(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091293
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】光走査装置、光電センサおよび測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230623BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20230623BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205962
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】西村 健太郎
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AC02
5J084BA03
5J084BA07
5J084BB22
5J084BB28
5J084DA01
5J084DA09
5J084EA07
(57)【要約】
【課題】物体検出のためのレーザ光を広い範囲に走査させる技術を提供する。
【解決手段】光源装置2から照射されたレーザ光を、光偏向器3で反射させて出射する光走査装置1であって、光偏向器3は、回転軸周りに配置され、光源装置2側に凸となるように回転軸に対して傾斜した複数の反射面と、回転軸周りに複数の反射面を回転させる回転駆動部と、を有している。光源装置2は、複数のレーザ光を同一位置から異なる方向へ照射し、かつ、複数の反射面のうち異なる反射面に対してレーザ光を照射する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置から照射されたレーザ光を、光偏向器で反射させて出射する光走査装置であって、
前記光偏向器は、
回転軸周りに配置され、前記光源装置側に凸となるように前記回転軸に対して傾斜した複数の反射面と、
前記回転軸周りに前記複数の反射面を回転させる回転駆動部と、
を有し、
前記光源装置は、
複数のレーザ光を同一位置から異なる方向へ照射し、かつ、前記複数の反射面のうち異なる反射面に対してレーザ光を照射する、
光走査装置。
【請求項2】
前記光偏向器は、前記複数の反射面を側面とする正角錐形状または正角錐台形状のミラー、を有する、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記ミラーは四角錐形状である、
請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記光源装置は、発光面の同一位置から、前記発光面の法線を中心に線対称となる2つの照射方向にレーザ光を照射するフォトニック結晶レーザを含む、
請求項1から請求項3の何れか一つに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光源装置は、複数の前記フォトニック結晶レーザを含み、前記複数の反射面それぞれに対して、レーザ光を照射する、
請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光源装置は前記回転軸上に配置されている、
請求項1から請求項5の何れか一つに記載の光走査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一つに記載の光走査装置と、
前記光走査装置から出射されたレーザ光が物体で反射した反射光を受光する受光部と、
を備え、
前記受光部は、
前記光源装置を挟んで前記反射面と反対側に配置され、前記反射光が前記反射面で反射した光を集光する一つの受光レンズと、
前記受光レンズによって集光された光を受光する受光素子と、
を有する、光電センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の光電センサを備え、
前記受光部が受光した光を用いて、前記物体までの距離を検出する、測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、光電センサおよび測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等の施設において自走する移動体が種々存在する。この移動体は、例えば周囲の物体の有無、または、物体までの距離を検出する物体検出装置を備えている。物体検出装置は、レーザ光を物体検出エリアへ照射し、反射してきた光を受光することで、そのエリア内での物体の有無、または、物体までの距離を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された物体検出装置は、光源と、光源から射出された光を偏向する光偏向器とを備えている。光偏向器は、回転軸周りに回転し、回転軸に対して傾斜した複数の反射面を有している。そして、物体検出装置は、回転軸を中心として複数の反射面を回転させつつ、一の反射面に対して回転軸に平行な方向から光を入射する。これにより、光の進行方向は、回転軸に直交する平面内において変化するようになる。つまり、物体検出装置は、この平面内における物体検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された物体検出装置のように、光を反射させる反射面を回転させることで、光を一定の範囲に走査させることが可能となる。しかしながら、移動体をより安全に自走させるためには、移動体の略全周にわたり光を走査して、より広い範囲で物体を検出できることが望まれる。特許文献1に開示された物体検出装置では、一方向(例えば、移動体の前方)のみしか、物体検出を行えない。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、物体検出のためのレーザ光を広い範囲に走査させる光走査装置、光電センサおよび測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するため、本発明の一側面における光走査装置は、光源装置から照射されたレーザ光を、光偏向器で反射させて出射する光走査装置であって、光偏向器は、回転軸周りに配置され、光源装置側に凸となるように回転軸に対して傾斜した複数の反射面と、回転軸周りに複数の反射面を回転させる回転駆動部と、を有し、光源装置は、複数のレーザ光を同一位置から異なる方向へ照射し、かつ、複数の反射面のうち異なる反射面に対してレーザ光を照射する、ことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、回転軸周りに配置された複数の反射面のうち異なる反射面にレーザ光を照射することで、異なる方向へレーザ光を走査させることができる。つまり、物体検出のためのレーザ光を広い範囲に走査させることできる。
【0009】
(2)上記(1)の光走査装置において、光偏向器は、複数の反射面を側面とする正角錐形状または正角錐台形状のミラー、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によると、複数の反射面それぞれは、回転軸に対して同じ角度で傾斜した状態となる。したがって、複数の反射面が回転に応じて入れ替わっても、光走査装置から出射される光を同一の軌跡で走査させることができる。
【0011】
(3)上記(2)の光走査装置において、ミラーは四角錐形状である、ことを特徴とする。
【0012】
この構成によると、光源装置から4つのレーザ光をミラーの各側面に照射することで、回転軸を中心に360°方向へレーザ光を照射させることができる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)の何れか一つの光走査装置において、光源装置は、発光面の同一位置から、発光面の法線を中心に線対称となる2つの照射方向にレーザ光を照射するフォトニック結晶レーザを含む、ことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、一のフォトニック結晶レーザで、2つのレーザ光を同一位置から照射する際、レーザ光の照射方向の調整を自在に行い得る。このため、複数の光源を用いる場合と比べて、レーザ光の照射を制御する制御装置が複雑となることを回避できる。
【0015】
(5)上記(4)の光走査装置において、光源装置は、複数の前記フォトニック結晶レーザを含み、複数の反射面それぞれに対して、レーザ光を照射する、ことを特徴とする。
【0016】
この構成によると、少なくとも4つのレーザ光を同一位置から照射することができる。
【0017】
(6)上記(1)~(5)の何れか一つの光走査装置において、光源装置は回転軸上に配置されている、ことを特徴とする。
【0018】
この構成によると、レーザ光が反射面で反射するときの反射方向が調整し易くなる。
【0019】
(7)本発明の一側面における光電センサは、上記(1)~(6)の何れか一つの光走査装置と、光走査装置から出射されたレーザ光が物体で反射した反射光を受光する受光部と、を備え、受光部は、光源装置を挟んで反射面と反対側に配置され、反射光が反射面で反射した光を集光する一つの受光レンズと、受光レンズによって集光された光を受光する受光素子と、を有する、ことを特徴とする。
【0020】
この構成によると、広い範囲にレーザ光を走査させることができる。
【0021】
(8)本発明の一側面における測距装置は、上記(7)の光電センサを備え、受光部が受光した反射光を用いて、物体までの距離を検出する、ことを特徴とする。
【0022】
この構成によると、広い範囲にレーザ光を走査させて、広い範囲で物体までの距離を含めて物体検出を行える。
【発明の効果】
【0023】
この構成によると、広い範囲にレーザ光を走査させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態の測距装置を備えた移動体を側方から視た図である。
【
図3】
図3は、光走査装置を側方から視た図である。
【
図4】
図4は、光走査装置を上方から視た図である。
【
図5】
図5は、光源装置を説明するための図である。
【
図6】
図6は、光源装置からミラーへ照射したレーザ光の光芒を示す図である。
【
図7】
図7は、レーザ光が照射されたミラーを光源装置側から視た図である。
【
図9】
図9は、水平方向に対する測定光の角度を説明するための図である。
【
図10】
図10は、光走査装置が走査させたレーザ光の軌跡をグラフ化した図である。
【
図12】
図12は、受光素子が設けられた基板の平面図である。
【
図13】
図13は、別の構成の光源装置を説明するための図である。
【
図15】
図15は、
図13に示す光源装置を備えた光走査装置が走査した測定光の軌跡をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[測距装置]
図1は、本実施形態の測距装置10を備えた移動体100を側方から視た図である。
図2は、移動体100を上方から視た図である。
【0026】
移動体100は、例えば工場、ビルなどの施設内を走行する車両である。移動体100は、屋内外を問わず自走する車両であってもよいし、人によって操作されて動く車両であってもよい。また、移動体100は自動車であってもよい。
図1および
図2に示す矢印Aは、移動体100の進行方向である。
【0027】
移動体100は測距装置10を備えている。測距装置10は、
図1の斜線領域110に示すように、移動体100の前方の下方に向けてレーザ光を照射して、走査させる。また、測距装置10は、
図2の斜線領域111に示すように、移動体100の側方、より詳しくは、側方の下方に向けてもレーザ光を照射して、走査させる。そして、例えば、測距装置10は、照射したレーザ光が移動体100の周囲にある物体101で反射した反射光を受光することで、物体101までの測距を行う。すなわち、測距装置10は、搭載される移動体100の周囲の物体を検知する装置として機能する。
【0028】
測距装置10は、搭載される移動体100の前方および側方にレーザ光を走査させるために、水平方向における360°方向にレーザ光を走査させる光走査装置を備えている。
【0029】
なお、
図1および
図2では、移動体100の前方および側方の下方にレーザ光が照射され、走査される状態を示しているが、測距装置10を移動体100の中央に配置して、移動体100の後方の下方にも、レーザ光が照射され、走査されるようにしてもよい。また、測距装置10は、移動体100の走行面に対して平行な方向、または、上方に向けてレーザ光を照射することもできる。これに関しては、
図9を参照して後述する。
【0030】
[光走査装置]
以下、本実施形態の光走査装置の構成について説明する。
【0031】
図3および
図4は、本実施形態の光走査装置1の構成を説明するための図である。
図3は、光走査装置1を側方から視た図である。
図4は、光走査装置1を上方から視た図である。
【0032】
光走査装置1は光源装置2と光偏向器3とを備えている。光走査装置1は、光源装置2から照射したレーザ光を、光偏向器3で反射させて、レーザ光を出射する装置である。
【0033】
光偏向器3は、ミラー31と、回転駆動部32とを備えている。ミラー31は四角錐形状である。ミラー31の4つの側面31A、側面31B、側面31Cおよび側面31Dそれぞれは、光源装置2からのレーザ光、および、物体からの反射光を反射する反射面となっている。ミラー31の底面は開口していてもよいし、閉じられていてもよい。
【0034】
以下の説明では、四角錐の頂点から四角錐の底面に下した垂線を通る軸を、回転軸P1と言う。本実施形態では、光走査装置1は、回転軸P1が鉛直方向と一致し、ミラー31の頂点が上方、ミラー31の底面が下方となるように、ミラー31を支持している。
【0035】
なお、ミラー31は四角錐形状に限らず、三角錐または五角錐などの正角錐形状であってもよい。また、ミラー31は正角錐台形状に限らず、頂点側が切削された正四角錐台形状であってもよい。ミラー31が正角錐台形状である場合、回転軸P1は、正角錐台の天面中心から底面に下した垂線を通る軸となる。さらに、光偏向器3は、正角錐台形状または正四角錐台形状のミラー31に代えて、回転軸周りに配置され、光源装置2が位置する側である上側に錐状体の頂点が向く凸となるように回転軸に対して傾斜した複数の反射面を備えた他の構成であってもよい。
【0036】
回転駆動部32はミラー31を回転軸P1周りに回転させる。回転駆動部32の構成としては、特に限定されないが、例えば、上記した特許文献1(特許第6362027号)に記載された構成が挙げられる。回転駆動部32は、光源装置2がミラー31にレーザ光を照射している間、ミラー31を回転させる。回転駆動部32は、ミラー31を含む回転構造体の回転角度を検出する回転位置検出手段を備える。回転駆動部32は、図示しない筐体に取り付けられる。
【0037】
図5は光源装置2を説明するための図である。
図5は、レーザ光を照射する側から視た光源装置2の斜視図である。
【0038】
光源装置2は、6つのフォトニック結晶レーザ21、フォトニック結晶レーザ22、フォトニック結晶レーザ23、フォトニック結晶レーザ24、フォトニック結晶レーザ25、およびフォトニック結晶レーザ26を有し、それらを配列させた構成である。
【0039】
フォトニック結晶レーザ21は、発光面の同一位置から、発光面の法線P2を中心に線対称となる2つのレーザ光2Aおよびレーザ光2Bを照射する。フォトニック結晶レーザ21は、レーザ光2A、2Bの照射方向の調整が可能な構成である。具体的には、レーザ光2A、2Bの照射方向は、法線P2を中心とした径方向、および、法線P2を中心とした周方向に沿って変更される。
【0040】
なお、レーザ光2A、2Bの照射方向の調整は、フォトニック結晶レーザ21の製造時に行われる。つまり、フォトニック結晶レーザ21の製造後では、レーザ光2A、2Bの照射方向の調整はできない。
【0041】
フォトニック結晶レーザ22~26それぞれは、フォトニック結晶レーザ21と同じ構成であり、2つのレーザ光を照射する。つまり、光源装置2は、計12のレーザ光を照射する。フォトニック結晶レーザ21~26それぞれにおいて、照射される2つのレーザ光は、発光面の同一位置から照射される。各フォトニック結晶レーザ21~26は同一平面上に配列されている。このため、厳密に言えば、フォトニック結晶レーザ21~26それぞれが照射する2つのレーザ光は、異なる位置から照射される。しかしながら、フォトニック結晶レーザ21~26の大きさは約200μm×200μmと微小である。このため、フォトニック結晶レーザ21~26から照射される12のレーザ光は、すべて同一位置から照射されるとみなすことができる。
【0042】
また、フォトニック結晶レーザ21~26は、それぞれのレーザ光の照射方向が異なるように構成されている。つまり、光源装置2からは、計12のレーザ光が照射されるが、12のレーザ光それぞれの照射方向は異なっている。具体的には、フォトニック結晶レーザ21~26それぞれは、発光面と平行な平面に対してレーザ光を照射した場合、平面上の各レーザ光の照射位置が、同一円周上に位置し、かつ、等間隔となるように、構成されている。つまり、この例では、計12のレーザ光それぞれは、法線P2に対する傾斜角度が同じで、法線P2を中心に、30°ずつ回転した方向に照射されるようになっている。
【0043】
なお、フォトニック結晶レーザ21~26の具体的な構成は、例えば、特開2013-211542号公報、または、特開2018-155628号公報などに記載されている。
【0044】
光源装置2は、
図3および
図4に示すように、回転軸P1の延長線上であって、ミラー31の上方に配置されている。また、光源装置2は、各フォトニック結晶レーザ21~26の発光面がミラー31側となり、その発光面の法線が、回転軸P1の軸方向となるように、配置されている。なお、図示しないが、光源装置2は、基板によって支持され、基板は図示しない筐体に取り付けられている。また、光源装置2は、回転軸P1からずれた位置に配置されてもよい。
【0045】
図6は、光源装置2からミラー31へ照射したレーザ光の光芒を示す図である。
【0046】
ミラー31は、光源装置2からレーザ光が照射されている間、回転するようになっているが、
図6では、ミラー31は静止した状態を示している。また、
図6の破線は、光源装置2から照射されるレーザ光の光芒を示す。
図6の黒丸は、ミラー31におけるレーザ光の反射位置(照射位置)を示す。なお、
図6では、ミラー31の反射したレーザ光の図示は省略している。
【0047】
上記したように、光源装置2は、ミラー31の回転軸P1上に位置するように配置されている。また、光源装置2から照射される12のレーザ光は、同一位置から照射されるとみなすことができる。このため、光源装置2からミラー31へ照射される12のレーザ光は、回転軸P1上の同じ位置から照射されるとみなすことができる。
【0048】
図7は、レーザ光が照射されたミラー31を光源装置2側から視た図である。
図7において、各側面31A~31D上の黒丸はレーザ光の反射位置を示している。
【0049】
光源装置2が回転軸P1上に配置されることで、一のフォトニック結晶レーザから照射される2つのレーザ光は、回転軸P1を中心に線対称となるように照射される。つまり、
図7に示すように、回転軸P1に沿って光源装置2からミラー31を視た場合、一のフォトニック結晶レーザから照射される2つのレーザ光の反射位置は、ミラー31の頂点(回転軸P1)を中心に点対称の位置となる。
【0050】
また、ミラー31の各側面31A~31Dには、少なくとも1つ(
図7では3つ)のレーザ光が照射される。このため、光走査装置1は、回転軸P1を中心に360°方向に向けてレーザ光を照射することができる。
【0051】
さらに、ミラー31は、その側面31A~31Dが回転軸P1に対して傾斜し、回転軸P1を中心に回転する。このため、ミラー31における一のレーザ光の反射位置は、ミラー31の回転と共に変化し、その反射位置の軌跡は、
図7の破線のようになる。レーザ光のミラー31への照射角度は変化するため、ミラー31で反射したレーザ光の軌跡は、直線状とならず、曲線状となる。
【0052】
図8は、レーザ光の軌跡を示す図である。回転駆動部32の回転位置検出手段により検出された回転角度に基づいてレーザ光の照射方向を算出することで、
図8に示すレーザ光の軌跡が判別できる。なお、
図8では、12のレーザ光のうち、一部のレーザ光についてのみ示している。
【0053】
回転軸P1を鉛直方向に沿って光走査装置1を配置した場合、
図8に示すように、光走査装置1から出射された一のレーザ光の軌跡は、水平方向からの傾斜角θ
1から傾斜角θ
2の範囲内において、湾曲状となる。上記のように、レーザ光をミラー31の全側面31A~31Dに照射することで、光走査装置1は、回転軸P1を中心とした360°方向で、かつ、水平方向からの傾斜角θ
1から傾斜角θ
2の範囲内に向けて、レーザ光を走査させることが可能となる。つまり、光走査装置1は、ミラー31を一方向に回転させると、レーザ光を二次元走査できる。
【0054】
傾斜角θ
1、θ
2は、法線P2(
図5参照)に対するレーザ光2A、2Bの傾斜角度、および、回転軸P1に対するミラー31の側面31A~31Dの傾斜角度によって変更される。
【0055】
図9は、水平方向に対するレーザ光の角度を説明するための図である。
図9では、回転軸P1を示す一点鎖線以外の破線は、レーザ光の光芒を示している。この例では、光走査装置1は、回転軸P1に対して25°傾斜したレーザ光を照射するものとする。
【0056】
(1)に示すように、側面の傾斜角が25°のミラー31にレーザ光を照射した場合、レーザ光は、水平方向に対して+15°傾斜した方向に反射する。(2)に示すように、側面の傾斜角が35°のミラー31にレーザ光を照射した場合、レーザ光は、水平方向に対して-5°傾斜した方向に反射する。(3)に示すように、側面の傾斜角が45°のミラー31にレーザ光を照射した場合、レーザ光は、水平方向に対して-25°傾斜した方向に反射する。(4)に示すように、側面の傾斜角が55°のミラー31にレーザ光を照射した場合、レーザ光は、水平方向に対して-45°傾斜した方向に反射する。
【0057】
このように、光源装置2が照射するレーザ光の照射方向が一定の場合、ミラー31の側面の傾斜角度を変更することで、ミラー31でのレーザ光の反射方向を変更することができる。
【0058】
なお、同様に、ミラー31の側面の傾斜角度を一定にして、レーザ光の照射方向を変えることで、ミラー31でのレーザ光の反射方向を変更することもできる。これにより、上述したように、測距装置10は、移動体100の走行面に対して平行な方向、または、上方に向けてレーザ光を照射することができる。
【0059】
図10は、光走査装置1が走査させたレーザ光の軌跡をグラフ化した図である。
【0060】
図10の横軸は水平角度を示し、縦軸は垂直角度を示す。水平角度とは、光走査装置1の回転軸P1を中心とした回転角度である。垂直角度とは、水平方向に対して傾斜している角度である。
図10に示すように、光走査装置1は、回転軸P1を中心とした360°方向で、かつ、水平方向からの傾斜角θ
1から傾斜角θ
2の範囲内に向けて、レーザ光を走査させることできる。つまり、光走査装置1を備える測距装置10を移動体100に搭載することで、
図2に示すように、移動体100の周囲に測距用のレーザ光を走査させることができる。
【0061】
本実施形態の光走査装置1は、照射したレーザ光を走査させるために、光源装置2からは常に一定方向にレーザ光を照射して、ミラー31を回転している。仮に、複数のレーザ光を周方向に回転させる場合、配線等の関係により、レーザ光を照射するために電力を、光源装置2へ非接触で供給する必要がある。しかしながら、本実施形態では、光源装置2および回転駆動部32が図示しない筐体に取り付けられて、ミラー31のみを回転させているので、光源装置2は非接触給電の構成を備える必要がない。
【0062】
なお、各フォトニック結晶レーザ21~26それぞれは、同時に2つのレーザ光を照射する構成であるが、光源装置2は、各フォトニック結晶レーザ21~26それぞれから照射する2つのレーザ光を、同時に照射してもよいし、時間差を設けて照射してもよい。例えば、フォトニック結晶レーザ21が2つのレーザ光を照射するタイミングと、フォトニック結晶レーザ22が2つのレーザ光を照射するタイミングとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
[光電センサ]
次に、測距装置10が備える光電センサについて説明する。光電センサは、上記の光走査装置1と、光走査装置1が走査した光が物体(
図1の物体101)で反射した反射光を受光する受光部と、を備える。
【0064】
図11は、光電センサ50を説明するための図である。
【0065】
光電センサ50は、光走査装置1と、光走査装置1が走査した測定光が物体で反射した反射光を受光する受光部と、を備えている。光走査装置1は上記した構成である。なお、光走査装置1の光源装置2は、投光基板20により支持されている。
【0066】
受光部は、受光レンズ40と、複数の受光素子41とを有している。
【0067】
受光レンズ40は、回転軸P1の延長線上であって、光源装置2を挟んでミラー31と反対側に配置される。受光レンズ40は、物体で反射した反射光がミラー31で反射した光(以下、ミラー反射光と言う)を集光する。なお、受光レンズ40は、回転軸P1の延長線上であって、光源装置2と同一の位置に配置されても良い。この場合、受光レンズ40の中心部に切り欠きを設け、その切り欠き部に光源装置2を配置しても良い。回転軸P1上で光源装置2と受光レンズ40の距離が近いほど、受光レンズの口径を小さくすることができる。
【0068】
物体で反射した反射光はミラー31の各側面31A~31Dで反射する。このときの反射方向は、光源装置2が照射するレーザ光の照射方向によって決まる。本実施形態では、ミラー31は回転軸P1周りに回転するものの、レーザ光は常に同じ方向から照射されるため、反射光がミラー31で反射する方向は、光源装置2の近傍方向となる。このため、受光レンズ40を回転軸P1上で、光源装置2近傍に配置することで、ミラー31の各側面31A~31Dで反射した光は、受光レンズ40へと入射されるようになる。なお、本実施形態では、光源装置2は12のレーザ光を照射するため、受光レンズ40には、12のレーザ光それぞれに対応するミラー反射光が入射される。
【0069】
受光素子41は、受光レンズ40の焦点位置に配置され、受光レンズ40が集光したミラー反射光を受光する。受光素子41は、回転軸P1の軸方向において、受光レンズ40を挟んで光源装置2と反対側に配置される基板に設けられる。受光素子41は、光源装置2が照射するレーザ光の数と同じ数が配置される。本実施形態では、
図12に示すように、12の受光素子41が配置される。
【0070】
図12は、受光素子41が設けられた基板41Aの平面図である。本実施形態では、受光レンズ40は、その焦点位置が同一円周上となるように設定されている。したがって、12個の受光素子41は、同一円周上に配置される。受光素子41は、図示しない筐体に取り付けることができる。光電センサ50は、ミラー31のみを回転させているので、受光素子41に関しても非接触給電の構成を備える必要がない。
【0071】
以上のように構成される光電センサ50を備える測距装置10は、光電センサ50の受光素子41が受光した受光量から、物体までの距離を検出する。上記のように、レーザ光を出射する光走査装置1は、回転軸P1を中心に、略360°周囲にレーザ光を走査するため、測距装置10は、自装置の全方位において、存在する物体までの距離を検出することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、測距装置10は、ミラー31の回転軸P1を鉛直方向に一致させた状態で、レーザ光を走査させるようにしているが、回転軸P1を鉛直方向に対して傾斜させた状態で、レーザ光を走査させるようにしてもよい。この場合、光源装置2が照射するレーザ光の照射方向、および、ミラー31の側面の傾斜角度を変更することなく、移動体100からレーザ光を走査させたい方向を調整することができる。
【0073】
(変形例)
上記の実施形態では、光源装置2の6つのフォトニック結晶レーザ21~26それぞれが照射する2つのレーザ光の法線方向に対する傾斜角度(
図5参照)は、いずれも同じとしている。しかしながら、光源装置2は、フォトニック結晶レーザによって異なった傾斜角で2つのレーザ光が照射されるようにしてもよい。
【0074】
図13は、別の構成の光源装置2を説明するための図である。この例では、光源装置2は、4つのフォトニック結晶レーザ21~24が配列された構成である。例えば、フォトニック結晶レーザ21、22は、法線P2に対して傾斜角θ
3で傾斜したレーザ光2A、2Bを照射し、フォトニック結晶レーザ23、24は、法線P3に対して傾斜角θ
4(<θ
3)で傾斜したレーザ光2C、2Dが照射されるように構成されている。そして、フォトニック結晶レーザ21、23は、法線P2、P3を一致させた場合に、法線P2、P3を中心として、同じ径方向にレーザ光が照射されるように構成されている。また、フォトニック結晶レーザ22、24は、フォトニック結晶レーザ21、23が照射する2つのレーザ光と、法線P2周りに90°周方向に回転した方向に、2つのレーザ光が照射されるように構成されている。
【0075】
図14は、
図13に示す光源装置2からレーザ光が照射されたミラー31の平面図である。
図14に示すように、ミラー31の一の側面には、その側面の高さ方向において異なる位置に2つのレーザ光が照射されるようになる。そして、ミラー31を回転軸P1周りに回転させると、ミラー31におけるレーザ光の軌跡は、図中の破線のようになる。
【0076】
図15は、
図13に示す光源装置2を備えた光走査装置1が走査した測定光の軌跡をグラフ化した図である。
【0077】
図15では、
図10と同様、横軸は水平角度を示し、縦軸は垂直角度を示す。この例では、
図10と比べると、光走査装置1は、垂直角度がより広い範囲でレーザ光を走査させることできる。なお、光源装置2が備えるフォトニック結晶レーザの数を増やすことで、
図15において、レーザ光が照射されない水平方向における位置にも、レーザ光を走査させることができる。
【0078】
また、上記の実施形態では、光源装置2は、2つのレーザ光を同時に照射するフォトニック結晶レーザを備えた構成としているが、これに限定されない。例えば、光源装置2は、光照射パターンの制御が可能な回折光学素子(DOE)を用いた構成であってもよい。また、光源装置2は、個別制御可能な4個のレーザダイオードからなるレーザバーと、モジュールに内蔵された制御回路で構成された4チャンネルレーザであってもよい。さらに、光源装置2は、複数のレーザダイオードを略同一位置に配置させた構成であってもよい。これらの場合であっても、光源装置2は、略同一位置から複数方向にレーザ光を照射することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 :光走査装置
2 :光源装置
2A、2B、2C、2D:レーザ光
3 :光偏向器
10 :測距装置
20 :投光基板
21、22、23、24、25、26:フォトニック結晶レーザ
31 :ミラー
31A、31B、31C、31D:側面
32 :回転駆動部
40 :受光レンズ
41 :受光素子
41A :基板
50 :光電センサ
100 :移動体
101 :物体
110 :斜線領域
111 :斜線領域