(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091263
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
F16J 15/38 20060101AFI20230623BHJP
F16J 15/36 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F16J15/38
F16J15/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205915
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 宏起
(72)【発明者】
【氏名】原 勇気
(72)【発明者】
【氏名】冨田 優記
【テーマコード(参考)】
3J041
【Fターム(参考)】
3J041AA01
3J041BB02
3J041BB03
3J041DA10
(57)【要約】
【課題】回転軸が傾斜しても、シール性能の低下を抑えることが可能となるメカニカルシールを提供する。
【解決手段】メカニカルシール10は、回転密封環16を有する回転ユニット11と、静止密封環17を有する静止ユニット12と、回転ユニット11に取り付けられる軸受13とを備える。静止ユニット12は、回転機器7に取り付けられる第一ブロック31と、静止密封環17を含む第二ブロック32と、第二ブロック32の回転を防止するとともに径方向変位を許容して第一ブロック31と第二ブロック32とを連結する連結部33と、密封流体が第一ブロック31と第二ブロック32との間を通じて機外側へ漏れるのを防ぐ弾性シール部材34と、弾性シール部材34が機内側から機外側に押される力に抗する対抗部35とを有する。軸受13は、第二ブロック32に対して回転ユニット11を回転自在に支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転密封環を有し回転軸と一体回転可能である回転ユニットと、
前記回転密封環との間でシールするための静止密封環を有する静止ユニットと、
前記回転ユニットまたは前記回転軸に取り付けられる軸受と、
を備え、
前記静止ユニットは、
回転機器に取り付けられる第一ブロックと、
前記静止密封環を含む第二ブロックと、
前記第一ブロックに対する前記第二ブロックの回転を防止するとともに径方向変位を許容して前記第一ブロックと前記第二ブロックとを連結する連結部と、
前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間に設けられ前記回転機器の機内側の密封流体が前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間を通じて機外側へ漏れるのを防ぐ弾性シール部材と、
前記弾性シール部材が前記回転機器の機内側から機外側に押される力に抗する対抗部と、
を有し、
前記軸受は、前記回転ユニットまたは前記回転軸に取り付けられ前記第二ブロックに対して前記回転ユニットまたは前記回転軸を回転自在に支持する、
メカニカルシール。
【請求項2】
前記弾性シール部材は、径方向に伸縮可能とするベローズ形状を有する、請求項1に記載のメカニカルシール。
【請求項3】
前記対抗部は、前記静止ユニットの一部と前記弾性シール部材との間に介在する環状の空気ばねである、請求項1または請求項2に記載のメカニカルシール。
【請求項4】
前記弾性シール部材を第一弾性シール部材とした場合に、
前記対抗部は、
前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間であって、前記第一弾性シール部材よりも機外側に前記第一弾性シール部材と間隔をあけて設けられている第二弾性シール部材と、
前記第一弾性シール部材と前記第二弾性シール部材との間に形成され加圧流体が供給される流体室と、を有して構成される、請求項1または請求項2に記載のメカニカルシール。
【請求項5】
前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの一方のブロックが、前記弾性シール部材を取り付ける取り付け部を有し、
前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの他方のブロックが、前記弾性シール部材が接触するシール面を有し、
前記他方のブロックは、前記シール面として、前記弾性シール部材の一部が前記回転機器の機外側から機内側に向かって接触する第一シール面を有する、
請求項3に記載のメカニカルシール。
【請求項6】
前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの一方のブロックが、前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材を取り付ける取り付け部を有し、
前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの他方のブロックが、前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材が接触するシール面を有し、
前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材は、径方向に弾性圧縮変形した状態となって設けられており、
前記他方のブロックは、前記シール面として、
前記第一弾性シール部材が前記回転機器の機外側から機内側に向かって接触する第一シール面と、
前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材が径方向に接触する第二シール面と、を有する、
請求項4に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
各種回転機器において、その機器ケーシングと回転軸との間で内部の流体をシールする装置として、メカニカルシールが知られている(例えば、特許文献1参照)。メカニカルシールは、回転軸と一体回転する回転密封環と、前記回転密封環との間でシールするための静止密封環とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メカニカルシールでは、回転密封環の回転シール面と静止密封環の静止シール面とが、相互で所望の姿勢に保たれることで、安定したシール性能が得られる。
【0005】
例えば回転軸が振れ回りするなどして、回転軸が設計回転中心線に対して傾斜する場合、回転密封環は回転軸と一体となって傾斜する。回転軸の傾斜角度が許容範囲を越えて大きくなると、固定状態にある静止密封環に対して回転密封環が追従できず、静止シール面と回転シール面との開きが大きくなる。その結果、回転機器の機内側の密封流体が機外側へ漏れる可能性がある。特に回転軸が高速回転する条件で、許容範囲を越えて傾斜する場合、漏れが生じやすい。
【0006】
なお、前記特許文献1に開示のメカニカルシールの場合、回転ユニットと静止ユニットとの間に深溝玉軸受が設けられている。この深溝玉軸受によって、静止ユニットに対して回転ユニットおよび回転軸は傾斜不能となる。その結果、回転軸が大きく傾斜するような力がメカニカルシールに作用すると、静止シール面と回転シール面との間の接触力(押し付け力)が周方向に不均一となることなどが原因で、回転抵抗が極めて高くなって発熱が生じたり、想定外の箇所で回転ユニットの一部が静止ユニットに接触したりする可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、回転軸が傾斜しても、シール性能の低下を抑えることが可能となるメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のメカニカルシールは、回転密封環を有し回転軸と一体回転可能である回転ユニットと、前記回転密封環との間でシールするための静止密封環を有する静止ユニットと、前記回転ユニットまたは前記回転軸に取り付けられる軸受と、を備え、前記静止ユニットは、回転機器に取り付けられる第一ブロックと、前記静止密封環を含む第二ブロックと、前記第一ブロックに対する前記第二ブロックの回転を防止するとともに径方向変位を許容して前記第一ブロックと前記第二ブロックとを連結する連結部と、前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間に設けられ前記回転機器の機内側の密封流体が前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間を通じて機外側へ漏れるのを防ぐ弾性シール部材と、前記弾性シール部材が前記回転機器の機内側から機外側に押される力に抗する対抗部と、を有し、前記軸受は、前記回転ユニットまたは前記回転軸に取り付けられ前記第二ブロックに対して前記回転ユニットまたは前記回転軸を回転自在に支持する。
【0009】
前記メカニカルシールによれば、回転軸が設計回転中心線に対して傾斜して回転すると、その回転軸と一緒に回転ユニットが傾斜する他に、前記軸受によって静止ユニットのうちの第二ブロックも傾斜する。つまり、回転軸が傾斜すると、回転ユニットの回転密封環と静止ユニットが有する第二ブロックの静止密封環とが共に傾斜する。このため、回転密封環と静止密封環との相対的な姿勢が維持され、回転密封環と静止密封環との間の開きを防ぐことが可能となる。よって、シール性能の低下が抑えられる。
【0010】
さらに、静止ユニットが第一ブロックと第二ブロックとに別れているが、これらの間を通じて回転機器の機内側の密封流体が漏れるのを、弾性シール部材が防ぐ。機内側の密封流体の圧力が比較的高い場合であっても、対抗部が弾性シール部材を支え、弾性シール部材の機能が維持される。
【0011】
(2)好ましくは、前記弾性シール部材は、径方向に伸縮可能とするベローズ形状を有する。この構成により、回転軸の傾斜によって静止ユニットの第二ブロックが径方向の成分を有して変位しても、弾性シール部材は前記変位に追従しやすく、弾性シール部材の機能が維持される。
【0012】
(3)好ましくは、前記対抗部は、前記静止ユニットの一部と前記弾性シール部材との間に介在する環状の空気ばねである。前記空気ばねによって、回転機器の機内側の密封流体によって弾性シール部材が機外側に押される力に抗する構成が得られる。回転軸が傾斜すると、第一ブロックと第二ブロックとの間であって、前記対抗部が設けられる空間の体積が変化する。空気ばねは前記体積の変化に追従しやすく、弾性シール部材を支え、弾性シール部材の機能が維持される。
【0013】
(4)または、好ましくは、前記弾性シール部材を第一弾性シール部材とした場合に、前記対抗部は、前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間であって、前記第一弾性シール部材よりも機外側に前記第一弾性シール部材と間隔をあけて設けられている第二弾性シール部材と、前記第一弾性シール部材と前記第二弾性シール部材との間に形成され加圧流体が供給される流体室と、を有して構成される。前記流体室に加圧流体が供給されることで、回転機器の機内側の密封流体によって第一弾性シール部材が機外側に押される力に抗する構成が得られる。
【0014】
(5)前記(3)のメカニカルシールにおいて、好ましくは、前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの一方のブロックが、前記弾性シール部材を取り付ける取り付け部を有し、前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの他方のブロックが、前記弾性シール部材が接触するシール面を有し、前記他方のブロックは、前記シール面として、前記弾性シール部材の一部が前記回転機器の機外側から機内側に向かって接触する第一シール面を有する。
回転機器の機内側の密封流体によって弾性シール部材が機外側に押されると、その弾性シール部材に対して前記空気ばねは機外側から機内側に向かって押し返す作用が生じる。このため、前記第一シール面の構成によれば、空気ばねの前記作用によって弾性シール部材と第一シール面との間のシール性能が維持され、密封流体の漏れを効果的に防止することが可能となる。
【0015】
(6)前記(4)のメカニカルシールにおいて、好ましくは、前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの一方のブロックが、前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材を取り付ける取り付け部を有し、前記第一ブロックと前記第二ブロックとのうちの他方のブロックが、前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材が接触するシール面を有し、前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材は、径方向に弾性圧縮変形した状態となって設けられており、前記他方のブロックは、前記シール面として、前記第一弾性シール部材が前記回転機器の機外側から機内側に向かって接触する第一シール面と、前記第一弾性シール部材および前記第二弾性シール部材が径方向に接触する第二シール面と、を有する。
【0016】
回転機器の機内側の密封流体によって第一弾性シール部材が機外側に押されると、その第一弾性シール部材を、前記流体室の加圧流体により機外側から機内側に向かって押し返す作用が生じる。このため、前記第一シール面によれば、前記流体室による前記作用によって第一弾性シール部材と第一シール面との間のシール性能が維持され、密封流体の漏れを効果的に防止することが可能となる。
さらに、回転軸が傾斜すると、静止ユニットの第二ブロックも傾斜し、第一ブロックとの径方向の距離が僅かに大きくなる領域が生じる。その領域においても、前記構成によれば、第一弾性シール部材および第二弾性シール部材は径方向の接触力を残して第二シール面に接触することが可能となる。このため、流体室の加圧流体が機内側および機外側に流出することを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回転軸が傾斜しても、メカニカルシールのシール性能が低下するのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態に係るメカニカルシールの断面図である。
【
図2】
図1に示すメカニカルシールの一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】連結部およびその周囲を軸方向から見た説明図である。
【
図4】
図1に示すメカニカルシールの断面図である(回転軸が傾斜した状態)。
【
図5】第二実施形態に係るメカニカルシールの断面図である。
【
図6】
図5に示すメカニカルシールの断面図である(回転軸が傾斜した状態)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔メカニカルシール全体について〕
図1は、第一実施形態に係るメカニカルシール10を示す断面図である。メカニカルシール10は、ポンプなどの回転機器7に用いられる。回転機器7は、回転軸8と、その回転軸8を包囲する機器ケーシング9とを備える。メカニカルシール10は、回転軸8と機器ケーシング9との間において、回転機器7の内部の密封流体をシールする。回転軸8は、回転機器7が有する図外の軸受によって回転可能に支持されているが、例えばその軸受の劣化などによって、設計回転中心線となる後述の基準軸線Lに対して傾斜して回転することがある(
図4参照)。
図4は、回転軸8が傾斜した状態を示すメカニカルシール10の断面図である。
【0020】
本開示の発明における方向について定義する。
図1では、回転軸8の軸線が、機器ケーシング9の中心線となる基準軸線Lと一致した状態を示している。基準軸線Lに沿った方向及びその基準軸線Lに平行な方向を「軸方向」と定義する。その軸方向に関して、回転機器7の内部側(
図1の右側)が軸方向一方側であり、これを「機内側」と称する。これに対して、回転機器7の外部側(
図1の左側)が軸方向他方側であり、これを「機外側」と称する。
【0021】
基準軸線Lに直交する方向を「径方向」と定義する。基準軸線Lを中心とする円に沿った方向を「周方向」と定義する。つまり、回転軸8の回転方向が周方向となる。本開示の発明が備える各構成についての方向は、特に説明しない限り、回転軸8の軸線が、機器ケーシング9の基準軸線Lと一致した状態として定義される。また、この一致した状態を基準状態と称する。
【0022】
メカニカルシール10は、機器ケーシング9および回転軸8に取り付けられる。メカニカルシール10は、機内側の密封流体が機外側へ流出することを防ぐ。そのために、メカニカルシール10は、回転密封環16と静止密封環17とを備える。
図2は、
図1に示すメカニカルシール10の一部を拡大して示す断面図である。回転密封環16と静止密封環17との間が、密封流体の漏洩を防ぐシール部18となる。
【0023】
図2において、回転密封環16は、機外側に環状の回転シール面16aを有する。静止密封環17は、機内側に環状の静止シール面17aを有する。本実施形態では、回転シール面16aと静止シール面17aとが対向する(接触する)シール部18の径方向外側及び軸方向一方側が、機内側の領域となる。シール部18の径方向内側及び軸方向他方側が、機外側の領域となる。なお、本開示の発明の範囲内で、メカニカルシール10は他の型式であってもよい。
【0024】
図1および
図2に示すように、メカニカルシール10は、回転密封環16を有する回転ユニット11と、静止密封環17を有する静止ユニット12と、軸受13とを備える。回転ユニット11は、回転軸8と一体回転可能であり、全体として環状または筒状である。静止ユニット12は、回転機器7(機器ケーシング9)に取り付けられる。静止ユニット12は、回転ユニット11の径方向外側に設けられており、全体として環状または筒状である。
【0025】
〔回転ユニット11について〕
図1において、回転ユニット11は、スリーブ21、固定リング22、リテーナ23、保持リング24、および回転密封環16を有する。スリーブ21は、筒状であり、回転軸8に外嵌して設けられる。固定リング22は、環状であり、スリーブ21に固定されている。セットスクリュ29によって、固定リング22およびスリーブ21は回転軸8に固定される。
【0026】
リテーナ23は、筒状であり、スリーブ21に外嵌して設けられている。リテーナ23は、移動不能となってスリーブ21に取り付けられている。保持リング24は、環状であり、回転密封環16を保持する。保持リング24は、リテーナ23の一部と軸方向について間隔をあけてリテーナ23の他部に外嵌して設けられている。保持リング24とリテーナ23との間に、周方向の複数箇所において、軸部を有する連結部材25が設けられている。連結部材25は、保持リング24とリテーナ23との間でトルク伝達可能とし、かつ、保持リング24がリテーナ23に対して軸方向に移動可能として、保持リング24とリテーナ23とを連結している。
【0027】
保持リング24とリテーナ23との間に、周方向の複数箇所において、ばね26が設けられている。ばね26は、保持リング24および回転密封環16を静止密封環17側に向かって押す。スリーブ21と回転軸8との間はOリング27によってシールされている。スリーブ21とリテーナ23との間はOリング30によってシールされている。保持リング24とリテーナ23との間はOリング28によってシールされている。
【0028】
以上の構成により、スリーブ21、固定リング22、リテーナ23、保持リング24、および回転密封環16を含む回転ユニット11は、回転軸8と一体回転可能となる。回転軸8が基準軸線Lに対して傾斜すると、回転密封環16を含む回転ユニット11は、回転軸8と一体となって同じ傾斜角度で傾く。以上のように、回転ユニット11は、回転密封環16を有し、回転軸8と一体回転可能である。
【0029】
〔静止ユニット12について〕
静止ユニット12は、回転密封環16との間でシールするための静止密封環17を有する。
図1に示すように、静止ユニット12は、第一ブロック31と、第二ブロック32と、連結部33と、弾性シール部材34と、対抗部35とを有する。静止密封環17は、第二ブロック32に含まれる。
【0030】
第一ブロック31は、回転機器7の機器ケーシング9に取り付けられる。第一ブロック31は、筒状であり、機器ケーシング9に対して変位しない固定ブロックである。本実施形態では、第一ブロック31は、機器ケーシング9に固定される第一固定部材41と、第一固定部材41の機外側に固定される第二固定部材42とを有する。
【0031】
第二ブロック32は、第一ブロック31の径方向内側に設けられる。第二ブロック32は、連結部33の機能によって、第一ブロック31に対して径方向の成分を有して変位可能である可動ブロックとなる。本実施形態では、第二ブロック32は、静止密封環17と、静止密封環17を保持する環状のホルダ43とを有する。静止密封環17は、ホルダ43に対して回転不能となって取り付けられている。
【0032】
連結部33は、第一ブロック31と第二ブロック32とを連結する。
図3は、連結部33およびその周囲を軸方向から見た説明図である。
図2および
図3に示すように、連結部33は、突出部45とガイド部46とを有する。突出部45は、ホルダ43の軸方向の端部から突出して設けられている軸状の部分である。
【0033】
ガイド部46は、第二固定部材42の機外側に取り付けられている。ガイド部46は切り欠き形状部47を有する(
図3参照)。具体的に説明すると、ガイド部46は、第二固定部材42に取り付けられるベース部49と、周方向で隣接する一対の爪部48,48を有する。一対の爪部48,48はベース部49から突出している。ベース部49と一対の爪部48,48とによって囲まれる範囲が、切り欠き形状部47となる。切り欠き形状部47に突出部45が設けられる。
【0034】
この構成により、第二ブロック32が周方向に回転しようとすると、突出部45が、ガイド部46の爪部48と周方向について接触する。このため、第二ブロック32の回転が規制される。なお、ガイド部46が取り付けられている第一ブロック31は、機器ケーシング9に固定されているため、周方向に回転しない。
【0035】
また、前記基準状態で、突出部45とガイド部46のベース部49とは、径方向について離れていて非接触である。さらに、前記基準状態から回転軸8が傾斜すると、後述するが、第二ブロック32も同様に傾斜する。第二ブロック32が傾斜しても、突出部45とベース部49とは径方向について非接触である。このような連結部33の構成により、第二ブロック32は、第一ブロック31に対して径方向の成分を有して変位可能となる。
【0036】
以上より、連結部33は、第一ブロック31に対する第二ブロック32の回転を防止するとともに、第一ブロック31に対する第二ブロック32の径方向変位を許容して、第一ブロック31と第二ブロック32とを連結する。
【0037】
なお、本実施形態では、第一ブロック31にガイド部46が設けられ、第二ブロック32に突出部45が設けられる場合について説明したが、これとは反対の構成であってもよい。つまり、連結部33は、第一ブロック31と第二ブロック32とのうちの一方のブロックの一部から突出して設けられている突出部45と、第一ブロック31と第二ブロック32とのうちの他方のブロックに設けられているガイド部46とを有する。第二ブロック32が回転しようとすると、ガイド部46と突出部45とは周方向について接触する。ガイド部46と突出部45とは径方向について非接触である。
【0038】
図2において、弾性シール部材34は、環状であり、第一ブロック31と第二ブロック32との間に設けられている。弾性シール部材34は、合成ゴムにより構成されている。弾性シール部材34が弾性変形することで、弾性シール部材34の径方向外側部38と径方向内側部39とが相対的に軸方向について変位可能である。本実施形態では、第一ブロック31に固定されている径方向外側部38に対して、径方向内側部39が弾性変形によって変位可能である。径方向内側部39が、第二ブロック32の一部(静止密封環17)に接触する。
【0039】
さらに、弾性シール部材34は、径方向にも弾性変形可能である。特に、本実施形態では、弾性シール部材34は、径方向に伸縮可能とするベローズ形状を有する。つまり、弾性シール部材34は、その途中部51の機内側の面52に、軸方向に突出する形状を有するとともに、その途中部51の機外側の面53に、軸方向に凹む形状を有する。このベローズ形状によれば、径方向外側部38と径方向内側部39とは相対的に径方向に変位しやすい構成が得られる。前記基準状態で、弾性シール部材34は、径方向に弾性圧縮変形した状態となって第一ブロック31と第二ブロック32との間に設けられている。
【0040】
径方向外側部38は、第一固定部材41の一部55と第二固定部材42の一部56との間で軸方向に挟まれた状態となって、第一ブロック31に固定されている。つまり、第一ブロック31が、弾性シール部材34を取り付ける取り付け部50を有する。径方向外側部38の外周面は、第一固定部材41の内周面に接触した状態にある。径方向外側部38は、第一固定部材41の一部55と第二固定部材42の一部56とに軸方向について密着した状態となって設けられている。
図2に示すように断面において、弾性シール部材34は、ベローズ形状を有する途中部51を除いて、直線形状を有する。弾性シール部材34は、全体として、径方向外側部38から径方向内側部39に向かって機内側に傾斜する傾斜形状を有する。
【0041】
図2に示す形態では、第二ブロック32が、弾性シール部材34が接触するシール面58を有する。弾性シール部材34は、第二ブロック32のうち、静止密封環17に接触する。静止密封環17は、前記シール面58として、第一シール面58aと第二シール面58bとを有する。第一シール面58aは、弾性シール部材34の径方向内側部39が回転機器の機外側から機内側に向かって接触する環状の面である。第二シール面58bは、弾性シール部材34の径方向内側部39が径方向に接触する円筒状の面である。以上の構成により、弾性シール部材34は、回転機器7の機内側の密封流体が第一ブロック31と第二ブロック32との間を通じて機外側へ漏れるのを防ぐ。
【0042】
図2に示す形態では、前記のとおり、第一ブロック31が弾性シール部材34の取り付け部50を有し、第二ブロック32がシール面58を有するが、これとは反対に、第二ブロック32が取り付け部50を有し、第一ブロック31がシール面58を有していてもよい。つまり、第一ブロック31と第二ブロック32とのうちの一方のブロックが、弾性シール部材34を取り付ける取り付け部50を有し、第一ブロック31と第二ブロック32とのうちの他方のブロックが、弾性シール部材34が接触するシール面58を有していればよい。そして、そのシール面58に、弾性シール部材34の一部が回転機器の機外側から機内側に向かって接触する。
【0043】
回転機器7において、機内側が機外側よりも圧力が高い。このため、弾性シール部材34は、機内側の密封流体によって、機内側から機外側に押される。そこで、対抗部35は、弾性シール部材34が密封流体によって機内側から機外側に押される力に抗する機能を有する。第一実施形態では、対抗部35は、第一ブロック31の一部と弾性シール部材34との間に介在する環状の空気ばね60である。空気ばね60の具体的構成および機能について、後に説明する。
【0044】
〔軸受13について〕
軸受13は、第二ブロック32と回転ユニット11との間に設けられている。軸受13は、転がり軸受であり、内輪66、外輪67、内輪66と外輪67との間に設けられている転動体とを有する。本実施形態では、前記転動体は玉68であり、軸受13は深溝玉軸受である。内輪66が回転ユニット11(スリーブ21)の外周面に固定されており、外輪67が第一ブロック31(ホルダ43)の内周面に固定されている。
【0045】
軸受13は、第二ブロック32に対して回転ユニット11を回転自在に支持することが可能となる。軸受13では、内輪66の中心軸と外輪67の中心軸とが一致した状態が保たれ、内輪66に対して外輪67は傾いた状態となることができない。回転軸8が基準軸線Lに対して傾斜して回転すると、回転軸8と一緒に回転ユニット11が傾斜する他に、軸受13によって、その回転ユニット11に追従して第二ブロック32も傾斜する。第二ブロック32は、第一ブロック31と連結部33によって連結されているが、連結部33は、前記のとおり、第二ブロック32の径方向変位を許容する。このため、第二ブロック32は、回転軸8および回転ユニット11と傾斜角度を同じとして傾く。
【0046】
本実施形態では、軸受13は、回転ユニット11(スリーブ21)の外周側に取り付けられているが、回転軸8に直接取り付けられていてもよい。つまり、軸受13は、回転ユニット11または回転軸8に取り付けられており、第二ブロック32に対して回転ユニット11または回転軸8を回転自在に支持する。なお、軸受13は、回転ユニット11に追従して第二ブロック32を傾斜させることが可能であれば、軸受型式は他であってもよく、転動体がころである円筒ころ軸受であってもよい。
【0047】
〔空気ばね60(対抗部35)について〕
空気ばね60は、全体形状が環状であり、弾性変形が自在であるゴム製の環状チューブ61を有する。チューブ61は中空であって断面円形であり、チューブ61内に圧縮ガスが充填されている。空気ばね60は、径方向および軸方向に弾性圧縮力を受けた状態となって、第一ブロック31と第二ブロック32との間に設けられている。
【0048】
第一ブロック31の第二固定部材42は、段付き形状部44を有する。段付き形状部44は、第一ブロック31の外周面と径方向に対向する円筒面44aと、弾性シール部材34と軸方向に対向する環状面44bとを有する。基準状態で、空気ばね60は、円筒面44aおよび環状面44bに接触するとともに、弾性シール部材34および第二シール面58bに接触した状態にある。
【0049】
弾性シール部材34が空気ばね60を軸方向に押すと、空気ばね60は軸方向に弾性変形し、その反力を弾性シール部材34に付与する。このように、空気ばね60は、弾性シール部材34が密封流体によって機内側から機外側に押される力に抗する機能を有する。
【0050】
図4に示す断面の上半分に示すように、回転軸8が傾斜することで、第二ブロック32が傾斜すると、第二ブロック32が空気ばね60を径方向に押す。このため、周方向の一箇所において、空気ばね60は径方向に弾性圧縮変形する。これに対して、
図4に示す断面の下半分に示すように、前記一箇所の180度反対側の別の箇所で、空気ばね60は径方向に拡大するように弾性変形する。回転軸8が傾斜すると、空気ばね60が設けられる空間の体積が変化するが、その体積の変化に空気ばね60は追従して弾性変形することが可能である。
図4では、回転軸8の傾斜角度をθで示す。
【0051】
〔対抗部35の変形例について〕
図5は、第二実施形態に係るメカニカルシール10の断面図である。
図1に示す第一実施形態と比較して、第二実施形態は、対抗部35の構成、および静止ユニット12の第二固定部材42の構成が異なる。その他の構成は同じであり、同じ構成についての説明は、ここでは省略する。なお、第一実施形態のメカニカルシール10が有する弾性シール部材34を、第二実施形態では「第一弾性シール部材34」と呼ぶ。
【0052】
第二実施形態の対抗部35は、第一弾性シール部材34が密封流体によって機内側から機外側に押される力に抗する機能を有し、この点は、第一実施形態と同じである。第二実施形態の対抗部35の具体的構成を説明する。対抗部35は、第一弾性シール部材34と間隔をあけて設けられている第二弾性シール部材70と、第一弾性シール部材34と第二弾性シール部材70との間に形成されている流体室71とを有して構成される。
【0053】
第二弾性シール部材70は、第一ブロック31と第二ブロック32との間であって、第一弾性シール部材34よりも機外側に設けられている。
図5に示す形態では、第二弾性シール部材70は、第一ブロック31の第二固定部材42と、第二ブロック32の静止密封環17との間に設けられている。第二弾性シール部材70は、環状であり、その径方向外側部73が、第二固定部材42に形成されている段付き形状部75に接触する。これにより、第二弾性シール部材70は、機外側および径方向外側に変位不能となる。
【0054】
第二弾性シール部材70は、第一弾性シール部材34と同様に、合成ゴムにより構成されている。第二弾性シール部材70の径方向内側部74が、第二ブロック32の一部(静止密封環17)に接触する。以上のように、
図5に示す形態では、第一ブロック31が、第二弾性シール部材70を取り付ける取り付け部77を有する。第二ブロック32が、第二弾性シール部材70と接触するシール面(第二シール面58b)を有する。
【0055】
第二弾性シール部材70は、径方向に弾性変形可能である。特に、本実施形態では、第二弾性シール部材70は、径方向に伸縮可能とするベローズ形状を有する。つまり、第二弾性シール部材70は、その途中部72の機外側の面に、軸方向に突出する形状を有するとともに、その途中部72の機内側の面に、軸方向に凹む形状を有する。このベローズ形状によれば、径方向外側部73と径方向内側部74とは相対的に径方向に変位しやすい構成が得られる。
【0056】
流体室71に加圧流体が供給される。加圧流体としては、加圧状態にある窒素ガスまたは大気などの気体である。静止ユニット12の第二固定部材42に流路76が形成されている。流路76は、流体室71で開口する。流路76を通じて流体室71に加圧流体が供給される。第一ブロック31と第二ブロック32との間に形成される流体室71は、第一弾性シール部材34と第二弾性シール部材70とによって、閉じた環状の空間となる。流体室71に加圧流体が供給されると、第一弾性シール部材34を機外側から機内側へ押す力が発生する。
【0057】
第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70は、前記基準状態で、径方向に弾性圧縮変形した状態となって、第一ブロック31と第二ブロック32との間に設けられている。第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70は、第二ブロック32のうち、静止密封環17に接触する。静止密封環17は、シール面として、第一シール面58aと第二シール面58bとを有する。
【0058】
第一シール面58aは、第一弾性シール部材34の径方向内側部39が回転機器の機外側から機内側に向かって接触する環状の面である。第二シール面58bは、第一弾性シール部材34の径方向内側部39、および、第二弾性シール部材70の径方向内側部74が径方向に接触する円筒状の面である。以上の構成により、第一弾性シール部材34は、回転機器7の機内側の密封流体が第一ブロック31と第二ブロック32との間を通じて機外側へ漏れるのを防ぐ。第二弾性シール部材70は、流体室71の加圧流体が機外側に漏れるのを防ぐ。
【0059】
図6に示す断面の上半分に示すように、回転軸8が傾斜することで、第二ブロック32が傾斜すると、周方向の一箇所において、第一ブロック31と第二ブロック32との径方向の間隔は狭くなる。この場合であっても、第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70は、径方向に弾性的に圧縮変形し、前記間隔が狭くなることに追従する。
図6に示す断面の下半分に示すように、前記一箇所の180度反対側の別の箇所では、第一ブロック31と第二ブロック32との径方向の間隔は広くなる。この場合でも、径方向に圧縮されていた第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70は、径方向に弾性的に変形し(径方向に伸長し)、第二ブロック32(第二シール面58b)に接触した状態が維持される。
図6では、回転軸8の傾斜角度をθで示す。
【0060】
図5に示す形態では、第一ブロック31が第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70の取り付け部50,77を有し、第二ブロック32がシール面58を有するが、これとは反対に、第二ブロック32が取り付け部50,77を有し、第一ブロック31がシール面58を有していてもよい。つまり、第一ブロック31と第二ブロック32とのうちの一方のブロックが、第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70を取り付ける取り付け部50,77を有し、第一ブロック31と第二ブロック32とのうちの他方のブロックが、第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70が接触するシール面58を有していればよい。
【0061】
〔各実施形態のメカニカルシール10について〕
以上のように、前記各実施形態(
図1および
図5参照)に示すメカニカルシール10は、回転密封環16を有し回転軸8と一体回転可能である回転ユニット11と、回転密封環16との間でシールするための静止密封環17を有する静止ユニット12と、回転ユニット11に取り付けられている軸受13とを備える。静止ユニット12は、回転機器7の機器ケーシング9に取り付けられる第一ブロック31と、静止密封環17を含む第二ブロック32と、第一ブロック31と第二ブロック32とを連結する連結部33と、第一ブロック31と第二ブロック32との間に設けられている弾性シール部材34と、対抗部35とを有する。
【0062】
連結部33は、第一ブロック31に対する第二ブロック32の回転を防止するとともに径方向変位を許容する。弾性シール部材34は、回転機器7の機内側の密封流体が第一ブロック31と第二ブロック32との間を通じて機外側へ漏れるのを防ぐ。対抗部35は、弾性シール部材34が密封流体によって回転機器7の機内側から機外側に押される力に抗する。そして、軸受13は、回転ユニット11に取り付けられており、第二ブロック32に対して回転ユニット11を回転自在に支持する。
【0063】
このメカニカルシール10によれば、回転軸8が基準軸線L(設計回転中心線)に対して傾斜して回転すると、その回転軸8と一緒に回転ユニット11が傾斜する他に、軸受13によって第二ブロック32も傾斜する。第二ブロック32は、回転ユニット11に追従して、傾斜角度を同じとして傾く。つまり、回転軸8が傾斜すると、回転ユニット11の回転密封環16と第二ブロック32の静止密封環17とが共に傾斜する。このため、回転密封環16と静止密封環17との間のシール状態が変化するのを防ぐことが可能となる。よって、シール性能の低下が抑えられる。さらに説明すると、回転軸8が傾斜しても、回転密封環16の回転シール面16aと静止密封環17の静止シール面17aとが、相互で所望の姿勢に保たれ、回転シール面16aと静止シール面17aとの間の開きを防ぐことが可能となる。よって、回転密封環16と静止密封環との間で安定したシール性能が得られる。
【0064】
静止ユニット12が第一ブロック31と第二ブロック32とに別れているが、これらの間を通じて回転機器7の機内側の密封流体が漏れるのを、弾性シール部材34によって防ぐ。機内側の密封流体の圧力が比較的高い場合であっても、対抗部35が弾性シール部材34を支え、弾性シール部材34の機能が維持される。
【0065】
前記各実施形態(
図1および
図5参照)では、弾性シール部材34は、径方向に伸縮可能とするベローズ形状を有する。このため、回転軸8の傾斜によって第二ブロック32が径方向の成分を有して変位しても、弾性シール部材34は前記変位に追従しやすく、弾性シール部材34の機能が維持される。
【0066】
図1に示す形態では、対抗部35は環状の空気ばね60である。回転軸8が傾斜すると、空気ばね60が設けられる空間の体積が変化する。空気ばね60は前記体積の変化に追従しやすく、弾性シール部材34を支え、弾性シール部材34の機能が維持される。
【0067】
図1に示す形態では、回転機器7の機内側の密封流体によって弾性シール部材34が機外側に押されると、その弾性シール部材34に対して空気ばね60は機外側から機内側に向かって押し返す作用が生じる。第二ブロック32は第一シール面58aを有し、第一シール面58に、弾性シール部材34の一部である径方向内側部39が回転機器の機外側から機内側に向かって接触する。この構成により、空気ばね60の前記作用によって弾性シール部材34と第一シール面58aとの間のシール性能が維持され、密封流体の漏れを効果的に防止することが可能となる。
【0068】
図5に示す形態では、対抗部35は、第二弾性シール部材70と、第一弾性シール部材34と第二弾性シール部材70との間に形成され加圧流体が供給される流体室71とを有して構成される。流体室71に加圧流体が供給されることで、回転機器7の機内側の密封流体によって第一弾性シール部材34が機外側に押される力に抗する構成が得られる。
【0069】
図5に示す形態では、回転軸8が傾斜していない基準状態で、第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70は、径方向に弾性圧縮変形した状態となって設けられている。第二ブロック32は、第一シール面58aと第二シール面58bとを有する。第一シール面58aは、第一弾性シール部材34が回転機器7の機外側から機内側に向かって接触する面である。第二シール面58bは、第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70が径方向に接触する面である。
【0070】
回転機器7の機内側の密封流体によって第一弾性シール部材34が機外側に押されると、その第一弾性シール部材34を、流体室71の加圧流体により機外側から機内側に向かって押し返す作用が生じる。前記第一シール面58aによれば、流体室71による前記作用によって第一弾性シール部材34と第一シール面58aとの間のシール性能が維持され、密封流体の漏れを効果的に防止することが可能となる。
【0071】
さらに、回転軸8が傾斜すると、第二ブロック32も傾斜し、
図6に示す断面の下半分に示すように、第一ブロック31と第二ブロック32との径方向の距離が僅かに大きくなる領域が生じる。その領域においても、前記構成によれば、第一弾性シール部材34および第二弾性シール部材70は径方向の接触力を残して第二シール面58bに接触することが可能となる。このため、流体室71の加圧流体が機内側および機外側に流出することを防ぐことが可能となる。
【0072】
また、
図1に示す形態においても、弾性シール部材34は、径方向に弾性圧縮変形した状態となって設けられている。
図4に示すように、回転軸8が傾斜すると、第二ブロック32も傾斜し、
図4に示す断面の下半分に示すように、第一ブロック31第二ブロック32との径方向の距離が僅かに大きくなる領域が生じる。その領域においても、前記構成によれば、弾性シール部材34は径方向の接触力を残して第二シール面58bに接触することが可能となる。その結果、回転機器7の機内側の密封流体が機外側に漏れることを効果的に防止することが可能となる。
【0073】
〔その他〕
回転ユニット11は、回転密封環16を有していれば、図示する形態以外であってもよく、また、静止ユニット12は、静止密封環17を有していれば、図示する形態以外であってもよい。
連結部33は、周方向の一箇所に設けられていればよく、二箇所以上であってもよい。連結部33が複数設けられる場合、それら連結部33は周方向に間隔をあけて(等間隔で)設けられる。
【0074】
前記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、前記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0075】
7 回転機器
8 回転軸
10 メカニカルシール
11 回転ユニット
12 静止ユニット
13 軸受
16 回転密封環
17 静止密封環
31 第一ブロック
32 第二ブロック
33 連結部
34 弾性シール部材(第一弾性シール部材)
35 対抗部
50 取り付け部
58 シール面
58a 第一シール面
58b 第二シール面
60 空気ばね
70 第二弾性シール部材
71 流体室