(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091273
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20230623BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205934
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 匠
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕人
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601BB17
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA32
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB05
5H622DD01
5H622PP19
(57)【要約】
【課題】フェライト磁石を使用しながら、ネオジム磁石を用いた従来品と同等の体格・性能を備えたモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、ロータコア15内に形成されたマグネット取付孔22内にマグネット23が埋設されたIPM型モータであり、マグネット取付孔22は、径方向に沿って延びる第1マグネット収容部22aと、周方向に沿って延びる第2マグネット収容部22bとを有する。第1マグネット収容部22aと第2マグネット収容部22bは連通しており、マグネット取付孔22はコの字形に形成されている。第1、第2マグネット収容部22a,22b内にはそれぞれ第1、第2マグネット23a,23bが密接状態で配置される。ロータ3には、コの字形に配置された2つの第1マグネット部22aと1つの第2マグネット22bによって磁極28が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータの径方向内側に配置されたロータと、を有し、
前記ロータは、回転軸に固定されたロータコアと、前記ロータコア内に形成されたマグネット収容部内に取り付けられたマグネットと、を備えてなるモータであって、
前記マグネット収容部は、放射状に形成され径方向に沿って延びる第1マグネット収容部と、前記第1マグネット収容部の径方向内側に配置され周方向に沿って延びる第2マグネット収容部と、を有し、前記第1マグネット収容部は、前記ロータ中心側が前記第2マグネット収容部と連通すると共に、前記第2マグネット収容部は、周方向両端部にて前記第1マグネット収容部と連通し、
前記マグネットはフェライト磁石にて形成され、前記第1マグネット収容部内の第1マグネット部と、前記第2マグネット収容部内の第2マグネット部と、からなり、前記第2マグネット部は、前記第1マグネット部の径方向内側に隙間なく配置され、
前記ロータは、2つの前記第1マグネット部と、前記第1マグネット部の径方向内側の第2マグネット部とによって1つの磁極が形成されることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1記載のモータにおいて、
前記磁極は、周方向と径方向内側の3方向が、2つの前記第1マグネット部及び1つの第2マグネット部によって隙間なく閉じられており、前記第1マグネット部の対向する面と、前記第2マグネット部の前記磁極を囲む側の面とが同極に形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のモータにおいて、
前記第1マグネット部と前記第2マグネット部はそれぞれ別個の磁石にて形成され、
前記第2マグネット部は、前記第1マグネット部の径方向内側の端面の全面を覆う状態で密接して配置されることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1又は2記載のモータにおいて、
前記第1マグネット部と前記第2マグネット部は一体の磁石にて形成されることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のモータにおいて、
前記第1マグネット部と前記第2マグネット部は、予め着磁された磁石を前記マグネット収容部内に取り付けることにより形成されることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束集中型の電動モータに関し、特に、ロータ内にマグネットを埋設したいわゆるIPM(Interior Permanent Magnet)型のブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動パワーステアリング装置(EPS)など、モータを駆動源として用いる各種車載電動システムでは、耐久性や制御性、機能安全などの観点から、ブラシ付きのモータからブラシレスモータへの置き換えが進んでいる。さらに、EPS用モータなどの車載用ブラシレスモータでは、装置の小型化・高性能化の要求に伴い、フェライト磁石に代えてネオジム磁石などの希土類磁石を使用したものが増加している。
【0003】
ところが、希土類磁石は小型・高磁束密度ではあるものの、フェライト磁石に比して高価であり、その製造や原料採掘の場面などにおいて環境負荷が高く、必ずしもSDGs(持続可能な開発目標)のコンセプトに則った素材とは言えない面を有している。そこで、昨今では、コストや環境負荷を考慮し、フェライト磁石を使用したSPM(Surface Permanent Magnet)型のEPS用モータなども上市されている。このようなモータでは、フェライト磁石がネオジム磁石よりも密度が低く軽いことを生かし、ロータ外径を大きくし、ロータ外周面に断面D型のフェライト磁石を配置することによりマグネットトルクの向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-82733号公報
【特許文献2】特開2015-133839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フェライト磁石は、ネオジム磁石などの希土類磁石に比べて磁力が弱いことから、フェライト磁石で従来品と同等の性能を得るためには多くの磁石量が必要となる。このため、前述のように、ロータ外径を大きくするなどの方策が求められ、結果、モータが大型化してしまう、という問題があった。また、例えばEPS用モータなどでは、操舵性等の関係から低イナーシャであることが求められ、トルク向上のためロータ外径を大きくするという構造には限界があり、フェライト磁石採用の足かせともなっていた。
【0006】
本発明の目的は、フェライト磁石を使用しながら、ネオジム磁石を用いた従来品と同等の体格・性能を備えたモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータは、ステータと、前記ステータの径方向内側に配置されたロータと、を有し、前記ロータは、回転軸に固定されたロータコアと、前記ロータコア内に形成されたマグネット収容部内に取り付けられたマグネットと、を備えてなるモータであって、前記マグネット収容部は、放射状に形成され径方向に沿って延びる第1マグネット収容部と、前記第1マグネット収容部の径方向内側に配置され周方向に沿って延びる第2マグネット収容部と、を有し、前記第1マグネット収容部は、前記ロータ中心側が前記第2マグネット収容部と連通すると共に、前記第2マグネット収容部は、周方向両端部にて前記第1マグネット収容部と連通し、前記マグネットはフェライト磁石にて形成され、前記第1マグネット収容部内の第1マグネット部と、前記第2マグネット収容部内の第2マグネット部と、からなり、前記第2マグネット部は、前記第1マグネット部の径方向内側に隙間なく配置され、前記ロータは、2つの前記第1マグネット部と、前記第1マグネット部の径方向内側の第2マグネット部とによって1つの磁極が形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、2つの第1マグネット部のロータ中心側に第2マグネット部を配置することにより、ロータの1磁極の3方向が完全に磁石で閉じた形で形成される。これにより、磁気回路的に開放部がステータ側のみとなるような磁束集中型の構成が得られる。また、第2マグネット部が第1マグネット部の径方向内側に隙間なく配置されるので、ロータ内の空隙をより少なくでき、コア断面におけるマグネットの占める割合が向上する。これらにより、磁束量の増大が図られ、フェライト磁石を使用しながら、ネオジム磁石を用いた従来品と同等の体格・性能を備えたモータを提供することが可能となる。
【0009】
前記モータにおいて、前記磁極の周方向と径方向内側の3方向を、2つの前記第1マグネット部及び1つの第2マグネット部によって隙間なく閉じると共に、前記第1マグネット部の対向する面と、前記第2マグネット部の前記磁極を囲む側の面とを同極に形成するようにしても良い。これにより、前記第1マグネット部と前記第2マグネット部が疑似ハルバッハ配列にて配置され、磁力の向上やロータ内の空隙削減が図られる。
【0010】
また、前記第1マグネット部と前記第2マグネット部をそれぞれ別個の磁石にて形成し、前記第2マグネット部を、前記第1マグネット部の径方向内側の端面の全面を覆う状態で密接して配置しても良い。さらに、前記第1マグネット部と前記第2マグネット部を一体の磁石にて形成することも可能であり、その際、マグネット全体をコの字形やU字形などに形成しても良い。
【0011】
加えて、前記第1マグネット部と前記第2マグネット部を、予め着磁された磁石を前記マグネット収容部内に取り付けることにより形成するようにしても良い。当該モータでは、ネオジム磁石よりも磁力の弱いフェライト磁石を用いており、ネオジム磁石モータでは容易ではない着磁後磁石の組み付けを比較的容易に行うことができ、組付工数の削減が図られる。また、分解も容易であるため、リサイクル性の向上も図られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のモータによれば、2つの第1マグネット部のロータ中心側に第2マグネット部を配置することにより、ロータの1磁極の3方向が完全に磁石で閉じた形で形成することができ、磁気回路的に開放部がステータ側のみとなるような磁束集中型の構成が得ることが可能となる。また、第2マグネット部を、第1マグネット部の径方向内側の端面を閉じる状態で密接して配置することにより、ロータ内の空隙をより少なくでき、コア断面におけるマグネットの占める割合が向上させることができる。その結果、本発明のモータにあっては、磁束量の増大が図られ、安価なフェライト磁石を使用しつつも、高価なネオジム磁石を用いた従来品と同等の体格・性能を備えたモータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態であるブラシレスモータの断面図である。
【
図3】マグネット取付孔近傍の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態であるブラシレスモータ1(以下、モータ1と略記する)の断面図、
図2は、
図1のA-A線に沿った断面図である。
図1,2に示すように、モータ1は、外側にステータ(固定子)2、内側にロータ(回転子)3を配したインナーロータ型のブラシレスモータとなっており、例えばEPSの駆動源として使用される。
【0015】
また、モータ1は、ロータのマグネットを放射状に埋設配置した磁束集中型のIPMモータとなっており、IPM構造を採用することにより、マグネットトルクに加えてリラクタンストルクを利用でき、トルクの向上が図られている。また、IPM構造の採用により、モータ1では、従来のSPM構造のモータのような、マグネット固定用のマグネットホルダやマグネットカバーなどが不要となり、その分、ロータユニットの構成部品を削減できコストダウンが図られる。
【0016】
ステータ2は、有底円筒形状のモータケース4(以下、ケース4と略記する)の内側に圧入等の固定手段により固定されている。ステータ2は、ステータコア5と、ステータコア5のティース6に巻装されたステータコイル7(以下、コイル7と略記する)及びステータコア5に取り付けられコイル7と電気的に接続されるバスバーユニット(端子ユニット)8とから構成されている。ケース4は、鉄等にて有底円筒状に形成されており、その開口部には、図示しない固定ネジによって、ブラケット9(例えば、アルミダイキャスト製)が取り付けられる。
【0017】
ステータコア5は、鋼製の板材(例えば、電磁鋼板)を積層して形成されており、複数個(本実施形態においては12個)のティース6が径方向内側に向かって突設されている。隣接するティース6の間にはスロット10が形成され、その中にはコイル7が収容されている。ステータコア5には合成樹脂製のインシュレータ11が取り付けられており、インシュレータ11の外側にコイル7が巻装されている。これにより、本ステータ2は12スロット構成となっている。
【0018】
ステータコア5のケース4の開口側の一端側には、バスバーユニット8が取り付けられている。バスバーユニット8は、合成樹脂製の本体部内に銅製のバスバーがインサート成形された構成となっている。バスバーユニット8の周囲には、複数個の給電用端子12が径方向に突設されている。バスバーユニット8の取り付けに際し、給電用端子12は、ステータコア5から引き出されたコイル7の端部7aが溶接される。バスバーユニット8では、バスバーはモータ1の相数に対応した個数(ここでは、U相,V相,W相分の3個と各相同士の接続用の1個の計4個)設けられている。各コイル7は、その相に対応した給電用端子12と電気的に接続される。ステータコア5は、バスバーユニット8を取り付けた後、ケース4内に圧入固定される。
【0019】
ステータ2の内側にはロータ3が挿入されている。ロータ3はロータシャフト13を有しており、ロータシャフト13はベアリング14a,14bによって回転自在に軸支されている。ベアリング14aはケース4の底部中央に、ベアリング14bはブラケット9の中央部にそれぞれ固定されている。ロータシャフト13には、円筒形状のロータコア15と、回転角度検出手段であるレゾルバ16のロータ(レゾルバロータ)17が取り付けられている。レゾルバ16のステータ(レゾルバステータ)18は、合成樹脂製のレゾルバブラケット19に収容されており、取付ネジ20によってブラケット9の内側に固定される。
【0020】
ロータコア15は、磁性体にて形成された円形の薄板状コアプレート(鋼板材)を複数枚積層させた構成となっている。ロータコア15には、軸孔21と、複数個のマグネット取付孔(マグネット収容部)22が設けられている。軸孔21はロータコア15の中心部に形成されており、そこにはロータシャフト13が圧入固定される。マグネット取付孔22は略コの字形に形成されており、軸孔21の外周側に周方向に沿って複数個で設けられている。
【0021】
図3は、マグネット取付孔22近傍の構成を示す説明図である。
図3に示すように、マグネット取付孔(マグネット収容部)22は、径方向に沿って延びる第1マグネット取付孔(第1マグネット収容部)22aと、第1マグネット取付孔22aの径方向内側に配置され周方向に沿って延びる第2マグネット取付孔(第2マグネット収容部)22bとから構成されている。第1マグネット取付孔22aは、ロータ中心O側が第2マグネット取付孔22bと連通しており、マグネット取付孔22は、全体として外径側が開いた略コの字形となっている。マグネット取付孔22には、固形のフェライト磁石を用いたマグネット23が収容される。
【0022】
第1マグネット取付孔22aは断面長方形状に形成されており、周方向に沿って複数個(ここでは20個)放射状に配置されている。
図2に示すように、第1マグネット取付孔22aは、2個ずつが周方向に近接する形で配置されている。第1マグネット取付孔22aは、その径方向外側がブリッジ部24にて閉鎖される一方、内径側端部は開放されており、断面略長方形状に形成された第2マグネット取付孔22bと連通している。つまり、第2マグネット取付孔22bは、その周方向両端部にて第1マグネット取付孔22aと連通している。そして、離間して配置された2つの第1マグネット取付孔22aと1つの第2マグネット取付孔22bにより、コの字形の1個のマグネット取付孔22が形成される。
【0023】
マグネット23は、第1マグネット取付孔22a内に収容される平板状の第1マグネット(第1マグネット部)23aと、第2マグネット取付孔22b内に収容され第1マグネット23aの径方向内側の端面の全面を閉じる形で配置される第2マグネット(第2マグネット部)23bとから構成されている。第1マグネット23aは、断面長方形状の直方体形となっており、第1マグネット取付孔22a内に接着剤にて固定される。第1マグネット取付孔22aの径方向外端部には、ブリッジ部24に臨んで、第1マグネット23aが存在しない空隙部25が形成されている。モータ1では、この空隙部25により、ステータ2の界磁磁場の影響による第1マグネットの減磁を防止すると共に、第1マグネット23a外端部にてN-S極が短絡するのを防止している。
【0024】
第2マグネット23bは、台形の対向辺の一辺両隅部を幅広面取りしたような多角形断面(ここでは六角形)となっており、第2マグネット取付孔22b内に接着剤にて固定される。第2マグネット23bの周方向外側の一辺両端側には、角部分を斜めに幅広面取りする形で斜面部26が形成されている。斜面部26は、マグネット取付孔22内にマグネット23を取り付けると、第1マグネット23aの径方向内側の端面27と密接する。すなわち、第2マグネット23bの径方向外側両端部に、第1マグネット23aが密着状態で配置される。この際、端面27の全面が斜面部26によって覆われる状態となり、マグネット取付孔22内には、隙間のないコの字形のマグネット23が形成される。
【0025】
モータ1では、放射状に配した軸方向に延びる第1マグネット23aと、第1マグネット23aの背面側(径方向内側)に配した第2マグネット23bによって、ロータ3側に10個の磁極28が形成される。これにより、本実施形態のモータ1は10極12スロット構成となる。前述のように、マグネット23は、隙間のないコの字形に形成されており、磁極28は、周方向と径方向内側の3方向が3つのマグネット23によって隙間なく閉じられた形となっている。この場合、第1,第2マグネット23a,23bは、磁極28を構成する3つのマグネットが囲む側の面(以下、内側面と称する)が同極となるように配置されている。
【0026】
すなわち、磁極28では、2つの第1マグネット23aの対向する内側面31と、内側面31側に面する第2マグネット23bの内側面32が同極となっている。このように、モータ1では、2つの第1マグネット23aのロータ中心側に背面用磁石(第2マグネット23b)を配置することにより、1極が完全に磁石で閉じた形で形成され、磁気回路的に開放部がステータ側のみとなるような磁束集中型の構成が得られる。これにより、磁極28では、マグネット2個分以上の磁束をロータ外周に発生させることが可能となる。
【0027】
さらに、第2マグネット23bは、第1マグネット23aの磁化方向と直角方向の無磁極部位である端面27に密着配置され、第2マグネット23bの磁化方向が第1マグネット23aの磁化方向に対し略直角となる。このため、第1マグネット23aと第2マグネット23bは、いわゆるハルバッハ配列に近い形となり、磁極28では、磁束の流れがマグネット23の内側に集中し、第1マグネット23aのみの場合や、第1,第2マグネット23a,23b間に隙間を設けた場合よりも磁力の向上が図られる。発明者の解析によれば、
図3の構成を採用することにより、第2マグネット23bを入れず第2マグネット取付孔22bを空隙とした場合に比して、誘起電圧が1.4倍以上増加した。
【0028】
また、従来のIPMモータでは、ロータコア内での磁束短絡による損失を防止すべく、極間に空隙を設けてそれに対応しているが、その分、コア断面におけるマグネットが占める割合が低下する。その点、本発明によるモータ1では、疑似ハルバッハ配列により、磁極28の外側、すなわち、第1,第2マグネット23a,23bの外側に磁束が漏れ出にくい。このため、磁束漏れ防止用の空隙を最小限に留めることができ、ロータ断面に無駄なく磁石を配置しつつ、N-S短絡を防止することが可能となり、磁束集中の効果が向上する。その結果、ロータ内の空隙をより少なくでき、コア断面におけるマグネットの占める割合を向上させ、より効率の良いモータを提供することが可能となる。
【0029】
一方、ネオジム磁石を用いたモータでは、磁石の磁力が非常に強いため、着磁後のマグネットをロータ内に組み付ける作業が難しく、通常、ロータ内に着磁前のマグネットを組み付けた後に着磁作業を行っている。この際、第2マグネット23bのように中心側にマグネットを配すると十分に着磁を行うことが難しく、どうしても磁力が低下してしまい、ネオジム磁石の利点を生かせない。また、ボンドマグネットを中心側に注入するような構成の場合も、中心側部分に対しフル着磁を行えず、満足な磁束量を得ることができない。
【0030】
これに対し、モータ1では、マグネット23がフェライト磁石であることから、従来のフェライト磁石モータと同様に、着磁後のマグネット23をロータ3内に組み付けることができる。このため、フル着磁状態のマグネット23をロータ3内に装着でき、内径側のマグネット(第2マグネット23b)からも十分な磁束量が得られ、従前のネオジム磁石モータに劣らない特性を実現することが可能となる。また、フェライト磁石は磁石単体の磁気吸引力が弱いため、組み付けが行い易く、工程の生産性が改善されると共に、分解も容易であることからリサイクル性も向上する。
【0031】
加えて、モータ1では、マグネット23としてフェライト磁石を使用することから、磁石の原価が希土類磁石よりも安く、ネオジム磁石を使用した従来のモータに比べて大幅なコストダウンを図ることができる。また、希土類物質を含まないので、環境負荷が少なく、欧州LCA規制やSDGsのコンセプトに即した製品を実現できると共に、市況変動の影響も受けにくくなる。さらに、フェライト磁石は、電気抵抗が高いため渦電流損が少なく、マグネット単体の発熱も少ないため磁束量の温度変化が比較的小さい。また、フェライト磁石は、キューリー点がネオジム磁石よりも高いため、高温側の雰囲気におけるマグネットの不可逆減磁も起こりにくい。つまり、モータ1は、古くから用いられているフェライト磁石の良さを生かしつつ、ネオジム磁石モータと同等の性能を引き出しており、本発明によれば、小型で高性能でありながら安価なモータを提供することが可能となる。
【0032】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、モータ1では、マグネット23を3片のマグネット(2個の第1マグネット23a及び1個の第2マグネット23b)にて形成しているが、3片のマグネットを一体化してコの字形のマグネットを使用することも可能である。このように、コの字に一体成形したマグネットを使用することにより、マグネットの製造コストや組み付けコストの低減を図ることが可能となる。また、前述の実施形態では、マグネット23をコの字形としたが、Uの字形や底辺のない台形状に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、電動パワーステアリング装置用のモータ以外にも、オイルポンプや電動のブレーキシステム、ハイブリッド車や電気自動車などにも適用可能である。また、本発明のモータは、自動車関連のみならず、家電製品や産業機械など、他の電気機械・機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 ブラシレスモータ
2 ステータ
3 ロータ
4 モータケース
5 ステータコア
6 ティース
7 ステータコイル
7a 端部
8 バスバーユニット
9 ブラケット
10 スロット
11 インシュレータ
12 給電用端子
13 ロータシャフト
14a,14b ベアリング
15 ロータコア
16 レゾルバ
17 レゾルバロータ
18 レゾルバステータ
19 レゾルバブラケット
20 取付ネジ
21 軸孔
22 マグネット取付孔(マグネット収容部)
22a 第1マグネット取付孔(第1マグネット収容部)
22b 第2マグネット取付孔(第2マグネット収容部)
23 マグネット
23a 第1マグネット(第1マグネット部)
23b 第2マグネット(第2マグネット部)
24 ブリッジ部
25 空隙部
26 斜面部
27 端面
28 磁極
31 第1マグネット内側面
32 第2マグネット内側面
O ロータ中心