IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般社団法人日本ケーブルラボの特許一覧

特開2023-91140コンテンツサーバからコアシステム装置へ送信するコンテンツのビットレートを適応制御するシステム及び方法
<>
  • 特開-コンテンツサーバからコアシステム装置へ送信するコンテンツのビットレートを適応制御するシステム及び方法 図1
  • 特開-コンテンツサーバからコアシステム装置へ送信するコンテンツのビットレートを適応制御するシステム及び方法 図2
  • 特開-コンテンツサーバからコアシステム装置へ送信するコンテンツのビットレートを適応制御するシステム及び方法 図3
  • 特開-コンテンツサーバからコアシステム装置へ送信するコンテンツのビットレートを適応制御するシステム及び方法 図4
  • 特開-コンテンツサーバからコアシステム装置へ送信するコンテンツのビットレートを適応制御するシステム及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091140
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】コンテンツサーバからコアシステム装置へ送信するコンテンツのビットレートを適応制御するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/10 20090101AFI20230623BHJP
   H04N 21/2381 20110101ALI20230623BHJP
   H04N 21/647 20110101ALI20230623BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20230623BHJP
   H04W 28/22 20090101ALI20230623BHJP
   H04W 88/14 20090101ALI20230623BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20230623BHJP
【FI】
H04W28/10
H04N21/2381
H04N21/647
H04W4/06 170
H04W28/22
H04W88/14
H04W28/18 110
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205705
(22)【出願日】2021-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】510040569
【氏名又は名称】一般社団法人日本ケーブルラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 修一
(72)【発明者】
【氏名】小林 中
(72)【発明者】
【氏名】清水 英夫
【テーマコード(参考)】
5C164
5K067
【Fターム(参考)】
5C164FA08
5C164GA03
5C164SB24P
5C164SC03S
5C164TA06S
5C164TB44P
5C164YA21
5C164YA24
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】リアルタイム型放送サービスについて、コンテンツサーバとコアシステム装置との間のコンテンツの伝送を、コアシステム装置と端末との間の無線変調方式に合わせて適応制御することができるシステム及び方法を提供する。
【解決手段】コアシステム装置は、各端末に対する無線伝送路に応じて決定された無線変調方式を収集し、視聴チャネル毎に、複数の無線変調方式から統計値となる統計無線変調方式を決定し、視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求をコンテンツサーバへ送信する。これに対して、コンテンツサーバは、コンテンツ要求に含まれる当該視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式に応じたビットレートで、コアシステム装置へ送信する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム型放送サービスであって、複数のチャネルのコンテンツを送信するコンテンツサーバと、当該コンテンツを基地局を介して複数の端末へ配信するコアシステム装置とを有するシステムにおいて、
コアシステム装置は、各端末に対する無線伝送路に応じて決定された無線変調方式を収集し、視聴チャネル毎に、複数の無線変調方式から統計値となる統計無線変調方式を決定し、視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求をコンテンツサーバへ送信し、
コンテンツサーバは、コンテンツ要求に含まれる当該視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式に応じたビットレートで、コアシステム装置へ送信する
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
統計無線変調方式は、複数の無線変調方式から最低値、平均値、中央値、又は、所定条件の統計値に基づくものである
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
コアシステム装置は、
複数の端末へ、当該視聴チャネルのコンテンツを、ブロードキャストで配信するものであり、
ブロードキャストで配信する視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求を、コンテンツサーバへ送信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
コアシステム装置は、
ブロードキャストの受信品質が所定条件以下に劣化した端末から、当該視聴チャネルのユニキャスト配信要求を受信した際に、当該端末へ当該チャネルのコンテンツを、ユニキャストで更に配信するものであり、
ユニキャストで配信する端末個別の視聴チャネル及び無線変調方式を含むコンテンツ要求を、コンテンツサーバへ送信する
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
コアシステム装置は、基地局から複数の端末へ放送する放送帯域に対する、ブロードキャストのチャネル数とユニキャストの配信数とに基づく占有帯域に応じて、統計無線変調方式を適応的に可変する
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
コアシステム装置は、ユニキャストの配信数が多くなるほど、ブロードキャストの統計無線変調方式を低くし、ユニキャストの配信数が少なくなるほど、ブロードキャストの統計無線変調方式を高くする、ように適応的に可変する
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
コンテンツサーバは、MPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)に基づいて、コンテンツをコアシステム装置へ送信する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
コアシステム装置は、
MBMS(Multimedia Broadcast / Multicast Service)として機能し、
FLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport)又はROUTE(Real-time Object Delivery over Unidirectional Transport)に基づいて、コンテンツを基地局を介して端末へ配信する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
リアルタイム型放送サービスであって、複数のチャネルのコンテンツを送信するコンテンツサーバと、当該コンテンツを基地局を介して複数の端末へ配信するコアシステム装置とを有するシステムのコンテンツ配信方法において、
コアシステム装置は、各端末に対する無線伝送路に応じて決定された無線変調方式を収集し、視聴チャネル毎に、複数の無線変調方式から統計値となる統計無線変調方式を決定し、視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求をコンテンツサーバへ送信し、
コンテンツサーバは、コンテンツ要求に含まれる当該視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式に応じたビットレートで、コアシステム装置へ送信する
ことを特徴とするコンテンツ配信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP放送(Internet Protocol)におけるコンテンツサーバ及びコアシステム装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コアシステム装置は、例えばMBMS(Multimedia Broadcast / Multicast Service)として機能する。MBMSは、例えばBMSC(Broadcast Multicast Service Center)としてのコンテンツサーバから複数のチャネルのコンテンツを受信する。そして、そのコンテンツを、基地局(eNodeB, gNodeB)を介して複数の端末(User Equipment)へ配信する。
【0003】
従来、MBMSのベアラサービスとして、ファイル修復サーバとしてのHTTP(Hypertext Transfer Protocol)サーバのURI(Uniform Resource Identifier)を設定する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、端末は、MBMSのコアシステム装置から配信されたデータに欠損がある場合、コアシステム装置へ、SIP(Session Description Protocol)再勧誘メッセージを送信する。SIP再勧誘メッセージには、SDP(Session Description Protocol)オファーとURIを含み、ファイル修復セッションを開始する。そして、端末は、ファイル修復サーバとしてのHTTPサーバへ、欠損したセグメントID(IDentifier)を要求し、そのセグメントを受信することができる。
【0004】
また、放送局と放送補完サーバとを備えた放送補完システムの技術もある(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、放送局は、コンテンツを、複数の端末へ向けてブロードキャストで同報的に放送する。また、放送補完サーバは、端末から、欠損したセグメントIDを受信した際に、そのセグメントを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6113317号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IPTV技術のモバイルマルチメディア放送への展開、NTTサイバーソリューション研究所、[online]、[令和3年11月20日検索]、インターネット<URL:https://www.ntt.co.jp/journal/0910/files/jn200910022.pdf>
【非特許文献2】「MPEG-DASH」、NHK放送技術研究所、[online]、[令和3年11月20日検索]、インターネット<URL:https://www.ite.or.jp/contents/keywords/1701keyword.pdf>
【非特許文献3】FLUTE - File Delivery over Unidirectional Transport、RFC3926、[online]、[令和3年11月20日検索]、インターネット<URL:https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc3926>
【非特許文献4】「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る工場分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負」、p.145、日本電気株式会社、[online]、[令和3年11月20日検索]、インターネット<URL:https://go5g.go.jp/sitemanager/wp-content/uploads/2021/05/%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%92%E5%B9%B4%E5%BA%A6L5G%E9%96%8B%E7%99%BA%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E6%88%90%E6%9E%9C%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_No8_%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E5%86%85%E3%81%AE%E7%84%A1%E7%B7%9A%E5%8C%96%E3%81%AE%E5%AE%9F%E7%8F%BE.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、ケーブルテレビの事業を想定した場合、視聴環境の整備に際し、ユーザ宅への引込ケーブルの敷設が必要となる。例えば映像における4K放送や8K放送が普及するほど、特に集合住宅では棟内設備の広帯域化のための高額な改修費用が必要となってくる。そのために、ケーブルテレビの事業について、引込ケーブルに代えて、移動通信システムにおけるローカルIP放送が検討されている。ローカルIP放送として、例えば5Gや4Gを用いることによって、高い伝送品質を確保することもできる。このようなケーブルテレビの事業にも、非特許文献1及び特許文献1のようなIP放送の技術を適用することによって、放送局が、ブロードキャストでデータを放送することができる。
【0008】
しかしながら、非特許文献1及び特許文献1の技術によれば、端末が、ブロードキャストで配信されたコンテンツを、端末内で完全に蓄積した後で再生する「蓄積型放送サービス」に適用されるものである。また、BMSC(コンテンツサーバ)とMBMS(コアシステム装置)との間におけるコンテンツの伝送について、何ら特定するものでもない。
【0009】
これに対し、ケーブルテレビの事業の場合、端末として受信したコンテンツを即時に再生する「リアルタイム型放送サービス」を想定している。また、端末毎に、基地局との間の無線伝送路に応じて異なる無線変調方式(MCS(Modulation and Cording Scheme))が決定されるために、同一のコンテンツについて異なる無線変調方式で複数放送することも難しい。
【0010】
これに対し、本願の発明者は、リアルタイム型放送サービスについて、コンテンツサーバとコアシステム装置との間のコンテンツの伝送を、コアシステム装置と端末との間の無線変調方式に合わせて適応制御することはできないか、と考えた。
【0011】
そこで、本発明は、リアルタイム型放送サービスについて、コンテンツサーバとコアシステム装置との間のコンテンツの伝送を、コアシステム装置と端末との間の無線変調方式に合わせて適応制御することができるシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、リアルタイム型放送サービスであって、複数のチャネルのコンテンツを送信するコンテンツサーバと、当該コンテンツを基地局を介して複数の端末へ配信するコアシステム装置とを有するシステムにおいて、
コアシステム装置は、各端末に対する無線伝送路に応じて決定された無線変調方式を収集し、視聴チャネル毎に、複数の無線変調方式から統計値となる統計無線変調方式を決定し、視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求をコンテンツサーバへ送信し、
コンテンツサーバは、コンテンツ要求に含まれる当該視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式に応じたビットレートで、コアシステム装置へ送信する
ことを特徴とする。
【0013】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
統計無線変調方式は、複数の無線変調方式から最低値、平均値、中央値、又は、所定条件の統計値に基づくものである
ことも好ましい。
【0014】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
コアシステム装置は、
複数の端末へ、当該視聴チャネルのコンテンツを、ブロードキャストで配信するものであり、
ブロードキャストで配信する視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求を、コンテンツサーバへ送信する
ことも好ましい。
【0015】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
コアシステム装置は、
ブロードキャストの受信品質が所定条件以下に劣化した端末から、当該視聴チャネルのユニキャスト配信要求を受信した際に、当該端末へ当該チャネルのコンテンツを、ユニキャストで更に配信するものであり、
ユニキャストで配信する端末個別の視聴チャネル及び無線変調方式を含むコンテンツ要求を、コンテンツサーバへ送信する
ことも好ましい。
【0016】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
コアシステム装置は、基地局から複数の端末へ放送する放送帯域に対する、ブロードキャストのチャネル数とユニキャストの配信数とに基づく占有帯域に応じて、統計無線変調方式を適応的に可変する
ことも好ましい。
【0017】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
コアシステム装置は、ユニキャストの配信数が多くなるほど、ブロードキャストの統計無線変調方式を低くし、ユニキャストの配信数が少なくなるほど、ブロードキャストの統計無線変調方式を高くする、ように適応的に可変する
ことも好ましい。
【0018】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
コンテンツサーバは、MPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)に基づいて、コンテンツをコアシステム装置へ送信する
ことも好ましい。
【0019】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
コアシステム装置は、
MBMS(Multimedia Broadcast / Multicast Service)として機能し、
FLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport)又はROUTE(Real-time Object Delivery over Unidirectional Transport)に基づいて、コンテンツを基地局を介して端末へ配信する
ことも好ましい。
【0020】
本発明によれば、リアルタイム型放送サービスであって、複数のチャネルのコンテンツを送信するコンテンツサーバと、当該コンテンツを基地局を介して複数の端末へ配信するコアシステム装置とを有するシステムのコンテンツ配信方法において、
コアシステム装置は、各端末に対する無線伝送路に応じて決定された無線変調方式を収集し、視聴チャネル毎に、複数の無線変調方式から統計値となる統計無線変調方式を決定し、視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求をコンテンツサーバへ送信し、
コンテンツサーバは、コンテンツ要求に含まれる当該視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式に応じたビットレートで、コアシステム装置へ送信する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシステム及び方法によれば、リアルタイム型放送サービスについて、コンテンツサーバとコアシステム装置との間のコンテンツの伝送を、コアシステム装置と端末との間の無線変調方式に合わせて適応制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明におけるシステム構成図である。
図2】本発明におけるコアシステム装置の基本的な機能構成図である。
図3】本発明のシステムにおけるシーケンス図である。
図4】本発明におけるコンテンツの無線変調方式の適応制御を表すシーケンス図である。
図5】本発明における端末数に対する放送帯域の表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0025】
図1によれば、ケーブルテレビのネットワークシステムをIP放送に適用したシステムである。このシステムによれば、コンテンツサーバ1と、コアシステム装置2と、基地局3と、端末4とを有する。コアシステム装置2と端末4との間は、基地局3を介した移動通信システムにおけるローカルIP放送に基づくものである。
【0026】
<コンテンツサーバ1>
コンテンツサーバ1は、リアルタイム型放送サービスであって、コアシステム装置2へ、複数のチャネルのコンテンツを送信する。
コアシステム装置2がMBMSである場合、コンテンツサーバ1はBMSCとして機能する。
【0027】
コンテンツサーバ1は、コンテンツ(セグメント系列)を、例えばMPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)に基づいて、コアシステム装置2へ送信する(例えば非特許文献2参照)。
MPEG-DASHとは、インターネット上におけるアダプティブなHTTP(HyperText Transport Protocol)ストリーミングのプロトコルである。これによって、別途の動画配信サーバを要することなく、Webサイトの高速化・大規模化に利用されるCDN(Contents Delivery Network)をそのまま適用できる。また、アダプティブストリーミングによって、動的に映像品質を切替えることができ、安定した配信を実現する。
【0028】
コンテンツサーバ1は、コアシステム装置2へ、以下のようなプロトコルスタックで、コンテンツを送信する。
MPEG-DASH
HTTP
TCP
IP(ユニキャスト) ->コアシステム装置2向け
【0029】
コンテンツサーバ1は、コンテンツを、コアシステム装置2からの要求に応じた無線変調方式(MCS)のビットレートで送信することができる。
MCS(Modulation and Cording Scheme)とは、変調(Modulation)及び符合化(Coding)を表すパラメータである(例えば非特許文献4参照)。MCSによって、送信データ量とノイズ耐性とが変化する。5Gでは、変調方式として、QPSK、16QAM、64QAM、256QAM、1024QAMがサポートされている。256QAMは、1つの電波シンボル(RE: Resource Element)で送信可能なビット数が最も大きいかわりに、ノイズ耐性が低くなる。一方で、QPSKは、1つのREで送信できるビット数は少ないが、ノイズ耐性は強くなる。符号化は、送信データに対して冗長情報を載せて符号化することによって、一部の伝送エラーが生じても、受信側でエラー訂正をすることができる。実データ量に対する冗長情報量の比率(符号化率)によって、送信可能データ量とエラー耐性とが変化する。このような変調及び符合化の組み合わせは、MCSインデックスによって指定される。
【0030】
無線変調方式(MCS)は、例えば以下のようなものである。
(MCS) (変調方式) (符号化率)
0 BPSK 1/2
1 QPSK 1/2
2 QPSK 3/4
3 16QAM 1/2
4 16QAM 3/4
5 64QAM 2/3
6 64QAM 3/4
7 64QAM 5/6
8 256QA 3/4
9 256QAM 5/6
10 1024QAM 3/4
11 1024QAM 5/6
【0031】
コンテンツサーバ1は、コアシステム装置2から、視聴チャネルと統計無線変調方式とを含む「コンテンツ要求」を受信する。そして、コンテンツサーバ1は、当該視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式に応じたビットレートで、コアシステム装置2へ送信する。
【0032】
図2は、本発明におけるコアシステム装置の基本的な機能構成図である。
【0033】
<コアシステム装置2>
コアシステム装置2は、リアルタイム型放送サービスに基づくものであって、コンテンツサーバ1から受信した複数のチャネルのコンテンツを、基地局3を介して複数の端末4へ配信する。本発明の特徴として、コアシステム装置2は、MBMSとして機能する。
【0034】
図2によれば、コアシステム装置2は、適応制御部20と、ブロードキャスト配信部21と、ユニキャスト配信部22とを有する。特に、コアシステム装置2が、ブロードキャスト配信部21とユニキャスト配信部22との両方を一体的に備えて、リアルタイム型放送サービスを提供することに特徴がある。これら機能構成部は、コアシステム装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、コアシステム装置のコンテンツ配信方法として理解できる。
【0035】
[適応制御部20]
適応制御部20は、各端末4から、ユーザ所望の「視聴チャネル」と、無線伝送路に応じて決定された「無線変調方式」とを収集する。視聴チャネルは、端末4との間でC(Control)プレーンのコネクションに基づいて受信されるものであってもよい。また、無線変調方式は、端末4と基地局3との間の適応無線リンク制御によって決定されるものであってもよい。
【0036】
適応制御部20は、視聴チャネル毎に、複数の無線変調方式から統計値となる「統計無線変調方式」を決定する。
1つのチャネルについて、例えば複数の端末2で視聴されているとする。その場合、各端末4について、無線伝送路に基づく無線変調方式が決定される。それら複数の無線変調方式から、最低値、平均値、中央値、又は、所定条件の統計値に基づくものを「統計無線変調方式」として決定する。
例えば1つのチャネルについて、8台の端末4が、(例えばブロードキャストによって)視聴しているとする。このとき、複数のMCSのインデックスとして、3,5,10,8,9,4,5,4が収集されたとする。その場合、統計無線変調方式は、例えば以下のように決定される。
最低値の場合、MCS3とする。
平均値の場合、MCS6とする。
((3+5+10+8+9+4+5+4)/8=6)
中央値の場合、MCS5とする。
((3,4,4,5,5,8,9,10):5)
そして、適応制御部20は、「視聴チャネル」及び「統計無線変調方式」を、ブロードキャスト配信部21へ指示する。
【0037】
[ブロードキャスト配信部21]
ブロードキャスト配信部21は、適応制御部20からの指示に応じて、「視聴チャネル」及び「統計無線変調方式」を含むコンテンツ要求を、コンテンツサーバ1へ送信する。
これに対し、ブロードキャスト配信部21は、コンテンツサーバ1から、コンテンツ要求に含まれる視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式に応じたビットレートで受信する。
そして、ブロードキャスト配信部21は、複数の端末4へ、当該視聴チャネルのコンテンツを、ブロードキャストで配信する。
【0038】
ブロードキャスト配信部21は、以下のようなプロトコルスタックで、基地局3へ配信する。
MPEG-DASH
FLUTE(AL-FEC)
UDP
IP(ブロードキャスト)->端末4向け
UDP
IP(マルチキャスト) ->基地局3向け
【0039】
ブロードキャスト配信部21は、MBMSのFLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport)又はROUTE(Real-time Object Delivery over Unidirectional Transport)に基づいて、コンテンツを、基地局3を介して端末4へ配信する。
FLUTEやROUTEは、片方向伝送プロトコルを介したファイル伝送を規定したものある(例えば非特許文献3参照)。この技術は、数秒単位で伝送され、リアルタイムに再生される。セグメントのバッファリングによって数秒の遅延が生じることとなるが、標準的ブラウザによって動画再生がサポートされている。尚、ユーザの嗜好等に合わせたコマーシャル動画の差し替えも容易となっている。
【0040】
[ユニキャスト配信部22]
ユニキャスト配信部22は、ブロードキャストの受信品質が所定条件以下に劣化した端末4から、当該チャネルのユニキャスト配信要求を受信した際に、当該端末4個別の「視聴チャネル」及び「無線変調方式」を含むコンテンツ要求を、コンテンツサーバ1へ送信する。
これに対し、ユニキャスト配信部22は、コンテンツサーバ1から、コンテンツ要求に含まれるチャネルのコンテンツを、無線変調方式に応じたビットレートで受信する。
そして、ユニキャスト配信部22は、ユニキャスト配信要求を送信してきた端末4へ、当該チャネルのコンテンツを、ユニキャストで配信する。
【0041】
ユニキャスト配信部22は、以下のようなプロトコルスタックで、基地局3へ配信する。
MPEG-DASH
HTTP
TCP
IP(ユニキャスト) ->端末4向け
TCP
IP(ユニキャスト) ->基地局3向け
【0042】
前述したように、ブロードキャストもユニキャストも両方とも、最上位層ではMPEG-DASHのとして配信される。コンテンツのセグメント長を比較的短くすることによって、リアルタイム型放送サービスに対応できるようにしたものである。
【0043】
<基地局3>
基地局3は、コアシステム装置2から受信したコンテンツを、移動通信システムのローカルIP放送として、複数の端末4へ放送する。
各基地局は、MCE(Multi-Cell Multicast Coordination Entity)によって無線リソースが指定され、コンテンツを同期させる。そして、各基地局は、MBSFN(MBMS Single Frequency Network)送信方式によって同報的にコンテンツを放送する。
【0044】
<端末4>
端末4は、コアシステム装置2から配信されたコンテンツを、基地局3を介して受信する。このとき、端末4は、基地局3から受信した電波についてRF(Radio Frequency)合成し、コンテンツをユーザに対して再生する。
【0045】
端末4は、コアシステム装置2へ、ユーザ所望の「視聴チャネル」を送信する。視聴チャネルは、端末4との間でC(Control)プレーンのコネクションに基づいて送信されるものであってもよい。
【0046】
端末4は、コアシステム装置2から、視聴チャネルに応じたコンテンツを、ブロードキャストで受信する。そして、端末4は、ブロードキャストの受信品質が所定条件以下に劣化したか否かを判定する。
端末4は、「真」と判定した際に、ブロードキャストの受信からユニキャストの受信へ切り替え、「偽」と判定した際に、ユニキャストの受信からブロードキャストの受信へ切り替える。そして、端末4は、ユニキャストの受信へ切り替える際に、視聴チャネルの「ユニキャスト配信要求」をコアシステム装置2へ送信し、その視聴チャネルのコンテンツを、ユニキャストで受信する。
【0047】
ここで、端末4は、ユニキャストでコンテンツを受信中であっても、ブロードキャストで同じコンテンツを受信可能となっている。即ち、「サイマルキャスト放送(simulcast)」の配信状態となる。コアシステム装置2は、同一のコンテンツを、ブロードキャストとユニキャストとの両方で配信することとなる。
【0048】
図3は、本発明のシステムにおけるシーケンス図である。
【0049】
(S1)端末4は、ユーザ所望の「視聴チャネル」を、基地局3を介してコアシステム装置2へ適宜送信する。また、端末4と基地局3との間で、無線伝送路に応じて決定された「無線変調方式」も、コアシステム装置2へ送信される。
(S2)コアシステム装置2は、視聴チャネル毎に、複数の無線変調方式から統計値となる「統計無線変調方式」を決定する。そして、視聴チャネル及び統計無線変調方式を含むコンテンツ要求を、コンテンツサーバ1へ送信する。
(S3)これに対して、コンテンツサーバ1は、コンテンツ要求に応じた視聴チャネルのコンテンツを、統計無線変調方式のビットレートで、コアシステム装置2へ送信する。コアシステム装置2は、基地局3を介して、ブロードキャストで複数の端末4へ配信する。
(S4)ここで、端末4は、ブロードキャストで受信している視聴チャネルのコンテンツについて欠損を検知したとする。
(S5)このとき、端末4は、欠損したチャネルに応じたユニキャスト配信要求を、基地局3を介してコアシステム装置2へ送信する。
(S6)これに対して、コアシステム装置2は、ユニキャスト配信要求を送信した端末4の視聴チャネル及び無線変調方式に応じたコンテンツ要求を、コンテンツサーバ1へ送信する。
(S7)コンテンツサーバ1は、コンテンツ要求に応じた視聴チャネルのコンテンツを、無線変調方式のビットレートで、コアシステム装置2へ送信する。コアシステム装置2は、基地局3を介して、ユニキャストで端末4へ配信する。
【0050】
図4は、本発明におけるコンテンツの無線変調方式の適応制御を表すシーケンス図である。
【0051】
図4によれば、コアシステム装置2の適応制御部20は、基地局3から複数の端末4へ放送する放送帯域に対する、ブロードキャストのチャネル数とユニキャストの配信数とに基づく占有帯域に応じて、統計無線変調方式を適応的に可変する。具体的には、以下のように適応的に可変する。
・ユニキャストの配信数が多くなるほど、ブロードキャストの統計無線変調方式を低くする。
・ユニキャストの配信数が少なくなるほど、ブロードキャストの統計無線変調方式を高くする。
放送帯域としては、チャネル毎に占有可能な帯域であってもよいし、全てのチャネルで占有可能な帯域であってもよい。
【0052】
図4(a)によれば、放送帯域に対して、ユニキャストの配信数に基づく占有帯域が多い場合を表す。この場合、コアシステム装置2は、コンテンツサーバ1へ、当該チャネルのコンテンツの統計無線変調方式を、更に低符号化・低レートに更新するものであってもよい。更新した無線変調方式のコンテンツ要求を、コンテンツサーバ1へ送信する。これによって、ユニキャストの配信数を確保することができる。
【0053】
ここで、コンテンツを、低符号化・低レートとすることによって、端末4における欠損が改善することとなる。欠損が改善すれば、端末4は、ユニキャストのリンクを切断し、できる限り、ブロードキャストで受信するようになる。
【0054】
図4(b)によれば、放送帯域に対して、ユニキャストの配信数に基づく占有帯域が少ない場合を表す。この場合、コアシステム装置2は、コンテンツサーバ1へ、当該チャネルのコンテンツの統計無線変調方式を、更に高符号化・高レートに更新するものであってもよい。更新した無線変調方式のコンテンツ要求を、コンテンツサーバ1へ送信する。これによって、ブロードキャストの視聴品質を高めることができる。
【0055】
図5は、本発明における端末数に対する放送帯域の表すグラフである。
【0056】
図5のグラフによれば、横軸に「端末数」、縦軸に「放送帯域(Mbps)」が表されている。
(L1)基地局3からの端末4へ向けて、放送帯域1450Mbpsとする。
(L21:破線)全てのチャネルのコンテンツのうち、90%をユニキャストで配信した場合を表す。この場合、端末数250程度で、放送帯域1450Mbpsを超えてしまう。
(L22:破線)全てのチャネルのコンテンツのうち、60%をユニキャストで配信した場合を表す。この場合、端末数370程度で、放送帯域1450Mbpsを超えてしまう。
(L23:破線)全てのチャネルのコンテンツのうち、30%をユニキャストで配信した場合を表す。この場合、端末数730程度で、放送帯域1450Mbpsを超えてしまう。
(L31:実線)全てのチャネルのコンテンツのうち、90%を本発明のように適応制御したものである。この場合、端末数が増えても、放送帯域1450Mbps一杯使用する一方で、それを超えないように制御されている。
(L32:実線)全てのチャネルのコンテンツのうち、60%を本発明のように適応制御したものである。この場合、端末数が増えても、放送帯域1000Mbps以下に抑えられるように制御されている。この場合、放送帯域を十分に利用できていない。
(L33:実線)全てのチャネルのコンテンツのうち、30%を本発明のように適応制御したものである。この場合、端末数が増えても、放送帯域600Mbps以下に抑えられるように制御されている。この場合、放送帯域を十分に利用できていない。
図5によれば、基地局3からの放送帯域は、L31のように制御されることが最も適切となる。
【0057】
以上、詳細に説明したように、本発明のシステム及び方法によれば、リアルタイム型放送サービスについて、コンテンツサーバとコアシステム装置との間のコンテンツの伝送を、コアシステム装置と端末との間の無線変調方式に合わせて適応制御することができる。
【0058】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0059】
1 コンテンツサーバ
2 コアシステム装置
20 適応制御部
21 ブロードキャスト配信部
22 ユニキャスト配信部
3 基地局
4 端末
図1
図2
図3
図4
図5