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  • 特開-口腔用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091286
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230623BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q11/00
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205951
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清▲崎▼ 若菜
(72)【発明者】
【氏名】水津 拓
(72)【発明者】
【氏名】堂元(田代) 亜衣香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC302
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC41
4C083DD41
4C083EE31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】口腔トレーニングのための、口腔用組成物の提供。
【解決手段】ジェランガム、並びにローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを含有する、口腔トレーニング用組成物であり、前記組成物中、ジェランガムの含有量が、0.075質量%以上であり、前記組成物中、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が、0.225質量%以上である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェランガム、並びに
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを含有する、口腔トレーニング用組成物であり、
前記組成物中、ジェランガムの含有量が、0.075質量%以上であり、
前記組成物中、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が、0.225質量%以上である、組成物。
【請求項2】
前記組成物中、ジェランガム、並びに
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が、1.0質量%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ゲル状組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
高齢者のオーラルフレイル予防用である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
水の含有量が、70質量%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
組成物を直径4cmの円筒型瓶の高さ5cmまで充填し、5℃で17時間静置後、レオメーターにより、直径3cmの円形の感圧軸を用いて試料台移動速度10mm/秒で測定した時の押し圧が、1~40Nである、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
40℃3日放置後の離水量(g/20g)が、1.0g/20g未満である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
ジェランガム、並びに
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを含有する、口腔用組成物であり、
前記組成物中、ジェランガムの含有量が、0.075質量%以上であり、
前記組成物中、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が、0.225質量%以上である、組成物を用いて
口腔内を洗浄することを含む、
口腔トレーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔用組成物及びその用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム等のゲル化剤を含む口腔用組成物が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、高齢化が進む中、加齢に伴い心身の機能は徐々に低下し、虚弱(フレイル)に傾きながら自立度低下を経て要介護状態に陥っていくことから、全国民への予防意識を高めることが重要であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4143829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、口腔トレーニングのための(例えば、口腔周囲筋を強化するための)、口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ジェランガムとローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムとを併用した組成物を用いて、口腔内を洗浄することによって、筋電位の発生が高くなることを見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
ジェランガム、並びに
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを含有する、口腔トレーニング用組成物であり、
前記組成物中、ジェランガムの含有量が、0.075質量%以上であり、
前記組成物中、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が、0.225質量%以上である、組成物。
項2.
前記組成物中、ジェランガム、並びに
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が、1.0質量%以下である、項1に記載の組成物。
項3.
ゲル状組成物である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
高齢者のオーラルフレイル予防用である、項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
水の含有量が、70質量%以上である、項1~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
組成物を直径4cmの円筒型瓶の高さ5cmまで充填し、5℃で17時間静置後、レオメーターにより、直径3cmの円形の感圧軸を用いて試料台移動速度10mm/秒で測定した時の押し圧が、1~40Nである、項1~5のいずれかに記載の組成物。
項7.
40℃3日放置後の離水量(g/20g)が、1.0g/20g未満である、項1~6のいずれかに記載の組成物。
項8.
ジェランガム、並びに
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを含有する、口腔用組成物であり、
前記組成物中、ジェランガムの含有量が、0.075質量%以上であり、
前記組成物中、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が、0.225質量%以上である、組成物を用いて
口腔内を洗浄することを含む、
口腔トレーニング方法。
【発明の効果】
【0008】
口腔トレーニングのための(例えば、口腔腔周囲筋を強化するための)、口腔用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】乳酸カルシウム量に対する物性値への影響を評価した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示に包含される組成物は、ジェランガム、並びにローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを含有する口腔用組成物である。本明細書において、当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」と表記することがある。
【0011】
本開示に用いられるジェランガムは、Sphingomonas elodeaが産生する発酵多糖類である。
本開示の口腔用組成物中、ジェランガムの含有量は、0.075質量%以上であることが好ましい。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.3、0.35、0.4、又は0.5質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.08~0.4質量%程度であってもよい。
【0012】
本開示に用いられるローストビーンガムは、常緑植物のカロブ樹(学名Celatonia Siliqua)の種子から得られる多糖類である。
本開示の口腔用組成物が、ローストビーンガムを含有する場合、本開示の口腔用組成物中、ローカストビーンガムの含有量は、例えば、0.05~0.5質量%程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25、0.3、0.35、又は0.4質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.06~0.25質量%程度であってもよい。
【0013】
本開示に用いられるキサンタンガムは、Xanthomonas campestrisが産生する発酵多糖類である。
本開示の口腔用組成物が、キサンタンガムを含有する場合、本開示の口腔用組成物中、キサンタンガムの含有量は、例えば、0.05~0.5質量%程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25、0.3、0.35、又は0.4質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.06~0.25質量%程度であってもよい。
【0014】
本開示の口腔用組成物が、ローストビーンガム及びキサンタンガムを含有する場合、本開示の口腔用組成物中、ローストビーンガムとキサンタンガムとの含有質量比は、例えば、ローストビーンガム1質量部に対して、キサンタンガム0.2~6質量部程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、又は5程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.3~5質量部程度であってもよい。
【0015】
本開示の口腔用組成物中、ローカストビーンガム及びキサンタンガムの総量は、例えば、0.225質量%以上であることが好ましい。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、又は0.6質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.23~0.6質量%程度であってもよい。
【0016】
本開示の口腔用組成物中、ジェランガム、ローカストビーンガム及びキサンタンガムの総量は、例えば、0.3~1.5質量%程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、又は1.4質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.31~0.9質量%程度であってもよい。
【0017】
本開示の口腔用組成物中、ジェランガムとローストビーンガム及び/又はキサンタンガムとの含有質量比は、例えば、ジェランガム1質量部に対して、ローストビーンガム及び/又はキサンタンガムの総量が0.6~8質量部程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、4、5、6、又は7質量部程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.7~7質量部程度であってもよい。
【0018】
本開示の口腔用組成物中、水の含有量は、例えば、50質量%以上であることが好ましい。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、又は95質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、71~95質量%程度であってもよい。
【0019】
本開示の口腔用組成物は、上述した成分の他、口腔用組成物に含有させることができる公知の成分を含んでいてもよい。公知の成分としては、例えば、水溶性多価金属塩、湿潤剤、分散剤、界面活性剤、有効成分、香味剤、清掃助剤等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
水溶性多価金属塩としては、例えば、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム等の有機酸の水溶性多価金属塩;塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機酸の水溶性多価金属塩等が挙げられる。中でも有機酸の水溶性多価金属塩が好ましく、特に乳酸カルシウムが好ましい。
本開示の口腔用組成物中、水溶性多価金属塩の含有量は、例えば、0.01~2質量%程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、1、又は1.5質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.03~1.5質量%程度であってもよい。
本開示の口腔用組成物中、ジェランガムと水溶性多価金属塩との含有質量比は、例えば、ジェランガム1質量部に対して、水溶性多価金属塩0.3~6質量部程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、又は5程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.4~5質量部程度が好ましく、0.5~1.5質量部がより好ましく、1.2質量部が特に好ましい。
【0021】
湿潤剤としては、例えば、エタノール、グリセリン、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、パラチノース、パラチニット等が挙げられる。中でも、グリセリンが好ましい。
本開示の口腔用組成物中、湿潤剤の含有量は、例えば5~30質量%程度とすることができる。当該数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は29質量%程度とすることができる。より具体的には、例えば、6~29質量%程度であってもよい。
【0022】
分散剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成水溶性高分子等が挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルザルコシネート、ラウロイルメチルタウリン、アシルアミノ酸塩等のアニオン性界面活性剤;ショ糖脂肪酸エステル、ラウリン酸デカグリセリル、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
有効成分としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ素化合物;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、プロテアーゼ、リゾチーム等の酵素;トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、グリセロリン酸、クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;酢酸-dl-α-トコフェロール、酢酸ピリドキシン、アスコルビン酸またはその塩などのビタミン類;タイム、オウゴン等の植物抽出物等が挙げられる。
【0025】
香味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、グリチルリチンおよびその塩類、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ウインターグリーン、サリチル酸メチル、シオネール、チモール、丁字油、ユーカリ油、ローズマリー油、セージ油、レモン油、オレンジ油、オシメン油、シトロネロール、メチルオイゲノール等が挙げられる。
【0026】
清掃助剤としては、例えば、沈降性シリカ、ジルコノシリケート、アルミノシリケート、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0027】
本開示の口腔用組成物は、上述した成分を組み合わせて常法により調製することができる。
【0028】
本開示の口腔用組成物は、pHが、4.5~7.5程度が好ましく、さらに好ましくは5.5~7程度である。
【0029】
本開示の口腔用組成物は、組成物を直径4cmの円筒型瓶の高さ5cmまで充填し、5℃で17時間静置後、レオメーターにより、直径3cmの円形の感圧軸を用いて試料台移動速度10mm/秒で測定した時の押し圧が、1~40Nであることが好ましい。
レオメーターとしては、例えば、SUN RHEO METER CR-500DX(サン科学社製)を用いることができる。また、測定に用いる治具としては、例えば、感圧軸 圧縮弾性用No.1 Φ3cm 円形等が挙げられる。
押し圧の数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、1、2、3、4、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39N程度とすることができる。より具体的には、例えば、3~20N程度であってもよい。
【0030】
本開示の口腔用組成物は、以下の条件で測定した40℃3日放置後の離水量(g/20g)が、1.0g/20g未満であることが好ましい。
測定条件:50mlコニカルチューブ(Falcon社製)に1cm角に裁断した試料20gをとり、40℃で3日間放置した後、目開き750μm、線径450μmのステンレスふるい(東京スクリーン社製)にかけ、受け皿に落ちた水分の重量を測定する。なお、測定に用いる試料において、すでに離水が生じている場合は、目開き750μm、線径450μmのステンレスふるい(東京スクリーン社製)にかけた試料(40℃で3日間放置する前に生じた離水を除去した試料)を用いて、上記の測定を行う。
40℃3日放置後の離水量(g/20g)の数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9g/20g程度とすることができる。より具体的には、例えば、0~0.9g/20g程度であってもよい。なお、本明細書において、「離水」とは、水分の滲出を意味する。
【0031】
本開示の口腔用組成物は、以下の条件で測定した離水率(%)が、25%以下であることが好ましい。
測定条件:試料(例えば、容器に充填された口腔用組成物等)を目開き750μm、線径450μmのステンレスふるい(東京スクリーン社製)にかけ、受け皿に落ちた水分の重量を測定し、測定に用いた試料の重量に対する水分の重量を離水率(%)として算出する。
上記の条件で測定した離水率(%)の数値範囲の上限若しくは下限は、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24%程度とすることができる。より具体的には、例えば、0.5~24%程度であってもよい。
【0032】
本開示の口腔用組成物の形状は、例えば、溶液状、懸濁液状、ゲル状等であることが好ましい。中でも、ゲル状であることが好ましい。なお、本明細書において、「ゲル状」とは、水分を多く含む半固体状を意味する。
【0033】
本開示の口腔用組成物は、例えば、口腔内を循環させる、歯と歯のすきまを行き来させる、クチュクチュする等の後、口腔内から吐き出すようにして用いられることが好ましい。例えば、口腔内を循環させる、歯と歯のすきまを行き来させる、クチュクチュする等により、口腔用組成物の粘度が低くなった後に、口腔内から吐き出すようにして用いられることが好ましい。このため、本開示の口腔用組成物は、例えば、洗口剤等として、好適に用いられる。
【0034】
後述する実施例に示すように、本開示の口腔用組成物を用いて口腔内を洗浄することによって、口腔周囲筋において生じる筋電位(筋細胞(筋線維とも称される)が収縮活動をするときに生じる活動電位)が増大する。本開示の口腔用組成物を用いて口腔内を洗浄する際には、口腔内外の筋肉が用いられ、これにより口腔内外の筋肉が刺激され、筋力の向上または維持に役立つと考えられる。このため、本開示の口腔用組成物は、例えば、口腔トレーニング用、口腔周囲筋トレーニング用、口腔周囲筋強化用、口唇閉鎖力強化用等として、好適に用いることができる。また、本開示の口腔用組成物は、例えば、高齢者のオーラルフレイル予防用として、好適に用いることができる。
高齢者としては、例えば、60歳以上のヒト等が挙げられる。なお、「オーラルフレイル」とは、口に関するささいな衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能の低下まで繋がる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念であり、本明細書においては、「口の健康リテラシーの低下、口のささいなトラブル、口の機能低下、又は食べる機能の障がい」を意味する(歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版)。より具体的には、口の健康リテラシーの低下としては、例えば、不十分な口腔健康への関心等が挙げられる。口のささいなトラブルとしては、例えば、滑舌低下、食べこぼし、噛めない食品の増加、むせ等が挙げられる。口の機能低下としては、例えば、口腔不潔又は乾燥、咬合力低下、口唇又は舌の機能低下、咀嚼機能又は嚥下機能低下等が挙げられる。食べる機能の障がいとしては、例えば、咀嚼障害、摂食嚥下障害等が挙げられる。このため、本開示の口腔用組成物は、例えば、老化による滑舌低下予防用、老化による食べこぼし予防用、老化によるむせ予防用、老化による口腔不潔又は乾燥予防用、老化による咬合力低下予防用、老化による口唇又は舌の機能低下予防用、老化による咀嚼機能又は嚥下機能低下予防用、老化による咀嚼障害予防用、老化による摂食嚥下障害予防用等として好適に用いられる。また、本開示の口腔用組成物の高齢者としては、例えば、老化により滑舌が低下している高齢者、老化による食べこぼしのある高齢者、老化によるむせのある高齢者、老化による口腔不潔又は乾燥のある高齢者、老化により咬合力が低下している高齢者、老化により口唇又は舌の機能が低下している高齢者、老化により咀嚼機能又は嚥下機能が低下している高齢者等が挙げられる。
【0035】
本開示の口腔用組成物は、ゼリーのような崩壊性を有するジェランガム、並びに弾力がありもっちりとした感触を有するローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを、上記の含有量で併用することによって、口腔トレーニング(例えば、口腔周囲筋の強化等)に適した組成物を得ることができる。
また、本開示の口腔用組成物は、ゼリーのような崩壊性を有するジェランガム、並びに弾力がありもっちりとした感触を有するローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムを、上記の含有量で併用することによって、離水の少ない組成物を得ることができる。
【0036】
本開示は、上述した口腔用組成物を用いて、口腔内を洗浄することを含む、口腔トレーニング方法をも包含する。
【0037】
口腔トレーニングとしては、例えば、口腔周囲筋トレーニング、口腔周囲筋強化、口唇閉鎖力強化等が挙げられる。
本明細書において、「口腔内を洗浄する」とは、口腔内を洗いすすぐことを意味する。洗口とも呼ばれる。より具体的には、口腔内を循環させる、歯と歯のすきまを行き来させる、クチュクチュする等の後、口腔内から吐き出すこと等が例示される。
洗浄時間は、例えば、口腔用組成物の粘度が低くなるまでとすることができる。例えば、5~30秒程度とすることができる。
洗浄に使用する口腔用組成物の量は、例えば、5~15mL程度とすることができる。
洗浄は、例えば、1日1回行うものであってもよく、1日2、又は3回行うものであってもよい。
【0038】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0039】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0040】
本開示の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を意味する。また、各表に記載される各成分の配合量値も特に断らない限り「質量%」を示す。
【0041】
[組成物の調製]
下記の表1に示す処方に従って、ゲル状マウスウォッシュ組成物を調製した。より詳細には、粘結剤((A)、(B)、及び(C))に加水し、分散攪拌しながら約80℃に加温し溶解させた。これにその他の成分を入れ、均一になるまで攪拌した後、冷却固化させて組成物を得た。
【0042】
[離水量評価]
50mlコニカルチューブ(Falcon社製)に1cm角に裁断したゲル状マウスウォッシュ組成物20gをとり、40℃で3日間放置した後、目開き750μm、線径450μmのステンレスふるい(東京スクリーン社製)にかけ、受け皿に落ちた水分の重量を測定した。40℃3日放置後の離水量(g/20g)、及び以下の評価基準に基づく評価結果を表1に示す。
(評価基準)
0g以上1g未満:○
1g以上2g未満:△
2g以上:×
【0043】
[筋電位測定]
口唇の右上部分に乾式2極小型筋電センサ(ロジカルプロダクト社製)を口輪筋の筋線維方向に沿って貼り付けた。調製したゲル状マウスウォッシュ組成物を口に含み、10秒洗口したときに発生する筋電位をサンプリング周波数1kHzで測定した。発生した筋電位のRMS値(実効値)を面積分した。水で洗口したときの面積分値を1としたときの相対値を算出した。2名の結果の平均値、及び以下の評価基準に基づく評価結果を表1に示す。
(評価基準)
1.2以上:○
1~1.2未満:△、
1未満:×
【0044】
[使用感評価]
調製したゲル状マウスウォッシュ組成物9mLずつを用いて、パネル5名により洗口して、洗口中筋肉を使っている感じがしたかを下記基準に従い判定した。パネル5名による評価結果の平均値、及び以下の評価基準に基づく評価結果を表1に示す。
(評価基準)
1:そう思う
2:ややそう思う
3:どちらともいえない
4:あまりそう思わない
5:そう思わない
(5名の平均値の評価基準)
3.0未満:○
3.0以上~3.5未満:△、
3.5以上:×
【0045】
【表1】
【0046】
[かたさ評価]
調製直後のゲル状マウスウォッシュ組成物を直径4cmの円筒型瓶の高さ5cmまで充填し、5℃で17時間静置し、下記のとおり、かたさを評価した。
測定装置:SUN RHEO METER CR-500DX(サン科学社製)
測定条件:感圧軸 圧縮弾性用No.1 Φ3cm 円形
試料台移動速度:10mm/秒
かたさ:感圧軸がゲル状マウスウォッシュ組成物に侵入し、最初に破断したときの押し圧(N)
【0047】
実施例1~4の押し圧は、それぞれ6.87N、7.96N、8.27N、15.08Nであった。
【0048】
乳酸カルシウムの配合量を0.06、0.18、0.24、又は0.3%に変更した以外は、表1の実施例1と同様にゲル状マウスウォッシュ組成物を調製した。それぞれの組成物について、上述した方法により、押し圧(N)を測定するとともに、かたさ評価において、感圧軸がゲル内へ侵入して最初に破断したときの距離(侵入距離(mm))を測定し、弾力の評価とした。結果を図1に示す。
【0049】
図1に示すように、ジェランガム0.1%に対して、乳酸カルシウムを0.12%配合した場合に、かたさが低く、かつ最も弾力を付与できることが分かった。
図1