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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091292
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】電子スロットル装置の劣化推定装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20230623BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F02D45/00 364Z
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205961
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 一輝
(72)【発明者】
【氏名】平田 昂暉
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384DA43
3G384ED07
3G384ED11
(57)【要約】
【課題】駆動機構によりスロットルバルブを開閉する電子スロットル装置において、スロットルバルブを作動中の駆動機構の挙動を検出することにより、電子スロットル装置の劣化状態を車載状態のまま容易に推定可能とする。
【解決手段】スロットルバルブの開作動中、オープナ開度OPを通過する際に、オープナ機構のスロットルバルブに対する付勢方向が切り換わる影響により、スロットルバルブを開閉するスロットルギヤとスロットルギヤを回転駆動する中間ギヤとの噛合い状態が切り換わる間に中間ギヤが空走する空走時間TIによって中間ギヤの摩耗状態を推定し、電子スロットル装置の劣化状態を推定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に配設され、開度調整により内燃機関への吸気量を調整するスロットルバルブと、
該スロットルバルブの開度を調整するように駆動する駆動機構と、
前記スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサと、
前記駆動機構による前記スロットルバルブの開度調整が解除された状態で、前記スロットルバルブを所定開度だけ開かれたオープナ開度とするように、前記スロットルバルブの開度が前記オープナ開度より閉側では、前記スロットルバルブを開側に付勢し、前記スロットルバルブの開度が前記オープナ開度より開側では、前記スロットルバルブを閉側に付勢するオープナ機構と、
を備える電子スロットル装置において、
前記駆動機構により前記スロットルバルブを駆動し、前記オープナ開度を通過点として閉側から開側又は開側から閉側へ連続して開作動又は閉作動させ、前記オープナ開度を通過する際の前記駆動機構の挙動を検出することにより前記電子スロットル装置の劣化状態を推定する劣化推定回路を備える電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動機構は、駆動源としてのモータと、該モータの出力軸に設けられたモータギヤと、前記スロットルバルブを開閉作動するスロットルギヤと、該スロットルギヤ及び前記モータギヤの間にあって前記スロットルギヤ及び前記モータギヤに噛み合う中間ギヤとを備え、
前記劣化推定回路は、前記スロットルバルブの開作動中又は閉作動中、前記オープナ開度を通過する際に、前記オープナ機構の付勢方向が切り換わる影響により、前記スロットルギヤと前記中間ギヤとの噛合い状態が切り換わる間に前記中間ギヤが空走する空走時間によって前記電子スロットル装置の劣化状態を推定する電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記空走時間は、前記スロットルバルブの開作動速度又は閉作動速度が連続して所定値未満となる時間によって決定される電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記空走時間は、予め決められた下限時間より短い時間データを除外し、前記下限時間を超える時間データによって決定される電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかにおいて、
前記空走時間は、前記空走時間の現測定値と、前記電子スロットル装置を使い始めの際の前記空走時間とを対比し、前者の前記空走時間が後者のそれより短くなる異常値は除外し、後者の前記空走時間より長い前者の前記空走時間によって決定される電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記空走時間として、前記空走時間の現測定値から前記電子スロットル装置を使い始めの際の前記空走時間を減算した空走時間差が用いられる電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれかにおいて、
前記空走時間は、複数回の測定結果の平均値によって決定される電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかにおいて、
前記劣化推定回路は、前記電子スロットル装置を搭載した内燃機関を停止する都度作動される電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかにおいて、
前記劣化推定回路は、
前記駆動機構の駆動により前記スロットルバルブを、前記オープナ開度を通過点として閉側から開側へ連続して開作動させるスロットルバルブ開作動部と、
前記駆動機構の駆動により前記スロットルバルブを、前記オープナ開度を通過点として開側から閉側へ連続して閉作動させるスロットルバルブ閉作動部と、
前記スロットルバルブ開作動部により前記スロットルバルブを開作動させ、スロットル開度が前記オープナ開度を通過する際の前記駆動機構の挙動を検出する開作動挙動検出部と、
前記スロットルバルブ閉作動部により前記スロットルバルブを閉作動させ、スロットル開度が前記オープナ開度を通過する際の前記駆動機構の挙動を検出する閉作動挙動検出部と、
前記開作動挙動検出部及び前記閉作動挙動検出部の各検出信号を対比して、前記スロットルバルブを前記オープナ開度より開作動する側の劣化状態と、前記スロットルバルブを前記オープナ開度より閉作動する側の劣化状態のどちらの劣化が進んでいるか識別する識別部と、
を備える電子スロットル装置の劣化推定装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記開作動挙動検出部及び前記閉作動挙動検出部は、前記駆動機構における駆動電流の変化の大きさにより前記駆動機構の挙動を検出する電子スロットル装置の劣化推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電子スロットル装置の劣化推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のように多くの部品を組み合わせて構成される製品の場合、寿命が尽きた部品は交換される。一方、製品を廃棄する場合でも、その時点で寿命が残っている部品は、リサイクル使用されることが資源保護の観点から望ましい。そこで、部品毎に劣化状態を容易に検知することが求められている。特許文献1には、車両部品の残存寿命を予測する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-67594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子スロットル装置は、自動車部品の中でも重要保安部品であり、高い信頼性を備えるように製造されている。そのため、自動車部品の中でも、長寿命な部品であり、自動車が廃棄される場合でもリサイクル使用されることが望ましい。一方、長期間使用されるためには、劣化状態を容易に検知することが必要とされている。しかし、電子スロットル装置の劣化状態を検知する装置は現存しない。
【0005】
本明細書が開示する技術の課題は、駆動機構によりスロットルバルブを開閉する電子スロットル装置において、スロットルバルブを作動中の駆動機構の挙動を検出することにより、電子スロットル装置の劣化状態を車載状態のまま容易に推定可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本明細書に開示の電子スロットル装置の劣化推定装置は、次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、内燃機関の吸気通路に配設され、開度調整により内燃機関への吸気量を調整するスロットルバルブと、該スロットルバルブの開度を調整するように駆動する駆動機構と、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサと、前記駆動機構による前記スロットルバルブの開度調整が解除された状態で、前記スロットルバルブを所定開度だけ開かれたオープナ開度とするように、前記スロットルバルブの開度が前記オープナ開度より閉側では、前記スロットルバルブを開側に付勢し、前記スロットルバルブの開度が前記オープナ開度より開側では、前記スロットルバルブを閉側に付勢するオープナ機構と、を備える電子スロットル装置において、前記駆動機構により前記スロットルバルブを駆動し、前記オープナ開度を通過点として閉側から開側又は開側から閉側へ連続して開作動又は閉作動させ、前記オープナ開度を通過する際の前記駆動機構の挙動を検出することにより前記電子スロットル装置の劣化状態を推定する劣化推定回路を備える。
【0008】
上記第1の手段によれば、劣化推定回路は、スロットルバルブを連続的に開作動又は閉作動して、オープナ開度通過時における駆動機構の挙動を検出することにより電子スロットル装置の劣化状態を推定することができる。従って、第1の手段によれば、電子スロットル装置の劣化状態を車載状態のまま推定することができる。
【0009】
第2の手段は、上述した第1の手段において、前記駆動機構は、駆動源としてのモータと、該モータの出力軸に設けられたモータギヤと、前記スロットルバルブを開閉作動するスロットルギヤと、該スロットルギヤ及び前記モータギヤの間にあって前記スロットルギヤ及び前記モータギヤに噛み合う中間ギヤとを備え、前記劣化推定回路は、前記スロットルバルブの開作動中又は閉作動中、前記オープナ開度を通過する際に、前記オープナ機構の付勢方向が切り換わる影響により、前記スロットルギヤと前記中間ギヤとの噛合い状態が切り換わる間に前記中間ギヤが空走する空走時間によって前記電子スロットル装置の劣化状態を推定する。
【0010】
上記第2の手段によれば、スロットルバルブの開作動中又は閉作動中、オープナ開度通過時にオープナ機構の付勢方向が変わることによりスロットルギヤと中間ギヤとの噛合い状態がスロットルギヤ側と中間ギヤ側との間で切り換わる。この切り換わりの間に中間ギヤが空走する。その空走時間の長さにより中間ギヤの摩耗の程度を推定することができる。
【0011】
第3の手段は、上述した第2の手段において、前記空走時間は、前記スロットルバルブの開作動速度又は閉作動速度が連続して所定値未満となる時間によって決定される。
【0012】
上記第3の手段によれば、空走時間をスロットル開度センサの検出信号から容易に求めることができる。
【0013】
第4の手段は、上述した第2の手段又は第3の手段において、前記空走時間は、予め決められた下限時間より短い時間データを除外し、前記下限時間を超える時間データによって決定される。
【0014】
上記第4の手段によれば、スロットル開度センサからの信号のゆらぎなどの原因で空走時間を正常に測定できないとき、そのような短時間の不正常なデータを除外して正常な時間データのみによって誤差の少ない空走時間を求めることができる。
【0015】
第5の手段は、上述した第2の手段~第4の手段のいずれかにおいて、前記空走時間は、前記空走時間の現測定値と、前記電子スロットル装置を使い始めの際の前記空走時間とを対比し、前者の前記空走時間が後者のそれより短くなる異常値は除外し、後者の前記空走時間より長い前者の前記空走時間によって決定される。
【0016】
上記第5の手段によれば、空走時間の現測定値が電子スロットル装置を使い始めの際の空走時間に比べて短くなる異常値を除外して、後者の空走時間より長い前者の空走時間によって誤差の少ない空走時間を求めることができる。
【0017】
第6の手段は、上述した第5の手段において、前記空走時間として、前記空走時間の現測定値から前記電子スロットル装置を使い始めの際の前記空走時間を減算した空走時間差が用いられる。
【0018】
上記第6の手段によれば、空走時間の現測定値から電子スロットル装置を使い始めの際の空走時間を減算して求められた空走時間差が空走時間として用いられるので、中間ギヤの摩耗によって増加した時間のみを抽出して電子スロットル装置の劣化を推定することができる。
【0019】
第7の手段は、上述した第2の手段~第6の手段のいずれかにおいて、前記空走時間は、複数回の測定結果の平均値によって決定される。
【0020】
上記第7の手段によれば、空走時間が平均値により決定されるので、測定毎のバラツキを抑制し、安定して中間ギヤの摩耗の程度を推定することができる。
【0021】
第8の手段は、上述した第1の手段~第7の手段のいずれかにおいて、前記劣化推定回路は、前記電子スロットル装置を搭載した内燃機関を停止する都度作動される。
【0022】
上記第8の手段によれば、電子スロットル装置の劣化状態の推定を内燃機関の停止時に行うので、推定作業を安定して行うことができる。即ち、内燃機関の停止時には内燃機関の制御回路の処理容量に余裕があるため、劣化推定回路として同じ制御回路を使用する場合、劣化推定回路におけるスロットル開度センサ信号のサンプリングレートを細かくすることができる。また、アクセルペダルの操作が行われない状態で、電子スロットル装置の劣化状態を推定するため、アクセルペダルの操作の影響を受けないで推定作業を行うことができる。更に、内燃機関の振動、熱等の外乱の影響を受けないで精度良く推定作業を行うことができる。
【0023】
第9の手段は、上述した第1の手段~第8の手段のいずれかにおいて、前記劣化推定回路は、前記駆動機構の駆動により前記スロットルバルブを、前記オープナ開度を通過点として閉側から開側へ連続して開作動させるスロットルバルブ開作動部と、前記駆動機構の駆動により前記スロットルバルブを、前記オープナ開度を通過点として開側から閉側へ連続して閉作動させるスロットルバルブ閉作動部と、前記スロットルバルブ開作動部により前記スロットルバルブを開作動させ、スロットル開度が前記オープナ開度を通過する際の前記駆動機構の挙動を検出する開作動挙動検出部と、前記スロットルバルブ閉作動部により前記スロットルバルブを閉作動させ、スロットル開度が前記オープナ開度を通過する際の前記駆動機構の挙動を検出する閉作動挙動検出部と、前記開作動挙動検出部及び前記閉作動挙動検出部の各検出信号を対比して、前記スロットルバルブを前記オープナ開度より開作動する側の劣化状態と、前記スロットルバルブを前記オープナ開度より閉作動する側の劣化状態のどちらの劣化が進んでいるか識別する識別部と、を備える。
【0024】
上記第9の手段によれば、スロットルバルブをオープナ開度より開作動する側か閉作動する側かのどちらの劣化が進んでいるかを識別できるので、中古の電子スロットル装置をリビルト品として使用する場合に、ユーザーのニーズに合ったものを選択可能となる。即ち、オープナ開度より開側をよく使うユーザーに対しては、オープナ開度より閉作動する側の駆動機構が劣化したリビルト品を提供し、反対にオープナ開度より閉側をよく使うユーザーに対しては、オープナ開度より開作動する側の駆動機構が劣化したリビルト品を提供する。そうすることにより、劣化した電子スロットル装置をリビルト品として有効活用することができる。
【0025】
第10の手段は、上述した第9の手段において、前記開作動挙動検出部及び前記閉作動挙動検出部は、前記駆動機構における駆動電流の変化の大きさにより前記駆動機構の挙動を検出する。
【0026】
上記第10の手段によれば、駆動機構の挙動検出を駆動機構の駆動電流の変化の大きさにより検出することができる。従って、特別なセンサを使用することなく検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態における電子スロットル装置の横断面図である。
図2】上記電子スロットル装置のカバーを取り外した状態の側面図である。
図3】上記電子スロットル装置においてオープナ開度より閉側でスロットルバルブを開作動中の中間ギヤとスロットルギヤの噛合関係を説明する説明図である。
図4図3と同様の説明図で、オープナ開度より開側での中間ギヤとスロットルギヤの噛合関係を説明する説明図である。
図5】上記電子スロットル装置においてオープナ開度より開側でスロットルバルブを閉作動中の中間ギヤとスロットルギヤの噛合関係を説明する説明図である。
図6図5と同様の説明図で、オープナ開度より閉側での中間ギヤとスロットルギヤの噛合関係を説明する説明図である。
図7】第1実施形態における測定モードの作動状況を説明するタイムチャートである。
図8】上記測定モードの詳細を説明するタイムチャートである。
図9】第1実施形態における電子スロットル装置の制御回路のブロック回路図である。
図10】上記制御回路における測定モードの制御内容を説明するフローチャートである。
図11】上記測定モードにおける空走時間測定動作を説明するフローチャートである。
図12】上記測定モードにおける摩耗判定動作を説明するフローチャートである。
図13図8と同様のタイムチャートであり、測定毎のバラツキの様子を示す。
図14】第2実施形態における図10に対応するフローチャートである。
図15】第3実施形態における図10に対応するフローチャートである。
図16】第4実施形態における図10に対応するフローチャートである。
図17】第4実施形態における測定モードの内容を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<電子スロットル装置の構成>
図1、2は、第1実施形態の電子スロットル装置の劣化推定装置において、劣化推定の対象となる電子スロットル装置の一例を示す。この場合の電子スロットル装置10は、公知のものであり、アルミダイカスト製のスロットルボディ11にスロットルバルブ20とモータ30とを備える。スロットルバルブ20は、スロットルボディ11に形成されたスロットル通路13を開閉するように構成されている。スロットル通路13は、内燃機関の吸気通路の一部を成している。スロットルバルブ20には、スロットルシャフト21が一体に設けられている。スロットルシャフト21は、その両端に設けられた軸受22、23によりスロットルボディ11上で両方向に回転自在とされている。そのため、スロットルシャフト21の回転によりスロットルバルブ20が開閉され、内燃機関の吸気量が調整される。一方、モータ30は、スロットルバルブ20に隣接して設けられ、モータ出力軸31がスロットルシャフト21と平行となるように配置されている。
【0029】
モータ出力軸31とスロットルシャフト21は、減速ギヤ機構60により連結され、モータ30の回転出力が減速ギヤ機構60によって減速されてスロットルシャフト21及びスロットルバルブ20を回転し、スロットル通路13を開閉するように構成されている。従って、スロットルバルブ20の開度をモータ30の回転により調整可能とされている。減速ギヤ機構60は、スロットルシャフト21に結合されたスロットルギヤ61と、モータ出力軸31に結合されたモータギヤ63と、両ギヤ61、63に噛合する中間ギヤ62とを備える。中間ギヤ62は、大径ギヤ62Aと小径ギヤ62Bが一体成形されており、大径ギヤ62Aはモータ出力軸31に噛合され、小径ギヤ62Bはスロットルギヤ61に噛合されている。モータ30と減速ギヤ機構60は、スロットルバルブ20の開度を調整する駆動機構65を構成している。減速ギヤ機構60を覆うようにカバー12が設けられ、カバー12はスロットルボディ11に結合されている。
【0030】
スロットルギヤ61には、スロットルボディ11との間にオープナ機構50が設けられている。オープナ機構50は、スロットルバルブ20がモータ30による回転駆動を解除された状態で、スロットルバルブ20の開度を所定開度(以下、オープナ開度という)だけ開かれた状態に付勢するように構成されている。図2はオープナ開度にされた状態を示す。オープナ機構50は、オープナスプリング53を備え、オープナスプリング53は、オープナ開度に向けてスロットルバルブ20を閉方向に付勢する第1スプリング51と、オープナ開度に向けてスロットルバルブ20を開方向に付勢する第2スプリング52とが一体に連結して構成されている。オープナ機構50は、モータ30によるスロットルバルブ20の開度を調整する機能が故障したとき、車両を最小限の速度で退避走行可能とするために設けられている。
【0031】
スロットルギヤ61には、カバー12との間に跨ってスロットル開度センサ40が設けられている。スロットル開度センサ40は、円筒状のスロットルギヤ61の内周壁に設けられた磁気回路41と、カバー12に設けられ、円筒状のスロットルギヤ61の内周に突出されたホールIC42とを備える。従って、スロットル開度センサ40は、スロットルバルブ20の開度を検出してホールIC42から検出信号を出力している。
【0032】
減速ギヤ機構60の各ギヤ61、62、63は、樹脂製であり、各ギヤ61、62、63の噛合部分は、電子スロットル装置10の中で他の部分に比べて長期間の使用により摩耗し易い。特に、スロットルギヤ61と噛合する中間ギヤ62の小径ギヤ62Bは摩耗し易い。その理由は、スロットルギヤ61よりも中間ギヤ62が摩耗し易い材料により形成されている。例えば、中間ギヤ62の樹脂にはフッ素樹脂が混入されている。
【0033】
<中間ギヤ62の空走について>
図3は、オープナ開度OPより閉側にあるスロットルバルブ20を開いている状態の中間ギヤ62の小径ギヤ62B及びスロットルギヤ61を示す。図3の左肩に記載の記号は、右斜め上向きの矢印でスロットルバルブ20が開く方向に作動されている様子を表しており、その矢印に対して水平方向で交差する線はオープナ開度OPを示す。また、矢印上の黒点は図3に示すスロットルギヤ61に連結されたスロットルバルブ20の開度を示し、ここではスロットル開度がオープナ開度OPより閉側にある。
【0034】
図3に示す中間ギヤ62の小径ギヤ62B及びスロットルギヤ61は、矢印の開方向に回転されている。このとき、モータ30により回転駆動される小径ギヤ62Bによりスロットルギヤ61が回転駆動されている。しかし、スロットルギヤ61にはオープナ機構50のオープナスプリング53によりスロットルバルブ20を開く方向に矢印のように付勢力が付加されている。そのため、実際には、スロットルギヤ61は小径ギヤ62Bの回転に追従して回転している。
【0035】
図4は、図3と同様の左肩の記号で示すように、スロットルバルブ20を開いている途中で、スロットルバルブ20の開度がオープナ開度OPより開側となった状態を示す。この前の時点で、スロットルバルブ20がオープナ開度OPに達したとき、オープナスプリング53による付勢力はなくなる。そのため、スロットルギヤ61の回転は停まり、小径ギヤ62Bは空走する。即ち、図3、4のように、小径ギヤ62Bとスロットルギヤ61との噛合い状態が切り換わる。小径ギヤ62Bによるスロットルギヤ61の回転が継続すると、やがてオープナスプリング53による付勢力はスロットルバルブ20を閉じる方向に矢印のように付加される。
【0036】
小径ギヤ62Bは、中間ギヤ軸62Cに対して遊嵌されている。そのため、図3、4のように、小径ギヤ62Bは、スロットルギヤ61に噛み合ったときの反力により理想状態(中間ギヤ軸62Cと小径ギヤ62Bの軸が同軸)に比べて中間ギヤ軸62Cに対してスロットルギヤ61から離れる方向に移動する。これにより小径ギヤ62Bの空走時間は更に長くなる。なお、図3、4において、61Aはスロットルギヤ61のピッチ円、61Bはスロットルギヤ61の歯先円、61Cはスロットルギヤ61の歯底円、62BAは小径ギヤ62Bのピッチ円、62BBは小径ギヤ62Bの歯先円、62BCは小径ギヤ62Bの歯底円を示す。
【0037】
このようにスロットルバルブ20の開作動中、オープナ開度OPを通過する際に小径ギヤ62Bはスロットルギヤ61に対して空走する。この空走時間は、小径ギヤ62Bが図4のWで示すように摩耗すると、小径ギヤ62Bによりスロットルギヤ61を回転開始するのが遅くなり長くなる。
【0038】
図5は、図3と同様の左肩の記号で示すように、オープナ開度OPより開側にあるスロットルバルブ20を閉じている状態を示す。このとき、図5に示す小径ギヤ62B及びスロットルギヤ61は、矢印の閉方向に回転されている。即ち、小径ギヤ62Bによりスロットルギヤ61が回転駆動されている。しかし、スロットルギヤ61にはオープナ機構50のオープナスプリング53によりスロットルバルブ20を閉じる方向に矢印のように付勢力が付加されている。そのため、実際には、スロットルギヤ61は小径ギヤ62Bの回転に追従して回転している。
【0039】
図6は、左肩の記号で示すように、スロットルバルブ20を閉じている途中で、スロットルバルブ20の開度がオープナ開度OPより閉側となった状態を示す。この前の時点で、スロットルバルブ20がオープナ開度OPに達したとき、オープナスプリング53による付勢力はなくなる。そのため、スロットルギヤ61の回転は停まり、小径ギヤ62Bは空走する。即ち、図5、6のように、小径ギヤ62Bとスロットルギヤ61との噛合い状態が切り換わる。小径ギヤ62Bによるスロットルギヤ61の回転が継続すると、やがてオープナスプリング53による付勢力はスロットルバルブ20を開く方向に矢印のように付加される。
【0040】
また、図5、6のように、小径ギヤ62Bは、スロットルギヤ61に噛み合ったときの反力により理想状態(中間ギヤ軸62Cと小径ギヤ62Bの軸が同軸)に比べて中間ギヤ軸62Cに対してスロットルギヤ61から離れる方向に移動する。これにより小径ギヤ62Bの空走時間は更に長くなる。
【0041】
このようにスロットルバルブ20の閉作動中、オープナ開度OPを通過する際に小径ギヤ62Bはスロットルギヤ61に対して空走する。この空走時間は、小径ギヤ62Bが図6のWで示すように摩耗すると、小径ギヤ62Bによりスロットルギヤ61を回転開始するのが遅くなり長くなる。
【0042】
<第1実施形態>
図7は、第1実施形態として内燃機関に搭載された電子スロットル装置10の劣化推定装置の作動の概要を示す。第1実施形態では、図7(1)のように、内燃機関の停止時(T1に相当)に、スロットル開度を一旦全閉(T3に相当)とし、その後、予め決められた一定速度(例えば、毎秒20度)で一定時間(例えば、1秒間。T3~T4に相当)だけスロットルバルブ20を開作動させた後、スロットル開度をオープナ開度(OP開度)とする(T5に相当)処理を行う。このようにスロットルバルブ20を開作動する間(T3~T4に相当)に電子スロットル装置10の劣化状態を推定している。詳細は後述する。図7(2)(3)のようにT1の時点で内燃機関が停止されてもスロットル開度センサ40、モータ30、及び制御回路70(図9参照)への電源供給は継続される。電子スロットル装置10の劣化状態の推定処理を含む内燃機関作動に関わる全ての処理が終了したT7の時点でスロットル開度センサ40、モータ30、及び制御回路70への電源供給は遮断される。このようにスロットルバルブ20を開いてもT1の時点以降は内燃機関に燃料が供給されないため、内燃機関が作動することはない。図7に基づいて説明した処理は、内燃機関が停止される都度行われる。
【0043】
図9は、内燃機関(図示略)の制御回路70を抜粋して示す。制御回路70は、プログラム内蔵型コンピュータを含んで構成されている。制御回路70には、電子スロットル装置10のスロットル開度センサ40及びアクセルペダルセンサ80の検出信号が入力されている。アクセルペダルセンサ80は、車両を運転する運転者によるアクセルペダル(図示略)の操作量を検出している。一方、制御回路70は、スロットル開度センサ40及びアクセルペダルセンサ80の検出信号を受けて電子スロットル装置10のモータ30の回転を制御している。即ち、アクセルペダルの操作量に応じてモータ30が回転駆動され、アクセルペダルの操作量に対応したスロットル開度に達したことがスロットル開度センサ40により検出されると、モータ30の回転が停止される。制御回路70は、電子スロットル装置10の劣化推定装置の機能も備えている。
【0044】
図10は、制御回路70のコンピュータで実行される電子スロットル装置10の劣化推定プログラムの内容を示している。図7のT1の時点のように内燃機関が停止されて劣化推定プログラムが実行されると、ステップS1ではIG-OFFフラグがセットされON状態にあるか否かが判定される。IG-OFFフラグは、内燃機関を停止するためにIGスイッチがオフされると、セットされる。従って、T1の時点で、IG-OFFフラグはセットされており、ステップS1は肯定判断され、ステップS2に進み、そこで寿命検知フラグがセットされON状態にあるか否かが判定される。最初は寿命検知フラグがON状態にないため、ステップS2は否定判断されステップS3にて寿命検知フラグがON状態にセットされる(T2の時点)。寿命検知フラグがON状態にセットされると、電子スロットル装置10の劣化状態の検知(推定)が開始される。その後の処理では、ステップS2は肯定判断されてステップS4にてスロットル開度センサ40の出力信号がスロットル開度全閉の信号を出力しているか否か判定される。最初はスロットル開度が全閉とされていないため、ステップS4は否定判断されてステップS5にてモータ30を作動してスロットル開度を全閉状態とする(T3の時点)。このようにスロットル開度が全閉とされると、ステップS4は肯定判断されてステップS6にて劣化推定処理(空走時間の測定)が開始される。ここでは、図7、8のT3の時点に相当し、スロットルバルブ20が毎秒20度の速さで開き始める。図8(1)、(2)は、図7のT3以降のスロットル開度センサ40の検出信号とその検出信号を微分して得られる角速度信号を示している。
【0045】
ステップS7では測定開始フラグがセットされてON状態とされているか否かが判定され、最初は測定開始フラグがON状態にないためステップS7は否定判断され、ステップS8にて測定開始フラグがON状態とされ、スロットル作動タイマが「0」にリセットされ、スロットル作動タイマの測定が開始される。測定開始フラグがON状態とされて後は、ステップS7は肯定判断され、ステップS9にてスロットルバルブ20の開作動の指令速度が毎秒20度とされているか否かが判定される。指令速度が毎秒20度になっていないとステップS9は否定判断されて上述のステップS8が繰り返される。指令速度が毎秒20度になると、ステップS9は肯定判断されステップS20にて空走時間の測定処理が実行される。
【0046】
ステップS20が実行されると、図11のステップS21にてスロットル開度センサ40の検出値がオープナ開度OPの手前で予め設定した開度LOP(スロットル開度センサ40の検出値でオープナ開度-0.02V)に到達したか否か判定される。図8のT31の時点でスロットル開度センサ40の検出値がLOPに到達すると、ステップS21は肯定判断されステップS22にて検出フラグがセット(ON)される。検出フラグがセットされると、空走時間測定用タイマが測定可能な状態とされる。次のステップS23では、スロットル開度センサ40の検出信号が微分処理されて求められるスロットルバルブ20の角速度が毎秒10度より小さいか否かが判定される。即ち、ここではスロットルバルブ20の開作動速度が所定値未満か、例えば停止しているか否かが判定されている。図8のT32の時点で角速度が毎秒10度より小さくなると、ステップS23は肯定判断され、ステップS24にて空走時間カウントフラグがセット(ON)される。空走時間カウントフラグがセットされると、空走時間測定用タイマのカウントが開始される。こうしてスロットルギヤ61の回転が停止し、中間ギヤ62の小径ギヤ62Bが空走している空走時間が測定される。係る小径ギヤ62Bの空走が駆動機構の挙動として検出されている。
【0047】
次のステップS25では、スロットルバルブ20の角速度が毎秒10度より大きいか否かが判定される。図8のT33の時点で角速度が毎秒10度より大きくなると、ステップS25は肯定判断され、ステップS26にて空走時間カウント完了フラグがセット(ON)される。空走時間カウント完了フラグがセットされると、空走時間測定用タイマのカウントが停止される。従って、空走時間測定用タイマでは、スロットルバルブ20の角速度が毎秒10度より小さい間の時間(図8のTIに相当)が測定される。この時間は、中間ギヤ62とスロットルギヤ61の噛合を通じてモータ30によりスロットルバルブ20が開放される途中のオープナ開度付近で中間ギヤ62が空走してスロットルギヤ61の回転が一時的に止まる時間である(図3、4参照)。
【0048】
ステップS27では、スロットル開度センサ40の検出値がオープナ開度OPを過ぎて予め設定した開度HOP(スロットル開度センサ40の検出値でオープナ開度+0.02V)に到達したか否か判定される。図8のT34の時点でスロットル開度センサ40の検出値がHOPに到達すると、ステップS27は肯定判断されステップS28にて検出完了フラグがセット(ON)される。検出完了フラグがセットされると、空走時間測定用タイマの作動が停止される。ここで図10におけるステップS20の空走時間測定処理が終了する。
【0049】
図10のステップS31では、スロットル作動タイマの計測時間が予め設定した時間、例えば1秒に到達したか否かが判定される。スロットル作動タイマの計測時間が予め設定した時間に到達すると、ステップS31は肯定判断され、ステップS32にて測定完了フラグがセット(ON)される。測定完了フラグがセットされると、スロットル作動タイマの作動が停止される。
【0050】
ステップS33では、ステップS20の空走時間測定処理にて測定された空走時間が予め設定した下限時間、例えば20ミリ秒以上か否かが判定される。空走時間が下限時間より小さい場合は、ステップS33が否定判断されてステップS34にてその空走時間データが削除される。この処理により、空走時間として明らかに正しくないデータが除外される。上述のように空走時間としては、スロットルバルブ20の角速度が毎秒10度より小さくなる時間を測定している。しかし、スロットル開度センサ40の検出信号に「ゆらぎ」が含まれていると、その影響を受けて異常に短い時間を空走時間として検出してしまうことが考えられる。図13は、図8と同様に空走時間を測定する様子を示す。空走時間の測定範囲であるT31からT34の間で、図13(1)のスロットル開度センサ40の検出信号に「F」で示す「ゆらぎ」が含まれていると、図13(2)の「TS」で示すように「ゆらぎ」の影響で、空走時間ではないところで、スロットルバルブ20の角速度が毎秒10度より小さくなり、空走時間として誤検出してしまうことが生じる。ステップS33、S34の処理では、このような誤検出のデータを除去している。
【0051】
空走時間が下限時間以上の場合は、ステップS33が肯定判断されてステップS35にて空走時間データとして保存される。ステップS35では、予め設定した測定回数(例えば、20回)の空走時間データの平均値が保存される。次のステップS40では、中間ギヤ62の摩耗状態の判定処理が実行される。
【0052】
ステップS40が実行されると、図12のステップS41にてΔ空走時間の算出が行われる。Δ空走時間は、上述のステップS35にて保存された空走時間(現測定値)から電子スロットル装置10が使用開始された初期に求められ保存されていた空走時間を減算した値である。ステップS42では、Δ空走時間が0より大きいか否かが判定される。Δ空走時間が0より小さくなるのは、電子スロットル装置10が使用開始された初期よりも現時点の方が空走時間が短いことを意味し、中間ギヤ62の摩耗が進むと空走時間は長くなるはずであり、明らかに間違ったデータ(異常値)である。そのため、そのような間違ったデータは使用せず、Δ空走時間が0より大きい場合のみステップS42が肯定判断される。次のステップS43では、Δ空走時間が予め設定した第1所定値より小さいか否かが判定される。Δ空走時間が第1所定値以上の場合は、ステップS43は否定判断され、ステップS44にて警告灯(MIL)が点灯される。即ち、中間ギヤ62の摩耗が進んで劣化状態が限界に近付いたとき、空走時間が長くなったのを判断して警告灯を点灯して電子スロットル装置10の劣化状態を使用者に警告する。一方、Δ空走時間が第1所定値より小さい場合は、ステップS43は肯定判断され、ステップS40の摩耗状態の判定処理を終了する。
【0053】
その後、図10のステップS36にて寿命検知フラグがOFF状態にリセットされる(図7のT6の時点)。これにより、電子スロットル装置10の劣化状態の検知(推定)が終了したことが記録される。
【0054】
以上の図10の処理によりスロットルバルブ20の開速度が低くなる時間により中間ギヤ62の空走時間を測定し、その時間の長さにより中間ギヤ62の摩耗状態を推定している。つまり、電子スロットル装置10の劣化状態を推定している。この処理は、電子スロットル装置10を内燃機関から取り外すことなく、車両に搭載した状態のまま行うことができる。
【0055】
<第2実施形態>
図14は、第2実施形態を示す。第2実施形態が上述の第1実施形態に対して特徴とする点は、求めた空走時間データを使って摩耗状態の判定を行うまでの処理の仕方を変更した点である。その他の構成は両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0056】
図14において、ステップS33では、測定された空走時間が予め設定した下限時間、例えば20ミリ秒以上か否かが判定される。空走時間が下限時間より小さい場合は、ステップS33が否定判断されてステップS34にてその空走時間データが削除される。ここまでは第1実施形態と同一である。空走時間が下限時間以上でステップS33が肯定判断されると、ステップS41にて上述のようにΔ空走時間が算出される。次のステップS42では、Δ空走時間が0より大きいか否かが判定される。第1実施形態の場合と同様、Δ空走時間が0より小さい場合は、そのような間違ったデータは使用せず、Δ空走時間が0より大きい場合のみステップS42が肯定判断され、ステップS45にて予め設定した測定回数のΔ空走時間の平均値が保存される。そして、ステップS43、ステップS44では、Δ空走時間が第1所定値以上の場合は、ステップS44にて警告灯(MIL)が点灯され、Δ空走時間が第1所定値より小さい場合は、摩耗状態の判定処理を終了する。
【0057】
第1実施形態では、空走時間データの平均値を空走時間により直接求めたのに対し、第2実施形態では、Δ空走時間の平均値により空走時間を代表するデータの平均値を求め、その平均値により摩耗状態を判定することができる。
【0058】
<第3実施形態>
図15は、第3実施形態を示す。第3実施形態が上述の第2実施形態(図14参照)に対して特徴とする点は、求めた空走時間データを使って摩耗状態の判定を行うまでの処理の仕方を変更した点である。その他の構成は両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0059】
図15において、ステップS35及びステップS46の処理を除いて他の処理は図14の第2実施形態と同一である。ステップS35では、第1実施形態のステップS35と同様、ステップS20の空走時間測定処理にて求められた空走時間データの平均値が保存される。そして、次のステップS46では、ステップS35にて保存された空走時間データの平均値が予め設定した第2所定値より小さいか否かが判定される。空走時間が第2所定値以上の場合は、ステップS44にて警告灯(MIL)が点灯され、空走時間が第2所定値より小さい場合は、摩耗状態の判定処理を終了する。
【0060】
第2実施形態では、Δ空走時間の平均値により空走時間を代表するデータの平均値を求めたのに対し、第3実施形態では、空走時間データの平均値を空走時間により直接求め、その平均値により摩耗状態を判定することができる。
【0061】
<第4実施形態>
図16は、第4実施形態を示す。第4実施形態が上述の第1実施形態(図10参照)に対して特徴とする点は、スロットルバルブをオープナ開度より開作動する側の劣化状態と、スロットルバルブをオープナ開度より閉作動する側の劣化状態とのどちらの劣化が進んでいるかを識別可能とした点である。その他の構成は両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0062】
図16において、ステップS51では、IG-OFFフラグがセットされON状態にあるか否かが判定される。IG-OFFフラグは、内燃機関を停止するためにIGスイッチがオフされると、セットされる。この時点では、IG-OFFフラグはセットされており、ステップS51は肯定判断され、ステップS52にて測定開始フラグがセットされてON状態とされているか否かが判定される。最初は測定開始フラグがON状態にないためステップS52は否定判断され、ステップS53にて測定開始フラグがON状態、測定完了フラグがOFF状態とされる。ここでは、スロットル作動タイマが測定開始される。測定開始フラグがON状態とされて後は、ステップS52は肯定判断され、ステップS54にて例えば、全閉より20度開側までスロットルバルブ20を開いた状態とする(図17のT0の時点)。次のステップS55では、スロットルバルブ20を毎秒20度の速さで閉作動する。そして、ステップS56では、図17(1)のTIで示すように中間ギヤ62が所定時間以上空走した直後(図17のT1の時点)のモータ30の駆動電流の変化量Icを求める。
【0063】
スロットル開度がオープナ開度OPを通過するとき、中間ギヤ62が空走するため、スロットル開度の指令値に対し、スロットル開度が追従できなくなる。その追従遅れを挽回するため、モータ30の駆動電流は大きく変化する。そのため、モータ電流の変化量は中間ギヤ62の空走時間に相当する。即ち、モータ電流の変化量は中間ギヤ62の摩耗量に相当する。従って、モータ電流の変化量が駆動機構の挙動として検出されている。
【0064】
ステップS57では、スロットルバルブ20を全閉状態まで閉作動し、次のステップS58では、スロットルバルブ20を毎秒20度の速さで開作動する。そして、ステップS59では、図17(1)のTIで示すように中間ギヤ62が所定以上空走した直後(図17のT2の時点)のモータ30の駆動電流の変化量Ioを求める。ステップS60では、予め設定した時間、例えば1秒間スロットル開度の開作動が継続される。この時間は、上述のスロットル作動タイマにより計測される。
【0065】
ステップS61では、ステップS56で求めたモータ30の駆動電流の変化量Icと、ステップS59で求めたモータ30の駆動電流の変化量Ioとを比較する。その結果、IoがIcより大きい場合は、ステップS62にてオープナ開度よりスロットルバルブ20を開作動する側の中間ギヤ62の摩耗が閉作動する側よりも摩耗量が大きいと判定し、記憶する。また、IcがIoより大きい場合は、ステップS63にてオープナ開度よりスロットルバルブ20を閉作動する側の中間ギヤ62の摩耗が開作動する側よりも摩耗量が大きいと判定し、記憶する。その後、ステップS64では、測定完了フラグがON状態、測定開始フラグがOFF状態とされ、上述のスロットル作動タイマの作動が停止される。次のステップS65では、スロットルバルブ20をオープナ開度OPとして制御回路70の通電をOFFとする。オープナ開度OPは、学習値とされてもよい。
【0066】
図16において、ステップS55の処理は、課題を解決するための第9の手段におけるスロットルバルブ閉作動部に相当し、ステップS58の処理は、上記第9の手段におけるスロットルバルブ開作動部に相当し、ステップS56の処理は、上記第9の手段における閉作動挙動検出部に相当し、ステップS59の処理は、上記第9の手段における開作動挙動検出部に相当し、ステップS61の処理は、上記第9の手段における識別部に相当する。
【0067】
第4実施形態によれば、中間ギヤ62において、スロットル開度のオープナ開度より開作動する側か閉作動する側のどちらの摩耗(劣化)が進んでいるかを識別できるので、中古の電子スロットル装置10をリビルト品として使用する場合に、ユーザーのニーズに合ったものを選択可能となる。即ち、オープナ開度より開側をよく使うユーザーに対しては、中間ギヤ62のオープナ開度より閉作動する側が劣化したリビルト品を提供し、反対にオープナ開度より閉側をよく使うユーザーに対しては、中間ギヤ62のオープナ開度より開作動する側が劣化したリビルト品を提供する。そうすることにより、劣化した電子スロットル装置10をリビルト品として有効活用することができる。その結果、電子スロットル装置10を新たに製造するために生じる炭酸ガスの排出を抑制することができる。
【0068】
<その他の実施形態>
以上、本明細書に開示の技術を特定の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、上記実施形態では、電子スロットル装置を自動車に搭載した場合について説明したが、自動車以外の車両にも搭載可能である。また、第1実施形態では、劣化推定回路を、モータにより連続作動されている際のスロットルバルブの開作動速度が所定値未満となる時間の長さにより劣化状態を推定したが、モータ作動に対するスロットルバルブの開又は閉作動のずれの大きさにより劣化状態を推定してもよい。即ちスロットルバルブの開作動指令値とスロットル開度センサの検出値との差が設定値以上に到達したか否かにより劣化状態を推定してもよい。更にまた、第4実施形態のように中間ギヤの空走後のモータ電流の変化量により劣化状態を推定することもできる。
【0069】
第1実施形態では、オープナ開度を通過点としてスロットルバルブを開作動したときの中間ギヤの空走時間により中間ギヤの摩耗状態を推定したが、オープナ開度を通過点としてスロットルバルブを閉作動したときの中間ギヤの空走時間により中間ギヤの摩耗状態を推定することもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 電子スロットル装置
11 スロットルボディ
12 カバー
13 スロットル通路
20 スロットルバルブ
21 スロットルシャフト
22、23 軸受
30 モータ
31 モータ出力軸
40 スロットル開度センサ
41 磁気回路
42 ホールIC
50 オープナ機構
51 第1スプリング
52 第2スプリング
53 オープナスプリング
60 減速ギヤ機構
61 スロットルギヤ
61A 噛合いピッチ円
61B 歯先円
61C 歯底円
62 中間ギヤ
62A 大径ギヤ
62B 小径ギヤ
62BA 噛合いピッチ円
62BB 歯先円
62BC 歯底円
62C 中間ギヤ軸
63 モータギヤ
65 駆動機構
70 制御回路
80 アクセルペダルセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17