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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091167
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】コンバインの収量計測装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
A01D41/127 110
A01D41/127 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205754
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田中 大地
(72)【発明者】
【氏名】石田 健之
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JA04
2B396JC07
2B396JE01
2B396JE02
2B396KE05
2B396LA03
2B396LE18
2B396QA24
2B396QA28
2B396QE02
2B396QE24
2B396QE31
2B396QG03
2B396QG06
(57)【要約】
【課題】収量センサを用いてグレンタンクに移送する穀粒の流量を計測してコンバインの収穫した穀粒の積算重量を演算するにあたり、コストアップを極力抑えながら、また、刈取走行を行っている刈取作業中であっても誤差の少ない収穫した穀粒の積算重量をリアルタイムに演算して求めることができる、コンバインの収量計測装置を提供する。
【解決手段】収量センサの検出値を演算して求める穀粒の積算重量をもとに、レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量に基づいて、収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加えて、収穫した穀粒の積算重量を演算する。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置からグレンタンクに移送する穀粒の流量を検出する収量センサと、グレンタンクに貯留する穀粒の堆積高さを検出するレベルセンサを備えて、収穫した穀粒の積算重量を演算する制御装置は、前記収量センサの検出値を演算して求める穀粒の積算重量をもとに、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量に基づいて、前記収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加えて、収穫した穀粒の積算重量を演算することを特徴とするコンバインの収量計測装置。
【請求項2】
前記収量センサの検出値を演算して求める穀粒の積算重量(Y)は、微小時間間隔で収量センサから取得した検出値を所定回数にわたって積算した積算値(x)を穀粒の流量計算式(y=A*(ax+b))に代入して得られる流量(y:重量)を、積算(Y+=y)して求めることを特徴とする請求項1に記載のコンバインの収量計測装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)を分子とし、また、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)を分母として除算した値(B=C/D)を、前記穀粒の流量計算式の流量に掛け合わせる補正係数(A)に掛け合わせて、新たな補正係数として更新し(A=A*B)、そして、この更新した新たな補正係数をその後の収量センサによる穀粒の積算重量の演算に用いることを特徴とする請求項2に記載のコンバインの収量計測装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)から、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)を差し引いた補正重量(E=C-D)を積算重量に加算(Y=Y+E)して、積算重量を補正することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載のコンバインの収量計測装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出した際に収量センサによる穀粒の積算重量の演算に加える補正は、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)が、同じく堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)に誤差を加味した許容範囲(AR1~AR2)から外れた場合に実行することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載のコンバインの収量計測装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出した際に収量センサによる穀粒の積算重量の演算に加える補正は、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)を分子とし、また、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)を分母として除算した値(B=C/D)が予め定めた上下限値(LD、LU)を超えた場合は、その上下限値(LD、LU)を、上記除算した値(B)に置き換えて、前記穀粒の流量計算式の流量に掛け合わせる補正係数(A)の更新に用いることを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1つに記載のコンバインの収量計測装置。
【請求項7】
前記レベルセンサを堆積する穀粒に押されてONとなるグレンタンクの上下方向に分散させて設ける複数の籾センサによって構成し、前記制御装置は、この複数の籾センサの内、より低位の籾センサがOFFからONとなり、また、その後にこの籾センサより1つ高位の籾センサがOFFからONとなったことを検出すると、穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出したものとして、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量を、前記高位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量から、前記低位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量を差し引いた値となして、前記収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加えることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1つに記載のコンバインの収量計測装置。
【請求項8】
前記制御装置は、グレンタンクから穀粒を機外に排出して最も低位の籾センサがONからOFFになったことを検出し、また、その後に予め定める全量排出時間を超えるまで穀粒の排出作業が行われると、その後に最も低位の籾センサがOFFからONとなったことを検出すると、穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出したものとして、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量を、前記最も低位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量となして、前記収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1つに記載のコンバインの収量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲や麦等を刈取って穀粒を収穫するコンバインの収量計測装置に係り、詳しくは、収穫した穀粒の積算重量を脱穀装置からグレンタンクに移送する穀粒の流量を検出する収量センサを用いて演算する収量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にコンバインは、田畑の立毛する稲や麦の穀稈を刈取装置によって刈取り、また、刈取った穀稈を脱穀装置に搬送して、この脱穀装置によって脱粒させて選別した穀粒を揚穀装置でグレンタンクに移送して一時的に貯留する。さらに、穀粒がグレンタンクに満杯になったり、刈取作業を終了する場合は、排出オーガを駆動してグレンタンクに貯留する穀粒を機外のコンテナ等に排出するといった一連の収穫作業を行う。
【0003】
そして、このような収穫作業を行っているなかで、収穫した穀粒の収量(積算重量)がリアルタイムで表示できるのであれば、圃場毎の収量の把握や翌年の各圃場毎の施肥設計等に活用したり、或いは刈取作業を請け負っている場合の費用の算出や、収穫した穀粒の乾燥施設への選択等に役立てることができる。そこで、収穫した穀粒の積算重量を操縦部に設ける表示装置等にリアルタイムで表示することができる収量計測装置を後付けして設けるコンバインが開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
なお、特許文献1の収量計測装置においては、収量センサを用いてグレンタンクに移送する穀粒の流量を計測して穀粒の積算重量を演算している。しかし、このような穀粒の流量を計測する収量センサは、機体振動等の影響を受けて収量の計測に誤差が生じやすいという問題が指摘されている。そして、この問題を解決するために例えば、特許文献2や特許文献3に記載された収量計測装置では、収量センサとは別のロードセルを設け、このロードセルでグレンタンク内の穀粒の総質量を計測して収量センサの計測値を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-141843号公報
【特許文献2】特許第3554823号公報
【特許文献3】特許第6832625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように収量センサを用いてグレンタンクに移送する穀粒の流量を計測してコンバインの収穫した穀粒の積算重量を演算すると、収量センサが少なからず機体振動等の影響を受けて計測した穀粒の積算重量と、その際に実際に重量計を用いて計測した重量(実重量)が一致しない場合がままある。従って、収量センサを用いて計測した穀粒の積算重量と実重量は出来るだけ値を近付けて誤差の少ない収量計測装置が望まれる。
【0007】
しかし、この問題を解決するために特許文献2や特許文献3に記載された収量計測装置のように、グレンタンクに移送する穀粒の流量を計測する収量センサとは別のグレンタンク内の穀粒の総質量を計測するロードセル等の計測センサを設けると、新たなロードセル等の計測センサが必要となって収量計測装置のコストアップを招くと共に、グレンタンク内の穀粒の総質量をロードセル等の計測センサによって計測するためにグレンタンクの支持構造等のコンバイン側の変更が必要となって、簡単に収量計測装置を既存のコンバインに後付けすることができなくなるという問題がある。
【0008】
さらに、グレンタンク内の穀粒の総質量を計測するロードセルは、コンバインの走行に伴う振動や機体姿勢の傾斜等の影響を受けて、計測した重量と実重量との間で少なからず誤差を生じさせるから、コンバインが刈取作業を中断した走行停止中等に総質量の計測を行うことになって、刈取走行を行っている刈取作業中にリアルタイムで誤差の少ないコンバインの収量を作業者に提供することができないという問題が指摘される。
【0009】
そこで、本発明は上記のような問題点に鑑み、収量センサを用いてグレンタンクに移送する穀粒の流量を計測してコンバインの収穫した穀粒の積算重量を演算するにあたり、コストアップを極力抑えながら、また、刈取走行を行っている刈取作業中であっても誤差の少ない収穫した穀粒の積算重量をリアルタイムに演算して求めることができる、コンバインの収量計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため本発明のコンバインの収量計測装置は、脱穀装置からグレンタンクに移送する穀粒の流量を検出する収量センサと、グレンタンクに貯留する穀粒の堆積高さを検出するレベルセンサを備えて、収穫した穀粒の積算重量を演算する制御装置は、前記収量センサの検出値を演算して求める穀粒の積算重量をもとに、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量に基づいて、前記収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加えて、収穫した穀粒の積算重量を演算する。
【0011】
従って、本発明のコンバインの収量計測装置は、コンバインで収穫した穀粒の積算重量を演算するために、脱穀装置からグレンタンクに移送する穀粒の流量を検出する収量センサと共に、グレンタンクに貯留する穀粒の堆積高さを検出する、例えば、グレンタンクに堆積する穀粒に押されてONとなるグレンタンクの上下方向に分散させて設ける複数の籾センサによって構成するレベルセンサを備える。
【0012】
そのため、収量計測装置に新たに追加して備えるレベルセンサは、通常においてグレンタンクに貯留する穀粒の堆積高さを検出して穀粒のグレンタンタンク内の貯留状態を操縦部に設けるモニタ等に表示し、例えば、このモニタを見てグレンタンタンクに穀粒が満杯になった情報を得ると、作業者は刈取作業を中断してグレンタンクから穀粒を機外へ排出する穀粒の排出作業の警報手段として機能し、コンバインに元々備えてあるこのようなセンサを収量計測装置のセンサに兼用して用いるだけであるから、格別にコストアップを招くことはない。
【0013】
また、収量計測装置の収穫した穀粒の積算重量を演算する制御装置は、収量センサの検出値を演算して求める穀粒の積算重量をもとに、レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量に基づいて、収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加えて、収穫した穀粒の積算重量を演算する。
【0014】
そのため、刈取走行を行っている刈取作業中に脱穀装置から移送した穀粒がグレンタンクに堆積して、その穀粒の堆積高さが、例えば、1段階高く変化したことをレベルセンサが検出する度に、穀粒の積算重量の演算に補正を加えるので、刈取作業中に補正機会を増やして計測精度を向上させながら誤差の少ない積算重量をリアルタイムに演算することができる。
【0015】
そして、堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量は、刈取り作物毎に定める穀粒(籾)の容積(堆積穀粒の増分の体積)に対する穀粒重量の換算式から求めたり、レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出した際に、グレンタンクに堆積する穀粒の重量を実測することによって予め設定することができる。また、このように体積から重量を想定する場合の計測誤差は、例えば、走行振動や機体傾斜の影響を受けるロードセルによって計測したグレンタンク内の穀粒重量の計測誤差と同等かそれより少ないと推定され、この計測誤差の少ない設定重量に基づいて積算重量を精度よく演算することができる。
【0016】
また、本発明のコンバインの収量計測装置は、前記収量センサの検出値を演算して求める穀粒の積算重量(Y)は、微小時間間隔で収量センサから取得した検出値を所定回数にわたって積算した積算値(x)を穀粒の流量計算式(y=A*(ax+b))に代入して得られる流量(y:重量)を、積算(Y+=y)して求める。そして、この場合の穀粒の流量計算式における直線の傾き(a)や切片(b)は、収量センサを用いて計測して得られる重量とその際の実重量のテスト結果に基づいて例えば、最小二乗法による回帰係数の計算等によって予め求めて決定しておくことによって計測精度を高めることができる。
【0017】
さらに、本発明のコンバインの収量計測装置は、前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)を分子とし、また、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)を分母として除算した値(B=C/D)を、前記穀粒の流量計算式の流量に掛け合わせる補正係数(A:初期値=1.0)に掛け合わせて、新たな補正係数として更新し(A=A*B)、そして、この更新した新たな補正係数をその後の収量センサによる穀粒の積算重量の演算に用いる。
【0018】
そのため、レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出する度に行う収量センサによる穀粒の積算重量の演算に加える補正を、収量センサを用いて穀粒の流量の演算を行う流量計算式の補正となすから、係る補正によって穀粒の流量を正確に計算することができるようになって、今後の穀粒の積算重量における誤差を少なくすることができる。なお、係る補正係数(A)をフラッシュメモリ等の不揮発性メモリに都度記憶させると、制御装置の電源を切断した後でも値を記憶させておくことができ、翌日等に行う刈取作業においてこれを読み出して使用することによって計測精度を当初から向上させることができる。
【0019】
また、本発明のコンバインの収量計測装置は、前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出すると、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)から、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)を差し引いた補正重量(E=C-D)を積算重量に加算(Y=Y+E)して、積算重量を補正する。
【0020】
そして、このように収量センサによる穀粒の積算重量の演算に加える補正を、これまで収量センサに基づいて計測した流量に基づく加算重量(D)に置き換える形で穀粒の体積から換算する設定重量(C)を直接に積算重量に加算する補正を行うと、積算重量の誤差を少なくして正確な積算重量に近付けることができる。
【0021】
さらに、本発明のコンバインの収量計測装置は、前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出した際に収量センサによる穀粒の積算重量の演算に加える補正は、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)が、同じく堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)に誤差を加味した許容範囲(AR1~AR2)から外れた場合に実行する。
【0022】
そのため、収量センサに基づく穀粒重量(D)とレベルセンサに基づく体積換算する穀粒重量(C)との比較において、一定以上の差がある場合は誤差を少なくするために積算重量の補正を行うが、両者に差がなければ寧ろ収量センサに基づく穀粒重量(D)の計測の方が誤差が少ない可能性が高いとも考えられ、また、敢えて積算重量の補正を行うと逆に誤差を増やして計測上の安定性を損なう虞もあるから、このような場合は積算重量の補正を行わない。
【0023】
そして、本発明のコンバインの収量計測装置は、前記制御装置は、前記レベルセンサによって穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出した際に収量センサによる穀粒の積算重量の演算に加える補正は、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量(C)を分子とし、また、この堆積高さが変化する間に収量センサの検出値を演算して積算重量に加えた加算重量(D)を分母として除算した値(B=C/D)が予め定めた上下限値(LD、LU)を超えた場合は、その上下限値(LD、LU)を、上記除算した値(B)に置き換えて、前記穀粒の流量計算式の流量に掛け合わせる補正係数(A)の更新に用いる。
【0024】
このように、収量センサに基づく穀粒重量(D)とレベルセンサに基づく体積換算する穀粒重量(C)の間の比率(B)が上下限値(LD、LU)を超えた場合は、グレンタンクにおける穀粒の貯まり方が不安定でレベルセンサが堆積する穀粒の高さを誤って検出してしまった場合等が考えられ、このような場合は前述の穀粒の流量計算式の流量に掛け合わせる補正係数(A)の更新にあたって、その更新量を控えめにして計測上の安定性を担保する。
【0025】
また、本発明のコンバインの収量計測装置は、前記レベルセンサを堆積する穀粒に押されてONとなるグレンタンクの上下方向に分散させて設ける複数の籾センサによって構成し、前記制御装置は、この複数の籾センサの内、より低位の籾センサがOFFからONとなり、また、その後にこの籾センサより1つ高位の籾センサがOFFからONとなったことを検出すると、穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出したものとして、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量を、前記高位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量から、前記低位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量を差し引いた値となして、前記収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加える。
【0026】
即ち、コンバインの収量計測装置に新たに用いるレベルセンサを、コンバインに一般的によく使用されている堆積する穀粒に押されてONとなるグレンタンクの上下方向に分散させて設ける複数の籾センサによって構成すると、この籾センサは操縦部に設けるモニタ等にグレンタンタンクの穀粒貯留状態を表示するために設けていて、穀粒がグレンタンクに全く貯留されていない空の状態を検出するようには設けられていない。
【0027】
そのため、穀粒の積算重量の計測を開始したり、計測中にグレンタンクに貯留する穀粒を排出オーガを駆動して機外に排出する際に、その排出を途中で止めてグレンタンクに穀粒が残った状態であると、その後に刈取作業を再開しても収量センサに基づく穀粒重量の積算には何等問題がない。
【0028】
しかし、例えば、最も低位の籾センサが再開後にOFFからONとなって、その最も低位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量に基づいて収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加えると、この際の堆積穀粒に相当する重量は元々残っていた穀粒の重量を差し引いた値ではないから、誤った補正によって計測誤差を拡げてしまう虞がある。そこで、前述のように構成すると、最も低位の籾センサがOFFからONとなっても積算重量の演算に補正は加えられないから、誤った補正によって計測誤差を拡げてしまう虞を無くすことができる。
【0029】
なお、前述の穀粒の積算重量の計測において、グレンタンクに貯留する穀粒を排出オーガを駆動してグレンタンクから残らず機外に穀粒を排出したことが保証される場合は、積算重量の補正を行う機会を増やすことによって計測誤差を少なくするうえで好ましい。
【0030】
そこで、本発明のコンバインの収量計測装置は、前記制御装置は、グレンタンクから穀粒を機外に排出して最も低位の籾センサがONからOFFになったことを検出し、また、その後に予め定める全量排出時間を超えるまで穀粒の排出作業が行われると、その後に最も低位の籾センサがOFFからONとなったことを検出すると、穀粒の堆積高さが高く変化したことを検出したものとして、この堆積高さの変化に伴う堆積穀粒の増分に相当する設定重量を、前記最も低位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量となして、前記収量センサによる穀粒の積算重量の演算に補正を加え、これにより積算重量の補正を行う機会を増やして計測誤差を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】コンバインの側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】グレンタンクの前方側から見た斜視図である。
図4】グレンタンクの側方側から見た斜視図である。
図5】排出オーガの構造を示す説明図である。
図6】グレンタンクの天井壁の一部を示す斜視図である。
図7】水分センサユニットの取付けを説明する斜視図である。
図8】水分センサユニットの取付状態を示す斜視図である。
図9】揚穀装置の上部を示す斜視図である。
図10】揚穀装置に収量センサを取付けた状態を示す斜視図である。
図11】揚穀装置に収量センサを取付けた穀粒の吐出側から見た斜視図である。
図12】ブラケットに電装品を纏めて取付けた状態を示す正面図である。
図13】グレンタンクの後壁を後方側から見た斜視図である。
図14】電装ユニットを後壁に取付けて設ける状態を説明する斜視図である。
図15】電装ユニットとワイヤーハーネスを接続する状態を示す斜視図である。
図16】水分センサユニットから電装ユニットに配線を接続する状態を示す斜視図である。
図17】連結フレームに収量センサに接続するコードを固定する状態を示す斜視図である。
図18】収量センサにコードを接続した状態を示す斜視図である。
図19】コンバインに計測装置を取付けた状態を示す斜視図である。
図20】コンバインに計測装置を取付けた状態を示す斜視図である。
図21】モニタの測定ボタンを押す前後の表示画面を示し、(a)は通常の表示画面、(b)は計測画面である。
図22】イニシャルセットと重量積算のフローチャートである。
図23】積算重量補正のフローチャートである。
図24】積算重量の補正を説明するグラフと穀粒堆積重量を纏めた表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のコンバインの収量計測装置に関する実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すようにコンバイン1は、稲や麦等の作物を刈取ってその穀粒を収穫する。そのため、コンバイン1は、左右のクローラ式走行装置2を下部に備える機体フレーム(機体)3の機体前進方向に向かって、その右側前部に運転席4を備える操縦部5を設ける。また、機体フレーム3の左側前部から操縦部5の前方にかけて刈取装置6を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。
【0033】
さらに、機体フレーム3の左側には脱穀装置7を設けると共に、脱穀装置7の右側にはグレンタンク8と排出オーガ9を設ける。そして、脱穀装置7と排出オーガ9の後方にはディスク型カッター10を設ける。なお、操縦部5の後部寄り下方からグレンタンク8の前方にかけてエンジン等からなる原動部11をエンジンカバー12によって覆って設け、このエンジンは走行装置2を始めとしてコンバイン1の各部を駆動する動力源となる。
【0034】
そして、前述の刈取装置6は、その前端下部に設ける分草体13とナローガイド14によって、圃場に立毛する穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の分草体13の間に入った刈取穀稈を引起装置15によって引起し、その後、掻込装置で掻込みながら穀稈の株元を刈刃装置16によって切断する。さらに、掻込装置によって後方に掻込んだ穀稈を、穀稈搬送装置17を構成する左右の掻込み搬送体及び穂先搬送体によって合流させ、また、合流させた穀稈を扱深搬送体18によって扱深さを調節しながら脱穀装置7に搬送する。
【0035】
また、脱穀装置7は、その上部寄りを覆うシリンダーカバー19の下方に略々箱状の機枠を備え、この機枠の上部に扱室を形成する。そして、この扱室には刈取装置6から搬送する穀稈を扱口に沿って挟持搬送する脱穀フイードチェン20及びシリンダカバー19に設ける挟持レールと、外周に多数植設する扱歯を備える第1扱胴と受網とを設け、前述の脱穀フイードチェン20によって後方に搬送する穀稈の穂から穀粒を脱粒させる。
【0036】
なお、脱穀装置7の扱室内で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理室を、第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かい並列して設け、この処理室には第2扱胴と受網を設ける。さらに、これ等の第1及び第2扱胴の下方には、受網より漏下した穀粒を前後並びに上下させながら選別処理する揺動選別体、及び選別風を発生させる唐箕ファン等を備える選別室を設ける。
【0037】
そして、脱穀装置7で脱粒させて選別した穀粒は、選別室に設ける1番螺旋によって揚穀装置21に向けて搬送し、揚穀装置21はその揚穀筒21a内に設ける揚穀螺旋軸21bに形成する螺旋によって穀粒を上方に移送し、その終端部に設ける跳出板21cによって穀粒を吐出口21dからグレンタンク8内に放出する。また、グレンタンク8は穀粒を一時的に貯留し、穀粒が満杯になると排出オーガ9を駆動してグレンタンク8内の穀粒をトラックの荷台に設置したコンテナ等に排出する。
【0038】
なお、脱穀装置7の選別室に設ける2番螺旋は藁屑等が混じった2番物を2番還元装置を介して揺動選別体上に戻す。また、脱穀処理を完了した排稈は脱穀フイードチェン20の終端から排藁搬送装置によってディスク型カッター10に向けて搬送し、ディスク型カッター10は搬送されてきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0039】
以上、コンバイン1の概要について説明したが、次に収穫した穀粒の収量を計測して操縦部5に設けるモニタ(表示装置)22に、この計測した収量を積算収量(重量)として表示するコンバインの収量計測装置について説明すると、当該収量計測装置は収穫した穀粒の水分率も計測するものに構成するので、以下、穀粒の収量と水分率の計測装置として合わせて説明することにする。
【0040】
ここで、コンバイン1は収穫した穀粒を前述のように脱穀装置7から揚穀装置21によってグレンタンク8に移送して一時的に貯留する。そのため、穀粒の収量と水分率の計測装置は揚穀装置21及びグレンタンク8にその主体を設けるので、グレンタンク8と収穫した穀粒を機外に排出する排出オーガ9、或いは揚穀装置21について詳細に説明する。
【0041】
先ず、グレンタンク8は、図3及び図4に示すようにプレートを用いて形成する前壁23と後壁24と右側壁25と左側壁26によって構成する平面視略矩形状の上部側の貯留部8aと、この貯留部8aの下方にあって前壁27と後壁28と左右の傾斜底壁29、30によって構成する断面V字状の下部側の樋部8bを一体に連結し、また、貯留部8aの上部に天井壁31を設けて、その内部に穀粒を貯留するタンクに構成する。
【0042】
そして、排出オーガ9は図5に示すように、グレンタンク8の樋部8bの下部に前後方向となる横螺旋軸32を横設し、この横螺旋軸32の前部側は前壁27に取付けるブラケット33にベアリングを介して軸支する。また、横螺旋軸32の前端には従動プーリ34を取付け、この従動プーリ34とエンジンによって駆動する駆動プーリ35とに亘って伝動ベルト36を巻き掛ける。
【0043】
さらに、ブラケット33にはテンションローラ37を備えるテンションアーム37aを回動自在に軸支し、このテンションアーム37aを電動モータとワイヤ38等を用いて作動させて、そのテンションローラ37が伝動ベルト36を緊張させて横螺旋軸32をエンジン動力によって駆動する入り状態と、伝動ベルト36を弛緩させてエンジンからの動力を断つ切り状態に切換え自在に設け、係るベルトテンションクラッチによって穀粒の排出クラッチ39を構成する。
【0044】
一方、横螺旋軸32の後部側は後壁28の外面に取付けて設けるケース40の内部に挿入し、このケース40の下部40aは機体フレーム3に設ける支持部に回動自在に支持させて設ける。また、ケース40の上部40bに上下方向となる第1の縦螺旋軸41を内装するパイプからなる第1の縦螺旋筒42の下部を回動自在に嵌合してこれを支持する。さらに、ケース40内にベアリングで支持する1対のヘベルギヤに横螺旋軸32の後端と第1の縦螺旋軸41の下端とを結合して、横螺旋軸32から第1の縦螺旋軸41を駆動するように構成する。
【0045】
従って、グレンタンク8に貯留する穀粒は、前述の排出クラッチ39が入りとなると横螺旋軸32に設ける螺旋によってケース40内に移送し、更にケース40内から第1の縦螺旋軸41に設ける螺旋によって第1の縦螺旋筒42の上方側に向けて移送する。また、第1の縦螺旋筒42の下部外周に多数のギヤ片を取付けて従動ギヤとなした回動リング43を取付けると共に、モータベース44を嵌めて設け、このモータベース44は機体フレーム3に立設するカッターステー45にブラケットを介して取付ける。
【0046】
そして、モータベース44には排出オーガ9を左右旋回させるギヤードモータからなる電動モータ46を取付け、この電動モータ46のピニオンギヤは第1の縦螺旋筒42の下部に設ける前述のギヤと噛み合い、電動モータ46の駆動によって第1の縦螺旋筒42を回転させることができる。また、第1の縦螺旋筒42の上下方向中間に2つのメタル47をホルダ48によって抱き合わせて設け、このホルダ48をブラケットを介してグレンタンク8の後壁24に取付け、グレンタンク8を下部のケース40と合わせて第1の縦螺旋筒42に回動自在に取付けて設ける。
【0047】
さらに、前述のメタル47と揚穀筒21aの上部寄りをグレンタンク8を避けるように屈曲させたパイプからなる連結フレーム49で連結する。従って、第1の縦螺旋筒42はモータベース44を介してカッターステー45に、また、連結フレーム49を介して揚穀筒21aに連結して、その上下方向の起立姿勢が保たれるように支える。また、第1の縦螺旋筒42の上部には相互に回動自在に連結する1対のエルボ状のギヤケース50、51の一方を取り付け、また、他方のギヤケース51に第3の縦螺旋筒53を折り畳み自在に設ける第2の縦螺旋筒52を取付ける。
【0048】
そして、1対のギヤケース50、51内に中継螺旋軸54をベアリングによって回転自在に軸支し、第2の縦螺旋筒52内と第3の縦螺旋筒53内に夫々第2の縦螺旋軸55と第3の縦螺旋軸56を設ける。また、第1の縦螺旋軸41の上端部と第2の縦螺旋軸55の端部を1対のギヤケース50、51に夫々ベアリングによって回転自在に軸支し、さらに、これらの軸端にベベルギヤを設けて、第1の縦螺旋軸41から中継螺旋軸54を介して第2の縦螺旋軸55及び第3の縦螺旋軸56を駆動するように構成する。
【0049】
従って、第1の縦螺旋軸41に設ける螺旋によって第1の縦螺旋筒42の上方側に向けて移送された穀粒は、中継螺旋軸54に設ける螺旋によって1対のギヤケース50、51内を通って第2の縦螺旋筒52内に導かれ、また、第2の縦螺旋軸55に設ける螺旋によって第3の縦螺旋筒53内に導かれ、更に第3の縦螺旋軸56の螺旋によって縦螺旋筒53の先端に設ける排出口57から機外に排出することができる。なお、ギヤケース50に回動自在に取付けたアーム58は第2の縦螺旋筒52に固定し、また、ギヤケース50とアーム58の先端寄りに取付ける油圧シリンダ59は第2の縦螺旋筒52と第3の縦螺旋筒53を起伏(上下動)させて排出口57の高さを変更することができる。
【0050】
なお、グレンタンク8は穀粒を貯留する際に、その底部を機体フレーム3上に載置して機体の前後方向を向く穀粒の収容位置に保持する。しかし、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するDPF60やマフラー61、走行伝動装置、或いは脱穀伝動装置等は機体フレーム3の中央部に設け、また、原動部11はグレンタンク8の前方に設けているので、これ等のメンテナンスを行う際にグレンタンク8は邪魔になる。
【0051】
そこで、グレンタンク8を第1の縦螺旋筒42を中心に機体外方側に向けて回動させてメンテナンス位置になすことができる。そして、この場合には、穀粒を排出してグレンタンク8を空にした状態で、先ずグレンタンク8の右側壁25の後部から第1の縦螺旋筒42の後部までを覆う後部カバー62をカッターステー45との係合を解除して開き、また、右の傾斜底壁29に取付ける下部カバー63を取り外す。さらに、駆動プーリ35と従動プーリ34とに亘って巻き掛けた伝動ベルト36を従動プーリ34から取り外す。
【0052】
次に、タンク固定レバー64を操作してグレンタンク8と揚穀筒21aとの間に設けるロック装置65を解除し、更にブラケット33に設けるタンク回動レバー66を引き上げて、そのローラ67を機体フレーム3の底板上に下降させて、グレンタンク8を浮き上がるように力を加えながら外方に引っ張ると、グレンタンク8を図2に示す穀粒の収容位置から第1の縦螺旋筒42を中心に二点鎖線で示す機体外側方に向けて大きく回動させてメンテナンス位置になすことができる。
【0053】
そして、グレンタンク8をメンテナンス位置に回動させると、原動部11の後側や脱穀装置7の右側が解放されて、エンジンやDPF60、脱穀装置7や走行装置等のメンテナンスを行うことができる。また、グレンタンク8をメンテナンス位置から穀粒の収容位置に戻す場合は、前述と逆の手順を踏むことになる。なお、グレンタンク8をメンテナンス位置に回動すると、グレンタンク8の左側壁26の前方側上部寄りに設ける穀粒の受入口26aと揚穀筒21aの上部に設ける穀粒の吐出口21dはその接合が離れるが、穀粒の収容位置に戻すと両者は再び接合する。
【0054】
以上、グレンタンク8と排出オーガ9等について詳細に説明したが、次に、前述のコンバイン1にキットとして後付けしたり、或いはコンバイン1を出荷する前に組み込んで提供する、収穫した穀粒の収量と水分率を計測して操縦部5に設けるモニタ22にこれ等の収量と水分率を表示する計測装置について説明する。即ち、この計測装置は収穫した穀粒の収量と水分率の計測手段と、計測手段を制御しながら得られた計測値から収量と水分率を演算してモニタ22に表示させる電子制御ユニットを含む電装品、並びにこれ等を接続する信号線や電源線を備える。
【0055】
そして、この計測装置をコンバイン1に取付けて設ける要領とともに説明すると、先ず水分率の計測手段は、図6図8に示すようにグレンタンク8の天井壁31の右側の前後方向中央に設けるプレート68をその取付ボルトを取外して取り除く。そして、この取り除いた穴に水分センサをケースに収めて構成する水分センサユニット69を斜めにして取っ手69aから入れて穀粒収容空間に差し込む。また、取外した取付ボルトを使用して水分センサユニット69を天井壁31に取付けて設ける。
【0056】
なお、ここで用いる水分センサユニット69は、揚穀筒21aの上部に設ける穀粒の吐出口21dから跳出板21cによって放出する穀粒を受け止めながら繰り出す1対の送りロール69b、電極と兼用する一対の圧壊ローラ、並びに送りロール69bと圧壊ローラを回転駆動させる電動モータを備え、送りロール69bが1粒ずつ繰り出した穀粒を圧壊ローラで押し潰した状態で、その電極となる圧壊ローラ間の電気抵抗を水分計測回路によって電圧に変換して出力する。
【0057】
そのため、水分センサユニット69の送りロール69bは放出された穀粒を確実に受け止めることができるように揚穀筒21aの上部に設ける穀粒の吐出口21dに臨むように設け、また、水分センサユニット69がグレンタンク8に放出された穀粒に埋まって検出不能にならないように前述の天井壁31の右側の前後方向中央に設ける。また、送りロール69bは水分計測の開始前に以前の受け止めた穀粒を排出するために逆転させた後、新しい穀粒を圧壊ローラに繰り出して供給するために正転させる必要があり、電動モータは正転と逆転、又停止に切り換える制御が必要となる。
【0058】
次に、収量の計測手段について説明すると、図9図11に示すように揚穀螺旋軸21bの終端部に設ける跳出板21cによって跳ね出した穀粒をその吐出口21dに向けて案内する排出ケース21eに設けるプレート70をそのナットを取外して取り除く。そして、このプレート70を取り除いた穴に収量センサ71の検出板71aを収めて、取外したナットを使用して収量センサ71のケース71bを排出ケース21eの外面に取付けて設ける。
【0059】
なお、ここで用いる収量センサ71は、コラム型のロードセルを用いてグレンタンク8に放出する穀粒の流量を計測する。そのため、ロードセルはその検出板71aに跳出板21cで跳ね出した一部の穀粒を衝突させ、その際の衝突力によって発生するひずみに比例して電気抵抗が変化する4箇所のひずみゲージでホイートストンブリッジを作り、このホイートストンブリッジから印加電圧に比例し、且つひずみに比例した電圧信号を出力する。なお、この収量センサ71の出力電圧信号に基づいて、次に説明する制御装置72はグレンタンク8に放出される穀粒の全量を比例関係にあるものとして演算し穀粒の収量を推定する。
【0060】
また、以上説明した計測手段69、71を制御しながら得られた計測値から水分率や収量を演算してモニタ22に表示するマイクロコンピュータユニット等で構成する制御装置72は、図12に示すようにプレートを折り曲げて形成するブラケット73に取付けて設ける。さらに、このブラケット73には制御装置72の他に、制御装置72に規定の電圧に調節して電力を供給するDC/DCコンバータ74、水分センサユニット69に備える電動モータを正逆回転に切換えるリレー75、収量センサ71のロードセルに印加電圧を与えて出力電圧信号を増幅するアンプ76を取付けて電装ユニット77として纏める。
【0061】
そして、この電装ユニット77を排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42側に臨むグレンタンク8の後壁24の外方側上部寄りに設ける際に、先ず図13に示すように後壁24に上下方向として取付けている支持ピン78を中心に後部カバー62を回動させて機体外側方側に開く。また、後部カバー62を開いて露出させた後壁24からボルト79を2つ取り外す。なお、このボルト79は、右側壁25の内側に後壁24側に向かうように固着した取付板25aを後壁24の外方側端部に取付けてグレンタンク8を形成するものであって、この場合、取付板25aはグレンタンク8の後壁や前壁、或いは天井壁の一部として捉えることができる。
【0062】
そこで、ボルト79を取り外すと、図14に示すようにボルト79を取り外した後壁24の端部に取付板25aの端部を重ねた箇所に、取外したボルト79を使用してブラケット73を上下方向に取付けて、電装ユニット77をグレンタンク8の後壁24の外方側上部寄りに設ける。なお、この場合、上部側のボルト79にはキットとして備えるワッシャ80を挟み、ブラケット73の前後方向となる取付高さを調節する。
【0063】
また、図15に示すように電装ユニット77から引き出した信号線(通信線)や電源線81を支持ピン78を設けるブラケット82の穴にワイヤバンド83を通して固定し、排出オーガ9の第1の縦螺旋筒42の外側を迂回させてその後方に設けるカッターステー45に取付けるワイヤーハーネス84の枝線に2つのコネクタ85を介して接続する。さらに、図16に示すように後壁24の傾斜する端部に取付板25aの端部を重ねて取付けるボルトを一旦取外して取付けたクランプ86に、水分センサユニット69から引き出した信号線や電源線87の中途を固定し、この信号線や電源線87を制御装置72やリレー75に接続する。
【0064】
そして、電装ユニット77のアンプ76から引き出したコード88の中途部は、図17に示すようにカッターステー45から前方に向けて配策するワイヤーハーネス84を、第1の縦螺旋筒42と揚穀筒21aを連結する連結フレーム49に沿わせて固定するワイヤバンド83に通して同様に固定する。また、コード88の終端は図18に示すように収量センサ71のコード接続部71cに接続し、全ての取付け並びに接続作業を終了する(図19図20参照)。
【0065】
なお、前記ワイヤーハーネス84にはコンバイン1の各部を制御する図示しないメイン電子制御ユニットに備えるCAN-BUSモジュールに接続するケーブルが含まれ、前述の接続作業を終了するとこのケーブルの信号線がコネクタ85を介して制御装置72に備えるCAN-BUSモジュールに接続されて、電子制御ユニット相互の情報が取得できるようになる。また、メイン電子制御ユニットはモニタ22を制御する図示しないモニタ電子制御ユニットにCAN-BUSモジュールを介して同様に接続している。
【0066】
従って、制御装置72はメイン電子制御ユニットを介してモニタ22を制御するモニタ電子制御ユニットと接続し、水分センサユニット69や収量センサ71から得られた計測電圧に基づいて制御装置72が演算した水分率と収量の値を、モニタ電子制御ユニットに与え、これによってモニタ22に水分率と収量を表示させることができる。また、モニタ22は液晶パネルに積層したタッチパネルを備える液晶ディスプレイ(liquid crystal display)によって構成している。
【0067】
そのため、エンジンをスタータスイッチによって始動させると共に、制御装置72やモニタ電子制御ユニット等に電力を供給してこれらを起動させると、モニタ22に図21(a)に示す通常表示画面が表示され、また、この通常表示画面で測定ボタンを押すと、図21(b)に示すように制御装置72によって収穫した穀粒の収量を積算した「積算収量」と穀粒の「水分率」を表示する計測画面に切り替えることができる。
【0068】
なお、モニタ22の計測画面には燃料リセットボタンが押されるまでにエンジンによって消費された積算燃料消費量を合わせて表示するが、この消費量の計測はメイン電子制御ユニットがその役割を担う。また、収量リセットボタンを押すと制御装置72は積算収量をゼロにリセットする。さらに、刈取作物切替ボタンを押す度に稲、小麦、大麦の各ランプの点灯状態が遷移する。そして、これによって制御装置72は収穫する作物を把握して水分率や収量の演算に用いる。
【0069】
以上、コンバイン1の収穫した穀粒の収量と水分率を計測する計測装置の概要について説明したが、係る計測装置の収量を計測する収量センサ71は、前述の穀粒の衝突力以外に脱穀装置7や揚穀装置21等が発生させる機体振動の影響を受けたり、各地の様々な圃場条件(乾湿田、倒伏の有無)や年度ごとの作物性状(実り具合、刈取時期、水分率等)、或いは、収量センサ71やその取付を含めた機器の個体にばらつきを生じ、それによって収量の計測に少なからぬ誤差を生じさせる。
【0070】
そこで、このような計測誤差を少なくして計測装置の精度を向上させるために、この計測装置は、前述の脱穀装置7からグレンタンク8に移送する穀粒の流量を検出する収量センサ71と共に、グレンタンク8に貯留する穀粒の堆積高さを検出する複数の籾センサによって構成するレベルセンサを新たに加えて、その制御装置72は収量センサ71の検出値を演算して求める穀粒の積算重量をもとに、レベルセンサを用いて取得する穀粒の設定重量に基づいて、穀粒の積算重量の演算に補正を加える。
【0071】
そのため、この穀粒の積算重量の演算について説明する前にコンバイン1に設けるレベルセンサについて説明すると、グレンタンク8に貯留する穀粒の堆積高さを検出する方法として、超音波センサや光学式センサ等の非接触式のセンサを用いることもできるが、ここでは現在一般的に使用されている穀粒に押されてマイクロスイッチがOFFからONとなる接触式のダイヤフラム型の通称、籾センサと称されるセンサ90を複数(実施形態では3個)グレンタンク8に設けてグレンタンク8に貯留する穀粒の堆積高さを検出する。
【0072】
また、実施形態において、この籾センサ90は図4及び図20に示すように、グレンタンク8の後壁24の下部寄りに下段の籾センサ90を設け、また、グレンタンク8の左側壁26の中間と上部寄りに中段と上段の籾センサ90を夫々設け、このグレンタンク8の上下方向に分散させて設ける籾センサ90のON/OFF信号をメイン電子制御ユニット等を用いて操縦部5に設けるモニタ22にグレンタンタンク8の穀粒貯留状態として点灯表示する(図21に示すこく粒タンク参照)。
【0073】
従って、3個の籾センサ90のON/OFFの状態信号は、前述のCAN(Controller Area Network)によって制御装置72において労せず、また、新たな専用のセンサを用いてコストアップを生ずることなく使用することができる。そして、この籾センサ90から構成するレベルセンサを用いて制御装置72は穀粒の積算重量の演算に補正を加えるが、ここで制御装置72は電源が入って起動すると穀粒の収量を計測するプログラムを実行する。
【0074】
また、その場合に制御装置72は穀粒の積算重量の演算に先立って図22に示すイニシャルセットを実行し、このイニシャルセットにおいて何れも変数として用いる収量センサ積算値xと、加算重量Dと、積算回数Nの値を「0」にしておく。また、初期値として「1.00」となす補正係数Aと積算重量Yの値を、制御装置72に設けるフラッシュメモリ等の不揮発性メモリから予め読み込んでおく。
【0075】
さらに、3個の籾センサ90のON/OFFの状態信号からグレンタンク8における穀粒の堆積状態を数値化して籾堆積高Hに与える。そして、この場合に下段と中断と上段の籾センサ90の全てがOFFであればHに「0」を与え、以下、下段のみONでは「1」、下段と中断のみONでは「2」、下段と中断と上段の全部がONでは「3」、それ以外の例えば、下段と上段のみONとなるような異常と見做される状態は「4」を与える。そして、積算重量補正の演算において補正を許可する場合はセット(true)し、許可しない場合はリセット(false)する補正フラグFをリセットしておく。
【0076】
また、以上のイニシャルセットを完了すると制御装置72は、制御装置72が備えるインターバルタイマを用いて数ミリ秒間隔で収量センサ71の検出値に基づいて積算重量Y(Kg重)を演算する重量積算プログラムを割り込みによって実行する。そして、図22に示すように、このプログラムでは先ず、収量センサ71の出力電圧をデジタル値に変換した収量センサ検出値vを収量センサ積算値xに加算して積算(x+=v)し(ステップS1)、その後に積算回数Nを1つ増やしておく(ステップS2)。
【0077】
また、この積算回数Nが所定回数NCとする数百回となったかを判断して(ステップS3)、達していなければそのまま終了し、所定回数NCになれば、収量センサ積算値xを穀粒の流量計算式y=A*(ax+b)に代入して、1秒当たりの穀粒の流量y(Kg重/秒)を求める(ステップS4~ステップ7)。なお、この流量計算式は、低流量用と中流量用と高流量用の3つの計算式y=A*(a0x+0)、y=A*(a1x+b1)、y=A*(a2x+b2)を用意しておき、この計算式を収量センサ積算値xの値に応じて使い分けて設ける。
【0078】
そして、穀粒の流量yを計算すると収量センサ積算値xを「0」に戻しておく(ステップS8)。また、穀粒の流量yを穀粒の積算重量Yに加算(Y+=y)して積算すると共に、穀粒の流量yを補正を行うために設ける加算重量Dに加算(D+=y)して積算しておき(ステップS9)、さらに、積算回数Nを「0」に戻して(ステップS10)終了する。
【0079】
以上、収量センサ71の検出値に基づく積算重量Yの演算について説明したが、刈取作業の一時的な中断によって制御装置72の電源が切れたり、エンジン停止に伴う再始動時の制御装置72のパワーオンリセット等によって積算重量Yの値が失われてしまい、例えば、刈取作業を行っている現在の圃場における収量の取得が不能となる。そのため、演算して求めた積算重量Yは、例えば、刈取クラッチが入りとなって刈取作業を行っている場合に、所定秒の周期でその値に変化があればフラッシュメモリ等の不揮発性メモリに記憶するバックアップ処理を行い、制御装置72は前述のようにイニシャルセットにおいてこの値をメモリから読み出すようにしている。
【0080】
また、この重量積算プログラムのステップS4~ステップ7における穀粒の流量計算式y=A*(ax+b)に用いる直線の傾きaや切片bは、秤を用いた穀粒の実重量の測定を含むテストデータから予め決定しておくものであって、制御装置72がこれ等の値を使用する際には、稲・大麦・小麦等の収穫する作物毎に纏めたテーブルから選択して用いる。また、低流量用と中流量用と高流量用の3つの計算式y=A*(a0x+0)、y=A*(a1x+b1)、y=A*(a2x+b2)を用意することによって、収穫する穀粒の流量の差異における計測誤差が減少して計測精度が向上する。
【0081】
そして、このように積算重量Yを収量センサ71の検出値に基づいて割り込みによって実行する制御装置72は、その傍ら図23に示す積算重量補正のプログラムを実行し、文字通りこのプログラムによって積算重量Yを補正して計測誤差の少ない正確な積算重量Yを演算によって導く。そのため、プログラムでは先ず補正の機会を増やすことが可能か否かを判断するうえで必要となる、排出オーガ9を駆動する排出クラッチ39の入り切り状態を排出クラッチ39に設ける検出スイッチ(不図示)のON/OFFによって判断する(ステップS11)。
【0082】
そして、この場合に排出クラッチ39が切りで、グレンタンク8に貯留する穀粒を排出オーガ9を駆動して機外に排出していない場合は、脱穀装置7の駆動の有無を脱穀クラッチに付設する検出スイッチ(不図示)のON/OFFによって判断する(ステップS12)。そのため、ここで脱穀クラッチが切りであると、脱穀装置7が駆動されていないことが明らかになり、また、グレンタンク8への収穫した穀粒の移送も行われておらず積算重量Yは増加しないはずであるから、積算重量Yの補正を行わずリターンする。従って、このような状態で籾センサ90等の反応によって積算重量Yが増加するといった誤った補正を防止する。
【0083】
また、ここで脱穀クラッチが入りであると脱穀装置7が駆動されているので、グレンタンク8の穀粒の堆積高さ状態を籾センサ90の検出結果によって取得し、前述のイニシャルセットにおいて数値化したと同様に、この穀粒の堆積状態を籾堆積高Hとは別の籾堆積高Mに与える(ステップS13)。さらに、この籾堆積高Mの値が異常な堆積状態と見做される「4」であるかを判断し(ステップS14)、また、同様にそれまでの穀粒の堆積状態として保持していた籾堆積高Hが「4」であるかを判断する(ステップS15)。
【0084】
そして、籾堆積高Mの値か籾堆積高Hの値が「4」に等しければ、籾堆積高Mの値を籾堆積高Hの値に代入して(ステップS16)、積算重量Yの補正を行わずリターンさせる。従って、ステップS14で穀粒の異常な堆積状態を検出すると、穀粒の堆積状態が不明となるので穀粒の堆積高さに基づく補正を行うことができないので即座にリターンさせる。また、ステップS15で現在の穀粒の堆積状態に異常が無くともそれまでの穀粒の堆積状態Hに異常が見られる場合にリターンさせる理由は、次のステップ17で行う堆積高さの変化を籾堆積高Hを用いて判断する上で、その堆積状態に異常が見られる場合は高さの変化を正しく判断できないために行う。
【0085】
次に前述のステップ17で行う堆積高さの変化の判断について説明すると、この穀粒の堆積高さの変化の判断は、今回取得した籾堆積高Mの値がそれ以前に取得した籾体積高Hの値より大きいかを判断する(ステップS17)。そのため、この判断は例えば下段の籾センサ90のみがONした状態(H=1)から下段と中段の籾センサ90のみがONした状態(M=2)に穀粒の堆積高さが高く変化するか、又は下段の籾センサ90のみがONした状態(M=1)のままで堆積高さが変化しない、或いは下段の籾センサ90がOFFとなって(M=0)、逆に堆積高さが低くなったかを判断することになる。
【0086】
そして、この場合に穀粒の堆積高さが高く変化したことが認められない場合、例えば、前述のように下段の籾センサ90のみがONした状態(M=1)のままで堆積高さが変化しない、或いは下段の籾センサ90がOFFとなって(M=0)、逆に堆積高さが低くなった場合には、補正を行わずそのままリターンさせる。しかし、例えば、下段の籾センサ90のみがONした状態(H=1)から下段と中段の籾センサ90のみがONした状態(M=2)に穀粒の堆積高さが高く変化すると、次に補正フラグFの状態を判断する(ステップS18)。
【0087】
ここで、補正フラグFは、積算重量補正の演算において補正を許す条件が備わっているか否かを表す変数として設け、イニシャルセットではリセットして補正を許可しない状態となっているから、後述するステップS11の排出クラッチの判断における入となった際に変更されていなければ、そのままリセットされて補正を許可しない状態であり、そうであれば、ステップS19において補正フラグFをセットすると共に、割り込みで実行する重量積算プログラムで流量yの積算(ステップS9)を行う加算重量Dを「0」に戻してステップS16で行ったと同様に籾堆積高Mの値を籾堆積高Hの値に代入(ステップS20)してリターンする。
【0088】
なお、以上の一連のフローは、ステップS17において穀粒の堆積高さが籾センサ90を用いて高くなったことが検出されても、本計測を開始する以前にグレンタンク8に穀粒が残留していた場合や、グレンタンク8から穀粒を排出した後にグレンタンク8に穀粒が残留していた場合に、その残留する穀粒の堆積高さを制御装置72において正確に知る術がないために、このような正確性を欠く堆積高さに基づく補正を除外するために設ける。
【0089】
しかし、ひとたび穀粒の堆積高さが籾センサ90を用いて高くなったことが検出されると共に、次に穀粒の堆積高さが籾センサ90を用いて同様に高くなったことが検出されると、収穫した穀粒は以前にONとなった籾センサ90のグレンタンク8における配設高さから新たにONとなった籾センサ90の配設高さに亘って増加したことが保証されるから、この増加した穀粒の体積から勘案して設定する重量を用いた後述の補正が成立する。
【0090】
従って、初めて穀粒の堆積高さが籾センサ90を用いて高くなったことが検出されると、次に穀粒の堆積高さが籾センサ90を用いて高くなったことが検出されると補正を許可するという意味でステップS19において補正フラグFをセットし、また、この時点からグレンタンク8に流入する穀粒の重量を収量センサ71を用いて計測した重量を補正に用いるために、ステップS20においてその重量の値を入れる変数としての加算重量Dを「0」に戻しておく。
【0091】
そして、このような流れに基づいてステップS18において補正フラグFがセットされていると、制御装置72は今回取得した籾堆積高Mの値に基づいて得られるONとなる高位側の2つの籾センサ90から勘案して定めることができる作物毎に纏めるテーブルT(M)(図24参照)から2つの籾センサ90がONする間に堆積する穀粒の重量(高位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量から、低位の籾センサがONとなった際の堆積穀粒に相当する重量を差し引いた値)を得て、この値を設定重量Cに代入する(ステップS21)。
【0092】
また、この重量増分に数パーセントの値を乗算した値を重量増分からプラスマイナスして得られる値をマイナス側のテーブルR1(M)とプラス側のテーブルR2(M)に纏めておき、これ等のテーブルから該当する値を得て、補正における重量の許容範囲AR1、AR2に夫々代入する(ステップS21)。さらに、ステップS21において処理した設定重量(C)を分子とし、また、積算重量Yに加えた加算重量Dを分母として除算した値Bをステップ23において演算する。
【0093】
そして、前述のステップS21からステップS23における補正の準備を整えると、制御装置72はステップS24において、積算重量Yに加えた加算重量Dが、設定重量(C)に誤差を加味した許容範囲AR1、AR2から外れているか判断し、この判断において加算重量Dが許容範囲AR1、AR2の中にあれば以後のステップS25からステップS29を飛ばして、ステップS30の加算重量Dを「0」に戻す処理と、ステップS31の籾堆積高Mの値を籾堆積高Hの値に代入する処理を行って実質的に何等補正を行うことなくリターンする。
【0094】
さらに、積算重量Yに加えた加算重量Dが、設定重量(C)に誤差を加味した許容範囲AR1、AR2から外れているとステップS25を実行し、このステップS25にあっては前述のステップS23で求めた設定重量Cを分子として加算重量Dを分母として除算した値(B=C/D)が予め定めた上下限値LD、LUを超えているかを判断し、この場合に上下限値LD、LUを超えている場合は、この上下限値LD、LUを除算した値Bに置き換えて(ステップS26)、次のステップS27において演算する補正係数Aの更新に用いる。なお、上下限値LD、LUを超えていない場合は、置き換えない値Bによって補正係数Aの更新に用いる。
【0095】
そして、重量積算の割り込みプログラムで用いる穀粒の流量計算式の補正係数Aは、ステップS27において、前述の値Bをそれまで使用していた補正係数Aに掛け合わせて得られた値を新たな補正係数Aとして更新し、この補正係数Aの更新した値をフラッシュメモリ等の不揮発性メモリに記憶させる。従って、この補正係数Aはこの後の収量センサ71による穀粒の積算重量Yの演算に用いることになる。
【0096】
また、制御装置72は、ステップS28において、設定重量Cから加算重量(D)を差し引いた補正重量Eを演算し、また、ステップS29において、この補正重量Eを積算重量Yに加算して、積算重量Yを補正する。さらに、これ等の補正処理を終えると既に説明したステップS30とステップS31の処理を行った上でリターンする。
【0097】
なお、このプログラムの最初に行うステップS11において、排出クラッチ39が入りで、グレンタンク8に貯留する穀粒を排出オーガ9を駆動して機外に排出する場合は、この排出クラッチ39が切りから入りになった立ち上がりを検出スイッチで捉えて、補正フラグFをリセットすると共にタイマフラグTをリセットする(ステップS32~ステップS33)。
【0098】
また、次にステップS13で行ったと同様にグレンタンク8の穀粒の堆積高さ状態を取得して籾堆積高Mに与える(ステップS34)。さらに、籾堆積高Mの値が「0」、即ち3つの籾センサ90が全てOFFになったかを調べて(ステップS35)、全てOFFになっていなければ、籾堆積高Mの値を籾堆積高Hの値に代入する処理を行って(ステップS31)リターンする。
【0099】
しかし、3つの籾センサ90が全てOFFになっていれば、タイマフラグTの状態を判断し(ステップS36)、このタイマフラグTがリセットされていれば、制御装置72が備えるタイマをスタートさせて、タイマフラグTをセットする(ステップS37)。また、下段の籾センサ90がONからOFFになった時点でグレンタンク8に堆積している穀粒が排出オーガ9の駆動によって全て排出されることが保証される予め定めた設定時間(全量排出時間)をタイマがカウントして終了したかを調べる(ステップS38)。
【0100】
そして、ここでタイマのカウントが終了していれば、前述の積算重量補正の演算において補正を許す条件が備わっているか否かを表す変数として設ける補正フラグFをセットすると共に、加算重量Dを「0」に戻す処理を行い(ステップS39)、籾堆積高Mの値を籾堆積高Hの値に代入する処理を行って(ステップS31)リターンする。
【0101】
従って、以上のステップを踏んでグレンタンク8から穀粒が全て排出されたことが補正フラグFのセットによって保証されていると、刈取作業を再開して3つの籾センサ90の全てがOFFになっていた状態(H=0)から下段の籾センサ90のみがONとなる状態(M=1)に遷移して、穀粒の堆積高さが高く変化した(M>H)ことが前述のステップS17において判断されると、ステップS18において補正フラグFがセットされているから積算重量Yの補正に繋がるステップS21以降に進むことができる。
【0102】
そのため、前述のように残留する穀粒の堆積高さを制御装置72において正確に知る術がないとして補正を除外していた制御内容に、このような例外を設けて積算重量Yの補正を行う機会を与えることによって、積算重量Yの補正を行う機会を増やして計測誤差を少なくして計測装置の精度を向上させることができる。
【0103】
なお、以上説明した積算重量補正のプログラムにおいて、グレンタンク8の穀粒堆積高さがステップS17において高くなったと判断してステップS27やステップS29の補正を行った後、例えば、機体振動等によって堆積した穀粒が崩れてそれまでONしていた籾センサ90がOFFになり、その後に再びOFFになっていた籾センサ90がONになると、ステップS17における高さ変化の判断において高くなったと判断されて再び補正のルーチンに入ってしまうという虞がある。
【0104】
しかし、本プログラムではステップS31において籾堆積高Mの値を籾堆積高Hの値に代入する処理を行い、また、ステップS17における高さ変化の判断において、高さが低く変化したり変わらない場合は、ステップS31において行うような籾堆積高Mの値を籾堆積高Hの値に代入する処理を行わずにそのままリターンさせる。そのため、前述のような場合に籾堆積高Hは最初に補正を行った際の籾堆積高Mの値のままであるから、ステップS17において高くなったと判断されることはなく、これにより短時間での少ない加算重量に基づく誤った積算重量Yの補正を行わないようにして、計測精度を良好に維持することができる。
【0105】
そして次に、係る計測装置を備えたコンバイン1を用いて圃場の収量を計測する場合について簡単に説明すると、先ず刈取作業を行う前に、モニタ22の計測画面に設ける収量リセットボタンを押して積算収量(積算重量Y)をゼロに戻し、また、刈取作物切替ボタンを押してこれから刈り取ろうとする作物を選択する(図21参照)。そして、ここで刈取作業を開始するが、説明の都合上グレンタンク8内に穀粒は残留しておらず、また、制御装置72もこれを把握していて前述の補正フラグFは既にセットされていたとする。
【0106】
そこで、脱穀クラッチと共に刈取クラッチを入れて刈取作業を開始すると、コンバイン1は圃場に立毛する穀稈を刈取装置6によって刈取り、また、刈取った穀稈を脱穀装置7に搬送して、この脱穀装置7によって脱粒させて選別した穀粒を揚穀装置21でグレンタンク8に移送して貯留する。そして、その際に制御装置72は収量センサ71の検出値を演算して、図24に示すように徐々に積算重量Yを増加させる。
【0107】
なお、コンバイン1は1行程の刈取を終了すると次行程の刈取りを行うために機体を旋回させる。そのため、この間のグレンタンク8への穀粒の流量は減ってきて、実際には図24に示すより複雑なカーブを描いて積算重量Yが変化するが、この点は大目に見て頂くとして、例えば、グレンタンク8に穀粒が略1/3程度溜り、下段の籾センサ90がONすると、制御装置72は穀粒の堆積高さが変化したとして、積算重量Yの補正を行う。
【0108】
そして、この場合に制御装置72はテーブルから取得して設定重量CはT(1)Kg、許容範囲AR1はR1(1)Kg、AR2はR2(1)Kg、加算重量Dは積算重量Yと同じY1Kgであるとすると、Bの値はB1となり、このB1値が予め定めた上下限値LD、LUを超えておらず、また、補正係数Aが当初1.00であったとすると、これ以後は、制御装置72は補正係数AをB1として演算する。また、補正重量Eは(T(1)-Y1)Kgで積算重量YをT(1)Kgに補正する。なお、グラフ上で破線で示す場合は、補正係数Aを1.00以下に下げると共に積算重量Yを減らす場合を示す。
【0109】
さらに、収穫した穀粒が増えてグレンタンク8に穀粒が略2/3程度溜り、中段の籾センサ90がONした場合にも、同様な補正係数Aの補正と積算重量Yの補正を行う。また、グレンタンク8に穀粒が満タンの略3/3程度溜り、上段の籾センサ90がONした場合に、加算重量Dが許容範囲にあると補正は行わず、補正係数Aと積算重量Yはそのままの値となる。
【0110】
そして、グレンタンク8が満タンになると刈取作業を中断して排出オーガ9を用いて機外のコンテナ等に穀粒を排出する。この場合にグレンタンク8内の穀粒は減少するが、グレンタンク8に穀粒が空になる前に排出作業が終了すると、グレンタンク8内に穀粒が残留して、この残留する穀粒量を計測する手段を制御装置72は持たないので、次に、積算重量Yを補正する機会はグレンタンク8に穀粒が略2/3程度溜り、中段の籾センサ90がONするまで待たなければならない。
【0111】
しかし、この場合にグレンタンク8に穀粒が空になるまで排出作業を行うと(全量排出時間参照)、制御装置72は刈取作業を再開してグレンタンク8に穀粒が略1/3程度溜り、下段の籾センサ90がONした場合から、積算重量Yを補正する機会を与えて、より計測誤差を少なくして計測精度を向上させることができる。
【0112】
なお、以上説明した収量計測装置において用いる例えば、図24に示すグレンタンク8の設定重量T(1)~T(3)は、作物を稲とする場合にその品種をコシヒカリ等の特定品種を対象に、また、収穫した穀粒の水分率が平均的な所定の水分率を備える籾の重量を秤等を用いて実測したり、或いは、グレンタンク8の体積から所定の計算式によって換算した机上の重量に基づくものである。
【0113】
従って、コンバイン1に本収量計測装置を備えて実刈取作業を行って得られる積算重量Yはあくまでも推定される重量を与えるものであって、より計測精度を向上させて計測誤差を少なくするためには、同時に備える水分センサユニット69を用いて収穫する穀粒の水分率から設定重量T(1)~T(3)等を変更したり、籾センサ90の数を増やして補正機会を増やしたり、或いは収量センサ71の流量計算式数を増やして、例えば作物の品種毎や水分率毎に計算式を設けるといったことも有効と考えられ、その意味からして本発明は実施形態の収量測定装置に限定するものではない。
【符号の説明】
【0114】
1 コンバイン
5 操縦部
6 刈取装置
7 脱穀装置
8 グレンタンク
9 排出オーガ
21 揚穀装置
22 モニタ(表示装置)
71 収量センサ
72 制御装置
90 籾センサ(レベルセンサ)
図1
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