(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091206
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】車載用フロアカーペットおよび車載用フロアカーペットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20230623BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20230623BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20230623BHJP
D06M 17/06 20060101ALI20230623BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B60N3/04 A
A47G27/02 102
D06M17/00 C
D06M17/00 H
D06M17/06
B60R13/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205827
(22)【出願日】2021-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】595032152
【氏名又は名称】大伸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】中川 利一
【テーマコード(参考)】
3B088
3B120
3D023
4L032
【Fターム(参考)】
3B088FA02
3B088FB05
3B088FB06
3B088FC01
3B120AA16
3B120AA19
3B120AA23
3B120AA24
3B120AB06
3B120BA02
3B120BA15
3B120BA28
3B120BA35
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3B120DA06
3B120DB01
3B120EA10
3B120EB11
3B120EB16
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3D023BA08
3D023BB12
3D023BC01
3D023BD04
4L032AA05
4L032AA06
4L032AA08
4L032AB01
4L032AB05
4L032AC01
4L032BD01
4L032BD03
4L032DA00
4L032EA08
(57)【要約】
【課題】車両本体の軽量化を促すことのできる車載用フロアカーペットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
車載用フロアカーペットは、複数のパイル糸を基布に固定して形成されたカーペット本体部と、網目シート状をなし、カーペット本体部に対してカーペット本体部の裏面側に配置された裏材部と、カーペット本体部および裏材部を互いに接着する接着部とを備え、接着部は、カーペット本体部と裏材部との間に介在する中間部と、中間部から、厚さ方向における裏材部の反カーペット本体部方向に向けて延在し、裏材部の網目の隙間を貫通して、網目の隙間から裏材部の反カーペット本体部方向に突出する突出部とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパイル糸を基布に固定して形成されたカーペット本体部と、
網目シート状をなし、前記カーペット本体部に対して前記カーペット本体部の裏面側に配置された裏材部と、
前記カーペット本体部および前記裏材部を互いに接着する接着部とを備え、
前記接着部は、
前記カーペット本体部と前記裏材部との間に介在する中間部と、
前記中間部から、厚さ方向における前記裏材部の反前記カーペット本体部方向に向けて延在し、前記裏材部の網目の隙間を貫通して、前記網目の隙間から前記裏材部の反前記カーペット本体部方向に突出する突出部とを有することを特徴とする、車載用フロアカーペット。
【請求項2】
前記裏材部は、グラスファイバー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルまたはポリカーボネートにより形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車載用フロアカーペット。
【請求項3】
前記接着部は、熱可塑性樹脂により形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の車載用フロアカーペット。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンであることを特徴とする、請求項3に記載の車載用フロアカーペット。
【請求項5】
前記接着部の突出部は、前記網目の隙間のそれぞれから突出する個々の部位が先窄まりとなる絞形状を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の車載用フロアカーペット。
【請求項6】
前記カーペット本体部および前記裏材部を当該車載用フロアカーペットの表裏に亘って貫通して形成されたグロメット係止部をさらに備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の車載用フロアカーペット。
【請求項7】
複数のパイル糸を基布に固定して形成された表皮材と、網目シート状に形成された裏面材と、前記表皮材および前記裏面材を互いに接着するための熱可塑性樹脂からなる接着剤とを準備し、
前記表皮材、前記接着剤および前記裏面材をこの順で重ね合わせるとともに、前記表皮材に対し、前記裏面材を、前記接着剤が熱溶融した状態で圧着させることにより、前記接着剤を、前記裏面材の網目の隙間を介して前記裏面材の反前記表皮材方向に突出させ、
前記表皮材に対する前記裏面材の圧着後、前記接着剤を硬化させることを特徴とする、車載用フロアカーペットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用フロアカーペットおよび車載用フロアカーペットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用フロアカーペットは、基布にパイル糸が植設されたカーペット本体部に対し、バッキング材を接合して構成される。
【0003】
車載用フロアカーペットのバッキング材は、SBS(スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体)またはフェルト材により形成されるのが一般的である。SBSにより形成されるバッキング材は、それ自体を熱溶融させた後、カーペット本体部に対して直に接合し、フェルト材により形成されるバッキング材は、ポリエチレンを接着剤として介在させ、ポリエチレンを熱溶融させて接合する。SBSまたはフェルト材により、車載用フロアカーペットを車室内のフロアパネル上に敷いた際の滑り止めが形成される。
【0004】
ここで、カーペット本体部は、ラテックスを接着剤として使用し、多数のパイル糸をラテックスにより基布に固定することにより形成される。その後、カーペット本体部に対し、SBSタイプのバッキング材が直に接合されるかまたはフェルト材タイプのバッキング材がポリエチレンを介して接合されて、車載用フロアカーペットが完成する。
【0005】
特許文献1には、カーペット布部と、裏面側布部と、カーペット布部および裏面側布部の間に、これらの布部を互いに接着するために配置された弾性部との3層からなる車載用フロアカーペットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、二酸化炭素排出量の削減を背景に、電気自動車の普及が益々進みつつあるが、車載用バッテリーの重量が大きいことから、車両本体に対する更なる軽量化の要請が存在する。
【0008】
従来の車載用フロアカーペットは、バッキング材の重量が比較的に大きく、このような要請に応えるのが困難である。例えば、SBSタイプのバッキング材の重量は、1.6kg/m2であり、フェルト材タイプのバッキング材の重量は、接着剤であるポリエチレンを含めると、550g/m2である。
【0009】
このような実情に鑑み、本発明は、より軽量に形成することが可能であり、車両本体の軽量化を促すことのできる車載用フロアカーペットおよびそのような車載用フロアカーペットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、車載用フロアカーペットであり、複数のパイル糸を基布に固定して形成されたカーペット本体部と、網目シート状をなし、カーペット本体部に対してカーペット本体部の裏面側に配置された裏材部と、カーペット本体部および裏材部を互いに接着する接着部とを備え、接着部は、カーペット本体部と裏材部との間に介在する中間部と、中間部から、厚さ方向における裏材部の反カーペット本体部方向に向けて延在し、裏材部の網目の隙間を貫通して、網目の隙間から裏材部の反カーペット本体部方向に突出する突出部とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明にあっては、裏材部が、グラスファイバー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルまたはポリカーボネートにより形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明にあっては、接着部が、熱可塑性樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明にあっては、熱可塑性樹脂が、ポリエチレンであることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明にあっては、接着部の突出部が、網目の隙間のそれぞれから突出する個々の部位が先窄まりとなる絞形状を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明にあっては、カーペット本体部および裏材部を当該車載用フロアカーペットの表裏に亘って貫通して形成されたグロメット係止部をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、車載用フロアカーペットの製造方法であり、複数のパイル糸を基布に固定して形成された表皮材と、網目シート状に形成された裏面材と、表皮材および裏面材を互いに接着するための熱可塑性樹脂からなる接着剤とを準備し、表皮材、接着剤および裏面材をこの順で重ね合わせるとともに、表皮材に対し、裏面材を、接着剤が熱溶融した状態で圧着させることにより、接着剤を、裏面材の網目の隙間を介して裏面材の反表皮材方向に突出させ、表皮材に対する裏面材の圧着後、接着剤を硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、カーペット本体部と網目シート状の裏材部とを、接着部を介して重ね合わせ、互いに接着した構成であるため、従来のように、重量の大きなSBSや、ポリエチレンにより接着固定されるフェルト材を、バッキング材として用いる必要がないため、裏材部および接着部の重量を削減し、車載用フロアカーペット全体の軽量化を促すことが可能である。例えば、フェルト材を使用した従来の車載用フロアカーペットに比べ、裏材部および接着部について、30%ほどの重量の削減が可能である。
【0018】
ここで、接着部が中間部と突出部とを備え、突出部が裏材部の網目の隙間を介して裏材部の反カーペット本体部方向に突出する構成であるため、突出部(具体的には、網目の隙間から突出する部分)を滑り止めとして機能させ、車両の走行時における車載用フロアカーペットのズレ、つまり、フロアパネルに対する前後左右方向への移動を抑制することが可能である。
【0019】
さらに、裏材部が網目シート状をなすことで、裏材部自体が平面方向の伸縮性を有するため、車載用フロアカーペットに対し、車両の走行時に、フロアパネルに取り付けられたグロメットから前後左右方向の引張力が作用したとしても、裏材部が、面方向において局所的に変形してこの引張力を吸収することで、変形が車載用フロアカーペットの全体または広い範囲に及ぶ事態を回避することが可能である。
その結果、車載用フロアカーペット全体が変形してしまう、という事態を有効に回避でき、車載用フロアカーペットの品質を経年時においても維持することが可能となる。
【0020】
さらに、車載用フロアカーペットの裏面側に網目シート状の裏材部が表出する構成であるため、外観上、車載用フロアカーペットの裏面が緻密な柄を有する印象を与えることができ、外観品質を良好なものとすることが可能である。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、車載用フロアカーペットの軽量化を促すうえで適切な裏材部を提供することが可能である。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、カーペット本体部および裏材部に対する適切な接着性と、裏材部の網目の隙間を通過させる際の流動性との両立を実現する接着部を提供することが可能である。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、接着性と流動性との両立を図るうえでより適切な裏材部を提供することが可能である。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、接着部の突出部(具体的には、突出部のうち、裏材部が有する網目の隙間のそれぞれから突出する個々の部位)が先窄まりとなる絞形状を有することで、フロアパネルの表面に対して突出部を良好に係止させ、フロアパネルに対する滑り止めの効果を適切に得ることが可能である。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、フロアパネルに備わるグロメットをグロメット係止部に係止させ、車載用フロアカーペットのフロアパネルに対するズレを抑制することが可能である。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、網目シート状に形成された裏面材を採用し、表皮材と裏面材とを、熱可塑性樹脂からなる接着剤を介して互いに重ね合わせて形成することで、裏面材および接着剤の重量を削減し、車載用フロアカーペット全体の軽量化を促すことが可能である。
【0027】
ここで、熱溶融した状態にある接着剤を、裏面材の網目の隙間を介して裏面材の反表皮材方向に突出させ、その後、硬化させることで、硬化後の接着剤のうち、網目の隙間から突出する部分を滑り止めとして機能させ、車両の走行時における車載用フロアカーペットのズレを抑制することが可能である。
【0028】
さらに、裏面材が網目シート状であることで、裏面材自体に平面方向の伸縮性を持たせ、車載用フロアカーペットに対する前後左右方向の引張力の作用に対し、裏面材の局所的な変形によりこの引張力を吸収し、変形が車載用フロアカーペット全体に及ぶ事態を回避することが可能である。
【0029】
さらに、接着剤が硬化した後の車載用フロアカーペットにおいてその裏面側に網目シート状の裏面材が表出するため、外観上、車載用フロアカーペットの裏面が緻密な柄を有する印象を与えることができ、車載用フロアカーペットの外観品質を良好なものとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る車載用フロアカーペットの外観を模式的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、同上実施形態に係る車載用フロアカーペットの(a)平面図、(b)底面図および(c)側面図である。
【
図3】
図3は、同上実施形態に係る車載用フロアカーペットの層構造を示す断面図であり、
図3(b)は、この層構造を拡大視により示す。
【
図4】
図4は、同上実施形態に係る車載用フロアカーペットの製造工程を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図5は、同上実施形態に係る車載用フロアカーペットの引張試験における変形状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る車載用フロアカーペット101の外観を模式的に示す概略図である。
【0033】
図2は、本実施形態に係る車載用フロアカーペット101の(a)カーペット本体部1側(つまり、カーペットの表面101s側)からみた平面図、(b)裏材部2側(つまり、カーペットの裏面101r側)からみた底面図および(c)側面図である。
【0034】
図1は、車載用フロアカーペット101を上下裏返した状態で示し、換言すれば、車載用フロアカーペット101の表面101sを紙面において下方に、裏面101rを紙面において上方に、夫々示す。これは、本実施形態に係る車載用フロアカーペット101の特徴である裏材部2の外観、つまり、裏材部2の形状が網目シート状であることを示すためである。
【0035】
図1は、車載用フロアカーペット101を矩形状に裁断した状態で示すが、車載用フロアカーペット101は、運転席における実際のフロア形状に応じた適宜の形状に形成することが可能であり、これにより、運転席のフロアパネル上に収まりよく敷設するとともに、アクセルペダル、ブレーキペダルおよびパーキングブレーキペダル等、各種の操作ペダルとの干渉を回避することができる。
【0036】
図2を適宜に参照しながら、
図1に基づき、本実施形態に係る車載用フロアカーペット101の構成について説明する。
【0037】
本実施形態に係る車載用フロアカーペット101は、カーペット本体部1と、裏材部2と、接着部3とを備える。
【0038】
カーペット本体部1は、多数のパイル糸11を、ラテックスを接着剤として基布12に固定して形成され、パイル糸11により、車載用フロアカーペット101の表面101sが形成される。本実施形態において、カーペット本体部1自体の構成は、フロアカーペットまたはフロアマットとして従来一般的に知られたもの(例えば、タフテッドカーペット)に採用されるものと同一であってもよいため、その具体的な説明を省略する。
【0039】
裏材部2は、
図2(b)に示されるように、網目シート状をなし、カーペット本体部1に対して車載用フロアカーペット101の裏面101r側に配置される。本実施形態において、裏材部2は、ポリエステルにより形成され、具体的には、ポリエステルを線ないし糸状にした複数の部材を、互いに交差する方向、例えば、縦および横方向に編み合わせることにより形成される。
【0040】
裏部材2に適用される素材は、ポリエステルに限定されるものではなく、ポリエステルのほか、グラスファイバー、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンまたはポリカーボネート等、適宜のものを採用することが可能である。
【0041】
接着部3は、カーペット本体部1および裏材部2を互いに接着するものであり、本実施形態では、熱可塑性樹脂により形成される。本実施形態に係る接着部3に適用可能な熱可塑性樹脂として、ポリエチレンを例示することができる。
【0042】
図3は、本実施形態に係る車載用フロアカーペット101の層構造を示す断面図である。
図3(a)は、車載用フロアカーペット101の構成を
図2(b)のx-x線に沿った断面により示し、
図3(b)は、同図(a)に二点鎖線により示す枠Aに囲まれた部分を拡大して示す。
【0043】
図3を参照して、本実施形態に係る車載用フロアカーペット101、特に接着部3の構成についてさらに説明する。
【0044】
接着部3は、中間部31と、突出部32とを有する。
【0045】
中間部31は、接着部3のうち、車載用フロアカーペット101または接着部3自体の厚さ方向Dthにおいて、カーペット本体部1と裏材部2との間に介在する部分であり、車載用フロアカーペット101の平面方向Dplに延在して、全体としてシート状をなす。本実施形態において、カーペット本体部1と裏材部2とを接着する接合強度は、主にこの中間部31により発揮される。
【0046】
突出部32は、中間部31に対し、同一の素材(本実施形態では、ポリエチレン)により一体的に形成され、中間部31から、厚さ方向Dthにおける裏材部2の反カーペット本体部方向に向けて延在する。ここで、「反カーペット本体部方向」とは、裏材部2を基準としてカーペット本体部1とは反対側に向く方向をいい、
図3(b)に示す例では、図中、裏材部2に対して上向きの方向がこれに相当する。
【0047】
突出部32は、裏材部2の網目の隙間gを貫通して、網目の隙間gから裏材部2の反カーペット本体部方向に僅かに突出する。本実施形態において、突出部32は、網目の隙間gのそれぞれから突出する個々の部位が先窄まりとなる絞形状を有する。
【0048】
図3(b)は、説明のため、全ての突出部32が明確な絞形状を有しており、網目の隙間gから突出する場合を示すが、絞形状を有する突出部32および中間部31から網目の隙間gを貫通するほどに延びる突出部32は、接着部3全体に備わる突出部32のうち、一部であってもよい。
【0049】
図4は、本実施形態に係る車載用フロアカーペット101の製造工程を模式的に示す説明図である。
【0050】
以下の説明では、先に述べた車載用フロアカーペット101の対応する部分を構成する要素ないし素材に、
図1~3に示すのと同一の符号を付す。
【0051】
車載用フロアカーペット101の製造工程は、次の3つの工程に大別される。
(A)表皮材1、裏面材2および接着剤3を準備する第1工程
(B)表皮材1、接着剤3および裏面材2をこの順で重ね合わせて積層体を構成するとともに、表皮材1に対し、裏面材2を、接着剤3が熱溶融した状態で圧着させる第2工程
(C)表皮材1に対する裏面材2の圧着後、接着剤3を硬化させる第3工程
【0052】
本実施形態において、第1工程は、表皮材1が巻き付けられたカーペット材ロールR1および裏面材2が巻き付けられたバッキング材ロールR2を設置するとともに、押出機201を運転可能な状態に置く工程として具現される。表皮材1は、車載用フロアカーペット101において、「カーペット本体部」を形成し、裏面材2は、「裏材部」を形成するものである。
【0053】
本実施形態に係る車載用フロアカーペット101の製造工程に適用可能な押出機201として、Tダイ型ラミネート押出機を例示することが可能である。押出機201は、例えば、粒ないしペレット状で流通に付される接着剤を受容する収容部(図示せず)を有し、収容部に収容されている接着剤を内蔵型の加熱器202に供給し、加熱して溶融させる。そして、この接着剤を、先端のノズル203を介して熱溶融したままの状態で吐出する。接着剤3は、車載用フロアカーペット101において、「接着部」を形成するものであり、熱可塑性樹脂、本実施形態では、ポリエチレンからなる。
【0054】
第2工程は、カーペット材ロールR1から供給される表皮材1と、バッキング材ロールR2から供給される裏面材2と、押出機201から供給される接着剤3とを互いに重ね合わせて積層体とし、一対の圧迫ローラ、つまり、カーペット材ロールR1側に配置され、表皮材1に接する第1圧迫ローラR31と、バッキング材ロールR2側に配置され、裏面材2に接する第2圧迫ローラR32とにより、積層体をその表裏ないし上下両側から圧迫する工程として具現される。
【0055】
本実施形態では、カーペット材ロールR1と第1圧迫ローラR31との間に中間ローラR4が設けられ、カーペット材ロールR1から繰り出された表皮材1は、中間ローラR4による転向後、第1圧迫ローラR31に供給される。
【0056】
そして、第1および第2圧迫ローラR31、R32の間で、表皮材1に対し、裏面材2が熱溶融した状態にあるポリエチレンからなる接着剤3を介して押し付けられることとなり、接着剤3の一部が裏面材2の網目の隙間gに押し込まれ、網目の隙間gを通過して、裏面材2の反カーペット本体部方向に突出する。
【0057】
第3工程は、第2工程後、表皮材1、裏面材2および接着剤3の積層体を冷却する工程として具現される。これにより、接着剤3が硬化し、車載用フロアカーペット101が完成する。
【0058】
ここで、第2工程で積層体を圧迫する際の力の大きさは、溶融状態にある接着剤3を、その流動性により裏面材2の網目の隙間gを介して裏面材2の反カーペット本体部方向に突出させることができる程度とする。裏面材2の網目の隙間gを介して裏面材2に接する圧迫ローラR32の押圧面に達した接着剤3に対して力がさらに加わることで、接着剤3を網目の隙間gから適度に突出させ、硬化後の接着部3に先端が絞形状をなす突出部32を形成することが可能である。
【0059】
本実施形態では、表皮材1、接着剤3および裏面材2をこの順に重ね合わせて積層体とし、この積層体を表裏両側から圧迫ローラR31、R32により圧迫する。押出機201から接着剤3を溶融状態で吐出させ、表皮材1および裏面材2とともに積層させることで、表皮材1に対し、裏面材2を溶融状態にある接着剤3を介して押し付けることが可能である。積層体を形成する際の手順は、これに限定されるものではなく、表皮材1の裏面上に接着剤3を積層させた後、裏面材2を重ね合わせたり、裏面材2の片面上に接着剤3を積層させた後、表皮材1を重ね合わせたりしてもよい。
【0060】
本実施形態に係る車載用フロアカーペット101は、以上の構成を有し、本実施形態により得られる効果について、以下に説明する。
【0061】
第1に、車載用フロアカーペット101は、カーペット本体部1と網目シート状の裏材部2とを、接着剤3を介して重ね合わせ、ポリエチレンからなる接着剤3により接合すると同時に、裏材部2を構成する網目シート状の隙間gから接着剤3を溶出状態で固化させることにより多数の小さな突出部32を形成することができるため、従来のように、重量の大きなSBSや、ポリエチレンにより接合するフェルト材を使用する必要がなく、その結果、裏材部2および接着部3の重量を削減でき、車載用フロアカーペット101全体の軽量化を図ることが可能となる。
【0062】
例えば、フェルト材を使用した従来の車載用フロアカーペットに比べ、接着部3を形成するための接着剤自体の使用量(重量)に大きな差は生じないものの、裏材部2の重量が削減されることで、裏材部2および接着部3について、30%ほどの重量の削減が可能である。
【0063】
一例として、フェルト材/ポリエチレンタイプのバッキング材の重量は、接着剤であるポリエチレンを含めて550g/m2(フェルト材が300g/m2、接着剤が250g/m2)であるのに対し、本実施形態では、裏材部2および接着部3の合計で350g/m2(裏材部2(ポリエステル)が100g/m2、接着部3(ポリエチレン)が250g/m2)である。
【0064】
ここで、接着部3が中間部31と突出部32とを備え、突出部32が裏材部2の網目の隙間gを介して裏材部2の反カーペット本体部方向に突出する構成であるため、突出部32(具体的には、網目の隙間gから突出する部分)を滑り止めとして機能させ、車両の走行時における車載用フロアカーペット101のズレ、つまり、フロアパネルに対する前後左右方向への移動を抑制することが可能である。
【0065】
さらに、裏材部2が網目シート状をなすことで、裏材部2自体が平面方向(
図3(b)に示す平面方向Dplと一致する)の伸縮性を有するため、車載用フロアカーペット101に対し、車両の走行時に、フロアパネルに取り付けられたグロメットから前後左右方向の引張力が作用したとしても、裏材部2が局所的に変形してこの引張力を吸収することで、変形が車載用フロアカーペット101全体に及び、車載用フロアカーペット101にフロアパネルからの浮きが生じる事態を回避することが可能である。
【0066】
図5は、本実施形態に係る車載用フロアカーペット101の引張試験における変形状態を示す説明図である。
【0067】
車載用フロアカーペット101は、積層体全体、つまり、カーペット本体部1、接着部3および裏材部2を車載用フロアカーペット101の表裏に亘って貫通して形成されたグロメット係止部105を備える。グロメット係止部105が備わることで、車載用フロアカーペット101を実際にフロアパネル上に設置する際に、フロアパネルに取り付けられたグロメットをグロメット係止部105に係止させ、車載用フロアカーペット101のフロアパネルに対するズレを抑制することが可能である。
【0068】
引張試験では、引張試験機301を準備するとともに、グロメット係止部105に実際のグロメットに代わるフック106を係止させ、このフック106を介してグロメット係止部105にかかる力を、引張試験機301により計測する。
図5は、グロメット係止部105にかかる力の方向を、矢印aにより示す。
【0069】
本実施形態によれば、フック106を介してグロメット係止部105に矢印aの方向の力がかけられた場合に、網目シート状をなす裏材部2が局所的に変形することによりこの引張力を吸収し、変形が車載用フロアカーペットの全体または広い範囲に波及するのを回避することが可能である。
【0070】
さらに、車載用フロアカーペット101の裏面101r側に網目シート状の裏材部2が表出する構成であるため、外観上、車載用フロアカーペット101の裏面101rが緻密で、整った柄を有する印象を与えることができ、車載用フロアカーペット101の外観品質の向上を図ることが可能である。
【0071】
また、裏材部2がポリエステルにより形成されることで、裏材部2に必要な強度を確保しながら、その重量の削減を図ることが可能であり、車載用フロアカーペット101の軽量化を促すうえで適切な裏材部2を提供することができる。ポリエステル以外に、グラスファイバー、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンまたはポリカーボネートによっても同様の効果を得ることが可能である。
【0072】
さらに、接着部3が熱可塑性樹脂により形成されることで、カーペット本体部1および裏材部2に対する適切な接着性と、裏材部2の網目の隙間gを通過させる際の流動性との両立を実現することが可能である。そして、熱可塑性樹脂としてポリエチレンを採用することで、接着性と流動性との両立を図るうえでより適切な裏材部2を提供することが可能である。
【0073】
また、接着部3の突出部32(具体的には、突出部32のうち、裏材部2が有する網目の隙間gのそれぞれから突出する個々の部位)が先窄まりとなる絞形状を有することで、フロアパネルの表面に対して突出部32を良好に係止させ、フロアパネルに対する滑り止めの効果を適切に得ることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
101…車載用フロアカーペット
101s…車載用フロアカーペットの表面
101r…車載用フロアカーペットの裏面
1…カーペット本体部(表皮材)
11…パイル糸
12…基布
2…裏材部(裏面材)
3…接着部(接着剤)
31…中間部
32…突出部
g…網目の隙間
Dth…厚さ方向
Dpl…平面方向
R1…カーペット材ロール
R2…バッキング材ロール
R31…第1圧迫ローラ
R32…第2圧迫ローラ
R4…中間ローラ
105…グロメット係止部
106…フック
201…押出機
202…加熱器
203…ノズル
301…引張試験機
302…重り