(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091119
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/00 20060101AFI20230623BHJP
H01H 35/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H01H13/00 A
H01H35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205671
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】安川 謙一
【テーマコード(参考)】
5G055
5G206
【Fターム(参考)】
5G055AA01
5G055AB02
5G055AC02
5G055AD07
5G055AE07
5G055AG02
5G055AG18
5G055AG31
5G206AS36H
5G206BS31H
5G206GS16
5G206RS02
5G206RS14
5G206RS24
(57)【要約】
【課題】押しボタンスイッチの誤動作を抑制する。
【解決手段】押しボタンスイッチ1の作動部13は、操作部11が初期位置から押込位置に移動した場合、および、受光部82における受光状態が操作者の近接を示す所定の受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に所定動作を行う。受光部82の受光視野820は、第1受光視野826と、第1受光視野826よりも押込方向の奥側に位置する第2受光視野827とを備える。第1受光部824は、反射光のうち第1受光視野826からの光を受光する。第2受光部825は、反射光のうち第2受光視野827からの光を受光する。上記受光条件は、第1受光部824の受光量に対する第2受光部825の受光量の割合である受光割合が、所定の受光割合閾値以上であることを含む。これにより、押しボタンスイッチ1の誤動作を抑制することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタンスイッチであって、
操作者が触れる接触面を有し、前記接触面が押し込まれることにより押込方向の手前側の初期位置から奥側の押込位置へと移動する操作部と、
操作者による押し込みが解除された際に前記操作部を前記押込位置から前記初期位置へと戻す復帰部と、
前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側に配置され、前記接触面を透過して前記接触面よりも手前側に検出光を照射する投光部と、
前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側にて前記投光部から離間して配置され、前記接触面に近接した操作者にて反射した前記検出光の反射光を受光する受光部と、
前記操作部が前記初期位置から前記押込位置に移動した場合、および、前記受光部における受光状態が操作者の近接を示す所定の受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に所定動作を行う作動部と、
を備え、
前記受光部の受光視野は、
第1受光視野と、
前記第1受光視野よりも前記押込方向の奥側に位置する第2受光視野と、
を備え、
前記受光部は、
前記反射光のうち前記第1受光視野からの光を受光する第1受光部と、
前記反射光のうち前記第2受光視野からの光を受光する第2受光部と、
を備え、
前記受光条件は、前記第1受光部の受光量に対する前記第2受光部の受光量の割合である受光割合が、所定の受光割合閾値以上であることを含むことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の押しボタンスイッチであって、
前記第1受光部の受光量が0よりも大きくなった場合、操作者に対して近接情報が報知されることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の押しボタンスイッチであって、
前記受光割合が前記受光割合閾値以上となった場合、操作者に対して前記近接情報とは異なる他の近接情報が報知されることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載の押しボタンスイッチであって、
前記接触面よりも前記押込方向の奥側に配置され、前記接触面に向けて前記検出光とは異なる波長域を有する表示光を出射する表示光源をさらに備え、
前記近接情報および前記他の近接情報の報知が前記表示光源により行われ、
前記近接情報の報知時と、前記他の近接情報の報知時とでは、前記表示光の色、明度および点滅パターンのうち1つ以上が異なることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、
前記操作部が前記初期位置から前記押込位置へと移動した場合、操作者に対して前記近接情報とは異なる直接押圧情報が報知されることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、
前記第1受光部および前記第2受光部は、1つの分割型フォトダイオードの2つの分割受光領域であることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、
前記第1受光部はフォトダイオードであり、
前記第2受光部は、前記フォトダイオードとは異なる他のフォトダイオードであることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項8】
押しボタンスイッチであって、
操作者が触れる接触面を有し、前記接触面が押し込まれることにより押込方向の手前側の初期位置から奥側の押込位置へと移動する操作部と、
操作者による押し込みが解除された際に前記操作部を前記押込位置から前記初期位置へと戻す復帰部と、
前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側に配置され、前記接触面を透過して前記接触面よりも手前側に検出光を照射する投光部と、
前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側にて前記投光部から離間して配置され、前記接触面に近接した操作者にて反射した前記検出光の反射光を受光する受光部と、
前記操作部が前記初期位置から前記押込位置に移動した場合、および、前記受光部における受光状態が操作者の近接を示す所定の受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に所定動作を行う作動部と、
を備え、
前記受光条件は、第1の受光条件と、前記第1の受光条件よりも操作者と前記接触面との間の距離が大きい状態に対応する第2の受光条件と、を含み、
前記受光状態が前記第1の受光条件を満たす場合、前記作動部は待機時間無しで前記所定動作を行い、
前記受光状態が前記第2の受光条件を満たす場合、前記受光状態が前記第2の受光条件を満たす状態で所定の待機時間が経過した後、前記作動部が前記所定動作を行うことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項9】
請求項8に記載の押しボタンスイッチであって、
前記待機時間中に前記操作部が前記初期位置から前記押込位置へと移動した場合、前記作動部は、前記待機時間の経過前であっても前記所定動作を行うことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項10】
請求項8または9に記載の押しボタンスイッチであって、
前記受光部の受光視野は、
第1受光視野と、
前記第1受光視野よりも前記押込方向の奥側に位置する第2受光視野と、
を備え、
前記受光部は、
前記反射光のうち前記第1受光視野からの光を受光する第1受光部と、
前記反射光のうち前記第2受光視野からの光を受光する第2受光部と、
を備え、
前記第1の受光条件は、前記第1受光部の受光量に対する前記第2受光部の受光量の割合である受光割合が所定の受光割合閾値以上であることを含み、
前記第2の受光条件は、前記受光割合が前記受光割合閾値未満であり、かつ、前記第1受光部の受光量が0よりも大きいことを含むことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項11】
請求項10に記載の押しボタンスイッチであって、
前記第1受光部および前記第2受光部は、1つの分割型フォトダイオードの2つの分割受光領域であることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項12】
請求項10に記載の押しボタンスイッチであって、
前記第1受光部はフォトダイオードであり、
前記第2受光部は、前記フォトダイオードとは異なる他のフォトダイオードであることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、
エレベータの操作盤に設けられてエレベータの使用者により操作されることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項14】
請求項13に記載の押しボタンスイッチであって、
既存のエレベータの操作盤において既存の接触式押しボタンスイッチが取り付けられている固定部に対して、前記既存の接触式押しボタンスイッチに代えて取り付け可能な取付部をさらに備えることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生面等への配慮から、押しボタンスイッチに代えて非接触型スイッチを設けることが提案されている。例えば、特許文献1では、エレベータのかご操作盤において、行き先階を決定する押しボタンスイッチに代えて、反射型光電センサを有する非接触型の行き先階決定スイッチを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のかご操作盤では、非接触型の行き先階決定スイッチに慣れていないエレベータの使用者は、エレベータを円滑に操作することができないおそれがある。また、当該かご操作盤では、使用者の手等からの反射光を反射型光電センサで受光し、受光量が所定の光量よりも大きくなることで、非接触型スイッチへの手の近接を検出するが、使用者が素手の場合と手袋を着用している場合等とでは反射率が異なり、受光量も変化するため、非接触型スイッチへの手の近接の検出精度が低下するおそれがある。また、反射率以外の手の特性(例えば、手の凹凸等の形状)の違いによっても、反射型光電センサにおける受光量は変化する。その結果、行き先階決定スイッチの誤動作が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、押しボタンスイッチの誤動作を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、押しボタンスイッチであって、操作者が触れる接触面を有し、前記接触面が押し込まれることにより押込方向の手前側の初期位置から奥側の押込位置へと移動する操作部と、操作者による押し込みが解除された際に前記操作部を前記押込位置から前記初期位置へと戻す復帰部と、前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側に配置され、前記接触面を透過して前記接触面よりも手前側に検出光を照射する投光部と、前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側にて前記投光部から離間して配置され、前記接触面に近接した操作者にて反射した前記検出光の反射光を受光する受光部と、前記操作部が前記初期位置から前記押込位置に移動した場合、および、前記受光部における受光状態が操作者の近接を示す所定の受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に所定動作を行う作動部とを備え、前記受光部の受光視野は、第1受光視野と、前記第1受光視野よりも前記押込方向の奥側に位置する第2受光視野とを備え、前記受光部は、前記反射光のうち前記第1受光視野からの光を受光する第1受光部と、前記反射光のうち前記第2受光視野からの光を受光する第2受光部とを備え、前記受光条件は、前記第1受光部の受光量に対する前記第2受光部の受光量の割合である受光割合が、所定の受光割合閾値以上であることを含む。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の押しボタンスイッチであって、前記第1受光部の受光量が0よりも大きくなった場合、操作者に対して近接情報が報知される。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の押しボタンスイッチであって、前記受光割合が前記受光割合閾値以上となった場合、操作者に対して前記近接情報とは異なる他の近接情報が報知される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の押しボタンスイッチであって、前記接触面よりも前記押込方向の奥側に配置され、前記接触面に向けて前記検出光とは異なる波長域を有する表示光を出射する表示光源をさらに備え、前記近接情報および前記他の近接情報の報知が前記表示光源により行われ、前記近接情報の報知時と、前記他の近接情報の報知時とでは、前記表示光の色、明度および点滅パターンのうち1つ以上が異なる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、前記操作部が前記初期位置から前記押込位置へと移動した場合、操作者に対して前記近接情報とは異なる直接押圧情報が報知される。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、前記第1受光部および前記第2受光部は、1つの分割型フォトダイオードの2つの分割受光領域である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、前記第1受光部はフォトダイオードであり、前記第2受光部は、前記フォトダイオードとは異なる他のフォトダイオードである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、押しボタンスイッチであって、操作者が触れる接触面を有し、前記接触面が押し込まれることにより押込方向の手前側の初期位置から奥側の押込位置へと移動する操作部と、操作者による押し込みが解除された際に前記操作部を前記押込位置から前記初期位置へと戻す復帰部と、前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側に配置され、前記接触面を透過して前記接触面よりも手前側に検出光を照射する投光部と、前記押込方向において前記操作部と重なるとともに前記接触面よりも前記押込方向の奥側にて前記投光部から離間して配置され、前記接触面に近接した操作者にて反射した前記検出光の反射光を受光する受光部と、前記操作部が前記初期位置から前記押込位置に移動した場合、および、前記受光部における受光状態が操作者の近接を示す所定の受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に所定動作を行う作動部とを備え、前記受光条件は、第1の受光条件と、前記第1の受光条件よりも操作者と前記接触面との間の距離が大きい状態に対応する第2の受光条件とを含み、前記受光状態が前記第1の受光条件を満たす場合、前記作動部は待機時間無しで前記所定動作を行い、前記受光状態が前記第2の受光条件を満たす場合、前記受光状態が前記第2の受光条件を満たす状態で所定の待機時間が経過した後、前記作動部が前記所定動作を行う。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の押しボタンスイッチであって、前記待機時間中に前記操作部が前記初期位置から前記押込位置へと移動した場合、前記作動部は、前記待機時間の経過前であっても前記所定動作を行う。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の押しボタンスイッチであって、前記受光部の受光視野は、第1受光視野と、前記第1受光視野よりも前記押込方向の奥側に位置する第2受光視野とを備え、前記受光部は、前記反射光のうち前記第1受光視野からの光を受光する第1受光部と、前記反射光のうち前記第2受光視野からの光を受光する第2受光部とを備え、前記第1の受光条件は、前記第1受光部の受光量に対する前記第2受光部の受光量の割合である受光割合が所定の受光割合閾値以上であることを含み、前記第2の受光条件は、前記受光割合が前記受光割合閾値未満であり、かつ、前記第1受光部の受光量が0よりも大きいことを含む。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の押しボタンスイッチであって、前記第1受光部および前記第2受光部は、1つの分割型フォトダイオードの2つの分割受光領域である。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載の押しボタンスイッチであって、前記第1受光部はフォトダイオードであり、前記第2受光部は、前記フォトダイオードとは異なる他のフォトダイオードである。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の押しボタンスイッチであって、エレベータの操作盤に設けられてエレベータの使用者により操作される。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の押しボタンスイッチであって、既存のエレベータの操作盤において既存の接触式押しボタンスイッチが取り付けられている固定部に対して、前記既存の接触式押しボタンスイッチに代えて取り付け可能な取付部をさらに備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、押しボタンスイッチの誤動作を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】押しボタンスイッチの一部を省略した正面図である。
【
図6】押しボタンスイッチの一部を拡大して示す断面図である。
【
図8】押しボタンスイッチの一部を拡大して示す断面図である。
【
図9】押しボタンスイッチの一部を拡大して示す断面図である。
【
図10】押しボタンスイッチの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る押しボタンスイッチ1の正面図である。
図2は、押しボタンスイッチ1のうち、後述する操作部11、フィルタ15およびカバー部17を省略して示す正面図である。
図3は、押しボタンスイッチ1を
図1中のIII-IIIの位置にて切断した断面図である。
図4は、押しボタンスイッチ1を
図2中のIV-IVの位置にて切断した断面図である。
図4では、後述する操作部11を二点鎖線にて併せて示す。
【0023】
押しボタンスイッチ1は、例えば、エレベータの操作盤に設けられてエレベータの使用者により操作されるスイッチである。
図1に示す例では、押しボタンスイッチ1は、エレベータのかご内に設けられるかご操作盤の行き先階決定ボタンスイッチである。押しボタンスイッチ1は、他の用途のスイッチであってもよい。
【0024】
押しボタンスイッチ1は、操作部11と、復帰部12と、作動部13と、表示光源141と、リフレクタ142と、拡散板143と、フィルタ15と、ベース部16と、カバー部17と、光電センサ18とを備える。ベース部16は、押しボタンスイッチ1の各構成を支持する略平板状の部材である。カバー部17は、ベース部16の
図1中における手前側に取り付けられて押しボタンスイッチ1の各構成を覆う部材である。ベース部16の正面視における形状は、例えば略矩形である。カバー部17の正面視における形状は、例えば略矩形枠状である。ベース部16は、カバー部17よりも大きく、カバー部17から
図1中の上側および下側に延在している。
【0025】
以下の説明では、
図1中における上下方向および左右方向を、単に「上下方向」および「左右方向」とも呼ぶ。また、
図1中の紙面に垂直な方向を「押込方向」とも呼び、押込方向における手前側および奥側(すなわち、紙面に垂直な方向における手前側および奥側)を、単に「手前側」および「奥側」とも呼ぶ。なお、
図1中における上下方向は、実際の上下方向と一致していてもよく、一致していなくてもよい。
【0026】
ベース部16の上端部および下端部には、押しボタンスイッチ1を操作盤に取り付けるためのネジ穴が形成されている。すなわち、ベース部16の上端部および下端部は、押しボタンスイッチ1の取り付け用の取付部161である。取付部161は、既存のエレベータの操作盤において、既存の接触式押しボタンスイッチ(すなわち、従来の押しボタンスイッチ)が取り付けられている固定部に対して、当該既存の押しボタンスイッチに代えて取り付け可能である。したがって、押しボタンスイッチ1は、建物内に既に設置されている既存のエレベータに、後付けで適用可能である。
【0027】
復帰部12は、上端部がベース部16に固定された略矩形枠状の板バネである。復帰部12は、当該上端部である固定部121と、固定部121の下側に連続する略矩形枠状の可動部122と、を備える。固定部121は、例えば、ベース部16に設けられた溝部に挿入されて固定される。可動部122は、ベース部16から手前側に離間しており、奥側へと移動可能である。
【0028】
操作部11は、復帰部12の可動部122の手前側に配置される略矩形平板状の部材である。操作部11は、例えば、透明または半透明の樹脂やガラス等により形成される。操作部11の外周部は、復帰部12の可動部122とカバー部17の内面(すなわち、ベース部16と対向する側の面)との間に挟まれる。
図3に示す状態では、操作部11の外周部は、復帰部12の可動部122およびカバー部17に接触している。また、復帰部12は僅かに撓んだ状態であり、操作部11は復帰部12によりカバー部17に向けて(すなわち、手前側に向けて)押圧されている。以下の説明では、操作部11の
図3に示す位置を、「初期位置」とも呼ぶ。
【0029】
操作部11の中央部は、外周部よりも手前側に突出する略矩形状の凸部であり、カバー部17の中央部開口から手前側に突出している。操作部11の当該凸部は、正面視において、可動部122の内側の略矩形状の領域と略同形状であり、当該領域と押込方向においておよそ重なっている。操作部11のうち、カバー部17から露出している部位の手前側の面は、エレベータの操作盤の操作者(すなわち、エレベータの使用者等)が指先や手に持っている物等にて直接的に触れることが可能な接触面111である。操作者により接触面111が奥側に押し込まれると、操作部11は、
図3に示す初期位置から、
図5に示すように、初期位置よりも押込方向の奥側の押込位置へと移動する。復帰部12は、操作部11の初期位置から押込位置への移動に伴って撓み、復帰部12の可動部122が押込方向の奥側へと移動する。また、操作者が接触面111から指先等を離して操作者による押し込みが解除されると、復帰部12の復元力により可動部122が操作部11を手前側へと押し、操作部11は
図5に示す押込位置から
図3に示す初期位置へと戻る。
【0030】
作動部13は、操作部11が押し込まれて初期位置から押込位置へと移動した際に、信号発信等の所定の動作を行う。
図2に示す例では、作動部13は、タクトスイッチ131と、配線132と、端子部133と、作動制御部134とを備える。タクトスイッチ131は、復帰部12の可動部122よりも奥側にてベース部16に固定され、可動部122の下端部と押込方向にて対向する。端子部133は、ベース部16の下端の角部に固定され、配線132によりタクトスイッチ131および作動制御部134等と電気的に接続される。作動制御部134は、配線132に隣接してベース部16に固定される。作動制御部134は、ベース部16上のいずれの位置に配置されてもよい。あるいは、作動制御部134は、押しボタンスイッチ1の他の構成から離間して、ベース部16上以外の位置に配置されてもよい。作動制御部134は、例えば、回路基板またはプログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)である。
【0031】
操作部11が押し込まれると、
図5に示すように、復帰部12の可動部122が奥側へと撓んでタクトスイッチ131を奥側へと押圧する。これにより、タクトスイッチ131が導通され、所定の信号が、作動制御部134、配線132および端子部133を介して、図示省略のエレベータの制御部等へと発信される。当該信号は、操作部11の押し込みが行われ、押しボタンスイッチ1に対応する階が行き先として選択されたことを示す信号である。
【0032】
表示光源141は、操作部11よりも押込方向の奥側に配置され、ベース部16に固定される光源である。表示光源141は、例えば、正面視にて接触面111の中央部と重なる位置(すなわち、接触面111の中央部と押込方向において重なる位置)に配置される。換言すれば、表示光源141は、正面視において復帰部12の略矩形枠状の可動部122の内側に位置する。表示光源141は、操作部11の接触面111に向けて表示光を出射する。表示光源141としては、例えば、可視光を出射するLED(Light Emitting Diode)や他の光源が使用可能である。
【0033】
リフレクタ142は、表示光源141の周囲を囲む反射面であり、表示光源141から出射された表示光を接触面111に向けて反射する。これにより、接触面111に照射される表示光の光量を増大させることができる。リフレクタ142は、例えば、略四角錐台の4つの側面である。リフレクタ142の表面は、例えば、平滑面であってもよく、梨地状の粗面であってもよい。リフレクタ142は、例えば、樹脂や金属等により形成された薄板により構成される。リフレクタ142は、表示光源141や光電センサ18との絶縁を考慮すると、絶縁体により形成されることが好ましい。
【0034】
拡散板143は、押込方向において表示光源141と操作部11との間に配置されるフィルム状または薄板状の部材である。拡散板143は、リフレクタ142の手前側の端部に接触し、リフレクタ142および表示光源141の略全体を覆う。拡散板143は、例えば、正面視において略矩形状の半透明の部材である。拡散板143は、透光性を有し、表示光源141から出射された表示光を拡散させて均等化する。拡散板143は、例えば、すりガラス調に加工された樹脂部材である。拡散板143の
図2中の右上および左下の角部には、後述する投光部81による光の照射、および、受光部82による受光を阻害しないように貫通孔または切り欠きが設けられる。
図2に示す例では、リフレクタ142にも同様の貫通孔または切り欠きが設けられる。
【0035】
フィルタ15は、押込方向において操作部11と拡散板143との間に配置されるフィルム状または薄板状の部材である。フィルタ15は、光電センサ18にて使用される検出光の波長域の光を選択的に透過させ、他の波長域の光を透過させないフィルタである。本実施の形態では、当該検出光は赤外線であり、フィルタ15は、赤外線を選択的に透過させ、表示光等の可視光を透過させない赤外線透過フィルタである。フィルタ15として、例えば、スリットの向きが90°異なる2枚の可視光用偏光フィルタを重ねたものが利用可能である。可視光用偏光フィルタは、可視光の波長域では偏光特性を有し、赤外線の波長域では偏光特性を実質的に有しないフィルタである。なお、フィルタ15の種類や選択的に透過させる光の波長域(すなわち、検出光の波長域)は、様々に変更されてよい。
【0036】
フィルタ15には、表示光が通過可能な開口151が設けられている。開口151の正面視における形状は、押しボタンスイッチ1の機能を示す数字、文字および/または図形等のマークである。
図1に示す例では、開口151の正面視における形状は、押しボタンスイッチ1に対応する階を示す数字である。開口151は、フィルタ15に設けられた物理的な貫通孔であってもよく、フィルタ15からフィルタ機能を喪失させた透光部であってもよい。
【0037】
押しボタンスイッチ1において操作部11が押し込まれると、上述のように、作動部13のタクトスイッチ131が導通され、行き先階の選択信号が発信される。また、当該選択信号の発信と並行して、フィルタ15よりも押込方向の奥側に配置された表示光源141が点灯する。これにより、表示光源141から出射された表示光が、フィルタ15の開口151および操作部11を介して、押しボタンスイッチ1の手前側へと照射される。押しボタンスイッチ1の手前側に位置する操作者は、選択された行き先階を示す数字が明るくなったことを視認することができる。なお、表示光源141の上記点灯は、継続的な点灯でもよく、断続的な点灯(すなわち、点滅)でもよい。あるいは、選択信号の発信と並行して、予め点灯されていた表示光源141が消灯されてもよい。換言すれば、作動部13による所定動作と並行して、表示光源141のON/OFFが切り替えられる。
【0038】
光電センサ18は、投光部81と、受光部82とを備える。投光部81および受光部82はそれぞれ、押込方向において操作部11と重なるとともに接触面111よりも奥側に位置する。
図4に示す例では、投光部81および受光部82は、操作部11よりも奥側に位置し、ベース部16に固定される。受光部82は、投光部81から離間して配置される。好ましくは、投光部81と受光部82とは、正面視において(すなわち、押込方向に沿って見た状態において)、接触面111の中心に対して互いに反対側に配置される。より好ましくは、投光部81と受光部82とは、正面視において、接触面111の中心に対して略点対称の位置に配置される。
図2に示す例では、投光部81および受光部82は、可動部122の内側の略矩形状の領域において、当該領域の一方の対角線上の2つの角部に配置される。これにより、投光部81と受光部82とを大きく離間させることができる。
【0039】
投光部81は、操作部11に向けて所定の波長域の検出光を出射する。検出光の波長域は、上述の表示光の波長域とは異なる。本実施の形態では、検出光は、上述のように赤外線である。検出光は、予め定められた光電センサ18固有の周波数を有するパルス光である。投光部81からの検出光は、操作部11の接触面111を透過して接触面111よりも手前側に照射される。
【0040】
受光部82は、接触面111に近接した操作者の指先等にて反射した当該検出光の反射光を受光する。受光部82は、受光した反射光の光量を作動部13へと送る。作動部13では、作動制御部134により、受光部82における受光状態が、操作者の近接を示す所定の受光条件を満たしているか否かが判断される。そして、受光部82における受光状態が当該受光条件を満たす状態となったと判断されると、操作部11が押し込まれてタクトスイッチ131が押圧された場合と同様に、上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われる。また、押しボタンスイッチ1では、選択信号の発信と並行して表示光源141が点灯する。作動部13では、操作部11が初期位置から押込位置に移動した場合(すなわち、タクトスイッチ131が押圧された場合)、および、受光部82における受光状態が上記受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われる。
【0041】
上述のフィルタ15は、押込方向において受光部82と接触面111との間に配置されている。このため、接触面111を透過した光のうち、検出光の反射光は選択的に透過されて受光部82へと到達する。一方、接触面111を透過した光のうち、検出光とは異なる波長域の光(例えば、可視光)は、フィルタ15の開口151以外の部位において遮られるため、受光部82への到達が抑制される。このため、受光部82において、検出光とは異なる波長域の光を、検出光の反射光として誤検出することが抑制または防止される。換言すれば、フィルタ15により、外乱光等の影響による光電センサ18の誤動作が抑制または防止される。
【0042】
図6は、光電センサ18および光電センサ18近傍の部位を拡大して示す断面図である。
図6では、投光部81からの検出光の照射範囲である照射視野810、受光部82による受光可能範囲である受光視野820、および、操作者の指先91を併せて描いている。
図6では、照射視野810と受光視野820との重複領域830に平行斜線を付す。照射視野810および受光視野820は、例えば、略円錐状または略楕円錐状の空間である。
【0043】
光電センサ18では、指先91の接触面111に対向する表面のうち、重複領域830に含まれる領域92(以下、「反射面92」とも呼ぶ。)にて反射された検出光の反射光が、受光部82により受光される。反射面92は、操作者の指先の表面には限定されず、例えば、操作者が手に持った物体で押しボタンスイッチ1を操作する場合、当該物体の表面である。光電センサ18では、照射視野810の広がり角度(すなわち、視野角)、および/または、受光視野820の広がり角度を調節することにより、反射光を検出可能な指先91の位置の範囲(すなわち、検出可能範囲)を調節可能である。
【0044】
投光部81は、検出光源811と、投光側遮光部812とを備える。検出光源811は、接触面111に向けて検出光を出射する光源である。検出光源811として、例えば、赤外線を出射するLEDまたは他の光源が利用可能である。検出光源811は、ベース部16に固定される。
【0045】
投光側遮光部812は、検出光源811を手前側から覆って内部に収容する略箱状の部材である。投光側遮光部812は、ベース部16に固定され、ベース部16と共に検出光源811の周囲を略全体に亘って囲む。投光側遮光部812は、検出光源811から出射される光を透過しない材料(例えば、赤外線を透過しない不透明の樹脂部材)で形成されている。投光側遮光部812の天蓋部(すなわち、検出光源811の手前側の面)には、検出光源811から出射される光が通過する開口813が設けられている。開口813は、投光側遮光部812に設けられた物理的な貫通孔であってもよく、投光側遮光部812の一部に設けられた透明または半透明の透光部であってもよい。投光部81では、開口813に、あるいは、開口813の手前側または奥側にレンズ等の光学素子が配置されてもよい。
【0046】
投光部81では、検出光源811から出射された光のうち一部の光が、投光側遮光部812の開口813を通過し、上述の検出光として操作部11の接触面111よりも手前側に照射される。検出光源811から出射された光のうち、当該一部の光を除く他の光は、投光側遮光部812により遮られる。換言すれば、投光側遮光部812は、押込方向において検出光源811と接触面111との間にて、検出光源811から出射された光の一部を上述の検出光として通過させて他の光を遮る。
【0047】
上述の照射視野810は、投光側遮光部812の開口813の形状や位置を変更することにより調節可能である。なお、投光側遮光部812の内面(すなわち、検出光源811に対向する面)には、検出光源811から出射される光を吸収する吸収材(例えば、黒色塗料の膜)が設けられてもよい。これにより、投光側遮光部812内における光の散乱等を抑制し、開口813を介して投光側遮光部812の外部へと導かれる光の光量を容易に調節することができる。
【0048】
受光部82は、受光センサ821と、受光側遮光部822とを備える。受光センサ821は、操作者の指先91等にて反射した検出光の反射光を受光して検出する。受光センサ821として、例えば、フォトダイオードまたは他の受光素子が利用可能である。受光センサ821は、ベース部16に固定される。受光センサ821では、光電センサ18固有の周波数を有するパルス光(すなわち、検出光の反射光)のみを選択的に検出し、他の光を実質的に検出しないように設定されることが好ましい。
【0049】
受光側遮光部822は、受光センサ821を手前側から覆って内部に収容する略箱状の部材である。受光側遮光部822は、ベース部16に固定され、ベース部16と共に受光センサ821の周囲を略全体に亘って囲む。受光側遮光部822は、検出光の反射光を透過しない材料(例えば、赤外線を透過しない不透明の樹脂部材)で形成されている。受光側遮光部822の天蓋部(すなわち、受光センサ821の手前側の面)には、検出光の反射光が通過する開口823が設けられている。開口823は、受光側遮光部822に設けられた物理的な貫通孔であってもよく、受光側遮光部822の一部に設けられた透明または半透明の透光部であってもよい。受光部82では、開口823に、あるいは、開口823の手前側または奥側にレンズ等の光学素子が配置されてもよい。
【0050】
受光部82では、操作者の指先91等にて反射された検出光の反射光のうち、受光側遮光部822の開口823を通過した一部の反射光が、受光センサ821により受光される。検出光の反射光のうち当該一部の反射光を除く他の反射光、および、様々な光源からの外乱光は、受光側遮光部822により遮られる。換言すれば、受光側遮光部822は、押込方向において受光センサ821と接触面111との間にて、上記反射光の一部を通過させて他の光を遮る。
【0051】
上述の受光視野820は、受光側遮光部822の開口823の形状や位置を変更することにより調節可能である。なお、受光側遮光部822の内面(すなわち、受光センサ821に対向する面)には、光を吸収する吸収材(例えば、黒色塗料の膜)が設けられてもよい。これにより、受光側遮光部822内における上記反射光や外乱光の散乱等を抑制し、受光センサ821にて受光される反射光を精度良く検出することができる。
【0052】
図7は、受光部82および受光部82近傍の部位を拡大して示す図である。受光センサ821は、1つの分割型フォトダイオードであり、第1受光部824および第2受光部825を備える。第1受光部824および第2受光部825は、当該分割型フォトダーオードの2つの分割受光領域であり、隣接して配置される。なお、
図7に示す例では、受光センサ821に設けられる分割受光領域の数は2つであるが、3つ以上の分割受光領域が受光センサ821に設けられてもよい。この場合、第1受光部824および第2受光部825は、受光センサ821の3つ以上の分割受光領域のうち2つの分割受光領域である。当該2つの分割受光領域は、受光センサ821において隣接して配置されてもよく、互いに離間して配置されてもよい。
【0053】
以下の説明では、上述の受光視野820のうち、第1受光部824に対応する領域を「第1受光視野826」と呼び、第2受光部825に対応する領域を「第2受光視野827」と呼ぶ。第2受光視野827は、接触面111(
図6参照)の中心から押込方向に平行に延びる中心線上において、第1受光視野826よりも押込方向の奥側に位置する。
図7に示す例では、第2受光視野827は、第1受光視野826の押込方向の奥側に連続する。第1受光視野826と第2受光視野827とは、正面視において(すなわち、押込方向に沿って見た状態において)、少なくとも上記中心線上にて重なっている。第1受光部824は、上述の反射光のうち、第1受光視野826からの光を受光して検出する。第2受光部825は、上述の反射光の内、第2受光視野827からの光を受光して検出する。
【0054】
なお、第1受光視野826と第2受光視野827とは、押込方向において、間に間隙を挟んで隣接していてもよい。また、第1受光部824および第2受光部825は、必ずしも、1つの分割型フォトダイオードの2つの分割受光領域である必要はない。例えば、第1受光部824は1つのフォトダイオードであり、第2受光部825は、第1受光部824である1つのフォトダイオードとは異なる他の1つのフォトダイオードであってもよい。この場合、第1受光部824および第2受光部825である2つのフォトダイオードは、互いに独立しており、例えば、互いに離間して配置される。また、当該2つのフォトダイオードは、隣接して配置されてもよい。当該2つのフォトダイオードはそれぞれ、非分割型のフォトダイオードであってもよく、分割型フォトダイオードであってもよい。
【0055】
第1受光部824により受光された反射光の光量(すなわち、第1受光部824の受光量であり、以下、「第1受光量」とも呼ぶ。)は、作動部13の作動制御部134(
図2参照)へと送られる。第2受光部825により受光された反射光の光量(すなわち、第2受光部825の受光量であり、以下、「第2受光量」とも呼ぶ。)も、作動制御部134へと送られる。作動制御部134は、第1受光部824の受光量および第2受光部825の受光量に基づいて、押しボタンスイッチ1の動作を様々に制御する。以下、作動制御部134による押しボタンスイッチ1の動作制御の例について説明する。
【0056】
例えば、押しボタンスイッチ1では、
図8に示すように、操作者の指先91が重複領域830において第2受光視野827よりも手前側、かつ、第1受光視野826内に位置する場合、操作者に対して指先91の近接を示す情報(以下、「近接情報」とも呼ぶ。)が報知される。また、
図9に示すように、操作者の指先91が重複領域830において第1受光視野826内および第2受光視野827内に位置する場合、受光部82における受光状態が上述の受光条件を満たす状態になったと判断され、操作部11が押し込まれた場合と同様に、所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われる。
【0057】
図8に示す状態では、第1受光部824から作動制御部134(
図2参照)へと、0よりも大きい第1受光量が送られる。一方、第2受光量は0である。また、
図9に示す状態では、第1受光部824から作動制御部134へと、0よりも大きい第1受光量が送られ、第2受光部825から作動制御部134へと、0よりも大きい第2受光量が送られる。
【0058】
ここで、仮に、第2受光量の大小のみで指先91の接触面111への近接を判断しようとすると、指先91が同じ位置に位置している場合であっても、指先91の反射率や形状等により第2受光量が変化するため、指先91の近接の判断精度が低下する可能性がある。例えば、
図10に示すように、重複領域830において第2受光視野827に少し進入した指先91の反射率が、通常よりも高い場合(例えば、反射率が高い手袋を着用している場合)、第2受光量はある程度大きくなるため、指先91が第2受光視野827に十分に進入した(例えば、
図9に示す程度まで進入した)と判断され、上記所定動作が誤って行われる可能性がある。
【0059】
そこで、作動制御部134では、例えば、第1受光量に対する第2受光量の割合である受光割合(すなわち、第2受光量を第1受光量により除算した値)が、所定の受光割合閾値以上であることが、上記受光条件とされる。受光割合閾値は、0よりも大きく、例えば0.75~1.0(すなわち、第2受光量が第1受光量と同じ状態)である。押しボタンスイッチ1では、作動制御部134による制御により、指先91が重複領域830において第2受光視野827内に位置している状態であっても、受光割合が受光割合閾値未満である場合、上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)は行われず、受光割合が受光割合閾値以上になると当該所定動作が行われる。なお、上記受光条件は、受光割合が受光割合閾値以上であること以外の条件を含んでいてもよい。
【0060】
指先91の反射率や形状等の特性により、第2受光量が通常よりも大きくなった場合、第1受光量も通常よりも大きくなり、第2受光量が通常よりも小さくなった場合、第1受光量も通常よりも小さくなる。したがって、指先91の特性が変化しても、指先91の位置が同じであれば、受光割合の変化はあまり大きくならない。換言すれば、指先91の特性が受光割合に及ぼす影響は、当該特性が第2受光量に及ぼす影響よりも小さい。したがって、上述のように、受光割合と受光割合閾値との比較によって上記所定動作の実行を決定することにより、指先91の特性が、押しボタンスイッチ1における指先91の近接の判断に及ぼす影響を低減することができ、当該判断を精度良く行うことができる。その結果、指先91の近接の誤検出等による押しボタンスイッチ1の誤動作を抑制することができる。
【0061】
上述のように、押しボタンスイッチ1では、作動制御部134(
図2参照)により
図8に示す状態であると判断された場合、指先91の近接を示す近接情報(以下、「第1近接情報」とも呼ぶ。)が、操作者に対して報知される。また、作動制御部134により
図9に示す状態であると判断された場合、指先91の更なる近接を示す他の近接情報(第1近接情報とは異なる近接情報であり、以下、「第2近接情報」とも呼ぶ。)が、操作者に対して報知される。第1近接情報および第2近接情報は、例えば、光等の視覚情報として報知されてもよく、案内音声やビープ音等の聴覚情報として報知されてもよく、視覚情報および聴覚情報の双方により報知されてもよい。
【0062】
第1近接情報および第2近接情報の報知は、例えば、表示光源141により行われる。この場合、第1近接情報の報知時と、第2近接情報の報知時とでは、表示光源141からの表示光の色、明度および点滅パターンのうち1つ以上が異なることが好ましい。具体的には、第1近接情報は、押しボタンスイッチ1の行き先階を示す数字が点滅することにより報知され、第2近接情報は、当該数字が継続的に点灯することにより報知されてもよい。あるいは、第1近接情報は、押しボタンスイッチ1の行き先階を示す数字が黄色に点灯することにより報知され、第2近接情報は、当該数字が赤色に変化することにより報知されてもよい。また、第1近接情報は、押しボタンスイッチ1の行き先階を示す数字が比較的暗く点灯することにより報知され、第2近接情報は、当該数字が明るく変化する(すなわち、明度が増大する)ことにより報知されてもよい。第1近接情報および第2近接情報では、互いに異なる上述の表示光の色、明度および点滅パターンのうち2つ以上が組み合わされてもよい。また、第2近接情報は、上述の表示光による視覚情報に加えて、「行き先階が登録されました」等の音声案内を含んでいてもよい。
【0063】
作動制御部134は、例えば、第1受光量が0よりも大きくなったと判断すると、表示光源141を制御して操作者に第1近接情報を報知させる。また、作動制御部134は、例えば、受光割合(すなわち、第2受光量/第1受光量)が受光割合閾値以上であると判断すると、表示光源141を制御して操作者に第2近接情報を報知させる。押しボタンスイッチ1では、第1近接情報および第2近接情報が報知されることにより、操作者は、接触面111に対する指先91等の近接の詳細な状態を容易に認識することができる。また、第2近接情報が報知されることにより、操作者は、上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われて行き先階が登録されたことを容易に認識することができる。なお、指先91が、重複領域830の外側に位置する場合、上述の第1近接情報および第2近接情報は報知されない。
【0064】
押しボタンスイッチ1では、
図8および
図9に示すように指先91が接触面111に近接している状態のみならず、指先91が接触面111に直接的に触れて操作部11が初期位置から押込位置へと移動した場合にも、操作部11が押圧されたことを示す情報(以下、「直接押圧情報」とも呼ぶ。)が、操作者に対して報知されてもよい。直接押圧情報は、例えば、光等の視覚情報として報知されてもよく、案内音声やビープ音等の聴覚情報として報知されてもよく、視覚情報および聴覚情報の双方により報知されてもよい。
【0065】
直接押圧情報は、上述の第1近接情報とは異なる視覚情報や聴覚情報等である。直接押圧情報は、上述の第2近接情報とは異なる視覚情報や聴覚情報等であってもよく、第2近接情報と同じ視覚情報や聴覚情報等であってもよい。操作者に対して直接押圧情報が報知されることにより、操作者は、上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われて行き先階が登録されたことを容易に認識することができる。
【0066】
以上に説明したように、押しボタンスイッチ1は、操作部11と、復帰部12と、投光部81と、受光部82と、作動部13とを備える。操作部11は、操作者が触れる接触面111を有し、接触面111が押し込まれることにより押込方向の手前側の初期位置から奥側の押込位置へと移動する。復帰部12は、操作者による押し込みが解除された際に操作部11を押込位置から初期位置へと戻す。投光部81は、押込方向において操作部11と重なるとともに接触面111よりも押込方向の奥側に配置される。投光部81は、接触面111を透過して接触面111よりも手前側に検出光を照射する。受光部82は、押込方向において操作部11と重なるとともに接触面111よりも押込方向の奥側にて投光部81から離間して配置される。受光部82は、接触面111に近接した操作者にて反射した検出光の反射光を受光する。作動部13は、操作部11が初期位置から押込位置に移動した場合、および、受光部82における受光状態が操作者の近接を示す所定の受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に所定動作(上記例では、行き先階の選択信号の発信)を行う。
【0067】
受光部82の受光視野820は、第1受光視野826と、第2受光視野827とを備える。第2受光視野827は、第1受光視野826よりも押込方向の奥側に位置する。受光部82は、第1受光部824と、第2受光部825とを備える。第1受光部824は、上記反射光のうち第1受光視野826からの光を受光する。第2受光部825は、当該反射光のうち第2受光視野827からの光を受光する。上記受光条件は、第1受光部824の受光量(すなわち、第1受光量)に対する第2受光部825の受光量(すなわち、第2受光量)の割合である受光割合が、所定の受光割合閾値以上であることを含む。
【0068】
これにより、上述のように、操作者の指先91や手等の特性(例えば、反射率や形状等)による作動部13の動作に対する影響を低減することができる。その結果、押しボタンスイッチ1の誤動作を抑制することができる。
【0069】
また、投光部81および受光部82を、押込方向において操作部11と重なるとともに接触面111よりも奥側の位置に配置することにより、非接触型のスイッチが接触型のスイッチ(すなわち、押しボタン)から独立して異なる位置に併設される従来のスイッチユニットに比べて、押しボタンスイッチ1を小型化することができる。また、操作者が操作部11に触れずに作動部13を作動させたい場合と、操作部11に触れて押し込むことにより作動部13を作動させたい場合とで、操作部11に対する操作者の手や指の動きがおよそ共通しているため、操作者が押しボタンスイッチ1を容易に操作することができる。すなわち、押しボタンスイッチ1を上記構造とすることにより、操作部11に触れても触れなくても容易に操作可能な小型の押しボタンスイッチ1を提供することができる。
【0070】
押しボタンスイッチ1では、上述のように、第1受光部824の受光量が0よりも大きくなった場合、操作者に対して近接情報(すなわち、第1近接情報)が報知されることが好ましい。これにより、作動部13による上記所定動作よりも前に、接触面111に対する指先91や手等の近接状態を操作者に容易に認識させることができる。
【0071】
より好ましくは、受光割合が上述の受光割合閾値以上となった場合、操作者に対して第1近接情報とは異なる他の近接情報(すなわち、第2近接情報)が報知される。これにより、接触面111に対する指先91や手等の近接状態を操作者に段階的に認識させることができる。
【0072】
上述のように、押しボタンスイッチ1は、表示光源141をさらに備えることが好ましい。表示光源141は、接触面111よりも押込方向の奥側に配置され、接触面111に向けて検出光とは異なる波長域を有する表示光を出射する。好ましくは、上述の第1近接情報および第2近接情報の報知が表示光源141により行われ、第1近接情報の報知時と、第2近接情報の報知時とでは、表示光の色、明度および点滅パターンのうち1つ以上が異なる。これにより、操作者は、接触面111に対する指先91や手等の近接状態を容易に視認することができる。
【0073】
上述のように、操作部11が初期位置から押込位置へと移動した場合、操作者に対して第1近接情報とは異なる直接押圧情報が報知されることが好ましい。これにより、操作者は、操作部11が確実に押し込まれて上記所定動作が行われたことを容易に認識することができる。
【0074】
上述のように、第1受光部824および第2受光部825は、1つの分割型フォトダイオードの2つの分割受光領域であることが好ましい。これにより、受光部82を小型化することができるため、押しボタンスイッチ1をさらに小型化することができる。
【0075】
上述のように、第1受光部824はフォトダイオードであり、第2受光部825は、当該フォトダイオードとは異なる他のフォトダイオードであることも好ましい。これにより、第1受光部824および第2受光部825の配置の自由度が向上されるため、押しボタンスイッチ1の設計の自由度を向上することができる。
【0076】
上述のように、押しボタンスイッチ1は、エレベータの操作盤に設けられてエレベータの使用者により操作されることが好ましい。エレベータの操作盤は、比較的狭いスペースに設けられるため、スイッチ配置に対して厳しい制約がある。また、使用者が操作盤に対して比較的近い位置に立つことが多く、誤操作が比較的生じやすい。したがって、誤操作を抑制することができる小型の押しボタンスイッチ1は、エレベータの操作盤用のスイッチに特に適している。
【0077】
上述のように、押しボタンスイッチ1は、既存のエレベータの操作盤において既存の接触式押しボタンスイッチが取り付けられている固定部に対して、当該既存の接触式押しボタンスイッチに代えて取り付け可能な取付部161をさらに備えることが好ましい。これにより、押しボタンスイッチ1を既存のエレベータの接触式押しボタンスイッチと容易に交換することができる。その結果、押しボタンスイッチ1を既存のエレベータに低コストにて後付けすることができる。
【0078】
次に、作動制御部134による押しボタンスイッチ1の動作制御の他の例について説明する。押しボタンスイッチ1では、作動制御部134の制御により、受光部82における受光状態が第1の受光条件を満たす場合、待機時間無しで即座に上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われ、第2の受光条件を満たす場合、受光状態が当該第2の受光条件を満たす状態で所定の待機時間(すなわち、意図的に設定された遅延時間)が経過した後、上記所定動作が行われてもよい。第1の受光条件および第2の受光条件は、操作者と接触面111との近接の程度を示す受光条件である。第2の受光条件は、第1の受光条件よりも操作者と接触面111との間の押込方向における距離が大きい状態に対応する受光条件である。
【0079】
なお、第2の受光条件を満たす場合とは、第2の受光条件を満たし、かつ、第1の受光条件を満たさない状態を示す。また、第1の受光条件を満たす場合とは、第1の受光条件を満たす状態であればよく、第2の受光条件を満たすか否かは問われない。
【0080】
具体的には、例えば、
図9に示すように、操作者の指先91が、重複領域830において第1受光視野826および第2受光視野827に含まれている状態では、待機時間無し(すなわち、意図的な遅延時間が実質的に0)で即座に上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われる。また、
図10に示すように、指先91が
図9に示す位置よりも手前側に位置し、重複領域830において第2受光視野827に少しだけ含まれる状態では、当該状態が維持されたまま上述の待機時間(例えば、3秒~5秒)が経過した後、上記所定動作が行われる。
【0081】
図9に示す状態では、受光部82の第1受光部824および第2受光部825における第1受光量および第2受光量は0よりも大きく、受光割合(すなわち、第1受光量に対する第2受光量の割合)は、受光割合閾値以上である。上述の第1の受光条件は、受光割合が受光割合閾値以上であることを含む。
図10に示す状態(すなわち、
図9に示す状態よりも指先91と接触面111との間の距離が大きい状態)では、受光部82の第1受光部824および第2受光部825における第1受光量および第2受光量は0よりも大きく、受光割合は受光割合閾値未満である。上述の第2の受光条件は、受光割合が受光割合閾値未満であり、かつ、第1受光量および第2受光量が0よりも大きいことを含む。なお、第1の受光条件および第2の受光条件は、上記以外の条件を含んでいてもよい。
【0082】
これにより、
図9に示す状態まで指先91を接触面111に近づけることを躊躇する操作者であっても、待機時間分のタイムラグはあるものの、押しボタンスイッチ1を非接触にて操作して行き先階を選択することができる。また、
図10に示す程度に接触面111から離れた位置に、僅かな時間(すなわち、上記待機時間よりも短い時間)だけ操作者の鞄等の物体が存在したとしても、当該物体を操作者の指先91等と間違えて上述の所定動作が行われることを防止することができる。その結果、操作者の意図しない押しボタンスイッチ1の誤動作を抑制することができる。
【0083】
押しボタンスイッチ1では、
図8に示す状態においても、
図10に示す状態と同様に、当該状態が維持されたまま所定の待機時間(例えば、3秒~5秒)が経過した後、上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われてもよい。
図8に示す状態では、指先91は、重複領域830において第1受光視野826には含まれているが、第2受光視野827には含まれておらず、
図9および
図10に示す状態よりも押込方向の手前側に位置している。換言すれば、
図8に示す状態では、指先91と接触面111との間の距離は、
図9および
図10に示す状態よりも大きい。
図8に示す状態では、受光部82の第1受光部824における第1受光量は0よりも大きく、第2受光部825における第2受光量は0であり、受光割合も0(すなわち、受光割合閾値未満)である。この場合、上述の第2の受光条件は、受光割合が受光割合閾値未満であり、かつ、第1受光量が0よりも大きいことを含む。
【0084】
図8または
図10に示す状態の指先91が、上述の待機時間中に(すなわち、待機時間が経過するよりも前に)、
図9に示す状態まで接触面111に近づけられた場合、受光部82における受光状態が上述の第1の受光条件を満たすことになるため、待機時間の残りがスキップされ、待機時間の経過前であっても即座に上述の所定動作が行われる。また、上述の待機時間中に操作部11が押圧されて初期位置から押込位置へと移動した場合も同様に、待機時間の残りがスキップされ、待機時間の経過前であっても即座に上述の所定動作が行われる。これにより、操作者が待機状態を中断させて、当該所定動作を迅速に実行させることができる。一方、待機時間中に、指先91が
図8および
図10に示す状態よりも接触面111から手前側に遠ざかると、作動制御部134による待機は解除され、上記所定動作は行われない。
【0085】
なお、第1の受光条件および第2の受光条件は、上述の例には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、第2受光量が所定の光量以上であることが第1の受光条件であり、第2受光量が0であって、第1受光量が所定の光量以上であることが第2の受光条件であってもよい。この場合、
図8のように指先91が重複領域830において第1受光視野826に含まれ、かつ、第2受光視野827に含まれない状態で第2の受光条件が満たされ、上記待機時間の経過後、上述の所定動作(すなわち、行き先階の選択信号の発信)が行われる。また、
図9および
図10のように指先91が重複領域830において第1受光視野826および第2受光視野827に含まれる状態で第1の受光条件が満たされ、当該所定動作が待機時間無しで行われる。
【0086】
押しボタンスイッチ1では、受光センサ821は、非分割型の1つのフォトダイオードであってもよい。この場合、例えば、第1の受光条件は、受光センサ821の受光量が第1の光量閾値以上であることであり、第2の受光条件は、受光センサ821の受光量が当該第1の光量閾値よりも小さい第2の光量閾値以上であることである。
【0087】
以上に説明したように、押しボタンスイッチ1は、操作部11と、復帰部12と、投光部81と、受光部82と、作動部13とを備える。操作部11は、操作者が触れる接触面111を有し、接触面111が押し込まれることにより押込方向の手前側の初期位置から奥側の押込位置へと移動する。復帰部12は、操作者による押し込みが解除された際に操作部11を押込位置から初期位置へと戻す。投光部81は、押込方向において操作部11と重なるとともに接触面111よりも押込方向の奥側に配置される。投光部81は、接触面111を透過して接触面111よりも手前側に検出光を照射する。受光部82は、押込方向において操作部11と重なるとともに接触面111よりも押込方向の奥側にて投光部81から離間して配置される。受光部82は、接触面111に近接した操作者にて反射した検出光の反射光を受光する。作動部13は、操作部11が初期位置から押込位置に移動した場合、および、受光部82における受光状態が操作者の近接を示す所定の受光条件を満たす状態となった場合のうち、少なくとも一方が生じた場合に所定動作(上記例では、行き先階の選択信号の発信)を行う。
【0088】
上記受光条件は、操作者と接触面111との近接を示す第1の受光条件と、当該第1の受光条件よりも操作者と接触面111との間の距離が大きい状態に対応する第2の受光条件と、を含む。上述の受光状態が第1の受光条件を満たす場合、作動部13は待機時間無しで上記所定動作を行う。また、受光状態が第2の受光条件を満たす場合、当該受光状態が第2の受光条件を満たす状態で所定の待機時間が経過した後、作動部13が上記所定動作を行う。これにより、上述のように、操作者の意図しない押しボタンスイッチ1の誤動作を抑制することができる。
【0089】
好ましくは、上述の待機時間中に操作部11が初期位置から押込位置へと移動した場合、作動部13は、当該待機時間の経過前であっても上記所定動作を行う。これにより、操作者が待機状態を中断させて、当該所定動作を迅速に実行させることができる。
【0090】
上述のように、受光部82の受光視野820は、第1受光視野826と、第2受光視野827とを備えることが好ましい。第2受光視野827は、第1受光視野826よりも押込方向の奥側に位置する。受光部82は、第1受光部824と、第2受光部825とを備える。第1受光部824は、上記反射光のうち第1受光視野826からの光を受光する。第2受光部825は、当該反射光のうち第2受光視野827からの光を受光する。好ましくは、上記第1の受光条件は、第1受光部824の受光量(すなわち、第1受光量)に対する第2受光部825の受光量(すなわち、第2受光量)の割合である受光割合が、所定の受光割合閾値以上であることを含む。また、好ましくは、上記第2の受光条件は、当該受光割合が受光割合閾値未満であり、かつ、第1受光部824の受光量が0よりも大きいことを含む。これにより、上述のように、操作者の指先91や手等の特性(例えば、反射率や形状等)による作動部13の動作に対する影響を低減することができる。その結果、押しボタンスイッチ1の誤動作をさらに抑制することができる。
【0091】
上述のように、第1受光部824および第2受光部825は、1つの分割型フォトダイオードの2つの分割受光領域であることが好ましい。これにより、受光部82を小型化することができるため、押しボタンスイッチ1をさらに小型化することができる。
【0092】
上述のように、第1受光部824はフォトダイオードであり、第2受光部825は、当該フォトダイオードとは異なる他のフォトダイオードであることも好ましい。これにより、第1受光部824および第2受光部825の配置の自由度が向上されるため、押しボタンスイッチ1の設計の自由度を向上することができる。
【0093】
上述の押しボタンスイッチ1では、様々な変更が可能である。
【0094】
例えば、操作部11を押し込む際の手応え等(すなわち、触覚情報)により、上記所定動作が行われたことが操作者に容易に認識される場合等、直接押圧情報の報知は省略されてもよい。また、押しボタンスイッチ1では、必ずしも第1近接情報および第2近接情報が報知される必要はなく、第1近接情報および/または第2近接情報の報知は省略されてもよい。
【0095】
投光部81と受光部82とは、必ずしも、正面視において接触面111の中心に対して互いに反対側に配置される必要はなく、投光部81および受光部82の正面視における配置は様々に変更されてよい。
【0096】
また、上述の例では、投光部81および受光部82は、操作部11の奥側の端面よりも奥側に配置されているが、これには限定されない。投光部81および受光部82の押込方向における位置は、接触面111よりも奥側であれば様々に変更されてよい。例えば、操作部11の奥側の端面中央部に、手前側へと凹む略矩形の凹部が設けられ、投光部81および受光部82は、当該凹部内に配置されてもよい。これにより、押しボタンスイッチ1の押込方向における更なる小型化を実現することができる。
【0097】
投光部81から出射される検出光の波長域は、赤外線には限定されず様々に変更されてよい。例えば、検出光は可視光であってもよい。ただし、検出光の波長域は、表示光の波長域とは異なることが好ましい。これにより、光電センサ18の誤作動を好適に防止することができる。
【0098】
投光部81では、投光側遮光部812として上述のような専用の部材が設けられる代わりに、例えば、開口が設けられた拡散板143が投光側遮光部として利用されてもよい。受光部82でも同様に、受光側遮光部822として上述のような専用の部材が設けられる代わりに、例えば、開口が設けられた拡散板143が受光側遮光部として利用されてもよい。また、投光側遮光部812は省略されてもよい。受光側遮光部822も省略されてもよい。
【0099】
押しボタンスイッチ1では、表示光を出射する表示光源141がフィルタ15よりも手前側に設けられている場合、フィルタ15の開口151は省略されてよい。また、フィルタ15は省略されてもよい。
【0100】
押しボタンスイッチ1では、復帰部12は板バネには限定されず、様々な構造を有してよい。例えば、弦巻バネ等の弾性部材が、復帰部12として操作部11とベース部16との間に設けられてもよい。復帰部12が弦巻バネである場合、操作部11が奥側に押し込まれると弦巻バネが押込方向に圧縮され、押し込みが解除されると、弦巻バネの復元力により操作部11が初期位置へと戻される。
【0101】
押しボタンスイッチ1では、接触面111の正面視における形状は、略矩形には限定されず、略円形や略多角形等、様々に変更されてよい。
【0102】
押しボタンスイッチ1が既存のエレベータに後付けされない場合、上記取付部161は、既存のエレベータの固定部に取り付け可能な構造である必要はない。
【0103】
押しボタンスイッチ1は、エレベータのかごに設けられるかご操作盤において、行き先階決定ボタンスイッチ以外のボタンスイッチとして利用されてもよい。また、押しボタンスイッチ1は、エレベータホールに設けられるかご操作盤のボタンスイッチとして利用されてもよい。
【0104】
あるいは、押しボタンスイッチ1は、エレベータのかご操作以外の用途に利用されてもよい。例えば、押しボタンスイッチ1は、自動ドアの開閉用ボタンスイッチとして利用されてもよい。この場合、作動部13により行われる上記所定動作は、例えば、自動ドアの駆動部への開閉指令の発信である。また、押しボタンスイッチ1は、工作機械等の緊急停止スイッチとして利用されてもよい。この場合、作動部13により行われる上記所定動作は、例えば、工作機械に電力を供給する電源ラインにおける物理的な接点の開放動作である。
【0105】
押しボタンスイッチ1が工作機械等の操作スイッチとして利用される場合、例えば、使用者の指先等が光電センサ18によって非接触にて検知されることにより所定の操作が選択され、その後、操作部11が押し込まれることによって当該操作が確定されるように構成されてもよい。また、例えば、押しボタンスイッチ1にかざされた使用者の手等が、光電センサ18によって非接触にて検知されると、工作機械等において予め記憶された操作内容が呼び出され、工作機械等のモニターに当該操作の実行可否を問う注意喚起文が表示される。その後、操作部11が押し込まれることによって当該操作が実行されるように構成されてもよい。
【0106】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0107】
1 押しボタンスイッチ
11 操作部
12 復帰部
13 作動部
81 投光部
82 受光部
111 接触面
141 表示光源
161 取付部
820 受光視野
821 受光センサ
824 第1受光部
825 第2受光部
826 第1受光視野
827 第2受光視野