(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091271
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】墨出し補助具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20230623BHJP
E04F 21/00 20060101ALI20230623BHJP
B25H 7/04 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
E04G21/18 B
E04F21/00 A
B25H7/04 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205932
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】321014300
【氏名又は名称】株式会社松原設備
(74)【代理人】
【識別番号】100179084
【弁理士】
【氏名又は名称】二上 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松原 隆芳
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174DA41
2E174EA07
(57)【要約】
【課題】墨出し器で墨出し作業をする場合においてカルコの針が刺さらない面でしかも凹凸の有る面、段差のある面又は垂直面の墨出し作業が一人で容易にできる。
【解決手段】 本発明の墨出し補助具2は、長方形の板状部材11の中央を山折りし、この山折りして二股に分かれたそれぞれの部材13又は14の先端の下部を細く又山折り部12に平行に形成し、これらの先端の下面17及び21に墨糸が直交し横切るように通過する溝23、24、25及び26、27、28を設けた墨出し補助具としたので、幅の狭い分離した平行な2面の先端の下面17及び21が接面部となり、凹凸のある面においても滑り難く又二股に分かれているので段差のある面においても安定して接面でき、カルコを部材13の内面18に置き、墨糸を前記溝23、24若しくは25に通すことで前記墨出し補助具2がカルコの代わりになり一人で墨出し作業が容易にできる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の板状部材の中央を山折りし、この山折りして二股に分かれたそれぞれの部材の先端の下部を細く、又山折り部に平行に形成し、この先端の下面に墨糸が直交し横切るように通過する溝を設けたことを特徴とする墨出し補助具。
【請求項2】
取っ手を備えた請求項1の墨出し補助具において、この取っ手は前記山折り部の一方の部材の外側でこの取っ手の持ち手部を前記山折り部に平行に設けると共に、この持ち手部の外端と、前記取っ手を取り付けた部材の先端の下面の外端とに接する平面をA面とし、前記二股に分かれた部材の先端の下面の両方に接する平面をB面とすると、前記A面とB面に挟まれる角が鈍角になるような位置に取っ手の持ち手部を設けた取っ手を備えたことを特徴とする請求項1に記載の墨出し補助具。
【請求項3】
前記溝の内面をコーキング材でコーティングしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の墨出し補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルコを使用する墨出し器で墨出し作業をする場合において、カルコの針が刺さらない面の墨出し作業が一人で容易にできる墨出し補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築等の現場の直線引きには、先端に針を付けたカルコを使用する墨出し器が多く使用されている。
この墨出し器の使用方法は直線を引く面上の引く直線の一端にカルコの針を刺し、この針に結んだ墨糸を墨壺から引き出し、この引き出した墨糸を引く直線の他端上に載せ、この墨糸を張った状態で墨糸を摘み上げそして離す。そうすると墨のついた墨糸が直線を引く面に接触し直線を引くこと(以下「墨出し」という。)になる。
【0003】
しかし、墨出し面がコンクリート、タイル又は金属面等のカルコの針が刺さらない面の場合がある。このような場合従来は、一人がカルコを持って引くべき直線の一端に載せ、もう一人が墨糸を墨壺から引き出し、この引き出した墨糸を引くべき直線の他端上に載せ、この張った状態で墨糸を摘み上げそして離し直線を引く。このように墨出し作業を二人で行なっていた。
【0004】
この欠点は作業効率を悪くし、コスト高になる。
【0005】
この解決策として、特許文献1は板状または箱状に形成された本体にカルコを挿入可能な差し込み穴と、本体側面と差し込み穴との間に墨糸が挿通可能な溝を設けた墨出し補助具である。また特許文献2は円柱状の上面にカルコを挿入可能な差し込み穴とこの穴と連通する溝を側面及び底面に設けた墨出し補助具である。しかしこれらの墨出し補助具は墨出し面との接触部が平面又は円形であるために凹凸の有る面には不向きであり、段差のある面には対応が難しく、また垂直面の下部は巾木等の出っ張りのある場合が多いがこれらを避けて垂直面の墨出しを行うことは困難である。更にこれらの墨出し補助具の溝は挿入する墨糸が切れやすいという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016―215330号公報
【特許文献2】公開実用平3-29282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、カルコを使用する墨出し器で墨出し作業をする場合においてカルコの針が刺さらない面でしかも凹凸の有る面若しくは段差のある面又は垂直面の墨出し作業は一人で作業するのが困難である点である。また墨出し補助具の溝に通す墨糸が切れやすいという問題点もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の墨出し補助具は、長方形の板状部材の中央を山折りし(この「山折り」は制作方法ではなく形状を表したものである。以下同様)、この山折りして二股に分かれたそれぞれの部材の先端の下部を細く、又山折り部に平行に形成し、この先端の下面に墨糸が直交し横切るように通過する溝を設けた墨出し補助具としたので、幅の狭い分離した平行な2面の先端の下面が墨出し面の接面部となり、凹凸のある面においても滑り難く又二股に分かれているので段差のある面においても安定して接面でき、カルコを前記部材の内面又は下部外面に置き、墨糸を前記溝に通すことで前記墨出し補助具がカルコの代わりになり一人で墨出し作業が容易にできる。
【0009】
請求項2の墨出し補助具は、取っ手を備えた請求項1の墨出し補助具であり、この取っ手は前記山折部の一方の部材の外側でこの取っ手の持ち手部を前記山折部に平行に設けると共に、この持ち手部の外端と前記取っ手を取り付けた部材の先端の下面の外端とに接する平面をA面とし、前記二股に分かれた部材の先端の下面の両方に接する平面をB面とすると、前記A面とB面に挟まれる角が鈍角になるような位置に取っ手の持ち手部を設けた取っ手を備えたことを特徴とする請求項1に記載の墨出し補助具としたので、この墨出し補助具を前記A面が下になる様にして床面に置くと、前記A面である前記持ち手部の外端と前記取っ手を取り付けた部材の先端の下面の外端が床面に接面する。これらの接面部は共に山折り部に平行な線になるので、安定した状態で据わる。さらに床面に垂直に立った壁面に前記2面の平行な先端の下面を向けると前記A面とB面に挟まれる角が鈍角なので前記先端の下面の上になる方が壁面に近くなり、下になる先端の下面は壁面から離れるので壁面下部の巾木等の出っ張りを避けることができるので、上になる先端の下面を壁面に押し当てることができ、カルコ近傍の墨糸を前記取っ手の支持部に巻きつけ、先端の下面に設けた溝に通して壁面下部の墨出し点に、前記溝を合わせることで、この墨出し補助具がカルコの代わりになり、床面に対し垂直な壁の墨出し作業が一人で容易にできる。
【0010】
請求項3の墨出し補助具は、前記溝の内面をコーキング材でコーティングしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の墨出し補助具としたので、墨糸に対する当たりが柔らかくなり又墨糸と溝の内面との遊び(間隙)が小さくなり、墨糸が摩擦で磨耗し切断することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の墨出し補助具は、カルコを使用する墨出し器で墨出し作業をする場合において、カルコの針が刺さらない面でしかも凹凸のある面においても幅の狭い分離した平行な2面の先端の下面が墨出し面の接面部となり滑り難く、又二股に分かれているので段差のある面おいても安定して接面でき、墨出し作業が一人で容易にできる。
【0012】
請求項2の墨出し補助具は、前記A面とB面に挟まれる角が鈍角になるような位置に取っ手の持ち手部を設けた取っ手を備えたことを特徴とする請求項1に記載の墨出し補助具としたので、壁面下部の巾木等の出っ張りを避けることができ、カルコの針が刺さらない面でしかも垂直面の壁面等の墨出し作業が一人で容易にできる。
【0013】
請求項3の墨出し補助具は、墨糸を溝に通すとき及び墨出し作業で張った墨糸を摘み上げそして離すときに墨糸が溝の底面及び側面との摩擦で摩耗し切断することがある。溝の内面をコーキング材でコーティングしたことで墨糸に対する当たりが柔らかくなり又墨糸と溝との遊び(間隙)が小さくなり、墨糸が摩擦で磨耗し切断することを防ぐことができる。また狙った墨出し点に合わせ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は墨出し補助具の斜視図である。(発明を実施するための形態、実施例1)
【
図2】
図2は墨出し補助具の下面図である。(発明を実施するための形態、実施例1、実施例2)
【
図3】
図3は墨出し補助具の斜視図である。(発明を実施するための形態、実施例2)
【
図4】
図4は墨出し補助具の実施方法の説明図である。(発明を実施するための形態、実施例2)
【
図5】
図5は溝の断面図である。(発明を実施するための形態)
【
図6】
図6は墨出し補助具の実施方法の説明図である。(実施例1)
【
図7】
図7は墨出し補助具の実施方法の説明図である。(実施例1)
【
図8】
図8は墨出し補助具の実施方法の説明図である。(実施例1)
【
図9】
図9は墨出し補助具の実施方法の説明図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を以下添付図に基づいて説明する。尚、図面は符号の向きに見るものとし、説明の中で前後上下左右は図面を見る向きによる。
図1は、本発明の墨出し補助具1の斜視図である。
図2は墨出し補助具1の下面図である。墨出し補助具1の正面は矢印Fで示した面とする。
【0016】
この墨出し補助具1は、カルコを使用する墨出し器の補助具であり、長方形の板状部材11の中央を山折りし、この山折り部を12とし、この山折り部12で二股に分かれた前記板状部材11を部材13と部材14とすると、前記部材13の構成面は上部外面15と先端の下部を細く形成するための下部外面16と先端の下面17と内面18と両側面とからなる。前記部材14の構成面は上部外面19と先端の下部を細く形成するための下部外面20と先端の下面21と内面22と両側面とからなる。前記下部外面16又は20は前記山折り部12に並行で前記先端の下面17及び21に接する平面に対して垂直に形成したので、前記先端の下面17又は21は前記山折り部12に平行な細長い面になり、平面でも長手方向の角を丸めた形状でも良い。前記先端の下面17に形成した墨糸36(
図5又は
図6参照)が直交し横切るよう通過する溝を
図1又は2の左側面29から23,24及び25とする。同様に前記先端の下面21に形成した墨糸36(
図5又は
図6参照)が直交し横切るよう通過する溝を左側面29から26,27及び28とする。前記溝23と溝26,前記溝24と溝27,前記溝25と溝28は
図1及び
図2の左側面29から等距離とする。外部外面16と内面18挟まれた先端の下面17の細い幅の寸法は0.5~5mmが望ましい、同様に先端の下面21の細い幅の寸法も0.5~5mmが望ましい。
【0017】
図3は前記墨出し補助具1に取っ手30を備えた墨出し補助具2を実施するための形態の斜視図である。
図4は墨出し補助具2実施方法の説明図であり、取っ手30の取付位置の説明に使用する。
【0018】
この墨出し補助具2は、前記墨出し補助具1に取っ手30を備えたもので、この取っ手30は持ち手部31と支持部32からなり、前記取っ手30を前記山折部12で分かれた一方の部材の部材14の上部外面19に配置し、この取っ手30の持ち手部31は前記山折部12に並行に設けると共に、この持ち手部31の外端と前記取っ手30を取り付けた部材14の先端の下面21の外端とに接する平面をA面とし、前記二股に分かれた先端の下面17及び21の両方に接する平面をB面とすると、前記A面とB面に挟まれる角Cが鈍角になるような位置に取っ手30の持ち手部31を設けた取っ手30を備えたことを特徴とする。
【0019】
図5は、前記溝23、24、25、26、27又は28の側面33及び底面34にコーキング材35をコーティングし、墨糸36を通した断面図である。
前記溝23、24、25、26、27又は28に墨糸36を通すとき及び墨出し作業で張った墨糸36を摘み上げそして離すときに墨糸36が溝の底面34及び側面33との摩擦で摩耗し切断することがある。そこで溝23、24、25、26、27又は28の側面33及び底面34にコーキング材35をコーティングすることにより、墨糸36に対する当たりが柔らかくなり、また墨糸36と溝側面33及び底面34との遊び(間隙)が小さくなり、墨出し作業での前記墨糸36の動きを小さくし前記溝の底面34及び側面33との摩擦で摩耗し切断することを防ぐことができる。また、墨糸36を狙った墨出し点に合わせ易くなる。
【実施例0020】
【0021】
図6の実施例はカルコ37の刺さらない面で凹凸の有る墨出し面40にカルコ37を前記墨出し補助具1の前記部材13の内面18に当てて墨糸36を溝24に通しこの溝24を墨出し点に合わせることで前記補助具1はカルコ37の代わりになり、
図6の右方向に墨出しする実施例である。
【0022】
カルコ37は内面18と墨出し面40に挟まれ保持される。また前記右方向の墨出しの為の引っ張り力の抗力となるのは、墨出し補助具1の二股に分かれた先端の下面17及び21の自重による墨出し面40との摩擦力と先端の下面17及び21が墨出し面40の凹部に嵌まることによる抗力また凸部に引っ掛かることによる抗力の和である。墨出し補助具1の二股に分かれた先端の下面17及び21は細く形成したため凹凸面でも自重による摩擦力の減少は少なく、そして凹部に嵌まり易くまた凸部に引っ掛かり易くなると共に溝24を先端の下面17及び21前に対して直交するように形成したため引っ掛かることによる抗力が大きくなる。従って墨出し補助具1はカルコ37の針が刺さらない面でしかも凹凸のある面においても滑り難く安定して接面でき、墨出し作業が一人で容易にできる。墨出し補助具1の材質は比重の大きい鉄若しくは銅又はそれらの合金が望ましい。
【0023】
図7の実施例はカルコ37の刺さらない面で凹凸の有る墨出し面40にカルコ37を前記墨出し補助具1の前記部材14の下部外面20に当てこの下部の先端の下面21の溝27に墨糸36を通し次に溝27に対応する部材13の下部の先端の下面17の溝24に通し
図7の右方向への墨出し作業である。
前記カルコ37を下部外面20に当てて保持しても前記
図6の実施例で説明した同様の理由で墨出し補助具1はカルコの針が刺さらない面でしかも凹凸のある面においても滑り難く安定して接面でき、墨出し作業が一人で容易にできる。
【0024】
図8の実施例は墨出し補助具1を使用したカルコ37の刺さらない面で段差の有る墨出し面41の墨出し作業である。
墨出し補助具1の山折り部12で二股に分かれた一方の部材13の先端の下面17を下段の墨出し面41に載せ、前記部材13の内面18にカルコ37を当て、前記先端面17に形成した溝24に墨糸36を通し、前記二股に分かれた他方の部材14の先端の下面21を上段面42に載せて前記墨糸36を墨出し方向の
図8の右方向に引き出すことにより、カルコ37の刺さらない面で段差の有る墨出し面の墨出し作業が一人で容易できる。