をそれぞれ表14に記載の質量比で混合して原料組成物を調製した。調製した原料組成物に食品多糖類としてオクテニルコハク酸デンプンナトリウムを表14に記載の質量比で添加し、撹拌しながらウォーターバスで加熱し、70℃の温度で20分以上殺菌状態を保った。冷却後、酵素として、微生物由来のリパーゼ(キャンディダ属)、及び、プロテアーゼのパパインを表14に記載の質量比となるよう添加して撹拌した。18時間後、ウォーターバスにより95℃の温度で30分間撹拌しながら加熱することで酵素を失活させ、乳脂肪酵素処理組成物を得た。
【0087】
【0088】
【0089】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における流動性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表13に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で流動性を示した。
【0090】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における乳化安定性を実施例1と同様の手順で確認した。結果、表13に記載のとおり、全ての例において、温度10℃の冷蔵状態で乳化安定性を示した。
【0091】
これらの結果から、酵素としてプロテアーゼを併用した場合においては、乳たんぱく質の含有量が原料組成物、食品多糖類及び酵素の総量に対し0.5~16.8質量%の場合において、乳脂肪酵素処理組成物が温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示すことを確認した。
【0092】
得られた乳脂肪酵素処理組成物について、温度10℃の冷蔵状態における粘度を実施例1と同様の手順で測定した。結果、表13に記載のとおり、温度10℃の冷蔵状態で流動性及び乳化安定性のいずれも示した乳脂肪酵素処理組成物の粘度は0.8~75.6Pa・sであった。